説明

毛髪用止着具、この止着具を用いたかつら及びその装着方法

【課題】 毛髪に容易に確実に止着できかつ抜け難い毛髪用止着具とこれを備えたかつら及びその装着方法を提供する。
【解決手段】 毛髪用止着具10は、両面接着テープ12の一方の粘着剤層12cにネット部材13を貼り付け、ネット部材を内側にして両面接着テープ12を丸めて管体11内に挿通し粘着剤層12bを管体11の内周面に接着する。管体に毛髪101を挿通して圧潰することで自毛101に毛髪用止着具10を止着する。ネット部材13の存在で、その内側の粘着剤層12cが毛髪に直に触れず容易に挿通し得る。また、圧潰することで毛髪がネット部材13により緊締されると共に、ネット部材13から出てきた粘着剤によって毛髪を接着するので、毛髪に対して毛髪用止着具が確実に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪飾りやかつらなどの頭飾品を頭髪や擬毛等の毛髪に確実に装着するのに用いる毛髪用止着具と、この毛髪用止着具を用いたかつら並びにその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の方法を用いてかつらその他の頭飾品を頭部に装着している。例えば、ヘアピンやヘアピンを加工した専用の毛髪用止着具に頭飾品を固定し、頭飾品を固定した止着具を頭髪に差し込んでピン部分で頭髪に挟持したり、或いは、接着剤を用いて頭飾品を頭髪に接着したり、または、糸などの結着具を用いて頭飾品を頭髪に結着して固定するなどが一般的である。
【0003】
その他、例えば特許文献1には、フック体を介して自毛(頭髪)又は部分かつらにより分取した親毛を収束具内に収束し、この収束具内に増毛体の基部を挿入するか、収束具外側に付加することにより、増毛体を取り付ける方法が開示されている。この収束具は、弾性かつ潤性のあるゴムやプラスチックで構成されている。また、特許文献2には、頭髪の親毛に部分かつらを取り付ける際に、部分かつらのネット部材やシート地を傷めないようにした親毛引き出し具が開示されている。さらに特許文献3には、特許文献1の収束具を、外層に硬質体、内層にゴム、ウレタン樹脂、その他の弾性合成樹脂を備えた二層構造の止着具とし、この止着具を毛髪に圧着することで毛髪に装着できるようにした毛髪用止着具が開示されている。
【特許文献1】特開平5−321009号公報
【特許文献2】実開平7−28924号公報
【特許文献3】特開平10−60721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、頭飾品が、所謂エクステンションなどの付け毛や、動植物,キャラクターグッズなど各種の装飾品を有するヘアアクセサリーであれば、これを頭髪に取り付けるための止着具が露呈していても実用上差支えはないが、かつらに用いる止着具の場合はこの止着具が露呈しないよう、止着具をかつらの下側に位置して隠蔽しなければならないため、その大きさや厚みをできるだけ小型に且つ肉薄に形成しなければならない。しかしながら、ヘアピン状の止着具はそのサイズや厚みを小さくするには制限があり、ヘアラインに沿った位置に取り付けるとかつらの浮き上がりが生じてしまって好ましくない。この点、接着剤を用いてかつらを頭部に装着する場合は、かつらのヘアラインの浮き上がりがなくすっきりした外観を呈するが、頭皮の油脂成分や発汗などでかつらが頭皮から剥がれ易いという課題がある。
【0005】
また、上記特許文献1や3に開示された止着具を用いて、頭髪を筒体に挿通させて保持させる場合は、筒体の中空部内に毛髪を多量に押し込んで止着具に加えた圧着力のみで自毛に取り付けるようにしているので、止着具に挿通させた自毛が抜け易くそのためにかつらの浮き上がりを防止できない、という課題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、毛髪に容易に止着することができると共に、一旦、止着した後は毛髪から引き抜き難い毛髪用止着具を提供することを第1の目的とする。
また、上記毛髪用止着具をかつらに利用することで、このかつら本体に取り付けて確実に頭部に固着できるようにした、毛髪用止着具を備えたかつらを提供することを第2の目的とする。
