説明

殺菌装置付き動物飼育室用作業台

【課題】室内清浄度を維持できる殺菌装置付き動物飼育室用作業台を提供する。
【解決手段】本発明の殺菌装置付き動物飼育室用作業台は、作業スペースの外周に空気吸引部を取り付けた作業面100と、前記作業面100の下方に配置し、前記空気吸引部から吸引された空気をフィルタろ過する浄化手段を取り付けたチャンバボックス120と、前記チャンバボックス120の内部を殺菌する殺菌装置126と、前記チャンバボックス120の内部を開放する開口手段130と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空調設備により飼育環境を清浄に維持する動物飼育室に適用可能な殺菌装置付き動物飼育室用作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
動物を飼育・実験する動物飼育室がある。動物飼育室の室内には、動物が収容されている小型容器のケージが複数個設置されている。そのケージ内には、飼育される動物のほか、飼育のための餌や水や床敷きが設置されている。また室内にはケージのほか、ケージの清掃や、動物を治療等する場合の作業台が設置されている。さらに動物飼育室は、室内環境を清浄に保つため温湿度制御された外気の供給手段および排気手段を備えている。このような動物飼育室は、動物から発生する汚染物が外部に流出することがないように飼育環境を高い清浄度に維持する必要がある。
【0003】
このような動物飼育室の飼育環境を清浄に維持する技術として特許文献1〜3が開示されている。
特許文献1には、動物飼育室の動物飼育ラックに脱臭装置を取り付けて、室内の排気風量と外気風量を少なくする空調システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、複数の動物飼育室と支援室間の差圧を予め設定した設定圧力に保持して、動物飼育室と支援室間の空気の流れを一方向に維持し、給・排気ファンの回転数を制御する高度安全施設が開示されている。
【0005】
特許文献3には、作業台に空気の循環機能を付加して、ケージの清掃等の各種作業に伴って発生する塵埃が周囲に飛散することを防止する作業台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−180183号公報
【特許文献2】特開2003−23892号公報
【特許文献3】特開2000−253769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の動物飼育室では、脱臭装置を配備した飼育装置以外の場所での作業の場合、汚染物などが室内へ拡散してしまい防止することができないという問題がある。
【0008】
また特許文献2では可変風量型定風量装置により風量を直接制御し、通常運転での設定圧力に必要な風量を予め設定し、その風量になるように制御している。したがって室内での室圧変動に応じて制御するのは困難である。
【0009】
特許文献3の方法では作業スペースの塵埃拡散防止の観点からは効果が期待できるが、作業台のメンテナンス性(滅菌、清掃)については構造が複雑であり考慮されていない。
【0010】
また特許文献1,2のいずれも動物飼育室の給気量および排気量について言及はされておらず、稼働費の削減については考慮されていない。
そこで、本発明は、上記課題の一部を解決し、室内清浄度を維持できる殺菌装置付き動物飼育室用作業台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
殺菌装置付き動物飼育室用作業台は、作業スペースの外周に空気吸引部を取り付けた作業面と、前記作業面の下方に配置し、前記空気吸引部から吸引された空気をフィルタろ過する浄化手段を取り付けたチャンバボックスと、前記チャンバボックスの内部を殺菌する殺菌装置と、前記チャンバボックスの内部を開放する開口手段と、を備えているとよい。
【0012】
このような構成によれば、作業台上での床敷き交換作業、給餌・給水作業時の発塵による塵埃拡散を防止することができる。また、チャンバ内の清掃もメンテナンス性を考慮し、開口手段を有した構造となっているため、作業台の清掃を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
上記構成よる本発明の殺菌装置付き動物飼育室用作業台によれば、動物飼育室のクリーン化を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に関連する動物飼育室の構成概略を示す図である。
