説明

毛髪処理方法

【課題】毛髪繊維、特にハリ・コシがない毛髪(化学処理等で損傷した毛髪、欧米人や高齢者の細い毛髪等)に対し、優れたハリ・コシを付与することができる毛髪処理方法の提供。
【解決手段】アルコキシシラン(1)の加水分解で生成するシラノール化合物(2)を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法。アルコキシシラン(1)を含有する第1剤、及び水を含有する第2剤を混合してなる毛髪化粧料を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法。
1pSi(OR2)4-p (1)
1pSi(OH)n(OR2)4-p-n (2)
〔R1及びR2は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示し、pは0〜3の整数を示し、nは1以上(4−p)以下の整数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にハリ・コシを付与する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪の内部に物質を浸透させて毛髪の物性や外観、感触を改質する方法として毛髪成分と類似したコラーゲン、ケラチン等の分解物及び誘導体を補充する方法が提案されているが、未だ十分な効果とはいえない。
【0003】
一方、アルカリ処理した毛髪に、アルキルトリアルコキシシランを用いて、毛髪を強化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、有機ケイ素化合物等を用い部分的又は全体的に加水分解し、部分的又は全体的に重合させることで得られる有機ケイ素化合物を、爪、毛髪等のケラチン物質に適用することで、ケラチン物質を保護及び強化するための方法も提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
しかしながら、これらの技術では、有機ケイ素化合物は、ケラチン表面にのみ存在するものであるため、洗浄により効果が無くなったり、ケラチン表面の感触が本来の感触でなくなったりするという問題を有する。
【0005】
【特許文献1】特開昭61-7号公報
【特許文献2】特表2000-510167号公報
【特許文献3】特開2002-97114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、毛髪繊維、特にハリ・コシがない毛髪(化学処理等で損傷した毛髪、欧米人や高齢者の細い毛髪等)に対し、優れたハリ・コシを付与することができる毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の一般式(1)
1pSi(OR2)4-p (1)
〔式中、R1及びR2は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基を示し、p個のR1及び(4−p)個のR2は同一でも異なってもよい。pは0〜3の整数を示す。〕
で表されるアルコキシシランの加水分解で生成する、次の一般式(2)
1pSi(OH)n(OR2)4-p-n (2)
〔式中、R1及びpは、前記と同じ意味を示し、nは1以上(4−p)以下の整数を示す。p個のR1および(4−p−n)個のR2は同一でも異なってもよい。〕
で表されるシラノール化合物を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記一般式(1)で表されるアルコキシシランを含有する第1剤、及び水を含有する第2剤を混合してなる毛髪化粧料を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルコキシシランの加水分解で生成したシラノール化合物を毛髪に浸透させる際に、塗布部を加温することで、毛髪内部への浸透量が増加し、特に、ハリ・コシがない毛髪(特に化学処理等で損傷した毛、欧米人毛、細い毛、高齢者毛等)に対して、優れたハリ・コシを付与することができる。また、その効果はシャンプーを繰り返しても持続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<アルコキシシラン>
本発明に用いられるアルコキシシラン(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示すが、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基等が、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。なかでも、R2としては、加水分解により生じる副生成物の安全性、加水分解反応の反応性等の点から、エチル基が好ましい。また、反応後に生成するポリシロキサンの物性の点から、一般式(1)中のpは0〜2が好ましい。アルコキシシラン(1)としては、テトラエトキシシラン、アルキル(炭素数1〜6)トリエトキシシラン、ジアルキル(炭素数1〜6)ジエトキシシラン等が挙げられる。これらアルコキシシランは、2種以上を併用することもできる。
【0011】
本発明においては、上記アルコキシシラン(1)の加水分解で生成するシラノール化合物(2)を毛髪に浸透させ、毛髪内部で重合させることにより、毛髪にハリ・コシを付与するものである。
【0012】
このためには、アルコキシシラン(1)を含有する第1剤と水を含有する第2剤を混合してなる毛髪化粧料を毛髪に塗布し、この毛髪化粧料中に生成するシラノール化合物(2)を毛髪に浸透させることによるのが好ましい。
【0013】
<第1剤>
