説明

毛髪評価システムおよび毛髪評価方法

【課題】人頭における毛髪の絡まり度を、専門家の熟練によることなく客観的に評価する手段を提供する。
【解決手段】毛髪評価システム100は、関係記憶部30、毛髪情報受付部40、パラメータ取得部50および絡まり度算出部60を備えている。関係記憶部30は、サンプル提供者Sの毛髪HSより求められた、複数種類の毛髪パラメータ(毛量パラメータ、摩擦パラメータおよび曲率パラメータ)と毛髪HSの絡まりの強さを示す絡まり度LSとの関係情報IRを記憶する。毛髪情報受付部40は、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪情報IHを受け付ける。パラメータ取得部50は、受け付けられた毛髪情報IHに基づいて毛髪HEに関する毛髪パラメータを求める。絡まり度算出部60は、関係情報IRを参照して、被験者EXの毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータに対応する絡まり度LEを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪評価システムおよび毛髪評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪表面の滑らかさを定量的に評価する発明がいくつか提案されている。
非特許文献1には、引っ張り試験機を用いて、人間の毛髪に対する櫛通り荷重(コーミングフォース)を定量化する測定機器が記載されている。
特許文献1には、櫛通し操作中に発生するきしみ音を分析して、毛髪の損傷状態を定量的に評価する方法が記載されている。
特許文献2には、櫛の歯がキューティクル燐片を擦って発する振動を周波数として検出することのできる電子式の櫛を利用して、毛髪表面の滑らかさを定量化する方法が記載されている。
【0003】
また、非特許文献2には、毛髪の単繊維特性として曲率、摩擦、剛性および直径を設定し、これらの特性と、櫛通り荷重との関係式を導いて毛髪の櫛通り性を評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−159830号公報
【特許文献2】特開2006−158526号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"A Quantitative Characterization of Combing Force"、W. Newman and G.L. Cohen、J. Soc Cosmet. Chem., 24, 773-782 (1973)
【非特許文献2】"Prediction of hair assembly characteristics from single-fiber properties. Part II. The relationship of fiber curvature, friction, stiffness, and diameter to combing behavior"、C. R. Robbins and C. Reich、J. Soc. Cosmet. Chem., 37, 141-158 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パーマやカラーなどの化学処理が普及した現代においては、髪のダメージの悩みとして、毛髪の絡まりを挙げる人が増加傾向にある。ここで、毛髪の絡まりとは、種々の要因が複合して生じる櫛通りや指通りの悪さを意味し、櫛通り荷重(コーミングフォース)だけでは単純に評価できない官能的な値である。そして、本発明者の研究によれば、近年の多くの人は、毛髪に櫛や指を通したときの力の大きさだけではなく、櫛や指に対する毛髪の繊細な引っ掛かりを頭皮または指で感知し、その程度(引っ掛かりの抵抗力、頻度等)の大小をもって髪のダメージと捉えていることが明らかとなってきた。
【0007】
これに対し、上述の特許文献や非特許文献に開示されている方法は、毛束に対して一定の条件で櫛を通すのに必要な力や仕事量を測定するものであって、櫛通り荷重(コーミングフォース)が測定されるにすぎない。すなわち、従来の方法では、毛束に対する櫛通りの荷重を測定することで、毛髪表面から櫛が受ける摩擦力を測定するものであって、櫛や指に対する毛髪の引っ掛かりの程度までを評価するものではなかった。
また、従来の方法では、均一な長さの毛髪を所定量だけ束ねたモデルの毛束に一定の速度で櫛を通して測定を行うことを前提としており、モデルの毛束の毛髪量や、櫛通しの速度に依存して測定値が求まるため、実際に人頭に適用して評価することは困難であった。なぜならば、モデルの毛束は、均一長さの各毛髪繊維の先端が揃えられた束であるのに対し、人頭は、様々な生え位置から延びる様々な長さの毛髪繊維が寄せ集まって構成されたものであって、各毛髪繊維の毛先位置が不揃いなためである。
【0008】
一方で、毛髪に対する櫛や指の引っ掛かりの程度は、交絡部の発生位置から毛髪の先端までの長さや量によっても大きく変動する「動作に伴う感触」であって、実測することが難しい。なぜならば、毛髪同士の交絡は、櫛や指を通すことで解消する場合と、逆に絡みつきが強くなる場合とがあるからである。
ここで、毛髪同士が交絡する形態は様々であるが、その要因ごとに複数の類型に分類することができる。代表的な類型としては、毛髪同士が斜めに交錯するクロス型、ウェーブした毛髪同士が捩れ合う捩れ型、折れ曲がった毛髪が他の毛髪に係合するフック型、微細な衣服繊維、埃、毛髪化粧料を核として毛髪が絡まりつく巻きつき型、毛髪同士が玉結び状に絡まる玉結び型、細い毛髪が網状に絡まる網型、多量の毛髪が互いに絡まり合う毛玉型などを挙げることができる。そして、たとえば捩れ型や玉結び型の交絡の場合、毛髪の中間部で生じた交絡部に櫛や指を通すことで、当該交絡が毛先に至って消滅する場合と、毛先に至らずに毛髪同士がしっかりと絡みついてほどけなくなる場合とがある。
【0009】
このように、毛髪の絡まり特性の程度を定量的に評価するにあたっては、従来のように櫛通りの荷重を測定するだけでは足りず、毛髪同士の交絡の程度を勘案して総合的に判断する必要があり、現時点においては専門家による官能的な判断に頼らざるを得なかった。
本発明は、このような状況において為されたものであり、人頭における毛髪の絡まり度を、専門家の熟練によることなく客観的に評価する手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の毛髪評価システムは、サンプル提供者の毛髪より求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す毛髪パラメータと、前記毛髪の絡まり特性の強さを示す絡まり度と、の対応関係を表す関係情報を記憶する記憶手段と、被験者の毛髪に関する毛髪情報を受け付ける受付手段と、受け付けられた前記毛髪情報に基づいて、該毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータを求めるパラメータ取得手段と、前記関係情報を参照して、前記被験者の毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータに対応する前記絡まり度を決定する絡まり度算出手段と、を備える。
【0011】
本発明の毛髪評価方法は、予めサンプル提供者の毛髪より求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す毛髪パラメータと前記毛髪の絡まり特性の強さを示す絡まり度との対応関係を表す関係情報を記憶している記憶手段を備えるコンピュータ装置を用いておこなう毛髪評価方法であって、被験者の毛髪に関する毛髪情報に基づいて該毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータを求めるステップと、前記関係情報を参照して、前記被験者の毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータに対応する前記絡まり度を決定するステップと、を含む。
【0012】
ここで、本発明においては、前記毛髪パラメータが、毛髪の長さまたは量に関する毛量パラメータと、毛髪の表面摩擦に関する摩擦パラメータと、毛髪の曲率に関する曲率パラメータと、を含むとよい。
【0013】
また、本発明においては、前記絡まり度として、毛髪に対する櫛通りまたは指通りの荷重と、毛髪同士の交絡部に対する櫛または指の引っ掛かりの頻度および強さとから求まる値を用いるとよい。
【0014】
なお、本発明の毛髪評価システムの各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の装置として形成されていること、一つの構成要素が複数の装置で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0015】
また、本発明の毛髪評価方法は、複数のステップを順番に記載してあるが、その記載の順番は複数のステップを実行する順番を必ずしも限定するものではない。このため、本発明の毛髪評価方法を実施するときには、その複数のステップの順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