さらに、上記毛髪用止着具を用いて頭部にかつらを装着するかつら装着方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の毛髪用止着具は、複数本の毛髪を挿通する管体とこの管体の内周面に内張りしたネット部材とを備えたことを特徴とする。
前記管体は好ましくは、アルミニウム,金,銀,銅,銅ニッケル合金等の金属でなる圧潰可能な短筒で形成される。前記ネット部材は、両面に粘着剤層を有する両面接着テープによって管体内表面に接着して内張りされる。この管体は、好ましくは、肉厚が0.2mm〜0.3mm、長さが2.5mm〜3.5mmの短径且つ短筒状に設定される。
【0008】
この構成により、管体に接着テープを用いてネット部材を内張りしていると、頭髪を管体に挿通する際には直に頭髪と粘着剤層とが接触しないので頭髪の挿通が容易であり、また、挿通後、毛髪用止着具を毛髪の根元付近まで移動させて管体を圧潰することで毛髪が緊締されると共に、同時にネット部材の目から粘着剤が浸潤して毛髪がネット部材で接着されることになるので、毛髪が止着部材から抜けたり緩んで移動することなく、毛髪に対して確実に毛髪用止着部材を固定させることができる。また、好ましいコンパクトなサイズの管体を用いることで、毛髪を挿通し易くなると共に、使用後も取り外し易くなる。
【0009】
また、本発明のかつら装着用止着具は、複数本の頭髪を挿通する圧潰可能な管体及び管体の内周面に内張りしたネット部材を備えた止着具本体と、止着具本体をかつらの内面に固定する固定部材と、を具備し、管体に複数本の頭髪を挿通した状態でこの管体を圧潰することにより、頭髪と止着具本体とでかつらを頭部に保持するように構成されている。
固定部材は、好ましくは、止着具本体を固定する基部と、基部表面に備えた粘着剤層と、基部背面に止着具本体を固定する紐とからなり、基部表面の粘着剤層をかつら内面に貼着してかつらに固定する。固定部材の基部を、芯材の表面に塗布した粘着剤層を有する接着テープで構成し、基部背面の芯材に止着具本体を固定するようにしてもよい。または、固定部材の基部を、芯材の表面及び背面に塗布した二つの粘着剤層を有する両面接着テープで構成し、基部背面の粘着剤層に止着具本体を貼着するようにしてもよい。紐は止着具本体の管体に挿通され、かつこの紐の両端を基部に貫通して結着することで、止着具本体を基部に固定してもよい。
【0010】
上記構成により、毛髪用止着具本体に内張りしたネット部材で、管体に挿通した複数本の毛髪との接触面が増大するので、ネット部材が滑り止め機能を発揮する。この機能を有するネット部材を内張りした止着具本体を、固定部材でかつらの内面に固定することで、かつらが頭部から容易に外れないように確実に保持して装着することができる。また、固定部材として、基部と粘着剤層と紐、接着テープと紐、両面接着テープと紐、の何れかを用いることで、止着具本体をかつら内面に一層確実に固定することができる。さらに、止着具本体の管体に紐を挿通してその両端を結線することで、固定具本体を容易に基部に固定することができる。
【0011】
本発明の毛髪用止着具付きかつらは、かつら本体とかつら本体内面の周縁に固定した複数の毛髪用止着具とから構成し、毛髪用止着具を、複数本の頭髪を挿通し挿通状態で圧潰される管体と、該管体の内周面に内張りしたネット部材と、このネット部材と管体内壁との間に介在させてネット部材を管体に接着する接着テープとで構成することを特徴としている。好ましくは、管体の軸がかつら本体の周縁に対して直角方向になるように、毛髪用止着具をかつら本体内周縁に固定する。
【0012】
この構成により、かつら本体内面の周縁に固定された各毛髪用止着具は、ネット部材が内張りされているので、このネット部材が滑り止め機能を発揮し、挿通している頭髪から抜け難い。従って、結果としてかつらが頭部から容易に脱離することなく、確実に保持され装着感が向上する。また、毛髪用止着具をかつら本体の周縁に対して直角方向に固定することによって、ヘアラインに沿って毛髪用止着具の周囲に在る頭髪を管体に挿通させることができる。
【0013】
