母乳パッド
【課題】販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能な母乳パッドを提供する。
【解決手段】上記課題は、縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域80と他方側の第2領域90のうち、第1領域80における肌当接面に、第2領域90の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部81が設けられた母乳パッド10により解決される。
【解決手段】上記課題は、縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域80と他方側の第2領域90のうち、第1領域80における肌当接面に、第2領域90の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部81が設けられた母乳パッド10により解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能な母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳パッドは、授乳期の母親が母乳の漏出により下着等が濡れるのを防止する目的で使用するものであり、ブラジャー等の下着の内側に乳房を包み込むようにして装着されるものであり、ズレ止め用の粘着剤が下着当接面(裏面)に設けられているものが一般的となっている(例えば特許文献1〜4参照)。
また、製品販売に際しては、多数個まとめて袋に詰めて販売することが一般的であり、各母乳パッドはコンパクトに折り畳まれた状態で、衛生上の理由により不織布やフィルム等の包装材で個別包装されているのが一般的である(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248648号公報
【特許文献2】特開2008−202167号公報
【特許文献3】特開2008−174851号公報
【特許文献4】特開2007−126763号公報
【特許文献5】特開2007−126161号公報
【特許文献6】特開2007−326622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の殆どの包装形態では、個別包装の包装材がゴミとなるだけで、廃棄時に母乳パッドを包むために用いることもできないものであった。
この問題点を解決するものとして、個別包装の袋を廃棄用収納袋として用いることも提案されている(特許文献6参照)が、個別包装が必要なことに変わりが無く、母乳パッドを取り出してから廃棄するまで空袋を所持する必要があり、煩雑となっていた。特に、母乳パッドは交換頻度が多いだけでなく、一度に2個交換することが殆どであるため、廃棄作業を含む交換作業の容易性は非常に重要である。
そこで、本発明の主たる課題は、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能な母乳パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
乳首が当接される液透過性表面シートと、裏面側シートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた母乳パッドにおいて、
縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に、第2領域の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部が設けられている、ことを特徴とする母乳パッド。
【0006】
(作用効果)
このように、縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に挿入部を設け、肌当接面が内側となるように折り畳んで、第2領域の一部又は全部を挿入部に挿入することにより、個別包装材が無くても、母乳パッド単体で折り畳んだ状態に固定することができる。よって、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、後述するように個別包装を省略することも可能となる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記第1領域の前記表面シートを覆うように挿入部形成シートが配置されるとともに、この挿入部形成シートと前記表面シートとの間に、前記第2領域側に挿入口を有するポケット状空間が前記挿入部として形成されている、請求項1記載の母乳パッド。
【0008】
(作用効果)
挿入部としては、帯状部材の両端部を表面シート上に固定したり、別途形成した袋体を表面シート上に張り付けたりしても良いが、前者の場合、第2領域を覆う部分が少ないため包装機能が乏しくなり、後者の場合は薄さの低下等が懸念される。これに対して、上述のように挿入部形成シートと表面シートとの間に挿入部としてのポケット状空間を有する構造であると、挿入部内に挿入された第2領域の部分は挿入部形成シートにより確実に被覆され、厚みも挿入部形成シート一枚分の増加で済む。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記挿入部形成シートは、前記表面シートにおける乳首の当接位置を避けて設けられている、請求項2記載の母乳パッド。
【0010】
(作用効果)
挿入部形成シートをこのように配置すると、挿入部形成シートの存在による吸収阻害や、柔軟性、通気性の低下を抑えることができるため好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記挿入部形成シートは、不透液性シート又は撥水性不織布からなり、前記表面シートにおける乳首の当接位置よりも縦方向下側に設けられている、請求項3記載の母乳パッド。
【0012】
(作用効果)
不透液性シート又は撥水性不織布からなる挿入部形成シートをこのような位置に配置すると、吸収した母乳の逆戻りを挿入部形成シートで遮ることができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記肌当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層が設けられるとともに、この粘着剤層を覆うように剥離シートが張り付けられており、且つ前記下着当接面における前記粘着剤層を有しない部分に、少なくとも前記剥離シートを収納可能である収納ポケットが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0014】