さらに、本発明の毛髪評価方法は、複数のステップが個々に相違するタイミングで実行されることに限定されず、あるステップの実行中に他のステップが発生すること、あるステップの実行タイミングと他のステップの実行タイミングとの一部ないし全部が重複していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の毛髪評価システムおよび毛髪評価方法によれば、予めサンプル提供者の毛髪から求められた関係情報に基づいて、専門家の評価に依ることなく、被験者の毛髪の絡まり度を客観的に評価することができる。これにより、被験者は自身の毛髪の絡まり度を他人と比較することもでき、また毛髪の絡まり度に応じて、所望のコンディショニング効果を有する適切な毛髪処理剤を選択することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態にかかる毛髪評価システムの構成図である。
【図2】第一実施形態にかかる毛髪評価システムの機能ブロック図である。
【図3】曲率パラメータを求めるためのスタンダードデータの一例を示す画像である。
【図4】第一実施形態にかかる毛髪評価方法のフローチャートである。
【図5】第二実施形態にかかる毛髪評価方法のフローチャートである。
【図6】実施例1にかかるサンプル提供者の毛髪の絡まり度の官能評価値(実測値)と予測値との関係図である。
【図7】(a)、(b)は、実施例1、2にかかる被験者の毛髪の絡まり度の官能評価値(実測値)と予測値との関係図である。
【図8】(a)は比較例1にかかる被験者の毛髪の絡まり度の官能評価値(実測値)と予測値との関係図であり、(b)は比較例2にかかる被験者の毛髪の絡まり度の官能評価値(実測値)と櫛通り荷重(コーミングフォース)との関係図である。
【図9】実施例3にかかる毛髪診断のロジックツリーの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
<第一実施形態>
(毛髪評価システム)
図1は、本実施形態の毛髪評価システム100を示す構成図である。
図2は、本実施形態の毛髪評価システム100の機能ブロック図である。
【0020】
はじめに、本実施形態の毛髪評価システム100の概要について説明する。
本実施形態の毛髪評価システム100は、記憶部(関係記憶部30)、受付部(毛髪情報受付部40)、パラメータ取得部50および絡まり度算出部60を備えている。
関係記憶部30は、サンプル提供者Sの毛髪HSより求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す毛髪パラメータと、毛髪HSの絡まり特性の強さを示す絡まり度LSとの対応関係を表す関係情報IRを記憶する。
毛髪情報受付部40は、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪情報IHを受け付ける。
パラメータ取得部50は、受け付けられた毛髪情報IHに基づいて、毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータを求める。
絡まり度算出部60は、関係情報IRを参照して、被験者EXの毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータに対応する絡まり度LEを決定する。
【0021】
ここで、毛髪評価システム100の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与された処理装置(データ処理装置または画像処理装置)、コンピュータプログラムにより処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
また、毛髪評価システム100の各種の構成要素は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等として実施することができる。
なお、毛髪評価システム100においてコンピュータプログラムに対応した各種動作を処理装置に実行させるとは、各種デバイスを処理装置に動作制御させることを含む。
【0022】
つぎに、本実施形態の毛髪評価システム100をより詳細に説明する。
毛髪評価システム100は、毛髪評価装置120と操作端末200とがネットワーク110で接続されて構成されている。
毛髪評価装置120は、関係情報IRと被験者EXの毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータとに基づいて被験者EXの絡まり度LEを決定する演算処理を行う。
操作端末200は、被験者EXに操作されて、毛髪評価装置120に対する毛髪情報IHの入力と、毛髪評価装置120からの出力情報の受信およびその出力表示を行う。
【0023】
操作端末200は、図1に示すように携帯電話機132またはパソコン端末140を含んで構成されている。携帯電話機132は、ネットワーク110に接続された携帯電話基地局130との間で無線通信が可能である。
【0024】
毛髪評価装置120は、CPU22、送受信部42、関係記憶部30、およびコンテンツ記憶部32が、バスライン80に接続されている。
送受信部42はネットワークインタフェースであり、操作端末200(携帯電話機132またはパソコン端末140)と毛髪評価装置120の間でデータの送受信を行う。具体的には、送受信部42は、被験者EXの毛髪情報IHを含む入力情報を操作端末より受信し、また、CPU22で算出された被験者EXの絡まり度LEを含む出力情報を操作端末に送信する。
【0025】
図1に示す携帯電話機132またはパソコン端末140(操作端末)は、毛髪評価システム100における操作部82(図2を参照)を構成している。
また、図2に示す処理部20はCPU22の機能によって実現される。処理部20は、毛髪評価装置120における演算処理を行う制御部の総称であり、パラメータ取得部50および絡まり度算出部60を含む。処理部20は、関係記憶部30およびコンテンツ記憶部32とそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
毛髪情報受付部40、評価出力部92およびメッセージ出力部94は、送受信部42およびCPU22の機能によって実現される(図1を参照)。
また、図2に示す選択肢表示部70は、携帯電話機132またはパソコン端末140のディスプレイ表示部150により実現される(図1を参照)。選択肢表示部70の機能は、後述する第二実施形態にて説明する。
【0027】
毛髪HS、HEとは、人間(サンプル提供者Sまたは被験者EX)の頭髪をいう。また、毛髪繊維とは毛髪の一本一本をいい、毛髪全体とは、髪型を構成する毛髪の全体をいうものである。
【0028】
本実施形態の毛髪評価システム100において、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪情報IHとは、毛髪HEの特性を示す文字データもしくは数字データ、または毛髪HEの毛髪繊維の少なくとも一部を含む画像データをいう。
文字データの毛髪情報IHとしては、たとえば、一本もしくは複数本の毛髪HEの全体または部分に関する、物理的、化学的もしくは光学的な特性情報、または被験者EXの人種、性別、年齢層などの属性を示す属性情報を用いることができる。特性情報は、機器による測定値でも、人間による官能評価値でもよい。
画像データの毛髪情報IHとしては、たとえば、毛髪HEに関する断面画像、毛髪HEの表面の拡大画像、毛髪繊維の変曲点を含む全体(中心線)画像、被験者EXのヘアスタイルを示す頭部画像などを挙げることができる。
【0029】
また、毛髪HS、HEの絡まり特性の強さとは、毛髪HS、HEに櫛や指を通した際に知覚される、毛髪同士が絡まり付く動的な感触の大小をいう。
そして、本実施形態の絡まり度LS、LEは、毛髪HS、HEに関する上記の絡まり特性の強さを数値化したデータ(数値データ)である。
【0030】
より具体的には、本実施形態の絡まり度LS、LEは、毛髪HS、HEに対する櫛通りまたは指通りの荷重と、毛髪HS、HE同士の交絡部に対する櫛または指の引っ掛かりの頻度および強さとから求まる値である。
【0031】
ここで、毛髪HS、HE同士の交絡部に対する櫛または指の引っ掛かりの有無や強弱の感じ方は、一般に評価者によって異なるものである。しかしながら、現在のところ、絡まり度LS、LEは機器による直接的な測定によって客観的に数値化する方法が確立されておらず、熟練技術者によって官能的に評価しなければならない。
そこで、本実施形態では、サンプル提供者Sの毛髪HSの絡まり度LSに関して美容専門家や美容研究員の官能評価値を用いることで客観性を担保し、かかる官能評価値に基づいて被験者EXの毛髪HEの評価を行う。
【0032】
サンプル提供者Sの毛髪パラメータと絡まり度LSとの関係は、関係情報IRとして関係記憶部30に記憶される。
そして、被験者EXの毛髪HEに対して、この関係情報IRを適用することにより、毛髪HEの絡まり度LEを求めることができる。
【0033】
毛髪パラメータとは、毛髪の絡まり特性との相関が高い、あるいは消費者調査において経験的に毛髪の絡まり特性との関連が考えられている因子に関する値である。
本実施形態においては、毛髪パラメータとして、少なくとも、毛髪の長さまたは量に関する毛量パラメータ、毛髪の表面摩擦に関する摩擦パラメータ、および毛髪の曲率に関する曲率パラメータを用いている。
