説明

殺虫剤組成物およびスプレー式殺虫剤

【課題】引火の危険性や溶剤の臭気等の問題が無く、耐水性に優れ、液ダレが発生せず、スプレー性が良好な殺虫剤組成物およびこれを用いたスプレー式殺虫剤を提供する。
【解決手段】
下記の(A)、(B)及び(C)成分を含有する殺虫剤組成物である。
(A)数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維
(B)殺虫剤成分
(C)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫剤組成物およびスプレー式殺虫剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、殺虫剤は、防疫用途、有害・不快害虫の駆除、農業用途、園芸用途等に用いられている。その施用の簡便性から、特に家庭においては、スプレー式の殺虫剤が好まれて使用される。
【0003】
従来のスプレー式の殺虫剤としては、成分として殺虫剤成分を溶解させる目的で、ケロシンや灯油などの溶剤が配合された殺虫剤組成物が開示されている(特許文献1、特許文献2)。溶剤が配合された殺虫剤組成物にあっては、引火の危険性や溶剤の臭気等の問題があるため、これらの溶剤に起因する問題点を解決するために、溶剤を配合せず、水性懸濁組成物とする方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−60295号公報
【特許文献2】特開2008−94769号公報
【特許文献3】特開平2000−119103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のものは前述の通り、配合される溶剤に起因する引火の危険性や溶剤の臭気等の問題がある。
【0006】
特許文献3に記載のものにおいては、溶剤配合に起因する問題は解決されるが、
該組成物がスプレーできるかどうかについての記載はない。
さらに、溶剤を配合しない替わりに、殺虫剤有効成分を水中に安定に乳化・懸濁させるために、多量の界面活性剤を乳化剤として添加するため、経済的でなく、特に、殺虫剤組成物を屋外で使用した場合、耐水性がないため、雨や水分により施用した殺虫剤組成物が流出して、殺虫効果の持続性が低下するという問題点があった。
さらに、従来の特許文献1ないし3に記載のものは殺虫剤組成物の粘度が低いため、施用後の液ダレが発生し、殺虫剤組成物を直接に駆除害虫に吹きかけて施用する場合には、駆除害虫への付着性が悪く、殺虫効果が悪化する。駆除害虫の生息領域に吹きかけて施用する場合、特に垂直面や駆除害虫の巣に施用する場合には液ダレにより有効に利用されない殺虫剤組成物が発生し、殺虫効果が低下するという問題があった。
このような液ダレの問題を解決する目的で、増粘剤を添加して、殺虫剤組成物の粘度を上げると、今度は、スプレーが困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、引火の危険性や溶剤の臭気等の問題が無く、耐水性に優れ、液ダレが発生せず、スプレー性が良好な殺虫剤組成物およびこれを用いたスプレー式殺虫剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)、(B)及び(C)成分を含有する殺虫剤組成物を第一の要旨とする。
(A)数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維 (B)殺虫剤成分
(C)水
すなわち、本発明者らは、引火の危険性や溶剤の臭気等の問題が無く、耐水性に優れ、液ダレが発生せず、スプレー性が良好な殺虫剤組成物およびこれを用いたスプレー式殺虫剤を得るために、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維を用いると、耐水性に優れ、液ダレが発生せず、スプレー性が良好であることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の殺虫剤組成物は、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維を配合することにより、上記特定のセルロース繊維は従来知られている増粘剤に較べてチキソトロピーインデックスが大きいことに起因して、粘度があってスプレー噴霧可能な殺虫剤の提供が可能となり、駆除対象害虫に直接スプレーした場合には害虫への殺虫剤組成物の付着効率が良く、施用対象物にスプレーした場合には垂直面であっても液ダレが発生せず、殺虫剤組成物の利用効率が高いため、殺虫性能が高く、殺虫効果が長時間持続するという、優れた効果を発揮する。
さらに、本発明の殺虫剤組成物は上記特定のセルロース繊維のチキソトロピーインデックスが大きいこと、一般に油性物質である殺虫剤成分に対する乳化分散性が良いことに起因して、殺虫剤成分を溶解させるための灯油やケロシン等の溶剤を減量または配合せずに、水系の殺虫剤組成物とすることが可能となるので、製剤の乳化分散安定性に優れ、製剤の溶剤臭が軽減され、人体に対する安全性、使用時の安全性に優れるという優れた効果を発揮する。加えて、上記特定のセルロース繊維は油性物質を水中に乳化・分散させる能力に優れているため、殺虫剤剤成分を溶解させるための灯油やケロシン等の溶剤を減量または配合しない場合においても、油性の殺虫剤成分を水系に乳化分散させるための乳化剤(界面活性剤)の添加量を減量または配合しないことが可能となるので、経済的であり、殺虫剤組成物を屋外で使用した場合に、耐水性が向上し、雨や水分により施用した殺虫剤組成物の流出が減少し、ひいては殺虫効果が持続するという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の殺虫剤組成物は、特定のセルロース繊維(成分A)と、殺虫剤成分(成分B)と、水(成分C)とを用いて得ることができる。