さらに、本発明のかつら装着方法は、複数本の頭髪を挿通し挿通状態で圧潰される管体と管体の内周面に粘着剤層を有する接着テープにより内張りしたネット部材とで構成した複数の毛髪用止着具を、かつら本体内周縁に適宜の間隔で固定し、かつら本体を装着者の頭部に載置した状態で、上記管体に複数本の頭髪を挿通して毛髪用止着具を頭皮近傍へ移動させ、次いで、頭髪を挿通した管体を圧潰することにより頭髪に対して毛髪用止着具を緊締すると共に、ネット部材の網目から浸潤した粘着剤で頭髪をネット部材と接着し、管体への頭髪の挿通、頭皮近傍への移動及び圧潰を順次行うことで、複数の毛髪用止着具を頭髪に固定することにより、かつらを頭部に装着することを特徴とする。
【0014】
両面接着テープを用いてネット部材を内張りすると、頭髪を管体に挿通する際に直に頭髪と粘着剤層とが接触しないので頭髪の挿通が容易であり、また、挿通後、毛髪用止着具を毛髪の根元付近まで移動させて管体を圧潰することで毛髪が緊締されると共に、同時にネット部材の目から粘着剤が浸潤して毛髪がネット部材で接着されることになるので、毛髪が止着部材から抜けたり緩んで移動することなく、毛髪に対して確実に毛髪用止着部材を固定させることができる。また、好ましいコンパクトなサイズの管体を用いることで、毛髪を挿通し易くなると共に、使用後も取り外し易くなる。従って、かつら本体内周縁に固定している各毛髪用止着具が頭髪から容易に抜けないので、かつらが頭部からずれたり外れたりすることなく、安定して良好な装着感が得られる。
【0015】
以上のように、本発明では毛髪用止着具として管体にネット部材を内張りしているので、単に管体のみで毛髪用止着具を構成した場合と比較して、管の両端で毛髪が折れたり切断しにくくなる。
また、特許文献3のように内層にゴムなどの弾性体を用いた場合に比し、管体にネット部材を内張りしているので、毛髪を滑らかに誘導して容易に挿通でき、作業の効率化の点で有利である。また、毛髪用止着具の管体を圧潰したときに、ネット部材の網目から出てきた粘着剤で毛髪が接着されるので、圧潰による緊締と接着効果とが相俟つて毛髪が毛髪用止着具から抜け難くなる。よって、内層として弾性体を用いたよりも毛髪が抜け難くなる。
【0016】
さらに、本発明において、粘着剤層を有する接着テープを用いてネット部材を管体内周面に貼着したものを、毛髪の挿通状態で圧潰すると、ネット部材の網目を通過して粘着剤が浸潤して毛髪の中にも浸透し、毛髪同士が互いに接着されると共に、ネット部材に対しても毛髪が貼着することになるため、毛髪は管体の内部で圧潰による緊締と共に、粘着剤による毛髪同士の接着によって強固に保持されることができる。
これにより、毛髪用止着具をかつら本体内面の周縁に設けたかつらを頭部に装着することで、毛髪用止着具に通した頭髪が抜けたりずれたりしないので、安定してかつらを装着することができる。また、この毛髪用止着具は、サイズが小さく、構造が単純であり、かつら本体内面に管体を圧潰して毛髪に固着することができるので、かつらを頭部に装着しても毛髪用止着具が隠蔽されると共に、かつらの厚みが生じない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の毛髪用止着具によれば、管体にネット部材が内張りされているので、毛髪が管体から抜け難くなる。また、毛髪用止着具を偏平に押し潰すことで、ネット部材の下側の粘着剤層が変形して粘着剤が網目から浸潤し、挿通した毛髪と絡み合って毛髪と接着するので、毛髪用止着具を毛髪により確実に止着することができる。
【0018】
また、本発明の毛髪用止着具をかつらに利用した場合、上記と同様の作用により、圧潰させた管体中のネット部材との間で頭髪を確実に保持すると共に、粘着剤により頭髪同士も接着するので、かつらのずれや脱落が生じない。従って、この毛髪用止着具をかつら本体内面の周縁に複数個備えることで、毛髪用止着具に挿通した頭髪を確実に止着でき、ずれや脱離を生じず、安定してかつらを装着することができる。
【0019】
さらに、本発明のかつら装着方法によれば、かつら本体の内面周縁に設けた各毛髪用止着具にはネット部材が内張りされており、該ネット部材が滑り止めとして機能するので、挿通している頭髪から抜け難い。従って、かつら本体内面の周縁に固定している各毛髪用止着具が頭髪から容易にずれたり抜け落ちたりしないので、かつら本体が頭部から外れ難くすることができる。また、かつら本体かつらの各毛髪用止着具に毛髪を挿通して圧着するだけで、簡単に短時間で、かつらを頭部に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本発明の毛髪用止着具について説明する。