【図2】空気清浄化ユニットの斜視図である。
【図3】空気清浄化ユニットの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の殺菌装置付き動物飼育室用作業台の実施形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1に本発明に関連する動物飼育室の構成概略を示す図である。本発明に関連する動物飼育室10は、給気手段20と、排気手段30と、動物飼育ラック40と、殺菌装置付き動物飼育室用作業台となる空気清浄化ユニット50、圧力センサ60と、制御手段70とを主な構成要件としている。
【0016】
給気手段20は、外調機22と、給気ダクト24と、給気風量調整手段26と、吹出口28からなり、外気を室内に導入している。
【0017】
外調機22は、加熱コイル、冷却コイル、加湿器等から構成されており、外気を予め定めた温度、湿度に調整している。また外気を取り込みフィルタ処理等により外気を浄化して温湿度調整してもよい。
給気ダクト24は、外調機22と室内の吹出口28を接続するダクトである。
【0018】
給気風量調整手段26は、給気ダクト24のダクト途中に取り付け、後述する制御手段70と電気的に接続している。給気風量調整手段26は一例として電磁開閉弁等を用いることができる。給気風量調整手段26は、制御手段70の制御信号に基づいて、室内に導入する外気の風量を調整することができる。
【0019】
排気手段30は、排気ダクト32と、排気ファン34と、排気風量調整手段36と、排気口38と、動物飼育ラック排気口39と、定風量制御手段43とからなり、室内の空気を外部へ排出している。
【0020】
排気ダクト32は、その一端を室内の排気口38および動物飼育ラック排気口39に接続し、他端を外部の排気ファン34に接続したダクトである。
排気ファン34は、排気ダクト32の他端に取り付け、排気ダクト32を介して室内の空気を吸引して外部へ排気している。
【0021】
排気風量調整手段36は、排気ダクト32のダクト途中に取り付け、後述する制御手段70と電気的に接続している。排気風量調整手段36は、給気風量調整手段26と同様に一例として電磁開閉弁を用いることができる。排気風量調整手段36は、制御手段70の制御信号に基づいて、室内から排気する空気の風量を調整することができる。
【0022】
動物飼育ラック40は、実験動物を保管、飼育するためのケージ42が複数個設置され、それぞれのケージ42に個別に給排気が行われる。図1では動物飼育ラック40の排気は、動物飼育ラック排気口39を通じて、動物飼育室10の室内の排気口38と同じ排気ダクト32に接続されている。また排気ダクト32は、動物飼育ラック排気口39よりも後段のダクト上に、定風量制御手段43を設けている。定風量制御手段43は、動物の飼育に影響を及ぼさない程度の予め定めた排気量で動物飼育ラック40からの排気量を調整するものである。定風量制御手段43は、一例として電磁開閉弁を用い、動物飼育ラック40に接続する排気ダクト内の静圧をセンシングして開度を制御して排気量を一定量に調整することができる。このほか、動物飼育ラック40の排気量を一定量に調整するためには、室内と動物飼育ラック40をそれぞれ独立の排気ダクト(2系統)で排気する構成としても良い。この場合、動物飼育ラック40からの排気ダクトには定風量制御手段43として新たに排気ファンを設けて、定格で稼動させることにより動物の飼育に影響を及ぼさない程度の予め定めた排気量で排気することができる。
【0023】
一方、動物飼育ラック40への給気方法としては、図1のように動物飼育室10の室内の空気を給気する構成としてもよいし、給気ダクト24から直に温湿度制御された空気を給気する構成としてもよい。
【0024】
空気清浄化ユニット50は、動物、ケージ等を上面に載置可能な作業台である。図2は空気清浄化ユニットの斜視図である。図3は空気清浄化ユニットの説明図である。同図(1)は空気清浄化ユニットの断面図である。同図(2)はプレフィルタの変形例を示している。図示のように、空気清浄化ユニット50は、作業台の上面に作業面100と、その下方にチャンバボックス120と、側面に開口手段130を取り付けている。
【0025】
作業面100は、動物、ケージ等を載置する作業スペース102の周囲を囲むように(外周に沿って)複数の開口104を設けている。開口104は作業面100の上面からの空気を吸引することができる。
【0026】