【0012】
上記特定のセルロース繊維(成分A)は、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維である。以下、さらに詳しく、本発明の組成物に使用するセルロース繊維について説明する。
【0013】
上記特定のセルロース繊維(成分A)は、I型結晶構造を有する天然物由来のセルロース固体原料を表面酸化し、ナノサイズにまで微細化した繊維である。原料となる、天然物由来のセルロースはほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが多束化して高次構造を取っているため、そのままでは容易にはナノサイズにまで微細化して分散させることができない。上記特定のセルロース繊維(成分A)はその水酸基の一部を酸化しアルデヒド基およびカルボキシル基を導入し、ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めて、分散処理し、ナノサイズにまで微細化したものである。
【0014】
上記特定のセルロース繊維(成分A)の繊維径は、数平均繊維径が2〜150nmである。分散安定性の点から、さらに好ましくは、数平均繊維径が3〜80nmである。数平均繊維径が2nm未満であると、本質的に分散媒体に溶解してしまい、逆に数平均繊維径が150nmを超えると、セルロース繊維そのものの分散安定性が悪く、セルロース繊維を配合することによる機能性を発現することができない。
上記数平均繊維径は、例えば次のようにして測定することができる。すなわち、上記特定のセルロース繊維(成分A)に水を加え希釈した試料を分散処理した後、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、得られた画像から、数平均繊維径と最大繊維径を測定算出することができる。
上記特定のセルロース繊維(成分A)を構成するセルロースが、I型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークを持つことから同定することができる。
上記特定のセルロース繊維(成分A)のカルボキシル基の量は、好ましくは0.6〜2.0mmol/gの範囲である。カルボキシル基の量が0.6mmol/g未満であると、セルロース繊維の分散安定性に乏しく、セルロース繊維の沈澱を生じる場合があり、また疎水性固体の分散安定性が低下する。カルボキシル基の量が2.0mmol/g以上であると、セルロース繊維の水溶性が強くなり、使用感が低下する傾向にある。
上記特定のセルロース繊維(成分A)のカルボキシル基量の測定は、例えば電位差滴定により行うことができる。すなわち、乾燥させたセルロース繊維を水に分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液を加えて、十分に攪拌してセルロース繊維を分散させる。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、セルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出することができる。
【0015】
なお、上記カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより、行うことができる。
上記特定のセルロース繊維(成分A)を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうかは、例えば、13C-NMR分析により確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C-NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れることで確認できる。
次に、本発明の殺虫剤組成物には、上記特定のセルロース繊維(成分A)とともに殺虫剤成分(成分B)が用いられる。
上記殺虫剤成分(成分B)は特に限定されるものではなく、例えば社団法人日本植物防疫協会発行の農薬要覧(2008年版)に記載されている殺虫剤有効成分や、有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、昆虫成長制御剤、その他の合成殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、くん蒸剤、生物由来の殺虫剤、等が挙げられる。
