説明

殺線虫剤組成物

本発明は殺線虫剤組成物を提供することを目的とする。
(i) アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油、スイートバジル(Ocimum basilicium)油、パルマローザ(Cymbopogon martini)油、またはこれらの混合物から選択される1種またはそれ以上の精油、あるいはこれらの殺線虫作用を有する特定の成分、(ii) 農薬的に許容される担体油、および(iii) 乳化剤を含有する殺線虫剤組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺虫剤組成物、特に線虫類を駆除する組成物、さらに特に農業分野でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
線虫類の自然な駆除は作物の近くにマリーゴールド(Tagetes種)を植え付けることにより自然に行なうことができることは以前に報告されている。
【0003】
さらに、種々の精油を線虫駆除において利用できることが報告されている(例えばOkaらのPhytopathology, 第90巻, 7, 710〜715(2000年)を参照)。これらの多くはチモールを含有する油である。WO 00/53020は植物精油化合物を含有する殺線虫剤組成物、特にオイゲノールまたはオイゲノールを含有する混合物を開示している。
【0004】
さらに、主流の農業における精油の使用可能性は2つの要因:経済および汚染のため制限される。一般的に言えば、これらの油は特にそれらが効果的に使用されるには高い用量を必要とするため、かなり費用がかかる。また、高い施用量で使用されると、処置された作物は収穫後に有意に汚染されている可能性がある。
【0005】
しかしながら、本発明者らは特定の方法で配合された一連の特定の油の組成物は線虫類を駆除するのに非常に効果的であることを見い出した。
【発明の開示】
【0006】
本発明によれば、(i) アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油、スイートバジル(Ocimum basilicium)油、パルマローザ(Cymbopogon martini)油、またはこれらの混合物から選択される1種またはそれ以上の精油、あるいはこれらの殺線虫作用を有する何れかの成分、(ii) 農薬的に許容される担体油、および(iii) 乳化剤を含有する殺線虫剤組成物が提供される。成分が使用される場合、それらは好適にはオイゲノール以外である。
【0007】
本明細書で使用される「殺線虫」なる用語は線虫の致死および忌避効果の両方を包含する。
【0008】
特に、本組成物はパルマローザ(Cymbopogon martini)油またはアフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油、とりわけパルマローザ(Cymbopogon martini)油またはその殺線虫成分を含有する。
【0009】
これらの油の1種またはそれ以上の単離された成分が殺線虫作用を有するならば、それらを本組成物で使用することができる。
【0010】
アフリカンマリーゴールド精油の成分にはジヒドロタゲトン、チオフェンおよびオシメンがあり、そのうちジヒドロタゲトンは最も重要な成分である。
【0011】
スイートバジル(Ocimum basilicium)油の場合、その成分にはテルペノイド、特にリナロオール、オイゲノール、チモールおよびエストラゴールがある。
【0012】
最後に、パルマローザ(Cymbopogon martini)油の成分にはゲラニオールがある。
【0013】
したがって、使用することができる成分にはジヒドロタゲトン、チオフェン、オシメン、リナロオール、チモール、エストラゴールおよびゲラニオールがある。本発明の組成物で使用される特定の成分はゲラニオール、ジヒドロタゲトン、リナロオールまたはチモール、特にゲラニオールまたはジヒドロタゲトンである。
【0014】
これらの成分の何れかは殺線虫作用を有するかどうかを確認するために例えば下記のような常法を使用して試験することができる。そうであったら、それらを精油そのものの代りに使用することができる。
【0015】
しかしながら、好ましくは本組成物は成分(i)としてアフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油、スイートバジル(Ocimum basilicium)油、パルマローザ(Cymbopogon martini)油またはこれらの混合物から選択される1種またはそれ以上の精油を含有する。
【0016】
農業的に許容される担体油は精油の担体として作用し、少量の精油を土壌全体に分布させることができ、それにより効果を改善し、植物毒性を和らげる。さらに、ジャガイモ、ニンジン、カブ、チコリ、パースニップなどのような根菜作物の場合、より少量の精油の使用は汚染上の問題を軽減させることができる。
