説明

毒性の低いQuilA画分およびその使用

本発明は、アジュバント組成物を製造するために、Quil AのA画分を少なくとも1種の他のアジュバントと共に用いることに関する。ここで、含まれるアジュバント成分は抗原または免疫原と同時に投与すると、免疫反応のレベルを相乗的に高めるよう作用し、相乗的免疫調節活性を有する。少なくとも1つの他のアジュバントは、サポニン(天然、合成または半合成のサポニン分子(例えば、サポニン類およびQuil A由来のサポニン画分))、細胞壁骨格、ブロックポリマー、TDM、リポペプチド、LPSおよびLPS誘導体、異なる細菌種由来の脂質Aまたはその誘導体(例えば、モノホスホリル脂質A)、CpG変異体、CTおよびLTまたはその画分(誘導体)から選択されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相乗効果(免疫反応および免疫調節活性のレベルを含む)を有するアジュバント組成物を製造するために、Quil AのA画分を少なくとも1種の他のアジュバントと共に用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物両方の免疫学的予防または免疫治療に用いるための効率のよいアジュバントおよびワクチン送達系に対する必要性は高い。動物用ワクチンに関しては、多数の異なるアジュバント(iscomおよびiscomマトリックスアジュバント添加ワクチン)が存在する。しかし、ヒト用ワクチンとしては水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸カルシウムアジュバントのみが市販されており、油性エマルジョンアジュバント(MF59)が、最近、ヒトインフルエンザワクチン用に登録された。従って、効率のよいアジュバント、特にヒトワクチン用のアジュバントが欠けている。アジュバントは免疫反応のレベルを向上させるためだけではなく、免疫反応の質または型に対しても重要である。ワクチンが防御を意図する感染の型に適合しなければならないからである。ウィルスのように細胞内に確立される病原体に関しては(また、ある種の細菌および寄生虫に関しても)、いわゆるTh1型免疫反応が最適な免疫防御として要求され、多くの場合、Th1型反応は免疫防御の必要条件である。しかしながら、純粋なTh1型反応またはTh2型反応は副作用を引き起こすこともまた、今や周知である。なぜならば、これら2つのタイプのヘルパーT細胞の間でのバランスが免疫調節に必要とされるからである。すなわち、Th1反応はIFN-γの産生等によりTh2反応を調節し、Th1反応は、サイトカインIL-10の産生などのTh2反応により調節される。従って、Th1-Th2バランスは副作用を避けるために必須である。種々の病原体に対する正確なタイプの免疫防御反応を誘導しうるためには、多数のアジュバントを必要とする。Th1反応はIgG2a抗体反応により反映されるので、Th1のヘルパーT細胞反応に対するマーカーとして用いられる。アジュバントの重要な局面の1つに安全性がある。この安全性には、引き起こされる免疫反応は、ワクチン接種後の次の感染が生じた時点での副作用を回避し得る性質を有すべきであるという事実が挙げられる。重篤な副作用は、約30年前の呼吸器合胞体ウィルスの事例であり、水酸化アルミニウムアジュバント添加ホルマリン不活化呼吸器合胞体ウィルス(RSV)ワクチンを子供に用いようとした時のことであった。ワクチン接種した子供は罹患することが多くなり、RSVに自然に感染した後は、ワクチン接種していない子供よりも死亡率が高かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
急性毒性または副作用は、キラヤ・サポニン(quillaja saponins)をワクチン調製物中で動物および特にヒトに関して用いる場合の大きな懸念である。これらの最終目標は部分的に成功しているのみである。すなわち、QA-21(EP 0 362 279 B2)のような精製画分およびA画分とC画分との組合せ(WO96/11711、Iscotec特許)は、「キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)」と比較して実際に化学的に定義されているが、やはり、いくらか毒性があり、副作用を引き起こす。
【発明の効果】
【0004】
今回、Quil AのA画分は毒性が低く、低用量で免疫反応のレベルを向上させ、そして単独で用いると有効用量で毒性であるか、または副作用を引き起こす可能性のある他のアジュバントの最適用量未満での免疫調節能力を向上させることが明らかとなった。従って、これは単独で用いると有効な用量では毒性かもしれない他のアジュバントの使用を容易にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、免疫反応および免疫調節活性のレベルを向上させる相乗効果を有するアジュバント組成物の製造のために、Quil AのA画分を少なくとも1種の他のアジュバントと共に用いることに関する。特に、iscom粒子を含む組成物でのQuil AのA画分の使用に関し、ここで、Quil Aの異なる画分は異なるiscomおよびiscomマトリックス粒子に組み込まれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫調節活性のレベル及び質を向上させる相乗効果を有するアジュバント組成物の製造のために、Quil AのA画分を少なくとも1種の他のアジュバントと共に用いることに関する。特に、Quil AのA画分を他のアジュバント1種以上と共に用いることに関し、ここで、低用量で良好に免疫寛容されている用量でのA画分は、同時投与されるそれ自体は予防用途または臨床用途のためには毒性が強すぎるアジュバントの免疫増強効果を相乗的に向上させる。すなわち、同時投与された、充分に寛容される低用量(言い換えると最適用量未満)のアジュバントを有効にし、使用に適したものとする。それゆえ、他のアジュバントは、実質的に毒性であり、その用量が予防的及び臨床用途に許容される程度に低減されているものが好ましいが、弱く、それ自体では免疫反応のレベルを有効なレベルに増強することができないか、または有効な質的免疫調節能力に影響を及ぼすことができないアジュバントも好ましい。
【0007】
他のアジュバントの少なくとも1種は、好ましくは、キラヤ・サポナリア・モリナのサポニン粗抽出物に由来するサポニン(天然またはその誘導体、合成または半合成のサポニン分子)から選択され得る。例えば、サポニンおよびQuil Aに由来するサポニン画分、細胞壁骨格、ブロックポリマー(例えば、親水性ブロックコポリマー、例として、CRL-1005、TDM(トレハロースジミコレート,Threhalose di mucolate)、リポペプチド、LPSおよびLPS誘導体)、異なる細菌種に由来する脂質A及びその誘導体(例えば、モノホスホリル脂質A、ムラミル−ジまたはトリ−ペプチドまたはそれらの誘導体、CpG変異体、CpGODN変異体、外来性ヒト動物免疫調節剤(例えば、GM-CSF)、IL-2、天然または修飾型のアジュバント活性細菌毒素(例えば、コレラ毒素CTおよびそのサブユニットであるCTBおよびCTA1)、大腸菌の易熱性毒素(LT)、または百日咳菌(BP)毒素およびBPの線維状赤血球凝集素(filamentus heamagglutenin)が挙げられる。
【0008】
Quil AのA画分以外のサポニン画分は、WO 96/11711に記載のB画分およびC画分、EP 0 436 620に記載のB3画分、B4画分およびB4b画分であり得る。EP 0 3632 279 B2に記載のQA1-22画分、Q-VAC(Nor-Feed, AS Denmark)、キラヤ・サポナリア・モリナ・スピコシド(Spikoside)(Isconova AB, Uppsala Science Park, 75183 Uppsala, Sweden)であり得る。
【0009】
EP 0 3632 279 B2に記載の画分、QA-1-2-3-4-5-6-7-8-9-10-11-12-13-14-15-16-17-18-19-20-21および22、特にQA-7、17-18および21を用いることができる。これらはEP 0 3632 279 B2、特に第6頁および第8頁および第9頁目の実施例1の記載に従って入手する。
【0010】
WO 96/11711に記載のA画分、B画分およびC画分は、親水性キラヤ・サポナリア・モリナ粗抽出物をクロマトグラフィーで分離し、水中70%アセトニトリルで溶離して親油性画分を回収する際に得られる親油性画分から調製する。次いで、この親油性画分を半分取HPLC(用いた溶離液:酸性水溶液中25%〜60%のアセトニトリル勾配)により分離する。本明細書中の「A画分」または「QH-A」と記載する画分は、約39%アセトニトリルで溶離する画分であるか、または対応する画分である。本明細書中の「B画分」または「QH-B」と記載の画分は、約47%アセトニトリルで溶離する画分であるか、または対応する画分である。本明細書中の「C画分」または「QH-C」と記載の画分は、約49%アセトニトリルで溶離する画分であるか、またはこの画分に対応する画分である。
【0011】
好ましくは、少なくとも1種の他のアジュバントはQuil A由来のサブフラグメントCまたはBである。
【0012】
