説明

殺虫・殺線虫剤組成物及び害虫の防除方法

【課題】 公知の殺線虫剤及び線虫剤の各々を単独で防除するよりも、双方の防除効果が相乗的に強化された殺虫・殺線虫剤を提供する。
【解決手段】 S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを有効成分として含有することを特徴とする殺虫・殺線虫剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種線虫と、土壌害虫等の昆虫の同時防除に有効な殺虫・殺線虫剤組成物及び害虫の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートは米国特許第4590182号に開示された化合物である。O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレートは米国特許第5405961号に開示された化合物である。S,S−ジ−sec−ブチル O−エチル ホスホロジチオアートは米国特許第4535077号に開示された化合物である。それらは、公知の有機リン系殺線虫剤の有効成分である。また、これまで、有機リン系殺虫剤が知られている。しかしながら、特定の有機リン系殺線虫剤と特定の有機リン系殺虫剤とを組み合わせたとき、害虫の防除に関し相乗的な効果を発揮することはあまり知られていない。特開平1−238505号には、上記S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートを含む有機リン系殺線虫剤と有機リン系殺虫剤との組み合わせについて開示がある。
【0003】
【特許文献1】米国特許第4590182号
【特許文献2】米国特許第5405961号
【特許文献3】米国特許第4535077号
【特許文献4】特開平1−238505号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の殺線虫剤及び殺虫剤の各々を単独で防除するよりも、双方の防除効果が相乗的に強化された殺虫・殺線虫剤が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これら課題を解決すべく検討を重ねた結果、特定の有機リン系殺線虫剤と、特定の殺虫剤とを組合せることにより、予期される以上の効果が得られるとの知見を得、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを有効成分として含有することを特徴とする殺虫・殺線虫剤組成物に関する。また、本発明は、それらの有効成分を害虫又は害虫の生息場所に処理することを特徴とする害虫の防除方法に関する。
【0007】
S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートには、光学異性体が存在し、ラセミ体の他に(−)体及び(+)体が含まれる。ラセミ体である(R,S)−S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートは、一般名ホスチアゼート(Fosthiazate)として知られている化合物である。
【0008】
O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレートにも、光学異性体が存在し、ラセミ体の他に(−)体及び(+)体が含まれる。ラセミ体は、一般名イミシアホス(Imicyafos)として知られている化合物である。
【0009】
S,S−ジ−sec−ブチル O−エチル ホスホロジチオアートは、一般名カズサホス(cadusafos)として知られている化合物である。
【0010】
有機リン系殺虫剤としては、例えば、ピリダフェンチオン(Pyridaphenthion)、イソキサチオン(Isoxathion)、ダイアジノン(Diazinon)、クロルピリホス(Chlorpyrifos)、フェニトロチオン(Fenitrohion)、シアノホス(Cyanophos)、プロフェノホス(Profenofos)、アセフェート(Acephate)、ジクロルボス(Dichlorvos)、フェナミホス(Fenamiphos)、EPN、クロルピリホスメチル(Chlorpyrifos-methyl)、プロチオホス(Prothiofos)、ホスホカルブ(Phosphocarb)、ジスルホトン(Dislufoton)、デメトン-S-メチル(Demeton-S-methyl)、ジメトエート(Dimethoate)、メタミドホス(Methamidophos)、イソフェンホス(Isofenphos)、エチオン(Ethion)、エトリムホス(Etrimfos)、キナルホス(Quinalphos)、ジメチルビンホス(Dimethylvinphos)、スルプロホス(Sulprofos)、チオメトン(Thiometon)、バミドチオン(Vamidothion)、ピラクロホス(Pyraclofos)、ピリミホスメチル(Pirimiphos-methyl)、プロパホス(Propaphos)、ホサロン(Phosalone)、ホルモチオン(Formothion)、マラチオン(Malathion)、テトラクロルビンホス(Tetrachlovinphos)、クロルフェンビンホス(Chlorfenvinphos)、トリクロルホン(Trichlorfon)、メチダチオン(Methidathion)、フェントエート(Phenthoate)、ESP、アジンホスメチル(Azinphos-methyl)、フェンチオン(Fenthion)、ヘプテノホス(Heptenophos)、メトキシクロル(Methoxychlor)、パラチオン(Paration)、モノクロトホス(Monocrotophos)、パラチオン-メチル(Parathion-methyl)、テルブホス(Terbufos)、ホスファミドン(Phospamidon)、ホスメット(Phosmet)、ホレート(Phorate)などが挙げられる。