説明

毛情報測定方法

【課題】画像処理によって毛情報を測定する毛情報測定方法を提供する。
【解決手段】体毛を撮像した原画像を構成する画素を、体毛の領域を構成する体毛画素と、体毛でない領域を構成する背景画素とに分ける体毛特定処理S1と、それぞれ体毛特定処理S1において得られた体毛画素からなる連結領域である各体毛領域についてそれぞれ細線化した細線化領域を得る細線化処理S2と、体毛特定処理S1で得られた体毛領域と細線化処理S2で得られた細線化領域とを用いて毛情報を測定する測定処理S3とを含む。体毛を撮像した原画像に対して体毛特定処理と細線化処理とで施された画像処理の結果を用いて、測定処理において毛情報が測定されるから、客観的且つ正確な毛情報を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体毛を撮影した画像を用いて体毛の情報(毛情報)を測定する毛情報測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭髪・脛毛・腋毛・髭などの体毛と、体毛を形成する毛母細胞とは、毛母細胞が分裂することにより体毛が太さや長さを増す成長期、毛母細胞の分裂が減少することにより体毛の成長が衰える退行期、毛母細胞の分裂が完全に止まる休止期を経て、再び成長期に戻るというサイクルを繰り返す。成長期・退行期・休止期のそれぞれの長さは頭髪・脛毛・腋毛・髭といった部位毎に異なっており、頭髪では成長期が2〜6年、休止期が3〜4ヶ月といわれるのに対し、腋毛は成長期・休止期ともに3〜5ヶ月といわれている。また、同じ部位であっても体毛毎に上記のサイクルは独立している。
【0003】
また、従来から、脛毛や腋毛に対して使用される脱毛クリームや、髭に対して使用される髭剃りや、頭髪に対して使用される育毛剤など、体毛を対象とする種々の装置や薬剤が提供されている。
【0004】
この種の装置や薬剤の開発に当っては、体毛に関する情報(毛情報)を評価することが必要となる場合がある。
【0005】
例えば、開発された育毛剤の効果を判断するためには、育毛剤の投与開始前の所定期間と、育毛剤の投与開始後の所定期間とのそれぞれについて、成長期にある頭髪の本数や頭髪の成長の速さを評価し、これらの評価の結果を育毛剤の投与開始の前後で比較する必要がある。
【0006】
そして、上記のような評価は、かつては手触りや見た目といった主観的評価によって行われていたが、毛情報の評価は客観的且つ正確な測定によって行われることが望ましい。
【0007】
体毛の長さなどの視覚的に把握できる情報を客観的且つ正確に測定するには、画像処理技術を用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−90932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
画像処理によって毛情報を測定する方法は、未だ十分には確立されていない面がある。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、画像処理によって毛情報を測定する毛情報測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、体毛を撮像した原画像を構成する画素を、体毛の領域を構成する体毛画素と、体毛でない領域を構成する背景画素とに分ける体毛特定処理と、それぞれ体毛特定処理において得られた体毛画素からなる連結領域である各体毛領域についてそれぞれ細線化した細線化領域を得る細線化処理と、体毛特定処理で得られた体毛領域と細線化処理で得られた細線化領域とを用いて毛情報を測定する測定処理とを含むことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、体毛を撮像した原画像に対して体毛特定処理と細線化処理とで施された画像処理の結果を用いて、測定処理において毛情報が測定されるから、客観的且つ正確な毛情報を得ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、測定処理では、細線化処理で得られた細線化領域において互いに隣接する画素の中心間の距離の総和に基いて、毛情報としての体毛の長さを測定することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、測定処理では、体毛特定処理で得られた体毛領域の輪郭を構成する