ここで、毛髪パラメータとして、特に毛髪の長さや量に着目して毛量パラメータを導入したことにより、毛髪に対する櫛や指の引っ掛かりの程度を好適に評価することが可能となる。これは、上述のように毛髪同士の交絡部の位置から毛髪の先端までの長さや量によって、交絡が櫛通しや指通しによって解消するか、逆にタイトになるかが抜本的に変動するためである。また、毛髪の長さや量が多い、すなわち毛量パラメータが大きい場合でも、曲率パラメータや摩擦パラメータの程度に起因して、交絡が櫛通しや指通しによって簡単に解消するか、または逆にタイトになるかが大きく変動する。したがって、本実施形態のように毛量パラメータとともに摩擦パラメータおよび曲率パラメータに基づいて絡まり度を統計的に評価することにより、毛髪パラメータと絡まり度との高い相関を得ることができる。
毛髪パラメータと絡まり度との良好な相関関係は、後述する実施例によってより明らかとなる。
【0034】
毛量パラメータとは、絡まり度LEへの関与が経験的に予測される、毛髪の長さや量を数値化した情報をいう。本実施形態では、毛量パラメータとして、サンプル提供者Sもしくは被験者EXの肩下毛量もしくは生毛密度、または毛髪HS、HEの脇下長さ、平均長さ、もしくは頭頂から毛先までの長さを、単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
より具体的には、肩下毛量とは、サンプル提供者Sまたは被験者EXが首を前に傾げた時に飛び出す第七頸椎の高さを基準として毛髪HS、HEを束ねたときの円周の長さを測定した値である。当該円周の長さは、毛髪HS、HEの束に凧糸などの紐を巻き付け、かかる紐の長さを測定して求めることができる。
生毛密度は、サンプル提供者Sまたは被験者EXの襟足部分の単位面積に生えている生毛の本数の目視観察によって求めることができる。
毛髪HS、HEの脇下長さは、サンプル提供者Sまたは被験者EXの脇の下の高さから、毛髪全体の目視観察により毛先と判断される高さ位置までの長さをいう。
同じく、頭頂から毛先までの長さは、毛髪全体の目視観察により毛先と判断される位置から、サンプル提供者Sまたは被験者EXの頭頂に至るまでの長さの測定値をいう。
毛髪HS、HEの平均長さとしては、毛髪全体の長さをショート、ミディアム、セミロングまたはロングなどのように複数段階に尺度化した値を用いることができる。
【0035】
ここで、肩下毛量または脇下長さを毛量パラメータに用いることにより、特に好適に絡まり度を評価することが可能である。このように、サンプル提供者Sまたは被験者EXの肩よりも下方に存在して衣服と接触する毛髪量と相関のある毛量パラメータを用いることにより、衣服と毛髪との接触の影響をも考慮した良好な評価精度で絡まり度を決定することができる。なぜならば、肩下毛量または脇下長さが正の値をとり毛髪が衣服と接触する場合に、微細な衣服繊維や埃を核とする巻きつき型の交絡が顕著に発生するためである。
【0036】
摩擦パラメータとは、毛髪の表面摩擦の大きさそのもの、またはそれに準ずる情報を数値化したものをいう。本実施形態では、摩擦パラメータとして、サンプル提供者Sまたは被験者EXから採取した毛髪繊維について、機器測定により動摩擦係数を測定した実測値のほか、毛髪全体の感触評価により得られる"きしみ感"を数値化したものを用いてもよい。
ここで、毛髪の動摩擦係数は、一般に毛髪のダメージの程度との間に高い関連があり、毛髪の化学処理、特にカラーリングによって増大する。したがって、摩擦パラメータには、毛髪の表面摩擦に準ずる値として、毛髪に施されたカラーリングの回数を採用してもよい。
【0037】
曲率パラメータとは、毛髪のウェーブの細かさを示す情報を数値化したものをいう。
具体的には、毛髪の曲率半径の測定値のほか、毛髪全体の目視観察によりウェーブの細かさを段階的に数値化したものや、単位長さの毛髪繊維に存在する変極点の目視観察数を用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、毛髪パラメータとして、毛髪の太さまたは硬さに関する剛性パラメータをさらに含めてもよく、さらには毛髪のダメージ度合いを表す官能評価値をさらに含めてもよい。
特に、サンプル提供者Sや被験者EXが欧米人の場合、一般に日本人の毛髪よりも径が小さくて柔らかい。日本人の毛髪の平均直径が80μm程度であるのに対し、欧米人の毛髪の平均直径は55μm程度であることが知られている。したがって、本実施形態の毛髪評価システム100を欧米人に適用する場合には、剛性パラメータを毛髪パラメータに含めて絡まり度を算出することが好ましい。
【0039】
剛性パラメータとしては、具体的には、毛髪径をマイクロメーター等によって計測した値、毛髪の曲げ剛性を機器により測定した値、毛髪繊維の断面積を計測した値、毛髪全体の感触評価により毛髪の硬さを段階的に数値化した値を用いることができる。
また、毛髪のダメージ度合いを表す官能評価値(ダメージ度パラメータ)としては、単位本数の毛髪HS、HEに含まれる枝毛や切れ毛のカウント数や、毛髪全体の目視評価により毛髪の痛みの度合いを段階的に数値化した値を用いることができる。
【0040】
本実施形態の関係情報IRは、多数のサンプル提供者Sの毛髪HSに関する毛髪パラメータと、毛髪HSの絡まり度LSとの相関関係を統計的に求めた検量情報である。絡まり度LSは、サンプル提供者Sの毛髪HSを美容専門家や研究員が官能的にスコア判定した値である。一人のサンプル提供者Sの絡まり度LSを複数人の美容専門家や研究員が官能評価する場合、その平均スコアをもって当該サンプル提供者Sの絡まり度LSとするとよい。
【0041】
より具体的には、本実施形態の関係情報IRは、絡まり度LSを重回帰分析の目的変数とし、少なくとも毛量パラメータ、摩擦パラメータおよび曲率パラメータを重回帰分析の説明変数とする重回帰式として関係記憶部30に記憶されている。重回帰式を下式(1)に示す。下式におけるa〜eは重回帰係数(偏回帰係数)であり、fは切片である。また、本実施形態において、関係記憶部30が記憶している関係情報IRが重回帰式であるとは、関係記憶部30に重回帰係数a〜eと切片fが記憶されていることをいう。
【0042】
絡まり度LS=a×(摩擦パラメータ)+b×(曲率パラメータ)+c×(毛量パラメータ)+d×(剛性パラメータ)+e×(ダメージ度パラメータ)+f ・・・(1)
【0043】
なお、上記重回帰係数に代えて標準偏回帰係数を用いると、目的変数(本実施形態では、絡まり度LS)に対する各説明変数(本実施形態では、毛量パラメータ、摩擦パラメータ、曲率パラメータ等)の相対的な寄与度が明確となる。標準偏回帰係数は、重回帰係数を正規化してなる−1以上1以下の数値で表され、下式(2)で求めることができる。標準偏回帰係数は、関係記憶部30に記憶されていても良く、あるいは当該記憶部30に記憶されている重回帰係数を用いて下式(2)に従って、必要に応じて処理部20で算出しても良い。なお、下式(2)における各説明変数の標準偏差と目的変数の標準偏差は、関係記憶部30に予め個別に記憶されていても良い。または、各説明変数および目的変数を表すそれぞれ複数個のデータを関係記憶部30に記憶しておき、標準偏回帰係数の演算に際して、各説明変数の標準偏差と目的変数の標準偏差を処理部20で算出しても良い。
【0044】
標準偏回帰係数=重回帰係数×(説明変数の標準偏差/目的変数の標準偏差)・・・(2)
【0045】
サンプル提供者Sの人数は、単数でもよいが、複数人がより好ましい。具体的な人数は特に限定されず、サンプル提供者Sは人数が多いほどよいが、重回帰分析の統計精度の観点から、30人以上とすることが好ましい。また、過剰の人数のサンプル提供者Sより毛髪パラメータと絡まり度LSを取得しても統計精度は頭打ちとなることから、サンプル提供者Sの上限は1000人程度とするとよい。
【0046】
本実施形態のように、関係情報IRとして重回帰式を用いることにより、多数のサンプル提供者Sの毛髪HSから統計的に算出した関係情報IRによって、被験者EXの絡まり度LEを良好な予測精度で評価することができる。
【0047】
関係記憶部30は、毛髪HEに関する毛髪パラメータを適用して絡まり度LEを導出するための関係情報IRを記憶している。
関係記憶部30は、ハードディスク装置などの記憶装置のほか、アナログ回路またはデジタル回路として存在していてもよい。
すなわち、関係情報IRが重回帰式である本実施形態においては、関係記憶部30として記憶装置を用い、重回帰係数および切片をこれに格納している。
【0048】
また、関係情報IRとしては、毛髪パラメータを表す数値と絡まり度LSの官能評価値とをテーブル形式で対応づけたデータセットを用いてもよい。この場合も、関係記憶部30としては記憶装置を用いることができる。
また、関係情報IRを上記の重回帰式とする場合、関係記憶部30は、同式を表す専用のアナログ回路またはデジタル回路としてもよい。
【0049】
ここで、関係記憶部30が関係情報IRを記憶するとは、関係記憶部30が関係情報IRを現に記憶している状態に加えて、関係情報IRを記憶する機能を有することも意味している。このため、関係記憶部30は、関係情報IRが新規に登録されることのほか、関係記憶部30の製造時に登録された関係情報IRを保持して出荷後には新規の関係情報IRが登録されないことも許容する。
一方、関係記憶部30が関係情報IRを記憶しているとは、本実施形態の毛髪評価システム100が、少なくとも被験者EXにより使用されるときに、関係情報IRを記憶している状態となる機能を有することを意味している。このため、関係記憶部30がサプライヤから出荷される時点で関係情報IRが登録されていることのほか、出荷されるときには登録されていない関係情報IRが、被験者EXに使用されるまでに登録されることも許容する。