これらは、The Pesticide Manual(第13版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)等に記載の化合物である。これらの中でも、ピリダフェンチオン(Pyridaphenthion)、イソキサチオン(Isoxathion)、ダイアジノン(Diazinon)、クロルピリホス(Chlorpyrifos)、フェニトロチオン(Fenitrohion)、シアノホス(Cyanophos)、プロフェノホス(Profenofos)、アセフェート(Acephate)などの土壌害虫の防除に優れた殺虫剤が望ましい。S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートとの組合せにおいては、ピリダフェンチオン(Pyridaphenthion)を用いるのが、特に望ましい。また、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤との組合せにおいては、これら有機リン系殺虫剤のうち、ピリダフェンチオン(Pyridaphenthion)、イソキサチオン(Isoxathion)、ダイアジノン(Diazinon)及びクロルピリホス(Chlorpyrifos)から成る群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが、特に望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明組成物は、昆虫、線虫等の各種害虫に対して優れた防除効力を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明組成物において、特定の有機リン系殺線虫剤と有機リン系殺虫剤との混合割合は、重量比で通常10:1〜1:50の割合、望ましくは5:1〜1:30の割合、さらに望ましくは2:1〜1:20の割合である。
【0013】
本発明組成物は、有効成分の他に補助剤を含有する。有効成分の配合割合は0.05〜75重量%であればよい。補助剤としては担体、乳化剤、懸濁剤、分散剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、増粘剤、安定剤などが挙げられ、必要により適宜添加すればよい。担体としては、固体担体と液体担体に分けられ、固体担体としては、澱粉、活性炭、大豆粉、小麦粉、木粉、魚粉、粉乳などの動植物性粉末;タルク、カオリン、ベントナイト、炭酸カルシウム、ゼオライト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレー、アルミナ、硫黄粉末などの鉱物性粉末などが挙げられ、液体担体としては、水、メチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ケロシン、灯油などの脂肪族炭化水素類;キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキサン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類;酢酸エチルエステル、脂肪酸のグリセリンエステルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどの含硫化化合物類などが挙げられる。乳化剤、懸濁剤、分散剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤などとしては、各種の界面活性剤が使用される。また、必要に応じて他の農薬、例えば殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、誘引剤、除草剤、植物成長調整剤などと混用、併用することができ、この場合に一層優れた効果を示すこともある。
【0014】
本発明組成物は、乳剤、粉剤、微粒剤F、微粒剤、粒剤、錠剤、水和剤、液剤、エアゾール剤、ペースト剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、マイクロカプセル剤などの種々の形態に製剤することができる。なかでも乳剤、微粒剤、水和剤、液剤、粉剤、粒剤、錠剤などの形態がより望ましく、乳剤、微粒剤、粒剤、水和剤、液剤などの形態が最も望ましい。乳剤における好ましい配合割合は、有効成分5〜75重量部、担体90〜10重量部及び界面活性剤5〜15重量部である。また粉剤、粒剤及び錠剤における好ましい配合割合は、有効成分0.1〜10重量部、担体85〜99重量部及び界面活性剤0.5〜5重量部である。これら製剤の実際の使用に際しては、そのまま使用するか、または水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用することができる。
【0015】
本発明組成物は一般に0.1〜10000ppm望ましくは1〜1000ppmの有効成分濃度で施用する。これらの有効成分濃度は、製剤の形態及び施用する方法、目的、時期、場所及び害虫の発生状況等によって適当に変更できる。単位面積あたりの施用量は10a当たり、有効成分化合物として約1〜5000g、好ましくは10〜1000gが使用される。しかし、特別の場合には、これらの範囲を逸脱することも可能である。本発明組成物の施用方法としては、土壌混和処理、植穴処理、植溝処理、潅注処理、また種子などに対して浸漬処理、粉衣処理などが挙げられる。
【0016】
本発明には、本発明組成物を有害生物に処理する方法の他、前記有機リン系殺線虫剤及び有機リン系殺虫剤を同時に害虫または害虫の生息場所に処理する方法、前記有機リン系殺線虫剤及び有機リン系殺虫剤のどちらか一方の薬剤を害虫または害虫の生息場所に処理した後、他方の薬剤を害虫または害虫の生息場所に処理する方法が含まれる。
【0017】
