気体透過性物質を利用する細胞を培養する方法及び装置
【課題】細胞培養のための気体透過性装置及び方法を提供する。
【解決手段】複数の高さに培地を有し、且つ培地容積に対する気体透過性表面領域の或る割合を有する、細胞培養装置及び細胞培養方法を含む。これらの装置及び方法は、細胞培養効率及びスケールアップ効率を改善することを可能にする。
【解決手段】複数の高さに培地を有し、且つ培地容積に対する気体透過性表面領域の或る割合を有する、細胞培養装置及び細胞培養方法を含む。これらの装置及び方法は、細胞培養効率及びスケールアップ効率を改善することを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、細胞培養効率を改善する方法及び装置に関する。これらの方法及び装置は、気体交換のために気体透過性物質を利用し、細胞培養倍地の高さの増大を可能にし、気体透過性装置の培地容積許容積(volume capacity :容積容量)に対する表面積の割合を減少させ、且つ従来の細胞サポートスカフォールドを一体化する。さまざまな利益が当然得られ、それらの利益には在庫品用空間、インキュベータ用空間、廃棄用空間及び労力のより効率的な使用、並びに混入の危険性の減少が含まれる。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2003年10月8日付けで出願された米国仮出願第60/509,651号(その全体が参照により本明細書中に援用される)の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
[関連技術において記載される従来技術の制限の考察]
細胞の培養は、バイオテクノロジーの重要な要素である。細胞は、研究段階の間は少量で培養され、そして、通常、培養の規模は、研究がその目的であるヒト及び動物の保健医療に利益を与えることに移行するにしたがって増大する。この規模の増大は、しばしば、スケールアップと称される。或る装置及び方法は、広範な細胞型を培養することを可能にするとして、研究段階の細胞培養に関して十分に確立されており、したがって、最も幅広い対象に対して有用である。これらの装置は、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、ローラボトル及び細胞培養用バッグを含む。残念ながら、これらの装置は非効率的であり、これらはスケールアップ時の労力、混入の危険性及び費用の観点で、より非効率的にさえなる。研究及びスケールアップ効率を改善する、スケールアップを研究し且つ維持する、代替的な装置及び方法を作製することが必要とされている。本考察は、従来技術における制限の多くを特定し、以下により詳細に記載される解決策を示す。
【0004】
研究規模の細胞培養に重要な1つの寄与要因は、複雑性のレベルが低いことである。複雑性を最小限にする装置は、細胞培養培地を混合又は潅流させる補助器材を必要としない。これらはしばしば、静止装置(static device )と称される。静止装置は、2つの広義のカテゴリー、すなわち1)気体透過性ではなく、気体/液体界面を利用して細胞に酸素添加する装置、及び2)気体透過性であり、装置ハウジングを介する気体移動(gas transfer)を利用して細胞に酸素添加する装置にさらに分けることができる。従来のペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、及びマルチシェルフ組織培養フラスコが、第1のカテゴリーに含まれる。細胞培養用バッグ及び区画化(compartmentalized )フラスコが、第2のカテゴリーに含まれる。これらの静止装置の全ては、さまざまな理由(培地が存在することのできる高さの制限を含む)から非効率的である。
【0005】
培地の高さは、ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ及びマルチシェルフ組織培養フラスコにおいて、気体交換を供する方法に応じて制限される。細胞の要求を満たすために、酸素は気体/液体界面から、装置のうち細胞が存在する下方(下部)表面に拡散しなければならない。十分な酸素供給を確保するために、これらの装置における使用に関して推奨される細胞培養培地の最大高さは、約3mmである。
【0006】
制限された培養培地の高さは不利益をもたらす。制限された培養培地の高さは、少量の細胞しかサポートすることができない少量の培地容積となる。培地は、培養を維持するために連続的に除去及び添加されなくてはならず、これは、取り扱い頻度、労力及び混入の危険性を増加させる。装置においてより多くの細胞を培養するためのただ1つの方法は、
この装置の設置面積を大きくすることで、より多くの培地を存在させることができるというものである。大きい設置面積を有する装置の作製は製造の見地から困難であり、典型的なインキュベータ及びフローフードにおいて利用可能な制限された空間量を直ちに大きくし、装置の取り扱いをより難しくする。したがって、市販の細胞培養装置は小さい。このように、培養のスケールアップは、複数の装置を使用すること、又はより精巧な、複雑な、且つ費用のかかる代替品を用いることが必要である。
【0007】
組織培養フラスコは、機能するために気体/液体界面依存型の静止装置固有の問題の良い例を提供する。組織培養フラスコは、細胞を、通常25cm2〜225cm2の範囲の面積を有する面に存在させる。組織培養フラスコに推奨される培地の高さは、2mm〜3mmである。例えば、コーニング(Corning )(登録商標)は、そのT−225cm2フラスコに関して、45ml〜67.5mlの作業容積を推奨している。したがって、1,000mlの培養には、15〜22個の間のT−225cm2フラスコを必要とする。これは、労力及び混入の危険性の増加につながる、15〜22個の装置を培養に必要とするだけではなく、フラスコが約95%の気体と5%のみの培地を保持する様式に設計されているため、非常に非効率的な空間使用も生じさせる。例えば、典型的なT−175フラスコの本体は、およそ長さ23cm×幅11cmの設置面積を有し、約3.7cmの高さであり、したがって、約936cm3の空間を占める。しかし、このフラスコは通常、約50ml未満の培地しか扱わない。したがって、本体中に存在する培地(50ml)は、本体(936cm3)が占める空間に対して、フラスコの内容物の95%近くが気体にすぎないことを示す。この非効率的な空間使用は、貴重なインキュベータ用空間を無駄にすることに加えて、出荷(shipping)、滅菌、保管及び廃棄の費用を増大させる。
【0008】
別の一般的に使用される研究規模の細胞培養装置は、マルチウェル組織培養プレートである。従来の組織培養フラスコと同様に、気体/液体界面を、各ウェルの底からわずか2mm〜3mmの高さに維持することは、標準的な操作手順である。プレートを細胞培養研究室内のあちこちに移動させる時にこぼすこと(spillage)からの保護を提供するために、典型的な市販の96ウェル組織培養プレートの各ウェルは約9mmの深さである。この深さは、6ウェル組織培養プレートに関しては最大約18mmまで増える。96ウェルプレートの場合、気体は各ウェルの約75%を占め、培地は各ウェルの約25%を占める。6ウェルプレートの場合には、気体は各ウェルの約95%を占め、培地は各ウェルの約5%を占める。この非効率的な形状は、装置の出荷、滅菌、保管及び廃棄の費用を増大させる。
【0009】
多くの用途において、小容積の培地を除去及び置換することにより培地に頻繁に栄養供給する必要性は、問題となり得る。例えば、マルチウェル組織培養プレートの目的が実験を実施することである場合、培地を処理することはこれらの実験の結果に影響を与えかねない。また、培地容積が非常に小さいため、溶質濃度の好ましくない変化がごく少量の蒸発とともに起こり得る。細胞培養機能を損失することなく、培地が増大した高さで存在することを可能にするマルチウェル組織培養プレートは、培養を生かし続けるのに必要な操作を最小限にすることにより、且つ、蒸発により生じる濃度変化の程度を減少させることにより、従来のプレートに勝るであろう。
【0010】
頻繁な培地交換は、時間がかかること、費用がかかることでもあり、混入の危険性が増加することにつながる。特殊な液体取り扱い器材(マルチチャネルピペット等)によりこの問題を緩和する試みは、問題の発生源、すなわち培地の高さが低いことに対処していない。最良の解決策は、より多くの培地を各ウェル内に存在させることである。残念ながら、この解決策は、気体/液体界面を利用する気体交換の必要性のため、従来のプレートでは可能ではなかった。
【0011】
従来の装置に対するより良い代替品が必要とされている。組織培養装置が、機能するために気体/液体界面にだけに頼るのではなく、従来のフラスコ及びマルチウェルプレートのように使用が容易であり、同じ設置面積を有する装置においてより多くの細胞を培養することが可能であり、且つ容易に、且つ直線的にスケーリング可能ならば、効率的な利得は、ヒト及び動物の保健医療を進歩させるために使用するこれらの細胞に関する費用の削減に変わるであろう。本明細書中において、気体透過性物質がいかにして使用されるか、且つ、新規な構成がこの目的をいかにして達成することができるかが示されるであろう。
【0012】
気体交換の単一源としての気体/液体界面を排除する細胞培養装置が提案され、市場に参入している。このアプローチは、下方気体透過性膜の使用に頼って、培地の底に気体交換をもたらす。気体/液体界面に対する単一依存とは対照的に、これはより多くの気体移動を可能にする。提案された装置及び市販の装置は、細胞培養用バッグ、区画化気体透過性フラスコ、気体透過性カートリッジ、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート及び気体透過性ローラボトルを含む。
【0013】
残念ながら、各気体透過性装置は、固有の非効率性及びスケールアップ欠点を有する。細胞培養用バッグ、気体透過性カートリッジ、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート、区画化気体透過性フラスコ及び気体透過性ローラボトルの主な制限は、培地の高さの制限、培地容積に対する過剰な気体透過性表面積の割合、及び接着細胞を培養するのに不適な形状を含む。この結果、多数の装置に必要とされるスケールアップを強制し、装置設計選択肢を制限し、且つ、スケールアップが起こるにつれて費用及び複雑性を増加させることになる。
【0014】
気体透過性装置を取り巻く先行技術の綿密な検討は、従来の見識(conventional wisdom )及び装置設計が、いかにして培地の高さ及び装置内に存在する培地の容積を制限するかを示す。1976年の非特許文献1において、気体透過性膜で作製された密封容器の操作の仮説が分析されている。イェンセン(Jensen) 他は、培地中における溶質輸送の形態としての拡散を記載しており、この論文は「拡散はフィックの法則に従って進行する」と述べている。イェンセン他は、「(イェンセン他の)図2は、気体透過性物質で作製されたバッグにおいて培養された細胞の拡散特性を示す」と述べている。本明細書中における図1Aは、イェンセン他の図2を示し、ここでDcmは培地の拡散係数である。本明細書中における図1Bは、イェンセン他の図3を示し、ここで、気体透過性容器におけるPO2及びPCO2に対する定常値モデルは、拡散に基づく培地全体の直線衰退として示される。
【0015】
1977年に、イェンセン(非特許文献2)は、「気体透過性、非多孔性プラスチックフィルム」を使用して細胞培養装置を形成する「主要な技術革新(innovation)」を記載している。本明細書中における図2は、イェンセンの図2を示す。本明細書中における図2に示されるように、装置は、非常に低い高さの培地(わずか0.76mm)、及び培地容積に対する非常に高い気体透過性表面の割合を作り出した。スケールアップに関して、装置は約914.4cm(30フィート)の長さを得、特別注文の器材を使用して潅流される。
【0016】
1981年に、イェンセン(非特許文献3)は、「培養槽設計は、培養される細胞全てに固定され、且つ一定である小さな拡散距離を組込まなければならない。この設計は、培養をスケールアップさせることがこの拡散距離を変化させないようでなければならない」と具体的に記述している。実際、培地は気体透過性膜から非常に離れた高さで存在するべきではないとする従来の見識は今日も存続しており、気体透過性物質を利用する市販製品及びこれらに関連する特許から明らかである。さらに、培地容積に対する高い気体透過性表面の割合も存続している。
【0017】
さまざまな気体透過性細胞培養装置が、1981年以降、市場に参入し、提案されてきた。しかし、主要な設計要素としての拡散に対する継続的な信頼は、特許、装置設計、装置仕様及び気体透過性装置に関する操作指示書の総説に基づく場合であるように見える。設計基準として、拡散モデルは、培地の高さを制限し、培地容積に対する高い気体透過性表面の割合を導き、且つ非効率的な装置形状に寄与する。
【0018】
バッグ形態の市販の気体透過性細胞培養装置は、現在、細胞培養に関して使用される標準的な装置フォーマットである。イェンセンの構成のように、これらの製品は、培地の下方面及び上方面を介した気体交換を、気体透過性物質を介して可能にする。イェンセンによって提示された装置とは異なり、潅流は必要ない。通常、これらは潅流されず、細胞培養インキュベータ内に存在する。このことは、費用及び複雑性を減少させ、且つこれらの装置を市場に受け入れられる装置にする。しかし、細胞培養培地が気体透過性膜間に存在する時の気体透過性膜間の制限された距離は、これらの装置を、効率的なスケールアップに関して形状的に不適切にする影響を及ぼす。より多くの培地が必要となると、バッグの大きさは水平方向に比例的に増大しなくてはならない。したがって、これらは通常、2リットルを超える大きさでは不可能であり、多数の装置をスケールアップさせることを必要とする。さらに、これらは、従来の装置において使用される標準的な液体取り扱いツールと適合しておらず、そのため、研究規模の培養を実施するのに一定レベルの複雑性をもたらす。
【0019】
バッグは、気体透過性フィルムの2つのシートをともに積層させることにより製造される。典型的なバッグの断面が、特許文献1から抜粋した図3に示され、これはSi‐Culture(商標)バッグ(メドトロニック社(Medtronic Inc.))として商品化されている。従来の静止細胞培養装置の有益な特徴は、細胞が存在する領域での培地の均一な分布である。当業者は特に、培地が装置全体を通して一定の高さで存在することを確実にする目的でインキュベータを同じ高さにすることに多大な注意を払う。図3のバッグの断面を見ることにより、たとえインキュベータがどのような高さであっても培地がいかにして、全ての下方気体透過性フィルム上に均一な高さで存在しないかが分かる。フィルム同士はその周辺で噛み合うため、培地は、その周辺近くでは、バッグの他の部分とは異なる高さで存在することを余儀なくされる。培地容積が増加するに従って、バッグは円筒形状をとり始め、培地分布は悪化する。細胞は、不均一形状に応じて、潜在的な栄養素勾配を受け得る。多すぎる培地がバッグ中に存在する場合、下方面は非水平状態で存在するであろう。これもまた問題となる。バッグ中に存在する懸濁細胞は、均一に分布しないであろう。代わりに、細胞は、低い位置に重力により沈み、積み重なり、この積み重なり内に栄養素及び酸素の勾配が形成されるに従い死ぬであろう。接着細胞の場合、これらは均一に播種されないが、これは、バッグの各部分に存在する種菌(inoculum)の量が変わるであろうためである。バッグがいっぱいになりすぎると生じる形状的な問題に加え、1,000mlを超える培地の重量も、特許文献1に記載されるように、バッグに損傷を与える可能性がある。バッグの形状的な制限を克服したとしても、バッグ及び他の気体透過性装置に関する指示書及び特許は、培地が非常に高すぎて存在するときに、拡散障壁は装置が機能することを妨げるという所見に基づいて制限が存在することを示す。
【0020】
細胞培養用バッグは、オリゲンバイオメディカルグループ(OriGen Biomedical Group )(OriGenPermaLife(商標)バッグ)、バクスターインターナショナル社(Baxter)(特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に関連するLifecell(登録商品)X−Fold(商標))、メドトロニック社(Si−Culture(商標)、特許文献1)、バイオベクトラ社(Biovectra )(VectraCell(商標))及びアメリカンフルオロシール社(American Fluoroseal )(特許文献6及びと特許文献7に含まれる、VueLife(商標)培養バッグシステム)から市販されてい
る。仕様書、操作指示書及び/又は特許は、各製品に対する培地の高さ及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を決定する。
【0021】
パティリョ(Pattillo)他(バクスターインターナショナル社(Baxter InternationalInc. )に譲渡された特許文献2及び特許文献3)は、典型的なバッグは、「全容積の約
1/4〜1/2を満たされて、培地及び細胞の容積の比較的高い内表面積比を提供し、それにより十分な酸素がバッグ内で拡散し、且つ二酸化炭素がバッグの外に拡散することで細胞の代謝及び増殖を容易にすることができる」と記述している。パティリョ他の観点から、バクスターインターナショナル社製のLifecell(登録商標)X−Fold(商標)バッグに関して実現される最適な培地高は、その600cm2バッグに対するものであって、1.0cm〜2.0cmの培地の高さ、及び、2.0cm2/ml〜1.0cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を与える。
【0022】
VectraCell(商標)バッグに関する製品チラシ(product literature:製品資料)は、「VectraCellの1L容器は最大500mLまでの培地を保持することができる。VectraCellの3L容器は最大1,500mLまでの培地を保持することができる」と記述している。したがって、バクスターインターナショナル社製のバッグと同様に、最大培地容量は、バッグの全容量の1/2である。売り出されているさまざまなバッグの大きさのうち、3Lバッグが最も高い培地高(1.92cm)を可能とし、且つ、培地容積に対する最も低い気体透過性表面積の割合(1.04cm2/ml)を有する。
【0023】
培地が物理的に混合するオービタルシェーカに存在する場合、Si−Culture(商標)バッグに関して、1.6cmの培地高が、製品チラシにおいて推奨されており、特許文献1において明記されている。これは、混合環境において使用される場合、1.25cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。混合は通常、拡散勾配を崩壊させるために、且つ溶質移動を高めるために使用されるため、当業者は、培地の高さはバッグがオービタルシェーカに置かれていない場合に低減されるべきであることを、結論付けるであろう。
【0024】
VueLife(商標)バッグに関する製品チラシは、VueLife(商標)培養バッグを1センチメートル未満の厚さの高さの培地で満たすことを特に推奨しているが、これは、「さらなる培地は、栄養素又は気体拡散を妨害し得る」からである。したがって、拡散に関する懸念は、VueLife(商標)バッグにおける培地の高さを制限する。これは、1.0cmの高さの培地で、2.0cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。
【0025】
OriGenPermaLife(商標)バッグに関する製品チラシは、1.0cm(VueLife(商標)バッグと同じ高さ)の高さの培地での呼び容積(nominal volume)を明記している。売り出されているさまざまなPermaLife(商標)バッグのうち、これらの120mlバッグが、1.8cm2/mlの、培地容積に対する最も低い気体透過性表面積の割合を与える。
【0026】
制限された培地の高さの最終的な結果は、これらの製品を使用した培養のスケールアップは非実用的であるということである。例えば、LifecellX−Fold(商標)バッグが、10Lの培地を2.0cmの培地高で含有し得るようにスケールアップされるのならば、この設置面積は少なくとも5,000cm2でなくてはならないであろう。この扱いにくい形状だけではなく、設置面積は直ちに、標準的な細胞培養インキュベータを規格外に大きくさせる(outsize )ため、特別注文のインキュベータが必要となり得る。また、これらの構成の全ては、気体移動に関してバッグの上方面及び下方面の両方に頼っ
ているため、バッグ内で使用される気体移動面積は必要以上に大きくなる。
【0027】
この非実用的な形状は、市販されているバッグの大きさを制限してきた。各供給業者からの最も大きなバッグに対して推奨される培地容積は、振とうする場合、OriGenPermaLife(商標)バッグに関しては220ml、VueLife(商標)バッグに関しては730ml、Lifecell(登録商標)X−Fold(商標)バッグに関しては1,000ml、VectraCell(商標)バッグに関しては1,500ml、及びSi−Culture(商標)バッグに関しては2,000mlである。したがって、スケールアップは、多数の個別のバッグの使用を必要とするため、労力及び混入の危険性の増加を含むさまざまな理由によって非効率的なプロセスとなる。
【0028】
細胞培養用バッグに伴なう別の欠点は、従来のフラスコのように使用が容易ではないということである。細胞培養用バッグの中及び外への液体の輸送は困難である。細胞培養用バッグは、シリンジ、針又はポンプ配管と噛み合うようになっている配管接合部を備えて構成されている。これは閉鎖系操作に適しているが、研究規模の培養には適さず、ピペットの使用が、より容易であるとともにより一般的な、液体を取り扱う方法である。ピペットを使用することができないことは、バッグに添加又は除去される培地の所望量が、典型的な太さのシリンジの60ml容積を超える場合、非常に不都合である。この場合、シリンジは、60mlの輸送ごとに、配管に対し接続及び取り外しを行わなければならない。例えば、600mlを含有するバッグは、60mlシリンジでは最大10回の接続及び10回の取り外しを必要とするため、バッグを取り扱う時間及び混入の可能性を増加させるであろう。接続回数を最小限にするために、ポンプを使用して培地を輸送することができる。しかし、これは小規模の培養に対して費用を追加させるとともに複雑性を与える。細胞培養用バッグを利用する多くのハイブリドーマコアラボラトリー(hybridoma core laboratories )は、準備時に一度バッグを満たし、これらの接続により生じる混入の高い危険性及びポンプの複雑性のために、再び細胞を供給することはない。
【0029】
マツミヤ(Matsumiya )他(特許文献8)は、液体輸送の問題を、バッグと培地保管室とを一体化することによりなくすことを試みている。培養室及び培地保管室を接続し、新鮮な培地が必要となったときは、培地を培地室から培養室へと通過させる。このことが培地輸送を助け得る一方、バッグのスケールアップ効率を制限する、制限された培地の高さ及び培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合に対する解決策は存在しない。この開示は、0.37cmの培地高、及び、5.4cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を提示している。
【0030】
カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、細胞培養用バッグとは異なり、側壁を有するものとして市場に導入されてきた。これらの種類の装置は、側壁を使用して、上方及び下方の気体透過性フィルムを分離する。これは、培地の高さを装置全体を通して均一にすることを可能にする。残念ながら、これらの装置は、バッグよりもスケールアップにさらに適していないが、これは、これらの装置が少量の培地しか含有しないためである。少量の培地は、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合を生じさせる試みの結果である。
【0031】
Opticell(登録商標)と呼ばれるこのような1つの製品が、バイオクリスタル社(BioChrystal Ltd.)から提供されている。この製品は、その上方面及び下方面が、気体透過性シリコーンフィルムと結合している容器であり、上方面及び下方面の表面積はそれぞれ50cm2である。側壁は、気体移動の為ではなく、上方気体膜及び下方気体膜を分離するのに必要な硬さを与えるために選択された材料から成るものである。製品チラシは、この重要な特徴である、「大きな表面積対容積比を有する2つの増殖面」を宣伝している。この製品に関する非特許文献4の論文において、特許出願人のバーバラ・ギレム(