さらに具体的に化合物名で例示するとジノテフラン、d,d−T−シフェノトリン、トリクロルホン、カルタップ、アセタミプリド、ニテンピラム、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、プロポクスル、ピメトロジン、フェニトロチオン、フェンチオン、メトフルトリン、アミドフルメト、除虫菊エキス、ピレトリン、d−アレスリン、フタルスリン、フラメトリン、プラレトリン、テラレスリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、サイペルメトリン、サイフェノトリン、トランスフルスリン、フェンフルスリン、エンペントリン、ピリミホスメチル、フェニトロチオン、メトフルトリン、ピリダフェンチオン、プロポクスル、カルバリル、メトキサジアゾン、S−1295、イミプロトリン、フィプロニール、メトプレン、S−ハイドロプレン、ピリプロキシフェン、2−[1−メチルー2−(フェノキシフェノキシ)エトキシ]ピリジン、ジフルベンズロン、テフルベンズロンなどが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0016】
本発明の殺虫剤組成物には、上記特定のセルロース繊維(成分A)および殺虫剤成分(成分B)に加えて、水(成分C)が用いられる。本発明の殺虫剤組成物においては、セルロース繊維(成分A)と殺虫剤成分(成分B)、下記の任意成分の含有量を除いた残量が水(成分C)の含有量となる。
本発明の殺虫剤組成物には、その効果を妨げない範囲内において、任意の成分を添加しても良い。
任意の成分としては、次の通りである。すなわち、粘土鉱物類、充填剤;充填剤、顔料、染料;界面活性剤類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、芳香族類、等の水と混和し得る溶剤および水と混和しない溶剤類;ジオール化合物、グリセリンとその誘導体、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ショ糖、ブドウ糖、果糖、等のグリコール類や糖類;天然水溶性高分子、合成水溶性高分子、セルロース誘導体、アクリル系ポリマー、等の水溶性高分子類;シリコンオイル類、植物油、動物油、合成油、等のオイル類;防腐剤・保存安定剤、無機塩類、紫外線遮蔽剤、ラテックス類、エマルジョン類、消泡剤、pH調整剤、香料類・消臭剤類、生薬類、DEETなどの忌避剤、殺菌剤、肥料等が挙げられる。
これらの任意の成分のうち、界面活性剤類については、殺虫剤の耐水性を低下させるので、最少必要量での添加が好ましい。
これらの任意の成分のうち、溶剤類については、殺虫剤の安全性と臭気の観点から、最少必要量での添加が好ましい。
これらの任意の成分のうち、水溶性高分子については、殺虫剤のスプレー性を低下させる場合があるので、最小必要量での添加が好ましい。
【0017】
任意の成分である粘土鉱物類としては、アルミナ、ジルコニア、蛙目粘土、カオリナイト、カオリン、カルシウムベントナイト、クロマイトサンド、けい砂、けい砂シリカ、珪酸ジルコニウム、けい石粉、珪藻土、窒化アルミニウム、炭酸バリウム、サポナイト、ダイヤモンド、コレマナイト、酸化ガドリニウム、酸化ランタン、シャモット、焼成珪藻土、シラス、シラスバルーン、シリコンカーバイド、ジルコン砂、ジルコン、ジルコンフラワー、水酸化アルミニウム、ゼオライト、石英ガラス粉、セリウム研磨剤、セリサイト、ソジウムベントナイト、ソジウムモンモリトナイト、炭化ホウ素、窒化珪素、長石粉、陶石、ハロサイト、硼砂、マグネシア、木節粘土、蝋石、パーライト、セメント、等が挙げられる。
【0018】
任意の成分である充填剤・顔料・染料としては、亜鉛華、亜酸化銅、一酸化鉛、ウィスカー状炭酸カルシウム、ウォッチングレッド、マイカ、塩素法酸化チタン顔料、オイルファーネスブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、オキシサルファイド蛍光体、カオリンクレー、滑石、石筆石、石鹸石、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、燐酸カルシウム、ガラスビーズ、球状アルミナ、群青、硅灰石、ワラストナイト、蛍光顔料、軽質炭酸カルシウム、合成ハイドロタルサイト、合成マイカ、黒鉛、黒色酸化鉄、極微細炭酸カルシウム、コバルト青、コバルト緑、コバルト紫、胡粉、紺青、サーマルブラック、酸化クロム、酸化チタン(アタナース)、酸化チタン(ルチル)、酸化テルビウム、酸化銅、ジスアゾイエロー、重質炭酸カルシウム、焼成クレー、シルクパウダー、消石灰、赤色酸化鉄、セリナイト、造粒カーボンブラック、炭化ケイ素ウイスカー、炭酸カルシウム、炭素繊維(粉状)、窒化ケイ素ウイスカー、窒化ホウ素、茶色酸化鉄、チャンネルブラック、超微粒アルミナ、超微粒酸化亜鉛、超微粒子状酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、鉄黒、天然黒鉛粉末、天然土状黒鉛、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ドロマイト粉末、ナイロン粉体、パーマネントレッド、バナデート蛍光体、表面処理硫酸バリウム、微粒子酸化チタン、微粒子硫酸バリウム、微粒子水酸化アルミニウム、ファストイエロー10G、フッ化カーボン、ベンガラ、ポリエチレンワックス、ホワイトカーボン、丸味状アルミナ、モリブデンレッド、有機ベントナイト、溶融シリカ、ロウ石、六方晶窒化ホウ素、等が挙げられる。
任意の成分である界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、が挙げられる。