本発明が適用できる害虫としては、線虫類、等脚類、鞘翅目害虫、鱗翅目害虫、腹足類、直翅目害虫、植物寄生性ダニ類、アザミウマ目害虫、双翅目害虫、膜翅目害虫、隠翅目害虫、シラミ目害虫、等翅目害虫、半翅目害虫、ワラジムシ類、ムカデ類、ヤスデ類などの各種害虫が挙げられる。特に本発明は農園芸作物および樹木などを土壌中で加害する害虫や、農園芸作物や樹木の種子を加害する害虫、例えば、前記線虫類、等脚類、鞘翅目害虫、鱗翅目害虫、腹足類、直翅目害虫、植物寄生性ダニ類などに有効である。本発明が適用できる各種害虫の具体例を以下に示す。
【0018】
線虫類としては、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)、チャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)、クルミネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)等のネグサレセンチュウ類;ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)等のシストセンチュウ類;キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)等のネコブセンチュウ類;イネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides besseyi)、イチゴセンチュウ(Aphelenchoides fragarieae)等のアフェレンコイデス類;イシュクセンチュウ類;ワセンチュウ類;ピンセンチュウ類;ロンギドルス類;トリコドルス類;イチゴメセンチュウ;マツノザイセンチュウなどが挙げられる。また、等脚類としては、ダンゴムシ、ワラジムシなどが挙げられる。
【0019】
鞘翅目害虫としては、ウエスタンコーンルームワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類;ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等のコガネムシ類;メイズウィービル(Sitophiluszeamais)、イネゾウムシ(Echinocnemus squameus)、アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、アルファルファタコゾウムシ(Hypera pastica)、アズキゾウムシ(Callosobruchuys chienensis)等のゾウムシ類;オキナワカンシャクシコメツキ(Melanotus okinawensis)、トビイロムナボソコメツキ(Agriotes ogurae fusciollis)、クシコメツキ(Melanotus legatus)等のハリガネムシ類;チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類;ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類;ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)等のエピラクナ類;ナガシンクイムシ類;アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)等が挙げられる。
【0020】
鱗翅目害虫としては、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)、ワタノメイガ(Notarcha derogata)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)等のメイガ類;ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類;モンシロチョウ(Pierisrapae)等のシロチョウ類;アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、コドリンガ(Cydia pomonella)等のハマキガ類;モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類;リオネティア属等のハモグリガ類;リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類;コナガ(Plutellaxylostella)等のスガ類;ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類;アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)等のヒトリガ類、イガ(Tinea translucens)、コイガ(Tineola bisselliella)等のヒロズコガ類等が挙げられる。
【0021】
腹足類としてはマイマイ、ナメクジなどが挙げられる。
【0022】
直翅目害虫としては、ケラ、バッタ、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、クロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、トビイロゴキブリ(Periplaneta brunnea)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)などが挙げられる。
【0023】
植物寄生性ダニ類としては、ナミハダニ、ニセナミハダニ、ミカンハダニ、ネダニなどが挙げられる。
【0024】
アザミウマ目害虫としては、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、カキクダアザミウマ(Ponticulothrips diospyrosi)等が挙げられる。
【0025】