Barbera-Guillem )は、「マイクロタイタープレートの設置面積の場合、膜面積は最大化され、容積は最小化され、最大の気体相互交換を有する巨大な増殖面を提供する空間をもたらす」と記述している。この製品をいかにして使用するかを規定する操作プロトコルは、わずか10mlの培地の導入を明記しており、それにより培地が存在することができる高さを0.2cmに制限している。この装置と関連する特許文献9(2002年6月25日付けで出願)は、最大1.27cm(0.5インチ)までの高さが可能であるが、0.18cm〜約0.2cm(約0.07〜約0.08インチ)の高さがより好ましいであろうと記述している。同様に、この装置と関連する特許文献10は、最大20mmまでの高さが可能であるが、4mmの高さがより好ましいであろうと記述している。この特許において記載される1.27cmというより高い高さが市販の装置に組み込まれたとしても、この培地の高さはバッグで可能な高さを超えることはない。さらに、このことは、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を1.00cm2/ml(バッグと同様)にしか減少させないであろう。特許文献9は、装置の1つの側面のみが気体透過性である構成を示す。この構成(商品化されていない)において、1.27cm(0.5インチ)の培地の高さでは、0.79cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が得られ、この割合は、細胞培養用バッグのものよりも若干低いであろう。したがって、側壁があるにもかかわらず、形状が最大の培地高を可能にしたとしても、バッグと比較して、スケールアップ効率は改善されていない。
【0032】
また、カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、MABIOインターナショナルラボラトリー(Laboratories MABIO‐International )(登録商標)により市場に導入されおり、これはCLINIcell(登録商標)培養カセットと呼ばれている。Opticell(登録商標)のように、製品設計も操作指示書も、バッグと比較して、培地の高さの増大、又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合を提供しない。CLINIcell(登録商標)25培養カセットに関する操作指示書は、10ml未満の培地が25cm2の下方気体透過性表面上に存在するべきであると記述している。下方気体透過性物質の表面積がわずか25cm2であるため、これはわずか0.4cmの高さの培地を生じる。また、装置の頂部及び底部は気体透過性物質から成るため、5.0cm2/mlの、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合が存在する。CLINIcell(登録商標)250培養カセットに関する操作指示書は、160ml未満の培地が250cm2の下方気体透過性表面上に存在すべきであることを記述しており、これは0.64cmの低い培地の高さ、及び、3.125cm2/mlの、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合をもたらす。
【0033】
カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、最近、セラティス社(Celartis)により市場に導入されており、これはPetaka(商標)と呼ばれる。Opticell(登録商標)及びCLINIcell(登録商標)培養カセットと同様に、これらの装置もまた、上方及び下方の気体透過性フィルムを分離する手段として機能する側壁を有する。上記の製品と異なり、この製品は標準的なピペット及びシリンジと適合可能であるため、液体取り扱いの利便性を改善する。しかし、製品設計も操作指示書も、バッグと比較して、培地の高さの増大又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合の減少を提示していない。この操作指示書は、25ml未満の培地が、上方及び下方の気体透過性表面の間に存在するべきであり、これらの上方及び下方の気体透過性表面は160cm2という総表面積を有する。製品チラシは、0.156ml/cm2という「最適化された培地/表面積」を明記している。したがって、培地の高さはわずか0.31cmであり、培地容積に対する最適化された気体透過性表面積の割合は6.4cm2/mlである。
【0034】
スケールアップに関する市販のカートリッジ形式の気体透過性装置の制限は、これらの装置に対して利用可能な最大培養容積を検討したときに明確になる。Opticell(登録商標)は最大10mlまでの培養容積を提供し、CLINIcell(登録商標)培
養カセットは最大160mlまでの培養容積を提供し、Petaka(商標)は最大25mlまでの培養容積を提供する。したがって、ちょうど1,000mlの培養を実施するためには、100個のOpticell(登録商標)カートリッジ、7個のCLINIcell(登録商標)培養カセット、又は40個のPetaka(商標)カートリッジが必要となるであろう。
【0035】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社(Vivascience Sartorius Group )は、petriPERMと呼ばれる気体透過性ペトリ皿を市場に導入している。petriPERM35及びpetriPERM50はそれぞれ、従来の35mm径及び50mm径のペトリ皿の形態の製品である。これらの底部は気体透過性である。petriPERM35mm皿及びpetriPERM50mm皿の壁はそれぞれ、6mm及び12mmの高さである。ビバサイエンス社の製品仕様は、petriPERM35が9.6cm2の気体透過性膜面積及び3.5mlの最大液体容積を有し、0.36cmの最大の培地高をもたらすことを示し、且つpetriPERM50が19.6cm2の気体透過性膜面積及び10mlの最大の液体容積を有し、0.51cmの最大の培地高をもたらすことを示す。petriPERM製品は、培地の上方面を周囲気体と連通させるカバーと、培地の下方面を周囲気体と連通させる下方気体透過性物質とを有するように設計されている。したがって、petriPERM35の培地容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は2.74cm2/mlであり、petriPERM50の培地容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は1.96cm2/mlである。他の気体透過性装置のように、petriPERM製品もまた、スケールアップに関して非効率的である。わずか1,000mlの培養を実施するために、少なくとも100個の装置が必要である。さらに、これらの装置は、閉鎖系として操作することができない。
【0036】
ガブリッジ(Gabridge)(特許文献11)は、高分解能顕微鏡用に設計された、ペトリ皿のような頂部カバーを備えて構成される気体透過性細胞培養装置を記載する。ウエルの深さは、「顕微鏡に関して最も使いやすい大きさ」に基づき、0.635cm(0.25インチ)である。最良の場合でも、この装置は0.635cmの高さの培地しか保持することができない。
【0037】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社はまた、LumoxMultiwellと呼ばれる気体透過性マルチウェル組織培養プレートを市場に導入している。これらの製品は、グライナー・バイオワン社(Greiner Bio ‐One )からも流通されている。これらは24、96及び394ウェルフォーマットで入手可能である。プレートの底部は、非常に低い自己蛍光を有する50μm(ミクロン)の気体透過性フィルムから成る。各ウェルの壁高は、24ウェル版に関しては16.5mm、96ウェル版に関しては10.9mm、384ウェル版に関しては11.5mmである。各ウェルに関する最大の作業培地の高さは、24ウェル版に関しては1.03cm、96ウェル版に関しては0.97cm、384ウェル版に関しては0.91cmであると定められている。従来のマルチウェルプレートと比較して培地の高さが改善されるとはいえ、他の静止気体透過性装置の制限内である。
【0038】
フュラー(Fuller)他(特許文献12)は、表面に模様をつける(texturing )ことにより、下方気体透過性シリコーン材料の表面積を増大する気体透過性マルチウェルプレートを提示する。しかし、壁高は単に「標準的なマイクロタイタープレート」のものに制限されており、したがって、従来のプレートと比較して培地の高さの増大を可能とすることができない。
【0039】
包括的に、静止型気体透過性細胞培養装置が、市販の装置において使用されるものよりも厚い膜を使用することができるならば、有利であろう。シリコーンに頼っている単区画静止型気体透過性細胞培養装置に関する従来の見識は、特許文献1において記載されるよ
うに、適切な機能には、気体透過性物質の厚さが約0.013cm(約0.005インチ)未満又はそれ以下である必要があることを指示している。Si−Culture(商標)バッグは、ジメチルシリコーンから構成され、約0.011cm(約0.0045インチ)の厚みを有する。バーバラ・ギレム他(特許文献9)及びバーバラ・ギレム(特許文献10)は、気体透過性膜の厚みは、膜が適したポリマー類(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン又はシリコーン共重合体を含む)から成る場合、約0.003cm(約0.00125インチ)未満〜約0.013cm(約0.005インチ)の範囲であり得ることを記述している。フィルムをこの薄さに維持することは、フィルムが破裂しやすく、製造中に容易に針穴が開きやすく、且つシートプロファイル以外のプロファイルを許容しない、カレンダ加工(calendaring )以外の任意の方法により作製することが困難であるため、不都合である。本明細書中において、従来の見識を超える増加した厚みのシリコーンがいかにして細胞培養を妨げないかが示されるであろう。
【0040】
改善された静止型気体透過性装置が必要とされている。気体透過性装置が垂直方向でスケールアップすることが可能であるならば、より多くの培養を、任意の所定の設置面積の装置で実施することができるため、且つより人間工学的な設計選択肢が可能であるため、効率は改善されるであろう。
【0041】
区画化された静止型気体透過性装置は、従来の培養装置の代替品を提供する別の種類の製品である。しかし、これらもまた、培地の高さの制限及び培地容積に対する過剰な気体透過性表面積の割合によってスケールアップ効率が制限されている。これらの種類の装置は、気体透過性膜と半透過性膜との間に細胞をトラップすることにより、高密度培養環境を作製するのに特に有用である。市販化されてはいないものの、ボグラー(Vogler)(特許文献13)は、細胞を気体透過性物質の近傍に配置し、且つ非気体透過性側壁を含有する区画化装置構成を開示する。細胞区画は、下方気体透過性物質から成り、上方の半透過性膜により囲まれている。培地区画は、半透過性膜上に直接的且つ全体的に存在する。気体透過性膜は、この培地区画の頂部上に存在する。培地は、装置の気体透過性底部上に全体的に存在するように制約される。この特許は、0.4cmの側壁を有する細胞培養区画、0.8cmの側壁を有する培地区画、9mlの細胞培養容積、18mlの基本培地容積、22cm2の下方気体透過性膜、及び22cm2の上方気体透過性膜での試験を記載する。これは、0.4cmの細胞区画培地の高さを生じ、培地区画内において培地が0.8cmの高さで存在することを可能にする。さらに、1.76cm2/mlの、総培地容積に対する高い総気体透過性表面積の割合が存在する。非特許文献5において、ボグラーは特許文献13の装置を使用した生物学的結果を提示する。非特許文献5は、非特許文献1及び非特許文献3を、「操作の理論的基礎」として具体的に引用している。試験装置(fixture )に関する寸法は、28.7cm2の下方気体透過性膜及び28.7cm2の上方気体透過性膜、5.1mlの培地を細胞区画内に存在させる0.18cmの細胞区画の壁高、並びに27.8mlの培地を培地区画内に存在させる0.97cmの培地区画の壁高を記載している。培地の高さの合計は、細胞区画内においては0.18cm、培地区画内においては0.97cmに制限されており、1.74cm2/mlの、総培地容積に対する高い総気体透過性表面積の割合を有する。
【0042】
インテグラバイオサイエンス社(Integra Biosciences )は、CELLine(商標)と呼ばれる区画化気体透過性製品を市場で売っている。ボグラーの装置のように、細胞区画は、下方気体透過性膜及び上方半透過性膜により囲まれる。しかし、ボグラーの形状とは異なり、装置内の全ての培地は、気体透過性膜上に全体が存在する必要はない。一部の基礎培地のみが、半透過性膜上に存在する必要がある。インテグラバイオサイエンス社の製品を含む特許、及び製品チラシは、細胞区画内の液体の高さを約15mmより低く維持する必要性を記載している。気体透過性膜表面積1cm2当たり5ml〜10mlの栄養
培地の割合が、適切な細胞サポートとして記載されている(特許文献14及び特許文献15)。細胞培養面積に対して培地容積を増大することは供給の頻度を最小化する観点において有利であるものの、実際には、気体透過性表面積の各cmより高い培地高は制限されている。これらの特許に含まれる装置の市販設計は、他の気体透過性装置のように、これらは細胞上に存在することができる培地の量を制限することを示す。培地容積の半分より多くが、半透過性膜のすぐ上の領域には存在せず、細胞のすぐ上に存在している培地の高さを減少させる。装置の非気体透過性側壁は、使用に関する指示に従って操作されるとき、CELLine(商標)製品における半透過性膜上に培地が存在する場所の高さが、CL1000ウェルにおいてはおよそ3.8cm、CL350ウェルにおいては2.6cm、CL6ウェルにおいては1.9cmであるように設計されている。使用に関する指示に従って操作されるとき、細胞培養区画内に存在している培地の高さは、CL1000ウェルに関しては15mm、CL350ウェルに関しては14mm、CL6ウェルに関しては26mmである。この特許は、装置は培地の上方面で気体/液体界面を一体化すると記載する。したがって、気体移動が装置の底部を介して且つ培地の頂部で起こるため、培地容積に対する気体移動表面積の割合もまた制限される。各装置に関する培地容積に対する気体移動表面積の割合は、CL1000ウェルに関してはおよそ0.31cm2/ml、CL350ウェルに関しては0.32cm2/ml、CL6ウェルに関しては1.20cm2/mlである。
【0043】
ベイダー(Bader )(特許文献16)もまた、区画化気体透過性装置を導入する。側壁がなく、これは袋の形態である。これは区画化され、細胞を栄養素から、微孔膜によって分離する。他の区画化気体透過性装置のように、培地の高さは制限される。特許文献16は、この装置において最大1〜2cmまでの培地の高さを達成することができるが、実際の高さは、「フィックの拡散の法則に従う培地層」の関数としてのO2供給に基づいて調整される必要があることを記述している。バッグの上方及び下方面は気体透過性であるため、装置をその最大容積まで充填すると、1.0cm2/mlの、総培地容積に対する最小の総気体透過性表面積の割合が得られる。
【0044】
区画化気体透過性装置が垂直方向にスケールアップする能力を増加することができたなら、これらの装置は、培養の規模が増大するに従って、より効率的な設置面積を有するであろう。垂直のスケールアップを提供する静止区画化気体透過性装置が必要である。
【0045】
静止気体透過性装置と比較して効率を改善することを試みる気体透過性装置が導入されてきた。これらの装置は、従来のローラボトルと類似した様式で動作し、回転動作(rolling action)を付随する培地混合により物質移動を改善することを試みる。しかし、効率的なスケールアップは達成されていない。この1つの理由は、静止装置のように、設計仕様が、気体透過性装置の壁から培地が存在することのできる距離を制約することにある。このことは装置の培地容積を制限する。したがって、複数の装置がスケールアップのために必要となる。
【0046】
スポルディング(Spaulding )(特許文献17)は、ドーナツ型の気体透過性壁を備えて構成されたローラボトルを開示する。内部円筒壁及び外部円筒壁は、周囲気体と連通する。壁の気体透過性の性質は酸素を細胞に提供し、細胞は内部及び外部の円筒壁により囲まれた区画内に存在する。細胞区画は培地で完全に満たされ、これは細胞せん断を制限する観点において有利である。スポルディングは、「酸素効率は培養培地中の移動(travel)距離の関数として減少し、有効性は酸素表面から約2.54cm(約1インチ)以下に制限される」と記述している。したがって、スポルディングにより記述されたこの設計制限は、十分な酸素添加を提供するために、内部円筒壁と外部円筒壁との間の距離を5.01cm以下に維持することを含む。この様式では、細胞は、気体透過性壁から2.505cmより遠くに存在することができない。このことはまた、約0.79cm2/mlの、
培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。さらに、中空の気体透過性コアを有する必要性は、空間を無駄にする。この装置は、5cmの長さ当たり100mlの培地の内部容積しか有さず、等しい長さの従来のボトルの500mlと対照的である。培地容積の制限は、この装置を、従来のローラボトルよりもスケールアップ効率が低いものとしているが、これは、より多くのボトルが等量の培養に必要であるからである。この装置に伴なう別の問題は、エッチングされた孔(直径90μm(ミクロン))を気体移動のために使用することである。これらの孔は、気体の進入を可能にするのに十分大きいが、液体が細胞区画から出ることを防ぐのに十分小さい。しかし、ほとんどの滅菌フィルターは0.45μm(ミクロン)、より一般的には0.2μm(ミクロン)の粒子が通過することを妨害するため、これらの孔は細胞区画の細菌侵入を許してしまうであろう。
【0047】
1992年12月に出願された特許において、ウルフ(Wolf)他(特許文献18)は、ディスク形状に構成された気体透過性バイオリアクターを記載し、これはその軸の周囲を回転する。この装置の形状は、シュワルツ(Schwarz )他(特許文献19)の提案に伴なう欠陥を修正することを試みている。特許文献19では、気体透過性管状挿入物(tubular insert)が、円筒型ローラボトル内に存在し、外部ハウジングは気体透過性でない。これは、ビーズに付着した接着細胞を培養することに成功したものの、懸濁細胞を培養することは成功しなかったとウルフ他は記述している。この装置は、平坦な末端の一方又は両方が気体に透過性である状態で構成される。ディスクは、遠心力の影響を低減するために、約15.24cm(約6インチ)の直径に制限されている。この発明者等は、「培養培地中の酸素の部分圧又は部分圧勾配は、透過性膜からの距離の関数として減少する」と記述しており、これはイェンセンによって1976年に発表された思考プロセスと同じである。この発明者等は、「細胞が透過性膜から離れすぎている場合、細胞は増殖しないであろう」とも記述している。したがって、ディスクの両端が気体透過性である場合、幅は約5.08cm(2インチ)未満に制限される。これらの寸法制限は、装置が保持することのできるほとんどの培地は、1,502ml未満であることを意味する。したがって、培養の大きさをスケールアップするに従って、より多くの装置を使用しなければならない。また、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は少なくとも0.79ml/cm2でなければならず、細胞は気体透過性壁から1.27未満の位置に存在しなければならない。さらに、装置は既存の研究器材との使用に適してはおらず、且つ特殊な回転器材及び空気ポンプを必要とする。
【0048】
1996年2月に出願された特許において、シュワルツ(特許文献20)は、ローラボトルと類似した様式で回転する気体透過性末端を有するディスク形状の気体透過性バイオリアクターを記載する。残念ながら、特許文献18と同様に、バイオリアクターの長さは約2.54cm以下に制限されている。バイオリアクターの全ての面が気体透過性でない限り、距離はさらに小さくなる。装置の最大直径は15.24cmである。したがって、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は少なくとも0.79ml/cm2でなければならず、細胞は気体透過性壁から1.27cmより遠くには決して存在することはできない。回転動作を伴なったとしても、従来の静止培養バッグと比較して、培地に対する気体透過性表面積の割合の実質的な減少を提供せず、培養の大きさをスケールアップするに従って、より多くの装置を使用する必要がある。
【0049】
シンセコン社(Synthecon Incorporated)から市販されている、RotaryCellCultureSystem(商標)と呼ばれる製品ラインは、スポルディング、シュワルツ及びウルフ他の特許のさまざまな態様を一体化する。結果として得られる製品は、少ない培地容積(10ml〜500ml)を有し、特別注文の回転器材を必要とし、標準的な研究室ピペットと適合性でなく、且つ等容積の培地を保持する従来の装置の費用と比較した場合に非常に高価である。したがって、これらは、単一装置フォーマットにおける効率の改善の必要性に取り組んでいないため、市場に対して小さな影響しか与えなかった。
【0050】
ファルケンベリ(Falkenberg)他(特許文献21及び特許文献22)は、透析膜により区画化された気体透過性ローラボトルを記載する。このボトルにより収容され得る培地容積は360mlであり、そのうちの60mlは細胞区画内に、300mlは栄養素区画内に存在する。一実施の形態において、ボトルの末端は気体透過性である。特許文献22は、ボトルの末端が気体透過性である場合、「少なくとも50cm2の表面積を有する気体交換膜は、35mlの細胞培養に適していることが証明された」と記述している。したがって、容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は1.43cm2/mlである。別の実施の形態では、ボトルの本体が気体透過性であり、表面積は240cm2である。この気体透過性表面は、槽内に存在する360ml容積の培地全体に酸素添加する。したがって、容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は0.67cm2/mlである。ボトルの直径はおよそ5cmであり、ボトルの長さはおよそ15cmである。このように、ボトルは、およそ11.5cmの直径及び最大およそ33cmの長さを有する従来のローラボトルよりもはるかに小さい。この装置は高密度懸濁細胞培養に関して有用であるものの、その制限された培地容積は、スケールアップに必要な装置の数を減少させることができない。さらに、付着面領域を提供しないため、この装置は接着培養には適さない。
【0051】
ファルケンベリ他(特許文献23)は、特許文献21及び特許文献22において規定される装置の改良版を記載する。内部の加圧による損傷を防ぐ崩壊可能なシージングの形態における特徴が開示される。気体はボトルの末端を介して供給され、気体透過性シージングを介して「供給チャンバ内に拡散する」ことができる。残念ながら、ボトル寸法が変えられないままであるため、この装置は、スケールアップに必要な装置の数を減少させることができない。さらに、この装置は接着培養に不適なままである。
【0052】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社は、ファルケンベリ他の特許と関連するminiPERMと呼ばれる製品を販売している。最大の細胞区画モジュールは50mlであり、最大の栄養素モジュールは400mlである。したがって、この市販の装置中に存在することができる最大の培地の容積は450mlである。この市販の装置の小さいサイズは、特別注文の回転器材の必要性とあいまって、スケールアップの問題の解決を難しくしている。
【0053】
回転型気体透過性装置が1つの装置当たりにより多くの培地を供給することができ、それによりスケールアップに必要な装置の数が減少するように該装置を改善する必要性がある。これは、培地容積に対する減少した気体透過性表面積の割合が存在する場合に達成することができる。別の問題は、非標準的な研究室器材が、既存の装置の操作に必要であることである。標準的な研究室器材の使用はまた、より多くの使用者がこの技術を利用することを可能にするであろう。
【0054】
上記の考察は、既存の及び提案された細胞培養装置における効率的なスケールアップを制限する設計欠陥に焦点を当ててきた。上述した制限に加えて、接着細胞培養が目的である場合にスケールアップの効率を制限するさらなる問題が存在する。
【0055】
酸素添加のために気体/液体界面に依存する従来の静止装置に関して、接着細胞培養の非効率性は、1つの装置当たり制限された付着面領域により生じる。例えば、装置の底部のみが、ペトリ皿、マルチウェルプレート及び組織培養フラスコを用いた細胞付着に適している。従来のフラスコが、この問題のよい例を提供する。上述したように、典型的なT−175フラスコは約936cm3を占める。しかし、これは、接着細胞が付着するための表面積をわずか175cm2しか与えない。したがって、増殖面に対する占められた空間の割合(5.35cm3/cm2)は非常に非効率的なものである。