本発明の毛髪用止着具は、複数本の毛髪を挿通する管体と、この管体の内周面に内張りされたネット部材とを備える。図1は、本発明の毛髪用止着具の一例を示した概略図で、(A)は側面図、(B)はA−A線に沿う断面図である。
本発明の毛髪用止着具10は、図1に示すように、管体11と、管体11の内周面に挿通して接着されるテープ12と、テープ12の内周側に設けられたネット部材13と、で構成される。管体11、テープ12及びネット部材13は何れも肉薄であり、図面では誇張して描いている。
【0021】
管体11は金属、例えばアルミニウム,金,銀,銅,銅ニッケル合金材などの圧潰可能な短筒で形成される。本実施例では、金属色を抑えるため、外周を肌色或いは灰色などの目立たない色に着色すると共に、反射防止剤を施している(塗装部分は図示せず。)。管体11の側面は図1(A)に示すように楕円状の断面を呈していてもよく或いは真円でもよいが、管体に毛髪を挿通した後、工具を用いてこの管体を圧着して毛髪が引き抜きにくい程度に押し潰す(これを圧潰と称する。)ので、作業性を考慮すると断面楕円状に形成しておけば好ましい。
テープ12は、基層を構成する芯材12aと、芯材12aの両面に粘着剤を塗布した粘着剤層12b,12cと、粘着剤層12cの外側に剥離可能に貼り付けた剥離紙12dとで構成された、公知の所謂、両面接着テープであってよい。この両面接着テープ12は、皮膚に直接接触することはないが、頭部とその頭髪を利用するため、医療用の接着テープを用いるのが好ましい。
ネット部材13は、所定の線径を有するフィラメントで編織したものでも、又はフィラメントを単に縦横に格子状に配置して構成したものであってもよい。ただし、管体の口径が、後述するように2〜3mm程度と極めて細い管であるので、フィラメントの線径や網目(メッシュ)も、これに応じてなるべく細径で且つ小さな網目のものが好ましい。例えば、0.03mm〜0.1mm程度の線径で、50〜100程度のメッシュとなっていれば扱い易い。
【0022】
ここで、管体11の具体例として、その肉厚が0.2〜0.3mm、特に0.25mm程度で、その内径(口径)が2.5〜3.5mm、特に3mm程度で、その長さは、3〜5mm、特に3mm程度であれば作業性の点でも扱い易く、また毛髪の保持力の点でも好ましい。管体11が楕円状である場合でも、内表面積が7mm2 程度あれば、毛髪量の挿通と保持力の点で十分である。毛髪用止着具10は、後述するように毛髪を挿通した後に圧潰するので、最低限必要な長さがあればよく、短すぎると、圧着手段により圧潰することができず、また、圧着手段で管体11を圧潰した幅が有効長となり毛髪と毛髪用止着具10とが止着するので、必要以上に長くする必要がない。従って、上記したように、管体の長さは、3〜5mm、特に3mm程度の短筒状又は環状になっていれば十分である。
【0023】
この管体の中に毛髪を挿通する。挿通する毛髪量は、かつらの場合、頭髪の生えている密度にもよるが、おおよそ20〜100本程度とすればよい。あまり多量の頭髪を挿通させようとすると、管体の直径より広い面積で頭髪をかき集めることになるので、後工程で毛髪用止着具を頭髪の根元近傍まで移動させるのが困難となる。
【0024】
毛髪用止着具10を製作する場合、両面接着テープ12の片面側の粘着剤層12cにネット部材13を貼り付けた後に、ネット部材13を内側にして両面接着テープ12を丸めて管体11内に挿通する。そして、他方の粘着剤層12bを管体11の内周面に接触させ、両面接着テープ12が広がろうとする復元力を利用して、両面接着テープ12を管体11の内周面に接着することで、管体の内表面にネット部材13を配置した毛髪用止着具10を製造することができる。
【0025】
本発明の毛髪用止着具10は、種々の色彩に着色することでビーズのような装飾性に優れ、かつ、小型で且つ肉薄のため目立たないので、所謂エクステンションなどの付け毛や、動植物,キャラクターグッズなど各種の装飾品を有するヘアアクセサリーなど髪飾り用の止着具として頭髪に露呈して取り付けてもよい。或いは、かつらの内側に取り付けて頭髪をこの止着具に挿通してかつらを固着するための止着部材としても利用することができる。以下、具体例を挙げて説明する。