本発明の1態様において、Quil AのアジュバントA画分(本明細書中においてはQWTともいう)および少なくとも1種の他のアジュバントは、各々1個の別個のiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれうる。それらはまた、1個の同じiscom粒子またはiscom粒子マトリックスに組み込まれてもよい。従って、アジュバントは各々異なるiscom粒子または異なるiscomマトリックス粒子に組み込まれた後に組成物中に混合されてもよい。
【0013】
iscom粒子は、任意のサポニンから製造されたiscom複合体またはiscomマトリックス複合体であってよい。アジュバントA画分および他の少なくとも1種のアジュバントは、異なるまたは同一のiscom粒子またはiscomマトリックス粒子にカップリングされていてもよく、または1種以上のアジュバントがiscom粒子と混合されていてもよい。
【0014】
iscom粒子中に組み込むために、アジュバントは疎水性分子を備える必要がある。疎水性分子を備えていないアジュバントをこのような分子にカップリングさせてもよい。疎水性分子及びそのカップリング方法は、EP 180564に記載の通りである。アジュバントは異なるiscom粒子に一体化されていることが好ましい。
【0015】
本発明の別の態様では、Quil AのアジュバントA画分をiscom粒子に一体化させ、他方で他の少なくとも1種のアジュバントはiscom粒子に組み込まずに組成物から遊離した形態で使用する。
【0016】
本発明の別の好ましい態様では、Quil Aのアジュバント画分をiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組込み、他方で他のアジュバントはiscom粒子またはiscomマトリックス粒子には組み込まず、組成物から遊離した形態で使用する。
【0017】
別の特に好ましい態様では、組成物はiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれているQuil AのA画分、及び、iscom粒子またはiscomマトリックス粒子中に組み込まれていない少なくとも1種の他のアジュバントを含む。
【0018】
別の好ましい態様では、少なくとも1種の他のアジュバントはMPLまたはコレラ毒素CTである。MPLまたはコレラ毒素は同じiscom粒子またはiscomマトリックス粒子中に組み込まれるか、または各々異なるiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれ得る。好ましくは、MPLまたはコレラ毒素は遊離した形態である。
【0019】
さらに別の好ましい態様では、Quil AのA画分はiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれ、少なくとも1種の他のアジュバントは各々異なるiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれており、またはそれ以外の少なくとも1種の他のアジュバントは同一のiscom粒子またはiscomマトリックス粒子に組み込まれているが、Quil AのA画分が組み込まれている粒子とは異なる粒子に組み込まれているか、または少なくとも1種の他のアジュバントは遊離の形態である。
【0020】
アジュバントA画分および他の(同時投与される)少なくとも1種のアジュバントはまた、リポソーム中に製剤化されうるか、または油性ベースのアジュバント製剤または非イオン性ブロックコポリマーと共に製剤化されるか、または別の粒子製剤(例えば、PLG、デンプン、Al(OH))中または遊離の形態で提示されうる。
【0021】
iscomは少なくとも1種のグリコシド、少なくとも1種の脂質および少なくとも1種の型の抗原物質を含有する。脂質は少なくともステロール(例えば、コレステロール)であり、場合によりホスファチジルコリンであってもよい。この複合体は1種以上の他の免疫調節(アジュバント活性)物質を含有するかもしれず、EP 0 109 942 B1、EP 0 242 380 B1およびEP 0 180 564 B1に記載の通りに製造されうる。
【0022】
iscomマトリックスは少なくとも1種のグリコシドおよび少なくとも1種の脂質を含有する。この脂質は少なくとも1種類のステロール(例えば、コレステロール)であり、場合によりホスファチジルコリンであってもよい。iscom複合体はまた、1種以上の他の免疫調節(アジュバント活性)物質であってもよいが、必ずしもサポニンである必要はなく、EP 0 436 620 B1に記載されるように製造されうる。
【0023】
好ましい製剤において、iscomおよびiscomマトリックスは異なるiscom粒子中のキラヤのA画分およびC画分と共に製剤化されており、これは最小限の副作用を引き起こす(実施例を参照のこと)。これらのiscomは、ヒトインフルエンザウィルスワクチンとしてヒトで臨床試験中である、Quil AのA画分を70%およびC画分を30%含有する製剤(703と呼ぶ。これはWO 96/11711に従って製造した。)と比較した。WO 96/11711によると、A画分およびC画分は同じ粒子に組み込まれている。毒性研究は、成体マウスよりも感受性の強い新生仔マウスで行った。この試験によると、新生仔マウスは703製剤よりもQuil AのA画分から製造した新規iscomに対してより寛容であることが示された。さらに、本発明の新規製剤の有効性を病原体(すなわち、ヒトRSウィルス(human respiratory cyncytial virus)であるhRSV)由来の抗原および弱毒化抗原(すなわち、オボアルブミン(OVA))を用いて試験した。マトリックス製剤中のQuil AのA画分(QWTと称する)の相乗効果を実施例1に示す。また、コレラ毒素(CT)および破傷風毒素のような強力な抗原は、本発明のアジュバント製剤により抗体増加を向上させること、中でも実施例8および9に記載しているような強力な免疫調節により、調節することができる。
【0024】
本発明の組成物はQuil A由来のアジュバントA画分および少なくとも1種の他のアジュバントを任意の重量比で含有しうる。好ましくは、Quil AのA画分は、アジュバントの総重量に対して2〜99.9重量%であり、好ましくは5〜90重量%であり、特に50〜90重量%である。例えば、Al(OH)、油性アジュバントおよびブロックポリマーに関しては、Quil AのA画分の量は実質的に少ない。
【0025】
好ましいiscom組成物の1つは、Quil AのA画分とQuil AのフラグメントCおよび/またはB画分および/または他の画分または誘導体(本明細書中、以下、非A Quil A画分と称する)の総重量に対して、Quil AのフラグメントAを50〜99.9%、非A Quil A画分を0.1〜50%含有する。特に、組成物は、Quil AのA画分および非A画分の総重量に対してQuil AのフラグメントAを70〜99.9%および非A Quil A画分を0.1〜30%、好ましくはQuil AのフラグメントAを75〜99.9%および非A Quil A画分を0.1〜25%、特にQuil AのフラグメントAを80〜99.9%および非A Quil A画分の0.1〜20%を含有する。最も好ましい組成物はQuil AのA画分および非A画分の総重量に対してQuil AのフラグメントAを91〜99.1%および非A Quil A画分を0.1〜9%含有し、特に、Quil AのA画分および非A画分の総重量に対してQuil AのフラグメントAを98.0〜99.9%および非A Quil A画分を0.1〜2.0%含有する。
【0026】
組成物はさらに、製薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤または添加剤を含有しうる。
【0027】
本明細書中以下に記載のA画分、B画分およびC画分の同定は、実施例1の精製手段を参照して行うことができる。一般的には、この方法ではA画分、B画分およびC画分は水溶性Quil A粗抽出物からのクロマトグラフィー分離および親油性画分を回収するための水中70%アセトニトリルでの溶離により得た親油性画分から製造した。次いで、この親油性画分を半分取HPLC(酸性水溶液中25%〜60%アセトニトリル勾配で溶離)により分離した。本明細書中において「A画分」または「QH-A」と称するこの画分は、約39%アセトニトリルの時点で溶離する画分であるか、またはその画分に対応する。本明細書中において「B画分」または「QH-B」と称するこの画分は、約47%アセトニトリルの時点で溶離する画分であるか、またはその画分に対応する。本明細書中において「C画分」または「QH-C」と称するこの画分は、約49%アセトニトリルの時点で溶離する画分であるか、またはその画分に対応する。
【0028】
本明細書中に記載の通りに製造すると、Quil AのA画分、B画分およびC画分は、それぞれ、特性を定義できる化学的に密接に関連した分子群またはファミリーを示す。これらが得られたクロマトグラフィー条件は、溶離プロフィールおよび生物学的活性という観点においてバッチ間での再現性が非常に高い条件である。
【実施例】
【0029】
本明細書中に記載の刊行物は全て参照により組み込む。「含む(含有する)」との表記は包含することを意図しているが、記載事項に限定することを意図するものではない。本出願において本発明を以下の非限定的な実施例により例示する。本発明の範囲は当業者が開示内容から理解する事項ではなく、それらと等しい事項、または当然導かれうる事項である。
【0030】
実施例1
