説明

毛髪化粧料

【課題】毛髪に対して、べたつきがなく、しなやかな感触、艶を付与し、かつ良好な洗髪除去性を有する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】一般式(1)
【化1】


(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1〜18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0〜3の数、xは30〜400の数、yは1〜3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマーと、植物の抽出物又は圧搾物の1種以上を含有することを特徴とする毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、毛髪に対して、べたつきがなく、しなやかな感触、艶を付与し、かつ良好な洗髪除去性を有する毛髪化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、毛髪化粧料には毛髪にしなやかな感触や優れた艶を与える目的でシリコーン油、エステル油、炭化水素油等の油分を、可溶化、乳化、溶解して用いられている。特にシリコーン油はべたつきのなさにおいて優れており、近年多用されている。しかしながら、シリコーン油に代表される油分では、毛髪をセットする能力は乏しく、不十分である。
【0003】また、毛髪化粧料には毛髪をセットする目的で種々の被膜形成能を有する高分子化合物を用いている。しかしながら、ごわついたり、乾燥の際及び高湿度下でべたつくという欠点があった。また、多量に配合すると洗い落ちが悪くなる傾向があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】本発明者は、このような状況に鑑み、毛髪に対して、べたつきがなく、しなやかな感触、艶を付与し、かつ良好な洗髪除去性を有する毛髪化粧料を提供することを目的として鋭意検討の結果、一般式(1)
【0005】
【化2】


