説明

気体溶解装置

【課題】十分な量の気体を液体に溶解させた気体溶存液を安定的に製造し続ける。
【解決手段】気液溶解装置1は、内部の整流板11〜15により、容器内にカーテン状の水幕を形成し、液体が気体に両面から挟まれた状態で広い面積にて接触し合って落下する状態を形成する。また、制御ボックス50内の制御回路60には、電源供給ユニットPS、液面センサ31、タイマーT1〜T3、リレーX1,X2等が組み込まれ、ガス供給用電磁弁32は、液面高さが上限値H1を越えたとき開放させ、下限値H2になった後一定時間経過したときに閉じる。そして、24時間タイマーT1の設定時刻になると、ガス抜きタイマーT3を作動させ、一定時間ガス抜き用リレーX2を作動させてガス抜き用電磁弁33を開放する。このとき、ガス供給用リレーX1は強制的に作動が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に気体を溶解させる気体溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に気体を効率的に溶解させることができる気体溶解装置として、図7(A)に示す様に、密閉空間を有する容器体内に供給管を介して気体を供給し、内部を大気圧以上に加圧し、給水管を介して容器体内に水を供給し、容器体内部で水と気体とを気液接触させることにより水に気体を溶解させ、容器体の底部に貯留された気体溶存水を配水管を介して外部へ排水するように構成された装置を提案している(特許文献1)。この装置内には、第1,第2及び第3の制流板が設置され、水を制流して容器体の内部空間中に薄膜状且つ滝状に流下させる構造も採用されている。
【0003】
また、図7(B)に示す様に、同様の装置において螺旋状に水を流下させる羽根を備えた装置の提案もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/077503(図1,図5)
【特許文献1】特開2008−86896(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら従来技術の装置では、気体と液体の接触面積を増大させることにより気体の溶解量を増大させているが、十分に気体を溶解させた気体溶存液を安定的に製造するには改良すべき点があった。
【0006】
そこで、本発明は、十分な量の気体を液体に溶解させた気体溶存液を安定的に製造することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の気液溶解装置は、ガス供給管、ガス排出管、液体注入管及び液体排出管が配管されている容器本体を備え、容器内において前記ガス供給管から供給された気体の圧力を前記液体注入管から注入された液体の圧力より高く維持することで気体と液体の圧力差により気体中の所定のガス成分を液体中に溶け込ませる装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1−1)前記液体注入管はポンプに接続され、該ポンプを駆動することによって前記容器本体の内部空間の上部へ液体を吐出する様に配管され、前記液体排出管は前記容器本体の底部から液体を排出する様に配管されていること。
(1−2)前記ガス供給管はガス供給源に接続され、弁を開放したときに前記容器本体の内部空間の上部から気体を供給する様に配管され、前記ガス排出管は弁を開放したときに前記容器本体の内部空間の上部から気体を排出する様に配管されていること。
(1−3)前記容器本体内の液面高さを計測する液面センサを備え、該液面センサの計測値に基づき、前記容器本体内の液面高さが所定高さに収束する様に前記ガス供給管の弁の開閉を実行する液面高さ制御手段を備えていること。
(1−4)前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったか否かを判定する判定手段を有し、該判定手段により、前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定されたときは、前記ガス排出管の弁を開放して容器本体内の気体の入れ換えを実行するガス抜き制御手段を備えていること。
【0008】