【0026】
図2は毛髪用止着具10の使用形態の一例を示した斜視図である。図2に示すように、毛髪用止着具10の外周には擬毛15を付設している。図では擬毛15は僅か一部しか示していないが、所望により外周全体に密生して付設することができる。この毛髪用止着具10の中空に頭部100から生えている頭髪(自毛)101の一部を纏めて挿通する。このとき、毛髪用止着具10の内周側にはネット部材13が設けられていることから、自毛101を挿通し易く、また、ネット部材13の外側にある両面接着テープ12の粘着剤層12cを構成する粘着剤が直接自毛101に触れることはないので、自毛101に粘着剤が付着することもない。よって、毛髪用止着具10を取り付ける作業者の手や指に粘着剤が付着し不快感を抱くこともない。
【0027】
その後、作業者が管体11をペンチやプライヤーなどの圧着具110で圧着、即ち圧潰することにより、毛髪用止着具10を自毛101に装着することができる。このとき、毛髪用止着具10の圧着により、毛髪用止着具10に内張りされたネット部材13と自毛101とが接触し合って、ネット部材13が自毛101の表面上を滑りにくくし、自毛101から毛髪用止着具10が抜け難くなる。また、圧力を加えられてネット部材13の下側の接着層12cから粘着剤が浸潤して毛髪用止着具10に挿通した自毛101が一部接着するので、さらに自毛101から毛髪用止着具10が抜け難くなる。
なお、自毛101から毛髪用止着具10をはずす場合には、毛髪用止着具10の押し潰した管体を広げることにより、容易に毛髪用止着具10を自毛101から引き抜くことができる。
【0028】
次に、本発明の毛髪用止着具をかつらに用いる例について説明する。
本発明の毛髪用止着具10には、かつら本体に取り付け易くするために、固定部材を備えている。この固定部材付きの毛髪用止着具10を以下、場合によりかつら装着用止着具20と称する。
図3は、本発明のかつら装着用止着具20の概略図で、(A)は斜視図、(B)はB−B線に沿う断面図である。固定部材は、毛髪用止着具10を載置して固定する基部21とその背面側に外方に粘着剤層を有する接着テープ22が取り付けられた構成でなる。かつら装着用止着具20は、図3(A),(B)に示すように、固定部材の基部21に毛髪用止着具10を紐23により固定し、更に、基部21で毛髪用止着具10を固定しない側に、粘着剤層を有する接着テープ22が取り付けられている。固定部材の基部21には、ウレタンなどの合成樹脂の肉薄のシートを用いるのが好ましい。
【0029】
毛髪用止着具10の基部21への固定は次のように行うことができる。
例えば、図3(B)に示すように、先ず、紐23を、基部21の表面、つまり毛髪用止着具10を固定しない面から裏面まで通して、毛髪用止着具10の管体11に挿通し、基部21の裏面から表面に通す。この作業を二回行って、紐23の両端を結ぶ。これで毛髪用止着具を基部21に確実に固定することができる。なお、紐23を毛髪用止着具10の管体に挿通する回数は1回以上であればよく、紐23を2本以上用いてもよい。
接着テープ22は、例えば芯材22aの両面に粘着剤層22b,22cを有する両面接着テープが好ましく、基部21と芯材22aとを粘着剤層22bで接着し、他方の粘着剤層22c側には、剥離紙22dが貼り付けてある。なお、両面接着テープに代えて片面接着テープを用いても勿論構わない。この場合は、芯材を基部21と別途接着剤で貼り合わせるか或いは紐23を兼用して結着するようにしてもよい。
【0030】
固定部材の他の態様として、片面の接着テープの芯材を基部21として利用し、この芯材の上に毛髪用止着具10を直接載置して紐23で結着するように構成してもよい。この場合は、好ましくは、接着テープの芯材を頑丈でやや硬質な材料を選択する。或いは、上記片面接着テープに代えて、両面接着テープを用いても構わない。この場合も同様に、芯材22aとして、接着テープの芯材を頑丈でやや硬質な材料を選択する。両面接着テープ22の一方の粘着剤層22bの上に毛髪用止着具10を直接載置して紐23で結着するようにすれば、管体11表面の粘着剤による接着と紐での結着と相俟つて、止着具が強固にかつらに固定される。