画素の中心と、細線化処理によって前記体毛の領域が細線化された細線化領域の中心の画素の中心との距離の最小値に基いて、毛情報としての体毛の太さを測定することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、体毛特定処理は、体毛画素であるか背景画素であるかが原画像での画素値に応じて決定された2値化画像を生成する2値化処理を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、体毛特定処理は、2値化画像において近傍画素が全て背景画素であるような体毛画素を背景画素に変換する孤立点除去処理を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、体毛特定処理は、2値化画像において面積が所定のノイズ閾値未満であるような体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換するノイズ除去処理を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、体毛特定処理は、体毛の輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、輪郭抽出処理によって抽出された輪郭を構成する画素と該輪郭に囲まれた画素の少なくとも一部とをそれぞれ体毛画素とした領域抽出画像を生成する領域抽出処理とを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、領域抽出処理は、輪郭抽出処理によって抽出された輪郭を構成する画素を中心とする所定範囲の各画素をそれぞれ体毛画素とした膨張画像を生成する膨張処理を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、領域抽出処理は、膨張画像において近傍画素が全て体毛画素であるような背景画素を体毛画素に変換した平滑化画像を生成する平滑化処理を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項7〜9のいずれかの発明において、輪郭抽出処理は、各画素についてそれぞれ近傍画素の画素値の加重和を演算する加重和処理を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項7〜10のいずれかの発明において、体毛特定処理は、領域抽出画像において近傍画素が全て背景画素であるような体毛画素を背景画素に変換する孤立点除去処理を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項7〜10のいずれかの発明において、体毛特定処理は、領域抽出画像において面積が所定のノイズ閾値未満であるような体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換するノイズ除去処理を含むことを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかの発明において、測定処理は、細線化領域の延長方向に基いて該細線化領域が1本の体毛に対応するか否かを判定する方向値分析を各細線化領域についてそれぞれ行う方向値分析処理を含むことを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれかの発明において、体毛特定処理の後であって少なくとも測定処理の前に、体毛特定処理で得られた体毛領域のうち操作入力によって指定された体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換する除去指定処理を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項15の発明は、請求項1〜14のいずれかの発明において、原画像において体毛特定処理と細線化処理と測定処理との対象とすべき領域が操作入力によって指定される対象領域指定処理を、体毛特定処理の前に含むことを特徴とする。
【0026】
請求項16の発明は、請求項1〜15のいずれかの発明において、測定処理は、それぞれ異なる日時に撮像された2枚の原画像において互いに対応する複数組の特徴点を操作入力によって指定され、一方の原画像の各特徴点をそれぞれ他方の原画像における対応する特徴点に写像する変換を算出するとともに、得られた変換に基いて、各原画像においてそれぞれ体毛特定処理によって得られた体毛領域のうち互いに共通の体毛に対応する体毛領域の組を判定する同定処理を含むことを特徴とする。