【0017】
本組成物は好適には5%w/w以下の何れかの精油、例えば4%w/w以下の何れかの精油、より好適には3%w/w以下、好ましくは2%w/w以下の何れかの精油を含有する。例えば、本組成物は0.5%w/w〜5%w/w、例えば1%w/w〜5%w/wの各精油を含有する。したがって、本組成物は好適には15%w/w以下の全精油含量、例えば12%w/w以下、より好適には9%w/w以下、恐らく6%w/w以下の全精油を有する。油の性質および取り扱われる線虫問題に応じて、組成物は4%w/w以下、あるいは3%w/wまたは2%w/w以下の精油を含有する。
【0018】
このタイプの製剤を使用して、例えば作物の周囲の土壌に1ヘクタールあたり1〜20リットル、例えば1ヘクタールあたり10リットル以下の組成物を施用することにより効果的な線虫駆除を行なうことができる。多くの場合、1ヘクタールあたり2〜5リットルの施用が適当である。
【0019】
このことは施用される精油の量の有意な減少を示し、その量は例えばこれらの活性成分を線虫駆除で使用する慣用の方法と比べて1〜2桁少ない。
【0020】
本発明の組成物で使用される活性成分の濃度が低いことは環境保全上の利点がある。特に、ハナバチ、ナナホシテントウムシ(Coccinella septempuncata)およびシマミミズ(Eisenia foetida)のような益虫、あるいは有益な土壌微生物に対する有害な効果が最小限に抑えられる。
【0021】
したがって、特定の態様において、本組成物は線虫の駆除において一緒に使用されると相乗効果を示す上記(i)で可能な成分として特定された油の少なくとも2種からなる混合物を含有する。例えば、本組成物はアフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油およびスイートバジル(Ocimum basilicium)油の組合せ、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)油およびパルマローザ(Cymbopogon martini)油の組合せ、あるいはスイートバジル(Ocimum basilicium)油およびパルマローザ(Cymbopogon martini)油の組合せを含有する。
【0022】
一般に、これらの成分の併用効果が個々の成分の効果の研究から予想されるものより高い時に相乗効果が生じていると認められる。通常はある精油で死んだ線虫の多くは他の精油でも死ぬと予想されるから、その個体数は明確ではないため単純な相加効果ではない。しかしながら、成分同士の相乗活性の結果として殺線虫効果の増加があるかどうか当該技術分野でよく知られている式を使用して容易に計算できる。
【0023】
非常に単純な式を下記に示す:X=成分(A)単独で致死させた線虫の割合、Y=成分(B)単独で致死させた線虫の割合、Z=(A+B)の併用により致死させた線虫の割合とすると、Z>X+Y(100−X)である場合に相乗効果が生じる。
【0024】
上記X、YおよびZの定量は例えば下記の実施例2に記載のような通常の試験法を使用して行なうことができる。したがって、何れかの特定の組合せによる相乗効果の定量は可能である。
【0025】
他の特定の態様において、本組成物は全3種の油の混合物からなり、それぞれ上記のような量、好ましくは相乗効果をもたらすような比率で存在する。結果として、さらに精油の施用量を減少させることができる。
【0026】
混合物中で使用する種々の精油の適当な比率は達成できる最適な相乗効果や取り扱われる特定の線虫問題に応じて変動する。しかしながら、一般に組成物中の何れかの油の量は他の油の量の3倍を超えない。一態様において、本組成物はそれぞれの精油をほぼ等しい量含有する。
【0027】
特に、本発明者らは線虫の駆除においてマリーゴールド油およびパルマローザ油の組合せが相乗的に作用し、そのため少なくとも2種のこれらの油(または殺線虫活性を示すその成分)を含有する本組成物は本発明の特定の態様を形成することを見い出した。
【0028】
本組成物はさらに他の油、特にスイートバジル油および/またはタイム油を含有することができ、他の特定の態様において、本組成物は全4種の油を含有する。特に、この組合せが使用された時の相乗効果は著しい。
【0029】
農薬的に許容される担体油は好適には植物油、例えば菜種油(OSR)、ヒマワリ油、綿実油、パーム油または大豆油である。特定の態様において、前記油は菜種油である。
【0030】
本発明の組成物は乳化剤を含有し、それは何れかの知られている農薬的に許容される乳化剤である。特に、乳化剤は界面活性剤、典型的には当該技術分野で知られているようなアルキルアリールスルホネート、エトキシル化アルコール、ポリアルコキシル化ブチルエーテル、カルシウムアルキルベンゼンスルホネート、ポリアルキレングリコールエーテルおよびブチルポリアルキレンオキシドブロックコポリマーからなる 。