【0006】(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1〜18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0〜3の数、xは30〜400の数、yは1〜3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマーと、植物の抽出物又は圧搾物の1種以上を含有することを特徴とする毛髪化粧料によって達成されることを見出した。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるシリコーン変性ポリマーは、上記(1)式で表わされるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとの反応生成物である。
【0008】シリコーン変性ポリマーの製造に用いられるアニオン基含有ポリマーとしては、ポリマー中にアニオン基を含有していれば特に限定されないが、例えばポリメチルビニルエーテル/マレイン酸ハーフエステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、アクリル酸アルキル/メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸ジメチルヒダントインホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカネート共重合体、t−ブチルアクリレート/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸アルキル/メタクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド/メタクリル酸共重合体、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/ビニルプロピオネート共重合体、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン/アクリレート共重合体、アクリレート/アクリルアミド共重合体、ビニルアセテート/ブチルマレアート/イソボルニルアクリラート共重合体等のアニオン性ポリマーや、アクリル酸オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性ポリマーが挙げられ、特にカルボキシル基含有ポリマーが望ましい。
【0009】本発明で用いられるシリコーン変性ポリマーは、アミノ基含有ポリシロキサン100質量部に対して、アニオン基含有ポリマー20〜5,000質量部を反応させる。アミノ基含有シロキサン100質量部に対してアニオン基含有ポリマーの量が20質量部よりも少ないとセット性が不十分となり、望ましくなく、5,000質量部よりも多いと艶、しなやかさ等が不十分となり、望ましくない。
【0010】アミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとの反応生成物は、アルカリ性物質、例えば2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール又はトリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を用いて中和して用いることが望ましい。また、本組成物の製造中に中和しても良い。そして中和率60〜150%となる様に中和することが好ましい。本発明のシリコーン変性ポリマーは、特開平4−43804号公報記載の方法により容易に合成することができる。また、シリコンFZ−3148の商品名で日本ユニカー社から市販されている。
【0011】また、その配合量としては、0.05〜15質量%(以下、単に%で示す)が好ましく、0.1〜10%が更に好ましい。配合量が0.05%未満ではべたつきのなさの面で不十分な傾向になる。また、15%を超えて配合した場合、洗髪時に洗い落ちが悪くなる傾向にある。
【0012】本発明で用いられる植物の抽出物又は圧搾物としてはサボンソウ、ショウブ、ゴボウ、センブリ、ムラサキセンブリ、ゲンチアナ、ユキノシタ、ローズマリー、レモン、マロニエ、リンゴ、オレンジ、アロエ、海藻、モモ、レンゲソウ、シャクヤク、ゼニアオイ、カワラヨモギ、シナノキ、オタネニンジン、キウイ、オウゴン、アルニカ、イラクサ、キュウリ、セイヨウキズタ、ニワトコ、シモツケ、コボタンズル、オトギリソウ、トウキンセンカ、ローマカミツレ、チャノキ、甘草等が挙げられる。これらの植物の葉、根、茎、花、皮、枝、果実、果皮等の1種又は2種以上の部位から適当な溶媒により抽出又は直接圧搾することにより得られ、抽出と圧搾を組み合わせて行っても良い。
【0013】抽出溶媒としては、エタノール、メタノール等の低級アルコール類、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、冷水、熱水等の水、スクワラン、ヒマワリ油、パラフィン油、エステル油等の油類、アセトン、酢酸エチル等、から選ばれる1種又は2種以上の混液が使用可能であり、これらの中では水やアルコール類等の極性溶媒から選ばれる1種又は2種以上の混液が望ましい。
【0014】また、別の方法として、上記抽出液をシリカゲルクロマトグラフィー等の吸着系クロマトグラフィーを用いて分画して得られる抽出物を用いることもできる。また、抽出液中の溶媒を蒸留後さらに適当な溶媒に溶解したり、上記抽出液の濃縮物あるいは乾燥粉末を、本発明に使用することもできる。
【0015】本発明の毛髪化粧料において、これらの植物抽出物又は圧搾物は1種又は2種以上配合される。植物抽出物又は圧搾物を2種以上配合する場合、予め植物を混合し抽出または圧搾しても良く、各植物からそれぞれ抽出又は圧搾したのち混合して用いても良い。
【0016】これらの植物抽出物又は圧搾物は、本発明組成物中に、合計でエキス分(乾燥残分相当)として0.0001〜5%配合されることが望ましく、さらに望ましくは0.001〜1%である。0.0001%未満では、配合してもしなやかな感触、艶の面で本発明の効果が発揮にくくなり、5%を越えると、最終製品の製造工程上好ましくない。
【0017】本発明の毛髪化粧料は、発明の効果を損なわない範囲であれば、上記必須成分の他に毛髪化粧料に通常使用されている任意の成分を使用することができる。これらの成分としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油分、増粘剤、噴射剤、水、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、動物由来の抽出物又はその誘導体、色素、香料等を配合することも可能である。
【0018】また、毛髪化粧料は、剤型としてエアゾール、クリーム状、液状、ゲル状等種々のタイプにすることができ、特に剤型を問わない。
【0019】
【実施例】以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を説明する。本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0020】実施例、比較例に示した官能試験、艶試験、洗髪除去性試験の試験方法は下記の通りである。尚、以下の表に示す組成物の配合量は、それぞれ質量%で示す。
【0021】(1)官能試験20名の被験者によって毛髪化粧料の試料を使用し、べたつきの無さ、しなやかさ(ごわつきの無さ)について官能評価した。
【0022】評価基準は、以下の通りである。
【0023】
・べたつきのなさ◎:非常に良好 べたつきがないと答えた被験者の数が18人以上○:良好 べたつきがないと答えた被験者の数が12人以上、18人未満△:やや悪い べたつきがないと答えた被験者の数が8人以上、12人未満×:悪い べたつきがないと答えた被験者の数が8人未満
【0024】
・しなやかさ◎:非常に良好 ごわつきがないと答えた被験者の数が18人以上○:良好 ごわつきがないと答えた被験者の数が12人以上、18人未満△:やや悪い ごわつきがないと答えた被験者の数が8人以上、12人未満×:悪い ごわつきがないと答えた被験者の数が8人未満
【0025】(2)艶試験長さ15cm、重さ1gの毛束に毛髪化粧料の試料を0.5gを均等に塗布し、自然乾燥させる。乾燥後、毛髪5本を任意に選択し、ゴニオフォトメーター(村上色彩研究所社製)により光の反射率を求め、毛髪化粧料を塗布していない毛髪の光の反射率をブランクとし、ブランクとの比較をした。
【0026】評価基準は、以下の通りである。
◎:非常に良好 ブランクと比較し光の反射率が150%以上○:良好 ブランクと比較し光の反射率が100%以上、150%未満△:やや悪い ブランクと比較し光の反射率が80%以上、100%未満×:悪い ブランクと比較し光の反射率が80%未満
【0027】(3)洗髪除去性20名の被験者によって毛髪化粧料の試料を使用し、3時間後下記組成の洗浄剤を用い洗髪を行った。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 20質量% (3E.O.)
精製水 80質量%
【0028】評価基準は、以下の通りである。
◎:非常に良好 洗髪性が良いと答えた被験者の数が18人以上○:良好 洗髪性が良いと答えた被験者の数が12人以上、18人未満△:やや悪い 洗髪性が良いと答えた被験者の数が8人以上、12人未満×:悪い 洗髪性が良いと答えた被験者の数が8人未満
【0029】実施例1〜7、比較例1〜2表1に示した処方の毛髪化粧料を常法により調製し、前記各試験を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0030】
【表1】