前記アニオン界面活性剤としては、アルキル(炭素数10〜15)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(炭素数6〜18)硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル硫酸エステル塩、脂肪酸(炭素数6〜18)塩、アルカン(炭素数6〜18)スルホン酸塩、オレフィン(炭素数8〜18)スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、アルキル(炭素数6〜18)スルホコハク酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテルスルホコハク酸塩 、アルキル(炭素数6〜18)リン酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル酢酸塩、等が挙げられる。上記の塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニア、アルカノールアミンなどのアミン、等が挙げられる。
前記非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル、 ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)アシル(炭素数6〜18)エステル、アルキル(炭素数6〜18)ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜100モル)トリグリセリド(脂肪酸炭素数6〜18)エーテル、ソルビタン脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、ショ糖脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)ソルビタン脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、アルキル(炭素数6〜18)ポリグリコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、等が挙げられる。
【0019】
前記カチオン界面活性剤としては、モノアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、ジアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、トリアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、アルキル(炭素数6〜18)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数6〜18)ジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(炭素数6〜18)ジメチルアミノプロピルアミド、等が挙げられる。上記の塩としては、塩素、臭素等のハロゲンが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、アルキル(炭素数6〜18)ベタイン、脂肪酸(炭素数6〜18)アミドプロピルベタイン、2−アルキル(炭素数6〜18)−N−カルボキシルメチル−N−ヒドロキシエチル−イミダゾリニウムベタイン、アルキル(炭素数6〜18)ジエチレントリアミノ酢酸、ジアルキル(炭素数6〜18)ジエチレントリアミノ酢酸、アルキル(炭素数6〜18)アミンオキシド、等が挙げられる。
【0020】
上記特定のセルロース繊維(成分A)は、例えば、次のようにして作成することができる。すなわち、木材パルプ等の天然セルロースを、水に分散させてスラリー状としたものに、臭化ナトリウム、N-オキシラジカル触媒を加え、十分攪拌して分散・溶解させる。つぎに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の共酸化剤を加え、pH10〜11を保持するように0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpH変化がなくなるまで反応を行う。上記反応により得られたスラリーから未反応原料、触媒等を除去するために、水洗、ろ過を行い精製する。目的とするセルロース繊維は、繊維表面が酸化された特定のセルロース繊維の水分散物として得られる。
【0021】
上記N-オキシラジカル触媒としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジンノオキシラジカル(TEMPO)、4-アセトアミド-TEMPO等が挙げられる。特に好ましくは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンノオキシラジカル(TEMPO)である。上記N−オキシラジカル触媒の添加量は触媒量で十分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは、0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
【0022】
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N-オキシラジカル触媒に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
【0023】