【0031】
Triton N57(登録商標)のようなノニルフェノール乳化剤はポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ICIにより「Tween(登録商標)」という商品名で販売されている)のように本発明の組成物で使用することができる乳化剤の特定の例である。場合によっては、特に有機農業では天然の有機乳化剤が好ましい。ヤシジエタノールアミドのようなヤシ油はこのような化合物の例である。ラウリルステアレートのようなパーム油由来の製品もまた使用することができる。
【0032】
乳化剤は好適には組成物が確実に所望の水混和性を有するのに十分な量で存在する。例えば、乳化剤は1〜20%w/w、好適には10%w/w以下、特に約5%w/wの量で存在する。
【0033】
特定の態様において、本発明の組成物はさらに(iv) ウイルス感染の症状を改善する成分を含有する。このような化合物の特定の例はエチレン生成を減少させる、または抗ウイルス作用を有する化合物である。
【0034】
エチレン生成は多くのウイルス感染後に増加し、これを減少させる化合物を施用して症状を改善させることができる。
【0035】
エチレン生成を減少させることが知られている化合物の特定の例はサリチル酸またはそのエステル、特にアルキルエステルのようなサリチル酸化合物である。アルキルエステルの例はサリチル酸メチルのようなC1-10アルキルエステルである。
【0036】
好適には、本組成物で使用されるサリチル酸化合物は精油の形態である。サリチル酸またはサリチル酸エステルを含有する精油の例はウィンターグリーン油、並びにアカザ、コカノキ(Erythroxylum)、ユーゲニア、シラタマノキ、ニクズク、シジギウム、キサントフィラム(Xanthophyllum)、シナモン(Cinnamonium)、グアルセリア(Gualtheria)、ワタおよびミント(mentha)由来の油である。
【0037】
例えば、ウィンターグリーン油は高比率のサリチル酸メチルを含有し、そのため活性成分の容易に使用可能な供給源となり、それは組成物と容易に混和する。
【0038】
別法として、または追加として、使用される化合物はジャスモン酸またはその誘導体のような抗ウイルス活性を有する化合物を使用することができる。特定の誘導体はアルキルエステル、例えばジャスモン酸メチルのようなC1-10アルキルエステルである。
【0039】
本発明の組成物はこのような化合物を比較的少量、例えば1.0%w/w以下、好適には0.5%w/w以下、好ましくはごく微量で0.1%w/w以下、さらには0.005%w/w以下、例えば0.001%w/wしか必要としない。これが精油の形態で投与される場合、加えられる油の量は所望の濃度の活性化合物が確実に供給されるのに十分でなければならない。これに関して、比較的高い濃度の化合物を含む油、例えばウィンターグリーン油が好ましい。
【0040】
したがって、特に好ましい組成物は上記成分(iv)としてウィンターグリーン油を含有する。
【0041】
この特定の態様において、本組成物は幾つかの独立しているが関連した問題を処理するための“1つの投薬方法”(one product strategy)として使用することができる。特に、それはa) すでに存在する線虫を死滅させる;b) 再繁殖を抑止する;およびc) 植物がウイルス感染から回復するのを促進することにより線虫およびウイルスに対処することができる。
【0042】
個々の原料を使用するよりも併用アプローチの方がより良い結果をもたらす。
【0043】
特に、本発明の組成物はシスト線虫および根こぶ線虫、特にシスト線虫、例えばジャガイモシストセンチュウ(PCN)を処置するのに有用である。
【0044】
組成物は好適には各成分を互いに慣用の方法で混合することにより製造される。好適には、精油、ウイルスにより引き起こされる症状を改善する成分および乳化剤を農薬的に許容される担体油に加え、撹拌しながら混合して各成分を組成物全体に均一に分布させる。
【0045】
本発明の組成物は好適には施用する前に水で希釈される。したがって、上記の組成物は一般に濃厚物である。
【0046】
他の見地において、本発明は有害線虫を含む、またはその疑いがある土壌に投与するための製剤、すなわち上記のような組成物および水からなる製剤を提供する。製剤は調製手順に従って作物のある、または作物を植え付ける前の土壌に施用することができる。
【0047】
使用される水の量は殺線虫剤の特定の投与方法および施用される場所、例えば土壌または作物などに応じて変動する。これは噴霧器、例えば静電噴霧器または他の慣用の噴霧器を使用して行なうことができ、あるいは例えば潅漑、特に点滴潅漑法を使用して土壌に直接施用することができる。一般に、最終製剤は0.1〜7%v/v、好ましくは0.6〜7%v/v、好適には約4〜6%v/vの本発明の組成物を含有し、残りは水である。
【0048】