【0027】
請求項17の発明は、請求項16の発明において、測定処理は、同定処理において互いに共通の体毛に対応すると判定された体毛領域及び該体毛領域に対応する細線化領域から得られる毛情報の、原画像間での差に基いて、各体毛領域についてそれぞれ対応する体毛が成長期にあるか否かを判定する成長期判定処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、体毛を撮像した原画像に対して体毛特定処理と細線化処理とで施された画像処理の結果を用いて、測定処理において毛情報が測定されるから、客観的且つ正確な毛情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施形態1)
本実施形態の毛情報測定方法は、図1に示すように、体毛を撮像した原画像を構成する画素を、体毛の領域を構成する体毛画素と、体毛でない領域を構成する背景画素とに分ける体毛特定処理S1と、それぞれ体毛特定処理S1において得られた体毛画素からなる連結領域である各体毛領域についてそれぞれ細線化した細線化領域を得る細線化処理S2と、体毛特定処理S1で得られた体毛領域と細線化処理S2で得られた細線化領域とを用いて毛情報を測定する測定処理S3とを含む。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態の毛情報測定方法を実行する毛情報測定装置1は、操作入力を受け付ける操作部2と、測定の対象となる体毛が生えた皮膚(頭皮など)を撮像した例えば図3に示すような画像(以下、「原画像」と呼ぶ。)をデジタルデータとして出力する画像入力部3と、上記の原画像や原画像に対して後述する各種の処理が施された画像を表示する表示部4と、操作部2に受け付けられた操作入力と画像入力部3が出力した画像データとに応じた画像を表示するように表示部4を制御する制御部5とを備える。
【0032】
操作部2としては、例えばキーボードやマウスといった周知の入力装置を用いることができる。
【0033】
画像入力部3としては、撮像により原画像のデジタルデータを生成する周知のデジタルカメラの他、原画像のデジタルデータが格納された周知の記憶媒体から該デジタルデータを読み取る周知の装置を用いることができる。
【0034】
表示部4としては、CRTディスプレイや液晶ディスプレイといった周知のディスプレイ装置を用いることができる。
【0035】
制御部5は、周知の電子回路で実現可能であるので、詳細な図示や説明は省略する。
【0036】
以下、制御部5の動作を説明する。
【0037】
制御部5は、画像入力部3から画像データを入力されると、まず、入力された画像データに基いた原画像を表示部4に表示させるとともに、原画像の各画素の画素値を2値化した2値化画像を生成する2値化処理を行う。すなわち、原画像としては濃淡画像が用いられ、各画素の画素値(濃淡値)は0(黒)から255(白)までの間の値をとる。制御部5は、上記の画像データにおける画素値の最頻値を検出するとともに、上記の画像データに基く濃淡画像において、検出された最頻値以上の画素値を有する画素の画素値を255に変換し、検出された最頻値未満の画素値を有する画素の画素値を0に変換することで、2値化画像を生成する。得られる2値化画像は、例えば図4(a)に示すようなものとなる。図4(a)において、黒く塗られたマスは画素値が0である画素を示し、白いマスは画素値が255である画素を示す。本実施形態において測定の対象とされる体毛は黒色であって、画素値を0とされた画素が請求項における体毛画素であり、画素値を255とされた画素が請求項における背景画素である。ところで、皮膚に陰影が存在するような場合に、上記の最頻値を画像全体で共通とすると、例えば影の部分全体が体毛画素とされてしまうといったように、体毛と皮膚とが正確に区別されない可能性がある。そこで、上記のような陰影によらず体毛と皮膚との区別が正確に行われるように、2値化画像の作成前に、制御部5が、操作部2への操作入力に応じて上記の画像を複数個の領域に分割し、上記の最頻値を分割された領域毎に個別に決定するようにしてもよい。
【0038】