【0031】
次に、本発明のかつら装着用止着具付きかつらについて説明する。
上記のように、本発明のかつら装着用止着具20は、複数本の頭髪を挿通する圧潰可能な管体11と管体11の内周面に内張りしたネット部材13とを備えた止着具本体10と、止着具本体10をかつらの内面に固定する固定部材とを具備する。このかつら装着用止着具20を用いて、かつら30を構成し、管体10に複数本の頭髪を挿通保持して該頭髪と止着具本体10とでかつらを頭部に装着することができる。すなわち、本発明の毛髪用(かつら装着用)止着具付きかつら30は、上記毛髪用止着具10と頭髪とで、かつらを頭部に装着するものである。
【0032】
図4は、本発明の毛髪用止着具付きかつら30の一例を示す概略図である。図4では、毛髪用止着具付きかつら30を頭部に装着する側、つまり、かつら本体の内面を示している。毛髪用止着具付きかつら30は、図4に示すように、かつら本体31内面の周縁にかつら装着用止着具20を複数個接着して固定したものである。
ここで、かつら本体31は、例えば網地により形成したネット部材32と、かつら本体31の形状及びサイズを画成する、ベース外周縁としての周縁枠部材33と、ネット部材32及び周縁枠部材33に植設される多数の擬毛34とで構成される。
【0033】
図5は、図4のベース外周縁としての周縁枠部材33周辺の斜視図である。図6は図5のC−C線に沿う断面図である。図5に示すように、周縁枠部材33に固定されたかつら装着用止着具20の軸が、周縁枠部材33の延設方向に交わるように、固定部材を介して周縁枠部材33に接着されている。このように、管体の軸と周縁枠部材33の延設方向とは互いに直交することが好ましい。これは、自毛101が頭皮に対して略垂直に生え、その生える方向に沿って毛髪用止着具10の中空を配置することで、自毛101を管体11中に挿通し易くするためである。
周縁枠部材33への接着は、かつら装着用止着具20の固定部材としての両面接着テープ22から剥離紙22dを剥がして、このかつら装着用止着具20を周縁枠部材33に当接させる。これにより、かつら装着用止着具20が粘着剤層22cで周縁枠部材33と接着する。
【0034】
以上説明したように毛髪用止着具付きかつら30は、上記かつら装着用止着具20をかつら本体31のベース外周縁に接着したものに限らず、次のように構成してもよい。
図7は、図4とは異なる形態のかつら40の一部を示した斜視図である。毛髪用止着具付きかつら40は、図7に示すように、上記毛髪用止着具10を、ベース外周縁としての周縁枠部材33に直接紐43で縫い合わせて固定したものである。例えば、周縁枠部材33に、擬毛(図示せず)を植設した植毛側の面(裏面)まで表面側から紐43を通す。次に、毛髪用止着具10の中空を挿通した後に、再度紐43を植毛側に通して、紐43の両端を結ぶことにより、毛髪用止着具10を直にベース外周縁としての周縁枠部材33に固定する。
なお、紐43の代わりに、かつら本体31に植設された擬毛を毛髪用止着具10に挿通して、この擬毛を他の擬毛と結ぶことで、毛髪用止着具10を周縁枠部材33に固定してもよい。
【0035】
以上のように構成されたかつら30, 40を頭部に装着する方法について説明する。
図8は、図4の毛髪用止着具付きかつら30を頭部に装着する方法を示した概略図で、(A)は毛髪用止着具10に自毛101を挿通させる段階、(B)は毛髪用止着具10を圧着(圧潰)する段階の概略図である。
先ず、毛髪用止着具付きかつら30を装着する場合には、頭部100に毛髪用止着具付きかつら30を載せて位置合わせする。
【0036】
次に、図8(A)に示すように、毛髪用止着具付きかつら30の周縁枠部材33を作業者の指102, 103で捲り上げる。そして、鉤針111を毛髪用止着具10の管体11に挿入して、鉤針111の先端部を自毛101に引っ掛けて、毛髪用止着具10の中空から鉤針111を引き抜く。これで、毛髪用止着具10の管体に自毛101を挿通させることができる。このとき、毛髪用止着具10の内周側にはネット部材13が設けられていることから、自毛101を挿通し易く、また、ネット部材13の外側にある接着テープ12の粘着剤層12cを構成する粘着剤が直接自毛101に触れることはない。また、自毛101に粘着剤が付くこともないので、毛髪用止着具10を取り付ける作業者の手に粘着剤が付着し不快感を抱くこともない。
