説明

気体導入構造、並びに、環境試験装置

【課題】本発明は、簡易な構成によって導入気体に対する外気の混入を防止することができる気体導入構造を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、仕切壁5と、仕切壁5を貫通する第一貫通孔11と、第一空間に配置される電動機6と、第二空間に配されるファン8と、第一貫通孔11に挿入されて電動機6の回転をファン8に伝える回転軸7と、吹出口17がある気体導入管12とを備え、第一貫通孔11の開放部9と電動機6の間に、仕切壁5と電動機6との間が密閉手段10で密閉された気体導入空間33が形成され、気体導入空間33内に吹出口17が位置して、吹出口17の吹出方向が電動機6側に向くように気体導入管12が配置されることを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切壁で仕切られた二つの空間の一方の空間から他方の空間に気体を導入する気体導入構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子部品などの温度特性試験や熱処理を行う装置として環境試験装置が知られている。環境試験装置の中には、試験や熱処理が行われる恒温槽を二酸化炭素や窒素などの不活性ガスで充満させ、恒温槽内を無酸化雰囲気に近づけて温度特性試験や熱処理ができるものがある。
【0003】
恒温槽内に不活性ガスを導入する構造としては、ファンを用いて不活性ガスを恒温槽内に導入する構造が知られている。例えば下記の特許文献1において、環境試験装置の内槽に窒素ガスを導入する窒素ガス置換導入構造が開示されている。
【特許文献1】特開平9−222388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンを回転させるのに電動機が用いられるが、一般の電動機においては、気密性が確保されていない。そのため従来の気体導入構造では、電動機側から外気が流れ込み、恒温槽内に導入される気体には、不活性ガス以外に外気が混入されていた。その結果、恒温槽内の酸素濃度を一定の酸素濃度以下にまで低下させることは困難であった。
【0005】
かかる問題に対して、特許文献1の窒素ガス置換導入構造では、ブロック状のシール部材を用いて外気の侵入を阻止している。しかし特許文献1の窒素ガス置換導入構造には、複雑な構成のシール部材が必要となる。
【0006】
また特許文献1のシール部材は、回転軸の軸方向に2つのオイルシール装着部と補助の窒素ガス導入口とが配置されなければならない。そのため、回転軸の軸方向には、シール部材のためにかなりのスペースをとる必要があり、回転軸の長さを長くしなければならなかった。さらに回転軸の長さが長くなると、軸受に加わる荷重が増加するので、軸受や電動機が大型になるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成によって導入気体に対する外気の混入を防止することができる気体導入構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、第一空間と第二空間とを仕切る仕切壁と、第一空間と第二空間とを繋ぐように仕切壁を貫通する第一貫通孔と、第一空間に配置される電動機と、第二空間に配置されるファンと、前記第一貫通孔に挿入されて電動機の回転をファンに伝える回転軸と、吹出口がある気体導入管とを備え、第一貫通孔の開放部と電動機の間に、仕切壁と電動機との間が密閉手段で密閉された気体導入空間が形成され、該気体導入空間内に吹出口が位置して、吹出口の吹出方向が電動機側に向くように気体導入管が配置され、ファンの回転によって気体導入空間内の気体が第二空間に向けて移動する気流が発生され、吹出口から吹き出された導入気体が気体導入空間を通って第二空間に導入されることを特徴とした。
【0009】
請求項1の気体導入構造は、ファンを回転させることにより、気体導入空間内の気体を第二空間に向けて移動させる。そのため気体導入空間に吹き出された導入気体は、効率良く第二空間に導入される。このとき、気体導入空間内は、外気に比べて低圧な負圧状態になる。
【0010】
一般に電動機については気密性が確保されていない。そのため、従来の気体導入構造では、電動機の気密性がない部分から低圧な気体導入空間内に外気が侵入し、導入気体に外気が混入するおそれがあった。
【0011】