本実験において、iscomおよびマトリックス中のQWTは非常によく免疫寛容性であり、強い免疫向上および免疫調節能力を有していることを強調する。オボアルブミン(OVA)は弱い抗原であり、それゆえTh1型反応を誘発しないので、これを使用する。QHCはヒト臨床試験において評価されているので、QWTをQHCと比較する。
【0031】
材料および方法
QHC、QWTおよび703マトリックスiscomの製剤
ホスファチジルコリン(PC)およびコレステロール(C)(各々15 mg/ml)の混合物を、水中20%MEGA-10中で調製する。調製物を60℃まで加熱し、全脂質が可溶化するまで軽く超音波処理を行う。
キラヤ・サポニンを水に100 mg/mlで溶解する。703混合物は、画分Aを7重量部、および画分Cを3重量部含有する。
QWTサポニンは画分Aを単独で含有する。
【0032】
703マトリックス
PBS(5ml)をPC/C混合物(10 mg, 667μl)と混合し、703 (35mg, 350μl)を加え、混合物を攪拌し、最終容量が計10mlになるまでPBSを添加する。混合物をSlide-A-Lyser (3〜15ml, Pierce)透析カセットを用いてPBSに対して透析する。
【0033】
QWTマトリックスおよびQHCマトリックス
PBS(5ml)をPCおよびC各10mg(667μl)と混合し、QWT (40mg, 400μl)およびQHC(30mg, 300μl)をそれぞれ加え、混合物を攪拌し、最終容量が計10mlとなるようにPBSを加えた。混合物をSlide-A-Lyser (3〜15ml, Pierce)透析カセットを用いてPBSに対して透析する。
【0034】
実験設計
雌性MNRIマウス(18-20g)を本実施例で用いた。第1群は、4週間間隔でQWT(50μg)マトリックスをアジュバント添加したOVA(10μg)で2回皮下(s.c.)注射することにより免疫感作したマウス8匹からなる。第2群は同じ方法で免疫感作した同数のマウスからなるが、アジュバントがQHCマトリックス(50μg)である。1回目の免疫感作の前、および3週間後、および追加免疫の2週間後に血清を回収した。
【0035】
抗体測定
特異的OVA血清抗体反応を、全IgG反応(全IgGサブクラスを含む)および上記IgG2aサブクラス(Johansson, M and Lovgren-Bengtsson (1999) Iscoms with different quillaja saponin components differ in their immunomodulating activities. Vaccine 19,2894-2900)の両方についてELISAで測定した。
【0036】
結果
QWTマトリックスでアジュバント添加したOVAを用いて免疫感作したマウスは全て生存し、不快症状の徴候は示さなかった。QHCマトリックスでアジュバント添加したOVAで免疫感作したマウス8匹のうち、マウス4匹(50%)が死んだ。
【0037】
全抗体反応(図1-1A)に関する群には顕著な差異は見られなかったが、第1群(すなわち、QWTマトリックスでアジュバント添加したOVAを用いて免疫感作したマウス)の動物間では、抗体力価に幅がある。
【0038】
第1群と第2群の間にIgG2aサブクラスにおける平均力価の差異はなかった(図1-1B)が、第2群(すなわち、QHCマトリックスでアジュバント添加したOVAを用いて免疫感作したマウス)の動物間では、抗体力価に幅がある。
【0039】
本実施例の第2の実験において、QWTマトリックスが別のアジュバントによる補助(complementation)により利益を得るか否か、またはより毒性のあるアジュバントの使用を容易にするかについて検討した。IgG2a反応はTh2型リンパ球の関与を反映する。QWTマトリックスおよびQHCマトリックスの用量は以下の範囲にわたる:第1群、QWTマトリックスまたはQHCマトリックス無し。第2群、QWTマトリックス0.3μg、QHCマトリックス無し。第3群、QWTマトリックス0.3μgおよびQHCマトリックス2μg。第4群、QWTマトリックス1Oμg、QHC無し。第5群QWTマトリックス10μgおよびQHCマトリックス2μg。OVAの用量は10μgとした。1群当たりのマウス数は8匹とし、個々の製剤を用いて4週間間隔で2回、皮下投与により免疫感作した(実施例8、図2A、BおよびC)。
【0040】
血清を、最初の免疫感作の3週間後、および追加免疫の2週間後に回収した。
【0041】
OVA特異的血清抗体反応は、全IgG反応についてはELISAにより、そしてIgG2aおよびIgG1サブクラスにおいては記載されているように(Johansson, MおよびLoevgren-Bengtsson (1999). Iscoms with different quillaja saponin components differ in their immunomodulating activities. Vaccine 19,2894-2900)、測定した。
【0042】
結果
1回目の免疫感作の後、非アジュバント添加OVAまたはQWTマトリックス(0.3μg) アジュバント添加OVAを、QHCマトリックス有り(2μg)および無しで投与したマウスでは、抗体反応は記録されなかった(図1-2A)。
【0043】
2回目の免疫感作の後、非アジュバント添加OVAで免疫感作したマウス8匹のうち3匹でIgG1サブクラスに低い反応が検出されたが(図1-2B)、IgG2aサブクラスの反応は記録されなかった。最も低いアジュバント用量のQWTマトリックス(すなわち、0.3μg)をQHCマトリックス有り(2μg)および無しで用いた場合、IgG2aサブクラスにおける抗体反応はいずれも記録されなかった(図1-2B)。低用量のQHCマトリックス(2μg)をQWTマトリックス(10μg)に添加した場合、IgG2aサブクラスにおける抗体反応の増強は明らかであった(図1-2B)。
【0044】
結論
非アジュバント添加または非常に低用量でのアジュバント添加OVA(これらはIgG1サブクラスでの抗体反応を誘発するのみである)とは反対に、QWTは毒性は低いが、強力なTH1型反応を促進することから示されるように、強力な調節効果をやはり有している。また、QWTマトリックスは低用量のQHCマトリックスと相乗作用を示すことも示している。QWTによりアジュバント効果を最適にし、他のアジュバントの副作用を最小限にすることができるので、この事実は重要である。
【0045】
実施例2
呼吸器多核体ウイルス(RSV)は幼児にとって主要な病原体(hRSV)であるが、高齢者にとっても同様である。密接に関連するウィルス(bRSV)は若い仔牛に重篤な疾患を引き起こす病原体であり、ウシの畜産家にとって甚大な経済的損失を与える。hRSVのエンベロープタンパク質を、それに対するワクチンが存在せず、それが大いに必要とされている病原体由来の抗原を示しているので、モデル抗原として選択した。新生仔マウスは新生児に対するモデルを示し、実質的な副作用がないワクチン製剤を必要とする非常に感受性の強い動物であり、入手可能な試薬技法により重要な免疫反応を測定することができるモデルである。hRSVに対する昔のワクチンを子供で試験したが、疾患に対する防御にはならなかった。反対に、後に自然に感染した場合の疾患を増悪させた。この実験では、本発明者らはISCOM中のキラヤ成分として703を選択して本発明と比較した。というのも、703ワクチン製剤はヒト臨床試験中であり、ヒトワクチンの候補物質だからである。本発明の実験では、QWTiscomと703iscomの毒性を比較する。
【0046】
材料および方法
703およびQWT RSV-ISCOMの製剤
異なるキラヤ・サポニン組成物(A、CおよびAC。すなわち、ISCOPREPTM703)を有するRSVを、基本的にはこれまでに記載されている方法[17, 18]を用いてスクロース勾配により精製したHRSVから製造した。簡単に説明すると、精製RSV(2ml, 1.6mg/ml)を、OG(1-O-n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、C14H28O6, Boehringer, Mannheim, GmbH, FRG)を最終濃度2%(w/v)で用いて37℃で1時間、一定速度で攪拌することにより可溶化した。可溶化したウィルスを不連続スクロース勾配(2ml、50%スクロースのクッションの上に0.5%OG含有20%スクロース層)にアプライした。Kontron TST-41ローター中4℃で1時間、210,000gで遠心分離した後、ウィルスタンパク質を含む20%スクロース層と共にサンプル容量を回収し、残りの脂質(すなわち、コレステロール)およびホスファチジルコリンおよびキラヤ・サポニン(すなわち、QH-AまたはQH-C)またはISCOPREPTM703を、タンパク質:コレステロール:ホスファチジルコリン:キラヤ・サポニン=1:1:1:5の割合(重量比)で加えた。4℃で72時間、0.15M酢酸アンモニウムに対して大容量で透析をした後、ISCOMをKontron TST-41ローター中10℃で18時間、210,000gで10%スクロースで遠心分離することにより精製した。iscomを含むペレットをPBS(200μl)中で再懸濁した。タンパク質濃度をアミノ酸分析により測定した(Aminosyraanalyslaboratoriet, Uppsala, Sweden)。サンプルをネガティブ染色法電子顕微鏡検査にかけた。これら3つのiscomには形態学的な差異は観察されなかった。全て、典型的なiscom構造、すなわち、直径約40nmの籠様の球形粒子を示した。RSV抗原およびiscom構造は遠心分離後の同じスクロース勾配画分に見出すことができた。
