説明

毛髪または表皮の処理装置、毛髪および頭皮の洗浄方法、毛髪のパーマネントウェーブ処理方法、毛髪のカラーリング処理方法、ならびに、美容方法

【課題】各種液剤の毛髪または表皮への浸透を促進することができる毛髪または表皮の処理装置の提供。
【解決手段】気体圧縮手段10と、水分除去手段11と、イオン発生手段12と、イオン噴出手段14とを有し、イオン噴出手段14におけるイオン流通路が液体供給孔を有する毛髪または表皮の処理装置。この装置は、例えば、毛髪および頭皮の洗浄、毛髪のパーマネントウェーブ処理、毛髪のカラーリング処理、美容など毛髪や肌の処理に用いるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪または表皮の処理に関する。より具体的には、毛髪および頭皮を洗浄する方法、毛髪をパーマネントウェーブ処理する方法、毛髪を染色する方法、肌の洗浄、引き締めその他の美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗髪作業は、通常、水およびシャンプーを用いて行われるため、多大な時間と労力を要する。例えば、美容院または理容院における洗髪作業は、客をシャンプー台に寝かせるなどした後、毛髪を湿らせた状態でシャンプーを塗布し、泡立て、毛髪および頭皮を洗浄し、その後、水で泡を流し、更に、毛髪にリンスを塗布し、それを洗い流すことによって行われる。特に、病院、介護施設などにおいて、寝たきりの人の洗髪作業は、更に多大な労力を要する。
【0003】
このため、特許文献1には、洗髪器本体と、給水用タンクと、オゾン発生器と、このオゾン発生器から送出されるオゾン含有空気を前記給水用タンク内へ送給する空気送給手段と、集水用タンクとを備える介護用洗髪装置が提案されている。この発明は、オゾン含有水を洗浄水として、噴水孔から噴出させて頭髪を濡らした後、液体圧送手段を停止し、洗剤を頭髪に付着させて手で洗髪した後、液体圧送手段を再び稼動してオゾン含有水を噴射して頭髪を洗浄するというものである。
【0004】
一方、毛髪の美容処理には、パーマネントウェーブ処理、カラーリング処理などがある。
【0005】
パーマネントウェーブ処理は、通常、パーマネントウェーブ第1剤(還元剤を主成分として含むアルカリ性溶液)を塗布した毛髪をロッド等に巻きつけて所定時間(10〜15分)放置する、または、水等を塗布した毛髪をロッド等に巻きつけた後にパーマネントウェーブ第1剤を塗布して一定時間(同前)放置することにより、毛髪中のシスチン結合、水素結合および塩結合を切断し、その後、パーマネントウェーブ第2剤(臭素酸ナトリウム、過酸化水素等の酸化剤を主成分とする溶液)を塗布し、一定時間(10〜15分程度)放置することで、上記各結合を再結合させ、ウェーブを固定化させるものである。パーマネント処理については、薬剤の組成、ロッドの形状などを工夫した発明が種々開示されている(特許文献2〜4など参照。)。
【0006】
カラーリング処理には、ブリーチ(脱色)処理と、染色処理とがある。ブリーチ処理は、過酸化水素によって毛髪中のメラニン色素を分解することによって、毛髪の脱色を行うものであり、染色処理は、上記過酸化水素に染色剤を混合したものを毛髪に塗布した後、一定時間(通常は20分程度)放置することで、毛髪の脱色または染色を行うものである。例えば、カラーリング処理については、薬剤に消臭香料および嗜好性香料を配合した発明(特許文献5など参照。)、薬剤のpHを調整した発明(特許文献6など参照。)などが開示されている。
【0007】
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織などで構成される。表皮は、角質層および表皮細胞層とで構成されており、角質層は、ケラチン質の角質細胞およびセラミドを主成分とする細胞間脂質で構成されている。化粧水などの成分が皮膚への浸透を向上させるため、例えば、肌の美容法としては、例えば、アスコルビン酸などを水蒸気と共に皮膚に供給する発明(特許文献7参照。)、超音波振動させた振動板を肌に接触させる発明(特許文献8、9など参照。)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−035969号公報
【特許文献2】特開2009−096774号公報
【特許文献3】特開2009−007293号公報
【特許文献4】特開2009−095441号公報
【特許文献5】特開2005−225761号公報
【特許文献6】特表2000−513733号公報
【特許文献7】特開2007−45783号公報
【特許文献8】特開平11−114000号公報
【特許文献9】特開2008−188119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水およびシャンプーを使用する従来の洗髪方法は、大量の水を要する。また、パーマネントウェーブ処理剤、カラーリング処理剤に加え、大量の界面活性剤を含む洗剤を多く含む水を下水に流すことになる。これらの分解には多大なコストを要する。また、洗髪後の髪を乾かすのには、かなりの時間を要し、洗髪開始からブロー完了までは30分程度の時間を要するのが一般的である。
【0010】
このため、美容室などにおいては、カットを主に行うスタッフの他、多くのスタッフを常駐させる必要があり、また、医療・介護施設などにおいては、1人の患者の洗髪に数人のスタッフを要し、人件費の面での問題が懸念される。また、身体を動かせない患者の洗髪を中腰で行う必要があり、また、界面活性剤を含む洗剤を使用するので、スタッフの手荒れを助長するなど、医療スタッフへの悪影響もある。さらに、従来の洗髪方法では、ホコリ、皮脂、菌などを完全に除去するのは困難である。
【0011】