【0050】
毛髪情報受付部40は、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪情報IHを操作端末より受け付ける。
毛髪情報IHとしては、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪パラメータとして、毛量パラメータ、摩擦パラメータおよび曲率パラメータ、または任意で剛性パラメータを受け付けてもよい。
ここで、毛髪情報受付部40が被験者EXから毛髪パラメータを受け付ける場合において、当該毛髪パラメータは、関係情報IRにてサンプル提供者Sの絡まり度LSと対応づけられた毛髪パラメータと同一であってもよく、または互いに換算可能な他の指標値でもよい。
たとえば、毛量パラメータとしてサンプル提供者Sの肩下毛量を採用して、摩擦パラメータおよび曲率パラメータとともに重回帰分析の説明変数とした場合、被験者EXから取得する毛量パラメータとして、毛髪HEの脇下長さを用いてもよい。
【0051】
パラメータ取得部50は、毛髪情報受付部40が受け付けた毛髪情報IHを任意で演算して毛髪パラメータを求める。
より具体的には、パラメータ取得部50は、複数の毛髪情報IHを演算して毛髪パラメータを算出してもよく、一つの毛髪情報IHを毛髪パラメータに変換してもよく、または毛髪情報IHをそのまま毛髪パラメータとしてもよい。
【0052】
本実施形態のパラメータ取得部50は、毛髪情報受付部40が被験者EXから受け付けた毛髪情報IH(脇下長さ)を、関係情報IRの説明変数(肩下毛量)に換算する。
【0053】
毛髪情報IHに基づいて毛髪パラメータを求めるパラメータ取得部50の具体的なデータ処理は特に限定されない。たとえば、毛髪情報IH(脇下長さ)と、関係情報IRの説明変数(肩下毛量)とを、それぞれ複数段階(たとえば5段階)にスコア化して毛髪情報IHから説明変数に換算してもよい。または、毛髪情報IH(脇下長さ)と関係情報IRの説明変数(肩下毛量)との対応関係をテーブル形式で関係記憶部30に記憶しておき、パラメータ取得部50は、毛髪情報受付部40が受け付けた毛髪情報IHに対応する説明変数の値を、当該テーブルを参照して決定してもよい。
【0054】
なお、毛髪情報受付部40が受け付ける毛髪情報IHが、関係情報IRの説明変数の毛髪パラメータと同一である場合、パラメータ取得部50は、毛髪情報受付部40から毛髪情報IHをそのまま受け取ればよい。すなわち、パラメータ取得部50が毛髪情報IHに基づいて毛髪HEの毛髪パラメータを求めるとは、毛髪情報IHに対して何らかの換算処理をする場合に限られず、毛髪情報受付部40が受信した毛髪情報IHをそのまま取得する場合を含む。
【0055】
絡まり度算出部60は、パラメータ取得部50が求めた毛髪パラメータと、関係記憶部30に記憶された関係情報IRとに基づいて、被験者EXの毛髪HEに関する絡まり度LEを決定する。
本実施形態では、上式(1)に示す重回帰式が関係情報IRとして関係記憶部30に記憶されている。
絡まり度算出部60は、パラメータ取得部50で求めた毛髪パラメータに対応する重回帰係数a〜eを関係記憶部30から呼び出して当該毛髪パラメータと積和演算を行い、上式(1)に従って絡まり度LEを算出する。
【0056】
図2に示す評価出力部92(送受信部42およびCPU22)は、絡まり度算出部60で求めた絡まり度LEを携帯電話機132またはパソコン端末140に送信する(図1を参照)。
これにより、携帯電話機132またはパソコン端末140に毛髪情報IHを入力した被験者EXは、評価出力部92から受信した自身の毛髪HEの絡まり度LEを知得することができる。
【0057】
本実施形態の毛髪評価システム100において、絡まり度算出部60は、標準偏回帰係数の大きさに基づいて毛髪HEの髪質を複数のタイプに分類する。ここで、各毛髪パラメータ(摩擦パラメータ、曲率パラメータ、毛量パラメータ、剛性パラメータ、ダメージ度パラメータ)に係る標準偏回帰係数の大きさによって毛髪HEを分類するとよい。それは、標準偏回帰係数の大きさに従って、当該標準偏回帰係数に対応する毛髪パラメータが、絡まり度LEに対する支配的な因子として順序付けられるからである。
具体的には、標準偏回帰係数の大きさが第一位または第二位の毛髪パラメータによって毛髪HEの髪質のタイプを第一段階に分類(大分類)し、つづけて、第三位以下の毛髪パラメータによって第二段階に分類(小分類)するとよい。
【0058】
このほか、標準偏回帰係数の大きさが第一位または第二位の毛髪パラメータによるタイプ分類に先だって、被験者EXの属性(人種、性別または年齢層など)に基づいて複数のタイプに分類してもよい。
すなわち、本実施形態の毛髪評価システム100においては、被験者EXの属性に基づいて毛髪HEを複数のタイプに分類した上で、さらに各分類に属する毛髪HEを毛髪パラメータに基づいて複数のタイプに分類してもよい。
【0059】
本実施形態の毛髪評価装置120は、コンテンツ記憶部32およびメッセージ出力部94を備えている。コンテンツ記憶部32には、分類された毛髪HEの髪質や、当該分類に属する毛髪HEに好ましいヘアケア行動の指針や適切な毛髪処理剤を示すメッセージ情報が、各タイプと対応づけて記憶されている。
処理部20は、絡まり度算出部60が分類した毛髪HEのタイプに対応するメッセージ情報をコンテンツ記憶部32より呼び出してメッセージ出力部94(送受信部42)に送る。メッセージ出力部94は、かかるメッセージ情報を携帯電話機132またはパソコン端末140に送信する(図1を参照)。
これにより、被験者EXは、自身の毛髪HEの絡まり度LEのみならず、毛髪の絡まりを低減するためのヘアケア行動や毛髪処理剤を知ることができる。
なお、本実施形態の毛髪評価システム100においては、評価出力部92としてプリンター装置を用いてもよい。すなわち、評価出力部92(プリンター装置)では、毛髪HEの絡まり度LEおよびタイプや、被験者EXに好ましいヘアケア行動や毛髪処理剤を示すテキストまたは画像データなどのアウトプット情報を、紙等の印刷媒体に印刷して出力してもよい。
【0060】
図1に示す携帯電話機132はカメラ機能を搭載しており、被験者EXの毛髪HEを被写体としての撮影が可能である。そして、携帯電話機132で撮影した毛髪画像は、携帯電話基地局130およびネットワーク110を通じて毛髪評価装置120の送受信部42に送信される。
また、デジタルカメラ142で撮影した毛髪HEの毛髪画像を、メモリー記憶装置144を介してパソコン端末140に入力してもよい。そして、パソコン端末140よりネットワーク110を通じて毛髪評価装置120の送受信部42に対して毛髪画像を送信してもよい。
本実施形態の毛髪評価システム100においては、携帯電話機132のカメラ機能、ならびにデジタルカメラ142およびメモリー記憶装置144が、撮影部84(図2を参照)として機能する。
【0061】
本実施形態の毛髪情報受付部40は、被験者EXの毛髪画像を撮影部84より毛髪情報IHとして受け付けることができる。そして、パラメータ取得部50は、受け付けた毛髪画像を画像処理して、毛量パラメータ、摩擦パラメータまたは曲率パラメータの少なくとも一つを算出する。
【0062】
具体的には、被験者EXの頭部に生えている毛髪HE、または被験者EXの頭部から抜き取った毛髪HEのデジタル画像データ(毛髪画像)を、毛髪情報受付部40は携帯電話機132から受信する。
一方、毛髪評価装置120は、関係記憶部30等の記憶装置内に、毛髪HEの曲率パラメータを求めるためのスタンダードデータが蓄積されている。
図3は、曲率パラメータを求めるためのスタンダードデータの一例を示す画像である。
スタンダードデータは、毛髪のウェーブの細かさの異なる複数の毛髪のパターン画像である。
パラメータ取得部50は、毛髪情報受付部40から転送された毛髪画像をスタンダードデータとパターンマッチングし、毛髪HEの曲率にもっとも近似しているパターン画像を検出することにより曲率パラメータを求める。
【0063】
このように、毛髪情報IHとして毛髪画像を用いることにより、曲率パラメータなど美容の素人である被験者EX自身では定量化が困難な毛髪パラメータを、被験者EXの主観を排除して正確に取得することができる。これにより、本実施形態の毛髪評価システム100では、被験者EXの絡まり度LEを客観的に定量化することが可能である。
【0064】
(毛髪評価方法)
以下、本実施形態の毛髪評価システム100を用いて行う毛髪評価方法(以下、本方法という場合がある)を説明する。
図4は、本方法のフローチャートである。
【0065】
まず、本方法の概要を説明する。
本方法は、サンプル提供者Sの毛髪HSより予め求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す複数種類の毛髪パラメータと絡まり度LSとの対応関係を表す関係情報IRを記憶している記憶部(関係記憶部30)を備えるコンピュータ装置(毛髪評価装置120)を用いておこなうものである。
本方法は、毛髪パラメータ取得ステップS20と、絡まり度決定ステップS30とを含む。
毛髪パラメータ取得ステップS20では、被験者EXの毛髪HEに関する毛髪情報IHに基づいて毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータを求める。
絡まり度決定ステップS30では、関係情報IRを参照して、被験者EXの毛髪HEに関する複数種類の毛髪パラメータに対応する絡まり度LEを決定する。