さらに他の見地において、本発明は線虫またはその生息場所に上記のような組成物を施用することからなる線虫を致死させる、または駆除する方法を提供する。
【0049】
好適には、本組成物はウイルス感染の症状を改善する成分を含有するものであり、そのため処置は殺虫作用およびウイルス感染の症状を改善する作用の複合効果をもたらす。
【0050】
本組成物および上記の方法で処置することができる有害線虫にはコムギツブセンチュウ(Anguina tritici)、ベントグラスセンチュウ(Anguina agrostis)、ハガレセンチュウ(Aphelenchoides fragariae)、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophylus)、キクハガレセンチュウ(Aphelenchoides ritzema−bosi)、ナミクキセンチュウ(Ditylenchus dipsaci)、イモグサレセンチュウ(Ditylenchus destructor)、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus sp.)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne sp.)、シストセンチュウ(Heterodera sp.)、シストセンチュウ(Globodera spp.)、スタビールート(stubby−root)センチュウ(Trycodorus sp.)、オオハリセンチュウ(Xiphinema sp.)、ナガハリセンチュウ(Longidorus sp.)、ピンセンチュウ(Paratylenchus sp.)、イシュクセンチュウ(Tylenchorhynchus sp.)、ヤリセンチュウ(Hoplolaimus sp.)、ラセンセンチュウ(Helicotylenchus sp.)およびリングセンチュウ(Criconema sp.)がある。
【0051】
これらのうち、本明細書で記載したように処置することができる最も重要な有害線虫にはナミクキセンチュウ(Ditylenchus dipsaci)、イモグサレセンチュウ(Ditylenchus destructor)、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus sp.)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne sp.)、シストセンチュウ(Heterodera sp. )およびシストセンチュウ(Globodera spp.)がある。
【0052】
製剤は殆んどの作物に使用するのに適しているが、特に温室作物、野菜、特にジャガイモのような根菜類、および果実の処置に使用することができる。
【0053】
本組成物は有効濃度で低い植物毒性を有する。これらは接触型殺線虫剤として作用すると考えられ、植物組織を通して十分に移行しない。しかしながら、これらは土壌に施用されると十分に持続し、そのためしばらくの間適度な保護がもたらされる。
【0054】
本発明はさらに殺線虫作用/ウイルス感染の症状を改善する作用の複合効果を有する組成物としてウイルス感染の症状を改善する化合物を含有する上記組成物の使用を提供する。
【0055】
上記の組成物または製剤は単独で使用することができ、あるいは他の農薬、例えば除草剤、殺菌剤、殺虫剤または植物成長調整剤と組合せて使用することができる。
【0056】
特定の態様において、本発明は1ヘクタールあたり5リットル未満、好ましくは1ヘクタールあたり2リットル以下の割合で土壌に投与される殺線虫剤としての上記組成物の使用を提供する。
【0057】
特定の状況で施用される組成物の量は作物の性質、侵入の程度などのような幾つかの要因に応じて変動する。しかしながら、典型的には1ヘクタールあたり20リットル以下、例えば10リットル以下、好適には2〜5リットルの上記組成物が水を加える前に施用される。したがって、加えられる精油の量は一般に1ヘクタールあたり0.2リットル、好適には1ヘクタールあたり0.02〜0.51リットルである。これは慣用の方法よりも有意に低い。
【0058】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0059】
〔実施例1〕組成物
次の成分を使用し、表1に示した量で互いに混合して幾つかの組成物を製造した:
【表1】

【0060】
次の成分を化合させることにより他の組成物(組成物5)を製造した:
成分 割合(%w/w)
キャノーラ油 94.5
ウインターグリーン油 0.5
乳化剤(ポリソルベート20) 5.0
【0061】
次の成分を混合することにより対照組成物(組成物6)を製造した。
成分 割合(%w/w)
キャノーラ(大豆)油 95.0
乳化剤(ポリソルベート20) 5.0
すべての組成物は同様の外観を示した;すべて淡黄色の透明な液体であった。
【0062】