本発明の殺虫剤組成物は、上記のようにして得られたセルロース繊維の水分散体、殺虫剤成分、および、必要であれば、濃度調整用の水、その他の任意の添加物を混合・分散することにより殺虫剤組成物を調製し、得られた殺虫剤組成物を容器に充填することで得られる。
【0024】
その混合方法に制約はないが、例えば、真空乳化装置、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、湿式粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等から選択して用いることができる。任意の添加剤の物理化学的性質に応じて、また目的とする組成物の物性が得られるように、混合・分散装置の種類と操作条件を選択する。
例えば、混合時に、超高圧ホモジナイザー等の分散力の強い装置を用いると、透明度の高い組成物が得られる。
殺虫剤成分(成分B)の配合量は、施用対象によって異なる。園芸・農業以外での有害害虫や不快害虫の駆除目的には、通常0.01%〜5%、好ましくは0.05%〜3%の範囲内である。園芸・農業用途においては、通常0.00001%〜3%、好ましくは0.0001%〜1%の範囲内である。この範囲以下では、十分な殺虫効果が得られず、この範囲以上添加しても、添加量に見合うだけの殺虫効果が得られない。
上記特定のセルロース繊維(成分A)の配合量は、通常0.1%〜5%、好ましくは0.2%〜3%の範囲内である。0.1%以下では殺虫剤組成物の粘度が低く、液ダレが発生するので好ましくない。5%以上では殺虫剤組成物の粘度が高過ぎて、製造時のハンドリングが悪化するので好ましくない。
本発明の殺虫剤組成物の粘度は、1,000mPa・s〜100,000mPa・sの範囲であり、好ましくは2,000mPa・s〜80,000mPa・sの範囲である。
【0025】
ここでいう粘度とは、BH型粘度計を用い、25℃にて、ローター番号4番(粘度80,000mPa・s未満)またはローター番号5番(粘度80,000mPa・s以上)、2.5rpm、で180秒後に測定される粘度のことをいう。
【0026】
本発明の殺虫剤組成物の粘度を高くして、ゲル状やクリーム状に仕上げる場合には上記特定のセルロース繊維(成分A)の添加量を多くすることで対応できる。逆に流動性を持たせたい場合には、液ダレが発生しない範囲内で、上記特定のセルロース繊維(成分A)の添加量を減らせば良い。
【0027】
本発明の殺虫剤組成物を充填するスプレー容器としては、何らの制限はなく、スプレー・噴霧機能を有する容器として、本発明の殺虫剤剤組成物を容易に充填でき、スプレーとして機能するものであればよいが、汎用性やスプレー精度の高さを考慮すると、特に以下の3つのスプレー容器(1)〜(3)であることが好ましい。
(1)噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー容器:本スプレー容器は、大気圧でスプレーでき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので安全性が高く、携帯用に向くスプレー容器である。構造は吸い上げ式のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルと、これを固定し、内容物を充填するねじ式容器からなる。ここでいうディスペンサー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるためにポンプ式ノズルの孔径やポンプの1回あたりの押し出し体積等に依存するが、これらの条件は、施用対象物や対象害虫に応じて、選定、調整する。
(2)トリガー式スプレー容器:トリガー式スプレー容器は、内容物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたものであり、大気圧でスプレーを操作でき、スプレー容器として汎用性の高いものである。ここでいう、トリガー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるために、トリガー式スプレー容器の一部を改良したものも全て含まれる。
(3)エアゾール式スプレー容器:エアゾール式スプレー容器は、容器内へ噴射剤を充填することによって、上記2つのスプレー装置では実現できない連続スプレーを可能とするものである。ここでいうエアゾール式スプレー容器には、エアゾール式容器の噴射装置部分に改良を施したもの等もすべて含まれる。一般的に本スプレー容器を用いたスプレーでは、大気圧下で実施する上記2つのスプレーに比べ、より細かな霧が可能となる。エアゾール式スプレー容器で使用する噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等を挙げることができ、これらは単独であるいいは2種以上併用して用いられる。
【0028】
本発明の殺虫剤組成物の殺虫対象害虫としては、何ら制約はなく、蚊、ブヨ、蝿、サシバエ、ダニ、ノミ、ナンキンムシ、蜂、アブ、蟻、白蟻、ツツガムシ、ゴキブリ、ムカデ、コガネムシ、イガ、コイガ、クモ、ナメクジ、ワラジムシ、ダンゴムシ、カメムシ、ゲジゲジ、等の衛生害虫や不快害虫類、フタオビコヤガ、イネドロオイムシ、ハスモンヨトウ、ミツモンキンウワバ、ヨトウガ、モンシロチョウ、コナガ、ウリハムシ、ウスカワマイマイ、スジキリヨトウ、イチモンジセセリ、コブノメイガ、ハマキムシ、シバツトガ、イネハモグリバエ、イネヒメハモグリバエ、マメハモグリバエ、ミカンハモグリバエ、キンモンホソガ、ニカメイガ、アワノメイガ、シバオサゾウムシ、ゴマダラカミキリ、キボシカミキリ、コウモリガ、スカシバガ、マメシンクイガ、シロイチモジマダラメイガ、ウリミバエ、ナシヒメシクイ、モモシンクイガ、モモノゴマダラノメイガ、ウンカ、ヨコバイ類、アブラムシ類、オンシツコナジラミ、ツヤアオカメムシ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハダニ類、カイガラムシ類、ミドリヒメヨコバイ、チガヤシロオカイガラムシ、イネミズゾウムシ、タネバエ、ネアブラムシ、コガネムシ類、線虫類、キスジノミハムシ、タマネギバエ、ネキリムシ、等の作物害虫類等が挙げられる。