【0056】
従来フラスコの表面積における欠陥に取り組むことを試みる製品が入手可能である。マルチシェルフ組織培養フラスコ、例えばNUNC(商標)CellFactory(特許文献24)及びコーニング製のCellStack(商標)(特許文献25)は、ポリスチレンシェルフを垂直方向に積層させる(stack )ことにより、表面積を増大させる。この装置は、培地及び気体をシェルフ間に存在させるように設計されている。これは、培養される細胞の数が増加される場合、装置の設置面積を従来のフラスコと比較して減少させる。マルチシェルフフラスコのプロファイル(profile )もまた、従来のフラスコよりも空間効率が良い。例えば、NUNC(商標)CellFactoryのシェルフ間の空間は約1.4cmであるが、これは典型的なT−175フラスコの底部と頂部との間の距離である3.7cmと対照的である。空間の使用の低減は、滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間及び装置の廃棄の観点から費用を節約する。この形式の装置はまた、スケールアップ時の取り扱い量を減少させるが、これは、複数の組織培養フラスコを満たすのではなく、1つのマルチシェルフ装置を満たせばよいからである。さらに、従来のポリスチレンの使用が容易に適応させられる。残念ながら、この装置は、そのシェルフがそれぞれ、酸素を供給するために気体/液体界面を必要とするため、未だ有効性において最適とは言えない。
【0057】
CellCube(登録商標)は、コーニングライフサイエンス社(Corning Life Science)から入手可能な接着細胞培養装置である。これは、マルチシェルフ組織培養フラスコと類似した様式で構成されているが、気体/液体界面を排除している。したがって、気体が存在しないために、垂直に積層された細胞付着シェルフ間の距離は減少する。このことは、装置が占める空間量を減少させる。しかし、気体交換を提供するために、酸素添加した培地の連続的な潅流が必要である。このことは、コーニング製のCellStack(商標)と比較して非常に高いレベルでの費用及び複雑性をもたらし、研究規模の培養に関して劣ったものとしている。
【0058】
静止気体透過性装置は、NUNC(商標)CellFactory、コーニング製のCellStack(商標)又はCellCube(登録商標)より優れた代替品を提供しない。細胞培養用バッグ及び気体透過性カートリッジは、従来の組織培養フラスコよりも広い付着領域を提供することができる。これは、細胞を装置の上方面及び下方面の両方で培養することが可能になるからである。しかし、細胞付着に適した気体透過性物質は、従来のポリスチレンよりもはるかに高価であり得る。また、気体透過性装置の上方面及び下方面の両方が細胞を増殖させたとしても、同じ設置面積を占める従来の気体/液体界面形式の装置と比較して、わずか2倍の表面積の増加しか得られないであろう。さらに、上述したスケールアップによる欠陥による制限は残っている。
【0059】
フュラー他(特許文献12)は、気体移動及び細胞付着に関するより広い表面積を可能にするために気体透過性物質の表面に模様をつける新規なバッグを提示する。しかし、培地の高さはまた、市販のバッグの高さに制限されている。これは、このバッグが他のバッグと同一の様式で製作されるからである。培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、他のバッグよりも高くさえなるが、不均一な培地分布が存在する。
【0060】
ベスホスキー(Basehowski)他(特許文献26)は、底部を気体透過性にし、平滑にし、且つ細胞付着のために帯電させることにより、接着培養に適した気体透過性バッグを提案する。このバッグの頂部の内表面は下方気体透過性表面とくっつくことを防ぐために模様をつけられている。このバッグは、下方面しか細胞付着に使用せず、表面積対設置面積比の効率は従来のフラスコと同じでしかない。
【0061】
今日まで、気体/液体界面への依存を排除し、且つ潅流の必要なしに多層フラスコのスカフォールドを一体化することができる装置を、いかにして作製するかについての指針は
不十分である。静止気体透過性装置は、装置の底部及び頂部を介する気体移動のみを可能にする。したがって、従来のスカフォールド(マルチシェルフ組織培養フラスコ内に備えられたスチレンシェルフ等)を含む場合、これらは細胞がある位置での気体交換を阻害する効果を有するであろう。気体透過性物質は、付着スカフォールドが十分な気体移動を妨げない様式で位置決めするべきである。これがいかに有益になるかは、本明細書中の発明の詳細な説明においてさらに説明されるであろう。
【0062】
スケールアップ時により効率的な細胞培養装置を提供する必要性は、静止細胞培養装置に制限されず、ローラボトルにも当てはまる。従来のローラボトルは、気体/液体界面の使用により機能する。その形状は、より大きい表面積及びより多い培地容積を巧みな様式で提供する一方、フラスコ及びバッグよりも小さい設置面積を占める。これらの全世界的な使用は、在庫品用空間、インキュベータ用空間、労力及び生物学的有害物質の廃棄用空間の使用の減少をもたらすため、より効率的な配置を提供する装置に対する市場の要求の証拠を提供する。
【0063】
ボトルが接着培養に使用される場合、細胞はボトルの内壁に付着する。回転ボトルが付着した細胞を周期的に培地及び気体空間中を移動させるのに従って、細胞は栄養素及び気体交換を得る。ローラボトルの使用は接着細胞に制限されない。これらはまた、懸濁細胞を培養するのにも一般的に使用される。例えば、モノクローナル抗体を産生するためのマウスハイブリドーマの培養は、ローラボトル内で日常的に行われている。典型的な懸濁細胞培養の用途において、設置面積及びサイズ対フラスコに関する効率の改善を達成することができ、ローラボトルの取り扱いの簡便性が細胞培養用バッグよりも優れており、少ない費用及び低い複雑性のレベルがスピナーフラスコよりも優れている。ローラボトルの有数の供給業者であるコーニング(登録商標)は、850cm2ボトルに対して、170ml〜255mlの間の培地容積を推奨している。ボトルの実際の容積は約2,200mlである。したがって、ローラボトルは接着細胞培養及び懸濁細胞培養の両方に対して有利であるものの、培養プロセス中のローラボトルの大部分(約88%)は気体から成るため、これは未だ非常に非効率的な形状である。ローラボトルはまた、静止装置の簡便性からも逸脱するが、これは、補助的なローラメカニズムが必要であるためである。さらに、これらは細胞にせん断力を与える。これらのせん断力は、せん断を受けやすい細胞を損傷又は殺傷し得、また従来の静止装置には存在しない。
【0064】
マッカリール(McAleer )他(特許文献27)は、細胞が、ボトルの長さに沿って下に向かって配置された平行なディスクの両側に付着することを可能にするように構成されたローラボトル装置を記載する。水平位置で回転する従来のボトルとは異なり、この装置は培地中へ、次に気体中へディスクを持っていくように転倒(tumbles end over end)する。これは、ボトル中に存在する気体の容積を減少させることはない。それどころか、「本発明の別の利点は、非常に少ない容積の液体を使用することができることである」と記述している。これは、機能するために、ボトル中の、潅流されなければならない大容積の気体の存在に完全に依存する。従来のボトルにおける空間の効率的な使用を妨げる過剰容積の気体が残存する。また、せん断力は低減されない。
【0065】
スピルマン(Spielmann )(特許文献28)は、拡大した液体/気体交換表面を提供するローラボトル装置を記載する。複数のトレーがボトル内に平行に配置されている。トレーは、培養のための表面積を増大させ、ボトルが回転するに従って液体がトレー上を流れることを可能にするように設計されている。接着細胞の場合、付着のためにより広い表面積が利用可能である。懸濁細胞の場合、細胞は「気体相及び液体相と接触しながら」トレーによって攪拌される。せん断力は存在したままである。この装置は改善された表面積を備えるものの、気体交換を提供するためにはボトル中の気体の存在に完全に依存している。したがって、この装置は空間効率における基本的な制限(ボトル中に存在しなくてはな
らない過剰容積の気体)に取り組んでいない。
【0066】
ローラボトルが大幅に改善された培地容積対気体比を可能にするように作製されたならば、スケールアップに必要とされる装置の数が低減されることになるため、これはより経済的な選択肢を提供するであろう。850cm2ボトルに関する典型的な培地容積は170ml〜255mlであるが、その許容積は2,200mlであるため、約9〜13倍の栄養素許容積の増大が、ボトルを培地で満たすことにより利用可能となり得る。簡便性を保つため、気体/液体界面から独立している、培養物に酸素添加する複雑ではない方法が存在することが必要であろう。また、接着培養に関して、表面積は、培地容積の増大と比例して増大するべきである。これらの特徴を有する気体透過性装置は、滅菌の費用、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、労力及び廃棄費用を9倍〜13倍減少させることができる。細胞にかかるせん断力もまた、低減され得る。
【0067】
接着培養に関して、提案された及び市販の回転型気体透過性装置は、従来のボトルより優れた代替品を提供しないが、これは、従来の付着面を一体化していないからである。代わりに、これらの装置は、小区域の付着面又はビーズに依存している。ビーズは、接着培養を実施する装置に対して新たな一連の問題をもたらす。ビーズは、均一に播種するのが難しく、顕微鏡的に細胞の集密性又は形態を査定することが不可能であり、細胞の回収が望ましい場合は、ビーズに付着している細胞とビーズを分離しなくてはならない。
【0068】
気体透過性ローラボトルにおけるビーズの使用を排除することが試みられてきた。ネーゲル(Nagel )他(特許文献29)は、ファルケンベリ他の装置に対して、ビーズを用いることなく接着細胞に対する培養能を生み出すことを試みている。1つの細胞付着マトリックスが、細胞培養区画内の気体膜の内部面(face)に備えられている。接着培養が可能であるものの、ボトルの寸法は変えられないままであり、その小さいサイズのために、スケールアップに必要とされる装置の数を減少させることはできない。また、酸素は、まず気体透過性膜、次に細胞付着マトリックスを通って細胞に到達するように移動されなければならない。さらに、わずか1つの細胞付着マトリックス層しか利用可能ではなく、これは、NUNC(商標)CellFactory及びコーニング製のCellStack(商標)の多層とは対照的である。さらに、細胞の集密性及び形態の顕微査定は適応されない。
【0069】
改善された気体透過性ローラボトルが必要である。これは、培地で満たされることが可能であり、標準的なローララックにおいて使用され、培地容積の増大と正比例して細胞付着面積を増大させ、且つ従来のボトルの使いやすさを保持するべきである。本明細書中に、このローラボトルがいかにして達成され得るかが示されるであろう。
【0070】
シン(Singh )(特許文献30)は、「気体透過性表面に依存している装置の全て」に関して、「スケールアップは制限される」と記述している。気体透過性装置のスケールアップの欠陥を解決するために、バッグが開示されている。非気体透過性バッグは、培地と気体とを、おおよそ等しい比率で一体化する。このバッグはロッカープレート上に位置決めされ、この振とう運動(rocking motion)が培地内中に波を生み出し、これは気体移動を促進する。この特許は、WaveBioreactorと呼ばれる、ウェーブバイオテック社(Wave Biotech)から入手可能な市販製品を含む。残念ながら、この装置を機能させるためには、特別注文の振とう及び温度制御器材を購入しなくてはならず、このバッグは培地を保持する許容積を実質的に変えない。気体透過性バッグのように、WaveBioreactorバッグは、それが担持する許容積の1/2未満の培地で満たされる。したがって、このバッグは培地の高さを制限し、且つ気体透過性バッグと同様のスケールアップの欠陥を受け継いでいる。
【0071】
要約すると、研究規模の細胞培養により高い効率性をもたらし、且つスケールアップ時に効率性を失わない、改善された細胞培養装置及び細胞培養法に対する必要性が存在する。機能するために気体/液体界面に依存している従来の装置は、労力、滅菌費用、出荷費用、保管費用、インキュベータ用空間の使用、廃棄費用及び混入の危険性の観点で非効率的である。これらの装置は、ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、マルチシェルフ組織培養フラスコ及びローラボトルを含む。気体透過性装置もまた非効率的であり、多くの場合、機能するために気体/液体界面を必要とする装置の簡便性を失う。petriPERM及びLumoxMultiwellプレート気体透過性装置は、それらの従来の相当物(counterpart )の形態であり、従来装置の非効率性を受け継いでいる。気体透過性バッグは、培地の高さの制限、不均一な培地分布、培地容積に対する高い気体透過性物質表面積の割合の使用、及び充填中に存在する混入の危険性のために、非効率的である。気体透過性カートリッジは、低い高さの培地を有し、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合を使用し、小容積の培地を収容し、且つスケールアップ時に非常に多くの数のユニットが維持される必要があるため、非効率的である。回転型気体透過性装置は、その壁が互いに分離され得る距離を制限する形状的な制約を有し、制限された培地容積に応じて、スケールアップ時に多くの数のユニットを必要とし、且つしばしば特別注文の回転器材を必要とするため、スケールアップに関して非効率的である。接着培養が望ましい場合、従来装置は、非常に非効率的な付着表面積に対する装置容積の割合を有し、空間を無駄にする。静止型、混合型、及び回転型気体透過性装置は、制限された表面積、表面積を増大するためのビーズの使用、従来のシート状スチレン表面の欠失、及び顕微的な評価を実施することの不能性等の理由から、接着培養に関してさらに非効率的となる。
【0072】
本明細書中に開示される或る実施形態は、より効率的な細胞培養装置及び細胞培養法を提供し、さまざまな新規の特質を一体化することができる気体透過性装置を作製することにより、従来の装置及び方法の制限を克服する。これらのさまざまな特質は、気体/液体界面に依存しない気体交換、培地の高さの増大、培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減、装置の側壁を介した気体交換、従来の材料から成る細胞サポートスカフォールド、及び気体透過性物質の厚みの増加を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】米国特許第5,686,304号
【特許文献2】米国特許第4,829,002号
【特許文献3】米国特許第4,937,194号
【特許文献4】米国特許第5,935,847号
【特許文献5】米国特許第6,297,046号
【特許文献6】米国特許第4,847,462号
【特許文献7】米国特許第4,945,203号
【特許文献8】米国特許第5,225,346号
【特許文献9】米国特許出願第10/183132号
【特許文献10】WO00/56870
【特許文献11】米国特許第4,435,508号
【特許文献12】IPN WO01/92462
【特許文献13】米国特許第4,748,124号
【特許文献14】米国特許第5,693,537号
【特許文献15】米国特許第5,707,869号
【特許文献16】米国特許第6,468,792号
【特許文献17】米国特許第5,330,908号
【特許文献18】米国特許第5,153,131号
【特許文献19】米国特許第5,026,650号
【特許文献20】米国特許第5,702,941号
【特許文献21】米国特許第5,449,617号
【特許文献22】米国特許第5,576,211号
【特許文献23】米国特許第5,686,301号
【特許文献24】米国特許第5,310,676号
【特許文献25】米国特許第6,569,675号
【特許文献26】米国特許第4,939,151号
【特許文献27】米国特許第3,839,155号
【特許文献28】米国特許第5,650,325号
【特許文献29】米国特許第5.702,945号
【特許文献30】米国特許第6,190,913号
【非特許文献】
【0074】
【非特許文献1】イェンセン(Jensen)他、「気体透過性及び気体非透過性のサポート上での組織培養における拡散(Diffusion in Tissue Cultures on Gas-permeable and Impermeable Supports)」、J. Theor. Biol. 56, 443-458 (1976)
【非特許文献2】イェンセン、モナ(Mona)・D、「制御環境における大量細胞培養:細胞培養及びその応用(Mass cell culture in a controlled environment, Cell Culture and its Applications)」、Academic Press 1977
【非特許文献3】イェンセン、「バイオテクノロジーと生物工学(Biotechnology and Bioengineering)」、Vol. XXIII, Pp. 2703-2716 (1981)
【非特許文献4】Genetic Engineering News (Vol. 20 No. 21 December 2000)
【非特許文献5】ボグラー、「動物細胞の培養のための区画化装置(A Compartmentalized Device for the Culture of Animal Cells)」(Biomat., Art. Cells, Art. Org., 17(5), 597-610 (1989) )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0075】
[発明の概要]
下方気体透過性物質から成る気体透過性装置に関して、培地の高さを、従来の見識により決定される、又は市販されている装置において利用可能な高さよりも増大させることは有益であり得ることが発見された。本発明の発明者等によって、細胞培養培地内の基質の対流は、従来認識されているよりも重要な役割を果たすと予想される。物質移動のための拡散への歴史的な依存は、対流が与える寄与を過小評価しているように見受けられる。このことは、細胞培養培地中のグルコース及び乳酸塩等の基質の移動速度を過小評価することにつながり、従来許容されていたよりも細胞から遠くに存在する培地が細胞に対して有用であり得ることを認識することができないであろう。培地中の基質の移動速度が過小評価されると、細胞から遠すぎると思われている領域内に存在する培地は、無駄であると間違って見なされるであろう。論理的な結論として、装置によって占められる空間を減少させ、より経済的に滅菌、出荷、保管及び廃棄されるようにするために、気体透過性装置が細胞に対して有用であり得るよりも少ない培地を保持するように不必要に構成されることになる。
【0076】
いずれにしても、従来の見識よりも離れた距離に存在している培地がいかに有益であり得るかの例として、試験を実施し、ここで、培地の高さは、従来提言されている高さ、さらには市販されている静止気体透過性装置において可能である高さをはるかに超えて増大された。通常の細胞培養用途の評価(マウスハイブリドーマを使用)は、従来の見識と比較して培地の高さを増大させることにより、より多くの細胞が、装置の所定の設置面積内に存在することが可能であることを示した。以前には認識されていないこの有益性は、よ
り効率的な細胞培養及びプロセススケールアップを提供するさまざまな細胞培養装置構成を可能にする。
【0077】
本明細書中における本発明の装置及び方法は、装置の壁が気体透過性であり、スカフォールドが存在し、且つ装置が静止モードで操作される場合、気体/液体界面は十分な気体交換に必要ないことを示す。このことは、従来装置における気体の存在に起因する過剰な装置サイズに対する必要性を排除し、且つ気体透過性装置が従来のスカフォールドを一体化することを可能にする。これは、従来装置よりも小さな空間を占めるさまざまな細胞培養装置構成を可能にし、且つこれらの装置をスケールアップに関してより効率的にする。やはり、本発明者等により、対流の役割は寄与因子であり得ることが予期される。
【0078】
また、気体透過性ローラボトルに対する形状構成(従来の見識の指示と相反する)は、細胞を首尾よく培養することができるということが発見された。この新たな形状は、装置が、従来可能であるよりも多くの培地を収容することを可能にし、それによりスケールアップ効率を改善する幾何形状を得る。このことは、酸素添加のための気体を収容する従来のボトルの無駄な空間を排除し、且つスケールアップ効率の観点で気体透過性ボトルよりも優れる細胞培養装置構成が存在することを可能にする。
【0079】
また、細胞を、従来の見識が提唱するよりも厚いシリコーン気体透過性物質を使用して、効率的に培養することができることが発見された。
これらの発見は、細胞を培養する新たな装置及び方法を作り出すことを可能にし、これらは、現在の装置(ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、マルチシェルフ組織培養フラスコ、ローラボトル、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート、気体透過性細胞培養用バッグ、区画化気体透過性装置及び気体透過性回転装置等)を上回る劇的な効率及びスケールアップの改善を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0080】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、優れた気体透過性細胞培養装置を提供する。
【0081】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さを増大すること及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、気体透過性細胞培養装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0082】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体透過性物質から少なくとも部分的に成る側壁を介して気体交換を可能にすることにより、優れた細胞培養装置を提供する。
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体透過性物質から少なくとも部分的に成る側壁を介して気体交換を可能にすることにより、気体透過性装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0083】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性マルチウェル組織培養プレートに対する優れた代替物を提供する。
【0084】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性ペトリ皿に対する優れた代替物を提供する。
【0085】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、より多くの栄養を含むサポートを提供する
ために培地の高さを増大すること、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、気体透過性細胞培養用バッグにおける細胞培養の方法に対する優れた代替法を提供する。
【0086】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性カートリッジに対する優れた代替物を提供する。
【0087】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地を従来可能であるよりも気体透過性物質から遠い位置に存在させることを可能にする形状を作製することにより、気体透過性ローラボトルに対する優れた代替物を提供する。
【0088】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、水平位置及び垂直位置で操作することができる優れた気体透過性細胞培養装置を提供する。
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、区画化気体透過性装置に対する優れた代替物を提供する。
【0089】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さを増大すること、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、区画化気体透過性装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0090】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体交換のためにシリコーン材料を利用する優れた気体透過性細胞培養装置を、0.013cm(0.005インチ)よりも大きい厚さであるシリコーンを用いて構成することにより、提供する。