双翅目害虫としては、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)等のイエカ類;Aedes aegypti、Aedes albopictus等のエーデス属;Anopheles sinensis等のアノフェレス属;ユスリカ類;イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類;クロバエ類;ニクバエ類;ヒメイエバエ類;タネバエ(Deliaplatura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類;マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)等のハモグリバエ類;ミバエ類;ショウジョウバエ類;チョウバエ類;ブユ類;アブ類;サシバエ類等が挙げられる。
【0026】
膜翅目害虫としては、アリ類;アシナガバチ類;スズメバチ類;アリガタバチ類;カブラハバチ(Athalia rosae)等のハバチ類;チュウレンジハバチ(Arge pagana)等のミフシハバチ類等が挙げられる。
【0027】
隠翅目害虫としては、ネコノミ(Ctenocephalides felis)、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ヒトノミ(Pulex irritans)等が挙げられる。
【0028】
シラミ目害虫としては、コロモジラミ(Pediculus humanus corporis)、ケジラミ(Phthirus pubis)、ヒトジラミ等が挙げられる。
【0029】
等翅目害虫としては、ヤマトシロアリ、イエシロアリなどが挙げられる。
【0030】
半翅目害虫としては、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類;ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)等のヨコバイ類;ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ミカンミドリアブラムシ(Aphis citricola)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)、ナシミドリオオアブラムシ(Nippolachnus piri)、コミカンアブラムシ(Toxoptera aurantii)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera ciidius)等のアブラムシ類;アオクサカメムシ(Nezara antennata)、ホソハリカメムシ(Cletus punctiger)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavetus)、チャバネアオカメムシ(Plautia stali)等のカメムシ類;オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類;アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、シトラススノースケール(Unaspis citri)、クワシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis pentagona)、オリーブカタカイガラムシ(Saissetia oleae)、ミカンノカキカイガラムシ(Lepidosaphes beckii)、ルビーロウムシ(Ceroplastes rubens)、イセリヤカイガラムシ(Icerya purchasi)等のカイガラムシ類;グンバイムシ類;キジラミ類等が挙げられる。
【0031】
ワラジムシ類としては、ワラジムシ(Porcellio scaber)、ホソワラジムシ(Porcellionides pruinosus)、オカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)等が挙げられる。
【0032】
ムカデ類としては、トビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)、アオズムカデ(Scolopendra subspinipes japonica)、アカズムカデ(Scolopendra subspinipes multidens)、ゲジ(Thereuopoda hilgendorfi)等が挙げられる。
【0033】
ヤスデ類としては、ヤケヤスデ(Oxidus gracilis)、オビババヤスデ(Parafontarialaminata laminata)等が挙げられる。
【0034】
本発明組成物及び方法は、有害生物防除に関して共力的作用を有する。この共力的作用は、各薬剤の有する各種病害虫防除特性からは予測し得ない相乗効果に基づくものであり、本発明の有用性は、各薬剤を単独で使用するよりも、有害生物防除効果、特に土壌中の有害生物防除力が明らかに増強されるとともに、即効的な効果が付与される点にあるといえる。
【0035】
本発明の望ましい態様を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)有機リン系殺線虫剤がS−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートであり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオンである前記殺虫・殺線虫剤組成物。
(2)O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを有効成分として含有する前記殺虫・殺線虫剤組成物。