次に、制御部5は、2値化処理によって得られた2値化画像において、画素値が0である画素(すなわち体毛画素)のうち、隣接する8画素(以下、「近傍画素」と呼ぶ。)が全て画素値が255である画素(すなわち背景画素)であるもの(すなわち孤立点)をノイズと判定し、その体毛画素の画素値を255にすることによってその体毛画素を削除(すなわち背景画素に変換)する孤立点除去処理を行う。例えば、図4(a)の右下の画素PX1のような体毛画素(孤立点)の画素値が反転され、この結果として画像は図4(b)のように変換される。
【0039】
次に、制御部5は、孤立点除去処理で削除されずに残った体毛画素で構成された連結領域(以下、「体毛領域」と呼ぶ。)のそれぞれについて、それぞれ面積(画素数)と重心とを算出する。各体毛領域は、それぞれ例えば、体毛領域のY座標毎の左端の画素のX座標及びY座標と、そのY座標でのX方向での幅(画素数)との組からなるデータ(以下、「線化データ」と呼ぶ。)の、体毛領域の形状とY方向での幅とに応じた個数分の組として表現される。例えば、図4(b)の左上隅の画素の座標を(0,0)とおくと、図4(b)の連結領域Z1は、(3,2,2)、(2,3,2)、(2,4,2)、(1,5,2)といった4組の線化データの組み合わせで表現される。ある体毛領域においてY座標がaである画素の個数をn(a)とおくと、その体毛領域の重心のY座標は、a×n(a)の総和をその体毛領域の面積で除したものとなる。例えば、図4(b)の体毛領域Z1ではn(2)=n(3)=n(4)=n(5)=2であるから、この体毛領域Z1の重心のY座標は、{(2×2)+(3×2)+(4×2)+(5×2)}÷(2+2+2+2)=3.5となる。重心のX座標も同様の考え方によって求めることができる。さらに、制御部5は、体毛領域のうち面積が所定のノイズ閾値に満たないものをノイズとして除去する(つまり該体毛領域の各画素の画素値をそれぞれ255とする)ノイズ除去処理を行う。ノイズ除去処理でも除去されず残った各体毛領域は、それぞれ体毛特定処理S1で得られた体毛領域として次の細線化処理S2の対象となる。つまり、本実施形態においては、2値化処理と、孤立点除去処理と、ノイズ除去処理とで、体毛特定処理S1が構成されている。
【0040】
次の細線化処理S2では、例えばHilditchの細線化法が用いられる。すなわち、次の(1)の条件を満たす各画素、つまり画素値が0(黒色)である各画素について、次の(2)〜(5)の4つの条件を満たすか否かを判定し、4つの条件を全て満たす画素の画素値を反転させる(すなわち255にする)という動作を、画素値を反転させるべき画素が存在しなくなるまで繰り返す。このとき、幅が2の線分については幅方向の両側の画素がそれぞれ条件を満たすことになるが、この場合には(6)の条件のように一方側の画素のみ画素値を反転させる。
(1)図形画素(本実施形態の場合は体毛画素)である。
(2)境界点である。
(3)端点ではない。
(4)反転しても孤立点が保存される。
(5)反転しても連結領域の連結性が保存される。
(6)線幅が2の線に対して、その片側のみを反転させる。
【0041】
上記の各条件について詳しく説明すると、(2)の条件は、細線化処理S2において画素値を反転させるか否かの判定の対象となっている画素(以下、「注目画素」と呼ぶ。)を囲む8個の画素のいずれかが図形画素でない(すなわち画素値が255である)ことを意味する。また、(3)の条件は、注目画素が2個以上の図形画素と隣接していること、つまり注目画素を囲む8個の近傍画素のうち画素値が0である画素が2個以上であることを意味する。さらに、(4)の条件は、注目画素を囲む8個の近傍画素のうち少なくとも1個の画素値が0であることを意味するが、これは実質的に(3)の条件に含まれる。また、対象とする範囲の上端(Y軸負の方向の端)から下端(Y軸正の方向の端)まで順に右方向(X軸正の方向)へのスキャンを繰り返すラスタスキャンによって注目画素を選択する場合、すなわち左右に並ぶ図形画素では左側の図形画素が先に注目画素とされる場合において、(5)の条件は、注目画素に対してX方向又はY方向に隣接する4つの画素のうち、図形画素(画素値が0)であって且つ注目画素を中心に反時計回りの2個の画素(例えば注目画素の下側の画素に関しては注目画素の右下の画素と注目画素の右側の画素)のうち少なくとも一方が背景画素(画素値が255)であるような画素が1個だけ存在することを意味する。上記のような細線化処理S2が、図5に破線で示すような輪郭の体毛領域Z2に対して施された場合、例えば図5に示すような1画素分の幅を有する線状の連結領域である細線化領域L2が得られる。