(作用効果)
下着当接面に粘着剤層を設け剥離シートで覆うことは従来も同様であるが、この場合、使用時に剥離した剥離シートを廃棄しなければならず、近くにゴミ箱が無い場合等は廃棄できずに所持しなければならない等、煩雑となっていた。よって、上述のように下着当接面に収納ポケットを設けておくと、使用時に剥離シートを収納ポケットに収納し、母乳パッドの廃棄時に一緒に廃棄できるようになるため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
縦横の長さの比が、1:1〜1:0.7であり、前記第1領域と第2領域との境界に関して線対称をなす形状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0016】
(作用効果)
本発明の母乳パッドは、このような寸法・形状の母乳パッドに好適である。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記肌当接面が内側となるように前記第2領域が第1領域側に折り畳まれ、前記第2領域の一部又は全部が前記挿入部に挿入されており、且つ別体の個別包装材により包装されていない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0018】
(作用効果)
上述のように、肌当接面が内側となるように折り畳んで固定することにより、肌当接面が露出しないコンパクトな簡易包装状態となる。よって、敢えて個別包装をしないことで、個別包装の開封等の取り扱いの煩雑さを解消するとともに、資材コストを削減できる。しかも、個別包装をしなくても衛生的に取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】母乳パッドを示す、(a)肌当接面、(b)下着当接面の平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】使用前の折り畳み状態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図4】使用後(廃棄時)の折り畳み状態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図5】他の形態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図6】他の形態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図7】他の形態を示す、(a)肌当接面、(b)下着当接面の平面図である。
【図8】他の形態を示す、図7の2−2線断面図である。
【図9】他の形態を示す、図7の2−2線断面図である。
【図10】包装状態の平面図である。
【図11】図10の3−3線断面図である。
【図12】図10の4−4線断面図である。
【図13】図10の5−5線断面図である。
【図14】母乳パッドの装着状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、縦方向とは装着時に上下方向となる方向を意味する。
【0022】
図1は、母乳パッド10の展開状態の平面図であり、(a)は肌当接面を示し、(b)は下着当接面を示している。また、図2は、図1の2−2断面図である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤の塗布や、ヒートシール、超音波シール等による溶着により形成されるものである。
【0023】
この母乳パッド10は、乳首が当接される液透過性表面シート30と、裏面側シート11と、これらの間に介在された吸収体56とを備えており、吸収体56の周縁よりはみ出す表面シート30の周縁部と裏面側シート11の周縁部とが接合されているものである。母乳パッド10の形状は特に限定されるものではなく、図示例のような平坦な円形状の他、乳房にフィットするカップ状等の立体形状とすることもできる。本発明の場合、展開状態における縦横の長さの比が1:1〜1:0.7程度であるのが好ましく、また後述する第1領域80と第2領域90との境界に関して線対称をなす形状であるとより好ましい。
【0024】
(表面シート)
表面シート30は、着用者の乳房に直接接するものであり、母乳を吸収、透過して外側に配置された吸収体56に導くものであるため、柔軟な液透過性素材から形成するのが好ましい。具体的には、表面シート30としては、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを原料繊維とするものを用いることができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0025】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0026】
(裏面側シート)
裏面側シート11の素材は、特に限定されるものではないが、吸収体56に吸収、保持された母乳が滲み出して衣服を濡らすことがないように、液不透過性又は液難透過性の素材が好ましく、ムレ防止の観点から通気性を有するものが好ましい。裏面側シート11の具体例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを挙げることができる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる微多孔性プラスチックフィルムも好適に用いることができる。さらにこのほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくして防漏性を強化した不織布、撥水剤を塗工した撥水性不織布も好適である。これらの不織布の原料繊維及び製造方法としては、表面シート11の項で例示したものの中から適宜選択することができる。
【0027】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば50〜200g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば20〜100g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0028】
吸収体56はパッド形状に合わせても良いが、楕円形状等、適宜の形状とすることも可能である。また、吸収体56の寸法は適宜定めることができるが、周縁がパッドの周縁近傍まで延在しているのが好ましい。