(3)有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオン、イソキサチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、フェニトロチオン、シアノホス、プロフェノホス及びアセフェートから成る群から選ばれる少なくとも1種である(2)の殺虫・殺線虫剤組成物。
(4)有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオン、イソキサチオン、ダイアジノン及びクロルピリホスから成る群から選ばれる少なくとも1種である(2)の殺虫・殺線虫剤組成物。
(5)S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを害虫又は害虫の生息場所に処理することを特徴とする害虫の防除方法。
(6)有機リン系殺線虫剤がS−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートであり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオンである(5)に記載の方法。
(7)有機リン系殺線虫剤がO−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種であり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオン、イソキサチオン、ダイアジノン及びクロルピリホスから成る群から選ばれる少なくとも1種である(5)に記載の方法。
【実施例】
【0036】
次に本発明の実施例を記載する。
【0037】
【表1】

【0038】
試験例1
オニオンパウダーに水を1:10の割合で加えて十分に攪拌する。8cmろ紙をパウダー懸濁液に浸して風乾燥後、8cmシャーレに3枚重ねて詰め、所定濃度の有機リン系殺線虫剤及び/又は有機リン系殺虫剤の薬液2mlを加える。シャーレ当りネダニ雌成虫を50頭接種して蓋をし、25℃恒温室で静置する。48〜72時間後に実体顕微鏡下で観察し、生死判定を行って死虫率を求める。
死虫率(%)={1-(生存頭数/放虫頭数)}×100
また、コルビーの式により死虫率の理論値(%)を計算できる。死虫率の実験値(%)が理論値(%)よりも高い場合に、本発明の組成物は、ネダニの防除に関し相乗効果を有する。
有機リン系殺線虫剤:有機リン系殺虫剤=10:1〜1:50の範囲内で、死虫率の実験値が理論値よりも高い値を示す。
【0039】
試験例2
壌土3:砂1:腐食土1を混合した試験土壌を作成し、300mlプラスチック製容器に土壌を200gずつ入れ、有機リン系殺線虫剤及び/又は有機リン系殺虫剤を所定濃度で添加混合する。コガネムシ孵化直後幼虫を10頭ずつ放し、暗黒下25℃恒温室にて5〜10日静置した後、土壌を解体し生存する幼虫数を計数し死虫率を求める。
死虫率(%)={1-(生存頭数/放虫頭数)}×100
また、コルビーの式により死虫率の理論値(%)を計算できる。死虫率(%)が理論値(%)よりも高い場合に、本発明の組成物は、コガネムシの防除に関し相乗効果を有する。
有機リン系殺線虫剤:有機リン系殺虫剤=10:1〜1:50の範囲内で、死虫率の実験値が理論値よりも高い値を示す。
【0040】
試験例3
水田土4:砂1を混合した砂壌土3リットルを1/5000aポットに入れ、有機リン系殺線虫剤及び/又は有機リン系殺虫剤を所定濃度で添加混合した。薬剤添加直後に、線虫(サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita))汚染土壌500ccを各々のポットに接種し、充分混和後トマト(品種:強力米寿)苗を移植した。移植44日後に線虫のネコブ着生程度(0〜100%着生)を調査した。結果を第1表に示す。また、コルビーの式によりネコブ着生程度の理論値(%)を計算した。ネコブ着生程度(%)が理論値(%)よりも低い場合に、本発明の組成物は、線虫の防除に関し相乗効果を有する。こういった場合における理論値(%)を第1表の( )内に併せて示した。試験は2連制で行った。
【0041】
【表2】

【0042】
試験例4
移植49日後に線虫のネコブ着生程度を調査したことと、試験を3連制で行ったこと以外は、試験例3と同様にして、試験を行った。結果を第2表に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
試験例5
水田土4:砂1を混合した砂壌土3リットルを1/5000aポットに入れ、有機リン系殺線虫剤及び/又は有機リン系殺虫剤を所定濃度で添加混合した。薬剤添加直後に、線虫(キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)汚染土壌500ccを各々のポットに接種し、充分混和後ゴボウ(品種:滝野川牛蒡)苗を移植した。移植49日後又は55日後に線虫のネグサレ被害程度(0〜100%被害)を調査した。結果を第3表及び第4表に示す。また、コルビーの式によりネグサレ指数程度の理論値(%)を計算した。ネグサレ被害程度(%)が理論値(%)よりも低い場合に、本発明の組成物は、線虫の防除に関し相乗効果を有する。こういった場合における理論値(%)を第3表及び第4表の( )内に併せて示した。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
試験例6
蒸留水にて所定濃度に希釈した薬液中にサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫40〜50頭を浸漬処理して25℃の恒温室に48時間保った。顕微鏡下にて薬液中のサツマイモネコブセンチュウ総個体数(A)、及び薬液中で15秒間動かなかった個体数(B)を調査した。また、薬液に代えて蒸留水を用いた対照区についても、総個体数(A')、及び15秒間動かなかった個体数(B')を調査した。これらの値から、以下の式により運動阻害率を求めた。結果を第5表〜第7表に示す。