【0031】表1より明らかなように本発明の成分を用いた実施例の毛髪化粧料はいずれも優れた性能を有していた。
【0032】一方、必須成分のいずれかを欠いた比較例では、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性の面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0033】実施例8(ヘアースプレー)
下記組成の原液を常法により調製し、原液65%に対して液化石油ガスを35%を加えてヘアースプレーを調製した。
・エタノール 75.0%・シリコーン変性ポリマー *1 15.0 ・デカメチルシクロポリシロキサン 5.0 ・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 1.0 ・ローズマリー抽出液 0.2 (まんねんろう抽出液;香栄興業社製) ・シナノキ抽出液 0.2 (ボダイジュ抽出液BG−S;丸善製薬社製) ・ムラサキセンブリ抽出物 0.01 (特開平5−213723公報記載の試験例2に記載の抽出物) ・混合植物抽出液(オトギリソウ、カミツレ、シナノキ 0.5 、トウキンセンカ、ヤグルマソウ、ローマカミツレ) (フィテレンEGX−244PG;一丸ファルコス社製) ・メチルポリシロキサン(25℃ 10mPa・s) 0.2 ・メントール 0.1 ・精製水 2.79
【0034】上記組成のヘアースプレーについて、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性を評価したところ、全ての項目に優れていた。
【0035】
実施例9(ヘアーローション)
・エタノール 40.0%・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5・クエン酸トリエチル 3.0・シリコーン変性ポリマー *1 10.0・ジプロピレングリコール 2.0・ジグリセリン 1.0・混合果実抽出液(レモン、リンゴ、モモ、オレンジ) 1.0 (混合果実抽出液P;香栄興業社製) ・混合植物抽出液(アルニカ、オトギリソウ、カモミラ、 1.0 シナノキ、スギナ、ノコギリソウ、セージ、ゼニアオイ 、トウキンセンカ) (混合植物抽出液22;香栄興業社製) ・オタネニンジン抽出液 0.1 (ニンジンエキスK;丸善化成社製) ・精製水 41.4
【0036】上記組成のヘアーローションを常法により調製し、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性を評価したところ、全ての項目に優れていた。
【0037】実施例10(ヘアーフォーム)
下記組成の原液を常法により調製し、原液90%に対し、液化石油ガス7%、ジメチルエーテル3%を加えてヘアーフォームを調製した。
・シリコーン変性ポリマー *1 10.0%・混合植物抽出液(アルニカ、イラクサ、キュウリ、 1.0 セイヨウキズタ、ゼニアオイ、ニワトコ) (フィテレンEGX−251<BG>;一丸ファルコス社製) ・オウゴン抽出液 0.1 (オウゴンリキッドB;一丸ファルコス社製) ・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5・ポリオキシエチレンセチルエーテル(10E.O.) 0.3・高分子シリコーンエマルション 1.0 (BY22−029;東レ・ダウコーニングシリコーン社製) ・精製水 87.1
【0038】上記組成のヘアーフォームについて、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性を評価したところ、全ての項目に優れていた。
【0039】
実施例11(ヘアージェル)
・シリコーン変性ポリマー *1 5.0%・混合植物抽出液(海藻、コボタンズル、シモツケ、 1.0 スギナ、セイヨウキズタ) ・キウイ抽出液 0.1 (ファルコレックス キウイ;一丸ファルコス社製) ・センブリ抽出液 0.1 (センブリ抽出液−S;丸善製薬社製) ・シャクヤク抽出液 0.1 (シャクヤクエキス;稲畑香料社製) ・ポリビニルピロリドン 1.0 (ルビスコールK−90;BASF社製) ・アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.5 (PEMULEN TR−1;B.F.GOODRICH社製) ・トリエタノールアミン 0.5・ポリエーテル変性シリコーン 0.2 (KF−6011;信越化学工業社製) ・精製水 91.5
【0040】上記組成のヘアージェルを常法により調製し、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性を評価したところ、全ての項目に優れていた。
【0041】
実施例11(ヘアーミスト)
・シリコーン変性ポリマー *1 10.0% ・甘草抽出物 0.001 (油溶性甘草エキスPT−40;丸善製薬社製) ・チャノキ抽出液 0.1 (緑茶抽出液;丸善製薬社製) ・混合植物抽出液(クララ、ショウキョウ、センキュウ、 0.5 トウキ、モモ、オタネニンジン) (エムエスエキストラクトA;丸善製薬社製) ・レンゲソウ抽出液 0.1 (レンゲソウエキス;永香堂社製) ・エタノール 50.0 ・メチルフェニルポリシロキサン 0.01 (KF−56;信越化学工業社製) ・精製水 39.289
【0042】上記組成のヘアーミストを常法により調製し、べたつきのなさ、しなやかな感触、艶の付与、洗髪除去性を評価したところ、全ての項目に優れていた。
【0043】
【発明の効果】以上記載の如く、本発明は、毛髪に対して、べたつきがなく、しなやかな感触、艶を付与し、かつ良好な洗髪除去性を有する毛髪化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)
【化1】


