気体溶解器
【課題】気体を液体へ溶解させるための気体溶解器(10)において、気体を液体に溶解させる性能を向上させる。
【解決手段】ケーシング(11)内に、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)を設ける。又は、ケーシング(11)の内部空間に、その内部空間を仕切ると共に複数の流通用開口(28)が形成された区画部材(12)を複数設け、各区画部材(12)では、流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りの周方向にずれるようにする。
【解決手段】ケーシング(11)内に、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)を設ける。又は、ケーシング(11)の内部空間に、その内部空間を仕切ると共に複数の流通用開口(28)が形成された区画部材(12)を複数設け、各区画部材(12)では、流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りの周方向にずれるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体への気体の溶解を促進させる気体溶解器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体を液体へ溶解させるための気体溶解器が知られている。気体溶解器は、例えば微細な気泡を浴槽などの水槽へ供給する微細気泡供給装置に設けられる。この微細気泡供給装置では、減圧する液体が多くの気体を溶解しているほど多くの気泡が発生するので、多くの気体を液体に溶解させるために気体溶解器を使用する。気体溶解器の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、被処理水を殺菌、浄化するための気液混合反応装置が開示され、この気液混合反応装置に気体溶解器が設けられている。気体溶解器は、円筒状の加圧タンクと吐出ノズルとを備えている。吐出ノズルは、先端が加圧タンクの底面に対して接線方向を向くように配設されている。この気体溶解器では、気体を混入した被処理水が吐出ノズルから加圧タンク内に吐出される。加圧タンク内では、吐出ノズルから吐出された被処理水が旋回しながら上昇する。このため、気体と被処理水とが混合されて、気体の溶解が促進される。
【0004】
この気液混合反応装置では、気体溶解器でオゾンを被処理水に溶解させている。オゾンを溶解した被処理水は、気体溶解器に隣接する加圧タンクで減圧される。その際、オゾンが微細気泡化するので、オゾンと被処理水とがより多く接触し、被処理水が効果的に殺菌、浄化される。
【特許文献1】特開2004−267940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の気体溶解器では、ケーシング内で気液二相流体の旋回流を発生させることによって気液二相流体中の気体成分と液体成分とを混合させて気体の溶解を促進させている。しかし、全ての気液二相流体が一定方向に旋回する旋回流では、気体成分と液体成分とに働く遠心力が異なるために、気体成分と液体成分とを十分に混合することができないないおそれがあり、液体に対する気体の溶解量を十分に高められないおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体を液体へ溶解させるための気体溶解器において、気体を細分化して分散させることにより気体を液体に溶解させる性能を向上させることである。特に、ポロイダル渦及びトロイダル渦の発生を利用し、また隣接する空間を連結する開口を利用して、気体を細分化して分散させることにより気体を液体に溶解させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散させて溶解させる気体溶解器(10)を対象とする。そして、この気体溶解器(10)は、上記ケーシング(11)内には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)が設けられている。
【0008】
第1の発明では、ケーシング(11)内に、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)を設けている。ここで、ポロイダル渦(31)とは、ポロイダル方向の渦である。トロイダル渦(32)とは、トロイダル方向の渦である。ポロイダル渦(31)は、例えば、ある部材へ向かう流体の流れと、その部材に衝突して戻る流体の流れとによる流れの速度差によって生じる。トロイダル渦(32)は、同一空間内に例えば円周方向に隣接して形成される複数のポロイダル渦の中心をつなぐように形成される。ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが生じると、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成される。
【0009】
この第1の発明では、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)が生じる。このため、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体は、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが3次元的に干渉し合う複雑な流れの場に巻き込まれて比較的激しく混合される。
【0010】
第2の発明は、一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散させて溶解させる気体溶解器(10)を対象とする。そして、この気体溶解器(10)は、上記ケーシング(11)の内部空間には、該内部空間を仕切るための区画部材(12)が該ケーシング(11)の軸方向に複数設けられる一方、上記各区画部材(12)には、該区画部材(12)により仕切られた一方の空間から他方の空間へ流体を流すための流通用開口(28)複数が形成されており、上記各区画部材(12)では、上記流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対して上記ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれるように配置されている。
【0011】
第2の発明では、ケーシング(11)の内部空間に、複数の流通用開口(28)が形成された区画部材(12)がケーシング(11)の軸方向に複数設けられている。そして、各区画部材(12)では、流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれている。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用開口(28)を通過した気液二相流体が流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する。そして、区画部材(12)へ向かう気液二相流体の流れと、区画部材(12)に衝突して戻る気液二相流体の流れとによる流れの速度差によって渦が生じる。また、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用開口(28)を通過した気液二相流体が、ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれた流出口(14)側の区画部材(12)の流通用開口(28)へ向かう流れが形成されるので、ケーシング(11)の軸心周りを旋回する流れが生じる。従って、衝突によって生じる渦とケーシング(11)の軸心周りを旋回する流れとが、3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成されるので、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体はこの複雑な流れの場で比較的激しく混合される。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ケーシング(11)が円筒状に形成され、上記区画部材(12)が円板状に形成される一方、上記各区画部材(12)では、複数の流通用開口(28)が周方向に等間隔で配置されている。
【0013】
第3の発明では、円板状の区画部材(12)に複数の流通用開口(28)が形成されている。複数の流通用開口(28)は、区画部材(12)の周方向に等間隔で配置されている。ケーシング(11)の軸方向から見れば、隣り合う区画部材(12)では、一方の区画部材(12)の各流通用開口(28)が、他方の区画部材(12)の流通用開口(28)同士の間に位置している。
【0014】
第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲が、凹状に形成されている。
【0015】
第4の発明では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲を凹状に形成している。つまり、区画部材(12)では、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の入口側の部分が、入口側に向かって広がっている。このため、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通用開口(28)に導かれる。