しかし請求項1の気体導入構造は、吹出口の吹出方向が電動機側に向くように気体導入管が配置されており、吹出口から吹き出される導入気体が、電動機側に向けて吹き出される。そのため、気体導入空間内における吹出口から電動機側の領域における気圧は、導入気体の流れによって高められ、外気に対する負圧状態が解消される。その結果、請求項1の気体導入構造では、気体導入空間への外気の侵入が防止され、導入気体に外気が混入するのを防止することができる。
【0012】
また請求項1の気体導入構造における導入気体に外気が混入するのを防止するための構成は、吹出口の吹出方向が電動機側に向くように気体導入管を気体導入空間内に配置するだけであり簡易である。
【0013】
ここで一般の電動機においては、回転軸を回転させる際に回転軸が電動機の枠体に接触しないように、枠体と回転軸との間には一定の隙間が形成される。電動機には、前記隙間以外にも、電源線と枠体との間の隙間等があり、これらの隙間を通じて電動機内には外気が出入りすることができる。
また電動機の枠体内には、回転軸を軸支する軸受などが収容されているが、軸受についても気密性が確保されていないのが一般的である。そのため電動機内の気体は、軸受を通って電動機内を移動することができる。
【0014】
従来の気体導入構造においても、電動機と仕切壁との間の気体の出入りについては、密閉手段によって阻止されていた。しかし上記のように、電動機には、枠体等に外気の出入りが可能な気密性のない部分がある。そのため従来の気体導入構造では、これらの部分を通じて外気がファンの回転で負圧になった空気導入空間に流れ込んでいた。
【0015】
かかる知見に基づいて提案される請求項2の気体導入構造は、請求項1の発明において、電動機の枠体には、回転軸が差し込まれる差込口があり、吹出口から吹き出される導入気体の吹出方向が前記差込口に差し込まれた回転軸と枠体との間の隙間に向けられることを特徴とした。
【0016】
請求項2の気体導入構造は、回転軸と電動機の枠体との間の隙間に対して、吹出口から導入気体を吹き付けることができる。そのため気体導入空間への外気の侵入口である前記隙間周辺の気圧を集中的に高めて外気圧と同等もしくはそれ以上にすることができる。その結果、気体導入空間への外気の侵入を確実に阻止することができる。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、気体導入管の一部が気体導入空間に配置され、気体導入空間内の気体導入管は、途中で電動機側に曲げられていることを特徴とした。
【0018】
請求項3の気体導入構造は、気体導入管を曲げるだけの簡易な構成で導入気体の吹出方向を調整することができる。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、密閉手段は、回転軸が貫通される第二貫通孔を有する筒状の部材であって、密閉手段の内外を貫通する管挿入孔を有し、吹出口が第二貫通孔内に位置するように気体導入管が管挿入孔に配置されて、電動機と仕切壁との間に挟み込まれることを特徴とした。
【0020】
これにより、吹出口が第二貫通孔内に位置し、吹出口が第一貫通孔内に配置された場合に比べ、吹出口から電動機までの距離を短くすることができる。そのため請求項4の気体導入構造では、吹出口から吹き出される導入気体の大部分を所定の領域に確実に吹き付けることができる。また吹出口から所定の領域までの距離が短いので、吹出口から吹き出された導入気体の勢いが失われないうちに、導入気体を所定の領域に吹き付けることが可能である。その結果、少量の導入気体を所定の領域に吹き付けるだけで、所定の領域の気圧を集中的に上昇させることができる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、密閉手段の第二貫通孔の内径は、第一貫通孔の内径よりも大きいことを特徴とした。
【0022】
これにより、回転軸と第二貫通孔との間に一定の空間を生じさせることができる。この空間は、回転軸と第一貫通孔との間に生じる空間に比べ、貫通孔の壁面から回転軸までの距離が長い。そのため、気体導入管を回転軸に接触させずに導入気体の吹出方向の調整を行うことができる。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの気体導入構造が取り付けられた環境試験装置であって、恒温槽の内部を前記第二空間とし、恒温槽の外部を前記第一空間として、導入気体が恒温槽の内部に導入されることを特徴とした。
【0024】
これにより、恒温槽内に外気の混入がない導入気体を導入することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、簡易な構成によって導入気体に外気が混合されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態である気体導入構造について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の気体導入構造の取り付け状態を示す断面図である。