【0091】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、改善された細胞培養用バッグを提供し、ここでは、気体透過性物質は、0.013cm(0.005インチ)を超える厚さであるシリコーンである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】Dcmが培地の拡散係数であり、PO2及びPCO2の定常値に関するモデルが気体透過性容器内に示されるこのイェンセン他の論文の図2を示す、断面図。
【図1B】Dcmが培地の拡散係数であり、PO2及びPCO2の定常値に関するモデルが気体透過性容器内に示されるこのイェンセン他の論文の図3を示す、断面図。
【図2】イェンセン、「制御環境における大量細胞培養」、細胞培養及びその応用、Academic Press(1977年)からの図2の複写図であり、下方培地高容積を備えて構成された気体透過性細胞培養装置を示す、断面図。
【図3】Si−Culture(商標)バッグ(メドトロニック社)として商品化されている米国特許第5,686,304号の図2の複写図であり、典型的な細胞培養用バッグ断面を示す断面図。
【図4A】大きな容積の培地を下方気体透過性物質上に存在させるように構成された、その下方気体透過性物質から成るハウジングを備えた細胞培養装置(取り外し可能なリッドがその装置を混入から保護する)を示す一実施形態の断面図。
【図4B】大きな容積の培地を下方気体透過性物質上に存在させるように構成された、その下方気体透過性物質から成るハウジングを備えた細胞培養装置(容器は隔壁から出入可能)の一実施形態を示す断面図。
【図4C】装置がその側面を下にして置かれ、非回転位置又は回転位置で操作され得るような気体透過性物質から成る壁を備えた細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図5】細胞を下方気体透過性物質の下面にほぼ均等に分布させ、下方気体透過性物質の底面(underside )に気体を提供させるように構成された、下方気体透過性物質を備えた気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図6】装置プロファイルをさらに増大させることなく、さらに栄養補助を提供するために、培養される細胞の真上ではない領域に培地を維持するように構成された、気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図7A】気体透過性細胞培養装置内の培地の容積が変わる場合、その装置の高さを調節し、それにより培養プロセスの各段階でできるだけ小さな空間を占め、且つプロセスの費用を削減する最小容積状態で、滅菌、出荷、保管、及び廃棄能を可能とし得るように構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図7B】気体透過性細胞培養装置内の培地の容積を変える場合、その装置の高さを調節し、それにより培養プロセスの各段階でできるだけ小さな空間を占め、且つプロセスの費用を削減する最小容積状態で、滅菌、出荷、保管、及び廃棄能を可能とし得るように構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図8】従来のマルチウェル組織培養装置に比べ、1つのウェル当たり増加される培地の容積を保持することが可能であり、それにより1つのウェル当たりに存在する細胞数(amount)を増加することにより、より効率的な研究規模の培養を可能とし、栄養供給の頻度を低減させ、且つより良いクローン選択の可能性を与える、マルチウェルフォーマットにおいて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す斜視図。
【図9A】気体透過性側壁を備えて構成されたマルチウェルフォーマットにおける気体透過性細胞培養装置(装置の各ウェルの下面は、従来の組織培養フラスコとまったく同一の材料から成り得る。気体交換に必要とされるような気体/液体界面の除去は、1つのウェル当たりの細胞数の増加、及び/又は栄養供給の頻度の減少、インキュベータ用空間のより良い使用、並びに滅菌、出荷、保管、及び廃棄の費用削減を可能とする。)の実施形態を示す斜視図。
【図9B】気体透過性側壁を備えて構成されたマルチウェルフォーマットにおける気体透過性細胞培養装置(装置の各ウェルの下面は、従来の組織培養フラスコとまったく同一の材料から成り得る。気体交換に必要とされるような気体/液体界面の除去は、1つのウェル当たりの細胞数の増加、及び/又は栄養供給の頻度の減少、インキュベータ用の空間のより良い使用、並びに滅菌、出荷、保管、及び廃棄の費用削減を可能とする。)の実施形態を示す断面図。
【図10A】気体/液体界面の必要性がなく、接着細胞を培養するためのスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置(水平及び垂直方向に直線的に規模拡大可能であり、従来の接着培養装置に比べ、より優れた効率性を生み出す。スカフォールドの片面又は両面で細胞を培養することが可能である。回転型又は非回転型状態のいずれかで操作され得る。)の一実施形態を示す断面図。
【図10B】気体/液体界面の必要性がなく、接着細胞を培養するためのスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置(水平及び垂直方向に直線的にスケールアップ可能であり、従来の接着培養装置に比べ、より優れた効率性を生み出す。スカフォールドの片面又は両面で細胞を培養することが可能である。回転型又は非回転型状態のいずれかで操作され得る。)の一実施形態を示す断面図。
【図11】少なくとも1つが最適な顕微的細胞査定に適した複数のスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図12A】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す斜視図。
【図12B】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す断面図。
【図12C】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す上面図。
【図12D】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す断面図。
【図13】複数のスカフォールド及び気体透過性物質から成る少なくとも1つの側壁を備えた気体透過性細胞培養装置(気体交換の手段としての気体/液体界面の必要性を排除し、より効率的な空間の使用、並びに関連した滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、及び廃棄に関する費用の有益性をもたらす。)の一実施形態を示す分解斜視図。
【図14A】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14B】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14C】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14D】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14E】隣接するスカフォールドとの間で等間隔を維持するために構成されたスカフォールドを示す斜視図。
【図15A】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図15B】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図15C】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図16】培地の高さが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす効果を査定するために使用される筒状試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、従来の見識における限界を超えて培地の高さを増す有益性、及び従来の装置の培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らす能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図17】試験装置の側壁を介した気体移動を可能とすることにより気体/液体界面の非存在下で接着細胞を培養する能力を査定するために使用される試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図18】試験装置の側壁を介した気体移動を可能とすることにより気体/液体界面の非存在下で接着細胞を培養する能力を査定するために使用される試験装置(複数のスカフォールドをその試験装置に一体化させた。この試験装置を用いた生物学的評価は、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図19A】スカフォールドの上面及び下面上に細胞を播種する能力を査定するために使用される試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、装置の側壁を介して気体交換が行われた場合、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力、それは接着表面積に対する下方気体透過性物質の表面積が機能的であり、培地容積に対する下方気体透過性物質の表面積が機能的であり、且つ装置が非回転型位置又は回転型位置にある場合、細胞を培養し得ることを示した。)の断面図。
【図19B】図19Aの試験装置の1つのスカフォールドを示す斜視図。
【図20】実施例4に記載された、細胞分布パターンを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0093】
[発明の詳細な説明]
従来の細胞培養装置又は方法では考えられていない高さに培地を保持することができる気体透過性装置を構成することにより、取り扱い頻度、労力、滅菌費用、出荷費用、保管費用、インキュベータ用空間の使用、廃棄費用、及び混入の危険性を減らすことを含む利点を生じることができる。また、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を、従来の細胞培養装置又は方法では考えられていない割合まで減少させることも、培養効率を増大させ得る。これにより、装置の長さ又は幅を対応して増大させることなく、培地の高さを増大させることが可能となる。好ましい実施形態では、培地の高さを増大させるか、又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすかのいずれかを可能とする措置がとられる。培地の高さを増大させ、且つ培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすことの両方を可能とする措置がとられる。
【0094】
培地が従来の見識を超えた高さにあることを可能とする気体透過性装置及び方法に関する多種多様な実施形態が可能である。それらは、従来の装置の形態又は完全に新規の形態を取ることができる。形態が最大で50mm径の気体透過性ペトリ皿である場合、培地の高さは、好ましくは0.36cmを上回るべきである。好ましい壁高は、6mmを上回る。形態が50mm径を超える気体透過性ペトリ皿である場合、培地の高さは、好ましくは0.51cmを上回るべきである。好ましい壁高は12mmを上回る。形態が384ウェル以上のマルチウェル組織培養プレートである場合、培地の高さは、好ましくは、0.91cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは11.5mmを上回る。24ウェル未満〜384ウェル未満では、培地の高さは、好ましくは0.97cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは10.9mmを上回る。24ウェル以下では、培地の高さは、好ましくは1.03cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは16.5mmを上回る。形態が気体透過性カートリッジである場合、培地の高さ及び壁高は、好ましくは1.27cmを超えるべきである。細胞培養用バッグの形態では、培地の高さは最高点で2.0cm高を超えていることが好ましい。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体に存在する場合、栄養区画の培地の高さは、好ましくは半透過性膜の上の1.0cm高であるべきである。形態が区画化された気体透過性装置である場合、栄養区画の培地の高さは、好ましくは半透過性膜の上の3.8cm高を超えるべきである。
【0095】
従来の見識に比べて、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすことを目的とした設計である場合、気体透過性装置及び方法に関する多種多様な実施形態が可能である。それらは、従来の装置の形態又は完全に新規の形態を取ることができる。形態が50mm径以下の気体透過性ペトリ皿である場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは2.74cm2/mlを下回るべきである。形態が50mm径以上の気体透過性ペトリ皿である場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.96cm2/mlを下回るべきである。形態が384ウェル以上のマルチウェル組織培養プレートである場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.10cm2/mlを下回るべきである。24ウェル未満〜384ウェル未満では、培地容積に
対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.03cm2/mlを下回るべきである。24ウェル以下では、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは0.97cm2/mlを下回るべきである。形態が、カートリッジの2つの側面が気体透過性である気体透過性カートリッジの場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは0.79cm2/mlを下回るべきである。細胞培養用バッグの形態では、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が1.0cm2/mlを下回ることが好ましい。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体に存在する場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.74cm2/mlを下回るべきである。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体には存在しない場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは、0.31cm2/mlを下回るべきである。
【0096】
図4Aは、本発明の一実施形態の断面図を示す。気体透過性細胞培養装置10は、細胞20が下方気体透過性物質30上に存在することが可能となるように構成されている。図4Aは、ペトリ皿の形式で組み立てられた気体透過性細胞培養装置10を示すが、培地が従来の見識の高さを超えた高さに位置させることを可能にする、かなり多くの形状及び大きさでも可能である。
【0097】
頂部カバー55を取り外して、培地50を、注入又はピペット操作のいずれかで都合よく気体透過性細胞培養装置10へ添加し、且つ気体透過性細胞培養装置10から除去することを可能とすることができる。しかし、培地50に対するアクセスはまた、細胞培養装置に共通したかなりの数の方法、例えば、蓋、隔壁及び管で行うことができる。閉鎖系が望まれる場合では、気体透過性細胞培養装置10は注入管及び排出管を備えて構成され得る。それらの管は、テルモメディカル社(Terumo Medical Corp.)(サマセット、NJ)製の器材等を用いて、滅菌管状材料の結合により、培地源及び廃棄袋と接続され得る。また、隔壁構成又は当業者に既知の任意の他の技法を用いて、密閉容器を作製することもできる。例えば、図4Bに示されるように、気体透過性細胞培養装置10は、隔壁65を備えた密閉容器として代替的に構成され得る。
【0098】
気体透過性細胞培養装置10が培地50で完全に満たされ、且つ細胞が重力により培地50外に沈むことを意図する場合では、気体透過性細胞培養装置10の頂部形状により、培地50が下方気体透過性物質30上に均一な高さで存在することが可能となることが好ましい。それにより、細胞が培地50内で懸濁状態から重力によって沈む場合、下方気体透過性物質30上で細胞の均一な堆積が可能となる。図4Bの構成はこの目的を達成する。
【0099】
下方気体透過性物質、例えば物質30は、任意の膜、フィルム又は気体透過性細胞培養装置に使用される材料、シリコーン、フルオロエチレンポリプロピレン、ポリオレフィン及び酢酸ビニルエチレン共重合体等、であり得る。細胞培養における気体透過性物質及びそれらの使用についての学識に関する広範囲に及ぶ情報源は、さらなる指針(例えば、同時係属中の米国特許出願第10/460,850号(その全体が本明細書中に援用される))に用いることができる。フィルム及び膜という用語の使用は、気体透過性物質全体にわたる非常に薄い間隔(distance)を含意する。また、本発明の実施形態は、記載された装置及び方法の気体透過性物質が、フィルム及び膜に付随した厚さを超える場合に機能することを本発明者等は見出した。したがって、培養物の気体交換に寄与する装置の一部は、本明細書中で気体透過性物質と呼ばれる。
【0100】
気体透過性物質は、気体透過性、透湿性、細胞との所望の細胞相互作用に向けて改変する能力、光学的透明度、物理的強度等を含む多様な特性を基に選択されるべきであることが当業者に認識されよう。細胞培養に首尾よく使用されている気体透過性物質の種類を記
載する多種多様の情報が存在する。シリコーンはしばしば、良好な選定子となる。シリコーンには優れた酸素透過性があり、光学観察を可能とし得り、簡単には破壊せず、通常、細胞がシリコーンに結合せず、多種多様な形状に簡単に製造され得る。シリコーンが使用される場合、気体移動が望まれる部位で、約0.508cm(0.2インチ)未満、約0.254cm(0.1インチ)未満、約0.127cm(0.05インチ)未満、又は約0.076cm(0.030インチ)未満であり得る。材料の最良の選択法は用途による。例えば、低温保存にさらされるであろう用途では、Teflon(登録商標)が好ましいであろう。細胞が気体透過性物質に付着する接着培養に関しては、WO01/92462号、米国特許第4,939,151号、米国特許第6,297,046号及び米国特許出願第10/183,132号に、指針を与える多くの情報源がある。
【0101】
シリコーンが気体透過性物質として使用される場合、従来の見識を超えて厚さを拡大することは、設計に関する選択肢を拡大し、製造プロセスの費用を削減し、且つ破壊の可能性を最小限にし得る。例えば、大きな表面積を有する一部を成形することは、その一部が非常に薄くなければならない場合、おそらく難しい。なぜなら、成形物のコアと本体との間の非常に小さな間隙に、材料が流れ込まない場合があるからである。その一部を厚くすること、つまりその間隙を広げることは、成形プロセスを容易にすることができる。成形に対する利点があり得ることに加えて、より厚い気体透過性物質はまた、ほとんど破壊しないか又はピンホールを示さない。
【0102】
壁の高さ、例えば壁40は、装置のスケールアップ効率に重要な役割を担っている。従来の静止気体透過性装置では、培地の高さに限界がある。例えば、バッグは壁を備えておらず、指示書は培地の高さを制限し、カートリッジ式装置のみ非常に高さの低い壁を備える(例えば、Opticell(登録商標)カートリッジ、CLINIcell(登録商標)培養カセット、及びPetaka(商標)カートリッジ)。本発明の目的は、培地の高さを増大させ、それにより装置の効率を増大させることである。壁の高さは、どのくらいの培地が装置に存在できるかを決定し得る。培地を加えることによって、より大きな供給源である基質(substrate) 、及び廃棄生成物用のより大きなシンクを提供する。壁高を高めることにより、スケールアップの間、より多くの培地が必要とされる場合、装置の配置はインキュベータ、フローフード及び生物学的有害廃棄物袋の形状と適合する。さらに、細胞が存在する表面積に対する容積の増大は、存在する細胞当たり、より多くの培地が与えられることを可能とし得る。そのことは、栄養供給の頻度を減らす効果があり、したがって労力及び混入の危険性を減らすことができる。装置設置面積1cm2当たり存在する細胞数を増大させる効果もあり得る。
【0103】
また、培地の容積を増大させる壁を組み立てることは、培地蒸発の影響を小さくする有益な効果もあり得る。培地蒸発は、培地内に存在する溶質の濃度を変えてしまうため、細胞培養では問題となる。既存の気体透過性装置はこのような事象になりやすい。なぜなら、それらの装置の培地容積に対する気体透過性表面積の割合が高いからである。このような事象を防止する試みは、例えば米国特許出願第10/216,554号及び米国特許第5,693,537号に記載されているが、装置内の培地の容積を増大させるだけで、蒸発の影響を減らすことができる。従来の静止気体透過性装置に気体透過性表面積に対する培地容積の割合を増大させた場合、溶質濃度変化の割合は、蒸発がある場合に比例的に減少し得る。
【0104】
好ましい実施形態では、壁は、気体/液体界面に依存した装置の高さを超過した高さに培地を存在させることができるようにすべきであり、通常の静止気体透過性装置の高さを上回ることがより好ましい。例えば、壁40の高さは、3mmを超え、より好ましくは2.0cmを超え、その結果利点を与え得る。従来の気体透過性装置よりもより多くの培地を装置に加える選択肢を装置の使用者に提供することにより、1つの装置当たりより多く
の細胞を収容する能力、装置への栄養供給頻度の低減、及び設置面積を増大させることのない装置のスケールアップを含む、多くの利点が生じる。壁は任意の生体適合性材料から構成することができ、液体密封シール(liquid tight seal )を形成するように下方気体透過性物質と結合させる(mate: 噛み合わせる)べきである。下方気体透過性物質を壁と結合させる方法としては、接着結合、ヒートシール、圧縮圧密(compression squeeze )、及び部分間の封止を作り出すために一般的に使用される任意の他の方法が挙げられる。任意選択として、壁及び下方気体透過性物質は、同一の材料で形成され、単一体として製造することができる。例えば、シリコーンが用いられる場合、壁及び下方気体透過性物質は、単一気体透過性部品となるように液体注入成形されるか又はディップ成形され得る。それにより、気体透過性細胞培養装置が、図4Bに示されるように垂直に立てて置かれるか、又は、その上に細胞20が静置している気体透過性壁41を示している図4Cに示されるように、装置の側面を下に置く場合に細胞がその上に存在するような気体透過性面を作る利点がある。
【0105】
或る特定の気体透過性細胞培養装置の側面を下に置くことは、装置が、狭間隔のインキュベータ棚に対して高すぎる場合に、装置のプロファイル(profile :横幅)が小さくなるため、インキュベータ用空間を最適に使用するのに役立つことができる。気体透過性細胞培養装置の側面を下に置くことが望ましい場合、装置を円形にする代わりに正方形又は長方形にすれば、装置の側面を下に置いた場合に、細胞が存在する平面が作り出されるであろう。これは、細胞が互いの上に積み重なり、場合によっては危険な勾配を生じることになる、集中局在化領域を防ぐため、有利である。装置の深さと幅の寸法が異なる場合、細胞がその上に存在するような3つの相互性表面領域を利用することができる。また、気体透過性細胞培養装置が配置された位置に応じて3つの代替的な最大培地高が存在する。装置がこれらの代替位置での操作用に組み立てられた場合、装置が置かれる面は気体透過性物質から成ることが好ましい。それにより、この面に重力によって沈む細胞が気体交換に最適な近傍にあることを可能とする。
【0106】
実験室の空間の使用を最も効率的にし、培地内の勾配形成を最小限にし、且つ播種中に下方気体透過性物質上で細胞が均一に堆積することを可能にするために、培地を気体透過性物質上に比較的対称的な形状で保持する、構造的に十分な強度を有する壁が構成されることが好ましい。pH又は混入状態を判定するために、壁は培地の色変化を視覚的に評価することが可能であれば、また有利である。気体透過性細胞培養装置が容易に手で持ち上げられることが可能なように壁が構成されてもよい。壁が気体透過性であることが望ましい場合、また、頑丈な位置に壁を固定するために、別個の独立体が壁の周辺に設置された場合、大部分の壁と気体の接触が阻止されないようにすることが好ましい。