【0066】
つぎに、図1、2、4を用いて、本方法をより詳細に説明する。
本方法では、まず、サンプル提供者Sの毛髪HSに基づいて関係情報IRを取得する(関係情報取得ステップS10)。
【0067】
関係情報取得ステップS10では、30〜1000人程度の多数のサンプル提供者Sの毛髪HSより、櫛通りまたは指通りの荷重と、毛髪HSの交絡部に対する櫛または指の引っ掛かりの頻度および強さとから総合的に求まる官能評価値として、絡まり度LSを取得する。かかる官能評価は、美容専門家または官能評価の訓練を受けた美容研究員によって行う。
【0068】
また、関係情報取得ステップS10では、毛髪HSより、少なくとも毛量パラメータ、摩擦パラメータおよび曲率パラメータ、好ましくはさらに剛性パラメータとダメージ度パラメータを、毛髪パラメータとして取得する。
さらに、このステップでは、各毛髪パラメータを説明変数とし、絡まり度LSを目的変数として重回帰分析をおこなう。
そして、このステップでは、重回帰分析により得られた重回帰式を、関係情報IRとして関係記憶部30に記憶する。
【0069】
つぎに、本方法では、被験者EXの毛髪HEを対象として、毛髪パラメータ取得ステップS20および絡まり度決定ステップS30を行う。
【0070】
毛髪パラメータ取得ステップS20では、まず、毛髪情報受付部40にて、被験者EXから毛髪情報IHを受け付ける。
つぎに、このステップでは、関係情報IRの説明変数と毛髪情報IHとが相違する場合、パラメータ取得部50にて、必要に応じて毛髪情報IHを関係情報IRの説明変数に換算する。
【0071】
毛髪パラメータ取得ステップS20では、被験者EXの毛髪HEの画像を毛髪情報IHとして受け付けてもよい。この場合、毛髪パラメータ取得ステップS20は、被験者EXの毛髪画像を毛髪情報IHとして受け付けるステップと、受け付けた毛髪画像を画像処理して、毛量パラメータ、摩擦パラメータまたは曲率パラメータの少なくとも一つを算出するステップと、を含む。
【0072】
絡まり度決定ステップS30では、処理部20(CPU22)は、毛髪パラメータ(毛量パラメータ、摩擦パラメータおよび曲率パラメータ、任意で剛性パラメータおよびダメージ度パラメータ)を、上記(1)で示される関係情報IRに適用する。これにより、被験者EXの毛髪HEに関する絡まり度LEが算出される。
また、このステップでは、絡まり度LEの重回帰式の標準偏回帰係数の大きさに基づいて毛髪HEの髪質を複数のタイプに分類する。
【0073】
本方法では、つぎに、算出された絡まり度LEを示す出力情報を被験者EXに対して送信する評価出力ステップS40を行う。このステップは、図2に示す評価出力部92(送受信部42およびCPU22:図1を参照)によって行う。
出力情報としては、絡まり度LEを表す数値そのものでもよく、絡まり度LEを多段階に分類したスコアや文字テキスト(たとえば、"高"、"中"、"低"など)でもよい。
【0074】
本方法では、さらに、毛髪HEの髪質のタイプを表す髪質情報と、絡まり度LEの大小に基づいて、好ましいヘアケア行動の指針や適切な毛髪処理剤を示すメッセージ情報を、コンテンツ記憶部32(図2を参照)より呼び出す(メッセージ呼出ステップS50)。
呼び出されたメッセージ情報は、髪質情報とともに、メッセージ出力部94より被験者EXの操作端末に送信出力される(メッセージ出力ステップS60)。
なお、評価出力ステップS40とメッセージ出力ステップS60とは同時に行なってもよく、互いに前後して行なってもよい。
【0075】
本実施形態は種々の変形を許容する。
たとえば、上記実施形態では、すべてのサンプル提供者Sから取得した毛髪パラメータと絡まり度LSとの関係に基づいて関係情報IRを取得しているが、本発明はこれに限られない。サンプル提供者Sは、任意のカテゴリによって複数に分類し、カテゴリごとに関係情報IRを求めてもよい。カテゴリとしては、人種(アジア人、欧米人、アフリカ人など)、性別、年代を例示することができる。すなわち、たとえば20歳代の日本人女性、30歳代の欧米人女性、などとカテゴリ分類して、サンプル提供者Sの毛髪HSより毛髪パラメータと絡まり度LSを取得するとよい。
なお、サンプル提供者Sの人数は、各カテゴリについて30人以上とすることが好ましい。
【0076】
そして、毛髪パラメータ取得ステップS20では、被験者EXの毛髪情報IHとともに、被験者EXの属性を取得して、被験者EXが属するカテゴリを判定する。そして、絡まり度決定ステップS30では、被験者EXが属するカテゴリに関する関係情報IRを関係記憶部30より呼び出して、毛髪情報IHに基づいて絡まり度LEを算出するとよい。
【0077】
また、本実施形態では、関係情報IRが上式(1)で表される重回帰式(重回帰係数)として関係記憶部30に記憶されている場合を例示したが、本発明はこれに限られない。
関係記憶部30に記憶されている関係情報IRが、毛髪パラメータおよび絡まり度LSのデータセットを格納したテーブルデータである場合、絡まり度算出部60(図2を参照)は、当該テーブルデータを参照して被験者EXの絡まり度LEを算出する。
具体的には、被験者EXの毛髪情報IHに基づいて取得された毛髪パラメータ(摩擦パラメータ、曲率パラメータおよび毛量パラメータ、ならびに任意で剛性パラメータおよびダメージ度パラメータ)にもっとも近似するサンプル提供者Sを検索して、当該サンプル提供者Sの絡まり度LSをもって、被験者EXの絡まり度LEとしてもよい。
または、被験者EXの毛髪パラメータに傾向がもっとも近似する2人または3人以上のサンプル提供者Sを抽出し、当該複数人のサンプル提供者Sの絡まり度LSを、毛髪パラメータの近似度に応じて加重平均して、被験者EXの絡まり度LEを算出してもよい。
【0078】
また、本実施形態では、絡まり度算出部60で決定された絡まり度LEを、評価出力部92より被験者EXの操作端末に送信しているが、本発明はこれに限られない。すなわち、本実施形態に代えて、被験者EXが自らの毛髪HEの絡まり度LEを主観的に判断した官能評価値を、毛髪情報IHとともに毛髪情報受付部40で取得してもよい。そして、毛髪情報IHに基づいてパラメータ取得部50で取得した毛髪パラメータと、毛髪情報受付部40で受信した絡まり度LEの官能評価値とを対応づけて関係記憶部30に蓄積する。これにより、美容専門家や美容研究員の官能評価に基づいて算出された絡まり度LSの重回帰式による決定値と、被験者EXの主観的な官能評価値との乖離度を示す補正情報が取得される。そして、補正情報を用いて関係情報IR(重回帰式)を修正することで、以後の被験者EXに対する絡まり度LEの評価値が、被験者EXにとってより受け入れやすい妥当な値となる。
【0079】
<第二実施形態>
図5は、本実施形態の毛髪評価方法のフローチャートである。
本方法は、毛髪パラメータ取得ステップS20において、選択肢提示ステップS22および毛髪情報受付ステップS24を繰り返して行う点で第一実施形態と相違している。
選択肢提示ステップS22では、被験者EXの毛髪HEの毛髪パラメータに対応づけられた設問および複数の選択肢を被験者EXに提示する。
毛髪情報受付ステップS24では、被験者EXに選択された選択肢を毛髪情報IHとして受け付ける。
そして、毛髪情報受付ステップS24ではさらに、受け付けた毛髪情報IHを、毛量パラメータ、摩擦パラメータまたは曲率パラメータの少なくとも一つに換算する。
【0080】
図2に示す本実施形態の毛髪評価システム100は、毛髪HEの毛髪パラメータに対応づけられた設問および複数の選択肢を表示する表示部(選択肢表示部70)をさらに備えている。
受付部(毛髪情報受付部40)は、選択された選択肢を毛髪情報IHとして受け付ける。そして、パラメータ取得部50は、受け付けた毛髪情報IHを毛量パラメータ、摩擦パラメータまたは曲率パラメータの少なくとも一つに換算する。
【0081】
選択肢表示部70は、図1に示す携帯電話機132またはパソコン端末140のディスプレイ表示部150にあたる。
【0082】
本方法の選択肢提示ステップ(図5:ステップS22)では、処理部20は、コンテンツ記憶部32に格納された選択肢情報を、予め定められた順にディスプレイ表示部150に表示させる。
【0083】
本実施形態において、毛髪パラメータに対応づけられた設問および選択肢とは、毛髪パラメータ(摩擦パラメータ、曲率パラメータ、毛量パラメータ、剛性パラメータおよびダメージ度パラメータ)を定量化するための問診メッセージ情報である。各設問にあたる問診メッセージ情報は、毛髪パラメータのいずれか一以上と予め対応づけられてコンテンツ記憶部32に記憶されている。
【0084】
各設問に対する選択肢の数は特に限定されず、YESまたはNOで回答可能な2つの選択肢でもよく、または任意の毛髪パラメータに関する3段階以上の多段階評価を問い合わせるものでもよい。このほか、被験者EXの毛髪HEの傾向に合致する選択肢を複数回答させる多肢選択式の設問でもよい。
【0085】
被験者EXは、選択肢表示部70で表示された設問と選択肢を目視して、図2に示す操作部82より選択肢を入力する。操作部82は、たとえば携帯電話機132またはパソコン端末140(図1を参照)のキー入力部や補助入力デバイスである。
【0086】
本方法で被験者EXに提示する問診メッセージ情報の一例を以下に示す。下記の設問に対する選択肢は、いずれもYESまたはNOの2つである。なお、前述のように、毛髪の動摩擦係数は、一般に毛髪のダメージの程度と高い関連があり、毛髪の化学処理、特にカラーリングによって増大する。したがって、摩擦パラメータに関する下記設問に、毛髪に施されたカラーリングやパーマの回数を採用した。