従来のパーマネントウェーブ処理、カラーリング処理などは、上記のような化学反応を伴う処理であるため、処理時間が長くなるほど、毛髪の損傷が激しくなる。また、顧客の回転率を向上させるためには、パーマネントウェーブ処理、カラーリング処理いずれの処理時間も短いことが好ましい。
【0012】
スチームを利用する従来の美容法では、表皮を活性化に長時間を要する。また、スチームを噴射するだけでは、表皮の汚れを完全に除去できない。また、超音波振動する振動板を肌に接触させる美容法では、高周波の交流電流を用いるため、目元など神経が集中している部分への使用には不安を残す。
【0013】
本発明は、従来の洗髪方法、パーマネントウェーブ処理方法、カラーリング処理方法および美容方法における上記の問題を解決するためになされたものであり、洗髪時には皮脂、菌などの汚れを完全に除去することができ、パーマネントウェーブ処理方法、カラーリング処理方法においては、その処理時間を短縮することができ、美容方法においては、汚れを取り除きやすく、かつ、優れた肌の引き締め効果を有する毛髪または表皮の処理装置、毛髪および頭皮の洗浄方法、毛髪のパーマネントウェーブ処理方法、毛髪のカラーリング処理方法、ならびに、美容方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
【0015】
(a)頭皮の臭いの原因は、菌(またはウイルス)である。これを殺菌・除去するためには、酸性電解水溶液を用いるのが有効である。酸性電解水溶液としては、微量(0.04〜0.06質量%程度)の食塩を含有する水溶液を電解したときに、陽極から分離される酸化電位水(High Oxidation Potential Water)を用いることができる。また、上記電解を陽極と陰極の電極間に隔膜を有しない無隔膜電解槽で行って得られたアルカリ性電解水溶液に微量の希塩酸を加えて酸化した電解水溶液を用いても良い。特に、酸性電解水溶液としては、エイズ、B・C型肝炎、ヘルペス、ノロ、インフルエンザ等のウイルスやMRSA、緑膿菌等の糸状菌、黄色ブドウ球菌や食中毒菌の殺菌に有効であるメディカルウォーターパトサイド(酸性、メディカルガイド社製)を用いることができる。
【0016】
(b)菌の表面は、皮脂・油分(整髪剤などに由来する油分など)で覆われており、酸性電解水溶液を頭皮に供給するだけでは、菌を完全に除去するのは困難である。そこで、本発明者は、酸性電解水溶液を供給する前に、アルカリ性電解水溶液を塗布するのが有効であることを知見した。即ち、アルカリ性電解水溶液は、タンパク質の分解を促進し、頭皮や毛髪の皮脂・油分などを除去するのに有効である。なお、ここで用いられるアルカリ性電解水溶液とは、上記(a)で説明したものである。アルカリ性電解水溶液についてもメディカルウォーターパトサイド(アルカリ性、メディカルガイド社製)を用いることができる。
【0017】
(c)しかし、アルカリ性電解水溶液および酸性電解水溶液を塗布するだけでは、皮脂、菌などを完全に取り除くことはできなかった。本発明者は、その原因が皮脂、菌などの傍に存在する静電気にあることを見出した。そこで、まず、頭皮に存在する静電気を取り除くべく、アルカリ性電解水溶液および酸性電解水溶液の塗布前に、電荷中和イオンを噴射することで、静電気を取り除いた上で、アルカリ性電解水溶液および酸性電解水溶液による洗浄を行うこととした。
【0018】
(d)電荷中和イオンは、静電気の除去作用の他、殺菌効果および消臭効果を有しているため、電荷中和イオンとともに、アルカリ性電解水溶液の供給および酸性電解水溶液の供給を行うことで、より大きな洗浄効果が得られることが判明した。
【0019】
(e)毛髪のパーマネントウェーブ処理方法においては、前述のように、アルカリ性溶液のパーマネントウェーブ第1剤を毛髪に浸透させるために10〜15分程度の放置時間を要するが、パーマネントウェーブ第1剤を塗布した後、毛髪に電荷中和イオンをごく短い時間(1分以内)噴射すれば、即座に、続くパーマネントウェーブ第2剤の塗布を行うことができる。
【0020】
(f)毛髪のパーマネントウェーブ処理方法においては、前述のように、酸性溶液のパーマネントウェーブ第2剤を毛髪に浸透させるために10〜15分程度の放置時間を要するが、パーマネントウェーブ第2剤とともに、電荷中和イオンを噴射することで、パーマネントウェーブ第2剤の浸透も促進することができ、放置時間も5分程度に抑えることができる。
【0021】
(g)毛髪のカラーリング処理方法においては、前述のように、過酸化水素水または更にカラー剤染料の塗布後、通常は20分程度の放置時間を要するが、上記の塗布後に、電荷中和イオンを噴射することで、過酸化水素水または更にカラー剤染料の浸透を促進することができ、放置時間を5〜8分程度に抑えることができる。
【0022】
(h)肌の美容法においては、肌に電荷中和イオンを噴射することで、表皮の静電気の除去をするとともに、筋肉への刺激を高め、各種薬剤の浸透を促進できる。その後、アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することで、皮脂などの汚れを除去するととともに、表皮を膨張させ、一方、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することで、表皮を収縮させるので、肌の引き締め効果が得られる。
【0023】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記の(A)に示す毛髪または表皮の処理装置、下記(B)および(C)に示す毛髪および頭皮の洗浄方法、下記(D)および(E)に示す毛髪のパーマネントウェーブ処理方法、下記(F)および(G)に示す毛髪のカラーリング処理方法、ならびに、下記(H)および(I)に示す美容方法を要旨とする。