〔実施例2〕線虫の駆除
実施例1に記載した各組成物をジャガイモシストセンチュウ(Globodera sp.)において幼若線虫(J2)の移動度を評価することにより殺線虫効果についてスクリーニングした。
ジャガイモシストセンチュウ(PCN;Globodera sp.)は土壌サンプル(約5kg)から採取し、ジャガイモの根およびジャガイモはPCNで汚染された部分から採取した。
【0063】
PCNを本試験で使用したのはそれが商業的に重要な植物の害虫であり、容易に入手でき、実験室で扱いやすいためである。
【0064】
生存PCNシストはEPPO(1997年)の植物検疫処置:Globodera pallidaおよびG. rostochiensisの土壌試料採取法, 欧州地中海植物保護機構, PM 3/30 (1)に記載のフラスコ法に基づく方法を使用して篩い分けすることにより集めた。所定量の土壌を250mLのビーカー中で水と混合するとシストが表面に浮かび、その表面の水を850μmおよび355μmの篩を通して洗浄した。シストを355μmの篩で集めた。それらを篩から別のビーカーに洗い流し、パスツール・ピペットにより集め、水道水を含有する6ウェルのプレートに入れた。
【0065】
シストを恒温室(20℃)の暗所で1ヶ月間保持した。次に、ウェル中の水を植物成長室で育てたシャルロットおよびサンテという品種のジャガイモを0.45μmのフィルターでろ過したジャガイモの根の抽出液と交換した。抽出液を加えた2日後に孵化を開始し、試験を開始するのに十分な数のJ2線虫を5日間で孵化させた。
【0066】
線虫が孵化した時点でOkaらのPhytopathology, 第90巻, 第7号(2000年)に記載の方法に基づく方法を使用して不動性に対する効果について試験した。
【0067】
実施例1に記載した組成物の試験溶液は組成物を曝気した水道水(pH8.18)に20℃で希釈して5%v/vの濃度とすることにより調製した。
【0068】
使用した方法は水生系における部分的に可溶性の物質を試験するための経済協力開発機構(OECD)の試験困難物質および混合物の水生毒性試験に関するガイダンス文書の改定草案(2000年);OECD Environmental Health and Safety Publications, Series on Testing and Assessment, TG/Diffsub/Rev2−9912−S2.doc.に記載の方法に基づくものである。これには物質の水相分画(WAF)の調製が含まれていた。
【0069】
5.0ml容量の実施例1の組成物を容量フラスコ中で100mLにした。希釈液を磁気撹拌器により高速で1時間激しく撹拌した。希釈液を250mLのビーカーに移した。
【0070】
すべての希釈液ですぐに表面上に分離した層が生成し、希釈液の大部分は濁った白色または濁った黄色の外観を有する。
【0071】
その後、5mlの試験溶液を表面上に沈降した層を回避しながらピペットで採取し、30分間分離させてから6ウェルのポリスチレン培養プレートにおいて直径34mmおよび深さ19mmの各ウェルに入れた。
【0072】
それぞれの処置において4個の同型ウェルを使用し、名目上10匹/ウェルのJ2線虫を加えた(加えた実数は6〜18匹/ウェルである)。
【0073】
気温をComark ICESPY電気検層装置を使用する試験キャビネットにおいて30分間隔で測定した。試験期間中の温度は18.3〜20.0℃であった。
【0074】
J2線虫の観察は第2日、第8日および第14日に行なった。暴露は第14日に終了した。
【0075】
第2日に何れかのウェルで動いた線虫は比較的少なかった。第8日および第14日は相当数の線虫が動いていた。
【0076】
第14日に8滴以下の33%HNO3溶液を加えて線虫の動きを刺激した。
【0077】
不動性に関するデータは逆正弦平方根変換を行なった後、TOXCALCバージョン5.0を使用してANOVAの仮定との一致について分析した。それぞれの処置での不動性データを曝気した水で行なった対照との有意差(P=0.05、片側検定)について適当な多重比較法(例えばDunnett検定)を使用して検定した。それぞれの処置について用量反応曲線もまた作成した。
【0078】
各ウェルに最初に加えた線虫の数、各ウェルについて第8日および第14日に動いた数と第8日および第14日の不動率を表3に示し、表4で集計する。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
第8日および第14日の(逆正弦平方根変換した)データはToxCalcコンピューター・プログラムを使用し、次に適当な多重比較検定(片側検定、P=0.05)を使用して曝気した水だけで行なった対照を各植物油および担体と比較することにより分析した。
【0082】
【表4】

【0083】
パルマローザ油は線虫に対して最大の活性を示したが、スイートバジル油およびアフリカンマリーゴールド油は良好なレベルの活性を示した。この試験において、タイム油は効果がなかった。