本実施形態の気体導入構造1は、LTPS(Low-Temperature Poly-Silicon:低温ポリシリコン)、有機EL(organic electroluminescence)、FED(Field Emission Display)などのFPD(Flat Panel Display)の製造工程や、電子部品などの温度特性試験・熱処理などで使用される環境試験装置等に用いることができる。
環境試験装置に本実施形態の気体導入構造1を用いることにより、環境試験装置の恒温槽3内に二酸化炭素や窒素などの不活性ガスを導入し、恒温槽3内を無酸化雰囲気に近づけて試験や熱処理を行うことができる。
【0027】
気体導入構造1は、恒温槽3の内部(第二空間)と外部(第一空間)とを仕切る仕切壁5の所定位置に設置される。仕切壁5の所定位置には、所定の内径を有する第一貫通孔11が貫通される。第一貫通孔11は、恒温槽3の内部と外部とを繋ぐ貫通孔である。第一貫通孔11の恒温槽3内部側は、気体が流れ出る開放部9である。
図1に示すように、気体導入構造1は、電動機6、回転軸7、ファン8、密閉手段10および気体導入管12を備える。
【0028】
電動機6は、枠体20で周囲を覆われている。本実施形態の電動機6の枠体20は、円筒状の枠体本体21と、枠体本体21の両端部をそれぞれ閉塞する閉塞部材22,23とを備えている。閉塞部材22,23のうちファン8側の閉塞部材22には、回転軸7を差し込むための差込口25がある。差込口25の内径は、回転軸7の外径よりも大きい。そのため、回転軸7が差込口25に差し込まれて電動機6に取り付けられると、差込口25の設けられた閉塞部材22と回転軸7との間には一定の隙間27が形成される。この隙間27があることにより回転軸7は、枠体20と接触せずに滑らかに回転することができる。
【0029】
枠体20の内部には、回転軸7を軸支する軸受26が複数収容される。そして複数の軸受26のうち少なくとも1つは、回転軸7および軸受26に加わる応力を低減させるため差込口25の近傍に配置される。また電動機6は、電動機6に電力を供給する電源線(図示せず)と接続されており、枠体20には電源線を枠体20の内部に導くための導入口(図示せず)が設けられている。そして枠体20と電源線との間にも隙間(図示せず)が生じている。
【0030】
電動機6およびファン8には、公知のものを用いることができる。本実施形態では、電動モータおよび遠心ファンが用いられている。また電動機6内の軸受26については、気密性が確保されていないのが一般的である。
【0031】
図2に示すように密閉手段10は、中央に第二貫通孔15を備えた円筒状の部材である。また密閉手段10には、管挿入孔16が設けられている。管挿入孔16は、密閉手段10の周壁30を貫通する貫通孔であり、第二貫通孔15と連通している。この管挿入孔16には、気体導入管12が嵌入される。
【0032】
なお密閉手段10は、恒温槽3の仕切壁5と電動機6との間の密閉性を確保することができればよく、例えば、樹脂、ゴム、シリコン、金属、グラスファイバー、カーボンなどで形成することができる。
【0033】
気体導入管12は、恒温槽3の内部に導入される窒素等の導入気体が流される管である。気体導入管12の一方の端部は、気体導入管12に対して気体を供給する気体供給装置(図示せず)と接続される。また気体導入管12の他方の端部は、気体供給装置から供給された気体を吹き出す吹出口17として機能する。
【0034】
以下、本実施形態の気体導入構造1における、各構成要素の位置関係について説明する。図1に示すように、電動機6とファン8とは、前記仕切壁5に設けられた第一貫通孔11を挟んで対向するように配置される。このとき電動機6は、恒温槽3の外部に配置され仕切壁5に固定される。これに対してファン8は、恒温槽3の内部に配置される。
【0035】
電動機6を仕切壁5に固定する際、電動機6と仕切壁5との間には密閉手段10が配置される。このとき仕切壁5の第一貫通孔11と密閉手段10の第二貫通孔15とは、それぞれの断面の中心が孔の貫通方向において一致しており、恒温槽3の内部と外部とを繋ぐ連続した一つの貫通孔18を形成する。
【0036】
そして貫通孔18には、電動機6とファン8とを連結するために回転軸7が挿入される。回転軸7の一方の端部には、ファン8が取り付けられ、他方の端部には電動機6が取り付けられる。これにより電動機6の回転が回転軸7を介してファン8に伝えられる。また、このとき回転軸7は、電動機6の枠体20内に収容された軸受26によって軸支されている。