【0024】
(A)気体圧縮手段と、水分除去手段と、イオン発生手段と、イオン噴出手段とを有し、イオン噴出手段におけるイオン流通路が液体供給孔を有することを特徴とする毛髪または表皮の処理装置。
【0025】
(B)下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪および頭皮の洗浄方法。
(1)毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程。
【0026】
(C)上記(A)の処理装置を用いて毛髪および頭皮を洗浄する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪および頭皮の洗浄方法。
(1)毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)液体供給孔からアルカリ性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)液体供給孔から酸性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程。
【0027】
(D)下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブ処理方法。
(1)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の切断用薬液を塗布した毛髪をロッドに巻き付ける工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、
(3)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(4)毛髪をロッドから外し、毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【0028】
(E)上記(A)の処理装置を用いて毛髪をパーマネントウェーブ処理する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブ処理方法。
(1)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の切断用薬液を塗布した毛髪をロッドに巻き付ける工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、
(3)液体供給孔から毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(4)毛髪をロッドから外し、毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【0029】
(F)下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のカラーリング処理方法。
(1)毛髪に染毛剤を塗布する工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【0030】
(G)上記(A)の処理装置を用いて毛髪を染色する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のカラーリング処理方法。
(1)毛髪に染毛剤を塗布する工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【0031】
(H)下記の工程を順に実施することを特徴とする美容方法。
(1)表皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程。
【0032】
(I)上記(A)の処理装置を用いて美容方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする美容方法。
(1)表皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)液体供給孔からアルカリ性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)液体供給孔から酸性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る毛髪または表皮の処理装置は、各種液剤の毛髪または表皮への浸透を促進することができるので、例えば、毛髪および頭皮の洗浄、毛髪のパーマネントウェーブ処理、毛髪のカラーリング処理、美容など毛髪や肌の処理に用いるのに適している。
【0034】
本発明の毛髪および頭皮の洗浄方法によれば、従来方法と比較して短い時間で高い洗浄効果が得られる。また、ほとんど水分を使用しないので、ブローの時間を極端に短くすることができる。本発明の毛髪のパーマネントウェーブ処理方法によれば、パーマネントウェーブ第1剤およびパーマネントウェーブ第2剤の浸透を促進して、従来方法と比較して短い時間でパーマネントウェーブ処理を完了できる。また、本発明の毛髪のカラーリング処理方法によれば、過酸化水素水または更にカラー剤染料の浸透を促進することができ、従来方法と比較して短時間でカラーリング処理を完了できる。本発明の美容方法によれば、優れた肌の洗浄除菌効果と引き締め効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の毛髪または表皮の処理装置の構成図
【図2】本発明の毛髪または表皮の処理装置に用いられるイオン噴出手段および液体供給手段の例を示す図 (a)イオン噴射手段(エアブラシ)の例を示す図 (b)液体供給手段の例を示す図