【0084】
〔実施例3〕相乗効果試験
本試験は2%w/wのタイム油、2%w/wのスイートバジル油(リナロオール)、2%w/wのアフリカンマリーゴールド油、2%w/wのパルマローザ油および0.5%w/wのウィンターグリーン油の組合せのジャガイモシストセンチュウ(Globodera sp.)の幼若線虫の生存における殺線虫効果を評価することを目的とするものである。
【0085】
実施例1の表1〜2に記載した組成物を含む次の混合物を調製し、次の処置法で使用した。
A) 水だけの対照
B) 組成物1(パルマローザ油)、組成物2(スイートバジル油)および組成物3(アフリカンマリーゴールド油)(1:1:1)の混合物
C) 組成物1(パルマローザ油)および組成物2(スイートバジル油)(1:1)の混合物
D) 組成物1(パルマローザ油)および組成物3(アフリカンマリーゴールド油)(1:1)の混合物
E) 組成物2(スイートバジル油)および組成物3(アフリカンマリーゴールド油)(1:1)の混合物
F) 組成物1(パルマローザ油)、組成物2(スイートバジル油)、組成物3(アフリカンマリーゴールド油)および組成物4(タイム油)(1:1:1:1)の混合物
【0086】
試験した濃度は各植物油を組合せた混合物の5.0%v/v水溶液である。水中における油の水相分画は油を水中で2時間激しく混合し、30分間分離させて試験するための水層を採取することにより試験した。
【0087】
3種の油の混合物(混合物B)の場合、1.67mLの各油を加えて100mLにした。
2種の油の混合物(混合物C、DおよびE)、2.5mLの各油を加えて100mLにした。
4種の油の混合物(混合物F)の場合、1.25mLの各油を加えて100mLにした。
【0088】
これらの混合物を使用して実施例2の方法を実質的に繰り返した。暴露は実施例2に記載のようにして5mL容量の試験溶液を含有するポリスチレンプレートウェルにおいて行なった。試験した濃度は曝気した水道水で希釈した0.5%および5.0%v/vの組成物であり、それぞれ4回反復測定した。対照は曝気した水道水だけからなる。
【0089】
暴露は0〜4日齢のJ2線虫を使用し、1ウェルあたり2〜28匹の線虫を加えて開始した。移動についての観察は14日後、線虫の動きを刺激するための1滴の33%硝酸を加える前とその後に行なった。(逆正弦平方根変換した)データはToxCalcコンピューター・プログラムを使用し、次に適当な多重比較検定(片側検定、P=0.05)を使用して曝気した水だけで行なった対照を各植物油の組合せと比較することにより分析した。
【表5】

【0090】
相乗効果が存在するかどうかを確認するために、結果を実施例2に記載のようにして単独の油で得られるものと比較した。この比較を行なうために、どの組の結果もAbbott式(Abbott W.S. の「殺虫剤の有効性を計算するための方法」, J. Econ. Entomology 18, 265〜267(1925年))を使用して対照の不動率について補正した。酸を加えた後の移動度は実施例1で測定したので、酸を加えた後の結果を比較するだけである。0.5%濃度は対照との有意差を示さなかったため、5%濃度での結果だけを比較する。本試験において混合した油で見られたより大きい不動率(%)の値は相乗効果 (すなわち個々の油の効果を単純に加えて予想されるものより大きい効果) を示している。その結果を下記の表6で比較する。
【表6】

【0091】
結果はこの試験でパルマローザ油およびアフリカンマリーゴールド油を併用すると単独の油から予想されるものより効果的である、すなわち相乗効果が存在することを示唆している。パルマローザ油+スイートバジル油+アフリカンマリーゴールド油+タイム油についても同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) アフリカンマリーゴールド油、スイートバジル油、もしくはパルマローザ油、もしくはこれらの混合物から選択される1種もしくはそれ以上の精油、またはこれらの殺線虫作用を有する、オイゲノールを除く何れかの成分、
(ii) 農薬的に許容される担体油、および
(iii) 乳化剤
を含有する殺線虫剤組成物。
【請求項2】
パルマローザ油またはアフリカンマリーゴールド油、あるいはこれらの成分を含有する請求項1記載の殺線虫剤組成物。
【請求項3】
(i) アフリカンマリーゴールド油、スイートバジル油、もしくはパルマローザ油、もしくはこれらの混合物から選択される1種またはそれ以上の精油を成分として含有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
成分(i)はアフリカンマリーゴールド油、スイートバジル油およびパルマローザ油から選択される少なくとも2種の精油の混合物からなる請求項3記載の組成物。
【請求項5】