【0016】
第5の発明は、上記第2乃至第4の何れか1つの発明において、隣り合う区画部材(12)における一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びる中心間部材(15)を備えている。
【0017】
第5の発明では、中心間部材(15)が、隣り合う区画部材(12)の中心部間に存在している。また、区画部材(12)に形成された複数の流通用開口(28)は、周方向に等間隔で配置されている。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通用開口(28)を通過して流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する気液二相流体によって形成される複雑な流れの場が、周方向に概ね等間隔で形成される状態になる。ここで、中心間部材(15)がなければ、同一空間内で複雑な流れの場を形成する渦が、ケーシング(11)の中心部で互いに干渉し合うので、渦が安定しないおそれがある。つまり、渦が発生と消滅を繰り返す、或いは渦が偏って形成されるおそれがある。これに対して、この第5の発明では、隣り合う区画部材(12)の中心部間に中心間部材(15)が存在しているので、複雑な流れの場を形成する渦が互いに干渉しあうことがなく渦が安定する。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間で形成される複雑な流れの場が常に維持される。
【0018】
第6の発明は、上記第5の発明において、全ての区画部材(12)を貫通するように設けられる1本の棒状部材(15)が、上記中心間部材(15)を構成している。
【0019】
第6の発明では、1本の棒状部材(15)が、全ての区画部材(12)を貫通するように設けられており、中心間部材(15)を構成している。つまり、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。
【0020】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びている。
【0021】
第7の発明では、棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びている。つまり、棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)における流入口(13)側の面からは突出していない。従って、流入口(13)から流入した流体が、最も流入口(13)側の区画部材(12)流通用開口(28)へ比較的スムーズに導かれる。
【0022】
第8の発明は、上記第1乃至第7の何れか1つに記載の気体溶解器(10)と、上記気体溶解器(10)が設けられて水槽(5)に接続する水流通路(30)と、上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の上流に設けられて該水流通路(30)を流れる水に空気を混入させる空気導入器(17)と、上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の下流に設けられて空気が溶解した水を減圧することによって微細な気泡を発生させる気泡発生器(16)とを備え、上記気泡発生器(16)で発生した気泡を含んだ水を上記水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)である。
【0023】
第8の発明では、空気導入器(17)で空気を混入された水が気体溶解器(10)に流入する。気体溶解器(10)では、空気が水に溶解される。空気を溶解した水は、気泡発生器(16)で減圧される。これにより、水に溶解した空気が微細な気泡となって現れる。微細な気泡を含んだ水は水槽(5)へ供給される。この第8の発明では、微細気泡供給装置(20)に、第1乃至第7の発明の何れか1つの気体溶解器(10)を用いている。
【発明の効果】
【0024】
上記第1の発明では、渦発生手段(12,28)を設けることで、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生じさせて、3次元的に干渉し合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)によって形成される複雑な流れの場において、気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、ポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)に巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0025】
また、上記第2乃至第7の各発明では、各区画部材(12)の流通用開口(28)の位置を隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずらすことで、区画部材(12,12)の間に渦が生じる複雑な流れの場を形成して、渦が生じる複雑な流れの場において気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、渦に巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0026】
また、上記第4の発明では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲を凹状に形成することで、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通用開口(28)に導かれるようにしている。従って、気液二相流体の気泡が、区画部材(12)の間に停滞することを抑制することができる。
【0027】
また、上記第5の発明では、複雑な流れの場を形成する渦がケーシング(11)の中心部で互いに干渉しあうことを防止する中心間部材(15)を設けることで、隣り合う区画部材(12,12)の間で形成される複雑な流れの場が常に維持されるようにしている。従って、気液二相流体は常に複雑な流れの場で比較的激しく混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0028】
また、上記第6の発明では、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。従って、隣り合う区画部材(12)毎に中心間部材(15)を設ける必要がないので、気体溶解器(10)の構成を簡素化することができる。
【0029】
また、上記第8の発明では、第1乃至第7の発明の何れか1つの気体溶解器(10)が、微細な気泡を含んだ水を水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)に用いられている。このため、気泡発生器(16)には、多くの空気を溶解した水が流入する。従って、気泡発生器(16)では多くの微細な気泡が発生するので、多くの微細な気泡を水槽(5)へ供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
本実施形態は、本発明に係る気体溶解器(10)を備える微細気泡供給装置(20)である。以下では、まず微細気泡供給装置(20)の構成について説明し、次に気体溶解器(10)の構成について説明する。
【0032】
〈微細気泡供給装置の構成〉
本実施形態の微細気泡供給装置(20)は、風呂の浴槽(5)に微細な気泡を含んだ水を供給するための装置である。この微細気泡供給装置(20)は、図1に示すように、入口と出口とがそれぞれ浴槽(5)に接続された循環流路(30)を備えている。循環流路(30)は、水流通路を構成している。
【0033】
循環流路(30)には、上流側から順に空気導入器(17)とポンプ機構(18)と気体溶解器(10)と気泡発生器(16)とが接続されている。循環流路(30)の入口と空気導入器(17)との間には、循環流路(30)の流量を計測する流量計測部(24)が設けられている。ポンプ機構(18)と気体溶解器(10)との間には、圧力計(8)が設けられている。気体溶解器(10)と気泡発生器(16)との間には、循環流路(30)の流量を調節する流量調節バルブ(26)が設けられている。
【0034】
空気導入器(17)は、循環流路(30)内へ気泡源となる空気(気体)を外部から導入するものである。この空気導入器(17)は、その内部の水流によって発生する負圧を利用して空気を吸入する、いわゆるエジェクター方式の空気導入器である。つまり、空気導入器(17)では、その内部を通過する水流により負圧が生じ、この負圧によって外部の空気が空気導入管(17a)を介して循環流路(30)に導入される。
【0035】
ポンプ機構(18)は、浴槽(5)の水を循環流路(30)で循環させるためのものである。ポンプ機構(18)は、空気導入器(17)側から吸い込んだ水を気体溶解器(10)側へ吐出する。
【0036】
気体溶解器(10)は、空気導入器(17)で混入させた空気を水に溶解させるためのものである。気体溶解器(10)についての詳細は後述する。
【0037】