【図3】本発明の本発明の毛髪および頭皮の洗浄方法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.毛髪または表皮の処理装置について
図1に示すように、本発明の毛髪または表皮の処理装置は、例えば、気体圧縮手段(空気圧縮機)10によって気体(空気)を圧縮し、発生した水分やホコリなどを、水分除去手段(エアフィルタ)11によって除去した後、その気体をイオン発生手段12に送り込み、イオンを発生させ、発生したイオンを気体と共に空気減圧弁13により減圧して、イオン噴出手段(エアブラシ)14により、イオンを噴射させる構成を有している。イオン発生装置には、特に制約はないが、マイナスイオンとプラスイオンの両方を噴射できる装置が好ましく、特に、電荷が中和されたイオン、即ち、電荷中和イオンを噴出できる装置が好ましい。例えば、有限会社テスコジャパンが「イオンマックスキット」の名称で提供しているイオン発生装置を用いることができる。
【0037】
図2(a)に示すように、例えば、イオン噴出手段(エアブラシ)14は、イオン流通路14aと、トリガ14bと、液体供給孔14cと、イオン噴出口14dとを有している。図面下方向から供給されたイオンは、トリガ14bを引くことによって、イオン噴出口14dから噴射される。
【0038】
図2(b)に示すように、例えば、液体容器15は、タンク15aと、液体流通路15bと、液体供給孔15cとを有している。イオンと共に各種の液剤を毛髪または表皮に供給する必要がある場合には、イオン流通路14aの液体供給孔14cに、各種液剤を入れた液体容器15の液体供給孔15cを差し込んだ状態で、イオン噴射手段14のトリガ14bを引く。これにより、タンク15aの内圧とイオン流通路14aの内圧の差により、タンク15aに入れられた各種液剤がイオンと共にイオン噴出口14dから噴出される。
【0039】
本発明の毛髪または表皮の処理装置は、このような構成を有しているので、イオンのみ、または、イオンと共に各種の液剤を毛髪または表皮に供給することができる。
【0040】
液体供給容器に入れる液体としては、後述のアルカリ性電解水溶液、酸性電解水溶液、パーマネントウェーブ第2剤(毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤)などが挙げられる。
【0041】
2.毛髪および頭皮の洗浄方法について
毛髪および頭皮の洗浄は、下記の工程(1)〜(3)を順に実施することが好ましい。
(1)毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射する工程
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程
【0042】
図3(a)に示すように、洗浄してから一定時間経過した毛髪および頭皮は、頭皮1の表面に菌(またはウイルス)2および皮脂・油分3が付着しており、これらを覆うように、静電気4が存在している。静電気4の存在が菌(またはウイルス)2および皮脂・油分3の除去を困難にしている。このため、上記(1)の工程では、頭皮に存在する静電気を取り除くべく、毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射することとした。特に、上記の処理装置を用いて、毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。
【0043】
図3(b)に示すように、電荷中和イオンを噴射した毛髪および頭皮から静電気4は取り除かれているが、菌(またはウイルス)2および皮脂・油分3が残存している。このため、上記(2)の工程では、これらのうち、主として皮脂・油分3を取り除くため、タンパク質の分解を促進するアルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することとした。特に、上記の処理装置を用いて、アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。
【0044】
図3(c)に示すように、タンパク質の分解を促進するアルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することで、ほぼ確実に皮脂・油分3を取り除くことができるが、菌(またはウイルス)2が残存する。このため、上記(3)の工程では、各種菌・ウイルスの殺菌、除去に有効である酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することとした。特に、上記の処理装置を用いて、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。
【0045】
なお、上記(3)の工程の後には化粧水を塗布するのが好ましい。化粧水としては、天然植物発酵エキス、ミネラルおよび海草抽出エキスを含む化粧水を用いるのが好ましい。アルカリ性電解水溶液には、植物性脂肪酸を含有するものが好ましい。電荷中和イオンは、静電気の除去作用の他、殺菌効果および消臭効果を有しており、単にアルカリ性電解水溶液または酸性電解水溶液に浸すのに比べ、これらの水溶液を電荷中和イオンと共に噴射するのが特に有効である。また、界面活性剤などの分解に多大なコストを要する液剤を用いないので、環境に優しい処理方法である。
【0046】
3.毛髪のパーマネントウェーブ処理方法について
パーマネントウェーブ第1剤および第2剤の毛髪への浸透を促進することにより、パーマネントウェーブの処理時間を短縮するためには、下記の工程(1)〜(4)を順に実施することが好ましい。
(1)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の切断用薬液(パーマネントウェーブ第1剤)を塗布した毛髪をロッドに巻き付ける工程