第1剤中のアルコキシシラン(1)の含有量は、保存安定性の点から、70〜100重量%、更には80〜100重量%、特に90〜100重量%が好ましい。
【0014】
また第1剤には水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、アルコキシシラン(1)と混合した際に均一に溶解するものが好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0015】
第1剤は、保存中のアルコキシシランの重合を防止するため、水を含有しないことが好ましい。第1剤が水を含まない場合、長期の保存が可能であり、使用も容易である。
【0016】
<第2剤>
第2剤は、水を含有するが、アルコキシシラン(1)の加水分解反応、重縮合反応の触媒として、酸を含有することが好ましい。また、第1剤で挙げたのと同様の水溶性有機溶剤を含有させてもよい。
【0017】
第2剤に用いられる酸としては、塩酸(pKa=−8)、硫酸(pKa=1.99)、リン酸(pKa=2.15、7.20、12.35)等の無機酸;シュウ酸(pKa=1.04、3.82)、マレイン酸(pKa=1.75、5.83)、酒石酸(pKa=2.82、3.96)、フマル酸(pKa=2.85、4.10)、クエン酸(pKa=2.90、4.34)、リンゴ酸(pKa=3.24、4.71)、コハク酸(pKa=4.00、5.24)、ギ酸(pKa=3.55)、乳酸(pKa=3.66)、アジピン酸(pKa=4.26、5.03)、酢酸(pKa=4.56)、プロピオン酸(pKa=4.67)等の有機酸を例示することができるが、pH調整が容易な点から、第1解離定数(pKa1)が2.9〜5.0、特に3.5〜5.0の範囲にある有機酸が好ましい。なかでも、アルコキシシラン(1)の縮合反応の制御が容易な点から、アジピン酸、酢酸及びプロピオン酸が好ましく、更には、臭気が少ないアジピン酸が特に好ましい。
【0018】
第2剤は、これら有機酸を用いてpH2〜5の範囲に調整することが好ましい。
【0019】
<全組成中の各成分の含有量>
第1剤と剤2剤を合わせた全組成中におけるアルコキシシラン(1)の含有量は、架橋反応による反応性の点から、3重量%以上、特に10重量%以上が好ましく、また75重量%以下、特に70重量%以下が好ましい。
【0020】
全組成中の酸の含有量は、縮合反応の抑制の点から、0.001〜5重量%、特に0.001〜1重量%が好ましい。また、第1剤と剤2剤の混合後の毛髪化粧料のpHは、2〜5の範囲が好ましい。
【0021】
また、全組成中の水の含有量は、20重量%を超えることが好ましい。更に、第1剤又は第2剤中に水溶性有機溶剤を含有させる場合には、全組成中の量が20重量%を超えない範囲とすることが好ましい。
【0022】
<毛髪処理方法>
本発明の毛髪処理方法は、アルコキシシラン(1)の加水分解により、シラノール化合物(2)を生成させる工程、毛髪に塗布する工程、処理液の浸透工程、及び縮合工程を含む。
【0023】
シラノール化合物(2)の生成工程は、毛髪化粧料が二剤式の場合には、アルコキシシラン(1)を含有し、好ましくは水を含有しない第1剤と、水を含有する第2剤とを、使用前に混合し、振とう攪拌等する工程である。混合撹拌後、目視で均一な1相となることで、アルコキシシラン(1)が加水分解し、シラノール化合物(2)が生成したことを確認することができる。
【0024】
毛髪に塗布する工程においては、上記で得られた混合物を毛髪全体に万遍なく塗布することが好ましい。塗布する毛髪は、濡れていてもよく、乾いていてもよい。乾燥した毛髪1gに対して、前記混合物を、1〜3g塗布することが好ましい。塗布する対象は、人の頭髪であってもよく、かつら等の毛髪であってもよい。
【0025】
処理液の浸透工程においては、シラノール化合物(2)を毛髪に十分に浸透させるために、毛髪に塗布しておく時間は、15〜90分、特に20〜60分が好ましい。塗布後一定時間放置することで、シラノール化合物(2)の浸透を進める。この際、毛髪の塗布部を加温することにより浸透を促進するが、シラノール化合物(2)が毛髪に浸透する前に重合するのを防ぐため、加温は、水分の蒸発を防ぎながら行う。加温の温度は、40〜90℃、特に40〜70℃が好ましい。加温方法は特に限定されるものではないが、例えばドライヤー、オーブン等の電気器具や、発熱体、温熱シート、発熱ジェル、ヘアキャップ、美容室に設置してあるウォーマー等の加温器具等を用いてもよい。水分の蒸発を防ぐ方法としては、毛束の場合はラップで包み、頭髪の場合はプラスチックフィルム製のキャップをかぶせるなどの方法が挙げられる。
【0026】
縮合工程は、重縮合反応の触媒としての酸又はアルカリ等を含有する水溶液を接触させることで行うことができる。かかる酸としては、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、乳酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸を例示することができる。アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア;及びモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の有機アミン類を例示することができる。
【0027】
酸、アルカリの使用量は、用いるアルコキシシラン(1)及び酸又はアルカリの種類によっても異なるが、水100重量部に対して2重量部以上が好ましい。2重量部未満の場合には反応が十分に進行せず、縮合工程での放置時間を長くする必要がある。
【0028】
縮合工程においては、浸透工程後に毛髪表面に残っている余分な剤をタオルなどで拭き取った後、毛髪1gに対して、触媒含有水溶液1〜3gを塗布することが好ましい。毛髪に塗布しておく時間は、5〜20分、特に10〜15分が好ましい。