【0107】
気体透過性細胞培養装置は、静止モード又は回転モードのいずれかで機能するように構成され得る。そのようにするためには、気体透過性細胞培養装置は、好ましくは円筒型であるべきである。円筒型に形作られた本体は、装置が標準的なローララックに配置される場合、正方形又は長方形の本体よりもより多くの容積を備える。しかし、非筒状の本体形状でも、本体の周りに円形のハウジングを取り付けることにより、ローララックで機能することができる。使用者に、装置を垂直、水平又は回転位置で機能させる選択を与えることが望ましい場合、気体透過性細胞培養装置の底及び側壁の両方が気体透過性物質から成るべきである。装置が水平、回転又は非回転位置で操作されるだけの場合、費用面でより効率的であり、装置の端面が気体透過性物質から成らない場合に蒸発する表面積を最小限にし得る。
【0108】
気体透過性細胞培養装置が下方気体透過性物質を備えた筒状の形状に構成され、且つその壁が気体透過性物質から成る場合、使用者の選択に応じて装置が垂直に立てて配置されるか、又は回転され得る。最大混合が或る用途(例えば、抗体産生時間を減らすように求
められる場合であり得る)に有益性がある場合、気体透過性細胞培養装置を回転することが有利であり得る。この任意選択性が望まれる場合、気体透過性細胞培養装置の壁は、下方気体透過性物質について記載された同一方法で気体透過性にされるべきである。ボトルの長さ又は直径に制限はないが、気体透過性細胞培養装置が標準的なローララックで機能することができるように壁が標準的なローラボトルの直径と一致している場合、有利であり得る。
【0109】
細胞のせん断を低減させることが望ましい場合、細胞のせん断の一因となり得ないように、装置全体を培地で満たすことによりその装置から気体を除去し得る。ポートは、培地が装置全体を満たす際の混入の危険性を減らす、かなりの数の方法で設計され得る。また、装置が回転されるか、又は装置の側面で機能する場合、側面だけが気体透過性物質から成る必要がある。
【0110】
培地が従来の見識を上回る高さで存在することを可能とする装置によってもたらされる、スケールアップの利点は、本明細書中の生物学的結果を示す実施例を踏まえて、当業者に明らかとなるであろう。スケールアップの効率性の例として、気体透過性細胞培養装置が、垂直位置で操作される円筒型であり、その底部が気体交換に付される場合、直径を倍にすると、容積は、高さが一定に保たれる場合の4倍に増大する。例えば、およそ11.430cm(4.5インチ)径及び約19.558cm(7.7インチ)高の装置は、約2Lの培地を収容し得る。装置の直径を約22.860cm(9.0インチ)にすることにより、装置は8Lの培地を収容し得る。装置の直径を約45.720cm(18.0インチ)にすることにより、装置は32Lの培地を収容し得る。したがって、重要なパラメータ、例えば、培地の高さ、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合、を一定に保ちながら、培養容積を容易にスケールアップすることができる。これらのパラメータを一定に保つことにより、小容積用の装置に開発されたプロトコルは、装置の容積が増大してもおそらく不変のままである。
【0111】
気体透過性細胞培養装置が垂直位置で操作され、且つ懸濁細胞が培養される場合、周囲気体が、下方気体透過性物質の下面と比較的非閉塞的に接触し得る場合に利点がある。例えば、棚が穿孔されていないインキュベータ内で、下方気体透過性物質がインキュベータの棚と接触するようにした場合、培養物内及び培養物外への気体の移動が制限され得る。図5の断面図に示される実施形態では、下方気体透過性物質サポート80は、下方気体透過性物質30が気体区画90を維持することにより周囲気体と必ず接触するよう作用する。好ましい実施形態では、培養物をサポートするのに必要とされる気体交換の量を減らさずに下方気体透過性物質サポート80が下方気体透過性物質30と部分的に接触することができるようにすることで、気体区画90が維持される。周囲気体にさらすことに加えて、下方気体透過性物質サポート80は、細胞20がどんなに低い位置でも積み重ならないように実質的に水平な状態で下方気体透過性物質30を維持する。これは、細胞20が下方気体透過性物質30の全体にわたって均等に分布し得る状態に対して、拡散勾配を生じ、且つ細胞増殖を制限するであろう。したがって、下方気体透過性物質サポート80の設計目的は、物質が実質的に水平に保たれることを必要とする多くの場所で、下方気体透過性物質30の下面と十分な気体を接触させたまま、下方気体透過性物質30と接触させることであり得る。当業者は、この目的を達成する多くの方法があることを認識しているであろう。図5に示されるように、突出部110がこの目的を達成する。
【0112】
「インサーキットテスター(bed of nails:ネイルベッド)」構成は、十分な気体交換をさせながら、実質的に水平位置で下方気体透過性物質30を維持する1つの方法である。例えば、均等に分布され、且つ下方気体透過性物質サポートから1mm突出する1mm×1mmの正方形は、実質的に水平位置で下方気体透過性物質を保持することができる。突出部110が、図5に示されるように、下方気体透過性物質サポート80の表面の50
%を占める場合、この構成は、十分な気体交換により、約0.010cm(0.004インチ)厚のシリコーン膜上で1cm2当たり約1億〜1.5億個のマウスハイブリドーマ細胞を培養することを可能とする。また、図5に示されるように、下方の気体出入開口部100は、気体が受動拡散により下方気体透過性物質サポート80の気体区画90に対する出入りを可能にする。これは、気体透過性細胞培養装置10Bを、補助的なポンプ機構を必要とせずに周囲条件下で機能させる。足場95は下方気体透過性物質サポート80を持ち上げ、周囲気体が下方の気体出入開口部100で利用可能になるようにさせる。この情報はまた、装置が回転モード又は非回転モードのいずれかで、装置の側面について記載されるように機能する場合、側壁周辺の気体区画を維持するのに適用される。気体透過性物質に十分な気体の接近を可能にする他の可能性も利用できる。インテグラバイオサイエンス社(Integra Biosciences AG)製、例えばCELLine(商標)製品は、下方のプラスチックサポートから30.48cm(1フィート)持ち上げたオープンメッシュを用いて、気体透過性膜への気体のアクセスを可能にしている。また、米国特許第5,693,537号もこの特徴に対する付記的なガイダンスを提供している。
【0113】
図5に示される構成では、蓋70が培地出入口60を覆い、混入を防ぐ。O−リング75は、装置が水平位置にあるか、完全に満たされているか、又は偶発的に落下するような場合等、培地50が気体透過性細胞培養装置10Bから漏れないように保証する。
【0114】
或る特定の実施形態では、培地は下方気体透過性物質上全体に存在する必要はない。棚間の距離が制限されたインキュベータでの使用に望まれ得るような、垂直な細胞培養装置のプロファイルを減らすために、培地の一部は下方気体透過性物質の直に上ではない領域に存在し得る。図6の断面図は、垂直位置で操作される場合の気体透過性細胞培養装置10Cのプロファイルを減らすために、壁40Cが下方気体透過性物質30から隔てられた懸濁細胞培養用に構成された実施形態を示す。この構成では、気体透過性細胞培養装置10Cの幅又は直径を単に拡大することにより、装置のプロファイルを減らしながら、細胞が存在する表面積に対する培地容積の割合が一定に保たれ得る。細胞20が、播種、栄養供給及び取り扱いの際に、下方気体透過性物質30上に存在し続けることを確実にするよう留意すべきである。内壁42は、重力により細胞20を下方気体透過性物質30上の領域に維持することにより、このことを達成する。好ましい実施形態では、壁は、3mmを上回る下方気体透過性物質30よりも上の高さに培地を存在させることができるようにすべきである。
【0115】
図7A及び図7Bは、装置内に存在する培地容積に応じて装置の高さを上げるか、又は下げることができる、気体透過性細胞培養装置に関する好ましい実施形態の断面図を示す。図7Aでは、培地50を気体透過性細胞培養装置10Dに加え、浮き胴(buoyant shoulder)25と接触させる。図7Bでは、培地50は浮き胴25に上方の力を及ぼし、その結果、培地50の容積が増大するに応じて気体透過性細胞培養装置10Dの高さが上がる。示された構成では、壁40Dは気体透過性細胞培養装置10Dの高さを伸縮させるように形作られたベローである。浮き胴25は、培地50よりも密度が小さい任意の生体適合性材料であり得る。また、浮き胴は壁40の一体部分であり得る。気体透過性細胞培養装置10Dを上方に伸長するのに十分な力を発揮するには、培地50の適切な容積を移動させる大きさに作るべきである。この構成では、気体透過性細胞培養装置10Dは、培養を行うのに必要な分だけの空間だけを占め、1つの製品で様々な用途に最適な大きさとなり得る。例えば、ハイブリドーマを培養することに適した培地の容積は、膵島を維持することに適した培地の量とは異なる場合がある。そのような場合、気体透過性細胞培養装置10Dは、各用途に必要な分だけの空間を占めるだけでよい。また、最小容積の状態で、滅菌、出荷、保管、インキュベーション及び廃棄することが可能であり、それにより培養プロセスの費用を削減できる。当業者は、例えば、同時係属中の米国特許出願第10/460,850号で記載されるような多種多様な機械的メカニズム等、浮力以外の装置の形状
(プロファイル)を変更する多くの他の方法があることを認識するであろう。
【0116】
図8は、各ウェルの底部が気体透過性である、気体透過性マルチウェルプレート15に関する実施形態を示す。下方気体透過性物質30Aの特性は、図4Aの実施形態で記載されたものと同一である。6ウェルプレートを示すが、従来の6ウェル、24ウェル、48ウェル、及び96ウェルフォーマットを含む、かなりの数の個々のウェル45を提示することができる。壁40Eは、従来のマルチウェルプレートの壁高を超過する下方気体透過性物質30Aを越える高さに、培地を存在させるように構成されている。それにより、従来のマルチウェルプレートに比べて設置面積を減らしつつ、各ウェルに存在し得る細胞の数を増大させる。例えば、マウスハイブリドーマ細胞は通常、培地1ml当たり1×106個の細胞の密度で存在し得る。ウェルが8.6mm径、培地の高さが2mmである場合、0.12mlの培地では、約0.12×106個の細胞が1つのウェル当たり存在することができる。壁を高くすることにより、1mlの培地がウェルに存在し得る場合、ほぼ5倍もの細胞(すなわち、1ml当たり1×106個の細胞)をサポートするのに十分な培地が1つのウェル当たり存在し得る。但し、多数の細胞が0.58cm2の表面積(すなわち、8.6mm径)の気体透過性物質上に存在し得るとする。実施例1は、1×106個を超える多くのマウスハイブリドーマ細胞が、培地容積に依存したこの大きさの表面積に存在し得ることを示す。より多くの培地が、より多くの細胞のサポートができるので、栄養供給の頻度を減らし、培地の組成を変える蒸発速度を低減することができる。
【0117】
壁は任意の生体適合性材料から構成することができ、液体密封シールを形成する方法で、下方気体透過性物質に噛み合わされなければならない。下方気体透過性物質30Aを壁40Eに噛み合わせる方法は、図4Aの実施形態に関して記載されたものと同一である。また、図4Aの実施形態に記載されるように、壁40E及び下方気体透過性物質30Aは同一の材料で形成され、且つ単一体として製造され得る。下方気体透過性物質30Aは、図5に示されるように実質的に水平位置で支えられ得る。ここで、下方気体透過性物質サポート80は、気体区画90と連通する下方気体出入開口部100を備えて構成される。ウェル45の底部のスパンが小さい場合、サポートは不必要である場合がある。なぜなら、気体透過性物質の厚さ及び物理特性によっては、下方気体透過性物質30Aの物理的強度が下方気体透過性物質30Aを適切な水平位置に保持し得るからである。この場合、気体移動が、穿孔されていない棚を備えたインキュベータにおいて問題とならないように、足場95Aを用いて気体透過性マルチウェルプレート15を持ち上げることができる。頂部カバー55Aは、混入を防ぎ、蒸発を最小限にする。
【0118】
図9Aは、一部を切り取った斜視図を示し、図9Bのウェル45Aは、気体透過性マルチウェルプレート16に関する好ましい実施形態のA−Aでの断面図を示す。この実施形態では、ウェルの壁は気体透過性である。6ウェルプレートを示すが、従来の6ウェル、24ウェル、48ウェル、及び96ウェルフォーマットを含む、かなりの数の個々のウェル45Aが提示され得る。従来のマルチウェル組織培養プレートの顕微的付着表面、又は可視光特性のいずれかを保持することが望ましい場合、この構成は有益であり得る。さらに、各ウェル45Aを、細胞培養に使用される従来のマルチウェルプレートの最大の深さよりも深くすることにより、より多くの培地が培養に利用することができ、且つ壁の気体透過性の性質が培養物の適切な気体交換を可能とし、気体/液体界面の位置決めが重要ではないように得る。非気体透過性底部31を液密的に気体透過性壁41と噛み合わせる。この目的を達成する多くの方法がある。例えば、非気体透過性底部31の直径が気体透過性壁41の直径を僅かに上回ると、気体透過性壁41に非気体透過性底部31に対し力が加えられ、それにより液体密封シールを作製することができる。気体透過性壁41は、図4Aの気体透過性物質に関して記載されたような任意の特性を有し得る。しかし、好ましい実施形態では、気体透過性壁41はシリコーンから成る。なぜなら、シリコーンには、液体注入成形により容易に製造される性能、並びに延伸及び非気体透過性底部31に対す
る液体密封シールを付与する潜在的性能があるからである。非気体透過性底部31は、従来のマルチウェル組織培養プレートで一般に使用される任意のプラスチック、又は当業者には既知の任意の他の細胞付着材料であり得る。
【0119】
気体透過性物質から気体透過性マルチウェルプレート16のウェル底部を含む各ウェルを製造することで、シール接合部がなくて済むため、それほど高価ではないであろう。そのため、接着培養が望まれる場合、適したスカフォールドがウェルの底部に配置され得る。顕微的な評価が望まれる場合、光学的透明度を確実にするように留意すべきである。細胞培養の熟練者(当業者)に既知のいかなる細胞付着面もウェルに配置され得る。細胞付着面が浮揚性である場合、細胞付着面をウェル内に圧入することにより、細胞付着面を所望の位置に維持させることができる。細胞付着面を適所に保持する多くの他の方法もまた可能である。
【0120】
図10A及び図10Bは、接着細胞を培養する場合、空間をより効率的に利用する気体透過性細胞培養装置の一実施形態の断面図を示す。スカフォールド120は気体透過性細胞培養装置10E内に存在する。側壁40Fは気体透過性物質から成り、そのため装置の側面を介した気体交換が可能である。この様式では、高さが増大するに伴いスカフォールド120が均一に拡大(scale )され得るため、気体透過性細胞培養装置10Eは高さに制限はない。より多くの細胞を培養させるには、装置をより高くし、より多くのスカフォールド120を加えるだけでよい。好ましい実施形態では、各スカフォールド120間の距離は、スケールアップの間、一定に維持される。例えば、スペーサ135を有するスカフォールド120を構成することにより、スカフォールドが等しい距離離れて維持され、且つ気体透過性細胞培養装置10Eの底部と平行に保持され、垂直直線方向にスケールアップされる。ピペット出入開口部125は、気体透過性細胞培養装置10E全体からピペット出入を可能とし、培地が加えられる際にガス抜きをするための開口部を備える。ピペット出入は、中央に示されているが、任意の位置にあることができるか、又は針若しくは隔壁等の任意の他の液体取り扱い形態に有利になるように、完全に取り除くことができる。図10Aでは、各スカフォールド120上の種菌130の容積が等しいので、細胞20Aは種菌130内でよく懸濁されており、且つ各スカフォールド120の上面の周りで均等に分配され得る。スカフォールド120の両面が接着細胞を培養することを意図する場合、図10Aに示されるように、播種は先にスカフォールド120の片面を播種することにより2段階で行われ得る。細胞が重力によって堆積し、スカフォールド120の表面に付着した後、気体透過性細胞培養装置10Eは再播種され、180度回転してスカフォールド120の反対面を露出させる。その後、図10Bに示すように、細胞20Aを固着させ、スカフォールド120の露出面に付着させる。
【0121】
細胞付着後、スカフォールドの片面に播種するには通常24時間未満かかり、利便性(convenient)のある任意の静止位置、例えば垂直、転置又はその側面上等で装置が操作され得る。必要に応じて、使用者がローラボトルにより等しいフォーマットを望む場合、装置が回転され得る。従来の装置とは異なり、気体交換が気体透過性壁によって生じ、且つ気体/液体界面の必要性がないため、装置は完全に培地で満たされ得る。この様式では、装置は従来の装置よりも、装置の空間の使用に効率的である。なぜなら、培養物の気体交換のために、装置内に気体を存在させる必要がないからである。装置内で培養され得る細胞数に対する制限要因としては、スカフォールド表面積の量、培地が存在する容積、装置の壁に使用される材料の気体透過性及び厚さ、細胞が存在する、装置の気体透過性壁からの距離、並びに培養される細胞の型が挙げられる。
【0122】
気体透過性細胞培養装置を設計する場合に、スカフォールド領域に対する培地容積の割合が重要であることを理解することは、装置のアウトプットを予測する助けと成り得る。例えば、培養がこれまでローラボトルで行われている場合、ローラボトル培養の表面積に
対する培地の容積は気体透過性細胞培養装置に再現され得る。例えば、150mlの培地を用いて既存の培養が従来の850cm2ローラボトルで行われ、且つ気体透過性培養細胞装置が、従来のボトルと同一の外側形状を有している場合、表面積に対する培地容積の割合は一定に保たれ得る。従来の850cm2ローラボトルの形状で構成された気体透過性細胞培養装置は、約2,200mlの培地を保ち得る。それは、従来のローラボトルの150ml培地容積に比べ、培地容積が14.67倍増加する。したがって、12,470cm2である表面積における14.67倍の増加は、相当の表面積に対する培地の割合を等しく維持する必要がある。そのため、気体透過性細胞培養装置が2,200mlの培地を含有し、且つスカフォールド表面積が12,470cm2である場合、通常1つのボトル当たり150mlで操作する約15個の従来の850cm2ローラボトルで培養される細胞と同数の細胞を培養することが予想され得る。また、栄養供給の頻度もほとんど同一であるはずである。
【0123】
細胞の集密性を顕微的に査定する性能は、多くの用途に有用である。最も下のスカフォールドが気体透過性細胞培養装置の底部を成す場合、細胞の集密性を査定するのに用いられ得る。各スカフォールド上に存在する培地の容積が播種の間等しい場合、任意のスカフォールド上に存在する細胞の量は培養中比較的等しくなる。したがって、1つのスカフォールドが他のスカフォールドの代表例となり得る。いくつかの顕微鏡では、最も下のスカフォールドを、逆転させて顕微的に観察できる位置に物理的に移動させる性能は、集密性及び形態を良好に査定しやすくし得る。図11の断面図に示される構成は、このことを達成し得る方法を示す。壁4GHが柔軟性である場合、シリコーン等の多くの気体透過性物質の中から製造されるような場合に、気体透過性細胞培養装置10Fに対して最も下のスカフォールド120の移動を可能とするために襞が付けられ得る(pleated )。顕微的な評価はまた、図11に示された固定化位置に気体透過性細胞培養装置10Fを製造することにより可能とすることができ、それにより、気体透過性細胞培養装置10Fに対して最も下のスカフォールド120を移動させる必要がなくなる。
【0124】
図10A、図10B及び図11に示されるスカフォールドは平坦であるが、スカフォールドは細胞が付着できるいかなる配置形状であってもよい。例えば、表面を波形に成形することは平面に対して表面積を増大することができ、それにより所定のスカフォールド上に存在し得る接着細胞の量を増大させる。図12Aは、波形に成形された丸状のスカフォールド120Aの斜視図を示す。このスカフォールド120Aは直線方向に波形に成形される。図12BはA−Aでの断面図を示す。図12Cは丸状の波形に成形されたスカフォールド120Bの斜視図を示す。このスカフォールド120Bは、円方向で波形に成形され、図12DはB−Bでの断面図を示す。速い速度の気体移動が非常に活発な細胞をサポートするために必要であるいくつかの用途では、図12Aの構成が優れ得る。なぜなら、図12Cの構成の場合のように、気体移動用のチャネルがスカフォールドの端によって閉塞されない(unobstructred )ためである。気体透過性細胞培養装置が回転される他の用途では、図12Cの構成が優れ得る。なぜなら、その形状が、細胞のせん断を引き起こし得る渦巻きを最小限にし得るからである。
【0125】
構成、顕微的観察の方法、並びに図10A、図11及び図12に記載されたもの等のスカフォールド領域を増大する方法は、マルチウェルフォーマットに一体化され得る。これらの構成は、大きさにおいて完全にスケーリング可能である。図9Bは、スペーサ135により所定の距離離れて維持された複数のスカフォールド120を備えて構成された大表面積ウェル46を示す。それらを通常の伝統的なマルチウェル組織培養プレートのウェルの大きさにすることにより、1つのウェル当たりに存在する接着細胞数を実質的に増大させ得る。壁41Aは気体透過性であることが好ましい。
【0126】
図13は、組織培養フラスコフォーマットと同様のフォーマットで細胞を培養するのに
有用である気体透過性細胞培養装置に関する構成の一切断面を示す。この実施形態では、装置の少なくとも1つの壁が気体移動を行う。この装置は、空間をよりコンパクトに使用できるようにしながら、気体透過性細胞培養装置に従来の組織培養フラスコと同一の特質を保持させるので有益である。望ましい特質としては、注入又はピペット操作での培地の搬入及び除去の容易さ、顕微的観察能、混入又はpHの変化を示し得る培地の色の変化が容易に見られること、並びに出荷、保管及びインキュベータ用空間を最も効率的に利用するための装置の積載可能性が挙げられる。しかし、組織培養フラスコ操作に必要とされる気体/液体界面が除かれ、且つ1つ又は複数のスカフォールドが存在し得るため、気体透過性細胞培養装置は組織培養フラスコよりも優れる。図示の実施形態では、気体透過性細胞培養装置12は、少なくとも1つの気体透過性壁200を備えた液体密封外枠から成る。培地出入口60Aは蓋70Aで覆われる。スカフォールド120Dは、種菌と培地が各スカフォールド120Dの間に存在できる間隔を有して、互いに平行に配向される。好ましくは、各スカフォールド上に存在する種菌又は培地を等量にするために、スカフォールド120Dは等間隔に位置付けられる。気体透過性壁200の気体透過性物質は、図4Aに示される実施形態の下方気体透過性物質30に関して記載されたものと同一の特質を有する。好ましい実施形態では、スカフォールド120Dは、従来の組織培養フラスコに存在する物質の特徴と一致した物質の特徴を有する。頂部壁201及び最も底部のスカフォールド120Dは透明であるので、培地の色を視覚的に査定すること、並びに底部のスカフォールド120Dを顕微的に評価することが可能である。後部壁又は他の壁を気体透過性にすることにより、さらに気体移動能を作り出すことができる。それは、気体透過性細胞培養装置12の設置面積をさらに増大させることが可能となる効果を有し得る。例えば、気体透過性壁200の気体移動能が、約12.700cm(5インチ)幅のスカフォールド120D上に存在する細胞をサポートする場合、反対側の壁を気体透過性にするとスカフォールド120Dが約25.400cm(10インチ)幅である場合に十分な気体移動能が可能となる。気体透過性細胞培養装置12が垂直方向にスケールアップする機能(capacity)に制限はない。
【0127】
図14A〜図14Eは、細胞を培養する際に、より効率的に空間を利用する別の方法を示す。この構成では、スカフォールド120Eは気体透過性細胞培養装置10G内に存在する。この装置は培地50が加えられると容積を拡大することができる。図14Aでは、気体透過性細胞培養装置10Gが装置自体の重さで崩壊の状態にある。これにより、使用される前に、出荷、滅菌及び保管用の空間を効率的に使用することが可能である。スカフォールド120Fをできる限り互いに近接させる。各スカフォールド120Fは、下方の隣接したスカフォールド120Fに力を及ぼすスプリングアーム145を用いて成形される。圧縮されたスプリングアーム145は拡張しようとするが、気体透過性細胞培養装置10Gの上方部分の重さがスプリング力を上回るため、拡張することができない。図14Bでは、種菌130Aを加えることにより浮き胴25Aに対して働いた力を受けて、気体透過性細胞培養装置10Gの高さが上がっている。浮き胴25Aによる種菌130Aの転移により働く上方への力は、スプリングアーム145Kのスプリング力と組み合わされた場合、気体透過性細胞培養装置10Gの上方部分の重さを上回る。スプリングアーム145がその下方の隣接したスカフォールド120Fに対して及ぼす力のため、スカフォールド120Fが離れて互いに等間隔で保持される。各スカフォールド120F上に直接存在する種菌130Aの体積が、各スカフォールド120F上に堆積され得る細胞の量を表す場合、互いに等間隔を保持することは、播種の際に特に有益である。スカフォールド120Fのそれぞれの上に存在する種菌130Aを等しい体積にすることにより、等しい数の細胞が各スカフォールド120F上に存在することができる。図14Cでは、細胞集団の拡大と栄養要求量の増大に伴う培地50の追加に応じて、図14Bに比べ、気体透過性細胞培養装置10Gの高さを再度上げている。スカフォールド120Fは、スプリ
