説明

気体吸着デバイスとその作製方法

【課題】使用時に気体吸着材の気体吸着特性が充分発揮され、封止の信頼性が高い気体吸着デバイスの作製方法を提供する。
【解決手段】気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側にフィルタ部材6を配置し、フィルタ部材6のメッシュを、気体吸着材4からの気体放出が完了するまで封止材7をフィルタ部材6上に保持し、気体吸着材4からの気体放出が完了後に封止材7を解放するように構成したので、封止材7の軟化温度が、気体吸着材4が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材4からの気体放出が完了するまで封止材7をフィルタ部材6上に保持する。そのため、気体吸着材4からの気体放出、気体難透過性容器1内からの気体の排出が充分になされた後に狭窄部5を封止材7で塞ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に気体吸着材を充填した気体吸着デバイスとその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル等、高度な真空環境により性能を発揮することができる機器(以下、真空機器と記述)の開発が盛んになってきている。
【0003】
これらの真空機器にとって、製造時における残留気体や経時的に侵入する気体による内部の圧力上昇は性能を劣化する原因になる。そこで、これらの気体を吸着するための気体吸着材の適用が試みられている。
【0004】
気体吸着材は大気中で空気に接触すると、空気を吸着してしまい、気体の吸着能力が低下してしまう。
【0005】
そこで、真空中で熱処理を行うことにより熱処理前に吸着していた気体を放出して優れた吸着性能を発揮する気体吸着材を、大気中で取り扱うことを可能とするため、真空中で熱処理を行った後に、真空を保った状態で、気体遮断性を有する容器(気体難透過性容器)に封止して気体吸着デバイスとすることが試みられている。
【0006】
気体吸着デバイスは次のようにして作製される。予め金属製の気体難透過性容器に気体吸着材を充填し、気体難透過性容器の開口部付近に設けた狭窄部に、封止材を設置し、気体難透過性容器の狭窄部付近と封止材を真空中で加熱することにより、封止材が融解して狭窄部へ流れ込み、封止材の表面張力により狭窄部に固定され、冷却固化することにより封止がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/109846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い条件においては、気体吸着材から気体が充分に放出されない状態で、封止材が融解して気体難透過性容器が封止されてしまい、気体難透過性容器内に残留した気体を気体吸着材が再吸着してしまうため、吸着特性の発揮が充分になされない可能性があった。
【0009】
更に、気体難透過性容器が封止された後に気体吸着材から放出された気体により、気体難透過性容器内部の圧力が上昇して、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材を開口部側に押し出したり、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材に貫通孔を開けてしまったりして、封止確率が低減する可能性があった。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材からの気体放出が充分になされ、気体吸着材の吸着特性を充分発揮できる気体吸着デバイスと、封止確率が高い気体吸着デバ
イスの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着デバイスは、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低く前記狭窄部を通過できない大きさの封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、且つ前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧した状態で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成されたフィルタ部材を配置したのである。
【0012】
また、本発明の気体吸着デバイスの作製方法は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりもメッシュが細かく前記狭窄部を通過できない大きさのフィルタ部材を配置し、前記気体難透過性容器内で前記フィルタ部材の前記開口部側に、軟化温度が前記所定温度より低く前記フィルタ部材を通過できない大きさの封止材を配置し、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、前記フィルタ部材を、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材を前記フィルタ部材上に保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材を解放するように構成したのである。
【0013】
これにより、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持して、狭窄部への流れ込むタイミングを遅らせることにより、気体吸着材からの気体放出が充分になされ、吸着特性が充分発揮され、高い封止確率を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側にフィルタ部材を配置するとともに、フィルタ部材を、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持し、気体吸着材からの気体放出が完了後に封止材を解放するように構成したことにより、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持して、狭窄部への流れ込むタイミングを遅らせることにより、気体吸着材からの気体放出が充分になされる。