気泡発生器(16)は、微細な気泡を発生させるためのものである。気泡発生器(16)は、出口が浴槽(5)に開口するように設置されている。気泡発生器(16)には、図2に示すように、内部に流路絞り部(16a)と流路拡大部(16b)とが形成されている。気泡発生器(16)では、流路拡大部(16b)が流路絞り部(16a)の上流に比べて低圧になる。気体溶解器(10)で空気を溶解した水は、流路絞り部(16a)から流路拡大部(16b)へ流入する際に減圧され、溶解した空気が微細な気泡(マイクロバブル)となって現れる。微細な気泡は水と共に吐出ノズル(16c)を通じて浴槽(5)へ流入する。
【0038】
〈気体溶解器の構成〉
気体溶解器(10)は、図3に示すように、ケーシング(11)と区画部材(12)と棒状部材(15)とを備えている。区画部材(12)は、ケーシング(11)内に10枚設けられている。区画部材(12)は、棒状部材(15)に固定されている。なお、区画部材(12)の枚数は単なる例示である。
【0039】
具体的に、ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒容器状に形成されている。ケーシング(11)の大きさは、例えば長さが35cmであり内径が5.5cmである。ケーシング(11)の一端面の中央には、流入口(13)が形成されている。流入口(13)にはポンプ機構(18)から延びる配管が接続されている。ケーシング(11)の他端面の中央には、流出口(14)が形成されている。流出口(14)には気泡発生器(16)へ延びる配管が接続されている。
【0040】
区画部材(12)は、円板状に形成されている。区画部材(12)の直径は、ケーシング(11)の内径と等しくなっている。区画部材(12)の中心には、図4に示すように、棒状部材(15)を嵌め込むための円形の嵌合穴(27)が形成されている。また、区画部材(12)の嵌合穴(27)の周囲には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体が流通する円形の流通孔(28)が8つ形成されている。各流通孔(28)は、流通用開口を構成している。なお、流通孔(28)の数は単なる例示である。これらの8つの流通孔(28)は、全ての同じ大きさである。これらの流通孔(28)は、区画部材(12)の中心からの距離が全て等しく、周方向に等間隔に配置されている。
【0041】
区画部材(12)の流入口(13)側の面における各流通孔(28)の周囲は、図5に示すように、凹状に形成されている。つまり、区画部材(12)では、流入口(13)側の面の流通孔(28)の入口側の部分が、入口側に向かって広がっている。このため、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通孔(28)に導かれる。なお、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲を凹状に形成することは、気体溶解器(10)を縦置きにした場合に特に有効である。また、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲を全周に亘ってテーパー状に形成してもよい。
【0042】
棒状部材(15)は、真っ直ぐな円柱状に形成されている。棒状部材(15)の直径は、区画部材(12)の嵌合穴(27)の直径と概ね等しくなっている。棒状部材(15)の長さは、ケーシング(11)の軸方向の長さより短くなっている。
【0043】
棒状部材(15)には、10枚の区画部材(12)が取り付けられている。棒状部材(15)は、各区画部材(12)の嵌合穴(27)に嵌め込まれている。各区画部材(12)は、棒状部材(15)の軸心に対して垂直に取り付けられている。これらの区画部材(12)は、棒状部材(15)の一端側の端部から等間隔(例えば2cm間隔)で取り付けられている。棒状部材(15)の最も一端側に取り付けられた区画部材(12)からは、棒状部材(15)が突出していない。棒状部材(15)は、中心間部材を構成しており、隣り合う区画部材(12)の間の全てで一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びている。
【0044】
隣り合う区画部材(12)では、図4に示すように、棒状部材(15)の軸方向から見て、一方の区画部材(12)の各流通孔(28,28,…)が、他方の区画部材(12)の流通孔(28,28,…)同士の真ん中に位置している。つまり、隣り合う区画部材(12)では、流通孔(28,28,…)の位置が周方向に半ピッチずれている。隣り合う区画部材(12)では、棒状部材(15)の軸方向から見て流通孔(28,28,…)が重複していない。
【0045】
10枚の区画部材(12)が取り付けられた棒状部材(15)は、その軸心がケーシング(11)の軸心と一致するようにケーシング(11)内に挿入されている。この状態では、各区画部材(12)がケーシング(11)の軸心に対して垂直になる。また、各区画部材(12)は、その外周がケーシング(11)の内周面に当接しており、ケーシング(11)の内部空間を流入口(13)側と流出口(14)側とに区画している。ケーシング(11)の内部空間には、10枚の区画部材(12)によって、区画部材(12)に挟まれた9つの区画室(22)が形成されている。
【0046】
この気体溶解器(10)の各区画室(22)では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通孔(28,28,…)を通過した流体が、流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する。このため、図6に示すように、各区画室(22)では、流出口(14)側の区画部材(12)へ向かう流体の流れと、流出口(14)側の区画部材(12)に衝突して戻る流体の流れとによる流れの速度差によって、ポロイダル方向へ回るポロイダル渦(31)が形成される。
【0047】
また、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用孔(28)を通過した気液二相流体が、ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれた流出口(14)側の区画部材(12)の流通孔(28)へ向かう流れが形成される。このため、この流れやポロイダル渦(31)やその周辺の流体の流れの乱れの影響を受けて、トロイダル方向へ回るトロイダル渦(32)が形成される。トロイダル渦(32)は、複数のポロイダル渦(31)の中心をつなぐ形で形成される。ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが生じると、3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成される。この実施形態では、流通孔(28)の位置が互いに周方向にずれた状態で隣接する区画部材(12)が、渦生起手段を構成している。
【0048】
区画部材(12)には複数の流通孔(28)が周方向に等間隔で配置されている。このため、各区画室(22)では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通用開口(28)を通過して流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する気液二相流体によって形成されるポロイダル渦(31)が、周方向に概ね等間隔で形成される状態になる。各区画室(22)では、棒状部材(15)が隣り合う区画部材(12)の中心部間に存在しているので、周方向に概ね等間隔で形成されるポロイダル渦(31)が、ケーシング(11)の中心部で互いに干渉し合うことがなく、ポロイダル渦(31)が安定して形成されることが促進される。また、ポロイダル渦(31)の安定して形成されると、トロイダル渦(32)が安定して形成されることも促進される。
【0049】
−微細気泡供給装置の運転動作−
本実施形態の微細気泡供給装置(20)の運転動作について説明する。この微細気泡供給装置(20)では、ポンプ機構(18)を起動させると、浴槽(5)の水が循環流路(30)の入口を吸い込まれて循環流路(30)の出口へ向かって流通する。
【0050】
なお、循環流路(30)の流量は、流量調節バルブ(26)によって所定値になるように調節される。流量調節バルブ(26)の開度は、流量計測部(24)によって計測する循環流路(30)の流量に基づいて調節される。また、気体溶解器(10)のケーシング(11)内は、300〜400kPa程度に加圧される。
【0051】
循環流路(30)の入口から流入した浴槽(5)の水は、空気導入器(17)に流入する。空気導入器(17)では、空気導入管(17a)から吸い込まれた空気が水に混入される。空気導入器(17)から流出した空気と水の気液二相流体は、ポンプ機構(18)を経て気体溶解器(10)に流入する。
【0052】
気体溶解器(10)では、流入口(13)から流入した気液二相流体が、最も流入口(13)側の区画部材(12)の流通孔(28)を通過して、最も流入口(13)側の区画室(22)へ流入する。区画室(22)では、気液二相流体が流出口(14)側の区画部材(12)に衝突するので、上述したように、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが形成される。気液二相流体は、互いに絡み合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)による比較的複雑な流れの場に巻き込まれて比較的激しく混合されてから、次の区画室(22)へ流入する。