【0087】
(a)摩擦パラメータに関する設問:
(i)カラーやパーマ、縮毛矯正を合わせて年6回以上している。
(ii)カラーやパーマ、縮毛矯正を合わせて年3〜5回している。
(b)毛量パラメータに関する設問:
(i)髪が脇の下よりも長い。
(c)曲率パラメータに関する設問:
(i)今現在、ウェーブパーマをかけている。
(ii)髪がくせ毛である。
(d)剛性パラメータに関する設問:
(i)髪が細い。
(ii)髪が柔らかい。
(e)ダメージ度パラメータに関する設問:
(i)切れ毛が多い。
【0088】
さらに、本方法では、より適切なヘアケアのアドバイスを提供する為に、毛髪の表面摩擦の増大を間接的に促すヘアケア行動(以下、行動パターンという)の有無を問診メッセージ情報として設けている。
行動パターンに関する設問としては、(i)髪が濡れたまま寝る、(ii)髪を無理に梳かす、などが例示される。
本方法では、絡まり度決定ステップS30にて、現時点における毛髪HEの絡まり度LEが低いと判断された被験者EXに対して、被験者EXから回答された行動パターンに基づいて、絡まり度LEが重症化する可能性の有無を出力する。
【0089】
図5に示す関係情報取得ステップS10は第一実施形態と共通である。
選択肢提示ステップS22では、処理部20は、コンテンツ記憶部32から問診メッセージ情報を呼び出し、これを選択肢表示部70に対して所定の順番で、または同時に送信する。
【0090】
毛髪情報受付ステップS24で毛髪情報受付部40が選択肢(YESまたはNO)の入力を毛髪情報IHとして受け付けると、パラメータ取得部50は、当該選択肢に予め対応づけられた毛髪パラメータに対して、毛髪情報IHがYESの場合とNOの場合とで、所定のスコアを加算する。
一つの毛髪パラメータに対して複数の設問がある場合は、パラメータ取得部50は、当該複数の設問に対してそれぞれ回答された毛髪情報IHの内容に応じて、毛髪パラメータのスコアを計算する。
【0091】
処理部20は、毛髪情報受付ステップS24で毛髪情報IHを受け付けるごとに、コンテンツ記憶部32に記憶されたロジックツリーに従って、次に選択肢表示部70に送信する設問(問診メッセージ情報)を決定する(ステップS26)。被験者EXより受け付けた毛髪情報IHの内容に応じて適切な設問がコンテンツ記憶部32より選択され、次設問がある場合(ステップS28:Y)、新たな設問が選択肢表示部70に提示される(ステップS22)。
具体的なロジックツリーに関しては、後述の実施例(実施例3)にて詳述する。
【0092】
最後の設問が提示済みの場合(ステップS28:N)、本方法は絡まり度決定ステップS30に移行する。
【0093】
絡まり度決定ステップS30では、第一実施形態と同様に被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEを決定する。
また、このステップでは、毛髪情報IHに基づいてパラメータ取得部50で求められた毛髪パラメータに基づいて、被験者EXの髪質を複数のタイプに分類する。そして、本方法では、分類されたタイプを示す髪質情報と、被験者EXの毛髪HEに関して決定された絡まり度LEと、を出力する(評価出力ステップS40、メッセージ出力ステップS60)。
【0094】
具体的には、評価出力ステップS40では、算出された絡まり度LEを示す出力情報を被験者EXに対して送信する。また、メッセージ呼出ステップS50にて、処理部20は、髪質情報と絡まり度LEとに基づいて、当該毛髪HEに好ましいヘアケア行動の指針や適切な毛髪処理剤を示すメッセージ情報をメッセージ出力部94より呼び出す。そして、メッセージ出力ステップS60にて、処理部20は、メッセージ出力部94より、被験者EXの操作端末にメッセージ情報を送信する(図2を参照)。
なお、評価出力ステップS40とメッセージ出力ステップS60とは同時に行なってもよく、互いに前後して行なってもよい。
【0095】
上記実施形態は種々の変形を許容する。
図5に示す本方法のフローチャートでは、所定数の設問に対する毛髪情報IHを順次受け取って次設問が無くなってから(ステップS26:N)、絡まり度決定ステップS30に移行しているが、本発明はこれに限られない。
処理部20は、選択肢表示部70に対して所定数の設問と選択肢を一括して送信し、また毛髪情報受付部40は、操作部82で入力された選択肢を一括して受け付けてもよい(図2を参照)。この場合、図5のステップS28における分岐処理は不要となる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
本実施例では、図4に示したフローチャートのステップS10〜S30に従い、サンプル提供者Sより予め取得した関係情報IRに基づいて被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEを決定(予測値)するとともに、被験者EXの当該絡まり度LEを官能評価した結果(実測値)と対比した。
【0097】
(ステップS10)関係情報取得ステップ
18〜39歳の日本人女性(サンプル数N=35名)を無作為抽出してサンプル提供者Sとした。各サンプル提供者Sは、洗髪後、タオルドライを行い、サンプル提供者Sが普段行っている方法通りに毛髪を乾燥させ、いずれの剤も塗布せずブラッシングもしない状態の毛髪HSに対して以下の計測を行った。
【0098】
まず、サンプル提供者Sの毛髪HS全体の絡まり度LSと"きしみ感"を、ヘアケア商品開発に従事し、官能評価の訓練を受けた美容研究員2名が評価者となって5段階に官能評価した。さらに、毛髪HSの曲率を、図3のスタンダードシートに基づいて目視で5段階評価した。
また、サンプル提供者Sの第七頸椎の高さを基準として毛髪HSを束ねたときの円周の長さを測定して肩下毛量[cm]とした。
【0099】
毛髪HS全体の絡まり度LSの判定基準としては、以下の5段階を用いた。段階の数値が大きいほど、毛髪同士の絡まりが強いことを意味している。
1 絡まらない
2 あまり絡まらない
3 やや絡まる
4 絡まる
5 とても絡まる
【0100】
毛髪HS全体の"きしみ感"の判定基準としては、以下の5段階を用いた。段階の数値が大きいほど、毛髪の表面摩擦が大きく、摩擦パラメータが大きいことを意味している。
1 きしまない
2 あまりきしまない
3 ややきしむ
4 きしむ
5 とてもきしむ
【0101】
このようにして得られたサンプル提供者Sの毛髪HS全体の絡まり度LSと各毛髪パラメータとの関係をそれぞれ回帰分析し、次の重回帰式(3)を求めた。
【0102】
絡まり度LS=0.568×(摩擦パラメータ:きしみ感)+0.280×(曲率パラメータ:目視曲率)+0.171×(毛量パラメータ:肩下毛量)+(−0.2343) ・・・(3)
【0103】
ここで、上記の式(2)により求まる標準偏回帰係数は下記のとおりであった。
毛量パラメータ(肩下毛量):0.311
曲率パラメータ(目視曲率):0.319
摩擦パラメータ(きしみ感):0.633
【0104】
なお、重回帰式(3)において、肩下毛量は単位[cm]の有次元量であり、きしみ感と目視曲率は無次元の官能評価値である。
【0105】
図6は、サンプル提供者Sの毛髪HSの絡まり度LSの官能評価値(横軸、実測値)と予測値(縦軸)との関係図である。同図には、重回帰式(3)もあわせて図示している。
同図より、絡まり度LSの官能評価値と予測値とは正の相関があることが理解される。
また、絡まり度LSの官能評価値(実測値)と予測値との相関係数(R)は0.91であり、両者がきわめて高い相関を有することが分かった。
【0106】
(ステップS20)毛髪パラメータ取得ステップ
18〜39歳の5名の日本人女性を被験者EXとし、サンプル提供者Sと同様に、美容研究員の官能評価によって絡まり度LEを求めた。また、この5名の被験者EXの毛髪HEについて、表面摩擦に関する摩擦パラメータ(きしみ感)、毛量に関する毛量パラメータ(肩下毛量)、および曲率に関する曲率パラメータ(目視曲率)を、サンプル提供者Sと同様に求めた。
【0107】
5名の被験者EX(パネル名:A〜E)より取得した肩下毛量[cm]、曲率および"きしみ感"を下表1にまとめる。
【0108】
【表1】

【0109】
(ステップS30)絡まり度決定ステップ
被験者EXの毛髪HEについて求めた毛髪パラメータと、重回帰式(3)とに基づいて、被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEを算出した。
絡まり度LEの算出値(予測値)と官能評価値(実測値)との比較を下表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
図7(a)は、本実施例にかかる、被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEの官能評価値(横軸)と予測値(縦軸)との関係図である。
絡まり度LEの官能評価値と予測値との相関係数(R)は0.71であり、両者が高い相関を有することが分かった。
【0112】
<実施例2>
図7(b)は、毛髪パラメータとして、摩擦パラメータ(きしみ感)、曲率パラメータ(目視曲率)、毛量パラメータ(肩下毛量)に加えて、さらに剛性パラメータ(毛髪の硬さ)とダメージ度パラメータ(切れ毛の量)を追加した場合の、被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEの官能評価値(横軸、実測値)と予測値(縦軸)との関係図である。