【0037】
引き続き、図8(B)に示すように、作業者は、かつら30の外周枠部材33を捲り上げつつ、毛髪用止着具10の中空に挿通した自毛101を親指102と人差し指103とで掴んで整え、プライヤーやペンチなどの圧着手段110で、毛髪用止着具10の管体11の外周を圧縮して適度に圧潰する。このとき、毛髪用止着具10に挿通した自毛101の方向に対して略垂直な方向に、即ち管体11の長さ方向に対して垂直な方向に管体を圧着すると、毛髪用止着具10の圧潰により自毛101がネット部材の適度な弾力で圧迫されると共に、同時に、粘着剤層12cが変形してネット部材の網目から粘着剤が漏出し、自毛101同士が浸潤した粘着剤によって接着されることになる。従って、自毛101は適度な圧潰による緊締と粘着剤による接着により、毛髪用止着具10に確実に保持され、自毛101に引張力が作用しても、容易にずれたり引き抜かれたりすることがない。この作業を、かつら30の内周縁に設けた複数個の各毛髪用止着具10についても同様に行うことにより、かつら本体31を頭部100に確実に安定して装着することができる。
【0038】
以上のように、管体10に複数本、例えば20本〜200本程度の頭髪を挿通して毛髪用止着具10を頭皮近傍へ移動し、管体10を圧潰することにより頭髪に対して毛髪用止着具を締結し、このようにして、管体10への頭髪の挿通、頭皮への移動及び圧潰を順次行って、複数の毛髪用止着具を頭髪に固定することにより、かつら本体31を頭部100に装着する。このように、毛髪用止着具付きかつら30内面の周縁に設けた各毛髪用止着具10に自毛を挿通して圧着するという簡単な作業により、毛髪用止着具付きかつら30を頭部100に止着することができる。
また、毛髪用止着具付きかつら30を頭部100から外す際には、各毛髪用止着具10を、前述したように毛髪用止着具10の中空を広げて外すことで簡単に作業できる。
【0039】
本発明に従って、管体に配置したネット部材と粘着剤を備えた毛髪用止着具と比較するため、従来技術として特許文献3に記載のように、管体にネット部材の代わりにウレタン又はゴムを配置した毛髪用止着具を製作した。これを、プライヤーで圧潰すると、ウレタン又はゴムが管体から漏出してきて使用に耐えなかった。
そこで、ウレタン又はゴムを内張りした毛髪用止着具を押圧力を低減して圧着したものを製作し、毛髪保持力の試験を行った。本発明による毛髪用止着具も同程度の押圧力で圧着したものを製作して同様の比較試験を行ったところ、従来のものは約0.2〜0.5kgf/mm2 程度で容易に引き抜けるのに対し、本発明による止着具では約0.8〜2.3kgf/mm2 の荷重に耐え、従来技術に比して格段に優れた結果が得られた。これは、ネット部材による毛髪の引っ掛かり性がウレタンやゴムのそれより高く、また、本発明では接着テープの粘着剤が漏出してネット部材と毛髪及び毛髪同士の接着に寄与していることが影響しているためである。なお、接着テープの粘着剤はいわゆる感圧式接着剤が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の毛髪用止着具の一例を示した概略図で、(A)は側面図、(B)はA−A線に沿う断面図である。
【図2】毛髪用止着具の使用形態の一例を示した斜視図である。
【図3】本発明のかつら装着用止着具の概略図で、(A)は斜視図、(B)はB−B線に沿う断面図である。
【図4】本発明の毛髪用止着具付きかつらの一例を示す概略図である。
【図5】図4のベース外周縁としての周縁枠部材周辺の斜視図である。
【図6】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図7】図4とは異なる形態の毛髪用止着具付きかつらの一部を示した斜視図である。
【図8】図4の毛髪用止着具付きかつらを頭部に装着する方法を示した概略図で、(A)は毛髪用止着具の中空に自毛を挿通させる段階、(B)は毛髪用止着具を圧着する段階の概略図である。
【符号の説明】
【0041】
10 毛髪用止着具
11 管体
12, 22 接着テープ
12a, 22a 基層
12b, 12c,22b,22c 粘着剤層
12d,22d 剥離紙