【0053】
各区画室(22)では、同様に、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが形成されて、気液二相流体が比較的激しく混合される。最も流出口(14)側の区画部材(12)の流通孔(28)を通過した流体は、比較的多くの空気を溶解した状態で気泡発生器(16)に流入する。
【0054】
気泡発生器(16)では、空気を溶解した水が、流路絞り部(16a)から流路拡大部(16b)へ流入する際に減圧される。その際、水に溶解した空気が、微細な気泡(マイクロバブル)となって現れる。微細な気泡を含む水は吐出ノズル(16c)を通って浴槽(5)へ供給される。
【0055】
−実施形態の効果−
本実施形態では、各区画部材(12)の流通孔(28)の位置を隣接する区画部材(12)の流通孔(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずらすことで、区画部材(12)の間にポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生じさせて、3次元的に干渉し合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)によって形成される複雑な流れの場において、気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とに巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ポロイダル渦(31)がケーシング(11)の中心部で互いに干渉しあうことを防止する棒状部材(15)を設けることで、各区画室(22)で形成される複雑な流れの場が常に維持されるようにしている。従って、気液二相流体は常に複雑な流れの場で比較的激しく混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。従って、隣り合う区画部材(12)毎に中心間部材(15)を設ける必要がないので、気体溶解器(10)の構成を簡素化することができる。
【0058】
また、本実施形態では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通孔(28)の周囲を凹状に形成することで、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通孔(28)に導かれるようにしている。従って、気液二相流体の気泡が、区画部材(12)の間に停滞することを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、比較的多くの気体を溶解させることができる気体溶解器(10)が、微細な気泡を含んだ水を水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)に用いられている。このため、気泡発生器(16)には、多くの空気を溶解した水が流入する。従って、気泡発生器(16)では多くの微細な気泡が発生するので、多くの微細な気泡を水槽(5)へ供給することができる。
【0060】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0061】
上記実施形態について、区画部材(12)の周囲に切り欠きを形成して、切り欠きとケーシング(11)との間の開口を流通用開口としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態について、区画部材(12)の流入口(13)側の面における各流通孔(28)の周囲を凹状にせずに、区画部材(12)の流入口(13)側が平坦面になるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態について、空気導入器(17)で混入させる気体が、空気以外であってもよいし、芳香剤で空気に香りをつけたアロマ空気であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態の気体溶解器(10)について、微細気泡供給装置(20)以外の装置に適用してもよい。例えば、背景技術に示したような、気体で液体を殺菌、浄化する装置にも適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態の気体溶解器(10)について、ケーシング(11)の流入口(13)が、気体用と液体用とに分かれていてもよい。
【0066】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、蒸発器に溜まった冷凍機油を圧縮機に戻すための動作を行う冷凍装置、及び冷凍装置において蒸発器に溜まった冷凍機油を圧縮機に戻すための冷凍機油の戻し方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気泡発生器の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器のケーシングの一部を省略した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画部材の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画室の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画室で形成されるポロイダル渦及びトロイダル渦を説明するための区画部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
5 浴槽(水槽)
10 気体溶解器
11 ケーシング
12 区画部材(渦発生手段)
13 流入口
14 流出口
15 棒状部材(中心間部材)
16 気泡発生器
17 空気導入器
20 微細気泡供給装置
28 流通孔(流通用開口、渦発生手段)
30 循環流路(水流通路)
31 ポロイダル渦
32 トロイダル渦
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体への気体の溶解を促進させる気体溶解器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体を液体へ溶解させるための気体溶解器が知られている。気体溶解器は、例えば微細な気泡を浴槽などの水槽へ供給する微細気泡供給装置に設けられる。この微細気泡供給装置では、減圧する液体が多くの気体を溶解しているほど多くの気泡が発生するので、多くの気体を液体に溶解させるために気体溶解器を使用する。気体溶解器の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、被処理水を殺菌、浄化するための気液混合反応装置が開示され、この気液混合反応装置に気体溶解器が設けられている。気体溶解器は、円筒状の加圧タンクと吐出ノズルとを備えている。吐出ノズルは、先端が加圧タンクの底面に対して接線方向を向くように配設されている。この気体溶解器では、気体を混入した被処理水が吐出ノズルから加圧タンク内に吐出される。加圧タンク内では、吐出ノズルから吐出された被処理水が旋回しながら上昇する。このため、気体と被処理水とが混合されて、気体の溶解が促進される。
【0004】
この気液混合反応装置では、気体溶解器でオゾンを被処理水に溶解させている。オゾンを溶解した被処理水は、気体溶解器に隣接する加圧タンクで減圧される。その際、オゾンが微細気泡化するので、オゾンと被処理水とがより多く接触し、被処理水が効果的に殺菌、浄化される。
【特許文献1】特開2004−267940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の気体溶解器では、ケーシング内で気液二相流体の旋回流を発生させることによって気液二相流体中の気体成分と液体成分とを混合させて気体の溶解を促進させている。しかし、全ての気液二相流体が一定方向に旋回する旋回流では、気体成分と液体成分とに働く遠心力が異なるために、気体成分と液体成分とを十分に混合することができないないおそれがあり、液体に対する気体の溶解量を十分に高められないおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体を液体へ溶解させるための気体溶解器において、気体を細分化して分散させることにより気体を液体に溶解させる性能を向上させることである。特に、ポロイダル渦及びトロイダル渦の発生を利用し、また隣接する空間を連結する開口を利用して、気体を細分化して分散させることにより気体を液体に溶解させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散させて溶解させる気体溶解器(10)を対象とする。そして、この気体溶解器(10)は、上記ケーシング(11)内には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)が設けられている。
【0008】