【0047】
実験設計
1群当たり少なくとも7匹の同腹仔(1週齢)のマウスに、製剤703iscomまたはQWTiscomのいずれかを用いて腹腔内(i.p.)注射を1回行った。各キラヤ成分の各用量グループはタンパク質含量で0.11μg〜1μgの範囲である(図2-1)。QWTまたは703 (quillaja saponin)タンパク質の重量比は1/1である。仔マウスをi.p.注射後15日間観察した。i.p.注射はおおざっぱな投与態様であるが、マウスは筋肉内注射および皮下投与の態様よりもi.p.注射に対して感受性が強いことに注目すべきである。
【0048】
結果
容量0.66μgおよび1μgの場合、703iscomを注射したマウスはそれぞれ、65および50%が死亡したが、QWTiscomを投与したマウスは、QWTiscomを1μgで投与したマウスを含めて全て生存した。
【0049】
結論
QWT iscomはi.p.経路のような動物モデルにおいて非常に反応性が強い不快な経路による場合でさえ、良好に寛容性がある。ヒト臨床試験が行われている製剤よりも良好な寛容性である。
【0050】
実施例3
この実施例において、hRSVのエンベロープタンパク質GおよびFをワクチン抗原のモデルとして用いて血清抗体反応を試験した。hRSV抗原はワクチンが存在せず、そして必要性が高い病原体由来の抗原を提示することから、hRSV抗原を選択した。新生仔マウスは、免疫学的に未成熟であり、強力な免疫調節能力を有するアジュバント系を必要とする新生仔に関するモデルを示す(W097/30727)。さらに、新生仔マウスは、非常に感受性が強く、実質的に副作用を有さないワクチン製剤を必要とする動物系を提供する。類似のワクチン製剤、すなわち、QWTおよび703iscomを実施例2の記載に従って試験した。
【0051】
材料および方法
QWTおよび703 RSV-iscomの製剤
実施例2を参照のこと。
【0052】
実験設計
1週齢マウスおよび成体マウス(BALB/C)を、新生仔2群および成体2群に分けた。一群当たり同腹新生仔を最低で7匹、および成体マウス8匹をQWT iscomまたは703 iscom製剤中hRSV1μgを用いてi.p.で免疫感作した。新生仔1群および成体マウス1群を1回免疫感作すると同時に、新生仔1群および成体マウス1群には、同様の様式で同じ製剤を用いて1回目の免疫感作の3週間後に追加免疫を行った。実験は全て1回繰り返した。
【0053】
追加免疫の前、および7週目(すなわち、追加免疫の3週間後)に血清を回収した。新生仔はサイズが小さいので、血清は1群から集めた。
【0054】
抗体測定
特異的RSV血清抗体反応は、以下の文献に記載のように、コーティング抗原としてホルマリン死滅RSVウィルス0.1μlを用いてIgG1およびIgG2aサブクラスの両方でELISAにより測定した(Johansson, MおよびLoevgren-Bengtsson (1999) Iscoms with different quillaja saponin components differ in their immunomodulating activities. Vaccine 19,2894- 2900)。
【0055】
結果
結果を図3-1に示す。1回の免疫感作の後、ELISAで測定すると、成体群および新生仔群は両方とも、RSV特異的IgG1抗体に反応した。1回目の免疫感作の後、新生仔マウスでは、QWT iscomは703 iscomよりも高いレベルでRSV特異的IgG1抗体反応を誘発した。または、IgG1およびIgG2a RSV特異的抗体反応を成体および新生仔において誘発する能力に関しては、2つのiscom製剤の間には明瞭な差異はなかった。通常、抗体力価は新生仔の場合よりも成体において10倍高かった。新生仔での免疫感作1回の後のRSVに対するIgG2a反応は、QWTでの免疫感作または703 iscomでの免疫感作にかかわらず、顕著なものではなかった。RSV特異的IgG2aは、成体での免疫感作1回の後に明瞭に測定された。
【0056】
結論
新生仔または成体におけるQWT iscom製剤での1回目ならびに2回目の免疫感作の後の血清抗体反応は、少なくとも、703 iscomを用いた同じ免疫感作スケジュールの後の場合と同じ程度に高かった。QWT iscomが703 iscomよりもかなり毒性が低いことを示す実施例2の結果を考慮すると、QWT iscomはワクチン製剤として好ましい。
【0057】
実施例4
細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) は、細胞内病原体に対する免疫防御に必須である。上記のウィルスに感染した細胞全ては、感染細胞を殺傷することによるCTLの標的である。結果として、CTLはウィルス感染に対する免疫防御の重要な武器である。本実施例は、hRSVエンベロープ抗原を含むQWT iscomが、新生仔および成体マウスの両方において記憶CTLを特異的に誘導し、効率よくプライミングすることを示す。驚くべきことに、未成熟な免疫系を考慮すると、QWT iscomは成体における場合と同様に新生仔において効率よくCTL記憶を誘発した。
【0058】
材料および方法
QWTおよび703 RSV iscomの製剤
QWTおよび703 ISCOMは実施例2に記載するように製造した。
【0059】
動物および実験設計
少なくとも7匹の同腹新生仔(1週齢)および成体BALB/C (H-2Kd)マウス8匹を各実験に用いた。各実験は2回行った。1週齢のマウスまたは成体マウスにQWT iscom(1μg)をi.p.注射した。免疫感作の1週間後および3週間後に、それぞれ、脾細胞(エフェクター細胞)を、6日間、HRSV感染(BCH4)-線維芽細胞(標的細胞)と共にインビトロで培養した(再刺激)。エフェクター/標的 (E/T) の比は2〜100の範囲である(図4-1)。標準方法により、標的細胞溶解物をCr51放出で測定し、特異的溶解%で表した(SL%)。100%溶解は、界面活性剤で処理した細胞からのCr51放出として測定した。バックグラウンドは未感染の線維芽細胞により引き起こされる溶解である(BC) (図4-1を参照)。
【0060】
結果
QWT iscomで新生仔マウスおよび成体マウスをプライミングした1週間後、それらの脾細胞はhRSV感染線維芽細胞(BCH4)でのインビトロでの再刺激に対して強い細胞傷害性T細胞反応を生じた(図4-1)。未感染の標的細胞に対しては溶解は観察されなかった(図4-1のBC)。
【0061】
結論
RSV-QWT iscomは、1週齢マウスおよび成体マウスにおいて強い細胞傷害性T細胞反応を誘発する。強い特異的な細胞傷害性が、免疫感作1回の1週間後にすでに観察される。QWT iscomの強力なアジュバント効果およびその低い毒性を考慮すると、このワクチン送達およびアジュバント系は、ヒトおよび動物ワクチンの両方に関しておそらく非常に価値がある。
【0062】
実施例5
キラヤ・サポニンが強力なアジュバント効果を有することは示されているが、その溶解特性(赤血球細胞の溶解により測定することができる)により副作用が引き起こされてきた。毒性の影響はどのような種類であっても細胞成長または生存細胞の増殖を阻害する。QHCおよびQuil A に類似の精製度の低いキラヤ・サポニンが赤血球細胞を溶解することは確立されている(Roennberg B, Fekadu MおよびMorein B, Adjuvant activity of non-toxic Quillaja saponaria Molina components for use in iscom matrix, Vaccine, 1995 13, (14): 1375-82)。また、キラヤ・サポニンの溶解効果が注射時の局所反応を引き起こしていることは明らかである。サポニンの溶解効果を避ける方法の1つは、それらをISCOMマトリックス中に含ませることである。さらに、比較的副作用が低いキラヤ・サポニンを選択することにより副作用を低減させることができる。本実施例では、QWTマトリックスの効果をVERO細胞(これは霊長類細胞株である)で試験し、QHCおよび703マトリックス製剤と比較する。第2の実験において、マウス由来の脾細胞をQWTおよびQHCマトリックスに暴露した。脾細胞は、免疫反応の誘発に必須のリンパ系の代表例である。代謝活性を測定することにより細胞の増殖を定量的に測定するalamarBlue Assayを使用する。
【0063】
材料および方法
細胞および細胞成長
7%ウシ胎仔血清(上記の通りに入手)を補充したRPMI 1640培地(National Veterinary Institute Uppsala Sweden)中でVero細胞を培養した。75cm2フラスコ(Corning-Costar, Acton MA, USA)で増殖させた後、細胞をプラスチック表面から遊離させ、25〜30 000/mlに希釈し、96ウェル細胞培養プレート(Nunc A/S, Roskilde, Denmark)に1ウェルあたり100μlずつ分配した。培養物をC02雰囲気下で24、48および72時間インキュベートする。QWTまたは703またはQHCを用いて調製したマトリックスを培地中で0〜1300μg/mlに希釈した。細胞培養物を培地から採取し、マトリックス希釈物をウェルに添加する。コントロールとしては培地のみを用いた。試験製剤を用いて、24、48および72時間インキュベーションして試験を行った。ここに示した時間で最も適当な時間は72時間である。コントロールは100%増殖と見なす。