【0042】
続く測定処理S3では、体毛特定処理S1の結果として得られた体毛領域Z2の個数から体毛の本数が得られ、細線化処理S2で得られた細線化領域L2において互いに隣接する画素の中心間の距離の総和から体毛の長さが得られる。例えば、各画素がそれぞれ正方形であってその1辺の長さを1画素分と定義する場合、左右方向(X軸方向)又は上下方向(Y軸方向)に直線状に並んだ4個の画素で細線化領域が構成されている場合にはその細線化領域に対応する体毛の長さは3画素分と表され、細線化領域を構成する4個の画素が斜め方向に直線状に並んでいる場合にはその細線化領域に対応する体毛の長さは3√2画素分と表されるといったように、画素の1辺の長さを基準として原画像中での体毛の長さを定量的に得ることができる。また、細線化処理S2で得られた細線化領域L2の中央の画素C2の中心と、細線化処理S2の前の体毛領域Z2の輪郭の画素のうち上記の中央の画素C2に最も近い画素の中心との距離から、体毛の太さが得られる。ここで、制御部5が、上記の中央の画素C2の中心から所定距離(例えば50画素分)以内に体毛領域Z2の輪郭の画素が存在しない場合には、その体毛領域Z2は体毛ではないと判定して削除するようしてもよい。
【0043】
さらに、それぞれ異なる日時に共通の部位を撮像した複数枚の原画像について、同一の体毛の長さと太さとを上記の一連の処理によって得ることで、その体毛の長さや太さの変化を知ることができ、その変化に基いてその体毛が成長期・退行期のいずれにあるかを知ることができる。上記の複数枚の原画像間での体毛の同定については、例えば、使用者が操作部2への操作入力により、上記の複数枚の原画像のうち2枚の画像のそれぞれにおいて互いに対応する点(以下、「特徴点」と呼ぶ。)を複数組(例えば3組)指定する。すると、制御部5は、回転・拡大・縮小またはこれらを組み合わせた変換として、一方の原画像における各特徴点の像がそれぞれ他方の原画像における対応する特徴点となるような変換を得て、この変換に基いて2枚の原画像間での体毛の同定を行う。つまり、上記他方の原画像において、上記一方の原画像のある体毛領域(仮に体毛領域Aと呼ぶ。)に対して上記の変換を施して得られる連結領域に所定割合以上の画素が重なる体毛領域は、上記の体毛領域Aと同一の体毛に対応した体毛領域であると判定される。さらに、各体毛がそれぞれ成長期・休止期のいずれにあるかを判定する成長期判定処理を、制御部5が行ってもよい。成長期判定処理の内容としては、例えば、上記複数枚の原画像のうちの2枚の間での、ある体毛の太さ又は長さの増加幅を所定の成長閾値と比較し、増加幅が成長閾値以上であれば、その体毛が成長期であると判定し、増加幅が成長閾値未満であれば、その体毛が休止期であると判定する。なお、例えば頭髪の場合、成長期が数年、休止期が数か月であるのに対して、退行期は2週間程度であるといったように、退行期は成長期や休止期に比べて非常に短いので、上記の判定結果の選択肢には退行期を含めていない。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態は、体毛特定処理S1において体毛領域を得る方法として、実施形態1のような2値化処理に代え、周知のSobelフィルタによって体毛の輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、輪郭抽出処理によって抽出された輪郭に対する膨張処理、並びに、膨張処理で得られた画像に対する平滑化処理からなる領域抽出処理とを用いている点が実施形態1と異なり、その他の点は実施形態1と共通である。
【0045】
詳しく説明すると、原画像において座標(x、y)にある画素の画素値(濃淡値)をf(x,y)と表すと、X方向での濃度勾配fx(x,y)は、図6(a)に示すようなSobelフィルタを用いて、fx(x,y)=2f(x+1,y)+f(x+1,y+1)+f(x+1,y−1)−2f(x−1,y)−f(x−1,y+1)−f(x−1,y−1)と表される。また、Y方向での濃度勾配fy(x,y)は、図6(b)に示すようなSobelフィルタを用いて、fy(x,y)=2f(x,y+1)+f(x+1,y+1)+f(x−1,y+1)−2f(x,y−1)−f(x+1,y−1)−f(x−1,y−1)と表される。すなわち、上記のような濃度勾配fx(x,y),fy(x,y)の演算が、請求項における加重和処理である。