第1の発明では、ケーシング(11)内に、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)を設けている。ここで、ポロイダル渦(31)とは、ポロイダル方向の渦である。トロイダル渦(32)とは、トロイダル方向の渦である。ポロイダル渦(31)は、例えば、ある部材へ向かう流体の流れと、その部材に衝突して戻る流体の流れとによる流れの速度差によって生じる。トロイダル渦(32)は、同一空間内に例えば円周方向に隣接して形成される複数のポロイダル渦の中心をつなぐように形成される。ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが生じると、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成される。
【0009】
この第1の発明では、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)が生じる。このため、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体は、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが3次元的に干渉し合う複雑な流れの場に巻き込まれて比較的激しく混合される。
【0010】
第2の発明は、一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散させて溶解させる気体溶解器(10)を対象とする。そして、この気体溶解器(10)は、上記ケーシング(11)の内部空間には、該内部空間を仕切るための区画部材(12)が該ケーシング(11)の軸方向に複数設けられる一方、上記各区画部材(12)には、該区画部材(12)により仕切られた一方の空間から他方の空間へ流体を流すための流通用開口(28)複数が形成されており、上記各区画部材(12)では、上記流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対して上記ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれるように配置されている。
【0011】
第2の発明では、ケーシング(11)の内部空間に、複数の流通用開口(28)が形成された区画部材(12)がケーシング(11)の軸方向に複数設けられている。そして、各区画部材(12)では、流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれている。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用開口(28)を通過した気液二相流体が流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する。そして、区画部材(12)へ向かう気液二相流体の流れと、区画部材(12)に衝突して戻る気液二相流体の流れとによる流れの速度差によって渦が生じる。また、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用開口(28)を通過した気液二相流体が、ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれた流出口(14)側の区画部材(12)の流通用開口(28)へ向かう流れが形成されるので、ケーシング(11)の軸心周りを旋回する流れが生じる。従って、衝突によって生じる渦とケーシング(11)の軸心周りを旋回する流れとが、3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成されるので、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体はこの複雑な流れの場で比較的激しく混合される。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ケーシング(11)が円筒状に形成され、上記区画部材(12)が円板状に形成される一方、上記各区画部材(12)では、複数の流通用開口(28)が周方向に等間隔で配置されている。
【0013】
第3の発明では、円板状の区画部材(12)に複数の流通用開口(28)が形成されている。複数の流通用開口(28)は、区画部材(12)の周方向に等間隔で配置されている。ケーシング(11)の軸方向から見れば、隣り合う区画部材(12)では、一方の区画部材(12)の各流通用開口(28)が、他方の区画部材(12)の流通用開口(28)同士の間に位置している。
【0014】
第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲が、凹状に形成されている。
【0015】
第4の発明では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲を凹状に形成している。つまり、区画部材(12)では、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の入口側の部分が、入口側に向かって広がっている。このため、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通用開口(28)に導かれる。
【0016】
第5の発明は、上記第2乃至第4の何れか1つの発明において、隣り合う区画部材(12)における一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びる中心間部材(15)を備えている。
【0017】
第5の発明では、中心間部材(15)が、隣り合う区画部材(12)の中心部間に存在している。また、区画部材(12)に形成された複数の流通用開口(28)は、周方向に等間隔で配置されている。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通用開口(28)を通過して流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する気液二相流体によって形成される複雑な流れの場が、周方向に概ね等間隔で形成される状態になる。ここで、中心間部材(15)がなければ、同一空間内で複雑な流れの場を形成する渦が、ケーシング(11)の中心部で互いに干渉し合うので、渦が安定しないおそれがある。つまり、渦が発生と消滅を繰り返す、或いは渦が偏って形成されるおそれがある。これに対して、この第5の発明では、隣り合う区画部材(12)の中心部間に中心間部材(15)が存在しているので、複雑な流れの場を形成する渦が互いに干渉しあうことがなく渦が安定する。このため、隣り合う区画部材(12,12)の間で形成される複雑な流れの場が常に維持される。
【0018】
第6の発明は、上記第5の発明において、全ての区画部材(12)を貫通するように設けられる1本の棒状部材(15)が、上記中心間部材(15)を構成している。
【0019】
第6の発明では、1本の棒状部材(15)が、全ての区画部材(12)を貫通するように設けられており、中心間部材(15)を構成している。つまり、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。
【0020】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びている。
【0021】
第7の発明では、棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びている。つまり、棒状部材(15)が、最も流入口(13)側の区画部材(12)における流入口(13)側の面からは突出していない。従って、流入口(13)から流入した流体が、最も流入口(13)側の区画部材(12)流通用開口(28)へ比較的スムーズに導かれる。
【0022】
第8の発明は、上記第1乃至第7の何れか1つに記載の気体溶解器(10)と、上記気体溶解器(10)が設けられて水槽(5)に接続する水流通路(30)と、上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の上流に設けられて該水流通路(30)を流れる水に空気を混入させる空気導入器(17)と、上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の下流に設けられて空気が溶解した水を減圧することによって微細な気泡を発生させる気泡発生器(16)とを備え、上記気泡発生器(16)で発生した気泡を含んだ水を上記水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)である。
【0023】
第8の発明では、空気導入器(17)で空気を混入された水が気体溶解器(10)に流入する。気体溶解器(10)では、空気が水に溶解される。空気を溶解した水は、気泡発生器(16)で減圧される。これにより、水に溶解した空気が微細な気泡となって現れる。微細な気泡を含んだ水は水槽(5)へ供給される。この第8の発明では、微細気泡供給装置(20)に、第1乃至第7の発明の何れか1つの気体溶解器(10)を用いている。
【発明の効果】
【0024】
上記第1の発明では、渦発生手段(12,28)を設けることで、流入口(13)から流出口(14)へ向かう気液二相流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生じさせて、3次元的に干渉し合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)によって形成される複雑な流れの場において、気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、ポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)に巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0025】