本発明の気液溶解装置によれば、液面高さ制御手段により、容器本体内には所定のガス成分を液体中に溶解させるのに十分な量の気体が充填された状態が維持される。これにより、液体中への気体の溶解能力が適切に維持される。ここでいう所定のガス成分の溶け込みは、容器内が(気体圧)>(液体圧)に維持されることにより、気体分子が液体分子の隙間に入り込む物理現象により進行する。このため、元々液体分子の隙間に入り込んでいた他の種類の気体が容器本体内に逃げ出してくる。そこで、本発明の装置では、ガス抜き制御手段により、容器本体内の気体中の所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったときは、ガス排出管の弁を開放して容器本体内の気体の入れ換えを行う。これにより、気体中の所定のガス成分濃度が高い状態にリセットされ、安定的に気体の溶け込みを継続することができる。
【0009】
ここで、本発明の気体溶解装置は、さらに、以下の構成をも備えることが望ましい。
(1−5)前記ガス抜き制御手段が作動しているときは、前記液面高さ制御手段を作動させない様にする制限手段を備えていること。
【0010】
(1−5)の構成をも備えることにより、制限手段が、ガス抜き制御手段が作動しているときは液面高さ制御手段を作動させない様にする。この結果、気体の入れ換えを無駄なく実行することができる。
【0011】
また、本発明の気体溶解装置においては、より具体的には、(1−4)の構成を以下の様に構成することができる。
(2−4)前記判定手段を、タイマーに設定した作動時刻が到来したときをもって前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。
【0012】
この気液溶解装置では、試運転等においてガス抜き制御を実行するタイミングをタイマーに設定しておく。
【0013】
また、本発明の気体溶解装置においては、より具体的には、(1−4)の構成を以下の様に構成することもできる。
(3−4)前記判定手段を、前記液体排出管から排出される液体中の所定のガス成分の濃度を計測する水中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件となったときを前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。
【0014】
この気液溶解装置では、水中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件、例えば、ガス成分濃度が所定値を下回ったとき、あるいはガス成分濃度が変化しなくなったときにガス抜き制御を実行する。
【0015】
また、本発明の気体溶解装置においては、より具体的には、(1−4)の構成を以下の様に構成することもできる。
(4−4)前記判定手段を、前記容器本体内の気体中の所定のガス成分の濃度を計測する気体中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件となったときを前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。
【0016】
この気液溶解装置では、気体中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件、例えば、溶解させようとするガス成分の濃度が所定値を下回ったとき、あるいは溶解によって液体中から逃げ出したガス成分の濃度が所定値を上回ったときにガス抜き制御を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、十分な量の気体を液体に溶解させた気体溶存液を安定的に製造し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の気液溶解装置を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【図2】実施例1の気液溶解装置の断面図である。
【図3】実施例1の気液溶解装置の制御ボックス内配線図である。
【図4】実施例1の気液溶解装置の作動状態を示す流れ図である。
【図5】実施例2の気液溶解装置の特徴的構成を示し、(A)は制御系統のブロック図、(B)はマイクロコンピュータが実行する演算処理プログラムの概要を示すフローチャートである。
【図6】実施例3の気液溶解装置の特徴的構成を示し、(A)は制御系統のブロック図、(B)はマイクロコンピュータが実行する演算処理プログラムの概要を示すフローチャートである。
【図7】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す具体的な実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1の気液溶解装置1は、図1に示す様に、容器本体2と、この容器本体2の天井部から容器内に気体を供給するガス供給管3と、同じく天井部から容器内の気体を排出するガス排出管4と、高さ方向の中程の側壁部から容器内に液体を注入する液体注入管5と、底部から容器内の液体を排出する液体排出管6とを備えている。なお、液体排出管6の反対側に設けられている配管7は、ドレン抜きのためのものである。また、図中、符号8はガス供給管3からのガス流量を計測する流量センサ、符号9は容器本体2の内圧を計測する圧力センサである。