そして、輪郭抽出処理においては、制御部5は、上記のようにして得られた濃度勾配fx(x、y),fy(x,y)を用いて、微分画像を作成する。微分画像は、各画素の画素値が、X方向での濃度勾配fx(x,y)の2乗とY方向での濃度勾配fy(x,y)の2乗との和の平方根に置換された画像である。例えば、原画像中の3画素四方の範囲内に図7(a)にE1で示すような輪郭が存在する場合、この原画像を元に作成された微分画像において上記3画素四方に対応する範囲の各画素の画素値は図7(a)に示すようなものとなる。さらに、制御部5は、微分画像の各画素の画素値を所定の輪郭閾値と比較し、画素値が輪郭閾値以上であった画素を輪郭の画素と判定する。図7(a)の例において輪郭閾値を80とした場合、上段中央の画素と、中断右端の画素と、下段左端の画素とがそれぞれ輪郭の画素と判定される。また、画素値が輪郭閾値未満であっても、図7(a)の中央の画素のように、周囲の8個の近傍画素のうち所定の個数(例えば3個)以上の画素の画素値が輪郭閾値以上であるような画素についても、輪郭の画素と判定する。そして、図7(b)に示すように、輪郭の画素と判定された画素の画素値を0とし、それ以外の画素の画素値を255とすることで、輪郭が白地に黒で描かれた輪郭画像が得られる。
【0046】
次に、輪郭画像に対して施される膨張処理及び平滑化処理について説明する。膨張処理は、輪郭画像において、図8(a)から図8(c)への変換のように、輪郭の画素と判定された画素を囲む8個の近傍画素をそれぞれ体毛画素とする(すなわち画素値を0に変換する)処理である。平滑化処理は、膨張処理の結果として得られた画像に対して行われる処理である。また、平滑化処理は、膨張処理の結果得られた画像において図8(b)に示すように画素値が255である画素(背景画素)のうち周囲の8個の近傍画素が全て体毛画素(画素値が0)であるような背景画素を図8(c)に示すように体毛画素(画素値0)に変換した画像(以下、「平滑化画像」と呼ぶ。)を生成する処理である。これにより、輪郭画像において輪郭を構成する画素すなわち画素値が0である画素に囲まれた領域であって幅が2画素程度までの領域の画素が体毛画素として画素値を0に変換され、図9(a)に示すような輪郭画像が図9(b)のように変換される。なお、膨張処理によって体毛画素とされる範囲は、例えば輪郭の画素を中心として5画素四方の範囲とするといったように、より広い範囲としてもよい。制御部5は、上記のようにして得られた平滑化画像に対し、実施形態1で説明した孤立点除去処理以降の処理を実施形態1と同様に行うのである。すなわち、本実施形態では平滑化画像が請求項における領域抽出画像となる。但し、測定処理S3では、体毛の長さや太さについては膨張処理で追加された例えば2画素分を減算するといったように、膨張処理によって増加した分を打ち消す補正を加える必要がある。
【0047】
ここで、実施形態1及び実施形態2の測定処理S3において、体毛特定処理S1で得られた体毛領域の個数をそのまま体毛の本数とする場合、画像中において図10のように2本の体毛H1,H2が交差している場合には体毛領域としては1個となるから1本と数えられてしまう。そこで、本発明者は、以下に説明する方向値分析というものを提案している。すなわち、体毛特定処理S1で得られた全ての体毛画素のうちの1個(以下、「始点体毛画素」と呼ぶ。)について、隣接する体毛画素を検出し、次に、検出された体毛画素に対してさらに隣接する体毛画素を検出するといった動作を繰り返すことで、始点体毛画素から体毛領域が最も長く延びている延長方向及びその長さを判定する。対象とされる体毛がある程度の直線性をもっていれば、1個の体毛領域の複数個の始点体毛画素についてそれぞれ上記のようにして判定された延長方向及び長さに基いて、その体毛領域が複数本の体毛に対応するものか否かが判定できる可能性がある。
【0048】
また、上記のような画像処理においては、皺や傷が体毛として判定されてしまう誤判定や、鮮明に映っていない体毛が正しく検出されない検出漏れが発生する可能性がある。そこで、実施形態1及び実施形態2において、制御部5が、体毛特定処理S1の後、細線化処理S2の前に、体毛特定処理S1の結果として得られた体毛領域のうち実際には体毛として扱うべきでない体毛領域を指定する操作入力や、体毛特定処理S1で体毛領域として得られなかったが実際には体毛領域とすべき連結領域の範囲を指定するような操作入力や、体毛特定処理S1で得られた体毛領域のうち範囲が誤っている体毛領域について正しい範囲を指定するような操作入力を、操作部2において受け付ける調整処理を行い、調整処理で受け付けられた操作入力を後の細線化処理S2や測定処理S3に反映させるようにしてもよい。例えば、調整処理において、体毛として扱うべきでない体毛領域を指定する操作入力が操作部2において受け付けられた場合、制御部5は、指定された体毛領域の各体毛画素をそれぞれ背景画素に変換することで該体毛領域を削除する処理(請求項における除去指定処理)を行う。上記の構成を採用すれば、上記のような誤判定や検出漏れを防止することができる。
