説明

気体吸着デバイスとその作製方法

【課題】加熱により気体吸着材が解放する気体による封止不良の発生を抑制できる気体吸着デバイスを提供する。
【解決手段】加熱すると気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器に狭窄部11を形成し、気体難透過性容器内で狭窄部11の開口部8側に、気体吸着材からの気体解放が実質的に完了するまで封止材13が狭窄部11を塞がないように封止材13を気体難透過性容器の内面と対向する面に保持し、気体吸着材からの気体解放が実質的に完了した後に封止材13が狭窄部11を塞ぐ状態になるように封止材13を解放するように構成された骨格材14を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に気体吸着材を充填した気体吸着デバイスとその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル等、高度な真空環境により性能を発揮することができる機器(以下、真空機器と記述)の開発が盛んになってきている。
【0003】
これらの真空機器にとって、製造時における残留気体や経時的に侵入する気体による内部の圧力上昇は性能を劣化する原因になる。そこで、これらの気体を吸着するための気体吸着材の適用が試みられている。
【0004】
気体吸着材は大気中で空気に接触すると、空気を吸着してしまい、気体の吸着能力が低下してしまう。そこで、気体難透過性容器や気体難透過性素材で被うことが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、気体吸着材の吸着性能を発揮させるために熱処理を要する場合、気体吸着材を気体難透過性容器で被って封止するためには、予め気体難透過性容器と封止材をセットにして熱処理炉の中に設置して温度を上昇させることにより、気体吸着材の熱処理と同一の工程で封止材を融解して封止する手法が有効である。
【0006】
従来のこのような封止の方法としては、例えば、特許文献2に開示さているものがある。以下、図11、図12を参照しながら従来の封止の方法を説明する。
【0007】
図11に示すように、内容器1と外容器2を口元部で接合した封止前の二重容器3を形成し、ついで二重容器3の口部を下向きにして外容器2の凹部4内に排気口5と隙間をもって棒状の封止材6を取り付ける。
【0008】
次に、封止材6を取り付けた二重容器3を下向きのまま、真空加熱炉内に搬送して設置し、炉内を真空排気するとともに加熱して加熱排気を行う。このまま封止材6の軟化点以上の温度に昇温し、封止材6を軟化させてその自重により排気口5及びその周囲に落下させて、図12に示すように、排気口5を封止することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平9−512088号公報
【特許文献2】特開平6−169850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、気体吸着材を被う気体難透過性素材の気体バリヤ性が必ずしも十分ではない。そのため、気体吸着材を吸着対象の気体が存在する空間に設置する工程で、気体吸着材が周囲の気体を吸着してしまうため。吸着材の劣化抑制が困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載の方法では、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた
気体を解放する気体吸着材を気体難透過性容器に充填して、真空加熱炉内で、気体難透過性容器の封止すべき部分を封止材で封止する場合に、加熱により気体吸着材が解放する気体により、気体難透過性容器内の圧力が高くなり、封止材を気体難透過性容器の外部へ押出してしまうため、気体難透過性容器内に気体吸着材を充填して封止することが困難であった。
【0012】
そこで、本発明は、加熱により気体吸着材が解放する気体による封止不良の発生を抑制して生産性を向上できる気体吸着デバイスとその作製方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低い封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成された骨格材を配置したのである。
【0014】
これにより、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側に配置する骨格材の働きにより、気体吸着材からの気体解放が完了するまで封止材を骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持していた封止材は気体吸着材からの気体解放が完了後に解放するので、加熱により気体吸着材が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部を塞いだ融解状態の封止材を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材が狭窄部を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【0015】
また、別の本発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりも大きく前記狭窄部を通過できない大きさの骨格材を配置し、前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面に、軟化温度が前記所定温度より低い封止材を設け、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、前記骨格材を、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材を前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材を解放するように構成したのである。
【0016】
これにより、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側に配置する骨格材の働きにより、気体吸着材からの気体解放が完了するまで封止材を骨格材における気体難透過性容器の内