【0064】
細胞成長の記録
代謝活性の測定に基づき細胞の増殖量を測定するAlamarBlueアッセイ(Serotec Ltd, Oxford UK)を、製造業者の説明書の通りに使用した。
【0065】
結果
細胞培養物をQWTマトリックスと濃度1300μg/mlで72時間インキュベーションした後、コントロール培養物と比較して80%の細胞増殖が記録されたが、一方で703マトリックスを800μg/mlの濃度で暴露させた場合には細胞増殖は0%まで低下した。QHCマトリックスに濃度40μg/mlで暴露すると細胞増殖は0%まで減少した。図5-1は、3回の実験のうち1回を示す。これらの結果は類似していた。
【0066】
結論
QWTマトリックスは細胞により良好に寛容され、細胞毒性の影響が非常に低い。
【0067】
第2の実験
脾細胞をQWTおよびQHCマトリックスに暴露した。
【0068】
材料および方法
細胞および細胞増殖
Balb/Cマウス由来の脾細胞を、96ウェル細胞培養プレート(Nunc, Roskilde Denmark)中で7%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地(National Veterinary Institute, Uppsala, Sweden)中で培養した。24、48および72時間のインキュベーション時間でQWT-iscom製剤およびQHC-iscom製剤を用いて脾細胞に試験を行った。記載した時間のうち、最も適切な時間は72時間であった。コントロールを100%増殖と見なす。
【0069】
細胞増殖の記録
代謝活性の測定に基づき細胞の増殖量を測定するalamarBlueアッセイを、製造業者の説明書の通りに使用した。
【0070】
結果
脾細胞培養物をQWTマトリックスに濃度10μg/mlで72時間暴露すると、暴露していない脾細胞(コントロール)培養物と比較して80%の細胞増殖を記録したが、他方、QVCマトリックスに濃度2μg/mlで暴露すると細胞増殖はほぼ0%まで減少した(図5-2AおよびB)。図5-2は3回の実験のうち1回の実験を示す。これらの結果は類似していた。
【0071】
実施例5
キラヤ・サポナリア・モリナのサブフラグメントサポニンの調製
キラヤ・サポナリア・モリナ粗抽出物のA画分、B画分およびC画分への精製
キラヤ樹皮水性粗抽出物(0.5ml、0.5g/ml)を、sep-pakカラム(Waters Associates, MA)で前処理した。前処理は、ロードしたsep-pakカラムを酸性水溶液中10%アセトニトリルで洗浄して親水性物質を取り除く工程を包含する。次いで、QH-A、QH-BおよびQH-Cを含む親油性物質を水中70%アセトニトリルで溶離する。
【0072】
次いで、sep-pakカラムからの親油性画分を半分取HPLCカラム(CT-sil, C8,10×250mm, ChromTech, Sweden)により分離する。酸性水溶液中25%〜60%アセトニトリルの勾配によりサンプルをカラムに通して溶離する。分離工程の間にHPLCカラムから3画分を回収する。これら3画分を留去した後の残渣は、QH-A、QH-BおよびQH-Cを構成する。
【0073】
QH-A、QH-BおよびQH-Cと命名した画分を、それぞれ、約39、47および49%アセトニトリルで溶離した。正確な溶離プロフィールおよび条件は図6に示す。
【0074】
実施例6
OVAは強力な免疫反応を誘導するためにアジュバントを必要とする弱い抗原である。それゆえ、アジュバント候補物をOVAと共に試験すると、抗体レベルを測定すると量的免疫増強を示すか、または免疫調節効果を測定すると質的な免疫増強を示す。調節効果は、例えば、抗原特異的IgGサブクラスの反応を促進する能力により記録される。主にIgG1抗体による反応はTh2型反応に重要であり、他方、IgG2aはTh1型反応に重要である。IgG1およびIgG2aの両方における反応はTh1とTh2との間の免疫調節のバランスに関与する。本実施例は、QWTマトリックスがより毒性の高いQHCマトリックスと相乗的に作用して、比較的低用量で、かつ良好に寛容された用量でQHCマトリックスを最適な効果で用いることを可能にすることを実証するために行う。
【0075】
材料および方法
QWTおよびQHCマトリックス
これらのキラヤサポニン構成成分(実施例5参照)は、実施例1に記載するように入手し、ISCOMマトリックス中に処方した。オボアルブミン(OVA)はSigma (St Louis, USA)から得た。
【0076】
実験設計
全マウスを全用量100μlで尾の付け根部分に皮下注射(s.c.)で免疫感作した。第1群は、4週間間隔で2回免疫感作したBalb/cマウス8匹からなる(OVAを5μg、アジュバント添加無し)。第2群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(QWTマトリックス(6μg)をアジュバント添加したOVAを5μg)。第3群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(QHCマトリックス(6μg)をアジュバント添加したOVAを5μg)。第4群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(OVA5μg、低用量のQHCマトリックス(2μg)補充およびQWTマトリックス6μg補充)。1回目の免疫感作の前、プライミングの3週間後、および追加免疫の2週間後に血清を回収した。
【0077】
抗体測定
血清抗体測定(全IgG、およびサブクラスIgG1およびIgG2aを含む)を実施例1に記載するようにELISAで行った。
【0078】
結果
プライミングの後(図7−1)、OVA+QWTマトリックスで免疫感作したマウス8匹(第2群)のうち1匹と、OVA+QHCマトリックスで免疫感作した群のマウス8匹(第3群)のうち2匹とで、1:100を超えるIgG反応があった。反対に、QWTマトリックスを補充した低用量のQHCマトリックスで免疫感作した群のマウス8匹(第4群)は全て、IgG反応を伴って反応した。OVA単独で免疫感作したマウスは、いずれも一次免疫感作の後は1:100を超える力価では反応しなかった。
【0079】
プライミングの後、QWTマトリックスと低用量QHCマトリックスとを組み合わせて免疫感作した群のマウス8匹(第4群)のうち2匹は1:100より高い抗原特異的IgG2a反応で反応した。他の群ではプライミングの後にIgG2a反応は記録されなかった。
【0080】
追加免疫の後(図7−2)、第2群、第3群および第4群のマウスは全て1:100より高いIgG力価で反応した。しかしながら、第2群および第3群における力価は2log(2桁)(それぞれ、3700〜295000および3100〜400000)を超えて変動するが、第4群における力価の変動はlogの1/10未満(同一桁)であった(260000〜350000)。
【0081】
プライミングの後のIgG1の結果はIgG(全)反応の結果を反映する。それゆえ、これらの結果は図示されていない。
【0082】
追加免疫後の抗原特異的IgG2a反応は、OVA+QWTマトリックスを与えた第2群においては無視し得るものであった。第1群および第3群はIgG2aサブクラスの種々の反応を示したが、OVA+QWTマトリックスおよび2μgのQHCマトリックスを与えた第4群では、全マウスが高力価のIgG2aを、1logの範囲内で示した。
【0083】
結論
低用量のQWTマトリックスは良好に寛容され、本実施例で用いた用量では副作用は測定されなかったが、実施例1で示されるような数倍高い用量でもまた寛容されている。本実施例では、QHCマトリックスを低用量で使用し、良好に寛容されているが、これはそれ自体はアジュバントとしては最適用量未満での使用である。QWTマトリックスおよびQHCマトリックスは良好に寛容されるアジュバント製剤中で相乗的に作用することが本実施例において良好に実証されている。本実施例における併用製剤中で用いたQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの用量はいずれも低すぎてそれら自体単独では有効ではないので、相乗作用を示すという点を重視すべきである。
【0084】
実施例7
本実施例において、QWTマトリックスの相乗効果を強力なアジュバント活性細菌由来化合物であるモノホスホリル脂質A(MPL)およびコレラ毒素(CT)で試験した。弱い抗原であるOVAの免疫原性の増強に関して評価する。NMRI非近交系マウスを用いた。これはBalb/Cマウスとは反対に、容易にTH1およびTH2型(これらは、IgG2a(Th1)およびIgGl (Th2)抗体レベルにより反映される)免疫で反応する。
【0085】
材料および方法
OVA QWT iscom
これらのISCOMは、製剤にパルミチン酸化(palmitified)OVA(pOVA)を1mg/コレステロールの濃度で添加したことを除き、基本的には実施例1においてQWTマトリックスに関して記載したように製造した。pOVA-iscomの調製は、Vaccine 17 (1999)にJohanssonおよびLoevgren-Bengtsson(p2894)により記載されている。CTはKeLab, Gothenburg, Sweden. MPL (L6895)から市販されており、OVAはSigma (St. Louis, USA)から市販されている。
【0086】
実験設計