すなわち、本実施例では、実施例1と共通のサンプル提供者Sから毛髪パラメータとして上記5つの情報を取得して上式(1)の重回帰式を算出し、被験者EXの毛髪パラメータを同式に代入して絡まり度LEの予測値を算出したものである。
【0113】
剛性パラメータ(毛髪の硬さ)としては、美容研究員がサンプル提供者Sおよび被験者EXの毛髪HS、HEを全体に感触評価して5段階に数値化した、毛髪の硬さを用いた。
また、ダメージ度パラメータ(切れ毛の量)としては、美容観察員が毛髪HS、HEを全体に目視観察して、毛髪HS、HEに対する切れ毛の量を5段階に数値化した官能評価値を用いた。
【0114】
図7(b)に示す絡まり度LEの官能評価値と予測値との相関係数(R)は0.75であり、同図(a)の結果よりも高い相関を有することが分かった。すなわち、被験者EXの絡まり度LEの評価にあたり、摩擦パラメータ、曲率パラメータおよび毛量パラメータに加えて、剛性パラメータとダメージ度パラメータを追加することにより、さらに予測精度が高められることが分かった。
【0115】
<比較例1>
図8(a)は、比較例1にかかる、被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEの官能評価値(横軸、実測値)と予測値(縦軸)との関係図である。
図8(a)は、毛髪パラメータとして摩擦パラメータ(きしみ感)、および曲率パラメータ(目視曲率)のみを用い、毛量パラメータ(肩下毛量)を用いなかった場合(比較例1)の、被験者EXの毛髪HEの絡まり度LEの官能評価値(横軸、実測値)と予測値(縦軸)との関係図である。
【0116】
比較例1では、絡まり度LEの官能評価値と予測値との間に一応の相関はあるものの、相関係数(R)は0.7未満(0.67)であって、図7(a)に示す本実施例に比較して両者の相関が低くなることが分かった。すなわち、毛量パラメータ(肩下毛量)を用いずに被験者EXの絡まり度LEを算出した場合、本実施例ほどの精度で絡まり度LEを予測評価することができないことが分かった。
【0117】
<比較例2>
図8(b)は、比較例2にかかる、5名の被験者EXの絡まり度LEの官能評価値(横軸)と、毛髪HEに対する櫛通り荷重(コーミングフォース[g]:縦軸)との関係図である。
同図に示すように、絡まり度LEとコーミングフォースとは、ほとんど相関がなく、相関係数(R)は0.02であった。
したがって、非特許文献1、2のようにコーミングフォースを定量化したとしても、本実施例のように毛髪の絡まりの強さを示す絡まり度を予測することはできないことが分かった。
【0118】
<実施例3>
図9は、実施例3にかかる毛髪診断のロジックツリーの一例を示す図である。
本実施例は、第二実施形態の毛髪評価システム100を用いて、以下の設問を被験者EXに提示して毛髪情報IHを取得するものである。
【0119】
(設問)
Q1:髪が脇の下よりも長い。
Q2:髪が細い。
Q3:髪が柔らかい。
Q4:髪がくせ毛。
Q5:切れ毛が多い。
Q6:カラーやパーマ、縮毛矯正を合わせて年6回以上している。
Q7:カラーやパーマ、縮毛矯正を合わせて年3〜5回している。
Q8:今ウェーブパーマをかけている。
Q9:髪が絡まったら無理にとかす。
Q10:濡れたまま寝る。
【0120】
なお、Q1は毛量パラメータに関する設問であり、Q4とQ8は曲率パラメータに関する設問であり、Q6とQ7は摩擦パラメータに関する設問である。
また、Q2とQ3は剛性パラメータに関する設問であり、Q5はダメージ度パラメータに関する設問である。
そして、Q9とQ10は行動パターンに関する設問である。
Q1〜Q10に対する選択肢は、いずれもYESまたはNOの二択である。
【0121】
本実施例では、図9に示すように、処理部20(図2を参照)は、曲率パラメータに関するQ8を選択肢表示部70に表示出力して、被験者EXよりYESまたはNOを示す毛髪情報IHを受け付ける。
Q8への回答がYESの場合(実線矢印)、処理部20は、続けて、摩擦パラメータに関するQ6の設問を選択肢表示部70に表示出力する。
【0122】
本実施例では、毛髪情報IHに基づいてパラメータ取得部50(図2を参照)で求められた摩擦パラメータまたは曲率パラメータの少なくとも一方に基づいて、被験者EXの髪質を複数のタイプに分類する。そして、本実施例では、分類されたタイプを示す髪質情報と、被験者EXの毛髪HEに関して決定された絡まり度LEと、を出力する。
【0123】
具体的には、Q8への回答がYESであった場合、処理部20は、被験者EXの髪質をウェーブ型(WV)に分類する。かかる分類は、毛髪HEのウェーブに起因して絡まりが生じていることを示すものである。
そして、Q6の回答がYESであった場合、処理部20は、続けて毛量パラメータに関するQ1の設問を被験者EXに提示する。
そして、Q1への回答がYESの場合、処理部20は、被験者EXの絡まり度LEをレベル3と決定する。
そして、評価出力部92(図2を参照)は、被験者EXの毛髪HEがウェーブ型であることを示す髪質情報(WV)と、絡まり度LEがレベル3であることを表す出力情報(WV3)を、被験者EXの操作端末に送信する。
【0124】
同様に、曲率パラメータに関するQ8の設問にYES、摩擦パラメータに関するQ6の設問にNOと被験者EXが回答した場合、処理部20は、さらに摩擦パラメータに関するQ7を被験者EXに提示することで、毛髪HEの表面摩擦の程度を3段階にスコア化して取得する。
そして、処理部20は、ロジックツリーに従ってQ1、Q5、Q9の設問を選択肢表示部70に出力する。そして、処理部20は被験者EXから順次回答を受け付け、被験者EXの絡まり度LEをレベル1から3より決定する。決定された髪質情報と絡まり度LEは被験者EXの操作端末に送信される。
【0125】
一方、曲率パラメータに関するQ8への回答がNOの場合(破線矢印)も、処理部20は、続けて摩擦パラメータに関するQ6の設問を選択肢表示部70に表示出力する。
そして、Q8の設問にNO、Q6の設問にYESと被験者EXが回答した場合、処理部20は、被験者EXの髪質をダメージ型(DM)に分類する。かかる分類は、毛髪HEの損傷に起因して絡まりが生じていることを示すものである。
そして、処理部20は、ロジックツリーに従ってQ1、Q5、Q9の設問を選択肢表示部70に出力する。そして、処理部20は被験者EXから順次回答を受け付け、被験者EXの絡まり度LEをレベル2または3と決定する。そして、評価出力部92は、被験者EXの毛髪HEがダメージ型であることを示す髪質情報(DM)と、絡まり度LEがレベル2または3であることを表す出力情報(DM2またはDM3)を、被験者EXの操作端末に送信する。
【0126】
また、Q8の設問にNO、Q6の設問にNOと被験者EXが回答した場合、処理部20は、毛量パラメータに関するQ1の設問を選択肢表示部70に出力して被験者EXより回答を受け付ける。これは、毛髪が長い場合に、特に毛先にダメージが生じやすいという知見に基づくものである。
【0127】
そして、Q1への回答がYESの場合、処理部20は、被験者EXの髪質をダメージ型(DM)に分類する。そして、処理部20は、ロジックツリーに従ってQ7、Q4、Q5、Q9の設問を選択肢表示部70に出力する。そして、処理部20は被験者EXから順次回答を受け付け、被験者EXの絡まり度LEをレベル1から3のいずれかに決定する。
【0128】
ここで、処理部20は、Q4、Q5、Q9の設問に対するYESの個数に従って条件分類(一点鎖線矢印)することで絡まり度LEを決定する。
そして、評価出力部92は、被験者EXの毛髪HEがダメージ型のレベル1から3のいずれかであること(DM1〜DM3)を表す出力情報を、被験者EXの操作端末に送信する。
【0129】
このように、Q8とQ6の設問に対する被験者EXの回答によらず、本実施例では、曲率パラメータと摩擦パラメータに続けて、毛量パラメータを選択肢表示部70に出力する。
これは、実施例1にてサンプル提供者Sより取得した上記の重回帰式(3)および算出された標準偏回帰係数において、摩擦パラメータおよび曲率パラメータに関する標準偏回帰係数が、毛量パラメータに関する標準偏回帰係数よりも大きな値となったことに基づく。すなわち、本実施例のロジックツリーは、実施例1の重回帰式(3)に基づいて作成されたものであり、重回帰式(3)の標準偏回帰係数の大きさが第一位または第二位であった摩擦パラメータおよび曲率パラメータに関する設問を上位に配置し、標準偏回帰係数の大きさが第三位であった毛量パラメータに関する設問を下位に配置している。
【0130】
さらに、本発明者の知見によれば、実施例1、2および比較例1の対比により、剛性パラメータとダメージ度パラメータが絡まり度LSに及ぼす影響は、摩擦パラメータ、曲率パラメータおよび毛量パラメータよりも小さいことが明らかとなっている。
かかる知見に基づき、本実施例においては、Q8、Q6、Q1の設問に対していずれもNOと被験者EXが回答した場合に、処理部20は剛性パラメータに関するQ2またはQ3の設問を選択肢表示部70に出力する。
そして、Q2またはQ3の設問に対して被験者EXがYESと回答した場合、処理部20は、続けてQ7の設問を選択肢表示部70に出力するとともに、被験者EXの髪質を髪質型(QH)に分類する。かかる分類は、毛髪HEの髪質に起因して絡まりが生じていることを示すものである。