【0015】
そのため、気体吸着材からの気体放出、気体難透過性容器内からの気体の排出が充分になされた後に狭窄部を封止材で塞ぐことができ、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過
性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着デバイスを開封して使用する時に気体吸着材の気体吸着特性が充分発揮される。
【0016】
また、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着材から放出された気体により気体難透過性容器内部の圧力が上昇して、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材を開口部側に押し出したり、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材に貫通孔を開けてしまったりする現象がほとんど起こらず、封止確率が高まり、生産性が向上し、封止の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの熱処理前の状態を示す概略縦断面図
【図2】同実施の形態の熱処理前の気体吸着デバイスを上(開口部側)から見た上面図
【図3】同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理中の状態を示す概略縦断面図
【図4】同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理後の状態を示す概略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低く前記狭窄部を通過できない大きさの封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、且つ前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧した状態で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成されたフィルタ部材を配置した気体吸着デバイスである。
【0019】
本発明によれば、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側にフィルタ部材を配置するとともに、フィルタ部材を、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持し、気体吸着材からの気体放出が完了後に封止材を解放するように構成したことにより、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持して、狭窄部への流れ込むタイミングを遅らせることにより、気体吸着材からの気体放出が充分になされる。
【0020】
そのため、気体吸着材からの気体放出、気体難透過性容器内からの気体の排出が充分になされた後に狭窄部を封止材で塞ぐことができ、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着デバイスを開封して使用する時に気体吸着材の気体吸着特性が充分発揮される。
【0021】
また、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着材から放出された気体により気体難透過性容器内部の圧力が上昇して、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材を開口部側に押し出したり、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材に貫通孔を開けてしまったりする現象がほ
とんど起こらず、封止確率が高まり、生産性が向上し、封止の信頼性が向上する。
【0022】
第2の発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりもメッシュが細かく前記狭窄部を通過できない大きさのフィルタ部材を配置し、前記気体難透過性容器内で前記フィルタ部材の前記開口部側に、軟化温度が前記所定温度より低く前記フィルタ部材を通過できない大きさの封止材を配置し、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、前記フィルタ部材を、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材を前記フィルタ部材上に保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材を解放するように構成した気体吸着デバイスの作製方法である。
【0023】
本発明によれば、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側にフィルタ部材を配置するとともに、フィルタ部材を、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持し、気体吸着材からの気体放出が完了後に封止材を解放するように構成したことにより、封止材の軟化温度が、気体吸着材が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材からの気体放出が完了するまで封止材をフィルタ部材上に保持して、狭窄部への流れ込むタイミングを遅らせることにより、気体吸着材からの気体放出が充分になされる。