全マウスを全容量100μlで尾の付け根部分に皮下注射(s.c.)して免疫感作した。第1群は、4週間間隔で2回免疫感作したNMRIマウス8匹からなる(OVA5μg、アジュバント添加無し)。第2群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(OVA5μg、QWTを6μg含有し、追加のアジュバントは含有しないQWT iscomに組み込んでいる)。第3群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(OVA5μg(第1群と同様)、高用量のCTでアジュバント添加(1μg))。第4群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(OVA5μg(第1群と同様)、高用量のMPLでアジュバント添加(50μg))。第5群は、免疫感作したマウス8匹からなる(QWT-ISCOM中のOVA5μg(第2群と同様)、低用量CT(0.2μg)を補充)。第6群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(低用量MPL(10μg)でアジュバント添加したQWT-ISCOM中のOVA5μg(第2群と同様))。プライミングの3週間後、および追加免疫注射の2週間後に血清を回収した。
【0087】
抗体測定
血清抗体測定(全IgG、およびサブクラスIgG1およびIgG2a)を実施例1に記載するようにELISAで行った。
【0088】
結果
結果を図8に示す。
最初の免疫感作の後、全IgGレベルは第2群〜第6群については同程度であり、OVAに対するIgG2a抗体反応は全ての群のマウスにおいて低かった(図示せず)。
【0089】
追加免疫の後(図8A)、OVA単独で免疫感作したマウスは低レベルの血清IgGを伴って反応した。低用量のCT (0.2μg)を補充したQWT-ISCOM中のOVAは、高用量のCT(1μg)をアジュバント添加したOVAよりも7倍高いレベルでIgGを誘導した。低用量のMPL (10μg)を補充したQWT-ISCOM中のOVAは、高用量のMPL(50μg)をアジュバント添加したOVAよりも2倍高いレベルでIgGを誘導した。
基本的に、IgG1は全IgG抗体反応により反映されるので、図示しない。
【0090】
IgG2aサブクラス内で抗体反応を測定すると、より大きい差異が記録された(図8B)。低用量のMPLは、高用量のMPLをアジュバント添加したOVAと比較して、QWT-ISCOM製剤中のOVAにより、IgG2a血清抗体レベルに関して約10倍増強された。さらに著しい点は、高用量のCTを用いて製剤化したOVAと比較して、低用量のCTを用いたOVA-QWT-ISCOMにより、IgG2a反応が100倍高められたことである。
【0091】
結論
低用量のCTまたはMPLと共に製剤化したQWT-ISCOM中のOVAは、QWTを含まない高用量MPLまたはCTの対応する製剤よりも、かなり免疫原性が高かった。OVAの免疫原性のQWT-ISCOMによる増強はIgG2aサブクラスにおいて最も目立つものであり、これは個々の製剤におけるQWT構成成分の強い免疫調節効果を示す。Th1調節はTh2調節よりも目立つが、QWT-ISCOMに連動した調節は平衡が保たれていた。Th1の促進効果は、CTよりも突出しており、これはCTがMPLよりもTh2促進性であるという事実により説明される。
【0092】
実施例8
細菌またはウィルスに対するワクチンの場合によくあることだが、ワクチンは粒子型の抗原から構成されることが多い。他方、毒素は、例えば、ホルマリンでの処理により、トキソイドへと変換して解毒された可溶性抗原である。実施例1(図1-2A、BおよびC)および実施例6および7において、低用量で、かつ良好に寛容される用量のQHCマトリックス、CTまたはMPLを補完するためにQWTマトリックスを用いると、弱い可溶性抗原OVAの免疫原性がQWTマトリックスの相乗効果により強く増強されることが示されている。
【0093】
本実施例において、市販の可溶性である免疫原性ワクチン抗原である破傷風トキソイド(TT)に、コレラ毒素(CT)を補充する。これはTh2型反応を促進する強いアジュバントであるが比較的低用量で毒性である。TTおよびQWTマトリックスを補充したCTをアジュバント添加したもので免疫感作したマウス群も、本実施例に含む。QWTマトリックスは、CT反応の調節が低用量のCTで達成され、良好に寛容化されたCT/QWT製剤(これは相乗効果により良好に寛容化されている)が得られることを示すために添加する。
【0094】
材料および方法
QWTマトリックス
QWTマトリックスは実施例1に記載したように処方した。
【0095】
TTおよびCT
TTはThe State SERUM Institute, Copenhagen, Denmarkから市販されているものを入手した。
CTはKeLab, Gothenburg, Swedenから市販されているものを入手した。
【0096】
実験設計
全マウスにワクチン100μlで尾の付け根部分に皮下注射(s.c.)で免疫感作した。第1群は、4週間間隔で2回免疫感作した近交系NMRIマウス6匹からなる(2.5Lf TT、アジュバント添加無し)。第2群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5Lf TT、低用量のCT(1μg)でアジュバント添加)。第3群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5Lf TT、低用量のCT(0.2μg)でアジュバント添加)。第4群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5LF TT、低用量のCT(0.2μg)でアジュバント添加、QWTマトリックス10μgを補充)。
プライミングの3週間後、および追加免疫注射の2週間後に血清を回収した。
【0097】
抗体測定
抗体測定は、抗原がELISAプレート(Nunc)をコーティングしたTT(濃度1μg/ml)であることを除き、実施例1に記載するようにELISAで行った。
【0098】
結果
抗原特異的IgGとして測定した明らかな一次抗体反応は4群全てで記録され、これはTTが比較的強い免疫原であることを示す。低用量のCT(0.2μg)でアジュバント添加し、QWTマトリックスを補充したTTは、他の製剤と比較して約3倍強い一次IgG反応を誘導した(図9-1A)。
【0099】
追加免疫の後、TTをアジュバントに補充した場合は全IgG反応は全ての群において上昇した(9-1B)が、TT単独を用いて免疫感作したマウスでは2回目の免疫感作により抗体レベルは有意に上昇することはなかった。
【0100】
1回の免疫感作後のTh1型の免疫反応を示すIgG2a反応は、QWTマトリックスを補充した低用量のCT(0.2μg)をアジュバント添加したTTで免疫感作したマウス(第4群)においてのみ誘導された(9-2A)。
【0101】
追加免疫の後、QWTマトリックスのマウス群は最も高力価のIgG2aを伴って反応した(9-2 B)。低用量のCT(0.2μg)でアジュバント添加したTTで免疫感作した第3群のマウスは非常にわずかな、または非常に力価の低いTT特異的IgG2抗体を伴う反応を示した。
【0102】
結論
TTはTh2型反応を促進する比較的強い可溶性免疫原である。CTはTh2型反応をも促進する強いアジュバント効果を有する強力な毒素である。本実験において、低用量のCTを補充したTT抗原に添加した場合、QWTマトリックスは宿主が抗原特異的IgG2a抗体をも伴って反応するように強く促進(調節)されることが示された。Th2を強く駆動するCTのアジュバント効果が、QWTマトリックスによりTh1を指向するように調節されることは興味深いことである。それゆえ、QWTマトリックスをアジュバントであるCTと併用すると強力な免疫調節効果を有する。
【0103】
実施例9
本実施例では、市販の可溶性ワクチン抗原である破傷風トキソイド(TT)に、Th1型反応を促進する強力なアジュバントのモノホスホリル脂質A(MPL)を補充する。低用量のMPLにQWTマトリックスを補充して、MPL存在下でのTT抗原に対するQWTマトリックスの調節および相乗効果を実証した。
【0104】
材料および方法
QWTマトリックス
QWTマトリックスは実施例1に記載したように処方した。
【0105】
TTおよびMPL
TTはThe State SERUM Institute, Copenhagen, Denmarkから市販されているものを入手した。MPL(L6895)はSigma(St. Louis, USA)製である。
【0106】
破傷風トキソイド(TT)
TTはThe State SERUM Institute, Copenhagen, Denmarkから市販されているものを入手した。
【0107】
実験設計
全マウスをワクチン100μlで尾の付け根部分に皮下注射(s.c.)して免疫感作した。第1群は、4週間間隔で2回免疫感作した近交系NMRIマウス6匹からなる(2.5Lf TT、アジュバント添加無し)。第2群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5Lf TT、高用量のMPL(50μg)でアジュバント添加)。第3群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5Lf TT、低用量のMPL(10μg)でアジュバント添加)。第4群は、4週間間隔で2回免疫感作したマウス8匹からなる(2.5LF TT、低用量のMPL(0.2μg)でアジュバント添加、QWTマトリックス10μgを補充)。