(2)電荷中和イオンを噴射する工程
(3)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤(パーマネントウェーブ第2剤)とともに、電荷中和イオンを噴射する工程
(4)毛髪をロッドから外し、毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程
【0047】
上記(1)の工程は、通常のパーマネントウェーブ処理と同様である。通常、パーマネントウェーブ第1剤の毛髪のロッドへの巻き付け後、10〜15分程度の放置時間を要するが、パーマネントウェーブ第1剤を塗布した後、上記(2)の工程のように、毛髪に電荷中和イオンをごく短い時間(1分以内)噴射すれば、即座に、続くパーマネントウェーブ第2剤の塗布を行うことができる。電荷中和イオンが噴射されると、パーマネントウェーブ第1剤の毛髪への浸透が促進される。特に、上記の処理装置を用いて、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。
【0048】
次に、上記(3)の工程のように、パーマネントウェーブ第2剤とともに、電荷中和イオンを噴射すると、毛髪へのパーマネントウェーブ第2剤の浸透も促進することができる。このため、パーマネントウェーブ第2剤の保持時間を5分程度に抑えることができる。特に、上記の処理装置を用いて、パーマネントウェーブ第2剤とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。その後、通常のパーマネントウェーブ処理と同様、上記(4)の工程のように、毛髪をロッドから外し、パーマネントウェーブ第1剤およびパーマネントウェーブ第2剤を洗い流す。このように、本発明のパーマネントウェーブ処理方法によれば、処理時間を従来の1/3程度に短縮することができる。
【0049】
なお、上記(4)の工程の後、毛髪が濡れた状態で、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。これは、毛髪に残留した薬剤(アルカリ性)を中和するのに有効である。
【0050】
4.毛髪のカラーリング処理方法について
過酸化水素水または更にカラー剤染料の浸透を促進することにより、カラーリング処理時間を短縮するためには、下記の工程(1)〜(3)の工程を順に実施することが好ましい。
(1)毛髪に染毛剤(過酸化水素水または更にカラー剤染料)を塗布する工程
(2)電荷中和イオンを噴射する工程
(3)毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程
【0051】
上記(1)および(3)の工程は、通常のカラーリング処理方法と同様である。染毛剤の塗布後、電荷中和イオンを噴射することで、過酸化水素水または更にカラー剤染料の浸透を促進することができ、放置時間を5〜8分程度に抑えることができる。特に、上記の処理装置を用いて、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。
【0052】
なお、上記(3)の工程の後、毛髪が濡れた状態で、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。これは、毛髪に残留した薬剤(アルカリ性)を中和するのに有効である。
【0053】
5.美容方法
肌の洗浄および引き締めなどの美容効果を得るためには、下記の工程(1)〜(3)を順に実施することが好ましい。
(1)肌(表皮)に電荷中和イオンを噴射する工程
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程
【0054】
上記(1)の工程に示すように、肌に電荷中和イオンを噴射することで、表皮の静電気の除去をするとともに、筋肉への刺激を高め、各種薬剤の浸透を促進する。その後、上記(2)の工程に示すように、アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することで、皮脂などの汚れを除去するととともに、表皮を膨張させる。特に、上記の処理装置を用いて、アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。その後、上記(3)の工程に示すように、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射することで、表皮を収縮させることができるので、肌の引き締め効果が得られる。上記(3)の工程は、特に、上記の処理装置を用いて、酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射するのが好ましい。上記(2)および(3)の工程は、繰り返し行うのがより効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る毛髪または表皮の処理装置は、各種液剤の毛髪または表皮への浸透を促進することができるので、例えば、毛髪および頭皮の洗浄、毛髪のパーマネントウェーブ処理、毛髪のカラーリング処理、美容など毛髪や肌の処理に用いるのに適している。
【0056】
本発明の毛髪および頭皮の洗浄方法によれば、従来方法と比較して短い時間で高い洗浄効果が得られる。また、ほとんど水分を使用しないので、ブローの時間を極端に短くすることができる。本発明の毛髪のパーマネントウェーブ処理方法によれば、パーマネントウェーブ第1剤およびパーマネントウェーブ第2剤の浸透を促進して、従来方法と比較して短い時間でパーマネントウェーブ処理を完了できる。また、本発明の毛髪のカラーリング処理方法によれば、過酸化水素水または更にカラー剤染料の浸透を促進することができ、従来方法と比較して短時間でカラーリング処理を完了できる。本発明の美容方法によれば、優れた肌の洗浄除菌効果と引き締め効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