【0024】
そのため、気体吸着材からの気体放出、気体難透過性容器内からの気体の排出が充分になされた後に狭窄部を封止材で塞ぐことができ、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着デバイスを開封して使用する時に気体吸着材の気体吸着特性が充分発揮される。
【0025】
また、狭窄部を封止材で塞いだ時に気体難透過性容器内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着材から放出された気体により気体難透過性容器内部の圧力が上昇して、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材を開口部側に押し出したり、表面張力で狭窄部を塞いでいた融解状態の封止材に貫通孔を開けてしまったりする現象がほとんど起こらず、封止確率が高まり、生産性が向上し、封止の信頼性が向上する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの熱処理前の状態を示す概略縦断面図であり、図2は同実施の形態の熱処理前の気体吸着デバイスを上(開口部側)から見た上面図であり、図3は同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理中の状態を示す概略縦断面図であり、図4は同実施の形態の気体吸着デバイスの熱処理後の状態を示す概略縦断面図である。
【0028】
図1に示すように、気体難透過性容器1は、深絞り成形した細長い有底筒状の容器であって、下端に気体難透過性容器1を深絞り成形して有底筒状とすることで得られた底部2、上端に開口部3を有する。
【0029】
なお、気体難透過性容器1には、予め、真空中で400℃以上で熱処理を行うことにより加熱前(熱処理前)に吸着していた気体を放出して優れた気体吸着特性を発揮する気体吸着材4を充填後、開口部3付近(開口部3と気体難透過性容器1における気体吸着材4が充填されている部分との間)を、径方向で対向する内面同士が接近するように気体難透過性容器1の胴部を2方向から押しつぶした狭窄部5が設けられ、狭窄部5の開口部3側(上側)にアルミニウム製のフィルタ部材6を配置し、フィルタ部材6の開口部3側(上側)に軟化温度が350℃の立方体の封止材7が設けられている。
【0030】
図2に示すように、封止材7は、外形寸法がフィルタ部材6のメッシュの目の大きさより大きいため、フィルタ部材6を通過できず、フィルタ部材6の上に設置できる。
【0031】
図3に示すように、熱処理により封止材7は融解するが、融解が始まった状態の封止材7は粘度が高いため、フィルタ部材6を通過するためには所定の時間を要する。よって封止材7は一定時間フィルタ部材6上部にあり、気体難透過性容器1の狭窄部5へは流れ込まないため、気体難透過性容器1(の狭窄部5)は封止されていない。
【0032】
図4に示すように、熱処理を所定時間継続する(封止材7の温度が高くなる)と、融解状態の封止材7は狭窄部5に流れ込み、表面張力で狭窄部5を塞いだ状態で留まる。その後、融解状態の封止材7を冷却固化することにより、気体難透過性容器1(の狭窄部5)の封止が完了する。
【0033】
以上の様に構成された本実施の形態の気体吸着デバイスについて、その作製方法を説明する。
【0034】
図1に示す気体難透過性容器1に、400℃以上で熱処理を行うことにより加熱前(熱処理前)に吸着していた気体を放出して優れた気体吸着特性を発揮する気体吸着材4を開口部3から充填する。
【0035】
次に、気体難透過性容器1の開口部3付近(開口部3と気体難透過性容器1における気体吸着材4が充填されている部分との間)を径方向で対向する内面同士が接近するように気体難透過性容器1の胴部を2方向から圧縮して狭窄部5を作製する。
【0036】
狭窄部5を作製するための圧縮は、直径が5mmの円柱状のステンレス治具(図示せず)2本を、気体難透過性容器1の長手方向と垂直な方向にして、ステンレス治具同士は平行にして、気体難透過性容器1の開口部3から20mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮めることにより行った。
【0037】
この過程では予め、開口部3内にスペーサー(図示せず)として厚さ0.2mmステンレス板を挿入しておいて、スペーサーと気体難透過性容器1の内面が接触した時点で圧縮を完了するようにした。
【0038】
以上の工程で狭窄部5が作製される。この後、狭窄部5の開口部3側(上側)にフィルタ部材6を設置し、フィルタ部材6の開口部3側(上側)に封止材7を設置する。この時点では、フィルタ部材6のメッシュの目より固形の封止材7の外形寸法の方が大きく、フィルタ部材6を通過できないため、封止材7はフィルタ部材6の上部で留まる。
【0039】
さらに、この状態で、気体吸着材4を充填し、フィルタ部材6と封止材7を設置した気体難透過性容器1を真空熱処理炉(図示せず)にセットする。この後、真空熱処理炉内を、1Paまで減圧後、500℃まで加熱する。
【0040】
封止材7は、昇温過程において軟化温度である350℃を越えた時点で、気体難透過性容器1の狭窄部5の方向へ流れ出す。ところが、狭窄部5と封止材7の間にはフィルタ部材6があるため、融解した封止材7はフィルタ部材6上部に一時貯留される。
【0041】
更に温度を上昇させ、気体吸着材4が加熱前に吸着していた気体を放出して優れた吸着特性を発揮する温度である400℃に達すると、封止材7はさらに粘度が低下するため、フィルタ部材6を通過し始めるが、狭窄部5を塞いではいないため、この間にも気体吸着材4から気体が放出し続けた結果、気体の放出が完了する。
【0042】