プライミングの3週間後、および追加免疫注射の2週間後に血清を回収した。
【0108】
抗体測定
実施例8に記載するように行った。
【0109】
結果
抗原特異的IgGとして測定される明らかな一次抗体反応が4群全てで記録され、このことはTTが比較的強い免疫原であることを示す(10-1A)。低用量のMPL(10μg)でアジュバント添加し、QWTマトリックスを補充したTTは、MPL(10μg)をアジュバント添加したTT製剤よりも約2倍高い一次IgG反応を誘導した。
【0110】
追加免疫の後、全IgG抗体反応はTTがアジュバントを補充されている群全てにおいて実質的に増加していた(10-2B)が、TT単独で免疫感作したマウスでは、2回目の免疫感作での抗体レベルは有意には増加しなかった。QWTマトリックスを補充し、MPL(10μg)をアジュバント添加したTTを用いて免疫感作したマウスは、100倍より高い特異的IgG反応を伴って反応し(10-1B)、これは低用量のMPL(10μg)は補充しているがQWTマトリックスは含まないTTで誘発した反応よりも約8倍高いものであった。
【0111】
IgG1反応は、一次免疫感作および二次免疫感作の後のいずれにおいても、全IgG反応と同じプロフィールを示した。
【0112】
QWTマトリックスを補充し、低用量のMPL(10μg)をアジュバント添加したTTを用いて免疫感作したマウスは、低用量のMPL(10-2A)を補充したTTで免疫感作したマウスよりも10倍より高いIgG2a力価で反応した。他の群のマウスは顕著な一次IgG2a反応を発達させなかった。
【0113】
追加免疫の後、QWTマトリックスを補充し、低用量のMPL(10μg)をアジュバント添加したTTで免疫感作したマウスは、最も高いIgG2a力価で反応した。これは他の群のマウスよりも100倍を超えて高いものであった(10-2B)。
【0114】
結論
QWTマトリックス+抗原および/またはMPLはIgG2a抗体反応のみならず、IgG1をも強く増加させるが、これはMPL存在下におけるTT抗原に対する強力な平衡化された免疫調節効果を示す。TTの強力な免疫原性は、MPL自体はTT抗原に対する全IgGまたはIgG2aまたはIgG1の反応を増強しないか、またはわずかに増強するのみであるという事実により強調される。これは、MPLのような強力なアジュバントはTTのような強力な免疫原の存在下では制限された免疫調節効果を有するかもしれないことを示す。反対に、QWTはMPLを用いた場合に効果が共存的であり、このことはこの組合せが強力な免疫調節効果を有するという事実により実証される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1−1】Balb/Cマウス(本文を参照)での抗体反応を増強するためにOVAに補充した場合において、マトリックス中高用量のQHC(50μg)は毒性があるが、マトリックス中高用量のQWTは毒性ではない。2回目の免疫感作の3週間後にELISAで全IgG反応(A)およびIgG2サブクラス(B)について測定すると、OVAと比較して、製剤は両方とも同様の特異的抗体反応を増強した。
【図1−2】Balb/Cマウス(本文を参照)での抗体反応を向上させるためにOVAに補充した場合のQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの相乗効果。QWTマトリックスおよびQHCマトリックスの用量は以下に記載の範囲にわたる。(第1群)QWTまたはC無し。(第2群)QWTを0.3μg、C無し。(第3群)QWTを0.3μg+Cを2μg。(第4群)QWTを10μg、C無し。(第5群)QWTを10μg+Cを2μg。OVAの用量は10μgとした。各群8匹のマウスを、個々の製剤を用いて4週間間隔でs.c.で免疫感作した。ELISAによりOVAに対する抗体力価を測定した。A.1回目の免疫感作の3週間後の全IgG。B.二回目の免疫感作の2週間後のIgG2a。C.2回目の免疫感作の2週間後のIgG1。
【図2−1】iscom(1μg、タンパク質)を用いた腹腔内注射1回の後でのマウス新生仔(1週齢)の生存率により測定したQWTおよびAC(すなわち、703)呼吸器合胞体ウィルス(RSV)iscomの毒性。タンパク質/サポニンの比は1/1である。
【図3−1】iscom(1μg、タンパク質)を用いた腹腔内免疫感作1回および追加免疫3週間後でのマウス新生仔(1週齢)および成体マウスの抗体反応。タンパク質/サポニンの比は1/1である。
【図4−1】iscom(1μg、タンパク質)を用いた腹腔内免疫感作1回の後での細胞傷害性T細胞(CTL)反応。タンパク質/サポニンの比は1/1である。腹腔内免疫感作の1週間後および3週間後に脾細胞を回収した。
【図5−1】非暴露細胞培養物に対する比の増殖率(%)で測定した場合、72時間培養物を曝した後はQWTマトリックスは703マトリックスおよびCマトリックスよりもVERO細胞(サル細胞株)に対する毒性が低かった。QWTマトリックスは試験した濃度全て(すなわち、最大1300μg)で良好に寛容される。703マトリックス800μg、またはQHCマトリックス45μgに曝した細胞培養物では細胞増殖は記録しなかった。A.VERO細胞を記載の通りにQWTマトリックスおよび703マトリックスに曝した。B.記載の通りにVERO細胞をQHCマトリックスに曝した。
【図5−2】本文に記載の比色法により測定した増殖率によると、QWTマトリックスは、培養物に72時間曝した後のマウス由来脾細胞に対する毒性がCマトリックスよりも低い。増殖率は、培地単独か、またはマイトジェンCon Aを含有する培地で増殖させた脾細胞を比較した。A.記載の通りにQWTマトリックスを漸減濃度(10〜1.25μg)の用量で脾細胞に曝す。B.記載の通りにQHCマトリックスを漸減濃度(10〜1.25μg)の用量で脾細胞に曝す。
【図6】本図面はHPLCによるA、BおよびC画分の調製を示す。
【図7−1】本図面はQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの相乗効果を示す。各群8匹の雌性Balb/cマウスを以下の処方で尾の付け根でs.c.で免疫感作した:オボアルブミン(OVA)単独(5μg)(第1群)、またはそれぞれ、Aマトリックス(第2群)もしくはCマトリックス(第3群)との併用物、またはAマトリックスおよびCマトリックスの混合物との併用物(第4群)。マウスを0週目および4週目に免疫感作し、血清サンプルを3週目(プライミング時)および6週目(追加免疫時)に採取した。抗原特異的抗体IgGまたはサブクラス(IgG1およびIgG2a)について血清をELISAで試験した。OVA(5μg)に対する抗体反応は、QWTマトリックスおよびQHCマトリックスのいずれかをそのまま使用した場合と比較して、これらを組み合わせた場合に強く増強される。特に、IgG2a反応が増強されている。増強はプライミングの3週間後(IgGおよびIgG2a、7−1AおよびB)ならびに追加免疫の2週間後(IgG、IgG1およびIgG2a、7−2A、BおよびC)に示される。
【図7−2A】本図面はQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの相乗効果を示す。各群8匹の雌性Balb/cマウスを以下の処方で尾の付け根でs.c.で免疫感作した:オボアルブミン(OVA)単独(5μg)(第1群)、またはそれぞれ、Aマトリックス(第2群)もしくはCマトリックス(第3群)との併用物、またはAマトリックスおよびCマトリックスの混合物との併用物(第4群)。マウスを0週目および4週目に免疫感作し、血清サンプルを3週目(プライミング時)および6週目(追加免疫時)に採取した。抗原特異的抗体IgGまたはサブクラス(IgG1およびIgG2a)について血清をELISAで試験した。OVA(5μg)に対する抗体反応は、QWTマトリックスおよびQHCマトリックスのいずれかをそのまま使用した場合と比較して、これらを組み合わせた場合に強く増強される。特に、IgG2a反応が増強されている。増強はプライミングの3週間後(IgGおよびIgG2a、7−1AおよびB)ならびに追加免疫の2週間後(IgG、IgG1およびIgG2a、7−2A、BおよびC)に示される。
【図7−2B】本図面はQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの相乗効果を示す。各群8匹の雌性Balb/cマウスを以下の処方で尾の付け根でs.c.で免疫感作した:オボアルブミン(OVA)単独(5μg)(第1群)、またはそれぞれ、Aマトリックス(第2群)もしくはCマトリックス(第3群)との併用物、またはAマトリックスおよびCマトリックスの混合物との併用物(第4群)。マウスを0週目および4週目に免疫感作し、血清サンプルを3週目(プライミング時)および6週目(追加免疫時)に採取した。抗原特異的抗体IgGまたはサブクラス(IgG1およびIgG2a)について血清をELISAで試験した。OVA(5μg)に対する抗体反応は、QWTマトリックスおよびQHCマトリックスのいずれかをそのまま使用した場合と比較して、これらを組み合わせた場合に強く増強される。特に、IgG2a反応が増強されている。増強はプライミングの3週間後(IgGおよびIgG2a、7−1AおよびB)ならびに追加免疫の2週間後(IgG、IgG1およびIgG2a、7−2A、BおよびC)に示される。
