説明

母乳パッドおよびその製造方法

【課題】防水材の熱変形による硬い感触となってしまうことを回避して、型保持性能に優れた母乳パッドを提供すること。
【解決手段】液体を吸収する吸収体12と、この吸収体より外側に配置された防水材11とを積層して本体を形成する母乳パッドであって、前記本体の前記防水材と前記吸収体との間に防水材を構成する素材の融点よりも低い融点を備える素材でなる支持部材19を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、授乳期の母親が、ブラジャー等の下着と乳房との間に介装するための母乳パッドの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような母乳パッドは、例えば図5に示すように使用されている。
図において、ブラジャー2の各カップ3,3の内側には、ほぼ円形のドーム状でなる母乳パッド1,1がひとつずつ介装されるようになっている。
【0003】
このような母乳パッド1,1は、正面図である図6及び側面図である図7に示すように、円形のドーム状に形成されており、厚み方向に複数の柔軟材料を積層して構成されている。すなわち、母乳パッド1は、使用者の肌と直接接触する内側表面に表面材を配置し、その次に吸収材を配置し、少なくとも外側には液体が吸収材からしみ出て着衣を汚すことがないように防水材料が積層されて構成されている。
【0004】
この場合、上記防水材としては、防水性能を有し、かつ後述する加熱変形工程において、熱成形できるように、例えば、複数のポリエチレン材料を積層してなるポリエチレンラミネート紙が使用されている。
【0005】
また、この防水材料の表面側の所定の位置には、接着剤等を適用した接着部4が設けられており、図5に示すようにブラジャー2のカップ3の内側にこの接着部4を貼りつけて固定して用いる。これにより、下着と母乳パッド1とがずれないようにして使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような母乳パッド1では、使用者の乳房の前面(図示せず)にかぶせるように密着させて使用できるように、上述のようにドーム状に形成する必要がある。
母乳パッド1をこのような形状に製造するために、従来は、図8に示すようにしていた。
【0007】
図8において、母乳パッド1の本体となる各材料を上述のように積層して形成した後に、凹状の内面を有する雌型5上に配置する。次いで、図示するようなドーム状の凸面をもつ雄型6を下降させて雄型6及び/または雌型5にて、例えば摂氏130度程度に加熱しながら押圧する。
これにより、加熱された母乳パッド1の本体は、特にその防水材である上記ポリエチレンラミネート紙が熱変形した後に硬化し、上記雌型5の内面に沿ってドーム状に形成される。
【0008】
このように、製造工程において、高い熱を加えてドーム状に変形する必要があるために、例えば上述の母乳パッド1の防水材は、上述のようにポリエチレンラミネート紙等の熱変形する材料を用いていた。
このため、製品である母乳パッド1は、全体として熱変形後の比較的硬い質感を持ってしまい、使用者の肌に直接接触される製品としては、肌に感じる感触が必ずしもよいものではなかった。
【0009】
この点、母乳パッド1では、その表面材(使用者の肌に直接接触する素材)を柔らかくし、かつこの表面材と防水材とのシール箇所である周縁付近に特殊な加工を行って、円形パッドの縁が不快な刺激を与えないように種々の配慮がなされた製品もある。しかしながら、このような部分的な改良を行っても、防水材全体が上述の工程で熱変形されていると、全体として硬い感触をもってしまうことは避けられず、使用感のよい製品を得ることは困難であった。
【0010】
また、母乳パッド1の本体は、上述のように熱変形されてドーム形状とされても、このような加工は形保持性が悪く、使用中に平らになってしまい、使用者の乳房の前面の形状と一致しなくなってフィット性が悪くなり、位置ずれを生じる。これにより、母乳が吸収されないで漏れてしまい着衣を汚してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、防水材の熱変形による硬い感触となってしまうことを回避し、型保持性能に優れた母乳パッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、請求項1の発明にあっては、液体を吸収する吸収体と、この吸収体より外側に配置された防水材とを積層して本体を形成する母乳パッドであって、前記本体の前記吸収体より外側に、前記防水材を構成する素材の融点よりも低い融点を備える素材でなる支持部材を備えた、母乳パッドにより、達成される。
また、請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記防水材と前記吸収体との間に前記支持部材を備えている。