そして、処理部20は、ロジックツリーに従ってQ4、Q5、Q9の設問を選択肢表示部70に出力し、被験者EXから順次回答を受け付けて、被験者EXの絡まり度LEをレベル1から3のいずれかに決定する。
【0131】
また、Q8、Q6、Q1、Q2、Q3の設問に対していずれもNOと被験者EXが回答した場合に、処理部20は、摩擦パラメータに関するQ7に続けて、ダメージ度パラメータに関するQ5の設問を選択肢表示部70に出力する。処理部20は、行動パターンに関するQ9およびQ10の設問を選択肢表示部70に出力して被験者EXから回答を受け付ける。
そして、処理部20は、受け付けた回答にしたがって、被験者EXの髪質を行動型(AC)、ダメージ型(DM)または絡まり無し(NA)に分類する。行動型は、被験者EXのヘアケア行動に起因して絡まりが将来的に生じる可能性があることを示す分類である。
また、処理部20は、被験者EXから受け付けた回答に基づいて、被験者EXの絡まり度LEをレベル1または2より決定する。
【0132】
このように、本実施例では、実施例1または2で求められた重回帰式に対して被験者EXの毛髪パラメータを代入する演算処理が、図9に示すロジックツリーに置き換えられている。このため、毛髪HEに関する幾つかの選択式の設問に対して被験者EXからの回答を受け付けるだけで、毛髪HEの髪質情報と絡まり度LEとを被験者EXに提供することができる。
【0133】
なお、本実施例においては、設問に対する被験者EXからの回答(毛髪情報IH)とロジックツリーとに基づいて絡まり度LEを決定しているが、これに代えて、被験者EXから受け付けた毛髪情報IHを毛髪HEのパラメータ取得部50にて毛髪パラメータに変換し、かかる毛髪パラメータと関係情報IRとに基づいて、絡まり度算出部60にて絡まり度LEを算出してもよい(図2を参照)。
【0134】
上記実施例は、以下の技術的思想を包含するものである。
(1)被験者の毛髪の長さまたは量に関する毛量情報、被験者の毛髪の表面摩擦に関する摩擦情報、および被験者の毛髪の曲率に関する曲率情報の入力をそれぞれ受け付ける受付部と、
受け付けられた摩擦情報および曲率情報の少なくとも一方に基づいて毛髪の髪質を複数のタイプに分類し、かつ、摩擦情報または曲率情報の少なくとも他方と毛量情報とに基づいて毛髪の絡まりの強さを示す絡まり度を複数の段階に分類する毛髪分類部と、
を備える毛髪評価システム;
(2)毛量情報、摩擦情報または曲率情報にそれぞれ対応づけられた、毛髪に関する設問および複数の選択肢を表示する表示部をさらに備え、
受付部が、選択された選択肢を、毛量情報、摩擦情報または曲率情報のいずれかと対応づけて受け付けることを特徴とする上記(1)に記載の毛髪評価システム;
(3)受付部が、被験者のヘアケア行動を示す行動情報をさらに受け付け、
毛髪分類部が、摩擦情報、曲率情報、毛量情報および行動情報に基づいて、毛髪の髪質または絡まり度を分類することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の毛髪評価システム;
(4)コンピュータ装置を用いた毛髪の評価方法であって、
被験者の毛髪の長さまたは量に関する毛量情報、被験者の毛髪の表面摩擦に関する摩擦情報、および被験者の毛髪の曲率に関する曲率情報の入力をそれぞれ受け付けるステップと、
受け付けられた摩擦情報および曲率情報の少なくとも一方に基づいて毛髪の髪質を複数のタイプに分類するステップと、
摩擦情報または曲率情報の少なくとも他方と毛量情報とに基づいて毛髪の絡まりの強さを示す絡まり度を多段階に分類するステップと、
を含む毛髪評価方法。
【符号の説明】
【0135】
20 処理部
22 CPU
30 関係記憶部
32 コンテンツ記憶部
40 毛髪情報受付部
42 送受信部
50 パラメータ取得部
60 絡まり度算出部
70 選択肢表示部
80 バスライン
82 操作部
84 撮影部
92 評価出力部
94 メッセージ出力部
100 毛髪評価システム
110 ネットワーク
120 毛髪評価装置
130 携帯電話基地局
132 携帯電話機
140 パソコン端末
150 ディスプレイ表示部
EX 被験者
S サンプル提供者
HE、HS 毛髪
IH 毛髪情報
IR 関係情報
LE、LS 絡まり度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル提供者の毛髪より求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す毛髪パラメータと、前記毛髪の絡まり特性の強さを示す絡まり度と、の対応関係を表す関係情報を記憶する記憶手段と、
被験者の毛髪に関する毛髪情報を受け付ける受付手段と、
受け付けられた前記毛髪情報に基づいて、該毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータを求めるパラメータ取得手段と、
前記関係情報を参照して、前記被験者の毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータに対応する前記絡まり度を決定する絡まり度算出手段と、
を備える毛髪評価システム。
【請求項2】
前記毛髪パラメータが、毛髪の長さまたは量に関する毛量パラメータと、毛髪の表面摩擦に関する摩擦パラメータと、毛髪の曲率に関する曲率パラメータと、を含む請求項1に記載の毛髪評価システム。
【請求項3】
前記毛量パラメータが、前記サンプル提供者もしくは前記被験者の肩下毛量もしくは生毛密度、または前記毛髪の脇下長さ、平均長さもしくは頭頂から毛先までの長さである請求項2に記載の毛髪評価システム。
【請求項4】
前記絡まり度が、毛髪に対する櫛通りまたは指通りの荷重と、毛髪同士の交絡部に対する櫛または指の引っ掛かりの頻度および強さとから求まる値である請求項2または3に記載の毛髪評価システム。
【請求項5】
前記関係情報が、前記絡まり度を目的変数とし、少なくとも前記毛量パラメータ、前記摩擦パラメータおよび前記曲率パラメータを説明変数とする重回帰式である請求項2から4のいずれかに記載の毛髪評価システム。
【請求項6】
前記毛髪パラメータが、毛髪の太さまたは硬さに関する剛性パラメータをさらに含む請求項2から5のいずれかに記載の毛髪評価システム。
【請求項7】
前記毛髪パラメータに対応づけられた設問および複数の選択肢を表示する表示手段をさらに備え、
前記受付手段が、選択された前記選択肢を前記毛髪情報として受け付け、
前記パラメータ取得手段が、受け付けた前記毛髪情報を前記毛量パラメータ、前記摩擦パラメータまたは前記曲率パラメータの少なくとも一つに換算することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の毛髪評価システム。
【請求項8】
前記受付手段が、前記被験者の毛髪画像を前記毛髪情報として受け付け、
前記パラメータ取得手段が、受け付けた前記毛髪画像を画像処理して、前記毛量パラメータ、前記摩擦パラメータまたは前記曲率パラメータの少なくとも一つを算出する請求項2から7のいずれかに記載の毛髪評価システム。
【請求項9】
予めサンプル提供者の毛髪より求められた、複数種類の毛髪特性をそれぞれ示す毛髪パラメータと前記毛髪の絡まり特性の強さを示す絡まり度との対応関係を表す関係情報を記憶している記憶手段を備えるコンピュータ装置を用いておこなう毛髪評価方法であって、
被験者の毛髪に関する毛髪情報に基づいて該毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータを求めるステップと、
前記関係情報を参照して、前記被験者の毛髪に関する複数種類の前記毛髪パラメータに対応する前記絡まり度を決定するステップと、
を含む毛髪評価方法。
【請求項10】
前記毛髪パラメータが、毛髪の長さまたは量に関する毛量パラメータと、毛髪の表面摩擦に関する摩擦パラメータと、毛髪の曲率に関する曲率パラメータと、を含む請求項9に記載の毛髪評価方法。
【請求項11】
前記毛髪パラメータに対応づけられた設問および複数の選択肢を前記被験者に提示するステップと、
前記被験者に選択された前記選択肢を前記毛髪情報として受け付けるステップと、
受け付けた前記毛髪情報を、前記毛量パラメータ、前記摩擦パラメータまたは前記曲率パラメータの少なくとも一つに換算するステップと、
をさらに含む請求項10に記載の毛髪評価方法。
【請求項12】
前記被験者の毛髪画像を前記毛髪情報として受け付けるステップと、
受け付けた前記毛髪画像を画像処理して、前記毛量パラメータ、前記摩擦パラメータまたは前記曲率パラメータの少なくとも一つを算出するステップと、
をさらに含む請求項10または11に記載の毛髪評価方法。
【請求項13】
前記摩擦パラメータまたは前記曲率パラメータの少なくとも一方に基づいて前記被験者の髪質を複数のタイプに分類するステップと、
分類された前記タイプを示す髪質情報と、前記被験者の毛髪に関して決定された前記絡まり度と、を出力するステップと、
をさらに含む請求項10から12のいずれかに記載の毛髪評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−36369(P2011−36369A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185914(P2009−185914)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】