ングアーム145がその下方の隣接したスカフォールド120Fに対して及ぼす力のため、さらに離れて互いに等間隔で保持される。各スカフォールド120Fの間の一定した距
離は、細胞の位置する場所全てにおいて表面積に対する培地50の容積の一定の割合を保障し、勾配形成の可能性を減らす。図14Dにおいて、培地50の除去及び浮き胴25Aの上方への力の喪失により、気体透過性細胞培養装置10Gは崩壊している。気体透過性細胞培養装置は、今は廃棄用に効率的な大きさとなっている。接着細胞の回復が必要な場合では、気体透過性細胞培養装置10Gを崩壊させることは、培地50を除去するとともにトリプシンを加える場合、有益である。この様式では、細胞を回復させるのにわずか少量のトリプシンしか必要とされない。当業者は、気体透過性細胞培養装置10Gの高さを変更する多くの他の方法が適用され得ることを認識するであろう。
【0128】
図14Eの斜視図に示されるように、スプリングアーム145はスカフォールド120F内に直接成形され得る。スプリングアーム145は、少なくとも3つの場所に位置決めすることが好ましく、スカフォールド120Fが平面であり、且つ隣接したスカフォールド120Fに平行のままであることを確実にする。細胞接着につながるあらゆる材料が許容されるが、好ましいスカフォールド120F用の材料はかなり脆性のあるポリスチレンである。したがって、スプリングアーム145が、圧力で亀裂が生じることを防止するために良好な成形部品設計によって構成されることを確実にするよう留意すべきである。応力の低い部品設計の技法は、プラスチック部品設計の熟練者(当業者)によく知られている。
【0129】
気体透過性細胞培養装置の高さに関係なくスカフォールドの位置を移動することが望まれる場合がある。例えば、伸長しない壁を備えた気体透過性細胞培養装置を構成するほうが、より経済的だが、培養中それぞれのスカフォールド上の表面積に対する培地容積の割合を変更することによってその用途が依然として利益を得られる場合、これは実用的であり得る。図15A〜図15Cはそのような目的を達成する一実施形態を示す。明確には、気体透過性細胞培養装置の一部だけが示される。図15Aに示される気体透過性細胞培養装置の一部の上面図では、スカフォールド間の距離を変えるために、3つの持ち上げポスト(elevation post)160が3つのランプ150のそれぞれを上方に移動するように位置付けされる。
【0130】
スカフォールド間の距離を変える方法は、図15B及び図15Cを検討することにより最もよく理解され得る。図15Bは図15AのA−A断面図を示す。図15Bで示されるように、2つのスカフォールド120G間の距離が最小となる位置のスカフォールド120Gを示す。ランプ150はスカフォールド120Gの頂部から延び、持ち上げポスト160はスカフォールドロケータスクリュー170から延びる。持ち上げポスト160はランプ150の上方への移動を始めていない。スカフォールド間の最小距離は、ランプ150上に存在するスカフォールド120Gの下方面と接触するランプ150の高さによって決まることが分かる。図15Cを参照すると、スカフォールド120Gはそれらの間の距離が最大となる位置にある。スカフォールドロケータスクリュー170が回転矢印180の方向に回転することで、持ち上げポスト160がランプ150を上り、その上に存在するスカフォールド120Gを上昇させる。持ち上げポスト160がランプ150Lの最も高い点に存在する場合、ランプ150の高さと持ち上げポスト160の高さを足したものに等しいスカフォールド120L間の最大距離が達成される。スカフォールドロケータスクリュー170が回転する際、スカフォールド120Gが回転するのを防止することにより、持ち上げポスト160がランプ150を上昇移動する間に、ランプ150を固定位置に留まらせる。これは、さねはぎ配置で気体透過性細胞培養装置壁の内部にスカフォールド120Gを噛み合わせることにより達成することができる。図15Aのスカフォールドの上面図で最もよく示されるように、つまみ212は気体透過性壁40Hから延び、各スカフォールド120Gの溝215と噛み合う。これは、ロケータスクリュー170の回転中にスカフォールド120Gの回転を防止するだけではなく、スカフォールド120Gから気体透過性壁40Hが引き離されるのも阻止する。こうして、気体透過性細胞培養装置
の形状が保持される。ロケータスクリュー170は、滅菌ピペットチップにより回転されるように構成され、それにより装置の混入を防ぎ、標準的な実験器具の使用によりスカフォールド間の距離を再配置することを可能にし得る。
【0131】
本発明は以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに説明される。
実施例
【実施例1】
【0132】
培地の高さが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす効果
下方気体透過性物質から成る装置により、培地の高さを変更することが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす影響を査定するため、評価を行った。培地容積に対する気体透過性物質表面積の割合を変更することの効果もまた査定された。下方気体透過性物質及び従来の見識を超えた高さで培地を保持する能力を備えて構成された単区画の試験装置を、従来の見識の範囲内の高さで培地を保持した単区画の対照試験装置と比較した。Si−Cultureバッグ(米国特許第5,686,304号)に定められた1.6cmという培地の高さの限定に対して比較を行った。対照試験装置は、高さ1.6cmで培地を収容するように構成し、試験装置全てに使用された気体透過性物質は、実際のSi−Culture(商標)バッグから得られた気体透過性物質から成っていた。
【0133】
管状試験装置105を図16に示されるように構成した。壁40IをUltem1000(高温ポリカーボネート)円筒型ストックから機械加工し、内径約2.540cm(1.00インチ)及び外径約3.810cm(1.50インチ)の管が得られた。厚い壁により、壁を介した気体移動が培養を促進しないことを保証した。下方気体透過性物質30Aを、Si−Culture(商標)バッグから除去されたシリコーンから成る厚さ0.045のシートから製造し、機械加工された管の底部に液密的に固定し、その上に存在する細胞20B用の5.07cm2の生育面積が得られた。下方気体透過性物質サポート80Mもまた、Ultem1000から機械加工した。下方気体透過性物質30Aを、気体区画90Aを保持するメッシュ115により水平位置に保った。メッシュ115は、約2.540cm(1インチ)当たり16本の約0.051cm(0.020インチ)径のストランドで構成された。下方気体出入開口部100Aを、5%CO2、95%R.H.および37Cの周囲環境で気体連通させた。試験装置内に備えた培地50Aの量を異なるものとした時の、細胞20Bを増殖させる装置の生産能力を比較した。壁40Iに密着固定した蓋70Bにより筒状の試験装置105を混入から保護した。試験によって、培地50Aが細胞上約1.6cm、3.2cm、5.6cm、10.2cm、15.3cm、及び20.4cmの高さに存在した場合の結果を比較した。培地50Aは、10%のHycloneFBSが添加されたHycloneHyQSFM4MAb−Utilityで構成された。細胞20BはIgGを分泌するマウスハイブリドーマ細胞であり、下方気体透過性物質30A 1cm2当たり0.76×106個の播種密度で播種した。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。周期的に細胞の計数とモノクローナル抗体産生の測定値をELISAにより取った。表1はその結果を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
従来の見識を代表する試験装置の対応するパラメータ(すなわち1.6cm)で任意の所定の試験装置で測定された各パラメータを割ると、従来の見識を超えた高さに培地を存在させる利点が明らかに示される。試験装置が1.6cm(すなわち、1.25cm2/ml)の高さで培地を含有する場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、Si−Culture(商標)バッグの割合で試験装置の割合を割ることにより求められる。表2にこの様式における表1のデータを提示する。
【0136】
【表2】
【0137】
表2のデータは、気体透過性細胞培養装置の配置を変更してより多くの培地を細胞上に存在させる利点を明らかに示す。例えば、最後の行は、装置が従来の細胞培養用バッグの
12.75倍の高さに培地を保持することができる場合、この装置はそれが占める据付面積1cm2当たり2.91倍の細胞を培養することか可能であり、完全産生時間が2.83倍増加するだけで11.99倍のモノクローナル抗体(Mab)を産生することを示す。また、培養容積に対する気体透過性物質表面積の割合がSi−Culture(商標)バッグのものと比較された場合、劇的にその割合が減少し得る。その割合がSi−Culture(商標)バッグにより使用される割合のわずか4%であった場合でさえ、培養物を効率的に増殖させた。これにより、培地の高さを上げつつ、装置の設置面積は固定されたままにさせることを含む、多種多様の装置構成の存在が可能である。また、より多くの培地が気体透過性表面積1cm2当たりに存在するので、蒸発の影響を最小限にさせる。
【0138】
重要なことに、このデータは、培養物が増えるが装置の設置面積は小さいままであり得ることを示す。表3は、試験装置に存在する培地の容積を収容するために必要な装置の設置面積の表面積を示す。1行目は試験装置内の培地容積を示す。2行目は、培地を益々加える際に固定されたままの試験装置の設置面積を示す。3行目は、試験装置に存在する培地の容積を保つために通常のバッグで必要とされ得る設置表面積を示す。この場合、設置面積は、メーカの推奨する培地の高さである1.6cmで1行目の容積を含有する場合のSi−Culture(商標)バッグに関して示される。4行目は設置面積の差異を示す。例えば、試験装置が103.4mlの培地を含む場合、メーカの推奨に従って操作された場合のSi−Culture(商標)バッグの設置面積は64.6cm2となり得るが、試験装置の設置面積はわずか5.1cm2で済む。そのため、培地を20.39cmの高さに存在させた試験装置は、ほぼ同一の量のMabを産生するためにSi−Culture(商標)バッグに必要な設置面積の8%の設置面積が必要なだけで済んだ。
【0139】
【表3】
【0140】
従来の構成の全てに関連する非常に多くの有益性がある。扱いにくい形状の従来の細胞培養用バッグを除外し、インキュベータ用空間のより効率的な使用、より容易な培地の搬入と除去、及び混入危険性の減少に関連した多種多様な有益性を生じることができる。気体透過性カートリッジに存在する少容積の培地は、カートリッジを高くし、培地容積の許容積に対する気体透過性膜の割合を減らすことにより大幅に増加され得る。それは、スケールアップの際にほとんど構成部品が必要とされないことを可能とする効果を有する。従来の気体透過性のペトリ皿及びマルチウェルプレートのフォーマットに関して、装置の設置面積、又は必要とされる装置の数を増やすことなく、より多くの細胞が1つのユニット当たりで存在し得る。また、栄養供給の頻度を低減させ得る。蒸発の影響を最小限にすることは全ての構成で成し遂げられ得る。なぜなら、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が大幅に低減され得るからである。
【実施例2】
【0141】
気体透過性シリコーンの厚さが細胞増殖に及ぼす影響
米国特許第5,686,304号及び米国特許出願第10/183132号によって記載されたような従来の見識、及びシリコーンを使用する市販の気体透過性製品のデザインは、約0.013cm(0.005インチ)を超える厚さのシリコーンが使用されるべき
ではないことを指示している。しかし、厚さを増大することは製造面及び製品の信頼性の点で利点がある。したがって、下方シリコーン気体透過性物質の厚さが細胞増殖に及ぼす影響を査定するために評価を行った。従来の見識の物質の厚さを、厚さを増大させた同一の材料と比較した。
【0142】
筒状の試験装置を図16に示されるように構成した。壁をUltem1000(高温ポリカーボネート)円筒型ストックの中から機械加工し、内径約2.540cm(1.00インチ)及び外径約3.810cm(1.50インチ)の筒が得られた。下方気体透過性物質の4つのはっきり異なる厚さの構成物を、Si−Culture(商標)バッグから除去されたシリコーンのシートから作製した。下方気体透過性物質30Aを2重、3重、及び4重の層に製造したが、それは、面の周りに均等に分布されたUV硬化シリコーングルーを用いてシリコーンシートを接着し、シート間に空気の隙間を残さずに積層することにより形成した。硬化後、積層シート及び単一シート対照物を機械加工された筒の底部に液密的に固定し、細胞をその上に存在させる5.07cm2の生育面積を得た。試験を3回行った。下方気体透過性物質30Aを、実施例1で説明したように構成された下方気体透過性物質サポート80により水平位置に保たせた。試験によって、培地が細胞上20.4cmの高さに存在した場合の結果を比較した。培地は10%のHycloneFBSを添加したHycloneHyQSFM4MAb−Utilityで構成された。マウスハイブリドーマ細胞を、下方気体透過性物質1cm2当たり4.3×106個の生細胞の播種密度で播種した。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。周期的に細胞を計数し、グルコースの測定値を取った。表4はその結果を示す。
【0143】
【表4】
【0144】
従来の見識を代表する単一の約0.011cm(0.0045インチ)厚のシートに関して収集したデータに対してデータを参照することによりデータを正規化した。厚さを劇的に増加させる効果が細胞増殖を支援する能力において著しく負の影響とはならないことがはっきりと分かる。物質の厚さを約4倍、すなわち約0.011cm(0.0045インチ)から約0.041cm(0.016インチ)に増加させた場合、細胞増殖における影響はなかった。シリコーン膜の厚さを5.33倍、すなわち約0.011cm(0.0045インチ)から約0.061cm(0.024インチ)に増加させた場合、生育能は11%だけ減少した。同様に、従来の見識を超えた7.33倍の厚さの増大は生育能を21%だけ減少させた。モノクローナル抗体の産生のためのハイブリドーマ培養等の多くの細胞培養の用途で、79%の生存度が一般に認められている。例えば、CELLine(商標)製品では、操作説明書に記載されているように、ハイブリドーマ生存度は通常50%である。そのため、装置のデザインは、劇的に性能を低下させることなくより厚いシリコーンの壁を収納し得る。単純化された液体注入成形又はより低いピンホール電位(potential) 等の組み立て及び機能の改善は、厚さの増加による結果であり得る。要約すれば、以前まで可能であると思われていたものよりも厚い壁を備えた高い機能性を有する細胞培
養装置の設計が可能である。
【実施例3】
【0145】
回転型及び非回転型装置での高い液体の高さでの細胞の培養能
従来の見識とは異なる様式で気体透過性細胞培養装置を構成することにより得られる利点を査定するために評価を行った。2つの一般的なフォーマット、すなわち、1)非回転型気体透過性装置、及び2)回転型気体透過性装置を評価した。非回転型気体透過性装置の構成では、培地の高さは、従来の見識によって課された制限をかなり超えていた。培地容積に対する気体透過性表面積の割合は従来の見識のものよりもかなり低く減少した。回転型気体透過性装置の構成では、最新型の気体透過性回転型ボトルのものよりも、培地を気体透過性壁からさらに離れて存在させ、より多くの培地を1つの装置当たりに存在させた。
【0146】
モノクローナル抗体は通常、細胞培養用バッグ及び回転ボトルを利用して産生される。従来の850cm2のローラボトルは対照物としての機能を果たした。試験装置を図4に示される実施形態に従って構成し、従来の850cm2のCorning(登録商標)ローラボトルと同一の寸法を有するように寸法を構成した。気体透過性物質は、米国特許第5,686,304号でさらに規定されたようなSi−Culture(商標)バッグのものと同一であった。非回転型試験装置の気体透過性表面積は装置の底部面の面積に限定され、98cm2であった。側壁は気体透過性ではなかった。回転型試験装置の気体透過性表面積は、装置の円筒の側壁面全体の面積に限定され、850cm2であり、その端部は気体透過性ではなかった。培地は、2.5%のHycloneFBSを添加したHycloneSFM4MAbで構成された。各試験装置に、使用される培地1ml当たり細胞密度0.04×106個のマウスハイブリドーマ細胞を播種した。試験装置それぞれに2,050mlの培地を入れた。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。
【0147】
従来のローラボトルに、ローラボトルでの使用に推奨される最大量の培地である255mlの培地を入れた。抗体の存在をELISAで確かめた。表5はその結果を示す。
【0148】
【表5】
【0149】
表5は、従来のローラボトル対照物と同一容積の空間を占める回転型及び非回転型気体透過性試験装置が、如何に約9倍多くの抗体を産生することができるかを示す。表5はまた、如何に回転型気体透過性フォーマットを使用して、静置型気体透過性対応物に比べて抗体を産生するのに必要な時間の総計を減らすことができるのかを示す。20%の時間削減(3日)が達成された。重要なことに、回転型及び非回転型フォーマットは空間面で効
率的な配置で少なくとも9倍の改善を生み出すことができ、従来のローラボトルと比較して、滅菌、出荷、保管、労力、インキュベータ用空間、及び廃棄の費用の削減をもたらす。
【0150】
この結果はまた、従来の見識からかけ離れた様式で気体透過性装置を構成することにより得られる利点を明らかに示す。非回転型試験装置における培地の高さは約20.9cmであり、従来の細胞培養用バッグの推奨された最高高さを10倍超えた高さであった。装置が2.0cmの培地の高さに組み立てられた場合、等量の培地を収容するために、非回転型試験装置の設置面積の10倍を超える1,025cm2の設置面積が必要であったであろう。
【0151】
回転型気体透過性装置の配置の有益性は大変多い。回転型試験装置は従来のローラボトル(255ml)で推奨される培地の最大容積の8倍近い培地の容積、シンセコン社からのRotaryCellCultureSystem(商標)の4倍を超える培地容積、MiniPERMの5倍近い培地容積、及びスポウドリィング(Spaudling) 、シュワルツ(Schwarz) 及びウルフ(Wolf)他、及びファルケンブルク(Falkenberg)他の特許提案で可能とされたよりもかなり多くの培地容積を収容した。また、培地は、スポルディング、シュワルツ及びウルフ他の特許提案で特定された限度の2倍を超えた、試験装置の気体透過性壁の任意の部分から最大5.6cmに存在した。回転させるための特別な機器をいずれも必要とする、市販のシンセコン(Synthecon) 社(商標)からのRotaryCellSystem(商標)、及びザルトリウスグループのビバサイエンス社からのminiPERM(商標)とは異なり、回転型試験装置は標準的なローララック上で機能することができた。そのため、回転型気体透過性装置のスケールアップ効率は他の装置及び手法よりもはるかに優れる。
【実施例4】
【0152】
気体/液体界面の非存在下での接着細胞の培養能
気体透過性壁を介して生じる気体交換を可能とすることにより、気体/液体界面が存在しない場合の接着細胞の培養能を査定するために評価を行った。試験装置を図17に示されるような様式で構成した。この装置は気体/液体界面により気体が移動する可能性を排除した。気体透過性壁試験装置12は、長方形の液体密封外枠241から成り、1つの気体透過性壁200A及び5つの非気体透過性壁210で構成された。気体透過性壁200Aはシリコーン膜から成り、およそ0.0045の厚さであり、メドトロニック社(ミネアポリス)から購入した。この膜はメドトロニック社で、Si−Culture(商標)バッグを製造するために使用される。液体搬入口220及び液体除去口230は、播種及び栄養供給を可能とする。対照Falcon(商標)T−175組織培養フラスコに相当する接着面を設けるために、底部接着スカフォールド240は、Falcon組織培養フラスコから除去されたプラスチックの断片で構成された。外枠241の内寸法は深さ6cm、幅10cm、及び高さ0.635cmであった。そのため、気体透過性壁200Aは幅10cm及び高さ0.635cmであり、6.35cm2の表面積を生じた。底部接着スカフォールド240は幅10cm及び深さ6cmであり、60cm2の接着面を可能とした。気体透過性壁試験装置12を、播種中、培地で全体的に満たし、それにより全ての気体/液体界面が排除された。そのため、気体交換は気体透過性壁200Aに対しての垂直方向への拡散によって生じるだけとなり得る。60,000個のBHK生細胞(98%の生存度)から成る種物を、10%のHycloneFBS及び1%のL−グルタミンを添加した38.1mlのEMEM培地に懸濁させた。そのため、播種密度は、利用可能な接着スカフォールド240領域1cm2当たり生細胞10,000個であった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は0.167cm2/mlであった。接着スカフォールドの表面積に対する気体透過性膜の表面積は0.106cm2/cm2であった。対照T−175組織培養フラスコに同じ播種密度及び生存度で同一の細胞を播種した。気体透過
性壁試験装置12及びT−175対照を5%CO2、95%R.H.、及び37℃の標準的な細胞培養用インキュベータに配置した。
【0153】
細胞は底部接着スカフォールド240及び対照T−175フラスコ上に重力により沈降し、集密に達するまでその培養物を維持した。試験装置及び対照物の両方が接着スカフォールド全体にわたって集密な単層を示した。視覚的な顕微比較により、気体透過性試験装置12及びT−175対照フラスコの両方の細胞密度はほぼ一致して現れた。T−175フラスコをトリプシン処理し、細胞を計数すると、細胞は1cm2当たりおよそ190,000個の細胞の密度に達していることが確認された。試験装置をライトギムザ染色し、底部接着スカフォールド240全体にわたって細胞分布を確認した。図20は、分布パターンを示し、ここで「前」は気体透過性壁200に近接しており、「中間」は気体透過性壁200と反対の非気体透過性壁210の間のほぼ中間であり、且つ「後」は反対の非気体透過性壁210に近接している。
【0154】
図20は、装置の壁が気体透過性である場合、細胞が気体/液体界面、機械混合、又は潅流の非存在下でスカフォールド上で集密に増殖し得ることをはっきりと示す。そのため、壁による気体移動は、図9A、図9B、図10A、図10B、図11、及び図14A〜図14Eに示される装置を含む本明細書中に記載されるタイプの細胞培養装置が十分に機能するために適切である。実施例4はまた、気体透過性細胞培養装置の壁のうちのただ1つが気体透過性物質から成っていればよいことを示しており、よって豊富な装置設計の選択肢が見えてくる。例えば、気体透過性装置は、1つの側壁を気体透過性にすることにより従来のT−フラスコフォーマットに構築されてもよい。この様式では、気体/液体界面が必要とされないので、より多くの培地が培養に利用され得るか又は装置のプロファイルが低減され得る。
【実施例5】
【0155】
気体/液体界面の非存在下における、複数の接着スカフォールド上での細胞の培養能
気体/液体界面が存在することなく複数のスカフォールド上に接着細胞を培養する能力を査定するために、評価を行った。気体交換は気体透過性装置の壁を介して行われた。気体透過性試験装置は、気体/液体界面による気体移動の可能性を排除した図18に示したような様式で構成された。マルチスカフォールド試験装置14は、1つの気体透過性壁200B及び5つの非気体透過性壁210Aで構成された長方形の液体密封外枠で構成された。気体透過性壁200Bは、0.015厚の成形シリコーン物質で構成された。液体搬入口220A及び液体除去口230Aは播種及び栄養供給を可能とする。接着スカフォールド240Aは、NUNC(商標)CellFactory細胞培養装置から除去されたプラスチックで構成された。マルチスカフォールド試験装置14の内寸法は長さ15.24cm、幅7.62cm、及び高さ2.54cmであった。そのため、気体透過性壁200Bは幅7.62cm、及び高さ2.54cmであり、19.35cm2の気体透過性物質表面積を生じた。各接着スカフォールド240Aは幅6.6cm、及び長さ15.03cmであり、1つの接着スカフォールド240A当たり99cm2の接着表面積を生じた。