【0037】
図2に示すように、仕切壁5の第一貫通孔11に回転軸7が挿入されると、回転軸7の外径は、第一貫通孔11の内径よりも小さく、回転軸7と第一貫通孔11の内壁との間には一定の空間が形成される(以下、「第一気体導入空間31」という)。第一気体導入空間31のファン8側は、恒温槽3内に気体が流れ込む開放部9である。
【0038】
また密閉手段10の第二貫通孔15の内径は、仕切壁5の第一貫通孔11の内径よりも大きい。そのため第二貫通孔15の内径は、回転軸7の外径よりも大きい。したがって第二貫通孔15に回転軸7が挿入されると、回転軸7と第二貫通孔15の内壁との間には一定の空間が形成される(以下、「第二気体導入空間32」という)。
【0039】
第一気体導入空間31と第二気体導入空間32とは連続した空間であり、両者によって気体導入空間33が形成される。図1に示すように、気体導入空間33の電動機6側は、電動機6の枠体20(閉塞部材22)によって塞がれており、ファン8側は開放部9であって開放されている。すなわち気体導入空間33は、第一貫通孔11と第二貫通孔15と電動機6とで形成される。このとき電動機6の枠体20と回転軸7との間の隙間27は、気体導入空間33(第二気体導入空間32)に面する。
【0040】
図2に示すように、気体導入管12は、上記密閉手段10の管挿入孔16に隙間なく嵌入されて密閉手段10に取り付けられる。このとき、気体導入管12の先端側の一部である先端領域13は、第二気体導入空間32の内部に配置される。このため密閉手段10が仕切壁5と電動機6との間に取り付けられると、気体導入管12の先端領域13が気体導入空間33(第二気体導入領域32)内に配置された状態となる。
【0041】
本実施形態において、恒温槽3に導入される導入気体を吹き出す吹出口17は、気体導入管12の先端領域13の先端にある。そのため吹出口17は、気体導入空間33のうち第二気体導入空間32内に配置される。密閉手段10が仕切壁5と電動機6との間に取り付けられると吹出口17が電動機6側に向くように、気体導入管12は密閉手段10に取り付けられる。
【0042】
さらに詳しく説明すると、気体導入管12の先端領域13は、図2に示すように、途中で電動機6側に曲げられている。曲げられた先端領域13のうち吹出口17を含む先端側の部分について中心軸を仮想的に延長すると、前記中心軸は、電動機6の枠体20と回転軸7との間の隙間27に達する。すなわち気体導入管12の吹出口17から吹き出される導入気体の吹出方向が隙間27に向かうように気体導入管12は曲げられる。
【0043】
次に本実施形態の気体導入構造1の作用および効果について説明する。
恒温槽3の内部に気体を導入させるため、電動機6が駆動され、気体供給装置(図示せず)から気体供給管12に導入気体が供給される。本実施形態では、導入気体として窒素が用いられる。電動機6が駆動されると、電動機6の回転が回転軸7を介してファン8に伝えられる。ファン8が回転すると気体導入空間33の内部に存在する気体が恒温槽3側に吸い出される。このため気体導入空間33の内部は外気に対して負圧になる。負圧になった気体導入空間33には、気体導入管12の吹出口17から窒素が吹き出される。気体導入空間33に吹き出された窒素は、ファン8によって気体導入空間33から恒温槽3側に吸い出され恒温槽3内に導入される。そうすると恒温槽3内の導入気体である窒素の濃度が上昇し、酸素濃度が低下する。
【0044】
本実施形態の気体導入構造1では、仕切壁5と電動機6との間には密閉手段10を挟み込まれている。これにより仕切壁5と電動機6との継目から外気が気体導入空間33内に侵入するのを防止している。
【0045】
また一般の電動機では、電源線と枠体20との間の隙間や、枠体20内に収容された軸受26などについては気密性がない。そのため、枠体20自体を密閉構造とした場合であっても、電源線と枠体20との間の隙間や軸受26を通じて電動機6の内外を外気が移動できる。
【0046】
すなわち従来の気体導入構造では、電源線と枠体20との間の隙間(図示せず)等を通じて電動機6内に外気が侵入していた。そしてファン8を回転させて気体導入空間33が負圧となった場合、この外気が軸受26や隙間27を通じて負圧になった気体導入空間33内に流れ込んでいた。
【0047】
そのため従来の気体導入構造を環境試験装置に用いた場合、恒温槽3に導入される気体には、外気が含まれ、恒温槽3内の酸素濃度を一定の酸素濃度(400〜500ppm)以下にまで低下させることが困難であった。
【0048】