【0021】
液体注入管5は、図2に示す様に、容器内の中心部まで水平に伸びた後、垂直上方に伸ばされ、容器の上部に向かって液体を吐出する様に、容器内で上方に屈曲され、先端に吐出ノズル5aを備えている。吐出ノズル5aは、図示の様に、先端に向かって径が小さくなる様に絞られたテーパ形状となっていて、吐出圧を高める構造となっている。なお、液体注入管5はポンプに接続されている。このポンプは、吐出圧0.1Mpaで、吐出量については本装置の使用目的等に応じて35L/min〜5ton/minの能力を有するものを使用する様にしている。また、ガス供給管3は0.2Mpaで容器本体内へと気体を送り込む様に供給圧を調整する供給圧調整機構を備えている。この結果、本実施例においては、気体圧は液体圧よりも0.1Mpa高い状態で容器内に進入し、容器内の液面を押し下げることとなる。
【0022】
容器本体2の内壁には、リング状の整流板11,12,13が取り付けられている。一番上の整流板11は、液体注入管5の吐出ノズル先端とほぼ同じ高さに取り付けられ、斜め下方向に傾斜した傾斜リングで構成されている。2番目の高さの整流板12は、一番上の整流板11と同一形状である。一方、一番下の整流板13は孔の縁がギザギザに切り欠かれた水平リングとなっていて、その平均内径は、上側の二つの整流板11,12よりも大きくなっている。上側の二つの整流板11,12が中心に向かって下り傾斜の上面としているので、湖沼等からポンプで吸い上げた水に混ざっている藻の切れ端などの浮遊物が斜面に沿って落下し、整流板11,12の上に堆積しない。なお、一番下の整流板13の中心孔の径を大きめにしているのは、液体が棒状になってカーテン状水幕を形成しなくなるのを防止するためである。そして、一番下の整流板13の孔の縁がギザギザに切り欠いてあるのは、より面積の大きい水幕を形成させるためである。なお、リング状整流板11,12,13が容器内壁面から中央に向かってせり出すことにより、容器内で液体が壁に沿って落下しない状態も形成されている。
【0023】
また、液体注入管5の垂直部分には、整流板11と整流板12の間、及び整流板12と整流板13の間に、それぞれ羽根突き整流板14,15が取り付けられている。2枚の羽根付き整流板14,15の羽根の傾斜方向は、互いに反対向きになる様に構成されている。羽根突き整流板14,15の各羽根は、根元から先端に近づくに従って傾斜角度が大きくなる様にひねりが加えられていて、船のスクリューの様に形成されている。この結果、羽根と羽根の水平方向及び垂直方向の隙間は、根元から先端に向かって次第に広くなっている。こうした構造的な特徴により、液体中の浮遊物は羽根の根元側に留まることなく羽根の先端側へと誘導されて液体と共に落下し、羽根の上には堆積したままにならない様になっている。
【0024】
これら整流板11〜15の作用により、液体注入管5の吐出ノズル5aから吐出された液体は、各整流板の上面に沿って流れると共にそれぞれの縁から垂直に落下し、カーテン状の水幕を形成しながら容器本体2の底へと落ちていく。このカーテン状の水幕が形成される結果、容器内では液体が、液体よりも0.03〜0.1Mpaだけ圧力が高い状態の気体に両面から挟まれた状態で広い面積にて接触し合って落下する状態が実現される。これにより、圧力の高い気体が水の分子間の隙間に入り込み、逆に水の分子間の隙間に入り込んでいた気体が追い出されて気体の置換が行われる。
【0025】
容器本体2の正面には、図1に示す様に、その上下が容器内に連通された垂直チューブ21が設置されている。この垂直チューブ21には液面センサ31が設置され、容器内の液面の高さを計測することができる様になっている。また、垂直チューブ21自体が半透明素材で製造されていて、目視によっても液面高さをおおよそ確認できる構造となっている。
【0026】
ガス供給管3及びガス排出管4は、それぞれ電磁弁32,33によって開閉される。ガス供給管3は、酸素ボンベや炭酸ガスボンベなど、液体中に溶け込ませたい気体を収納した気体供給源から容器内に気体を供給するための配管であり、ガス排出管4は、容器内の気体を大気中へ放出するための配管となっている。
【0027】
実施例1の気体溶解装置1は、これら電磁弁32,33の開閉状態を制御操作するための制御ボックス50を備えている。
【0028】