1.頭皮
2.菌(またはウイルス)
3.皮脂・油分
4.静電気
10.空気圧縮機(気体圧縮手段)
11.エアフィルタ(水分除去手段)
12.イオン発生機(イオン発生手段)
13.空気減圧弁
14.エアブラシ(イオン噴出手段)
14a.イオン流通路
14b.トリガ
14c.液体供給孔
14d.イオン噴出口
15.液体容器
15a.タンク
15b.液体流通路
15c.液体供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体圧縮手段と、水分除去手段と、イオン発生手段と、イオン噴出手段とを有し、イオン噴出手段におけるイオン流通路が液体供給孔を有することを特徴とする毛髪または表皮の処理装置。
【請求項2】
下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪および頭皮の洗浄方法。
(1)毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程。
【請求項3】
請求項1に記載の処理装置を用いて毛髪および頭皮を洗浄する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪および頭皮の洗浄方法。
(1)毛髪および頭皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)液体供給孔からアルカリ性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)液体供給孔から酸性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程。
【請求項4】
下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブ処理方法。
(1)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の切断用薬液を塗布した毛髪をロッドに巻き付ける工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、
(3)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(4)毛髪をロッドから外し、毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【請求項5】
請求項1に記載の処理装置を用いて毛髪をパーマネントウェーブ処理する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のパーマネントウェーブ処理方法。
(1)毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の切断用薬液を塗布した毛髪をロッドに巻き付ける工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、
(3)液体供給孔から毛髪のシスチン結合、水素結合および塩結合の再結合用薬剤を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(4)毛髪をロッドから外し、毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【請求項6】
下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のカラーリング処理方法。
(1)毛髪に染毛剤を塗布する工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【請求項7】
請求項1に記載の処理装置を用いて毛髪を染色する方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする毛髪のカラーリング処理方法。
(1)毛髪に染毛剤を塗布する工程、
(2)電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)毛髪および頭皮に付着した薬剤を洗い流す工程。
【請求項8】
下記の工程を順に実施することを特徴とする美容方法。
(1)表皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)アルカリ性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)酸性電解水溶液とともに、電荷中和イオンを噴射する工程。
【請求項9】
請求項1に記載の処理装置を用いて美容方法であって、下記の工程を順に実施することを特徴とする美容方法。
(1)表皮に電荷中和イオンを噴射する工程、
(2)液体供給孔からアルカリ性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程、および、
(3)液体供給孔から酸性電解水溶液を注入しつつ、電荷中和イオンを噴射する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151(P2011−151A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143004(P2009−143004)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(508309267)株式会社T&Bネットワーク (1)
【Fターム(参考)】