【0156】
マルチスカフォールド試験装置14の1つの試験群では、4つの接着スカフォールド240Aが、これらのスカフォールドのそれぞれの間の間隙を5.08mmとして上下に垂直に配置され、その結果、総接着表面積が1つの装置当たり396cm2となった。このバージョンのマルチスカフォールド試験装置14内の培地の容積は、195mlであった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は、0.099cm2/mlであった。接着スカフォールド240Aの総表面積に対する気体透過性膜の表面積は、0.049cm2/cm2であった。
【0157】
マルチスカフォールド試験装置14の別の試験群では、5つの接着スカフォールドが、これらのスカフォールドのそれぞれの間の間隙を2.54mmとして上下に垂直に配置され、その結果、総接着表面積が1つの装置当たり495cm2となった。各マルチスカフォールド試験装置内の培地の容積は、170mlであった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は、0.114cm2/mlであった。接着スカフォールド240Aの総表面積に対する気体透過性膜の表面積は、0.039cm2/cm2であった。
【0158】
マルチスカフォールド気体透過性試験装置14を、播種中、培地で全体的に満たし、それによりいかなる気体/液体界面をも排除した。そのため、気体交換は気体透過性壁に対して垂直方向に拡散することでのみ生じ得る。播種密度は、利用可能な接着スカフォールド領域1cm2当たり15,000個のBHK生細胞であった。培地は、10%のHycloneFBS及び1%のGibcoPenicillinStreptmycinを添加したGibcoGMEMで構成された。また、対照T−175組織培養フラスコに、同じ播種密度及び生存度で、BHK細胞を30mlの同一の培地組成中に播種した。マルチスカフォールド気体透過性試験装置14及びT−175対照物を5%CO2、95%R.H.、及び37℃の標準的な細胞培養インキュベータに配置した。
【0159】
細胞は各接着スカフォールド240A及び対照T−175フラスコ上に重力により沈降し、集密に達するまでその培養物を維持した。4日以内に培養を終結させた。接着スカフォールド240A全てをマルチスカフォールド気体透過性試験装置14から除去した。視覚的な顕微比較により、マルチスカフォールド気体透過性試験装置14及びT−175対照フラスコの両方の試験群の細胞密度がほぼ一致して現れ、およそ95%の集密性であった。
【0160】
このことは、培養装置内に気体ヘッドスペースを維持する必要性を排除することにより、空間をさらにより効率的に使用する能力を示す。装置が培養を支援するのに必要とされる培地のみを保持するため、装置のプロファイルが著しく低減され得る。この新規装置は従来のT−フラスコ、NUNC(商標)CellFactory、及びCorningCellStack(商標)よりもさらによりコンパクトである。このことは、滅菌、出荷、保管、及び廃棄費用の節約をもたらす。さらに、インキュベータ用空間、及びフローフード用の空間がより効率的に使用される。
【実施例6】
【0161】
垂直位置において播種された接着細胞培養に関する気体透過性非回転型細胞培養装置
従来のフラスコに比べ、細胞を培養するために1つを超えるスカフォールドを備えて構成された非回転型気体透過性細胞培養装置の性能を評価するために試験装置を構成した。図19Aは、気体透過性試験装置260の断面図を示す。スカフォールド120Hを垂直に配置し、一貫した間隙をスペーサ135Bにより各スカフォールド120H間で維持した。壁40Jは気体透過性であり、メドトロニック社(ミネアポリス)から購入したシリコーンから成り、およそ0.0045の厚さであった。縫合部(suture)270は気体透過性壁40に力を加え、バルクヘッドガスケット280に気体透過性壁40を押し付け、気体透過性壁40と、上方のバルクヘッド290及び下方のバルクヘッド300との間に液体密封シールを作製した。培地出入口60Bは、気体透過性試験装置260に対する液体の搬入及び除去を可能にした。蓋70Cは混入を防ぎ、操作中は密栓されていた。図19Bはスカフォールド120Hの斜視図を示す。このスカフォールドは組織培養処理されたポリスチレンから作られ、約0.102cm(0.040インチ)の厚さであった。直径約1.905cm(0.75インチ)のピペット出入開口部125Aはピペットの出入を可能とし、スカフォールド120H間で気体がトラップされるのを防いだ。4つのベントスロット190は、トラップされた気体が出るためのさらなる領域を可能とし、気体/液体界面がすべて除去されるのを確実にした。各スカフォールド120Hの片面当たりの
表面積は約86cm2であった。気体透過性試験装置260の内径は約11.176cm(4.4インチ)であり、下方バルクヘッド300の内側面から上方(上部)バルクヘッド290の内側面へ測定した場合の内高は約5.715cm(2.25インチ)であった。そのため、気体透過性物質の表面積は561cm2であった。8つのスカフォールド120Hは、スペーサ135Bを用いて垂直に積層され、スカフォールドそれぞれの間の間隙を約0.635cm(0.25インチ)に維持した。8つのスカフォールド120Hの上面の表面積を合わせると、695cm2であった。気体透過性試験装置260の内容積はおよそ500mlであった。したがって、培地容積に対する気体透過性物質の割合は561cm2/500ml、すなわち1.12cm2/mlであった。
【0162】
1%GibcoAminoAcidsSolution及び10%HycloneFBSを添加した500mlのGibcoGMEM培地に懸濁させた10.425×106BHK細胞を、気体透過性試験装置260Pに播種し、接着表面積1cm2当たり細胞15,000個の播種密度を生じた。また、対照T−175フラスコにも、30mlの同等培地の接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞を播接した。
【0163】
およそ96時間後、培養を完結させた。気体透過性試験装置260を分解し、スカフォールド120Hのそれぞれを顕微的に検査したところ、細胞の集密パターンが8つのスカフォールド120Hのそれぞれの上方面上に存在したことを示唆した。また、顕微的な評価により確認されたように、対照T−175フラスコも集密性であった。T−175フラスコ及び気体透過性試験装置260をトリプシン処理し、標準的な細胞計数技法を用いて、存在する細胞数を測定した。表6はその結果を要約する。
【0164】
【表6】
【0165】
表6は、細胞が気体/液体界面の非存在下にもかかわらず新規気体透過性試験装置260で増殖及び健全に生き残ることができたことを示す。
各装置によって占められる空間の容積は注目に値する。気体透過性試験装置260の設置面積は100cm2であり、ネックを含めた高さは7.6cmであった。そのため、占められた空間は約760cm3であった。ネックを含めたT−175フラスコの設置面積はおよそ長さ23cm×幅11cmであり、本体は高さ約3.7cmであった。そのため、占められた空間は約936cm3であった。気体透過性試験装置260はT−175フラスコよりも約8.4倍多い細胞を培養したので、同一の時間で同じ量の細胞を得るには8.4個のT−175フラスコを用いることになるであろう。表7は、表6の実験結果に基づいて、気体透過性試験装置260により培養された同数の細胞をT−175フラスコを用いて生成した場合、占められたであろう空間の差異を示す。
【0166】
【表7】
【0167】
気体/液体界面を排除する利点は明らかである。10倍を超える空間の減少が気体透過性試験装置260により得られる。このことは、滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、及び廃棄物処理の費用節約をもたらす。さらに、手で操作されることを必要とする装置の数は著しく減少し、劇的な労力及び混入危険性の低減をもたらす。
【実施例7】
【0168】
垂直位置及び反転位置における播種された接着細胞培養に関する気体透過性非回転型細胞培養装置
図19Aに示される試験装置を用いて、実施例6で前に規定されたように、細胞がスカフォールドの上面及び底面の両方に接着するかどうかを確かめるために実験を行った。このことは、2段階の播種により完遂し得る。段階1では、垂直位置に配向させたまま、第1の種菌を気体透過性試験装置に配置した。細胞を24時間かけて、スカフォールド上に重力で沈降させ、且つスカフォールドの上面に接着させた。段階2では、第2の種菌を気体透過性試験装置に配置した。気体透過性試験装置を反転させ、第2の種菌の細胞を、スカフォールド上に重力で沈降させ、且つスカフォールドの底面に接着させた。
【0169】
このプロセスを、1cm2当たり15,000個の細胞の密度でスカフォールドの露出表面に播種するのに十分なBHK細胞から成る各播種で行った。培地組成は実施例6に記載されたものと同一であった。1回目の播種と2回目の播種との間の時間間隔は24時間とした。2回目の播種後、培養を72時間で完結させた。装置を分解し、各スカフォールドを顕微的に査定した。細胞を各スカフォールドの上面と底面の両方の上に均一に分布させた。次に、細胞をトリプシンを用いて除去し、計数を行った。表面積1cm2当たり生細胞の平均数量は、144×105であり、99%を超える生存度であった。
【0170】
このようにして、細胞を、スカフォールド120の上面及び底面上に接着させ、且つ増殖させることができた。したがって、新規気体透過性細胞培養装置は、従来の装置に比べて大きさをさらに低減させることが可能である。接着細胞培養に関して、あらゆる平面に細胞接着領域を有する多種多様なスカフォールドの配置が存在し得る。
【実施例8】
【0171】
スカフォールド間の距離を制限した、垂直位置及び反転位置にて播種された接着細胞培養のための気体透過性非回転型細胞培養装置
装置内により大きなスカフォールド領域を挿入することにより、装置の大きさをさらに低減することができるかを確かめるために試験を行った。空間さらに節減するために、各スカフォールドの上方及び下方の面を用いて細胞を培養した。実施例7の気体透過性試験をさらなるスカフォールドを用いて製造した。表面積に対する容積の割合が従来の組織培養フラスコとほぼ同じとなるようにスカフォールドの数及びスカフォールド間の距離を選択した。従来のT−175フラスコに推奨される培地容積は、約16〜32mlと異なる
(インビトロジェンライフテクノロジー(Invitrogen Life Technologies))。このことは、接着表面から約0.09〜0.18cmのところに培地が存在することを要求する。この実施例の試験装置は2段階で播種され、細胞を各スカフォールドの上面及び下面上に存在させるようにした。したがって、空間及び労力節約の点で気体透過性細胞培養装置がもたらすことのできる価値の控えめな評価を得るために、各スカフォールド間に0.34cmの培地の高さが存在することを可能にした。この様式では、表面積に対する培地の割合は、T−175フラスコに対して一定に保たれた。事実上、各スカフォールド面はスカフォールド間の培地の半分を利用できた。また、そのスカフォールドに隣接したスカフォールドは、もう半分の培地を利用できた。そのため、スカフォールドの各面に利用可能な培地は、増殖表面1cm2当たり0.17cm高さの従来の組織培養フラスコと一致した。
【0172】
14個のスカフォールドを試験装置に挿入し、およそ0.34cmの等間隔で配置した。0.17cmの高さに存在する30mlの培地を有するT−175フラスコは、対照物として作用した。実施例7に詳細に記載されたように、BHK細胞を用いた播種を2段階で行った。培地組成は、実施例6に記載されたものと同一であった。2回目の播種から72時間後培養を終結させ、装置を分解し、各スカフォールドを上面及び下面上での細胞の分布に関して顕微的に査定した。各スカフォールドは、T−175フラスコのそれとほぼ同じ上面及び下面上での分布パターンを示した。表7は、新規気体透過生細胞培養装置の表面積を増大させることにより、所定の量の細胞を培養するのに必要とされる空間を従来のT−175フラスコと比較して減らす方法の例を示す。例えば、新規の気体透過性細胞培養装置が2,432cm2のスカフォールド表面積を含む場合、等しい表面積を提供するには14個のT−175フラスコが必要とされるであろう。スカフォールド表面積1cm2当たり1.7mmの培地が利用可能であるように意図される場合、新規気体透過生細胞培養装置により占められる空間の容積が決定され得る。表8は、この場合の、各タイプの装置により占められる空間の容積の劇的な差異を示す。
【0173】
【表8】
【0174】
気体透過性細胞培養装置が、従来のフラスコと同一の表面積に対する培地の割合を有するように設計される場合、空間のさらにより効率的な使用をもたらすことが分かる。同じ量の細胞が望まれる場合、気体透過性細胞培養装置が占める空間の容積はT−175フラスコが占める空間のわずか1/16である。このことは、滅菌、出荷、保管、及び廃棄に関する費用削減にそのまま言い換えられる。
【0175】
本発明は、例示の目的のために示され、且つ上述される上記の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内に含まれるそのいかなる変更又はその変形をも含むことを意図す
るものであると理解されるべきである。
【実施例9】
【0176】
垂直位置にて播種された接着細胞培養に関する気体透過性回転型細胞培養装置
図19Aの断面図で示されたように、且つ実施例5でさらに規定されたように、気体透過性試験装置260を構成し、1つを超えるスカフォールドを備えて構成される気体透過性細胞培養装置を回転させる性能を評価した。
【0177】
垂直な非回転位置における気体透過性試験装置260を用いて、1%のGibcoAminoAcidsSolution及び10%のHycloneFBSを添加した、500mlのGibcoGMEM培地に懸濁させた10.425×106個のBHK細胞を、気体透過性試験装置260内に播種し、接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞の播種密度を生じた。また、対照T−175フラスコにも、30mlの同等培地の接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞を播種した。
【0178】
およそ24時間後、気体透過性試験装置を、1RPMで回転させた標準なローララック上に配置した。回転開始の3日後、気体透過性試験装置を分解し、スカフォールドのそれぞれを顕微的に試験したところ、細胞の集密パターンが8つのスカフォールドのそれぞれの上面に存在したことを示唆した。対照T−175フラスコもまた、顕微的な評価により確認されたように集密であった。
【0179】
このことは、細胞の増殖が新規の気体透過性細胞装置を回転することにより阻害されないことを示す。そのため、回転型又は非回転型であり得る装置を作製することは、使用者のプロトコル開発により多くの選択肢を可能とする。
【0180】
本明細書中に記載された本発明における精神から逸脱することなく、多様な変更が本開示に対して成され得ることを当業者は認識するであろう。したがって、例示された実施形態及び記載された実施形態に対して本発明の幅を制限することは意図されない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とその均等物により解釈されるべきである。本明細書中に引用された各刊行物、特許、特許出願、及び参考文献は、ここで参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、細胞培養効率を改善する方法及び装置に関する。これらの方法及び装置は、気体交換のために気体透過性物質を利用し、細胞培養倍地の高さの増大を可能にし、気体透過性装置の培地容積許容積(volume capacity :容積容量)に対する表面積の割合を減少させ、且つ従来の細胞サポートスカフォールドを一体化する。さまざまな利益が当然得られ、それらの利益には在庫品用空間、インキュベータ用空間、廃棄用空間及び労力のより効率的な使用、並びに混入の危険性の減少が含まれる。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2003年10月8日付けで出願された米国仮出願第60/509,651号(その全体が参照により本明細書中に援用される)の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
[関連技術において記載される従来技術の制限の考察]
細胞の培養は、バイオテクノロジーの重要な要素である。細胞は、研究段階の間は少量で培養され、そして、通常、培養の規模は、研究がその目的であるヒト及び動物の保健医療に利益を与えることに移行するにしたがって増大する。この規模の増大は、しばしば、スケールアップと称される。或る装置及び方法は、広範な細胞型を培養することを可能にするとして、研究段階の細胞培養に関して十分に確立されており、したがって、最も幅広い対象に対して有用である。これらの装置は、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、ローラボトル及び細胞培養用バッグを含む。残念ながら、これらの装置は非効率的であり、これらはスケールアップ時の労力、混入の危険性及び費用の観点で、より非効率的にさえなる。研究及びスケールアップ効率を改善する、スケールアップを研究し且つ維持する、代替的な装置及び方法を作製することが必要とされている。本考察は、従来技術における制限の多くを特定し、以下により詳細に記載される解決策を示す。
【0004】
研究規模の細胞培養に重要な1つの寄与要因は、複雑性のレベルが低いことである。複雑性を最小限にする装置は、細胞培養培地を混合又は潅流させる補助器材を必要としない。これらはしばしば、静止装置(static device )と称される。静止装置は、2つの広義のカテゴリー、すなわち1)気体透過性ではなく、気体/液体界面を利用して細胞に酸素添加する装置、及び2)気体透過性であり、装置ハウジングを介する気体移動(gas transfer)を利用して細胞に酸素添加する装置にさらに分けることができる。従来のペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、及びマルチシェルフ組織培養フラスコが、第1のカテゴリーに含まれる。細胞培養用バッグ及び区画化(compartmentalized )フラスコが、第2のカテゴリーに含まれる。これらの静止装置の全ては、さまざまな理由(培地が存在することのできる高さの制限を含む)から非効率的である。
【0005】
培地の高さは、ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ及びマルチシェルフ組織培養フラスコにおいて、気体交換を供する方法に応じて制限される。細胞の要求を満たすために、酸素は気体/液体界面から、装置のうち細胞が存在する下方(下部)表面に拡散しなければならない。十分な酸素供給を確保するために、これらの装置における使用に関して推奨される細胞培養培地の最大高さは、約3mmである。
【0006】
制限された培養培地の高さは不利益をもたらす。制限された培養培地の高さは、少量の細胞しかサポートすることができない少量の培地容積となる。培地は、培養を維持するために連続的に除去及び添加されなくてはならず、これは、取り扱い頻度、労力及び混入の危険性を増加させる。装置においてより多くの細胞を培養するためのただ1つの方法は、
この装置の設置面積を大きくすることで、より多くの培地を存在させることができるというものである。大きい設置面積を有する装置の作製は製造の見地から困難であり、典型的なインキュベータ及びフローフードにおいて利用可能な制限された空間量を直ちに大きくし、装置の取り扱いをより難しくする。したがって、市販の細胞培養装置は小さい。このように、培養のスケールアップは、複数の装置を使用すること、又はより精巧な、複雑な、且つ費用のかかる代替品を用いることが必要である。
【0007】
組織培養フラスコは、機能するために気体/液体界面依存型の静止装置固有の問題の良い例を提供する。組織培養フラスコは、細胞を、通常25cm2〜225cm2の範囲の面積を有する面に存在させる。組織培養フラスコに推奨される培地の高さは、2mm〜3mmである。例えば、コーニング(Corning )(登録商標)は、そのT−225cm2フラスコに関して、45ml〜67.5mlの作業容積を推奨している。したがって、1,000mlの培養には、15〜22個の間のT−225cm2フラスコを必要とする。これは、労力及び混入の危険性の増加につながる、15〜22個の装置を培養に必要とするだけではなく、フラスコが約95%の気体と5%のみの培地を保持する様式に設計されているため、非常に非効率的な空間使用も生じさせる。例えば、典型的なT−175フラスコの本体は、およそ長さ23cm×幅11cmの設置面積を有し、約3.7cmの高さであり、したがって、約936cm3の空間を占める。しかし、このフラスコは通常、約50ml未満の培地しか扱わない。したがって、本体中に存在する培地(50ml)は、本体(936cm3)が占める空間に対して、フラスコの内容物の95%近くが気体にすぎないことを示す。この非効率的な空間使用は、貴重なインキュベータ用空間を無駄にすることに加えて、出荷(shipping)、滅菌、保管及び廃棄の費用を増大させる。
【0008】
別の一般的に使用される研究規模の細胞培養装置は、マルチウェル組織培養プレートである。従来の組織培養フラスコと同様に、気体/液体界面を、各ウェルの底からわずか2mm〜3mmの高さに維持することは、標準的な操作手順である。プレートを細胞培養研究室内のあちこちに移動させる時にこぼすこと(spillage)からの保護を提供するために、典型的な市販の96ウェル組織培養プレートの各ウェルは約9mmの深さである。この深さは、6ウェル組織培養プレートに関しては最大約18mmまで増える。96ウェルプレートの場合、気体は各ウェルの約75%を占め、培地は各ウェルの約25%を占める。6ウェルプレートの場合には、気体は各ウェルの約95%を占め、培地は各ウェルの約5%を占める。この非効率的な形状は、装置の出荷、滅菌、保管及び廃棄の費用を増大させる。
【0009】
多くの用途において、小容積の培地を除去及び置換することにより培地に頻繁に栄養供給する必要性は、問題となり得る。例えば、マルチウェル組織培養プレートの目的が実験を実施することである場合、培地を処理することはこれらの実験の結果に影響を与えかねない。また、培地容積が非常に小さいため、溶質濃度の好ましくない変化がごく少量の蒸発とともに起こり得る。細胞培養機能を損失することなく、培地が増大した高さで存在することを可能にするマルチウェル組織培養プレートは、培養を生かし続けるのに必要な操作を最小限にすることにより、且つ、蒸発により生じる濃度変化の程度を減少させることにより、従来のプレートに勝るであろう。
【0010】
頻繁な培地交換は、時間がかかること、費用がかかることでもあり、混入の危険性が増加することにつながる。特殊な液体取り扱い器材(マルチチャネルピペット等)によりこの問題を緩和する試みは、問題の発生源、すなわち培地の高さが低いことに対処していない。最良の解決策は、より多くの培地を各ウェル内に存在させることである。残念ながら、この解決策は、気体/液体界面を利用する気体交換の必要性のため、従来のプレートでは可能ではなかった。
【0011】
従来の装置に対するより良い代替品が必要とされている。組織培養装置が、機能するために気体/液体界面にだけに頼るのではなく、従来のフラスコ及びマルチウェルプレートのように使用が容易であり、同じ設置面積を有する装置においてより多くの細胞を培養することが可能であり、且つ容易に、且つ直線的にスケーリング可能ならば、効率的な利得は、ヒト及び動物の保健医療を進歩させるために使用するこれらの細胞に関する費用の削減に変わるであろう。本明細書中において、気体透過性物質がいかにして使用されるか、且つ、新規な構成がこの目的をいかにして達成することができるかが示されるであろう。
【0012】
気体交換の単一源としての気体/液体界面を排除する細胞培養装置が提案され、市場に参入している。このアプローチは、下方気体透過性膜の使用に頼って、培地の底に気体交換をもたらす。気体/液体界面に対する単一依存とは対照的に、これはより多くの気体移動を可能にする。提案された装置及び市販の装置は、細胞培養用バッグ、区画化気体透過性フラスコ、気体透過性カートリッジ、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート及び気体透過性ローラボトルを含む。
【0013】