制御ボックス50には、図3に示す様に、入力端子51,52から単相100〜200Vが導入され、電磁弁32,33へと駆動電力を供給する出力端子53〜56へと電源を供給して弁の開閉制御を行うための制御回路60が備えられている。出力端子53,55は、ガス抜き用電磁弁33へと駆動電流を出力するためのもので、出力端子54,56は、ガス供給用電磁弁32へと駆動電流を出力するためのものである。この制御回路60には、電源供給ユニットPSと、液面センサ31と、タイマーT1〜T3と、リレーX1,X2とが組み込まれている。電源供給ユニットPSは、入力端子51,52から入力された交流電源を直流24Vに変換するためのものである。タイマーT1は24時間タイマーであって、設定した時刻になると信号を出力するタイプのものである。一方、タイマーT2,T3は、例えば15秒といった設定時間を計時したときに信号を出力するタイプのものである。
【0029】
この制御回路60では、液面センサ31の計測値が上限側設定値を上回っているときは、リレーX1が作動して接点P1,P5,P6を閉じる。これにより、ガス供給用電磁弁32がオンとなって気体供給源からの気体供給が実行される。この結果、液面は気体によって押し下げられる。そして、液面センサ31の計測値が下限側設定値を下回ったときにタイマーT2が作動する。このタイマーT2がタイムアップすると、リレーX1が解除となり、接点P1,P5,P6が開放されてガス供給用電磁弁32がオフとなる。これにより、液面が所定の上限値を超えると気体が供給され始め、その結果液面が押し下げられて所定の下限値をさらにアンダーシュートした状態まで液面が下がったところで気体の供給が停止されることにより、液面を、ある範囲内に収束せる制御が自動的に実行される。
【0030】
電源供給ユニットPSと入力端子51,52の間に設けられた24時間タイマーT1は、例えば、1時間に一回、あるいは2時間に1回など、後述するガス抜き動作を実行させるタイミングを設定するためのものである。各種条件に対応させる意味から、例えば、15分単位でタイミングの設定が可能なものを用いるとよい。このタイマーT1が作動すると接点P3が閉じてガス抜きタイマーT3が作動する。このガス抜きタイマーT3は、例えば15秒等の一定時間でタイムアップする。このタイマーT3が作動している間はガス抜き用リレーX2が作動して接点P4が閉じられる。これにより、ガス抜き用電磁弁31へと電力が供給されて開放状態となり、容器内のガスが排出される。一方、ガス抜き用リレーX2が作動すると、ガス供給用リレーX1は強制的に作動が制限され、接点P1,P5,P6は閉じることができなくなる。この結果、ガス抜き動作中にガス排出に伴って液面高さが上昇してガス供給用リレーX1への作動指令が出力されたとしても、リレーX1の作動が制限されているため、ガス供給用の電磁弁32は閉じたままにされる。
【0031】
液体注入管5は常時駆動を基本とするポンプによって湖沼・河川・タンクなどから水を汲み上げている。そして、液体排出管6は、水を汲み上げた湖沼等へと戻すクローズドサイクル、もしくは別の湖沼・河川・タンクなどへ水を送り出すワンウェイサイクルを構成する様に設置される。
【0032】
次に、本実施例の装置による気体溶解処理の流れについて説明する。図4に示す様に、ポンプを駆動して容器本体2内へと湖沼等から汲み上げた水の注入を開始する(S1)。このとき、ガス抜き用電磁弁32は手動操作で開放状態としておく。垂直チューブ21の目視による液面高さが満水状態まで上昇したら、手動操作によってガス抜き用電磁弁32を閉じると共に、制御ボックス50のスイッチをオンにする(S2)。すると、液面センサ31は上限値H1を超えているという信号を出力するので(S3:YES)、ガス供給用リレーX1が作動して接点P1,P5,P6が閉じた状態となり、ガス供給用電磁弁32への通電が実行され、ガス供給源から気体が容器本体2内へと供給される(S4)。これによって、満水状態となった容器内には、液体よりも圧力の高い気体が供給されることで液面が徐々に押し下げられていく。そして、液面センサ31の計測値が設定した下限値H2になると(S5:YES)、タイマーT2が作動する。そして、タイマーT2がタイムアップすると(S6:YES)、ガス供給用リレーX1が解除され、接点P1,P5,P6が開放される。この結果、容器内は、液面は下限値より下がった状態で、気体の圧力が大気圧よりも0.05Mpa〜0.1Mpa高くなった状態を形成する。液体と気体の圧力差があることで、液体中の分子の隙間に気体分子が入り込む。容器内の気体の量は、ガス供給用電磁弁32を閉じた時点から増加しないから、液体中に入り込んだ分だけ液面が上昇していく。
【0033】