【0029】
また縮合工程は、熱をかけることで水の蒸発を促進し、反応を進めてもよい。この際浸透工程で、水分の蒸発を防ぐために覆っていたラップ等は、水の蒸発を積極的に進めて縮合反応を進める目的から、外しておくことが望ましい。熱をかける時間は、髪量、乾燥条件によっても異なるが、毛髪の塗布部を40〜90℃、好ましくは40〜70℃に加温し、15分以上行うことが好ましい。その後処理した毛髪をシャンプー等で洗浄し、乾燥する。
【実施例】
【0030】
実施例1
一人の欧米人から採取した化学処理履歴のない毛髪を用いて、5gの毛束を作製した。次いで、表1の組成1に示される第1剤と第2剤を混合し、しばらく放置して均一透明溶液になったのを確認後、10gを毛束にむらなく塗布した。塗布後毛束をラップで包み、60℃のオーブンで30分放置した。その後余分な剤をタオルで拭き取った後、表2に示される酸水溶液10gをむらなく塗布し、室温で15分静置した。その後表3に示す組成のシャンプーで洗髪し、表4に示す組成のヘアリンスで処理してから乾燥した。
化粧料処理後の毛髪について、下記方法により、処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して0.5重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、下記方法で曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で11%の増加を示した。
【0031】
〔毛髪へのケイ素化合物の収着量評価方法〕
毛髪へのケイ素化合物の収着量測定には「ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置(堀場製作所製、JY238ULTRACE)」を用いた。ケイ素化合物の収着量は灰化/アルカリ溶融/ICP法を用い、ケイ素元素の量から求めた。
【0032】
試料(処理毛髪)0.1gを白金坩堝に採取し、ヒーターで煙が出なくなるまで炭化後、550℃の電気炉に2時間入れ灰化させる。冷却後、残った灰分上にアルカリ融剤(Na2CO3:H3BO3=5:2)1gを加え、950℃電気炉30分でアルカリ溶融し、冷却後、6N塩酸4mLで溶解して純水で50mLにメスアップしたものを試料溶液とした。吸収波長251.612nm、積分時間3秒で3回測定し、その平均値から、検量線を使用してケイ素元素量を求めた。毛髪へのケイ素元素収着量の計算法は次のとおりである。
【0033】
ケイ素元素収着量(%)=〔ケイ素元素量(mg)/毛髪重量(g)〕×0.1
【0034】
〔曲げ弾性の評価方法〕
曲げ弾性試験には「純曲げ試験機(カトーテック,KES-FB2-S)」を使用し、毛髪の曲げに要する力(曲げ弾性)の測定を行った。
毛髪は、両端をそれぞれ3cm切り落とし、長さが5cm以上の毛髪のみを評価試験に用いた。また、測定に先立ち少なくとも24時間、65%の相対湿度中に置いた。図1に示すように、10mm間隔で並べた長さ51mm、幅15mmの方眼紙2枚に、50本の人毛を貼り付けたものを測定サンプルとした。これを純曲げ試験機に取り付け、曲げ弾性測定を行った。測定条件は、20℃、相対湿度65%、感度:2×1、最大曲げ曲率:2.5cm-1とした。曲げ弾性は、曲率1.0〜2.0cm-1の間の毛髪1本あたりの曲げに必要な力を直線近似したときの直線の勾配から求めた。
【0035】
実施例2
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用い、表1の組成2に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下実施例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して1.0重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で32%の増加を示した。
【0036】
実施例3
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用い、表1の組成3に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下実施例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して1.7重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で48%の増加を示した。
上記化粧料処理後の毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図を図2に示す。また、未処理の毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図を図3に示す。ここで、FE-SEM-EDSケイ素元素マッピングとは、FE-SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)にEDS(エネルギー分散型X線分光装置)が付属した装置で、毛髪断面のケイ素元素のマッピングを行ったものである。
【0037】
実施例4
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用い、表1の組成3に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下実施例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して2.5重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で50%の増加を示した。更に、化粧料処理後の毛髪の毛束は、手の感触により、ハリ・コシが増加しているのが感じられた。この感触は、シャンプーを繰り返し(3〜5回)ても持続した。