さらに真空熱処理炉の温度を500℃まで上昇することにより封止材7の粘度は更に低下してフィルタ部材6を通過して狭窄部5へ流れ込み、融解した封止材7は表面張力により狭窄部5に固定される。この後、真空熱処理炉内の温度を低下することにより封止材7は固化することで封止がなされる。
【0043】
本実施の形態における気体難透過性容器1とは、細長い中空の筒状のものであり、一端が開口部3で他端が塞がっているものや、両端が開口部3となっているものを用いることができる。
【0044】
例えば、一端が開口部3で他端が塞がっているものでは、その開口部3を上側にして気体吸着デバイスを作製することができ、両端が開口部3となっているものでは湾曲させることにより、両方の開口部3を上側にして気体吸着デバイスを作製することができる。
【0045】
気体難透過性容器1を構成する材質の気体透過度は、104[cm3/m2・day・atm]以下、望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のもの、さらに望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0046】
気体難透過性容器1の材質は、特に指定するものではないが、気体吸着材4が気体吸着特性を発揮する温度に加熱されても形状を保っていることが必要であるため、耐熱性に優れた材質である金属や無機材料が望ましく、金属としてはアルミニウム、銅等を用いてもよく、無機材料としては石英、ソーダ石灰ガラス等のガラスを用いてもよい。
【0047】
但し、無機材料では可塑性に乏しいため圧縮することにより狭窄部5を作製する事が困難である場合は、予め、両端が開口部3の気体難透過性容器1の一方の開口部3付近に狭窄部5を設けておき、もう一方の開口部3から気体吸着材4を充填し、もう一方の開口部3を加熱溶融させて封止を行う等、材料により適当な方法を用いることができる。
【0048】
本実施の形態における狭窄部5とは、気体難透過性容器1の開口部3と、気体難透過性容器1における気体吸着材4を収納(充填)している部分との間に位置する部分に設けられた、対向する胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い部分である。
【0049】
本実施の形態における気体吸着材4とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、物理吸着、化学吸着のいずれにより吸着するものを用いることが可能であるが、特に、Ti−Al系合金、Zr−Al系合金、Zr−Ba−Fe系合金等のように加熱を行なうことにより吸着済みの気体を放出して優れた気体吸着特性が得られる気体吸着材4が適している。
【0050】
本実施の形態におけるフィルタ部材6とは、狭窄部5で囲まれた空間の横断面よりもメッシュの目の寸法が細かく狭窄部5を通過できない大きさの部材であり、封止材7がどのような方向を向いていても封止材7が通過できず、封止材7が軟化、融解して液状になった場合は、流動に所定の時間を要し、その結果、狭窄部5への流入を遅らせることができ
るものである。
【0051】
フィルタ部材6の材料は、特に指定するものではなく、鉄、アルミニウム、銅などの金属繊維やアルミナ、ガラスなどの無機繊維を集合したものでもよく、鉄、銅、アルミニウムなどの金属部材やガラスなどの無機部材に貫通孔を開けたものでも良い。
【0052】
融解した封止材7の狭窄部5への流入を遅らせるため、フィルタ部材6を構成する材料の融点が封止材7の融点より高いことが必要である。更に、気体吸着材4からの気体放出が完了するまで、狭窄部5への封止材7への流入を遅らせるため、その融解温度は気体吸着材4の気体放出温度より高いことが必要である。
【0053】
本実施の形態における封止材7とは、常温では固形でありフィルタ部材6上部に留まることができ、温度を上昇させることにより流動性が高くなり、フィルタ部材6を通過して狭窄部5に流れ込み、冷却することにより固化して封止することができるものであり、合金からなるロウ材や、ガラス等の無機物を用いることも可能である。
【0054】
封止材7の融解温度は、温度制御の観点から、気体難透過性容器1の融解温度より30℃以上低いことが望ましいが、精密な温度制御が可能な場合は、この限りではない。冷却固化の温度制御条件は、特に指定するものではなく、加熱炉内での自然冷却を行うことが可能である。
【0055】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材4が充填された気体難透過性容器1の胴部における充填された気体吸着材4と気体難透過性容器1の開口部3との間に位置する部分に対向する胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部5が形成され、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側に軟化温度が前記所定温度より低く狭窄部5を通過できない大きさの封止材7が配置されたものを、気体難透過性容器1の開口部3側が上になる姿勢で、且つ気体難透過性容器1の内部と気体難透過性容器1の周囲の空間を減圧した状態で、融解状態の封止材7が表面張力により狭窄部5を塞ぐ状態になるように封止材7と狭窄部5付近を所定温度以上に加熱し、その後、開口部3内で表面張力により狭窄部5を塞いだ融解状態の封止材7を冷却固化することにより作製される。
【0056】
そして、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側に、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了するまで封止材7が狭窄部5を塞がないように封止材7を保持し、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了した後に封止材7が狭窄部5を塞ぐ状態になるように封止材7を解放するように構成されたフィルタ部材6を配置したのである。