【0013】
請求項1または2の構成によれば、母乳パッドの本体の吸収体よりも外側,例えば吸収体と防水材との間に支持部材を備えており、この支持部材は、防水材を構成する素材の融点よりも低い融点のものが使用されている。
したがって、母乳パッド本体をドーム状にした状態にて、防水材が熱変形しない程度で、しかも支持部材の融点より高い温度で熱変形させると、防水材は熱変形しないで比較的柔らかい感触をたもったまま、支持部材の変形により、ドーム形状が型保持される。
【0014】
請求項3の発明は、前記本体を凹状の雌型と凸状の雄型との間に配置してドーム形に型保持し、前記支持部材を加熱変形させることを特徴とする。
【0015】
請求項3の構成によれば、前記本体を適切に型保持した状態で支持部材を加熱変形させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、前記吸収体が、ティシューにより包囲され、このティシューと前記防水材との間に前記支持部材が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の構成によれば、前記吸収体が粒状の吸水ポリマーを含んでいる場合に、このポリマーが外部に排出されることを有効に防止できる。
また、請求項5の発明は請求項1の構成において、前記吸収体の内側には、表面材を備えており、前記防水材と前記表面材とは互いの周縁部が固定されており、前記支持部材はこの周縁固定部の範囲よりも内側に配置されていることを特徴とする。
請求項5の構成によれば、周縁固定部が必要以上に硬くなることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、防水材の熱変形による硬い感触となってしまうことを回避して、型保持性能に優れた母乳パッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態による母乳パッドの外観を示す概略斜視図であり、図2は、図1の母乳パッドを装着した状態で、その内部構造を示す概略断面図である。
これらの図を参照して、先ず本実施形態の構造を説明する。
【0021】
図2に示すように、母乳パッド10は、使用者が装着した状態では、その乳房47の前面に位置する。この状態にて母乳パッド10の外側(図2の左側)には、防水材11が配置されており、内面側(図2において右側)には、表面材13が配置されている。
そして、表面材13と防水材11の間には、吸収体12が配置されており、これら表面材13、防水材11、吸収材12は、それぞれほぼ円形に形成され、重ねられて、積層状態にて、母乳パッド10の本体18を構成している。
【0022】
上記防水材11は、液体を通さないが、好ましくは水蒸気を透過させて蒸れを防止でき、ある程度可撓性を備えている材料が選択されることが好ましい。また、防水材11は、従来用いられていた熱変形可能な防水材と比べると柔軟な素材で形成されている。また、防水材11を構成する材料は、耐熱性と防水性を備えていればよく、従来のように熱変形可能な材料でなくてもよい。
このような材料としては、例えばポリエチレンラミネート紙、ポリエチレンラミネート不織布やメルトブロー製法の不織布等が用いられる。また、防水材11の表面には、図1に示すように、接着部4が設けられ、必要により、その上に剥離紙を貼ることで、これを剥がして、図5にて説明したようなブラジャー2のカップ3の内側にこの接着部4を貼りつけて固定できるようになっている。
【0023】
上記表面材13は、直接使用者の肌と接触する部材であり、母乳等の水分を良く透過し、肌ざわりのよい素材が選択される。つまり、表面材13は、直接使用者の肌に触れるため、肌を必要以上に損なうことなく、肌触りのよい点等を考慮して、これに適した材料が選択される。好ましくは、ドライメッシュシート(ポリエチレン等により形成した網目状シート)や、不織布が用いられる。
【0024】
吸収体12は、液体吸収性に優れた素材が選択され、パルプの繊維体や積層体やシート体が用いられる。さらに吸収体12には、これらパルプ素材等に液体吸収性に優れ、液体をそのまま,あるいは半固化もしくは固化して保持する機能を備える材質の粒状物であるポリマーが混入使用されている。
このような材料としては、例えば吸水性の重合体が適しており、例えばポリアクリル酸塩系共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、カルボキシメチルセルロース変成物等が挙げられる。
そして、吸収体12は、図3に示すように、ティシュ15に包まれている。これにより、上記粒状のポリマー等が漏れでないようになっている。
【0025】
さらに、母乳パッド10の本体18を構成する吸収体12と防水材11との間には支持部材19が介装されている。