【0029】
本発明の殺虫剤組成物の施用対象としては、何ら制約はなく、衣類、台所、床、壁、家具、などの屋内駆除対象害虫および害虫の巣、外壁、網戸、屋根、軒、などの建築物、屋外の非農耕地における樹木や地面、構造物、農耕地、農作物、園芸作物、等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
先ず、実施例に先立ち、次のようにしてセルロース繊維を作成した
〔セルロース繊維T1(実施例用)の作成〕
針葉樹パルプ2g(乾燥重量)に対し水150g、臭化ナトリウム0.025g、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加え十分攪拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.4mmol/g-セルロースとなるように加え、pHを10〜11に保持するように0.5規定水酸化ナトリウム溶液を滴下しながらpH変化が見られなくなるまで反応させた。(反応時間は120分)反応終了後、0.1規定塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。
〔セルロース繊維T2、T3(実施例用)、セルロース繊維H1、H2(比較例用)の作成〕
添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量および反応時間を、下記の表1に示すとおりに変更する以外は、セルロース繊維T1の作製に準じて、各セルロース繊維を作製した。
【0032】
【表1】

このようにして得られたセルロース繊維T1〜T3(実施例用)、セルロース繊維H1、H2(比較例用)を用い、下記の基準に従って各項目の測定を行った。これらの結果を、上記の表1に併せて示した。
<数平均繊維径>
セルロース繊維に水を加え希釈した試料を真空乳化装置を用いて12000rpmで15分間分散させた後、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM-1400)で観察し、得られた画像(倍率10000倍または50000倍)から、数平均繊維径を測定算出した。
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維表面のカルボキシル基の定量は、電位差滴定により行った。すなわち、乾燥させたセルロース繊維0.3gを水55mlに分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて、十分に攪拌してセルロース繊維を分散させた。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、セルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出した。
<アルデヒド基量の測定>
セルロース繊維(試料)表面のアルデヒド基量は、以下のようにして測定した。
すなわち、資料を水に分散させ、酢酸酸性下で亜塩酸ナトリウムを用いてアルデヒド基を全てカルボキシル基まで酸化させた試料のカルボキシル基量を測定し、酸化前のカルボキシル基量との差をもってアルデヒド基量とした。
<セルロースI型結晶構造の確認>
上記各セルロース繊維がI型結晶構造を有することの確認を次のようにして確認した。すなわち、広角X線回折像測定により得られた回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークを持つことからI型結晶構造を有することを確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)、セルロース繊維H1、H2(比較例用)はI型結晶構造を有することを確認した。
<アルデヒド基およびカルボキシル基の確認>
各セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうか、次のようにして確認した。すなわち、酸化前のセルロースの13C-NMRチャートで確認されたグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れたことを確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)、セルロース繊維H1、H2(比較例用)は、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が酸化されてなるカルボキシル基およびアルデヒド基も有することが確認された。
【0033】
つぎに、上記で得られたセルロース繊維(T1〜T3、H1、H2)を用いて、以下のようにしてスプレー式殺虫剤を調整した。
〔実施例1〕