13, 32 ネット部材
15, 34 擬毛
20 毛髪用(かつら装着用)止着具
21 基部
23, 43 紐
30, 40 毛髪用止着具付きかつら
31 かつら本体
33 周縁枠部材
100 頭部
101 自毛
102, 103 指
110 圧着具
111 鉤針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の毛髪を挿通する管体と該管体の内周面に内張りしたネット部材とを備えたことを特徴とする、毛髪用止着具。
【請求項2】
前記管体は金属製の圧潰可能な短筒でなることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項3】
前記ネット部材は、両面に粘着剤層を有する両面接着テープにより前記管体内表面に接着して内張りされたことを特徴とする、請求項1に記載の毛髪用止着具。
【請求項4】
前記管体は、肉厚が0.2mm〜0.3mm、長さが2.5mm〜3.5mmに設定されてなることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の毛髪用止着具。
【請求項5】
複数本の頭髪を挿通する圧潰可能な管体及び該管体の内周面に内張りしたネット部材を備えた止着具本体と、
上記止着具本体をかつらの内面に固定する固定部材と、を具備し、
上記管体に複数本の頭髪を挿通した状態で該管体を圧潰することにより、該頭髪と止着具本体とでかつらを頭部に保持するようにしたことを特徴とする、毛髪用止着具。
【請求項6】
前記固定部材が、前記止着具本体を固定する基部と、該基部表面に備えた粘着剤層と、該基部背面に前記止着具本体を固定する紐とからなり、上記基部表面の粘着剤層をかつら内面に貼着してかつらに固定することを特徴とする、請求項5に記載の毛髪用止着具。
【請求項7】
前記固定部材の基部が、芯材の表面に塗布した粘着剤層を有する接着テープでなり、該基部背面の芯材に前記止着具本体を固定することを特徴とする、請求項6に記載の毛髪用止着具。
【請求項8】
前記固定部材の基部が、芯材の表面及び背面に塗布した二つの粘着剤層を有する両面接着テープでなり、該基部背面の粘着剤層に前記止着具本体を貼着することを特徴とする、請求項6に記載の毛髪用止着具。
【請求項9】
前記紐は前記止着具本体の管体に挿通され、かつこの紐の両端を前記基部に貫通して結着することで、前記止着具本体を前記基部に固定することを特徴とする、請求項6に記載の毛髪用止着具。
【請求項10】
かつら本体と該かつら本体内面の周縁に固定した複数の毛髪用止着具とからなり、
上記毛髪用止着具が、複数本の頭髪を挿通し挿通状態で圧潰される管体と、該管体の内周面に内張りしたネット部材と、このネット部材と管体内壁との間に介在させてネット部材を管体に接着する接着テープと、を有することを特徴とする、毛髪用止着具を備えたかつら。
【請求項11】
前記管体の軸が前記かつら本体の周縁に対して直角方向になるように、前記毛髪用止着具を前記かつら本体内周縁に固定したことを特徴とする、請求項10に記載の毛髪用止着具を備えたかつら。
【請求項12】
複数本の頭髪を挿通し挿通状態で圧潰される管体と該管体の内周面に粘着剤層を有する接着テープにより内張りしたネット部材とで構成した複数の毛髪用止着具を、かつら本体内周縁に適宜の間隔で固定し、
かつら本体を装着者の頭部に載置した状態で、上記管体に複数本の頭髪を挿通して上記毛髪用止着具を頭皮近傍へ移動させ、
次いで、上記管体を圧潰することにより頭髪に対して毛髪用止着具を緊締すると共に、上記ネット部材の目から浸潤した粘着剤で該頭髪をネット部材と接着し、
上記管体への頭髪の挿通、頭皮近傍への移動及び圧潰を順次行うことで、複数の毛髪用止着具を頭髪に固定することにより、かつらを頭部に装着することを特徴とする、かつら装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63502(P2006−63502A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251082(P2004−251082)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)