上記化粧料処理後の毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図を図4に示す。毛髪中心部までケイ素化合物が存在することが確認できた。
【0038】
比較例1
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用いて、表1の組成1に示される第1剤と第2剤を混合し、しばらく放置し均一透明溶液になったのを確認後10gをむらなく塗布した後、室温で30分放置した。その後余分な剤をタオルで拭き取った後、表2に示される酸水溶液10gをむらなく塗布し、室温で15分静置した。その後表3に示す組成のシャンプーで洗髪し、表4に示す組成のヘアリンスで処理してから乾燥した。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して0.3重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で8%の増加を示した。
【0039】
比較例2
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用いて、表1の組成2に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下比較例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して0.7重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で25%の増加を示した。
【0040】
比較例3
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用いて、表1の組成3に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下比較例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して1.1重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で31%の増加を示した。
【0041】
比較例4
実施例1で用いたのと同様の履歴をもつ毛束を用いて、表1の組成4に示される第1剤と第2剤を混合し、均一透明溶液を得た後、以下比較例1と同様の操作を行った。
上記処理毛髪へのケイ素化合物の収着量(ケイ素元素収着量)を測定したところ、毛髪重量に対して0.2重量%の収着量であった。また化粧料処理後の毛髪について、曲げ弾性試験を行った結果、未処理毛に対して曲げ弾性で3%の増加を示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】曲げ弾性試験に用いた測定サンプルを示す図である。
【0047】
【図2】実施例3で得られた処理後の毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図である。
【0048】
【図3】未処理毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図である。
【0049】
【図4】実施例4で得られた処理後の毛髪断面のFE-SEM-EDSケイ素元素マッピング図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
1pSi(OR2)4-p (1)
〔式中、R1及びR2は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基を示し、p個のR1及び(4−p)個のR2は同一でも異なってもよい。pは0〜3の整数を示す。〕
で表されるアルコキシシランの加水分解で生成する、次の一般式(2)
1pSi(OH)n(OR2)4-p-n (2)
〔式中、R1及びpは、前記と同じ意味を示し、nは1以上(4−p)以下の整数を示す。p個のR1および(4−p−n)個のR2は同一でも異なってもよい。〕
で表されるシラノール化合物を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法。
【請求項2】
次の一般式(1)
1pSi(OR2)4-p (1)
〔式中、R1及びR2は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基を示し、p個のR1及び(4−p)個のR2は同一でも異なってもよい。pは0〜3の整数を示す。〕
で表されるアルコキシシランを含有する第1剤、及び水を含有する第2剤を混合してなる毛髪化粧料を毛髪に塗布し、水分の蒸発を防止しながら塗布部を加温する毛髪処理方法。
【請求項3】
毛髪化粧料のpHが2〜5である請求項2記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理方法を行った後、更に一般式(2)で表されるシラノール化合物を縮合する工程を行う毛髪処理方法。
【請求項5】
縮合工程が、酸又はアルカリを含有する水溶液を毛髪に接触させるものである請求項4記載の毛髪処理方法。
【請求項6】
縮合工程が、塗布部を40〜90℃に加温するものである請求項4又は5記載の毛髪処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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