【0057】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材4が充填された気体難透過性容器1の胴部における、充填された気体吸着材4と気体難透過性容器1の開口部3との間に位置する部分に、対向する胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部5を形成し、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側に、狭窄部5で囲まれた空間の横断面よりもメッシュが細かく狭窄部5を通過できない大きさのフィルタ部材6を配置し、気体難透過性容器1内でフィルタ部材6の開口部3側に、軟化温度が前記所定温度より低くフィルタ部材6を通過できない大きさの封止材7を配置し、気体難透過性容器1の開口部3側が上になる姿勢で、融解状態の封止材7が表面張力により狭窄部5を塞ぐ状態になるように封止材7と狭窄部5付近を所定温度以上に加熱し、その後、開口部3内で表面張力により狭窄部5を塞いだ融解状態の封止材7を冷却固化するのである。
【0058】
ここで、フィルタ部材6を、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了するまで封止
材7をフィルタ部材6上に保持し、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了した後に封止材7を解放するように構成したのである。
【0059】
本実施の形態によれば、気体難透過性容器1内で狭窄部5の開口部3側にフィルタ部材6を配置するとともに、フィルタ部材6のメッシュを、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了するまで封止材7をフィルタ部材6上に保持し、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了した後に封止材7を解放するように構成したことにより、封止材7の軟化温度が、気体吸着材4が吸着済みの気体を放出する温度より低い場合であっても、気体吸着材4からの気体放出が実質的に完了するまで封止材7をフィルタ部材6上に保持して、狭窄部5への流れ込むタイミングを遅らせることにより、気体吸着材4からの気体放出が充分になされる。
【0060】
そのため、気体吸着材4からの気体放出、気体難透過性容器1内からの気体の排出が充分になされた後に狭窄部5を融解状態の封止材7で塞ぐことができ、狭窄部5を融解状態の封止材7で塞いだ時に気体難透過性容器1内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着デバイスを開封して使用する時に気体吸着材4の気体吸着特性が充分発揮される。
【0061】
また、狭窄部5を融解状態の封止材7で塞いだ時に気体難透過性容器1内に気体の残留が実質的に無い状態にできるため、気体吸着材4から放出された気体により気体難透過性容器1内部の圧力が上昇して、表面張力で狭窄部5を塞いでいた融解状態の封止材7を開口部3側に押し出したり、表面張力で狭窄部5を塞いでいた融解状態の封止材7に貫通孔を開けてしまったりする現象がほとんど起こらず、封止確率が高まり、生産性が向上し、封止の信頼性が向上する。
【0062】
以下、実施例により詳細を説明する。
【0063】
(実施例1)
実施例1において、気体難透過性容器1として、深絞り成形したアルミニウムからなる長さ100mm、内径10mmの有底円筒形のものを用いた。気体吸着材4として、加熱により吸着済みの気体を放出して優れた吸着特性を発揮する温度が400℃のTi−Al系合金で、10Paでの窒素の吸着量が1ccのものを用いた。
【0064】
フィルタ部材6は直径10μmの鉄線からなるフィルタであり、メッシュの目の大きさは0.3mmである。封止材7は軟化温度が350℃の低融点ガラスであり、一辺の長さが3mmの立方体である。
【0065】
狭窄部5は、予め、スペーサーとして用いる厚さ0.15mmのステンレス板を開口部3より挿入し、直径が5mmの円柱状のステンレス治具2本を、気体難透過性容器1の長手方向と垂直な方向にして、ステンレス治具同士は平行にして、気体難透過性容器1における気体吸着材4を充填した部分よりも開口部3側になる、気体難透過性容器1の開口部3から20mmの位置を挟むように対向して設置し、距離を縮め、気体難透過性容器1の内面とスペーサーが接触するところで圧縮を終了することにより行った。圧縮を終了すると、スプリングバックにより、狭窄部5の対向する胴部の内面同士の間隔は0.2mmであった。
【0066】
気体吸着デバイスの作製工程は次の通りである。まず、気体難透過性容器1に開口部3から気体吸着材4を充填後に開口部3付近(開口部3と気体難透過性容器1における気体吸着材4が充填されている部分との間)に狭窄部5を作製し、開口部3を上にして開口部3よりフィルタ部材6を狭窄部5の開口部3側(上側)に設置し、フィルタ部材6の開口
部3側(上側)に封止材7を設置し、開口部3を上向きに保った状態で、これらを真空熱処理炉に設置後、1Paまで減圧し、室温から500℃まで1時間かけて昇温を行い、500℃で5時間保持した後、室温まで冷却を行った。
【0067】
作製した気体吸着デバイスを純度99.999%のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体して、加熱処理後の気体吸着材4を吸着容量測定装置であるオートソーブ1−C(カンタクロム社製)の評価用セルへ計り取り、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量を測定した結果、1cc/gであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0068】