そして、再び液面センサ31の計測値が上限側H1に達すると、ガス供給用リレーX1が作動して気体が容器本体2内へと供給され、液面が徐々に押し下げられて下限値H2になるとタイマーT2が作動し、タイマーT2がタイムアップすると気体の供給が停止される。こうして、容器内では、液面が下限値H2より所定量下がった状態と上限値H1との間に収束させられつつ、気体の液体への混入が行われる。
【0034】
本装置は、例えば、高圧酸素ボンベから供給される高濃度酸素を用いて湖沼等の水を浄化する場合、カーテン状水幕として落下する湖沼等の水に高濃度酸素が水幕を両面から押圧する様に接触し、0.05Mpa〜0.1Mpaの圧力差により、水中に溶存している窒素等と酸素とのガス同士の置換し、水中の酸素溶存濃度を高めて水質を浄化するといった用途に用いることができる。そして、容器本体2の内部で酸素溶存濃度が高まった水が生成され、液体排出管6から再び湖沼等へと戻され、湖沼等の水質改善が実施される。なお、容器内の圧力はポンプの能力とガス供給管3の吐出圧設定条件とに依存し、液体排出管6のバルブ開度を調整することで、0.05Mpa〜0.1Mpaの範囲内に収まる様に調整して運転を行えばよい。
【0035】
一方、24時間タイマーT1がガス抜きタイミングを示す時刻を示すと(S7:YES)、接点P3が閉じてガス抜きタイマーT3が作動する(S8)。これに伴って、ガス排出用リレーX2が一定時間作動し、接点P4が閉じられると共に、ガス供給用リレーX1は作動制限された状態となる(S10)。これにより、ガス抜き用電磁弁33へと電力が供給されてガス排出管4が開放された状態となり、容器内のガスが排出される。このガスの排出に伴って液面高さが上昇したとしても、ガス供給用リレーX1の作動制限が作用している結果、ガス供給用電磁弁32は閉じたままに維持される。
【0036】
この状態は、タイマーT3がタイムアップするまで維持される(S11:NO)。そして、タイマーT3がタイムアップすると(S11:YES)、ガス供給用リレーX1に対する作動制限は解かれ、接点P4は開放される(S12)。このガス抜き動作によって液面が上昇した結果、直ちにガス供給用リレーX1が通常動作を行うこととなり、ガス供給用電磁弁32が開放される。
【0037】
この24時間タイマーT1の作動に伴うガス抜きは、液体中から容器内に逃げ出した被置換ガス(例えば、窒素)により、容器内の置換目的ガス(例えば、酸素)の濃度が低下した状態を解消し、置換目的ガスの濃度が高い状態での装置の作動を実現している。また、この実施例では、運転開始時に容器内を満水状態として容器内の気体をいるので、置換目的ガスの濃度が高い状態で運転を開始することができる。また、本実施例では図3に示した様な制御回路を用いているので、ガス供給条件において24時間タイマーが設定時刻の到来を通知したときは、ガス供給動作はリレーX2によるリレーX1の作動制限によって中断される。
【実施例2】
【0038】
実施例2の気液溶解装置1は、実施例1と同様の容器本体、配管を備えている点で構成を共通にする。この実施例の特徴は、タイマー制御ではなく、マイコン制御によって電磁弁32,33の開閉タイミングを制御している点で、実施例1と相違し、その制御系統は図5(A)に示す構成となっている。
【0039】
図5(A)に示す様に、マイクロコンピュータ70は、液面センサ31、水中酸素濃度センサ71から検出信号を入力し、ガス供給用電磁弁32及びガス抜き用電磁弁33に対して作動指令を出力する様に構成されている。ここで、水中酸素濃度センサ71は、液体排出管6から排出される水の酸素濃度を計測する様に設置する。
【0040】
実施例2の装置のマイクロコンピュータ70は、図5(B)に示す様な制御プログラムに従って制御処理を実行する構成となっている。なお、この実施例においても、運転中は、ポンプによって湖沼等から汲み上げた水が容器本体へと注入され、液体排出管を介して排出される状態となっている。
【0041】
マイクロコンピュータ70は、液面センサ31から入力される検出値SHが所定の設定値Hを越えたか否かを判定する(S21)。検出値SHが設定値Hを越えたと判定された場合は(S21:YES)、ガス供給用電磁弁32に対して開放動作を実行させるための指令を出力する(S22)。この指令は、液面高さの検出値SHが設定値Hを下回るまで続行される(S23:NO→S22)。液面高さの検出値SHが設定値Hを下回る状態になった後は(S23:YES)、水中酸素濃度センサ71からの検出信号SOWを入力し(S24)、その値が設定値OWよりも小さくなったか否かを判定する(S25)。水中酸素濃度SOWが設定値OWよりも小さくなっていないと判定されているときは(S25:NO)、S21へ戻る。