(但し、Aは水酸基、アルコキシル基及びアミノ基含有アルキル基から選ばれた基、RはC1〜18のアルキル基及び水酸基から選ばれた基、Qはアミノ基含有アルキル基、m及びnは0〜3の数、xは30〜400の数、yは1〜3の数である。)で表されるアミノ基含有ポリシロキサンとアニオン基含有ポリマーとを反応させ得たシリコーン変性ポリマーと、植物の抽出物又は圧搾物の1種以上を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】 植物の抽出物又は圧搾物がサボンソウ、ショウブ、ゴボウ、センブリ、ムラサキセンブリ、ゲンチアナ、ユキノシタ、ローズマリー、レモン、マロニエ、リンゴ、オレンジ、アロエ、海藻、モモ、レンゲソウ、シャクヤク、ゼニアオイ、カワラヨモギ、シナノキ、オタネニンジン、キウイ、オウゴン、アルニカ、イラクサ、キュウリ、セイヨウキズタ、ニワトコ、シモツケ、コボタンズル、オトギリソウ、トウキンセンカ、ローマカミツレ、チャノキ、甘草の群から選ばれる請求項1記載の毛髪化粧料。

【公開番号】特開2001−233742(P2001−233742A)
【公開日】平成13年8月28日(2001.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−49077(P2000−49077)
【出願日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】