しかし本実施形態の気体導入構造1では、気体導入管12の吹出口17が電動機6側に向けられ、導入気体の吹出方向が電動機6の枠体20と回転軸7との間の隙間27に向けられている。そのため吹出口17から吹き出される導入気体は、枠体20と回転軸7との間の隙間27に対して吹き付けられる。これにより隙間27近傍の気圧が高められる。また隙間27に入り込む導入気体の流れによって、隙間27近傍に配置された軸受26周辺の気圧も上昇される。その結果、電動機6の内部から軸受26や隙間27を通じて気体導入空間33に外気が侵入するのを防止することができる。
【0049】
よって本実施形態の気体導入構造1では、気体導入空間33から吸い出されて恒温槽3に導入される気体には気体導入管12の吹出口17から吹き出される導入気体以外の外気がほとんど含まれない。そのため本実施形態の気体導入構造1を環境試験装置に用いれば、気体導入管12から吹き出される窒素(導入気体)のみを恒温槽3内に導入することができ、恒温槽3内に導入される窒素の導入量が従来の気体導入構造と同じであっても、恒温槽3内をより無酸化雰囲気に近づけることができる。
【0050】
図3,4は、気体導入管12を電動機6側に曲げて導入気体の吹出方向を電動機6側に向けたことによる効果を確認した実験のグラフである。
図3は、導入気体の吹出方向が電動機6側に向けられていないタイプの気体導入構造が採用され、恒温槽3の内容積が500lである環境試験装置において、500℃で熱処理を行い、気体導入管から420l/minの導入量で窒素を導入した場合の恒温槽3内の温度と酸素濃度の変化を表したグラフである。なおここで用いられた気体導入構造は、電動機6側に曲げられた気体導入管12の構成を除き本実施形態の気体導入構造1と同じである。
【0051】
図4は、図1に示すように、導入気体の吹出方向が電動機6側に向けられている本実施形態の気体導入構造1が採用された環境試験装置において、図3のグラフと同一の実験条件で、恒温槽3内の温度と酸素濃度の変化を表したグラフである。
【0052】
図3のグラフに示されるように、導入気体の吹出方向が電動機6側に向けられていない気体導入構造を用いると、恒温槽3内の酸素濃度を400ppm以下に低下させることはできなかった。これに対し本実施形態の気体導入構造1によれば、図4のグラフに示されるように、窒素導入量を増やすことなく恒温槽3内の酸素濃度を1ppm以下にまで下げることができた。
【0053】
本実施形態の気体導入構造1において、密閉手段10に設けられた第二気体導入空間32は、仕切壁5に設けられた第一気体導入空間31に比べ、貫通孔の内壁から回転軸7までの距離が長い。そのため、本実施形態の気体導入構造1は、吹出口17が第一気体導入空間31内に配置される場合よりも、気体導入管12の突出部13が回転軸7に接触するおそれが少ない。その結果、気体導入管12の突出部13の長さおよび形状に自由度を持たせることができ、吹出口17から吹き出される導入気体の吹出方向の調整が容易である。
【0054】
加えて吹出口17を第二気体導入空間32に配置することにより、吹出口17が第一気体導入空間31内に配置された場合に比べ、吹出口17から電動機6の隙間27までの距離を短くすることができる。
【0055】
そのため吹出口17から吹き出される導入気体の大部分を、外気の侵入口である電動機6の隙間27に吹き付けることができる。また吹出口17から吹き出された導入気体の勢いを維持したまま、導入気体を電動機6の隙間27に対して吹き付けることも可能である。その結果、本実施形態の気体導入構造1は、少量の導入気体を電動機6の隙間27に対して吹き付けるだけで、隙間27近傍の気圧を集中的に上昇させ、気体導入空間33に外気が侵入するのを防止することができる。
【0056】
また本実施形態の気体導入構造1は、密閉手段10について特に複雑な構成を必要とせず、気体導入管12を所定の方向に曲げるだけの簡易な構成で実施することができる。したがって、密閉手段10については、気体導入管12を取り付けることができる厚さが確保されればよく、回転軸7の軸方向に必要とされる密閉手段10のためのスペースが少なくてよい。そのため特に回転軸7を長くする必要がなく、軸受26に加わる荷重を増加させることもない。
【0057】
上記実施形態の気体導入構造1では、気体導入管12が密閉手段10に取り付けられたが本発明はこのような構成に限られるわけではない。例えば、気体導入管12を仕切壁5の第一貫通孔11に取り付け、導入気体の吹出方向を電動機6側に向ける構成としてもよい。
【0058】