面と対向する面で保持し、骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持していた封止材は気体吸着材からの気体解放が完了後に解放するので、加熱により気体吸着材が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部を塞いだ融解状態の封止材を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材が狭窄部を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側に配置する骨格材の働きにより、気体吸着材からの気体解放が完了するまで封止材を骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持していた封止材は気体吸着材からの気体解放が完了後に解放するので、加熱により気体吸着材が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部を塞いだ融解状態の封止材を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材が狭窄部を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部加工前の状態を示す斜視図
【図2】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部加工後の側面図
【図3】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部加工後の状態を開口部側から見た平面図
【図4】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部の開口部側に封止材を配置した状態を開口部側から見た平面図
【図5】同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材を示す斜視図
【図6】同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材の他の例を示す斜視図
【図7】同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材のさらに別の例を示す斜視図
【図8】同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の封止完了後の状態を開口部側から見た平面図
【図9】同実施の形態の気体吸着デバイスの概略構成を示す側面図
【図10】図9のA−A線断面図
【図11】従来の容器の封止前の断面図
【図12】従来の容器の封止部を拡大した要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低い封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体
吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成された骨格材を配置したものである。
【0020】
これにより、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側に配置する骨格材の働きにより、気体吸着材からの気体解放が完了するまで封止材を骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持していた封止材は気体吸着材からの気体解放が完了後に解放するので、加熱により気体吸着材が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部を塞いだ融解状態の封止材を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材が狭窄部を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【0021】
また、冷却固化された封止材は狭窄部全体に亘って安定した封止部を形成することが可能となり、輸送、運搬など際に生じる振動によって破壊されることなく、密閉状態を維持することが可能となる。
【0022】
また、第2の発明は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりも大きく前記狭窄部を通過できない大きさの骨格材を配置し、前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面に、軟化温度が前記所定温度より低い封止材を設け、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、前記骨格材を、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材を前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材を解放するように構成したのである。
【0023】
これにより、気体難透過性容器内で狭窄部の開口部側に配置する骨格材の働きにより、気体吸着材からの気体解放が完了するまで封止材を骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、骨格材における気体難透過性容器の内面と対向する面で保持していた封止材は気体吸着材からの気体解放が完了後に解放するので、加熱により気体吸着材が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部を塞いだ融解状態の封止材を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材が狭窄部を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【0024】
また、冷却固化された封止材は狭窄部全体に亘って安定した封止部を形成することが可能となり、輸送、運搬など際に生じる振動によって破壊されることなく、密閉状態を維持することが可能となる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部加工前の状態を示す斜視図、図2は同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程