【0042】
一方、水中酸素濃度SOWが設定値OWよりも小さくなったと判定されたときは(S25:YES)、ガス抜き用電磁弁33に対して開放動作を実行させるための指令を出力する(S26)。このガス抜き用電磁弁33に対する開放動作指令は、一定時間が経過するまで続行され(S27:NO→S26)、一定時間経過に伴って停止され(S27:YES)、S21へと戻る。
【0043】
この様な制御処理を繰り返すことにより、容器本体2の内部は、液面高さが設定値H付近に収束され、容器内が大気圧よりも0.05Mpa〜0.1Mpa高くなった状態で酸素と水が接触されて水中に溶存している窒素等と酸素とのガスの置換がなされ、水中の酸素溶存濃度が高まる。一方、水中の窒素等が容器内に逃げ出す結果、気体中の酸素濃度が低下して酸素の溶解能力が低下すると、水中の酸素濃度変化量△SOWが小さくなる。そして、最終的には効率的に酸素を溶解させることができ難くなる。この状態になったことをS41以下の演算処理で判定し、ガス抜きを実行して容器内のガスを酸素濃度の十分に高い状態に戻す。これにより、酸素の溶解能力を低下させることなく水中酸素濃度を高める処理が実行される。
【0044】
なお、実施例2においても、図5(B)のフローチャートから理解される様に、ガス抜き処理を開始した場合は、当該処理が終わるまでS31へは戻らないから、実施例1と同様に、ガス抜きによる液面上昇が生じてもガス供給用電磁弁32は閉じたままとされる。
【実施例3】
【0045】
実施例3の気液溶解装置1は、実施例2と類似しているが、ガス抜きタイミングを決定するための構成機器として、容器内のガスの酸素濃度を検出する気体中酸素濃度センサ72を用いる点が相違している。
【0046】
その制御系統は図6(A)に示す構成となっていて、マイクロコンピュータ70は、液面センサ31、気体中酸素濃度センサ72から検出信号を入力し、ガス供給用電磁弁32及びガス抜き用電磁弁33に対して作動指令を出力する様に構成されている。
【0047】
実施例3の装置のマイクロコンピュータ70は、図6(B)に示す様な制御プログラムに従って制御処理を実行する構成となっている。なお、この実施例においても、運転中は、ポンプによって湖沼等から汲み上げた水が容器本体へと注入され、液体排出管を介して排出される状態となっている。
【0048】
マイクロコンピュータ70は、液面センサ31から入力される検出値SHが所定の設定値Hを越えたか否かを判定する(S31)。検出値SHが設定値Hを越えたと判定された場合は(S31:YES)、ガス供給用電磁弁32に対して開放動作を実行させるための指令を出力する(S32)。この指令は、液面高さの検出値SHが設定値Hを下回るまで続行される(S33:NO→S32)。液面高さの検出値SHが設定値Hを下回る状態になった後は(S33:YES)、気体中酸素濃度センサ72からの検出信号SOGを入力し(S34)、その値が設定値OGよりも小さくなったか否かを判定する(S35)。気体中酸素濃度SOGが設定値OGよりも小さくなっていないと判定されているときは(S35:NO)、S31へ戻る。
【0049】
一方、気体中酸素濃度SOGが設定値OGよりも小さくなったと判定されたときは(S35:YES)、ガス抜き用電磁弁33に対して開放動作を実行させるための指令を出力する(S36)。このガス抜き用電磁弁33に対する開放動作指令は、一定時間が経過するまで続行され(S37:NO→S36)、一定時間経過に伴って停止され(S378:YES)、S31へと戻る。
【0050】
この様な制御処理を繰り返すことにより、実施例1,2と同様に、容器本体2の内部は液面高さが設定値H付近に収束され、容器内が大気圧よりも0.05Mpa〜0.1Mpa高くなった状態で酸素と水が接触されて水中に溶存している窒素等と酸素とのガスの置換がなされ、水中の酸素溶存濃度が高まる。一方、水中の窒素等が容器内に逃げ出す結果、気体中の酸素濃度が低下して酸素の溶解能力が低下するとガス抜きを実行して容器内のガスを酸素濃度の十分に高い状態に戻す。これにより、酸素の溶解能力を低下させることなく水中酸素濃度を高める処理が実行される。
【0051】
この実施例3においても、図8のフローチャートから理解される様に、ガス抜き処理を開始した場合は、当該処理が終わるまでS51へは戻らないから、実施例1,2と同様に、ガス抜きによる液面上昇が生じてもガス供給用電磁弁32は閉じたままとされる。
【0052】