運動阻害率(%)=[1−{(1−B/A)/(1−B'/A')}]×100
また、コルビーの式により運動阻害率の理論値(%)を計算した。運動阻害率(%)が理論値(%)よりも高い場合に、本発明の組成物は、線虫の防除に関し相乗効果を有する。こういった場合における理論値(%)を第5表〜第7表の( )内に併せて示した。
【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
製剤例1
(1)ホスチアゼート原体 1.7重量部
(2)クロルピリホス原体 1.2重量部
(3)ニューカルゲンEX-70(ジオクチルスルホサクシネート;竹本油脂(株)製)
1.0重量部
(3)シルバーW(微粉炭酸カルシウム;白石カルシウム(株)製) 10.0重量部
(4)炭酸カルシウム 86.1重量部
上記(1)〜(4)の混合物に、1%セロゲン703A(カルボキシメチルセルロースソーダ塩;第一工業製薬(株)製)水溶液を加えて混練した後、0.8mmφのスクリーンを装着したドーム型造粒機(DG-L1;不二パウダル(株)製)で押出し造粒し、70℃の気流化で乾燥した後、0.3mm〜1.00mmの大きさに整粒し、粒剤とする。
【0052】
製剤例2
(1)ホスチアゼート原体 11重量部
(2)クロルピリホス原体 22重量部
(3)ソルポール4296A
(ノニオン系およびアニオン系配合界面活性剤;東邦化学(株)製) 12重量部
(4)ソルベッソ150(芳香族系溶媒;エクソンモービル社製) 55重量部
上記(1)〜(4)を混合、溶解し、乳剤とする。
【0053】
製剤例3
ホスチアゼート原体50重量部とダイアジノン原体50重量部の混合液3.4重量部を、16〜50メッシュの珪石粒(東海工業(株)製)96.6重量部に吸油、混合し、粒剤とする。
【0054】
製剤例4
(1)ホスチアゼート原体 16重量部
(2)ダイアジノン原体 27重量部
(3)ソルポールT-15(ノニオン系界面活性剤;東邦化学(株)製) 12重量部
(4)Rhodacal 70(アニオン系界面活性剤;ローディア日華(株)製) 2重量部
(5)ソルベッソ150 43重量部
上記(1)〜(5)を混合、溶解し、乳剤とする。
【0055】
製剤例5
ホスチアゼート原体60重量部とイソキサチオン原体40重量部の混合液2.9重量部を、180〜710μmの粒度の珪石粒(東海工業(株)製)97.1重量部に吸油、混合し、微粒剤Fとする。
【0056】
製剤例6
(1)カズサホス原体 3.5重量部
(2)クロルピリホス原体 1.2重量部
(3)トプコパーライト#54(東興パーライト工業(株)製) 7重量部
(4)ベントナイト 10重量部
(5)クレー 78.3重量部
上記(1)〜(5)の混合物に、20%に稀釈したサンエキスC(リグニンスルホネート;日本国策パルプ(株)製)水溶液を加えて混練し、0.8mmφのスクリーンを装着したドーム型造粒機(DG-L1)で押出し造粒し、更に70℃の気流化で乾燥した後、0.3mm〜1.00mmの大きさに整粒し、粒剤とする。
【0057】
製剤例7
カズサホス原体75重量部とイソキサチオン原体25重量部の混合液4.7重量部を、軽石(石川ライトNo.3;石川ライト工業(株))95.3重量部に吸油、混合し、カズサホスとイソキサチオンを含む粒剤とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを有効成分として含有することを特徴とする殺虫・殺線虫剤組成物。
【請求項2】
有機リン系殺線虫剤がS−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートであり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオンである請求項1に記載の殺虫・殺線虫剤組成物。
【請求項3】
O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを有効成分として含有する請求項1に記載の殺虫・殺線虫剤組成物。
【請求項4】
有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオン、イソキサチオン、ダイアジノン及びクロルピリホスから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の殺虫・殺線虫剤組成物。
【請求項5】
S−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアート、O−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系殺線虫剤と、有機リン系殺虫剤とを害虫又は害虫の生息場所に処理することを特徴とする害虫の防除方法。
【請求項6】
有機リン系殺線虫剤がS−sec−ブチル O−エチル 2−オキソ−1,3−チアゾリジン−3−イルホスホノチオアートであり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有機リン系殺線虫剤がO−エチル−S−n−プロピル(2−シアノイミノ−3−エチル−イミダゾリジン−1−イル)ホスホノチオレート及びS,S−ジ−sec−ブチル O─エチル ホスホロジチオアートから成る群から選ばれる少なくとも1種であり、有機リン系殺虫剤がピリダフェンチオン、イソキサチオン、ダイアジノン及びクロルピリホスから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2007−269787(P2007−269787A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56907(P2007−56907)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】