【0029】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0030】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0031】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0032】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、20〜200g/m2とすることができる。
【0033】
(包装シート)
吸収体56は、型崩れやポリマーの脱落を防止するため、必要に応じて包装シート58で包むことができる。包装シート58の素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0034】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0035】
(ズレ止め粘着剤層)
肌当接面に対して反対側の下着当接面、つまり図示例における裏面側シート11の外面には、粘着剤層70が設けられるとともに、この粘着剤層70を覆うように剥離シート71が張り付けられている。この粘着剤層70の形成位置は適宜定めることができ、図示例では乳首当接位置Zよりも縦方向上側の横方向中央部一か所に配置されているが、縦方向、横方向又は斜め方向の一端部から他端部にかけて連続的又は間欠的に設けられていても良い。また、粘着剤層70の寸法は適宜定めることができるが、図示例の場合、縦10〜30mm、横20〜50mm以内であるのが好ましい。
【0036】
(挿入部)
特徴的には、縦方向(又は横方向、若しくはこれらと交差する斜め方向でも良い)の一方側の第1領域80と他方側の第2領域90のうち、第1領域80における肌当接面に、第2領域90の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部81が設けられている。
【0037】
母乳パッド10の折り畳み形態は特に限定されず、図示例のようにほぼ半分に折る二つ折り形態の他、断面がZ字状やC字状となるように折る三つ折りとすることができる。第1領域80と第2領域90との境界位置は適宜定めることができるが、図示例のような二つ折りの場合、両領域の対向方向におけるパッドの中央部又はその近傍であるのが好ましく、具体的には、両領域の対向方向におけるパッドの中央から±10〜20mmの位置にあるのが好ましい。両領域の境界が第1領域寄りで第1領域80よりも第2領域90が大きい場合は、第2領域を2つ折り、3つ折り等してから第1領域80の挿入部81に挿入することもできる。
【0038】
挿入部81の寸法は適宜定めることができるが、例えば、第2領域90を挿入した状態で第2領域90と重なる部分の面積は、吸収体56の第2領域に含まれる部分の面積の20〜100%程度、特に50〜80%程度であるのが好ましい。特に、挿入部81の横方向長さは、吸収体56の第2領域に含まれる部分の横方向長さと同じか又は近接しているのが好ましい。
【0039】
このように構成されていると、図3に使用前状態を及び図4に使用後の廃棄状態を示すように、肌当接面が内側となるように折り畳んで、第2領域90の一部又は全部を第1領域80の挿入部81に挿入することにより、個別包装材が無くても、母乳パッド10単体で折り畳んだ状態に固定することができる。よって、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能となる。なお、図14は母乳パッド10が下着UWの内側に装着された使用状態を示している。
【0040】
挿入部81は、第2領域90を挿入しうる限り具体的構造は特に限定されず、帯状部材の両端部を表面シート30上に固定したり、別途形成した袋体を表面シート30上に張り付けたりしても設けることができるが、一つの好ましい形態として図示の挿入部81が提案される。すなわち、図示例では、第1領域80の表面シート30を覆うように挿入部形成シート81sが配置され、挿入部形成シート81sと表面シート30との間に、第2領域90側に挿入口81eを有するポケット状空間が挿入部81として形成されているものである。これにより、挿入部81内に挿入された第2領域90の部分は挿入部形成シート81sにより確実に被覆包装され、厚みも挿入部形成シート81s一枚分の増加で済む。
【0041】
特に、図示例では、裏面側シート11をパッド端部で肌当接面側に折返し、この折返し部分を挿入部形成シート81sとなし、この挿入部形成シート81sにおける周縁部及びこの周縁部により囲まれた中央部のうち、周縁部の第2領域90側の縁部及び中央部を非固定とし、且つ周縁部における第2領域90側の縁部及び折返し部分を除いた部分を表面シート30に固定している。この形態は、簡素でありながら十分に深く、しっかりとしたポケットが形成される利点がある。裏面側シート11を折り返すのに代えて、図5に示すように、表面シート30を肌当接面側に折り返してポケット状空間を形成しても良い。もちろん、図6に示すように、別体の挿入部形成シート81sを張り付けて同様のポケット状空間を形成することもできる。
【0042】
挿入部形成シート81sは肌当接面に設けられるため、表面シート30における乳首の当接位置Zを避けるように配置するのが好ましい。これにより、挿入部形成シート81sの存在による吸収阻害や、柔軟性、通気性の低下を抑えることができるようになる。図示例は、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁(図示例では上縁)の全体が乳首当接位置Zより下側に位置しているが、乳首当接位置Z(例えば中央部)及びその近傍のみ下側に位置させ、横方向両側は乳首当接位置Zと同じか又はそれ以上に位置するように、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁を曲線状に形成しても良い。
【0043】
また、図示例のように、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁を表面シート30における乳首の当接位置Zよりも縦方向下側に設ける場合、挿入部形成シート81sを不透液性シート又は撥水性不織布で形成すると、表面シート30又はその吸収体側に吸収した母乳が肌に逆戻りするのを挿入部形成シート81sで遮ることができる。図示例では、挿入部形成シート81sは裏面側シート11の折返し部分であるため、裏面側シート11として前述した不透液性シート又は撥水性不織布を用いることにより、この逆戻り防止機能を付加することができる。なお、挿入部形成シート81sとして不織布を用いる場合は、肌触りを良くする観点から、構成繊維の繊度を1〜3dtex程度とし、繊維目付を10〜23g/m2程度とするのが望ましい。