実施例1では気体吸着デバイスを1000本作製したが、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0069】
本実施例で得られた窒素の吸着量は、気体吸着材4の吸着量が充分に発揮されており、封止確率も充分なものであり、いずれも比較例1より優れている。
【0070】
実施例1では、フィルタ部材6を用いているため、封止材7の軟化温度が、加熱前に吸着していた気体を気体吸着材4が放出する温度である400℃より低い350℃であるにも関わらず、加熱前に吸着していた気体の充分な放出を可能とし、気体難透過性容器1に残留する気体の再吸着を防いで気体吸着材4の気体吸着特性が充分発揮され、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇して封止材7に貫通孔を形成することを防止し、高い封止確率が得られたものと思われる。
【0071】
(実施例2)
実施例2において、フィルタ部材6のメッシュの目の大きさを0.5mmとし、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0072】
この結果、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであり、気体吸着材4が有している本来の気体吸着量を得られることが判った。
【0073】
実施例2では気体吸着デバイスを1000本作製したが、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0074】
実施例2においても、フィルタ部材6を用いているため、封止材7の軟化温度が、加熱前に吸着していた気体を気体吸着材4が放出する温度である400℃より低い350℃であるにも関わらず、加熱前に吸着していた気体の充分な放出を可能とし、気体難透過性容器1に残留する気体の再吸着を防いで気体吸着材4の気体吸着特性が充分発揮され、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇して封止材7に貫通孔を形成することを防止し、高い封止確率が得られたものと思われる。
【0075】
(実施例3)
実施例3において、フィルタ部材6のメッシュの目の大きさを0.9mmとし、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0076】
その結果、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は0.8ccであり、気体吸着材が有する本来の吸着量の80%が得られたことが判った。
【0077】
実施例3では、気体吸着デバイスを1000本作製したが、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0078】
気体吸着量が実施例1、実施例2と比較して低下している要因は、フィルタ部材6のメッシュの目が大きいため、実施例1、実施例2と比べると、封止材7が狭窄部5に流れ込むタイミングが早かったため、気体吸着材4から気体が充分に放出されるより前に封止材7が融解して気体難透過性容器1(の狭窄部5)が封止されてしまい、気体難透過性容器1内に残留した気体を気体吸着材4が再吸着してしまうため吸着特性の発揮が充分になされなかったと思われる。
【0079】
一方、充分な封止確率が得られている。これは、フィルタ部材6を用いていることにより、比較例1と異なり、加熱前に吸着していた気体の相当部分の放出を可能とし、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇しても封止材7に貫通孔を形成するまでには至らない事により、充分な封止確率が得られたものと思われる。
【0080】
(実施例4)
実施例4において、フィルタ部材6のメッシュの目の大きさを0.5mm、封止材7として軟化温度が300℃の低融点ガラスを用い、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0081】
その結果、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は0.7ccであり、気体吸着材4が有する本来の吸着量の70%が得られたことが判った。
【0082】
実施例4では気体吸着デバイスを1000本作製したが、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0083】
気体吸着量が実施例2と比較して低下している要因は、フィルタ部材6のメッシュの目が大きいため、実施例2と比べると封止材7が狭窄部5に流れ込むタイミングが早かったため気体吸着材4から気体が充分に放出されるより前に封止材7が融解して気体難透過性容器1(の狭窄部5)が封止されてしまい、気体難透過性容器1内に残留した気体を気体吸着材4が再吸着してしまうため吸着特性の発揮が充分になされなかったと思われる。
【0084】
一方、充分な封止確率が得られている。これは、フィルタ部材6を用いていることにより、比較例1と異なり、加熱前に吸着していた気体の相当部分の放出を可能とし、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇しても封止材7に貫通孔を形成するまでには至らない事により、充分な封止確率が得られたのである。更に、実施例3より封止材7の軟化温度が低くなっており、500℃保持時点での粘度が低くなっているため、狭窄部5へ流れ込みやすくなっているが、メッシュの目が小さくなっていることにより、封止材7がフィルタ部材6から解放され難くなっていることが相まって充分な封止確率が得られたものと思われる。
【0085】