チャンバボックス120は、作業面100の裏側(下方)に配置し、作業面100の開口104から導入された空気の流路に、浄化手段となるファンフィルタユニット(以下FFUという。)122と殺菌装置126を備えている。
殺菌装置126は、一例として紫外線殺菌ランプを用いることができる。殺菌手段126は、所定波長の紫外線を照射して殺菌することができる。
【0027】
FFU122は、チャンバボックス120の下部に取り付けている。FFU122は、流路の上流側からプレフィルタ123と送風機124と高性能フィルタ125の順に形成している。プレフィルタ123はチャンバボックス120の底面の中央開口に取り付け、空気中の塵埃を除去している。送風機124はプレフィルタ123の下方に取り付け、開口104から室内空気を吸引することができる。高性能フィルタ125は、空気中の細かい塵埃を除去し、清浄度の高い空気が得られる。FFU122は、送風機124の稼動により殺菌装置126から殺菌処理された空気が導入され、プレフィルタ123及び高性能フィルタ125により空気中の塵埃を捕集して、下部の排出口から浄化された空気を室内へ排出している。なお浄化手段は、後述する制御手段70と電気的に接続している。またプレフィルタ123は、図3(2)に示すようにチャンバボックス120内の作業面100の下面側を覆うように取り付けることもできる。
【0028】
開口手段130は、チャンバボックス120の側面に取り付けた開口扉である。図2に示すように開口扉の開閉により、チャンバボックス120の内部を外部に開放することができる。
【0029】
圧力センサ60は、室内の圧力を検出するセンサである。圧力センサ60は後述する制御手段70と電気的に接続している。
【0030】
制御手段70は、給気風量調整手段26と排気風量調整手段36と圧力センサ60と空気清浄化ユニット50と電気的に接続している。制御手段70は、圧力センサ60の測定値に基づいて、室内の圧力を予め定めた設定値に維持するように給気風量と排気風量の流量を調整している。
【0031】
また動物飼育室10には、側壁にリリーフダンパ(RD)12を取り付けている。リリーフダンパ12は、室内の圧力を調整し、隣接する部屋との差圧を維持するようにしている。
【0032】
次に上記構成による本発明に関連する動物飼育室の作用について以下説明する。
まず給気手段20の外調機22によって外気を予め設定した温室度に調整し、給気ダクト24を介して温室度調整された外気を動物飼育室10内に導入する。一方、排気手段30の排気ファン34を稼動させて、排気口38から排気ダクト32を介して室内の空気を外部に排気する。また前記排気ファン34の稼動により、動物飼育ラック排気口39から動物飼育ラック40内の空気も外部に排気される。このとき動物飼育ラック40からの排気は、排気ダクト32上に設けた定風量制御手段43により動物の飼育に影響を及ぼさない程度の固定の排気風量に制御している。動物飼育室10は、予め室内の設定圧力Pを設定してある。室内を陽圧にコントロールする場合、動物飼育室10に給気される空気は、動物飼育ラック40の排気量と室内の空気を排気する排気口38から排気される排気量を合計した風量に加えて、リリーフダンパ12から排気される風量を含めた風量を常に給気する必要がある。
【0033】
ここで一般の実験動物施設は、動物飼育室とその他の部屋(前室、廊下など)の間に気圧差を設けることにより、微生物学的バリアを作り、病原微生物などが汚染区域からバリア区域に侵入することを防ぐようにしている。一例としてバリアシステム内の動物飼育室は、外部、廊下、飼育室の順にそれぞれ10Pa〜20Pa以上室圧を高く設定している。本発明では動物飼育室10内の設定圧力PをP>20Paとしている。制御手段70は、空気清浄化ユニット50の運転状況と、圧力センサ60により室内の圧力とをモニタリングしている。そして圧力センサ60の測定値に基づいて、電気的に接続する給気風量調整手段26および排気風量調整手段36に制御信号を送って給気する外気および排気する空気の風量を制御している。このうち動物飼育ラック40からの排気量は、動物飼育に影響を及ぼさないため固定の風量であるため、動物飼育室10の排気口38からの排気量を制御することになる。そして空気清浄化ユニット50を運転させて、空気清浄化ユニット50の吸込風量分を循環風量とすれば、室内の清浄度は維持できるため、清浄度維持のために必要な給気風量分は、削減することができ省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0034】