この構成を採用すると、密閉手段10に対して気体導入管12を取り付ける必要がないので、仕切壁5と電動機6との間に密閉手段10を挟み込む必要がない。この場合、コーキング材などを密閉手段10として用い、仕切壁5と電動機6との境界部分にコーキングなどの処置を施すことで仕切壁5と電動機6との間の密閉性を確保することができる。そのため上記実施形態で必要であった密閉手段10のためのスペースが不要となる。その結果、回転軸7の長さを短くし、軸受26に加わる負担を小さくすることができる。
【0059】
上記実施形態において気体導入構造1は、恒温槽3内に導入気体を導入させて、恒温槽3内の酸素濃度を低下させるのに用いられたが、本発明はこのような用途に限定されるわけではない。例えば恒温槽3内の気体を循環させるのに用いることも可能である。
【0060】
また上記実施形態において気体導入管12から吹き出される導入気体には窒素が用いられたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。二酸化炭素等の窒素以外の不活性ガスや他の気体を導入気体とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の気体導入構造の取り付け状態を示す断面図である。
【図2】図1に示した気体導入構造の部分拡大断面図である。
【図3】導入気体の吹出方向が電動機側に向けられていない気体導入構造が採用された環境試験装置における恒温槽内の温度と酸素濃度の変化を表したグラフである。
【図4】導入気体の吹出方向が電動機側に向けられている気体導入構造が採用された環境試験装置における恒温槽内の温度と酸素濃度の変化を表したグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1 気体導入構造
3 恒温槽
5 仕切壁
6 電動機
7 回転軸
8 ファン
9 開放部
10 密閉手段
11 第一貫通孔
12 気体導入管
15 第二貫通孔
17 吹出口
20 枠体
27 隙間
33 気体導入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一空間と第二空間とを仕切る仕切壁と、
第一空間と第二空間とを繋ぐように仕切壁を貫通する第一貫通孔と、
第一空間に配置される電動機と、
第二空間に配置されるファンと、
前記第一貫通孔に挿入されて電動機の回転をファンに伝える回転軸と、
吹出口がある気体導入管とを備え、
第一貫通孔の開放部と電動機の間に、仕切壁と電動機との間が密閉手段で密閉された気体導入空間が形成され、
該気体導入空間内に吹出口が位置して、吹出口の吹出方向が電動機側に向くように気体導入管が配置され、
ファンの回転によって気体導入空間内の気体が第二空間に向けて移動する気流が発生され、吹出口から吹き出された導入気体が気体導入空間を通って第二空間に導入されることを特徴とする気体導入構造。
【請求項2】
電動機の枠体には、回転軸が差し込まれる差込口があり、吹出口から吹き出される導入気体の吹出方向が前記差込口に差し込まれた回転軸と枠体との間の隙間に向けられることを特徴とする請求項1に記載の気体導入構造。
【請求項3】
気体導入管の一部が気体導入空間に配置され、気体導入空間内の気体導入管は、途中で電動機側に曲げられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気体導入構造。
【請求項4】
密閉手段は、回転軸が貫通される第二貫通孔を有する筒状の部材であって、密閉手段の内外を貫通する管挿入孔を有し、吹出口が第二貫通孔内に位置するように気体導入管が管挿入孔に配置されて、電動機と仕切壁との間に挟み込まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気体導入構造。
【請求項5】
密閉手段の第二貫通孔の内径は、第一貫通孔の内径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の気体導入構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの気体導入構造が取り付けられた環境試験装置であって、
恒温槽の内部を前記第二空間とし、恒温槽の外部を前記第一空間として、導入気体が恒温槽の内部に導入されることを特徴とする環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292257(P2008−292257A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137125(P2007−137125)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】