(実施例5)
実施例5において、フィルタ部材6のメッシュの目の大きさを0.3mm、封止材7として軟化温度が300℃の低融点ガラスを用い、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0086】
その結果、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は1ccであった。
【0087】
実施例5では気体吸着デバイスを1000本作製したが、1000本の全部が封止されており、封止確率は100%であった。
【0088】
実施例5において、実施例4と同等の軟化温度を有する封止材7を用いたにも関わらず、気体吸着量は実施例1と同等であり、実施例4より大きい気体吸着量が得られている。
これは、フィルタ部材6のメッシュの目の大きさを0.3mmとしたことにより、軟化温度が低い封止材7を用いても、気体吸着材4からの気体放出が完了するまで、狭窄部5に流れ込まなかったためと思われる。このように、封止材7の軟化温度によりフィルタ部材6のメッシュの目の大きさを適正化することにより、気体吸着材4の吸着特性を充分に発揮することができる。
【0089】
以上のように、使用する封止材7により、フィルタ部材6を用いなければ、狭窄部5へ流れ込む温度が変化するような場合であっても、フィルタ部材6の目の大きさの適切化を行うことで加熱前に吸着していた気体の充分な放出を可能とし、気体難透過性容器1に残留する気体の再吸着を防いで気体吸着材4の気体吸着特性が充分発揮されることと、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇して封止材7に貫通孔を形成することを防止し、高い封止確率を得ることを可能とする。即ち、封止材7の軟化温度が低い場合は、それに応じてメッシュの目の大きさを細かくすることにより、封止材7がフィルタ部材6から解放され難くし、狭窄部5に流れ込むタイミングを遅くすることにより、加熱前に吸着していた気体の充分な放出を可能とするのである。
【0090】
以下、比較例を示す。
【0091】
(比較例1)
比較例1においてフィルタ部材6を用いずに、その他の条件は実施例1に準じて気体吸着デバイスを作製した。
【0092】
以上の工程で気体吸着デバイスを1000本作製した結果、975本が封止されており、封止確率は97.5%であった。
【0093】
封止できたものでは、25℃の条件にて10Paでの窒素の吸着量は0.6ccであった。
【0094】
実施例1に比較して気体吸着量が低下している要因は、封止材7の軟化温度が、気体吸着材4から気体放出が完了する温度より低く、気体吸着材4から気体放出が実質的に完了するまでに溶融した封止材7が狭窄部5を塞いでしまい、気体吸着材4から放出された気体の気体難透過性容器1からの排出が不充分で、気体難透過性容器1に残留する気体を気体吸着材4が再吸着してしまうため吸着特性の発揮が充分になされなかったものと思われる。
【0095】
同様に、封止確率が低下している要因は、封止材7の軟化温度が、気体吸着材4から気体放出が実質的に完了する温度より低く、溶融状態の封止材7が狭窄部5を塞いだ後も、気体吸着材4からの気体放出がなされたため、気体難透過性容器1内部の圧力が上昇して狭窄部5に位置する封止材7に貫通孔を開けてしまったためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の気体吸着デバイスは、気体吸着デバイスを開封して使用する時に気体吸着材の気体吸着特性が充分発揮され、生産性に優れ、封止の信頼性が高いので、真空断熱材や真空断熱容器、プラズマディスプレー、蛍光灯など真空の維持が必要な機器や、気体の吸着を必要とする多くの分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 気体難透過性容器
3 開口部
4 気体吸着材
5 狭窄部
6 フィルタ部材
7 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低く前記狭窄部を通過できない大きさの封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、且つ前記気体難透過性容器の内部と前記気体難透過性容器の周囲の空間を減圧した状態で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、
前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成されたフィルタ部材を配置した気体吸着デバイス。
【請求項2】
所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を放出する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、
前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりもメッシュが細かく前記狭窄部を通過できない大きさのフィルタ部材を配置し、前記気体難透過性容器内で前記フィルタ部材の前記開口部側に、軟化温度が前記所定温度より低く前記フィルタ部材を通過できない大きさの封止材を配置し、
前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、
前記フィルタ部材を、前記気体吸着材からの気体放出が完了するまで前記封止材を前記フィルタ部材上に保持し、前記気体吸着材からの気体放出が完了後に前記封止材を解放するように構成した気体吸着デバイスの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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