【0044】
<その他>
(イ) 当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層70を設けるとともに、この粘着剤層70を覆うように剥離シート71を張り付ける場合、図7〜図9に示すように、下着当接面における粘着剤層70を有しない部分に、少なくとも剥離シート71を収納可能である収納ポケット75を設けるのも好ましい形態である。これにより、使用時に剥離シート71を収納ポケット75に収納し、母乳パッド10の廃棄時に一緒に廃棄できるようになる。
収納ポケット75は、挿入口が上向きとなるように設けるのが好ましく、このため母乳パッド10の縦方向下側(図示例では第1領域)に配置するのが好ましい。
収納ポケット75は、図8に示すように、別体のシート75sを張り付けることにより形成できる。また、図9に示すように、収納ポケット75は、裏面側シート11を下着当接面側に折返すことにより形成することもできる。この場合、挿入部81は同図に示すように表面側シート30の折返しにより形成する他、図6に示す形態に倣って別体の挿入部形成シート81sを張り付けて形成することができる。
(ロ) 当接面に対して反対側の下着当接面に粘着剤層70を設ける場合は、下着当接面における収納ポケット75内に粘着剤層70設け、ポケット形成シート75sで粘着剤層70を覆うように構成するのも好ましい形態である。この場合、収納ポケット75内面の少なくとも粘着剤層当接部は剥離処理されており、これにより剥離シート71を省略することができる。使用時には、粘着剤層70から収納ポケット75を剥がしながら当接面側に裏返すことで、収納ポケット75を取り外すことなく粘着剤層70を露出させ、着用することができる。
(ハ) 本発明では、当接面側の挿入部81によって、前述のような販売や携帯、あるいは廃棄の際の折り畳み状態の固定が可能となるが、(イ)や(ロ)の形態にあるような収納ポケット75でも、廃棄の際には、挿入部81と同様に折り畳み状態の固定に使用することができる。従って、収納ポケット75を有する形態においては、挿入部81を省略してもよい。
(ニ) 上述の母乳パッド10は、それ自体簡易包装状態にもできるものであるため、個別包装をしなくても良い。この場合、使用前の製品状態で、肌当接面が内側となるように前記第2領域90が第1領域80側に折り畳まれ、第2領域90の一部(特に先端部)又は全部が挿入部81に挿入されているのが望ましい。このように、肌当接面が内側となるように折り畳んで固定することにより、肌当接面が露出しないコンパクトな簡易包装状態となる。よって、敢えて個別包装をしないことで、個別包装の開封等の取り扱いの煩雑さを解消するとともに、資材コストを削減できる。しかも、個別包装をしなくても衛生的に取り扱うことができる。
ただし、本発明では、図10〜図13に示すように個別包装を行うこともできる。この場合、一つの包装P内に一個の母乳パッド10を収納する他、図示例のように母乳パッド10が乳房毎に分離している形態では一つの包装P内に2個の母乳パッド10をまとめて収納する形態も採用することができる。
包装形態は特に限定されないが、図示例の包装構造は、包装材(シート)100の縦方向の両端部101(102a),102(102b)が重ね合わされた筒状をなし、かつこの重なり合された部位の表面側部分101(102a)の端縁103(e1)が開封始端とされるとともに、横方向の両端部の重なり合う部分104(102c),104(102c)が接着剤や溶着等により接合されており、中央には母乳パッド10が内包されているものである。包装材100としては、ポリエチレンフィルム、各種不織等、従来公知のものを用いることができる。
(ホ) 本発明は、両乳房を覆う部分が連結又は一体化されているタイプの母乳パッド10にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、母乳パッド10に適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…母乳パッド、11…裏面側シート、30…表面シート、56…吸収体、58…包装シート、70…粘着剤層、71…剥離シート、75…収納ポケット、80…第1領域、81…挿入部、90…第2領域、100…包装材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能な母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳パッドは、授乳期の母親が母乳の漏出により下着等が濡れるのを防止する目的で使用するものであり、ブラジャー等の下着の内側に乳房を包み込むようにして装着されるものであり、ズレ止め用の粘着剤が下着当接面(裏面)に設けられているものが一般的となっている(例えば特許文献1〜4参照)。
また、製品販売に際しては、多数個まとめて袋に詰めて販売することが一般的であり、各母乳パッドはコンパクトに折り畳まれた状態で、衛生上の理由により不織布やフィルム等の包装材で個別包装されているのが一般的である(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248648号公報
【特許文献2】特開2008−202167号公報
【特許文献3】特開2008−174851号公報
【特許文献4】特開2007−126763号公報
【特許文献5】特開2007−126161号公報
【特許文献6】特開2007−326622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の殆どの包装形態では、個別包装の包装材がゴミとなるだけで、廃棄時に母乳パッドを包むために用いることもできないものであった。
この問題点を解決するものとして、個別包装の袋を廃棄用収納袋として用いることも提案されている(特許文献6参照)が、個別包装が必要なことに変わりが無く、母乳パッドを取り出してから廃棄するまで空袋を所持する必要があり、煩雑となっていた。特に、母乳パッドは交換頻度が多いだけでなく、一度に2個交換することが殆どであるため、廃棄作業を含む交換作業の容易性は非常に重要である。