また、上記第2乃至第7の各発明では、各区画部材(12)の流通用開口(28)の位置を隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずらすことで、区画部材(12,12)の間に渦が生じる複雑な流れの場を形成して、渦が生じる複雑な流れの場において気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、渦に巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0026】
また、上記第4の発明では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲を凹状に形成することで、流入口(13)側の面の流通用開口(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通用開口(28)に導かれるようにしている。従って、気液二相流体の気泡が、区画部材(12)の間に停滞することを抑制することができる。
【0027】
また、上記第5の発明では、複雑な流れの場を形成する渦がケーシング(11)の中心部で互いに干渉しあうことを防止する中心間部材(15)を設けることで、隣り合う区画部材(12,12)の間で形成される複雑な流れの場が常に維持されるようにしている。従って、気液二相流体は常に複雑な流れの場で比較的激しく混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0028】
また、上記第6の発明では、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。従って、隣り合う区画部材(12)毎に中心間部材(15)を設ける必要がないので、気体溶解器(10)の構成を簡素化することができる。
【0029】
また、上記第8の発明では、第1乃至第7の発明の何れか1つの気体溶解器(10)が、微細な気泡を含んだ水を水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)に用いられている。このため、気泡発生器(16)には、多くの空気を溶解した水が流入する。従って、気泡発生器(16)では多くの微細な気泡が発生するので、多くの微細な気泡を水槽(5)へ供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
本実施形態は、本発明に係る気体溶解器(10)を備える微細気泡供給装置(20)である。以下では、まず微細気泡供給装置(20)の構成について説明し、次に気体溶解器(10)の構成について説明する。
【0032】
〈微細気泡供給装置の構成〉
本実施形態の微細気泡供給装置(20)は、風呂の浴槽(5)に微細な気泡を含んだ水を供給するための装置である。この微細気泡供給装置(20)は、図1に示すように、入口と出口とがそれぞれ浴槽(5)に接続された循環流路(30)を備えている。循環流路(30)は、水流通路を構成している。
【0033】
循環流路(30)には、上流側から順に空気導入器(17)とポンプ機構(18)と気体溶解器(10)と気泡発生器(16)とが接続されている。循環流路(30)の入口と空気導入器(17)との間には、循環流路(30)の流量を計測する流量計測部(24)が設けられている。ポンプ機構(18)と気体溶解器(10)との間には、圧力計(8)が設けられている。気体溶解器(10)と気泡発生器(16)との間には、循環流路(30)の流量を調節する流量調節バルブ(26)が設けられている。
【0034】
空気導入器(17)は、循環流路(30)内へ気泡源となる空気(気体)を外部から導入するものである。この空気導入器(17)は、その内部の水流によって発生する負圧を利用して空気を吸入する、いわゆるエジェクター方式の空気導入器である。つまり、空気導入器(17)では、その内部を通過する水流により負圧が生じ、この負圧によって外部の空気が空気導入管(17a)を介して循環流路(30)に導入される。
【0035】
ポンプ機構(18)は、浴槽(5)の水を循環流路(30)で循環させるためのものである。ポンプ機構(18)は、空気導入器(17)側から吸い込んだ水を気体溶解器(10)側へ吐出する。
【0036】
気体溶解器(10)は、空気導入器(17)で混入させた空気を水に溶解させるためのものである。気体溶解器(10)についての詳細は後述する。
【0037】
気泡発生器(16)は、微細な気泡を発生させるためのものである。気泡発生器(16)は、出口が浴槽(5)に開口するように設置されている。気泡発生器(16)には、図2に示すように、内部に流路絞り部(16a)と流路拡大部(16b)とが形成されている。気泡発生器(16)では、流路拡大部(16b)が流路絞り部(16a)の上流に比べて低圧になる。気体溶解器(10)で空気を溶解した水は、流路絞り部(16a)から流路拡大部(16b)へ流入する際に減圧され、溶解した空気が微細な気泡(マイクロバブル)となって現れる。微細な気泡は水と共に吐出ノズル(16c)を通じて浴槽(5)へ流入する。
【0038】
〈気体溶解器の構成〉
気体溶解器(10)は、図3に示すように、ケーシング(11)と区画部材(12)と棒状部材(15)とを備えている。区画部材(12)は、ケーシング(11)内に10枚設けられている。区画部材(12)は、棒状部材(15)に固定されている。なお、区画部材(12)の枚数は単なる例示である。
【0039】
具体的に、ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒容器状に形成されている。ケーシング(11)の大きさは、例えば長さが35cmであり内径が5.5cmである。ケーシング(11)の一端面の中央には、流入口(13)が形成されている。流入口(13)にはポンプ機構(18)から延びる配管が接続されている。ケーシング(11)の他端面の中央には、流出口(14)が形成されている。流出口(14)には気泡発生器(16)へ延びる配管が接続されている。
【0040】
区画部材(12)は、円板状に形成されている。区画部材(12)の直径は、ケーシング(11)の内径と等しくなっている。区画部材(12)の中心には、図4に示すように、棒状部材(15)を嵌め込むための円形の嵌合穴(27)が形成されている。また、区画部材(12)の嵌合穴(27)の周囲には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体が流通する円形の流通孔(28)が8つ形成されている。各流通孔(28)は、流通用開口を構成している。なお、流通孔(28)の数は単なる例示である。これらの8つの流通孔(28)は、全ての同じ大きさである。これらの流通孔(28)は、区画部材(12)の中心からの距離が全て等しく、周方向に等間隔に配置されている。
【0041】
区画部材(12)の流入口(13)側の面における各流通孔(28)の周囲は、図5に示すように、凹状に形成されている。つまり、区画部材(12)では、流入口(13)側の面の流通孔(28)の入口側の部分が、入口側に向かって広がっている。このため、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通孔(28)に導かれる。なお、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲を凹状に形成することは、気体溶解器(10)を縦置きにした場合に特に有効である。また、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲を全周に亘ってテーパー状に形成してもよい。
【0042】
棒状部材(15)は、真っ直ぐな円柱状に形成されている。棒状部材(15)の直径は、区画部材(12)の嵌合穴(27)の直径と概ね等しくなっている。棒状部材(15)の長さは、ケーシング(11)の軸方向の長さより短くなっている。
【0043】
棒状部材(15)には、10枚の区画部材(12)が取り付けられている。棒状部材(15)は、各区画部材(12)の嵌合穴(27)に嵌め込まれている。各区画部材(12)は、棒状部材(15)の軸心に対して垂直に取り付けられている。これらの区画部材(12)は、棒状部材(15)の一端側の端部から等間隔(例えば2cm間隔)で取り付けられている。棒状部材(15)の最も一端側に取り付けられた区画部材(12)からは、棒状部材(15)が突出していない。棒状部材(15)は、中心間部材を構成しており、隣り合う区画部材(12)の間の全てで一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びている。
【0044】
隣り合う区画部材(12)では、図4に示すように、棒状部材(15)の軸方向から見て、一方の区画部材(12)の各流通孔(28,28,…)が、他方の区画部材(12)の流通孔(28,28,…)同士の真ん中に位置している。つまり、隣り合う区画部材(12)では、流通孔(28,28,…)の位置が周方向に半ピッチずれている。隣り合う区画部材(12)では、棒状部材(15)の軸方向から見て流通孔(28,28,…)が重複していない。