における気体難透過性容器の狭窄部加工後の側面図、図3は同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部加工後の状態を開口部側から見た平面図、図4は同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の狭窄部の開口部側に封止材を配置した状態を開口部側から見た平面図である。
【0027】
また、図5は同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材を示す斜視図、図6は同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材の他の例を示す斜視図、図7は同実施の形態の気体吸着デバイスに用いた骨格材及び封止材のさらに別の例を示す斜視図、図8は同実施の形態の気体吸着デバイスの作製工程における気体難透過性容器の封止完了後の状態を開口部側から見た平面図、図9は同実施の形態の気体吸着デバイスの概略構成を示す側面図である。
【0028】
図1に示すように、気体難透過性容器7は略扁平な細長い有底筒形のアルミニウム製であり、一方の端部(上端)に開口部8を有する。また気体難透過性容器7の長さは120mm、胴部9の壁厚は0.05mm、底部10の厚さは1mm、幅は10mmである。気体難透過性容器7内には開口部8から気体吸着材16が充填されている。
【0029】
図2、図3に示すように、気体難透過性容器7の開口部8の近傍には、径方向で対向する2方向から押しつぶしたような狭窄部11が設けられている。
【0030】
また図3に示すように、狭窄部11は長径方向に突出した構造となる。
【0031】
図4に示すように、封止部材12は気体難透過性容器7の上部に設定されている。また、封止部材12は幅4.5mm、長さ7mm、高さ4mmの平板状である。
【0032】
図5は、封止部材12の斜視図である。図5に示すように、封止部材12は骨格材14の両側面に封止材13が塗布された構造である。骨格材14は厚さ2.1mm、長さ7mm、高さ4mmであり、その両面に封止材13が1mmの厚みで塗布されている。
【0033】
図6に示す他の例の封止部材12は、下端の幅が1mm、上端の幅が2.5mm、長さ7mm、高さ4mmの三角柱形状をしている。また、図7に示すさらに別の例の封止部材12は、厚さ1mmの平板を2つ折にした形状をしている。いずれの封止部材12の場合も、外側面に封止材13が1mmの厚さで塗布されている。
【0034】
本実施の形態の気体吸着デバイスは、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材16が充填された略扁平な細長い有底筒状のアルミニウム製の気体難透過性容器7の胴部9における充填された気体吸着材16と気体難透過性容器7の開口部8との間に位置する部分に対向する胴部9の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部11が形成され、気体難透過性容器7内で狭窄部11の開口部8側に軟化温度が前記所定温度より低い封止材13が配置されたものを、気体難透過性容器7の開口部8側が上(底部10側が下)になる姿勢で、真空加熱炉内に配置して、真空加熱炉内を所定気圧まで減圧した状態で、融解状態の封止材13が表面張力により狭窄部11を塞ぐ状態になるように封止材13と狭窄部11付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、開口部8内で表面張力により狭窄部11を塞いだ融解状態の封止材13を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスである。
【0035】
そして、気体難透過性容器7内で狭窄部11の開口部8側に、気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了するまで封止材13が狭窄部11を塞がないように封止材13を気体難透過性容器7の内面と対向する面に保持し、気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了した後に封止材13が狭窄部11を塞ぐ状態になるように封止材13を解放するよ
うに構成された骨格材14を配置したものである。
【0036】
また、本実施の形態の気体吸着デバイスの作製方法は、所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材16が充填された略扁平な細長い有底筒状のアルミニウム製の気体難透過性容器7の胴部9における、充填された気体吸着材16と気体難透過性容器7の開口部8との間に位置する部分に、対向する胴部9の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部11を形成し、気体難透過性容器7内で狭窄部11の開口部8側に、狭窄部11で囲まれた空間の横断面よりも大きく狭窄部11を通過できない大きさの骨格材14を配置し、骨格材14における気体難透過性容器7の内面と対向する面には、軟化温度が前記所定温度より低い封止材13を事前に設けておき、気体難透過性容器7の開口部8側が上(底部10側が下)になる姿勢で、真空加熱炉内に配置して、真空加熱炉内を所定気圧まで減圧した状態で、融解状態の封止材13が表面張力により狭窄部11を塞ぐ状態になるように封止材13と狭窄部11付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、開口部8内で表面張力により狭窄部11を塞いだ融解状態の封止材13を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法である。
【0037】
そして、骨格材14を、気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了するまで封止材13を骨格材14における気体難透過性容器7の内面と対向する面で保持し、気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了した後に封止材13を解放するように構成したのである。