そこで、本発明の主たる課題は、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能な母乳パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
乳首が当接される液透過性表面シートと、裏面側シートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた母乳パッドにおいて、
縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に、第2領域の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部が設けられている、ことを特徴とする母乳パッド。
【0006】
(作用効果)
このように、縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に挿入部を設け、肌当接面が内側となるように折り畳んで、第2領域の一部又は全部を挿入部に挿入することにより、個別包装材が無くても、母乳パッド単体で折り畳んだ状態に固定することができる。よって、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、後述するように個別包装を省略することも可能となる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記第1領域の前記表面シートを覆うように挿入部形成シートが配置されるとともに、この挿入部形成シートと前記表面シートとの間に、前記第2領域側に挿入口を有するポケット状空間が前記挿入部として形成されている、請求項1記載の母乳パッド。
【0008】
(作用効果)
挿入部としては、帯状部材の両端部を表面シート上に固定したり、別途形成した袋体を表面シート上に張り付けたりしても良いが、前者の場合、第2領域を覆う部分が少ないため包装機能が乏しくなり、後者の場合は薄さの低下等が懸念される。これに対して、上述のように挿入部形成シートと表面シートとの間に挿入部としてのポケット状空間を有する構造であると、挿入部内に挿入された第2領域の部分は挿入部形成シートにより確実に被覆され、厚みも挿入部形成シート一枚分の増加で済む。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記挿入部形成シートは、前記表面シートにおける乳首の当接位置を避けて設けられている、請求項2記載の母乳パッド。
【0010】
(作用効果)
挿入部形成シートをこのように配置すると、挿入部形成シートの存在による吸収阻害や、柔軟性、通気性の低下を抑えることができるため好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記挿入部形成シートは、不透液性シート又は撥水性不織布からなり、前記表面シートにおける乳首の当接位置よりも縦方向下側に設けられている、請求項3記載の母乳パッド。
【0012】
(作用効果)
不透液性シート又は撥水性不織布からなる挿入部形成シートをこのような位置に配置すると、吸収した母乳の逆戻りを挿入部形成シートで遮ることができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記肌当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層が設けられるとともに、この粘着剤層を覆うように剥離シートが張り付けられており、且つ前記下着当接面における前記粘着剤層を有しない部分に、少なくとも前記剥離シートを収納可能である収納ポケットが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0014】
(作用効果)
下着当接面に粘着剤層を設け剥離シートで覆うことは従来も同様であるが、この場合、使用時に剥離した剥離シートを廃棄しなければならず、近くにゴミ箱が無い場合等は廃棄できずに所持しなければならない等、煩雑となっていた。よって、上述のように下着当接面に収納ポケットを設けておくと、使用時に剥離シートを収納ポケットに収納し、母乳パッドの廃棄時に一緒に廃棄できるようになるため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
縦横の長さの比が、1:1〜1:0.7であり、前記第1領域と第2領域との境界に関して線対称をなす形状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0016】
(作用効果)
本発明の母乳パッドは、このような寸法・形状の母乳パッドに好適である。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記肌当接面が内側となるように前記第2領域が第1領域側に折り畳まれ、前記第2領域の一部又は全部が前記挿入部に挿入されており、且つ別体の個別包装材により包装されていない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【0018】
(作用効果)
上述のように、肌当接面が内側となるように折り畳んで固定することにより、肌当接面が露出しないコンパクトな簡易包装状態となる。よって、敢えて個別包装をしないことで、個別包装の開封等の取り扱いの煩雑さを解消するとともに、資材コストを削減できる。しかも、個別包装をしなくても衛生的に取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】母乳パッドを示す、(a)肌当接面、(b)下着当接面の平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】使用前の折り畳み状態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図4】使用後(廃棄時)の折り畳み状態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図5】他の形態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図6】他の形態を示す、図1の2−2線断面相当の断面図である。
【図7】他の形態を示す、(a)肌当接面、(b)下着当接面の平面図である。
【図8】他の形態を示す、図7の2−2線断面図である。
【図9】他の形態を示す、図7の2−2線断面図である。
【図10】包装状態の平面図である。
【図11】図10の3−3線断面図である。
【図12】図10の4−4線断面図である。