【0045】
10枚の区画部材(12)が取り付けられた棒状部材(15)は、その軸心がケーシング(11)の軸心と一致するようにケーシング(11)内に挿入されている。この状態では、各区画部材(12)がケーシング(11)の軸心に対して垂直になる。また、各区画部材(12)は、その外周がケーシング(11)の内周面に当接しており、ケーシング(11)の内部空間を流入口(13)側と流出口(14)側とに区画している。ケーシング(11)の内部空間には、10枚の区画部材(12)によって、区画部材(12)に挟まれた9つの区画室(22)が形成されている。
【0046】
この気体溶解器(10)の各区画室(22)では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通孔(28,28,…)を通過した流体が、流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する。このため、図6に示すように、各区画室(22)では、流出口(14)側の区画部材(12)へ向かう流体の流れと、流出口(14)側の区画部材(12)に衝突して戻る流体の流れとによる流れの速度差によって、ポロイダル方向へ回るポロイダル渦(31)が形成される。
【0047】
また、隣り合う区画部材(12,12)の間では、流入口(13)側の区画部材(12)の流通用孔(28)を通過した気液二相流体が、ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれた流出口(14)側の区画部材(12)の流通孔(28)へ向かう流れが形成される。このため、この流れやポロイダル渦(31)やその周辺の流体の流れの乱れの影響を受けて、トロイダル方向へ回るトロイダル渦(32)が形成される。トロイダル渦(32)は、複数のポロイダル渦(31)の中心をつなぐ形で形成される。ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが生じると、3次元的に干渉し合う複雑な流れの場が形成される。この実施形態では、流通孔(28)の位置が互いに周方向にずれた状態で隣接する区画部材(12)が、渦生起手段を構成している。
【0048】
区画部材(12)には複数の流通孔(28)が周方向に等間隔で配置されている。このため、各区画室(22)では、流入口(13)側の区画部材(12)の各流通用開口(28)を通過して流出口(14)側の区画部材(12)に衝突する気液二相流体によって形成されるポロイダル渦(31)が、周方向に概ね等間隔で形成される状態になる。各区画室(22)では、棒状部材(15)が隣り合う区画部材(12)の中心部間に存在しているので、周方向に概ね等間隔で形成されるポロイダル渦(31)が、ケーシング(11)の中心部で互いに干渉し合うことがなく、ポロイダル渦(31)が安定して形成されることが促進される。また、ポロイダル渦(31)の安定して形成されると、トロイダル渦(32)が安定して形成されることも促進される。
【0049】
−微細気泡供給装置の運転動作−
本実施形態の微細気泡供給装置(20)の運転動作について説明する。この微細気泡供給装置(20)では、ポンプ機構(18)を起動させると、浴槽(5)の水が循環流路(30)の入口を吸い込まれて循環流路(30)の出口へ向かって流通する。
【0050】
なお、循環流路(30)の流量は、流量調節バルブ(26)によって所定値になるように調節される。流量調節バルブ(26)の開度は、流量計測部(24)によって計測する循環流路(30)の流量に基づいて調節される。また、気体溶解器(10)のケーシング(11)内は、300〜400kPa程度に加圧される。
【0051】
循環流路(30)の入口から流入した浴槽(5)の水は、空気導入器(17)に流入する。空気導入器(17)では、空気導入管(17a)から吸い込まれた空気が水に混入される。空気導入器(17)から流出した空気と水の気液二相流体は、ポンプ機構(18)を経て気体溶解器(10)に流入する。
【0052】
気体溶解器(10)では、流入口(13)から流入した気液二相流体が、最も流入口(13)側の区画部材(12)の流通孔(28)を通過して、最も流入口(13)側の区画室(22)へ流入する。区画室(22)では、気液二相流体が流出口(14)側の区画部材(12)に衝突するので、上述したように、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが形成される。気液二相流体は、互いに絡み合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)による比較的複雑な流れの場に巻き込まれて比較的激しく混合されてから、次の区画室(22)へ流入する。
【0053】
各区画室(22)では、同様に、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とが形成されて、気液二相流体が比較的激しく混合される。最も流出口(14)側の区画部材(12)の流通孔(28)を通過した流体は、比較的多くの空気を溶解した状態で気泡発生器(16)に流入する。
【0054】
気泡発生器(16)では、空気を溶解した水が、流路絞り部(16a)から流路拡大部(16b)へ流入する際に減圧される。その際、水に溶解した空気が、微細な気泡(マイクロバブル)となって現れる。微細な気泡を含む水は吐出ノズル(16c)を通って浴槽(5)へ供給される。
【0055】
−実施形態の効果−
本実施形態では、各区画部材(12)の流通孔(28)の位置を隣接する区画部材(12)の流通孔(28)に対してケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずらすことで、区画部材(12)の間にポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生じさせて、3次元的に干渉し合うポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)によって形成される複雑な流れの場において、気液二相流体が比較的激しく混合されるようにしている。このため、気液二相流体中の気体成分は、分散されて細分化され、比較的小さな気泡になる。そして、気体と液体との接触面積の総和が大きくなる。また、ポロイダル渦(31)とトロイダル渦(32)とに巻き込まれる気液二相流体は、ケーシング(11)を通り抜けるまでに比較的長い時間を要する。従って、比較的小さな気泡になった気体成分が比較的長い時間に亘ってケーシング(11)内で混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ポロイダル渦(31)がケーシング(11)の中心部で互いに干渉しあうことを防止する棒状部材(15)を設けることで、各区画室(22)で形成される複雑な流れの場が常に維持されるようにしている。従って、気液二相流体は常に複雑な流れの場で比較的激しく混合されるので、より多くの気体を液体に溶解させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、隣り合う区画部材(12)の間の全てに中心間部材(15)を設けるために、1本の棒状部材(15)を用いている。従って、隣り合う区画部材(12)毎に中心間部材(15)を設ける必要がないので、気体溶解器(10)の構成を簡素化することができる。
【0058】
また、本実施形態では、区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通孔(28)の周囲を凹状に形成することで、流入口(13)側の面の流通孔(28)の周囲に衝突した気液二相流体の気泡がそのまま流通孔(28)に導かれるようにしている。従って、気液二相流体の気泡が、区画部材(12)の間に停滞することを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、比較的多くの気体を溶解させることができる気体溶解器(10)が、微細な気泡を含んだ水を水槽(5)へ供給する微細気泡供給装置(20)に用いられている。このため、気泡発生器(16)には、多くの空気を溶解した水が流入する。従って、気泡発生器(16)では多くの微細な気泡が発生するので、多くの微細な気泡を水槽(5)へ供給することができる。
【0060】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0061】
上記実施形態について、区画部材(12)の周囲に切り欠きを形成して、切り欠きとケーシング(11)との間の開口を流通用開口としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態について、区画部材(12)の流入口(13)側の面における各流通孔(28)の周囲を凹状にせずに、区画部材(12)の流入口(13)側が平坦面になるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態について、空気導入器(17)で混入させる気体が、空気以外であってもよいし、芳香剤で空気に香りをつけたアロマ空気であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態の気体溶解器(10)について、微細気泡供給装置(20)以外の装置に適用してもよい。例えば、背景技術に示したような、気体で液体を殺菌、浄化する装置にも適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態の気体溶解器(10)について、ケーシング(11)の流入口(13)が、気体用と液体用とに分かれていてもよい。