【0038】
本実施の形態の気体吸着デバイスについて、その作製方法を説明する。図1に示す気体難透過性容器7に、熱処理により加熱前に吸着していた気体を解放すると共に気体吸着特性を付与される気体吸着材16を充填し、次に開口部8付近を圧縮して狭窄部11を作製する。
【0039】
この圧縮は、直径が3mmの円筒状のステンレス冶具(図示せず)2本を、気体難透過性容器7と垂直方向に、ステンレス冶具同士は平行にして、胴部9の、開口部8から15mmの位置を挟むように設置し、距離を縮めることにより行った。
【0040】
さらに、この過程では予め、開口部8内にスペーサー(図示せず)として厚さ2mm、幅8.5mmのステンレス板を挿入しておき、スペーサーと気体難透過性容器7の内壁が接触した時点で圧縮を完了した。
【0041】
以上の工程で図2、図3に示すように狭窄部11が作製される。ここで、狭窄部11は、気体吸着材16が、気体難透過性容器7の胴部9と狭窄部11によって形成される空間内に収まるよう形成する。この一連の作業は気体難透過性容器7に充填した気体吸着材16がこぼれないように、密封された端部を底面10として設置して行う。ここで狭窄部11が生じることによる変形に追従して、開口部8の形状は楕円形状に変形する。
【0042】
次に、封止部材12を狭窄部11の上に設置する。さらに、この状態で、気体難透過性容器7と、気体吸着材16と、封止部材12を真空加熱炉(図示せず)に設置する。真空加熱炉を0.01Paまで減圧後、550℃まで昇温して、気体吸着材16に吸着特性を付与した。
【0043】
その後、600℃まで昇温した。この状態で封止部材12の封止材13は溶融しており、狭窄部11に流れ込み、粘性と表面張力で狭窄部11に保持される。
【0044】
以上のように、気体難透過性容器7は、底面10が下で開口部8が上になる(開口部8から底面10に向かう向きが重力方向下向きになる)縦置きの姿勢で真空加熱される。こ
の後、真空加熱炉を冷却することにより、封止材13が固化して封止がなされる。
【0045】
本実施の形態では、気体難透過性容器7内で狭窄部11の開口部8側に配置する骨格材14の働きにより、気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了するまで封止材13を骨格材14における気体難透過性容器7の内面と対向する面で保持し、骨格材14における気体難透過性容器7の内面と対向する面で保持していた封止材13は気体吸着材16からの気体解放が実質的に完了した後に解放するので、加熱により気体吸着材16が解放する気体の圧力で、表面張力により狭窄部11を塞いだ融解状態の封止材13を外部へ押出してしまう現象が起こり難くなる。また、融解状態の封止材13が狭窄部11を通過して流れ落ちる可能性も減り、封止の成功確率を極めて高く維持することが可能となり、気体吸着デバイスの生産性を向上できる。
【0046】
また、冷却固化された封止材13は狭窄部11全体に亘って安定した封止部を形成することが可能となり、輸送、運搬など際に生じる振動によって破壊されることなく、密閉状態を維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の気体吸着デバイスは、封止の信頼性が高く、生産性に優れるので、真空断熱材や真空断熱容器、プラズマディスプレー、蛍光灯など真空の維持が必要な機器にて適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
7 気体難透過性容器
8 開口部
9 胴部
11 狭窄部
13 封止材
14 骨格材
16 気体吸着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部が形成され、前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に軟化温度が前記所定温度より低い封止材が配置されたものを、前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化することにより作製される気体吸着デバイスであって、
前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材が前記狭窄部を塞がないように前記封止材を前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材が前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材を解放するように構成された骨格材を配置した気体吸着デバイス。
【請求項2】
所定温度以上に加熱すると加熱前に吸着していた気体を解放する気体吸着材が充填された気体難透過性容器の胴部における、充填された前記気体吸着材と前記気体難透過性容器の開口部との間に位置する部分に、対向する前記胴部の内面同士の間隔が他の箇所より狭い狭窄部を形成し、
前記気体難透過性容器内で前記狭窄部の前記開口部側に、前記狭窄部で囲まれた空間の横断面よりも大きく前記狭窄部を通過できない大きさの骨格材を配置し、
前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面に、軟化温度が前記所定温度より低い封止材を設け、
前記気体難透過性容器の開口部側が上になる姿勢で、融解状態の前記封止材が表面張力により前記狭窄部を塞ぐ状態になるように前記封止材と前記狭窄部付近を前記所定温度以上に加熱し、その後、前記開口部内で表面張力により前記狭窄部を塞いだ融解状態の前記封止材を冷却固化する気体吸着デバイスの作製方法であって、
前記骨格材を、前記気体吸着材からの気体解放が完了するまで前記封止材を前記骨格材における前記気体難透過性容器の内面と対向する面で保持し、前記気体吸着材からの気体解放が完了後に前記封止材を解放するように構成した気体吸着デバイスの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−217941(P2012−217941A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87032(P2011−87032)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】