【図13】図10の5−5線断面図である。
【図14】母乳パッドの装着状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、縦方向とは装着時に上下方向となる方向を意味する。
【0022】
図1は、母乳パッド10の展開状態の平面図であり、(a)は肌当接面を示し、(b)は下着当接面を示している。また、図2は、図1の2−2断面図である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤の塗布や、ヒートシール、超音波シール等による溶着により形成されるものである。
【0023】
この母乳パッド10は、乳首が当接される液透過性表面シート30と、裏面側シート11と、これらの間に介在された吸収体56とを備えており、吸収体56の周縁よりはみ出す表面シート30の周縁部と裏面側シート11の周縁部とが接合されているものである。母乳パッド10の形状は特に限定されるものではなく、図示例のような平坦な円形状の他、乳房にフィットするカップ状等の立体形状とすることもできる。本発明の場合、展開状態における縦横の長さの比が1:1〜1:0.7程度であるのが好ましく、また後述する第1領域80と第2領域90との境界に関して線対称をなす形状であるとより好ましい。
【0024】
(表面シート)
表面シート30は、着用者の乳房に直接接するものであり、母乳を吸収、透過して外側に配置された吸収体56に導くものであるため、柔軟な液透過性素材から形成するのが好ましい。具体的には、表面シート30としては、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを原料繊維とするものを用いることができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0025】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0026】
(裏面側シート)
裏面側シート11の素材は、特に限定されるものではないが、吸収体56に吸収、保持された母乳が滲み出して衣服を濡らすことがないように、液不透過性又は液難透過性の素材が好ましく、ムレ防止の観点から通気性を有するものが好ましい。裏面側シート11の具体例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを挙げることができる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる微多孔性プラスチックフィルムも好適に用いることができる。さらにこのほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくして防漏性を強化した不織布、撥水剤を塗工した撥水性不織布も好適である。これらの不織布の原料繊維及び製造方法としては、表面シート11の項で例示したものの中から適宜選択することができる。
【0027】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば50〜200g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば20〜100g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0028】
吸収体56はパッド形状に合わせても良いが、楕円形状等、適宜の形状とすることも可能である。また、吸収体56の寸法は適宜定めることができるが、周縁がパッドの周縁近傍まで延在しているのが好ましい。
【0029】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0030】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0031】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0032】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、20〜200g/m2とすることができる。
【0033】
(包装シート)
吸収体56は、型崩れやポリマーの脱落を防止するため、必要に応じて包装シート58で包むことができる。包装シート58の素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0034】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0035】
(ズレ止め粘着剤層)
肌当接面に対して反対側の下着当接面、つまり図示例における裏面側シート11の外面には、粘着剤層70が設けられるとともに、この粘着剤層70を覆うように剥離シート71が張り付けられている。この粘着剤層70の形成位置は適宜定めることができ、図示例では乳首当接位置Zよりも縦方向上側の横方向中央部一か所に配置されているが、縦方向、横方向又は斜め方向の一端部から他端部にかけて連続的又は間欠的に設けられていても良い。また、粘着剤層70の寸法は適宜定めることができるが、図示例の場合、縦10〜30mm、横20〜50mm以内であるのが好ましい。
【0036】
(挿入部)
特徴的には、縦方向(又は横方向、若しくはこれらと交差する斜め方向でも良い)の一方側の第1領域80と他方側の第2領域90のうち、第1領域80における肌当接面に、第2領域90の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部81が設けられている。
【0037】
母乳パッド10の折り畳み形態は特に限定されず、図示例のようにほぼ半分に折る二つ折り形態の他、断面がZ字状やC字状となるように折る三つ折りとすることができる。第1領域80と第2領域90との境界位置は適宜定めることができるが、図示例のような二つ折りの場合、両領域の対向方向におけるパッドの中央部又はその近傍であるのが好ましく、具体的には、両領域の対向方向におけるパッドの中央から±10〜20mmの位置にあるのが好ましい。両領域の境界が第1領域寄りで第1領域80よりも第2領域90が大きい場合は、第2領域を2つ折り、3つ折り等してから第1領域80の挿入部81に挿入することもできる。
【0038】
挿入部81の寸法は適宜定めることができるが、例えば、第2領域90を挿入した状態で第2領域90と重なる部分の面積は、吸収体56の第2領域に含まれる部分の面積の20〜100%程度、特に50〜80%程度であるのが好ましい。特に、挿入部81の横方向長さは、吸収体56の第2領域に含まれる部分の横方向長さと同じか又は近接しているのが好ましい。