上記セルロース繊維T1を固形分換算で1.2重量部(以下「部」と略す)、殺虫剤成分としてイミプロトリン1.2部およびレスメトリン0.1部計量し、水を加えて100部とした。つぎに、真空乳化装置を用いて、12000rpmで15分間処理して、殺虫剤組成物を得た。得られた殺虫剤組成物を500ml容量のトリガースプレー容器に充填し、スプレー式殺虫剤を製造した。
〔実施例2〜7、比較例1〜4〕
下記の表2に示すように、各成分の種類および配合量を変更する以外は、実施例1に準じて、スプレー式殺虫剤を製造した。
【0034】
【表2】

【0035】
このようにして得られた各スプレー式殺虫剤を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記の表2に併せて示した。
(粘度の評価)
殺虫剤組成物を、BH型粘度計を用い、25℃にて、ローター番号5番、2.5rpm、で180秒後に測定される粘度を測定した。
(分散安定性の評価)
得られた殺虫剤組成物を、40℃で1ヵ月放置した後、下記の判定基準に従い、組成物の分離状態を目視で判定した。
◎:全く分離が認められない。
○:ほとんど分離が認められない。
△:僅かに分離が認められる。
× :完全に分離している。
(スプレー性の評価)
得られたスプレー式殺虫剤をスプレーし、霧の分散状態を、下記の判定基準に従い、目視で判定した。
【0036】

◎:細かい霧状となってスプレーされる
○:液滴となってスプレーされる
△:棒状に噴出する
×:ノズルからタレ落ちる、または、ノズルから出ない
(液ダレ性の評価)
得られたスプレー式殺虫剤を垂直面にスプレーし、垂直面に付着した殺虫剤組成物の液ダレの程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:全く液ダレがない
○:ほとんど液ダレがない
△:僅かに液ダレがある
×:明らかに液ダレがある
(耐水性の評価)
得られた殺虫剤剤をガラス板にスプレーして乾燥させ、皮膜を形成させた後、40℃の水に浸漬し、皮膜の崩壊状態を、下記の判定基準に従い目視で判定した。
◎:全く皮膜が崩壊しない。
○:ほとんど皮膜が崩壊しない。
△:しばらくして皮膜が崩壊する。
× :ただちに皮膜が崩壊する。
【0037】
上記表2の結果から明らかなように、実施例1〜7品はいずれも分散安定性、スプレー性、液ダレ性、耐水性が良好であった。尚、実施例1〜3品に含有されるセルロース繊維(T1〜T3)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、殺虫剤成分等の配合前と実質的変化は無かった。また、本発明者らは、上記セルロース繊維T1〜T3に代えて、カルボキシル基量が0.6mmol/g(下限)のセルロース繊維、及びカルボキシル基量が2.0mmol/g(上限)のセルロース繊維を用いた場合にも、セルロース繊維T1〜T3を用いた場合と同様の優れた効果が得られることを実験により確認している。
これに対して、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、セルロース繊維H1を用いた比較例1品はセルロース繊維中のカルボキシル基量が0.5mmol/gと低いため、殺虫剤組成物の粘度が600mPa・sと低く、分散安定性と液ダレ性が実施例品より劣っていた。また、セルロース繊維H2を用いた場合はセルロース繊維中のカルボキシル基量が2.2.mmol/gと高いため、分散安定性とスプレー耐水性が実施例品より劣っていた。
【0038】
実施例品のセルロース繊維T1〜T3のかわりに、キサンタンガムを用いた比較例品3は分散安定性、スプレー性、液ダレ性、耐水性ともに、実施例品より劣っていた。
【0039】
実施例品のセルロース繊維T1〜T3のかわりに、乳化分散剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた比較例品4は殺虫剤組成物の粘度発現が不十分であるため、スプレー性は良好であるが、液ダレ性、耐水性が実施例品より劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の活用例として、家庭用、業務用、産業用途において、防疫用、有害・不快害虫の駆除用、農業用、園芸用等のスプレー式殺虫剤として利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)及び(C)成分を含有することを特徴とする殺虫剤組成物
(A)数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gであるセルロース繊維
(B)殺虫剤成分
(C)水
【請求項2】
上記(A)成分のセルロース繊維が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであることを特徴とする請求項1記載の殺虫剤組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2の殺虫剤組成物を充填してなるスプレー式殺虫剤。















【公開番号】特開2011−57569(P2011−57569A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205892(P2009−205892)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】