なお空気清浄化ユニット50の運転状態ではなく動物飼育室内の清浄度を検出して、給気風量および排気風量を制御するようにしても良い。具体的に清浄度のモニタリングは、動物飼育室10内にパーティクルカウンタを設置する。ここでパーティクルカウンタの設置箇所は、飼育室内の壁、排気口38、空気清浄化ユニット50上などに取り付けることができる。そして室内空間の浮遊パーティクル数を検出し、予め定めた室内の浮遊パーティクル数との差に基づいて、給気風量および排気風量を制御する。また浮遊パーティクル数の検出値に基づいて、空気清浄化ユニット50の稼動を制御するようにしてもよい。
【0035】
一方、室内に配置した空気浄化ユニット50は、作業面100の作業スペース102で動物の治療等を行う際に、作業面100の開口104から室内の空気を吸引している。開口面から導入された空気は、チャンバボックス120の流路に配置されたFFU122の高性能フィルタ処理により空気中の塵埃が除去される。フィルタ処理後の空気はFFU122の排出口から室内に排出される。空気浄化ユニット50は、室内の空気を給・排気し循環させているため、室内の圧力に影響を与えることがない。
【0036】
この空気清浄化ユニット50は、チャンバボックス120内が作業スペース102で床敷き交換等の作業が終了した後で清掃等が容易に行えるよう開口手段130が取り付けられている。なお、開口手段130は、チャンバボックス120の側部にスライド機構を設けて、作業面100の下方に取り付けたチャンバボックス120を手前にスライドさせて引き出すように構成してもよい。チャンバボックス120内部は突起物やダクトなどがないようなシンプルな構造にしている。内部コーナー部をR処理して清掃し易い構造にしても良い。計測スイッチ127を側面に設置し、殺菌装置用のタイマー機能を付加しても良い。また作業面100の外周には落下防止柵128を設けている。
【0037】
本ユニットは、作業時には、床敷き交換作業などから発生する微生物、塵埃などの拡散を防止する局所排気装置として機能し、室内で作業していないときには空気清浄化ユニット50として稼動させても良い。
【0038】
チャンバボックス120の殺菌装置126は、作業が終了して、チャンバボックス120内の清掃(アルコール清拭など)後に稼動させ、内部の微生物汚染を防止している。
【0039】
このような本発明に関連する動物飼育室によれば、室内清浄度維持分として給気手段により供給される外気導入空気を大幅に減らして、外気処理に要する空調エネルギーを大幅に削減することが可能となる。また清浄化ユニットの運転は、内部空気を循環するだけであり、室内の圧力が変化することがない。
【符号の説明】
【0040】
10………動物飼育室、12………リリーフダンパ(RD)、20………給気手段、22………外調機、24………給気ダクト、26………給気風量調整手段、28………吹出口、30………排気手段、32………排気ダクト、34………排気ファン、36………排気風量調整手段、38………排気口、39………動物飼育ラック排気口、40………動物飼育ラック、42………ケージ、43………定風量制御手段、50………空気清浄化ユニット、60………圧力センサ、70………制御手段、100………作業面、102………作業スペース、104………開口、120………チャンバボックス、122………ファンフィルタユニット(FFU)、123………プレフィルタ、124………送風機、125………高性能フィルタ、126………殺菌装置、127………計測スイッチ、128………落下防止柵、130………開口手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業スペースの外周に空気吸引部を取り付けた作業面と、
前記作業面の下方に配置し、前記空気吸引部から吸引された空気をフィルタろ過する浄化手段を取り付けたチャンバボックスと、
前記チャンバボックスの内部を殺菌する殺菌装置と、
前記チャンバボックスの内部を開放する開口手段と、
を備えたことを特徴とする殺菌装置付き動物飼育室用作業台。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−94137(P2010−94137A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22476(P2010−22476)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【分割の表示】特願2008−254138(P2008−254138)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】