【0039】
このように構成されていると、図3に使用前状態を及び図4に使用後の廃棄状態を示すように、肌当接面が内側となるように折り畳んで、第2領域90の一部又は全部を第1領域80の挿入部81に挿入することにより、個別包装材が無くても、母乳パッド10単体で折り畳んだ状態に固定することができる。よって、販売や、携帯、あるいは廃棄の際、それ自体でコンパクトな折り畳み状態にすることができ、個別包装を省略することも可能となる。なお、図14は母乳パッド10が下着UWの内側に装着された使用状態を示している。
【0040】
挿入部81は、第2領域90を挿入しうる限り具体的構造は特に限定されず、帯状部材の両端部を表面シート30上に固定したり、別途形成した袋体を表面シート30上に張り付けたりしても設けることができるが、一つの好ましい形態として図示の挿入部81が提案される。すなわち、図示例では、第1領域80の表面シート30を覆うように挿入部形成シート81sが配置され、挿入部形成シート81sと表面シート30との間に、第2領域90側に挿入口81eを有するポケット状空間が挿入部81として形成されているものである。これにより、挿入部81内に挿入された第2領域90の部分は挿入部形成シート81sにより確実に被覆包装され、厚みも挿入部形成シート81s一枚分の増加で済む。
【0041】
特に、図示例では、裏面側シート11をパッド端部で肌当接面側に折返し、この折返し部分を挿入部形成シート81sとなし、この挿入部形成シート81sにおける周縁部及びこの周縁部により囲まれた中央部のうち、周縁部の第2領域90側の縁部及び中央部を非固定とし、且つ周縁部における第2領域90側の縁部及び折返し部分を除いた部分を表面シート30に固定している。この形態は、簡素でありながら十分に深く、しっかりとしたポケットが形成される利点がある。裏面側シート11を折り返すのに代えて、図5に示すように、表面シート30を肌当接面側に折り返してポケット状空間を形成しても良い。もちろん、図6に示すように、別体の挿入部形成シート81sを張り付けて同様のポケット状空間を形成することもできる。
【0042】
挿入部形成シート81sは肌当接面に設けられるため、表面シート30における乳首の当接位置Zを避けるように配置するのが好ましい。これにより、挿入部形成シート81sの存在による吸収阻害や、柔軟性、通気性の低下を抑えることができるようになる。図示例は、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁(図示例では上縁)の全体が乳首当接位置Zより下側に位置しているが、乳首当接位置Z(例えば中央部)及びその近傍のみ下側に位置させ、横方向両側は乳首当接位置Zと同じか又はそれ以上に位置するように、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁を曲線状に形成しても良い。
【0043】
また、図示例のように、挿入部形成シート81sの挿入口側の縁を表面シート30における乳首の当接位置Zよりも縦方向下側に設ける場合、挿入部形成シート81sを不透液性シート又は撥水性不織布で形成すると、表面シート30又はその吸収体側に吸収した母乳が肌に逆戻りするのを挿入部形成シート81sで遮ることができる。図示例では、挿入部形成シート81sは裏面側シート11の折返し部分であるため、裏面側シート11として前述した不透液性シート又は撥水性不織布を用いることにより、この逆戻り防止機能を付加することができる。なお、挿入部形成シート81sとして不織布を用いる場合は、肌触りを良くする観点から、構成繊維の繊度を1〜3dtex程度とし、繊維目付を10〜23g/m2程度とするのが望ましい。
【0044】
<その他>
(イ) 当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層70を設けるとともに、この粘着剤層70を覆うように剥離シート71を張り付ける場合、図7〜図9に示すように、下着当接面における粘着剤層70を有しない部分に、少なくとも剥離シート71を収納可能である収納ポケット75を設けるのも好ましい形態である。これにより、使用時に剥離シート71を収納ポケット75に収納し、母乳パッド10の廃棄時に一緒に廃棄できるようになる。
収納ポケット75は、挿入口が上向きとなるように設けるのが好ましく、このため母乳パッド10の縦方向下側(図示例では第1領域)に配置するのが好ましい。
収納ポケット75は、図8に示すように、別体のシート75sを張り付けることにより形成できる。また、図9に示すように、収納ポケット75は、裏面側シート11を下着当接面側に折返すことにより形成することもできる。この場合、挿入部81は同図に示すように表面側シート30の折返しにより形成する他、図6に示す形態に倣って別体の挿入部形成シート81sを張り付けて形成することができる。
(ロ) 当接面に対して反対側の下着当接面に粘着剤層70を設ける場合は、下着当接面における収納ポケット75内に粘着剤層70設け、ポケット形成シート75sで粘着剤層70を覆うように構成するのも好ましい形態である。この場合、収納ポケット75内面の少なくとも粘着剤層当接部は剥離処理されており、これにより剥離シート71を省略することができる。使用時には、粘着剤層70から収納ポケット75を剥がしながら当接面側に裏返すことで、収納ポケット75を取り外すことなく粘着剤層70を露出させ、着用することができる。
(ハ) 本発明では、当接面側の挿入部81によって、前述のような販売や携帯、あるいは廃棄の際の折り畳み状態の固定が可能となるが、(イ)や(ロ)の形態にあるような収納ポケット75でも、廃棄の際には、挿入部81と同様に折り畳み状態の固定に使用することができる。従って、収納ポケット75を有する形態においては、挿入部81を省略してもよい。
(ニ) 上述の母乳パッド10は、それ自体簡易包装状態にもできるものであるため、個別包装をしなくても良い。この場合、使用前の製品状態で、肌当接面が内側となるように前記第2領域90が第1領域80側に折り畳まれ、第2領域90の一部(特に先端部)又は全部が挿入部81に挿入されているのが望ましい。このように、肌当接面が内側となるように折り畳んで固定することにより、肌当接面が露出しないコンパクトな簡易包装状態となる。よって、敢えて個別包装をしないことで、個別包装の開封等の取り扱いの煩雑さを解消するとともに、資材コストを削減できる。しかも、個別包装をしなくても衛生的に取り扱うことができる。