【0049】
さらに、実施形態1及び実施形態2において、制御部5が、画像入力部3に入力された原画像全体を体毛特定処理S1や細線化処理S2や測定処理S3の対象とする代わりに、体毛特定処理S1の開始前に、原画像において体毛特定処理S1や細線化処理S2や測定処理S3の対象とする領域を指定する操作入力を操作部2において受け付ける対象領域指定処理を行い、体毛特定処理S1や細線化処理S2や測定処理S3では対象領域指定処理で指定された領域のみを対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1の動作の概略を示す説明図である。
【図2】同上の基本構成を示すブロック図である。
【図3】同上において画像入力部に入力される画像の一例を示す説明図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ同上の動作を示す説明図であり、(a)は2値化処理後の画像の例を示し、(b)は(a)の画像に対してノイズ除去処理が施された画像を示す。
【図5】同上における細線化処理を示す説明図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ本発明の実施形態2の輪郭抽出処理で用いられるSobelフィルタを示す説明図であり、(a)はX方向の勾配に対応するSobelフィルタを示し、(b)はY方向の勾配に対応するSobelフィルタを示す。
【図7】(a)(b)はそれぞれ同上における輪郭抽出処理の動作を示す説明図であり、(a)は微分画像の例を示し、(b)は(a)の微分画像から作成された輪郭画像を示す。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ同上の動作を示す説明図であり、(a)は膨張処理が施される前の画像の例を示し、(b)は平滑化処理が施される前の画像の例を示し、(c)は(a)の画像に対して膨張処理が施された画像でもあり(b)の画像に対して平滑化処理が施された画像でもある。
【図9】(a)(b)はそれぞれ同上の動作を示す説明図であり、(a)は輪郭画像の例を示し、(b)は(a)の輪郭画像に対して領域抽出処理が施された画像の例を示す。
【図10】交差した体毛が撮像された画像の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
S1 体毛特定処理
S2 細線化処理
S3 測定処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体毛を撮像した原画像を構成する画素を、体毛の領域を構成する体毛画素と、体毛でない領域を構成する背景画素とに分ける体毛特定処理と、それぞれ体毛特定処理において得られた体毛画素からなる連結領域である各体毛領域についてそれぞれ細線化した細線化領域を得る細線化処理と、体毛特定処理で得られた体毛領域と細線化処理で得られた細線化領域とを用いて毛情報を測定する測定処理とを含むことを特徴とする毛情報測定方法。
【請求項2】
測定処理では、細線化処理で得られた細線化領域において互いに隣接する画素の中心間の距離の総和に基いて、毛情報としての体毛の長さを測定することを特徴とする請求項1記載の毛情報測定方法。
【請求項3】
測定処理では、体毛特定処理で得られた体毛領域の輪郭を構成する画素の中心と、細線化処理によって前記体毛の領域が細線化された細線化領域の中心の画素の中心との距離の最小値に基いて、毛情報としての体毛の太さを測定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の毛情報測定方法。
【請求項4】
体毛特定処理は、体毛画素であるか背景画素であるかが原画像での画素値に応じて決定された2値化画像を生成する2値化処理を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項5】