先ず、支持部材19を構成する素材は、上記防水材11を構成する素材の有する融点よりも低い融点の材料が選択される。例えば、このような熱融着繊維,例えば、ポリエステルを軸とし周囲にポリエチレンをコーティングした繊維やポリプロピレン(融点;摂氏90度〜120度程度)使用による不織布,ポリエチレンフィルム(融点;摂氏90度程度)が適している。
ここで、上記支持部材19は、図2において、吸収体12よりも外側(図2において左側)にて、防水材11よりも内側に設けるようにすればよい。したがって、例えば、図2のように、吸収体12と防水材11の間に上記ティシュー15等が介在する場合には、ティシュー15と防水材11との間や吸収体12との間に設けることができる。
また、支持部材19は、図1及び図2に示す周縁固定部18a(後述)よりも内側の範囲に設けることが好ましい。これにより、支持部材19が周縁固定部18aに及んで、この部分に必要以上に硬い感触を与えることを防止することができる。
【0026】
これにより、後述する加熱変形工程にて、防水材11を熱変形させずに、支持部材19だけ加熱による熱変形をすることができる。
本実施形態では、後述する工程において、この支持部材19を、吸収体12の表面を覆うティシュー15の全面と防水材11の裏面との間に配置する。
あるいは、支持部材19は、母乳パッド本体18を型保持できる範囲で適用すればよく、このため、母乳パッド本体18の頂点(図2参照)を中心として放射状に配置したり、縦横に配置したりしてもよい。
【0027】
図3は、母乳パッド10の製造工程を示す概略説明図である。
製造ライン20において、製品材料は、コンベヤベルト等の搬送手段21により、図において左方向に搬送されるようになっている。
製品製造の前段の工程22においては、搬送手段21上に、第1のティシュー供給手段25から、ティシュー15が拡げられた状態にて送られる。
【0028】
この拡げられたティシュー15上には、パルプが吹きつけられるが、このパルプは、パルプ供給手段23から、粉砕手段24に送られ、粉砕手段24にて細かく粉砕されたパルプが、搬送手段21上の上記ティシュー15の表面に吹きつけられるようになっている。
次いで、ポリマー供給手段26から、上記ティシュー15上のパルプの上にポリマーが吹きつけられる。このようにして、ティシュー15上に吸収体12が形成される。
【0029】
次に第2のティシュー供給手段27により、もう一枚のティシュー15が供給され、上記吸収体12の上に被せられる。これにより、吸収体12はティシューによって包囲される。
次いで、長い連続した状態で送られる吸収体12とこれを包むティシュー15からなる製品材料は、このティシュー15の一面(図2の防水材11との対向面に相当)に、支持部材供給手段31から、支持部材19が供給される。この支持部材供給手段31は、例えば、上述した熱融着繊維使用の不織布等の支持部材の材料をロール状に巻き取って構成されている。したがって、製品材料が送られるのに応じて、支持部材の材料を順次巻きだして、ティシュー15の一面に配置することができる。
次に、吸収体及び支持部材でなる製品材料は、カット工程28にて、個々の製品の大きさにカットされて、さらに搬送手段21にて送られる。
【0030】
個々にカットされた製品材料に対して、次に、例えば不織布の供給手段29により表面材13としての不織布が供給されると同時に、この不織布と反対の面には、防水材供給手段32から防水材11が供給される。これにより、ティシュー15にて包まれた吸収体12の表面と裏面に防水材11と表面材13とが積層される。
【0031】
これにより、吸収体12を包むティシュー15の一面と防水材11の裏面にホットメルト接着剤が適用された状態にて、重ねられて、ヒートシール工程33に送られる。ここでは、円形の製品材料の外周部(図1及び図2の18aの箇所)のみを加熱して圧着することにより固定して、周縁固定部とし、次のカット工程に送られる。カット工程34では、全ての製品材料を積層した形態で、個々の製品に対応して円形の製品材料となるようにカットされる。
尚、この周縁固定部18aは、ヒートシールによらなくても接着剤にて固定してもよい。
【0032】
前段の工程22を終了した製品カット後の製品材料は、成形工程35に送られる。
成形工程35は、例えば図4に示すように、成形型41により行われる。この成形型41は、図8にて説明したものとほぼ同じ構成であり、凹状の内面を有する雌型45と、ドーム状の凸面をもつ雄型46とを備えている。雌型45の凹面と雄型46の凸面は、母乳パッド10のドーム形状に対応しており、前段の工程22を終了した製品材料は、防水材11を下にして雌型45上に載置される。
【0033】