アフリカンマリーゴールド油およびパルマローザ油、またはこれらの混合物を含有する請求項4記載の組成物。
【請求項6】
さらにスイートバジル油およびタイム油を含有する請求項5記載の組成物。
【請求項7】
5%w/w以下の何れかの精油またはその成分を含有する請求項1〜6の何れか一項記載の組成物。
【請求項8】
組成物は2%w/w以下の各精油またはその成分を含有する請求項7記載の組成物。
【請求項9】
6%w/w以下の全精油を含有する請求項4記載の組成物。
【請求項10】
農薬的に許容される担体油は菜種油、ヒマワリ油、綿実油、ヤシ油または大豆油である請求項1〜9の何れか一項記載の組成物。
【請求項11】
農薬的に許容される担体油は菜種油である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
乳化剤はポリオキシエチレンソルビタンエステルである請求項1〜11の何れか一項記載の組成物。
【請求項13】
乳化剤はヤシジエタノールアミドである請求項1〜11の何れか一項記載の組成物。
【請求項14】
さらに(iv) ウイルス感染の症状を改善する成分を含有する請求項1〜13の何れか一項記載の組成物。
【請求項15】
成分(iv)はウィンターグリーン油である請求項14記載の組成物。
【請求項16】
組成物は1%w/w以下の成分(iv)を含有する請求項14または15記載の組成物。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか一項記載の組成物および水からなる、有害線虫を含む、またはその疑いがある土壌に投与するための製剤。
【請求項18】
線虫またはその生息場所に請求項1〜16の何れか一項記載の組成物または請求項17記載の製剤を施用することからなる線虫を致死させる、または防除する方法。
【請求項19】
線虫はコムギツブセンチュウ(Anguina tritici)、ベントグラスセンチュウ(Anguina agrostis)、ハガレセンチュウ(Aphelenchoides fragariae)、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophylus)、キクハガレセンチュウ(Aphelenchoides ritzema−bosi)、ナミクキセンチュウ(Ditylenchus dipsaci)、イモグサレセンチュウ(Ditylenchus destructor)、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus sp.)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne sp.)、シストセンチュウ(Heterodera sp.)、シストセンチュウ(Globodera spp.)、スタビールートセンチュウ(Trycodorus sp.)、オオハリセンチュウ(Xiphinema sp.)、ナガハリセンチュウ(Longidorus sp.)、ピンセンチュウ(Paratylenchus sp.)、イシュクセンチュウ(Tylenchorhynchus sp.)、ヤリセンチュウ(Hoplolaimus sp.)、ラセンセンチュウ(Helicotylenchus sp.)およびリングセンチュウ(Criconema sp.)である請求項18記載の方法。
【請求項20】
線虫はナミクキセンチュウ(Ditylenchus dipsaci)、イモグサレセンチュウ(Ditylenchus destructor)、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus sp.)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne sp.)、シストセンチュウ(Heterodera sp.)またはシストセンチュウ(Globodera spp.)である請求項19記載の方法。
【請求項21】
組成物または製剤は他の農薬と組合せて施用される請求項18〜20の何れか一項記載の方法。
【請求項22】
1ヘクタールあたり20リットル未満の割合で土壌に施用される殺線虫剤としての請求項1〜21の何れか一項記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−536937(P2009−536937A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508499(P2009−508499)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001767
【国際公開番号】WO2007/132224
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505471679)プラント・インパクト・ピーエルシー (6)
【Fターム(参考)】