以上、発明を実施するための実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、海水中に窒素を溶解させる様に、海水を入れた海藻培養タンクと本発明装置との間で海水を循環させたクローズドサイクルを構成し、気体供給源として窒素ガスボンベを備えさせ、センサを用いてガス抜きタイミングを判定する場合には窒素濃度を計測する様に構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
湖沼・河川等の水の浄化、魚介類の養殖池の水質管理、藻類培養タンクの水質管理などに利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・気液溶解装置
2・・・容器本体
3・・・ガス供給管
4・・・ガス排出管
5・・・液体注入管
5a・・・吐出ノズル
6・・・液体排出管
7・・・ドレン抜き
8・・・流量センサ
9・・・圧力センサ
11,12,13・・・リング状の整流板
14,15・・・羽根突き整流板
21・・・垂直チューブ
31・・・液面センサ
32・・・ガス供給用電磁弁
33・・・ガス抜き用電磁弁
50・・・制御ボックス
51,52・・・入力端子
53〜56・・・出力端子
60・・・制御回路
70・・・マイクロコンピュータ
71・・・水中酸素濃度センサ
72・・・気体中酸素濃度センサ
PS・・・電源供給ユニット
T1〜T3・・・タイマ
X1,X2・・・リレー
P1〜P6・・・接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管、ガス排出管、液体注入管及び液体排出管が配管されている容器本体を備え、容器内において前記ガス供給管から供給された気体の圧力を前記液体注入管から注入された液体の圧力より高く維持することで気体と液体の圧力差により気体中の所定のガス成分を液体中に溶け込ませる装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする気体溶解装置。
(1−1)前記液体注入管はポンプに接続され、該ポンプを駆動することによって前記容器本体の内部空間の上部へ液体を吐出する様に配管され、前記液体排出管は前記容器本体の底部から液体を排出する様に配管されていること。
(1−2)前記ガス供給管はガス供給源に接続され、弁を開放したときに前記容器本体の内部空間の上部から気体を供給する様に配管され、前記ガス排出管は弁を開放したときに前記容器本体の内部空間の上部から気体を排出する様に配管されていること。
(1−3)前記容器本体内の液面高さを計測する液面センサを備え、該液面センサの計測値に基づき、前記容器本体内の液面高さが所定高さに収束する様に前記ガス供給管の弁の開閉を実行する液面高さ制御手段を備えていること。
(1−4)前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったか否かを判定する判定手段を有し、該判定手段により、前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定されたときは、前記ガス排出管の弁を開放して容器本体内の気体の入れ換えを実行するガス抜き制御手段を備えていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1記載の気体溶解装置。
(1−5)前記ガス抜き制御手段が作動しているときは、前記液面高さ制御手段を作動させない様にする制限手段を備えていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の気体溶解装置。
(2−4)前記判定手段を、タイマーに設定した作動時刻が到来したときをもって前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の気体溶解装置。
(3−4)前記判定手段を、前記液体排出管から排出される液体中の所定のガス成分の濃度を計測する水中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件となったときを前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の気体溶解装置。
(4−4)前記判定手段を、前記容器本体内の気体中の所定のガス成分の濃度を計測する気体中ガス成分濃度センサによる計測結果が所定条件となったときを前記容器本体内の気体中の前記所定のガス成分の濃度が所定条件を下回る状態となったと判定する手段として構成すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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