【0066】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、蒸発器に溜まった冷凍機油を圧縮機に戻すための動作を行う冷凍装置、及び冷凍装置において蒸発器に溜まった冷凍機油を圧縮機に戻すための冷凍機油の戻し方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気泡発生器の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器のケーシングの一部を省略した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画部材の正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画室の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る微細気泡生成装置の気体溶解器の区画室で形成されるポロイダル渦及びトロイダル渦を説明するための区画部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
5 浴槽(水槽)
10 気体溶解器
11 ケーシング
12 区画部材(渦発生手段)
13 流入口
14 流出口
15 棒状部材(中心間部材)
16 気泡発生器
17 空気導入器
20 微細気泡供給装置
28 流通孔(流通用開口、渦発生手段)
30 循環流路(水流通路)
31 ポロイダル渦
32 トロイダル渦
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、
上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散・溶解させる気体溶解器であって、
上記ケーシング(11)内には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)が設けられていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項2】
一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、
上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散・溶解させる気体溶解器であって、
上記ケーシング(11)の内部空間には、該内部空間を仕切るための区画部材(12)が該ケーシング(11)の軸方向に複数設けられる一方、
上記各区画部材(12)には、該区画部材(12)により仕切られた一方の空間から他方の空間へ流体を流すための流通用開口(28)が複数形成されており、
上記各区画部材(12)では、上記流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対して上記ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれるように配置されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケーシング(11)は円筒状に形成され、
上記区画部材(12)は円板状に形成される一方、
上記各区画部材(12)では、複数の流通用開口(28)が周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲は、凹状に形成されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項5】
請求項2乃至4において、
隣り合う区画部材(12)における一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びる中心間部材(15)を備えていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項6】
請求項5において、
全ての区画部材(12)を貫通するように設けられる1本の棒状部材(15)が、上記中心間部材(15)を構成していることを特徴とする気体溶解器。
【請求項7】
請求項6において、
上記棒状部材(15)は、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の気体溶解器(10)と、
上記気体溶解器(10)が設けられて水槽(5)に接続する水流通路(30)と、
上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の上流に設けられて該水流通路(30)を流れる水に空気を混入させる空気導入器(17)と、
上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の下流に設けられて空気が溶解した水を減圧することによって微細な気泡を発生させる気泡発生器(16)とを備え、
上記気泡発生器(16)で発生した気泡を含んだ水を上記水槽(5)へ供給することを特徴とする微細気泡供給装置。
【請求項1】
一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、
上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散・溶解させる気体溶解器であって、
上記ケーシング(11)内には、流入口(13)から流出口(14)へ向かう流体の流れにポロイダル渦(31)及びトロイダル渦(32)を生起させるための渦発生手段(12,28)が設けられていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項2】
一端側に流体が流入する流入口(13)が形成されて他端側に流体が流出する流出口(14)が形成された筒状のケーシング(11)を備え、
上記ケーシング(11)の内部空間で気液二相流体を流通させることによって該気液二相流体中の気体成分を液体成分に分散・溶解させる気体溶解器であって、
上記ケーシング(11)の内部空間には、該内部空間を仕切るための区画部材(12)が該ケーシング(11)の軸方向に複数設けられる一方、
上記各区画部材(12)には、該区画部材(12)により仕切られた一方の空間から他方の空間へ流体を流すための流通用開口(28)が複数形成されており、
上記各区画部材(12)では、上記流通用開口(28)の位置が隣接する区画部材(12)の流通用開口(28)に対して上記ケーシング(11)の軸心周りに所定角度だけずれるように配置されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケーシング(11)は円筒状に形成され、
上記区画部材(12)は円板状に形成される一方、
上記各区画部材(12)では、複数の流通用開口(28)が周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記区画部材(12)の流入口(13)側の面における流通用開口(28)の周囲は、凹状に形成されていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項5】
請求項2乃至4において、
隣り合う区画部材(12)における一方の区画部材(12)の中心部から他方の区画部材(12)の中心部まで延びる中心間部材(15)を備えていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項6】
請求項5において、
全ての区画部材(12)を貫通するように設けられる1本の棒状部材(15)が、上記中心間部材(15)を構成していることを特徴とする気体溶解器。
【請求項7】
請求項6において、
上記棒状部材(15)は、最も流入口(13)側の区画部材(12)から流出口(14)側に延びていることを特徴とする気体溶解器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の気体溶解器(10)と、
上記気体溶解器(10)が設けられて水槽(5)に接続する水流通路(30)と、
上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の上流に設けられて該水流通路(30)を流れる水に空気を混入させる空気導入器(17)と、
上記水流通路(30)における上記気体溶解器(10)の下流に設けられて空気が溶解した水を減圧することによって微細な気泡を発生させる気泡発生器(16)とを備え、
上記気泡発生器(16)で発生した気泡を含んだ水を上記水槽(5)へ供給することを特徴とする微細気泡供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−161825(P2008−161825A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355801(P2006−355801)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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