【図7−2C】本図面はQWTマトリックスおよびQHCマトリックスの相乗効果を示す。各群8匹の雌性Balb/cマウスを以下の処方で尾の付け根でs.c.で免疫感作した:オボアルブミン(OVA)単独(5μg)(第1群)、またはそれぞれ、Aマトリックス(第2群)もしくはCマトリックス(第3群)との併用物、またはAマトリックスおよびCマトリックスの混合物との併用物(第4群)。マウスを0週目および4週目に免疫感作し、血清サンプルを3週目(プライミング時)および6週目(追加免疫時)に採取した。抗原特異的抗体IgGまたはサブクラス(IgG1およびIgG2a)について血清をELISAで試験した。OVA(5μg)に対する抗体反応は、QWTマトリックスおよびQHCマトリックスのいずれかをそのまま使用した場合と比較して、これらを組み合わせた場合に強く増強される。特に、IgG2a反応が増強されている。増強はプライミングの3週間後(IgGおよびIgG2a、7−1AおよびB)ならびに追加免疫の2週間後(IgG、IgG1およびIgG2a、7−2A、BおよびC)に示される。
【図8】本図面は、OVA(5mg)単独(第1群)、QWTとの併用物(第2群)、QWTおよびCTの混合物との併用物(第3群)、またはQWTおよびMPLの混合物との併用物(第4群)をそれぞれ用いて免疫感作した後のOVAに対する抗体反応(全IgGおよびIgG2a)を示す。CTまたはMPLと合わせて投与したQWTマトリックスのアジュバント相乗効果を弱い免疫原であるOVAに関して示す。IgG反応(A)および特に、IgG2aサブクラス(B)の特異的増強(免疫調節)の程度の両方に注目すべきである。
【図9−1】本図面は、TT(破傷風トキソイド、2.5Lf)を単独またはCT(1または0,2μg)と併用、またはQWTおよびCT(0.2μg)の混合物と併用して免疫感作した後の、TTに対する抗体反応(全IgG)を示す。(Aは1回目の免疫感作の後、およびBは追加免疫の後)
【図9−2】本図面は、TT(破傷風トキソイド、2.5Lf)を単独で、CT(1または0.2μg)と併用して、またはQWTおよびCT(0.2μg)の混合物と併用して、免疫感作した後の、TTに対する抗体反応(IgG2A)を示す。(Aは1回目の免疫感作の後、およびBは追加免疫の後) 破傷風トキソイド(TT)に対する抗体反応として測定した場合、コレラ毒素(CT)のアジュバント効果はQWTマトリックスの添加により増強され、調節される。QWTマトリックスを低用量のCT(0,2μg)に添加した後のIgG反応はCT1μgを添加した場合と同じ範囲である(図9−1AおよびB)。しかしながら、IgG2a反応(9−2AおよびB)は強く増強され、これはQWTマトリックスおよびCTの相乗的調節効果を示している。
【図10−1】本図面は、TT(破傷風トキソイド、2.5Lf)を単独またはMPL(50または10μg)と併用、またはQWTおよびMPL(10μg)の組合せと併用して免疫感作した後の、TTに対する抗体反応(全IgG)を示す。(Aは1回目の免疫感作の後、およびBは追加免疫の後)
【図10−2】本図面は、TT(破傷風トキソイド、2.5Lf)を単独またはMPL(50または10μg)と併用、またはQWTおよびMPL(10μg)の組合せと併用して免疫感作した後の、TTに対する抗体反応(IgG2a)を示す。(Aは1回目の免疫感作の後、およびBは追加免疫の後) 破傷風トキソイド(TT)に対する抗体反応として測定したモノホスホリル脂質A(MPL)のアジュバント効果はQWTマトリックスの添加により増強され、調節される。低用量のMPL(10μg)に対するQWTマトリックス添加後のIgG反応は50および10μgのMPLのいずれの場合よりも高かった(図10-1)。IgG2a反応(10-2)は強く増強され、これはQWTマトリックスおよびMPLの相乗的調節効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫反応および免疫調節活性の増強を含む相乗効果を備えたアジュバント組成物の製造のための、Quil AのA画分と少なくとも1種の他のアジュバントの使用。
【請求項2】
少なくとも1種の他のアジュバントが、キラヤ・サポナリア・モリナの粗サポニン抽出物に由来するサポニン(天然またはその誘導体、合成または半合成のサポニン分子、例えば、Quil Aに由来するサポニンおよびサポニン画分)、細胞壁骨格、ブロックポリマー(例えば、親水性ブロックコポリマー、例として、CRL-1005、TDM(トレハロースジミコレート)、リポペプチド、LPSおよびLPS誘導体)、異なる細菌種に由来する脂質A及びその誘導体(例えば、モノホスホリル脂質A、CpG変異体、CpGODN変異体、外来性ヒト動物免疫調節剤(例えば、GM-CSF)、IL-2、天然または修飾型のアジュバント活性細菌毒素(例えば、コレラ毒素CTおよびそのサブユニットであるCTBおよびCTA1)、大腸菌の易熱性毒素(LT)、または百日咳菌(BP)毒素およびBPの線維状赤血球凝集素(filamentus heamagglutenin)から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Quil A由来のサポニン画分がQuil AのC画分またはB画分から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも1種のアジュバントが1つのiscom粒子に組み込まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
Quil AのA画分が1つのiscom粒子に組み込まれており、少なくとも1種の他のアジュバントが別のiscom粒子に組み込まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1種の他のアジュバントが別個のiscom粒子に組み込まれている、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
Quil AのA画分は1つのiscom粒子に組み込まれており、少なくとも1種の他のアジュバントが遊離していて、いずれのiscom粒子にも組み込まれていない、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
遊離していて、いずれのiscom粒子にも組み込まれていない少なくとも1種の他のアジュバントがモノホスホリル脂質Aおよび/またはコレラ毒素CTである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
iscom粒子がiscom複合体である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
iscom粒子がiscomマトリックス複合体である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
組成物が、Quil AのA画分およびC画分の総重量に対して、フラグメントAを50-99.9%、フラグメントCを0.1-50%および/またはB画分および/または他の画分またはQuil Aの誘導体を含有している、請求項3〜7、9または10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
組成物が、Quil AのA画分およびC画分の総重量に対してフラグメントAを75-99.9%、フラグメントCを0.1-25%および/またはB画分および/または他の画分またはQuil Aの誘導体を含有している、請求項11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
iscom粒子が、Quil AのA画分およびC画分の総重量に対してフラグメントAを91-99.1%、フラグメントCを0.1-9%および/またはB画分および/または他の画分またはQuil Aの誘導体を含有している、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
組成物が製薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤または添加剤を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図3−1】
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【図4−1】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2A】
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【図7−2B】
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【図7−2C】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公表番号】特表2007−527386(P2007−527386A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518582(P2006−518582)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001038
【国際公開番号】WO2005/002620
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506008010)イスコノヴァ・アクチボラゲット (1)
【氏名又は名称原語表記】ISCONOVA AB
【Fターム(参考)】