体毛特定処理は、2値化画像において近傍画素が全て背景画素であるような体毛画素を背景画素に変換する孤立点除去処理を含むことを特徴とする請求項4記載の毛情報測定方法。
【請求項6】
体毛特定処理は、2値化画像において面積が所定のノイズ閾値未満であるような体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換するノイズ除去処理を含むことを特徴とする請求項4記載の毛情報測定方法。
【請求項7】
体毛特定処理は、体毛の輪郭を抽出する輪郭抽出処理と、輪郭抽出処理によって抽出された輪郭を構成する画素と該輪郭に囲まれた画素の少なくとも一部とをそれぞれ体毛画素とした領域抽出画像を生成する領域抽出処理とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項8】
領域抽出処理は、輪郭抽出処理によって抽出された輪郭を構成する画素を中心とする所定範囲の各画素をそれぞれ体毛画素とした膨張画像を生成する膨張処理を含むことを特徴とする請求項7記載の毛情報測定方法。
【請求項9】
領域抽出処理は、膨張画像において近傍画素が全て体毛画素であるような背景画素を体毛画素に変換した平滑化画像を生成する平滑化処理を含むことを特徴とする請求項8記載の毛情報測定方法。
【請求項10】
輪郭抽出処理は、各画素についてそれぞれ近傍画素の画素値の加重和を演算する加重和処理を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項11】
体毛特定処理は、領域抽出画像において近傍画素が全て背景画素であるような体毛画素を背景画素に変換する孤立点除去処理を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項12】
体毛特定処理は、領域抽出画像において面積が所定のノイズ閾値未満であるような体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換するノイズ除去処理を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項13】
測定処理は、細線化領域の延長方向に基いて該細線化領域が1本の体毛に対応するか否かを判定する方向値分析を各細線化領域についてそれぞれ行う方向値分析処理を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項14】
体毛特定処理の後であって少なくとも測定処理の前に、体毛特定処理で得られた体毛領域のうち操作入力によって指定された体毛領域の各画素をそれぞれ背景画素に変換する除去指定処理を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項15】
原画像において体毛特定処理と細線化処理と測定処理との対象とすべき領域が操作入力によって指定される対象領域指定処理を、体毛特定処理の前に含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項16】
測定処理は、それぞれ異なる日時に撮像された2枚の原画像において互いに対応する複数組の特徴点を操作入力によって指定され、一方の原画像の各特徴点をそれぞれ他方の原画像における対応する特徴点に写像する変換を算出するとともに、得られた変換に基いて、各原画像においてそれぞれ体毛特定処理によって得られた体毛領域のうち互いに共通の体毛に対応する体毛領域の組を判定する同定処理を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の毛情報測定方法。
【請求項17】
測定処理は、同定処理において互いに共通の体毛に対応すると判定された体毛領域及び該体毛領域に対応する細線化領域から得られる毛情報の、原画像間での差に基いて、各体毛領域についてそれぞれ対応する体毛が成長期にあるか否かを判定する成長期判定処理を含むことを特徴とする請求項16記載の毛情報測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−82245(P2010−82245A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255415(P2008−255415)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】