次いで、図示されているように、雄型46が降下して製品材料を雌型45の凹状内面に押しつけて、製品材料をドーム状に型保持する。これと同時に、雌型45及び/または雄型46を介して、加熱手段47を介して、熱を加える。
この場合、加熱手段47により加えられる熱は、防水材11の素材の融点よりも低い温度に設定されている。具体的には、例えばポリエチレンラミネート紙、ポリエチレンラミネート不織布やメルトブロー製法の不織布等を防水材11の素材として選択した場合に、選択した素材の融点よりも低い温度に設定する。そして、この温度は、例えば支持部材19として熱融着繊維を利用した不織布で、摂氏100度〜120度程度、ポリエチレンフィルムを利用した場合には、これより低く、摂氏90度程度である。
これにより、製品材料の内部で、支持部材19は、凹状に変形されることにより、母乳パッド10全体がドーム状に成形されて完成する。
【0034】
本発明の母乳パッドの実施形態の構成は以上の通りであり、母乳パッド10の本体18は、図4の成形型41内で所定のドーム状に型保持された状態にて加熱されることにより、支持部材19が所定のドーム形状に成形されるようにしたので、使用者が装着した後に容易に型崩れすることなく、フィット性に優れた製品を得ることができる。
しかも、従来のように、防水材11の融点以上の高い温度にて熱変形する工程を採用していない。このため、従来のように、防水材11が熱変形工程を経ることにより、硬化するということがなく、素材そのものの比較的柔軟な状態を維持することができる。
そのため、図1の母乳パッド10の特に周縁部18aが、硬くなって、使用者の肌に不快な刺激を与えることなく、肌触りのよい高い品質の製品を提供することができる。
【0035】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば本体18の内部に、クッション材を収容してもよい。
また、防水材11や表面材13、吸収体12は、上述の実施形態記載の材料以外の種々の材料を選択することができる。
また、上述の各実施形態の各構成部分を任意に選択して組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による母乳パッドの実施形態の概略斜視図である。
【図2】図1の母乳パッドを装着した状態における概略断面図である。
【図3】図1の母乳パッドの製造工程を説明するための概略図である。
【図4】図1の母乳パッドを製造する際の成形工程の一例を示す図である。
【図5】従来の母乳パッドの使用状態を示す説明図である。
【図6】図5の母乳パッドの正面図である。
【図7】図5の母乳パッドの側面図である。
【図8】図5の母乳パッドの成形方法を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・母乳パッド、11・・・防水材、12・・・吸収体、13・・・表面材、15・・・ティシュー、19・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸収体と、この吸収体より外側に配置された防水材とを積層して本体を形成する母乳パッドであって、
前記本体の前記吸収体より外側に、前記防水材を構成する素材の融点よりも低い融点を備える素材でなる支持部材を備えた
ことを特徴とする、母乳パッド。
【請求項2】
前記防水材と前記吸収体との間に前記支持部材を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記本体を凹状の雌型と凸状の雄型との間に配置してドーム形に型保持し、前記支持部材を加熱変形させる
ことを特徴とする、請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項4】
前記吸収体は、ティシューにより包囲され、このティシューと前記防水材との間に前記支持部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項5】
前記吸収体の内側には、表面材を備えており、前記防水材と前記表面材とは互いの周縁部が固定されており、前記支持部材はこの周縁固定部の範囲よりも内側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の母乳パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−13909(P2008−13909A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232778(P2007−232778)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【分割の表示】特願平11−22724の分割
【原出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】