ただし、本発明では、図10〜図13に示すように個別包装を行うこともできる。この場合、一つの包装P内に一個の母乳パッド10を収納する他、図示例のように母乳パッド10が乳房毎に分離している形態では一つの包装P内に2個の母乳パッド10をまとめて収納する形態も採用することができる。
包装形態は特に限定されないが、図示例の包装構造は、包装材(シート)100の縦方向の両端部101(102a),102(102b)が重ね合わされた筒状をなし、かつこの重なり合された部位の表面側部分101(102a)の端縁103(e1)が開封始端とされるとともに、横方向の両端部の重なり合う部分104(102c),104(102c)が接着剤や溶着等により接合されており、中央には母乳パッド10が内包されているものである。包装材100としては、ポリエチレンフィルム、各種不織等、従来公知のものを用いることができる。
(ホ) 本発明は、両乳房を覆う部分が連結又は一体化されているタイプの母乳パッド10にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、母乳パッド10に適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…母乳パッド、11…裏面側シート、30…表面シート、56…吸収体、58…包装シート、70…粘着剤層、71…剥離シート、75…収納ポケット、80…第1領域、81…挿入部、90…第2領域、100…包装材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳首が当接される液透過性表面シートと、裏面側シートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた母乳パッドにおいて、
縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に、第2領域の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部が設けられている、ことを特徴とする母乳パッド。
【請求項2】
前記第1領域の前記表面シートを覆うように挿入部形成シートが配置されるとともに、この挿入部形成シートと前記表面シートとの間に、前記第2領域側に挿入口を有するポケット状空間が前記挿入部として形成されている、請求項1記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記挿入部形成シートは、前記表面シートにおける乳首の当接位置を避けて設けられている、請求項2記載の母乳パッド。
【請求項4】
前記挿入部形成シートは、不透液性シート又は撥水性不織布からなり、前記表面シートにおける乳首の当接位置よりも縦方向下側に設けられている、請求項3記載の母乳パッド。
【請求項5】
前記肌当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層が設けられるとともに、この粘着剤層を覆うように剥離シートが張り付けられており、且つ前記下着当接面における前記粘着剤層を有しない部分に、少なくとも前記剥離シートを収納可能である収納ポケットが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【請求項6】
縦横の長さの比が、1:1〜1:0.7であり、前記第1領域と第2領域との境界に関して線対称をなす形状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【請求項7】
前記肌当接面が内側となるように前記第2領域が第1領域側に折り畳まれ、前記第2領域の一部又は全部が前記挿入部に挿入されており、且つ別体の個別包装材により包装されていない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【請求項1】
乳首が当接される液透過性表面シートと、裏面側シートと、これらの間に介在された吸収体とを備えた母乳パッドにおいて、
縦方向、横方向又は斜め方向の一方側の第1領域と他方側の第2領域のうち、第1領域における肌当接面に、第2領域の一部又は全部を折り畳んで挿入可能な挿入部が設けられている、ことを特徴とする母乳パッド。
【請求項2】
前記第1領域の前記表面シートを覆うように挿入部形成シートが配置されるとともに、この挿入部形成シートと前記表面シートとの間に、前記第2領域側に挿入口を有するポケット状空間が前記挿入部として形成されている、請求項1記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記挿入部形成シートは、前記表面シートにおける乳首の当接位置を避けて設けられている、請求項2記載の母乳パッド。
【請求項4】
前記挿入部形成シートは、不透液性シート又は撥水性不織布からなり、前記表面シートにおける乳首の当接位置よりも縦方向下側に設けられている、請求項3記載の母乳パッド。
【請求項5】
前記肌当接面に対して反対側の下着当接面に、粘着剤層が設けられるとともに、この粘着剤層を覆うように剥離シートが張り付けられており、且つ前記下着当接面における前記粘着剤層を有しない部分に、少なくとも前記剥離シートを収納可能である収納ポケットが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【請求項6】
縦横の長さの比が、1:1〜1:0.7であり、前記第1領域と第2領域との境界に関して線対称をなす形状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【請求項7】
前記肌当接面が内側となるように前記第2領域が第1領域側に折り畳まれ、前記第2領域の一部又は全部が前記挿入部に挿入されており、且つ別体の個別包装材により包装されていない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の母乳パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−74514(P2011−74514A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225482(P2009−225482)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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