残念ながら、各気体透過性装置は、固有の非効率性及びスケールアップ欠点を有する。細胞培養用バッグ、気体透過性カートリッジ、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート、区画化気体透過性フラスコ及び気体透過性ローラボトルの主な制限は、培地の高さの制限、培地容積に対する過剰な気体透過性表面積の割合、及び接着細胞を培養するのに不適な形状を含む。この結果、多数の装置に必要とされるスケールアップを強制し、装置設計選択肢を制限し、且つ、スケールアップが起こるにつれて費用及び複雑性を増加させることになる。
【0014】
気体透過性装置を取り巻く先行技術の綿密な検討は、従来の見識(conventional wisdom )及び装置設計が、いかにして培地の高さ及び装置内に存在する培地の容積を制限するかを示す。1976年の非特許文献1において、気体透過性膜で作製された密封容器の操作の仮説が分析されている。イェンセン(Jensen) 他は、培地中における溶質輸送の形態としての拡散を記載しており、この論文は「拡散はフィックの法則に従って進行する」と述べている。イェンセン他は、「(イェンセン他の)図2は、気体透過性物質で作製されたバッグにおいて培養された細胞の拡散特性を示す」と述べている。本明細書中における図1Aは、イェンセン他の図2を示し、ここでDcmは培地の拡散係数である。本明細書中における図1Bは、イェンセン他の図3を示し、ここで、気体透過性容器におけるPO2及びPCO2に対する定常値モデルは、拡散に基づく培地全体の直線衰退として示される。
【0015】
1977年に、イェンセン(非特許文献2)は、「気体透過性、非多孔性プラスチックフィルム」を使用して細胞培養装置を形成する「主要な技術革新(innovation)」を記載している。本明細書中における図2は、イェンセンの図2を示す。本明細書中における図2に示されるように、装置は、非常に低い高さの培地(わずか0.76mm)、及び培地容積に対する非常に高い気体透過性表面の割合を作り出した。スケールアップに関して、装置は約914.4cm(30フィート)の長さを得、特別注文の器材を使用して潅流される。
【0016】
1981年に、イェンセン(非特許文献3)は、「培養槽設計は、培養される細胞全てに固定され、且つ一定である小さな拡散距離を組込まなければならない。この設計は、培養をスケールアップさせることがこの拡散距離を変化させないようでなければならない」と具体的に記述している。実際、培地は気体透過性膜から非常に離れた高さで存在するべきではないとする従来の見識は今日も存続しており、気体透過性物質を利用する市販製品及びこれらに関連する特許から明らかである。さらに、培地容積に対する高い気体透過性表面の割合も存続している。
【0017】
さまざまな気体透過性細胞培養装置が、1981年以降、市場に参入し、提案されてきた。しかし、主要な設計要素としての拡散に対する継続的な信頼は、特許、装置設計、装置仕様及び気体透過性装置に関する操作指示書の総説に基づく場合であるように見える。設計基準として、拡散モデルは、培地の高さを制限し、培地容積に対する高い気体透過性表面の割合を導き、且つ非効率的な装置形状に寄与する。
【0018】
バッグ形態の市販の気体透過性細胞培養装置は、現在、細胞培養に関して使用される標準的な装置フォーマットである。イェンセンの構成のように、これらの製品は、培地の下方面及び上方面を介した気体交換を、気体透過性物質を介して可能にする。イェンセンによって提示された装置とは異なり、潅流は必要ない。通常、これらは潅流されず、細胞培養インキュベータ内に存在する。このことは、費用及び複雑性を減少させ、且つこれらの装置を市場に受け入れられる装置にする。しかし、細胞培養培地が気体透過性膜間に存在する時の気体透過性膜間の制限された距離は、これらの装置を、効率的なスケールアップに関して形状的に不適切にする影響を及ぼす。より多くの培地が必要となると、バッグの大きさは水平方向に比例的に増大しなくてはならない。したがって、これらは通常、2リットルを超える大きさでは不可能であり、多数の装置をスケールアップさせることを必要とする。さらに、これらは、従来の装置において使用される標準的な液体取り扱いツールと適合しておらず、そのため、研究規模の培養を実施するのに一定レベルの複雑性をもたらす。
【0019】
バッグは、気体透過性フィルムの2つのシートをともに積層させることにより製造される。典型的なバッグの断面が、特許文献1から抜粋した図3に示され、これはSi‐Culture(商標)バッグ(メドトロニック社(Medtronic Inc.))として商品化されている。従来の静止細胞培養装置の有益な特徴は、細胞が存在する領域での培地の均一な分布である。当業者は特に、培地が装置全体を通して一定の高さで存在することを確実にする目的でインキュベータを同じ高さにすることに多大な注意を払う。図3のバッグの断面を見ることにより、たとえインキュベータがどのような高さであっても培地がいかにして、全ての下方気体透過性フィルム上に均一な高さで存在しないかが分かる。フィルム同士はその周辺で噛み合うため、培地は、その周辺近くでは、バッグの他の部分とは異なる高さで存在することを余儀なくされる。培地容積が増加するに従って、バッグは円筒形状をとり始め、培地分布は悪化する。細胞は、不均一形状に応じて、潜在的な栄養素勾配を受け得る。多すぎる培地がバッグ中に存在する場合、下方面は非水平状態で存在するであろう。これもまた問題となる。バッグ中に存在する懸濁細胞は、均一に分布しないであろう。代わりに、細胞は、低い位置に重力により沈み、積み重なり、この積み重なり内に栄養素及び酸素の勾配が形成されるに従い死ぬであろう。接着細胞の場合、これらは均一に播種されないが、これは、バッグの各部分に存在する種菌(inoculum)の量が変わるであろうためである。バッグがいっぱいになりすぎると生じる形状的な問題に加え、1,000mlを超える培地の重量も、特許文献1に記載されるように、バッグに損傷を与える可能性がある。バッグの形状的な制限を克服したとしても、バッグ及び他の気体透過性装置に関する指示書及び特許は、培地が非常に高すぎて存在するときに、拡散障壁は装置が機能することを妨げるという所見に基づいて制限が存在することを示す。
【0020】
細胞培養用バッグは、オリゲンバイオメディカルグループ(OriGen Biomedical Group )(OriGenPermaLife(商標)バッグ)、バクスターインターナショナル社(Baxter)(特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に関連するLifecell(登録商品)X−Fold(商標))、メドトロニック社(Si−Culture(商標)、特許文献1)、バイオベクトラ社(Biovectra )(VectraCell(商標))及びアメリカンフルオロシール社(American Fluoroseal )(特許文献6及びと特許文献7に含まれる、VueLife(商標)培養バッグシステム)から市販されてい
る。仕様書、操作指示書及び/又は特許は、各製品に対する培地の高さ及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を決定する。
【0021】
パティリョ(Pattillo)他(バクスターインターナショナル社(Baxter InternationalInc. )に譲渡された特許文献2及び特許文献3)は、典型的なバッグは、「全容積の約
1/4〜1/2を満たされて、培地及び細胞の容積の比較的高い内表面積比を提供し、それにより十分な酸素がバッグ内で拡散し、且つ二酸化炭素がバッグの外に拡散することで細胞の代謝及び増殖を容易にすることができる」と記述している。パティリョ他の観点から、バクスターインターナショナル社製のLifecell(登録商標)X−Fold(商標)バッグに関して実現される最適な培地高は、その600cm2バッグに対するものであって、1.0cm〜2.0cmの培地の高さ、及び、2.0cm2/ml〜1.0cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を与える。
【0022】
VectraCell(商標)バッグに関する製品チラシ(product literature:製品資料)は、「VectraCellの1L容器は最大500mLまでの培地を保持することができる。VectraCellの3L容器は最大1,500mLまでの培地を保持することができる」と記述している。したがって、バクスターインターナショナル社製のバッグと同様に、最大培地容量は、バッグの全容量の1/2である。売り出されているさまざまなバッグの大きさのうち、3Lバッグが最も高い培地高(1.92cm)を可能とし、且つ、培地容積に対する最も低い気体透過性表面積の割合(1.04cm2/ml)を有する。
【0023】
培地が物理的に混合するオービタルシェーカに存在する場合、Si−Culture(商標)バッグに関して、1.6cmの培地高が、製品チラシにおいて推奨されており、特許文献1において明記されている。これは、混合環境において使用される場合、1.25cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。混合は通常、拡散勾配を崩壊させるために、且つ溶質移動を高めるために使用されるため、当業者は、培地の高さはバッグがオービタルシェーカに置かれていない場合に低減されるべきであることを、結論付けるであろう。
【0024】
VueLife(商標)バッグに関する製品チラシは、VueLife(商標)培養バッグを1センチメートル未満の厚さの高さの培地で満たすことを特に推奨しているが、これは、「さらなる培地は、栄養素又は気体拡散を妨害し得る」からである。したがって、拡散に関する懸念は、VueLife(商標)バッグにおける培地の高さを制限する。これは、1.0cmの高さの培地で、2.0cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。
【0025】
OriGenPermaLife(商標)バッグに関する製品チラシは、1.0cm(VueLife(商標)バッグと同じ高さ)の高さの培地での呼び容積(nominal volume)を明記している。売り出されているさまざまなPermaLife(商標)バッグのうち、これらの120mlバッグが、1.8cm2/mlの、培地容積に対する最も低い気体透過性表面積の割合を与える。
【0026】
制限された培地の高さの最終的な結果は、これらの製品を使用した培養のスケールアップは非実用的であるということである。例えば、LifecellX−Fold(商標)バッグが、10Lの培地を2.0cmの培地高で含有し得るようにスケールアップされるのならば、この設置面積は少なくとも5,000cm2でなくてはならないであろう。この扱いにくい形状だけではなく、設置面積は直ちに、標準的な細胞培養インキュベータを規格外に大きくさせる(outsize )ため、特別注文のインキュベータが必要となり得る。また、これらの構成の全ては、気体移動に関してバッグの上方面及び下方面の両方に頼っ
ているため、バッグ内で使用される気体移動面積は必要以上に大きくなる。
【0027】
この非実用的な形状は、市販されているバッグの大きさを制限してきた。各供給業者からの最も大きなバッグに対して推奨される培地容積は、振とうする場合、OriGenPermaLife(商標)バッグに関しては220ml、VueLife(商標)バッグに関しては730ml、Lifecell(登録商標)X−Fold(商標)バッグに関しては1,000ml、VectraCell(商標)バッグに関しては1,500ml、及びSi−Culture(商標)バッグに関しては2,000mlである。したがって、スケールアップは、多数の個別のバッグの使用を必要とするため、労力及び混入の危険性の増加を含むさまざまな理由によって非効率的なプロセスとなる。
【0028】
細胞培養用バッグに伴なう別の欠点は、従来のフラスコのように使用が容易ではないということである。細胞培養用バッグの中及び外への液体の輸送は困難である。細胞培養用バッグは、シリンジ、針又はポンプ配管と噛み合うようになっている配管接合部を備えて構成されている。これは閉鎖系操作に適しているが、研究規模の培養には適さず、ピペットの使用が、より容易であるとともにより一般的な、液体を取り扱う方法である。ピペットを使用することができないことは、バッグに添加又は除去される培地の所望量が、典型的な太さのシリンジの60ml容積を超える場合、非常に不都合である。この場合、シリンジは、60mlの輸送ごとに、配管に対し接続及び取り外しを行わなければならない。例えば、600mlを含有するバッグは、60mlシリンジでは最大10回の接続及び10回の取り外しを必要とするため、バッグを取り扱う時間及び混入の可能性を増加させるであろう。接続回数を最小限にするために、ポンプを使用して培地を輸送することができる。しかし、これは小規模の培養に対して費用を追加させるとともに複雑性を与える。細胞培養用バッグを利用する多くのハイブリドーマコアラボラトリー(hybridoma core laboratories )は、準備時に一度バッグを満たし、これらの接続により生じる混入の高い危険性及びポンプの複雑性のために、再び細胞を供給することはない。
【0029】
マツミヤ(Matsumiya )他(特許文献8)は、液体輸送の問題を、バッグと培地保管室とを一体化することによりなくすことを試みている。培養室及び培地保管室を接続し、新鮮な培地が必要となったときは、培地を培地室から培養室へと通過させる。このことが培地輸送を助け得る一方、バッグのスケールアップ効率を制限する、制限された培地の高さ及び培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合に対する解決策は存在しない。この開示は、0.37cmの培地高、及び、5.4cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を提示している。
【0030】
カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、細胞培養用バッグとは異なり、側壁を有するものとして市場に導入されてきた。これらの種類の装置は、側壁を使用して、上方及び下方の気体透過性フィルムを分離する。これは、培地の高さを装置全体を通して均一にすることを可能にする。残念ながら、これらの装置は、バッグよりもスケールアップにさらに適していないが、これは、これらの装置が少量の培地しか含有しないためである。少量の培地は、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合を生じさせる試みの結果である。
【0031】
Opticell(登録商標)と呼ばれるこのような1つの製品が、バイオクリスタル社(BioChrystal Ltd.)から提供されている。この製品は、その上方面及び下方面が、気体透過性シリコーンフィルムと結合している容器であり、上方面及び下方面の表面積はそれぞれ50cm2である。側壁は、気体移動の為ではなく、上方気体膜及び下方気体膜を分離するのに必要な硬さを与えるために選択された材料から成るものである。製品チラシは、この重要な特徴である、「大きな表面積対容積比を有する2つの増殖面」を宣伝している。この製品に関する非特許文献4の論文において、特許出願人のバーバラ・ギレム(
Barbera-Guillem )は、「マイクロタイタープレートの設置面積の場合、膜面積は最大化され、容積は最小化され、最大の気体相互交換を有する巨大な増殖面を提供する空間をもたらす」と記述している。この製品をいかにして使用するかを規定する操作プロトコルは、わずか10mlの培地の導入を明記しており、それにより培地が存在することができる高さを0.2cmに制限している。この装置と関連する特許文献9(2002年6月25日付けで出願)は、最大1.27cm(0.5インチ)までの高さが可能であるが、0.18cm〜約0.2cm(約0.07〜約0.08インチ)の高さがより好ましいであろうと記述している。同様に、この装置と関連する特許文献10は、最大20mmまでの高さが可能であるが、4mmの高さがより好ましいであろうと記述している。この特許において記載される1.27cmというより高い高さが市販の装置に組み込まれたとしても、この培地の高さはバッグで可能な高さを超えることはない。さらに、このことは、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を1.00cm2/ml(バッグと同様)にしか減少させないであろう。特許文献9は、装置の1つの側面のみが気体透過性である構成を示す。この構成(商品化されていない)において、1.27cm(0.5インチ)の培地の高さでは、0.79cm2/mlの、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が得られ、この割合は、細胞培養用バッグのものよりも若干低いであろう。したがって、側壁があるにもかかわらず、形状が最大の培地高を可能にしたとしても、バッグと比較して、スケールアップ効率は改善されていない。
【0032】
また、カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、MABIOインターナショナルラボラトリー(Laboratories MABIO‐International )(登録商標)により市場に導入されおり、これはCLINIcell(登録商標)培養カセットと呼ばれている。Opticell(登録商標)のように、製品設計も操作指示書も、バッグと比較して、培地の高さの増大、又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合を提供しない。CLINIcell(登録商標)25培養カセットに関する操作指示書は、10ml未満の培地が25cm2の下方気体透過性表面上に存在するべきであると記述している。下方気体透過性物質の表面積がわずか25cm2であるため、これはわずか0.4cmの高さの培地を生じる。また、装置の頂部及び底部は気体透過性物質から成るため、5.0cm2/mlの、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合が存在する。CLINIcell(登録商標)250培養カセットに関する操作指示書は、160ml未満の培地が250cm2の下方気体透過性表面上に存在すべきであることを記述しており、これは0.64cmの低い培地の高さ、及び、3.125cm2/mlの、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合をもたらす。
【0033】
カートリッジ形式の気体透過性細胞培養装置は、最近、セラティス社(Celartis)により市場に導入されており、これはPetaka(商標)と呼ばれる。Opticell(登録商標)及びCLINIcell(登録商標)培養カセットと同様に、これらの装置もまた、上方及び下方の気体透過性フィルムを分離する手段として機能する側壁を有する。上記の製品と異なり、この製品は標準的なピペット及びシリンジと適合可能であるため、液体取り扱いの利便性を改善する。しかし、製品設計も操作指示書も、バッグと比較して、培地の高さの増大又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合の減少を提示していない。この操作指示書は、25ml未満の培地が、上方及び下方の気体透過性表面の間に存在するべきであり、これらの上方及び下方の気体透過性表面は160cm2という総表面積を有する。製品チラシは、0.156ml/cm2という「最適化された培地/表面積」を明記している。したがって、培地の高さはわずか0.31cmであり、培地容積に対する最適化された気体透過性表面積の割合は6.4cm2/mlである。
【0034】
スケールアップに関する市販のカートリッジ形式の気体透過性装置の制限は、これらの装置に対して利用可能な最大培養容積を検討したときに明確になる。Opticell(登録商標)は最大10mlまでの培養容積を提供し、CLINIcell(登録商標)培
養カセットは最大160mlまでの培養容積を提供し、Petaka(商標)は最大25mlまでの培養容積を提供する。したがって、ちょうど1,000mlの培養を実施するためには、100個のOpticell(登録商標)カートリッジ、7個のCLINIcell(登録商標)培養カセット、又は40個のPetaka(商標)カートリッジが必要となるであろう。
【0035】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社(Vivascience Sartorius Group )は、petriPERMと呼ばれる気体透過性ペトリ皿を市場に導入している。petriPERM35及びpetriPERM50はそれぞれ、従来の35mm径及び50mm径のペトリ皿の形態の製品である。これらの底部は気体透過性である。petriPERM35mm皿及びpetriPERM50mm皿の壁はそれぞれ、6mm及び12mmの高さである。ビバサイエンス社の製品仕様は、petriPERM35が9.6cm2の気体透過性膜面積及び3.5mlの最大液体容積を有し、0.36cmの最大の培地高をもたらすことを示し、且つpetriPERM50が19.6cm2の気体透過性膜面積及び10mlの最大の液体容積を有し、0.51cmの最大の培地高をもたらすことを示す。petriPERM製品は、培地の上方面を周囲気体と連通させるカバーと、培地の下方面を周囲気体と連通させる下方気体透過性物質とを有するように設計されている。したがって、petriPERM35の培地容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は2.74cm2/mlであり、petriPERM50の培地容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は1.96cm2/mlである。他の気体透過性装置のように、petriPERM製品もまた、スケールアップに関して非効率的である。わずか1,000mlの培養を実施するために、少なくとも100個の装置が必要である。さらに、これらの装置は、閉鎖系として操作することができない。
【0036】
ガブリッジ(Gabridge)(特許文献11)は、高分解能顕微鏡用に設計された、ペトリ皿のような頂部カバーを備えて構成される気体透過性細胞培養装置を記載する。ウエルの深さは、「顕微鏡に関して最も使いやすい大きさ」に基づき、0.635cm(0.25インチ)である。最良の場合でも、この装置は0.635cmの高さの培地しか保持することができない。
【0037】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社はまた、LumoxMultiwellと呼ばれる気体透過性マルチウェル組織培養プレートを市場に導入している。これらの製品は、グライナー・バイオワン社(Greiner Bio ‐One )からも流通されている。これらは24、96及び394ウェルフォーマットで入手可能である。プレートの底部は、非常に低い自己蛍光を有する50μm(ミクロン)の気体透過性フィルムから成る。各ウェルの壁高は、24ウェル版に関しては16.5mm、96ウェル版に関しては10.9mm、384ウェル版に関しては11.5mmである。各ウェルに関する最大の作業培地の高さは、24ウェル版に関しては1.03cm、96ウェル版に関しては0.97cm、384ウェル版に関しては0.91cmであると定められている。従来のマルチウェルプレートと比較して培地の高さが改善されるとはいえ、他の静止気体透過性装置の制限内である。
【0038】
フュラー(Fuller)他(特許文献12)は、表面に模様をつける(texturing )ことにより、下方気体透過性シリコーン材料の表面積を増大する気体透過性マルチウェルプレートを提示する。しかし、壁高は単に「標準的なマイクロタイタープレート」のものに制限されており、したがって、従来のプレートと比較して培地の高さの増大を可能とすることができない。
【0039】
包括的に、静止型気体透過性細胞培養装置が、市販の装置において使用されるものよりも厚い膜を使用することができるならば、有利であろう。シリコーンに頼っている単区画静止型気体透過性細胞培養装置に関する従来の見識は、特許文献1において記載されるよ
うに、適切な機能には、気体透過性物質の厚さが約0.013cm(約0.005インチ)未満又はそれ以下である必要があることを指示している。Si−Culture(商標)バッグは、ジメチルシリコーンから構成され、約0.011cm(約0.0045インチ)の厚みを有する。バーバラ・ギレム他(特許文献9)及びバーバラ・ギレム(特許文献10)は、気体透過性膜の厚みは、膜が適したポリマー類(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン又はシリコーン共重合体を含む)から成る場合、約0.003cm(約0.00125インチ)未満〜約0.013cm(約0.005インチ)の範囲であり得ることを記述している。フィルムをこの薄さに維持することは、フィルムが破裂しやすく、製造中に容易に針穴が開きやすく、且つシートプロファイル以外のプロファイルを許容しない、カレンダ加工(calendaring )以外の任意の方法により作製することが困難であるため、不都合である。本明細書中において、従来の見識を超える増加した厚みのシリコーンがいかにして細胞培養を妨げないかが示されるであろう。
【0040】
改善された静止型気体透過性装置が必要とされている。気体透過性装置が垂直方向でスケールアップすることが可能であるならば、より多くの培養を、任意の所定の設置面積の装置で実施することができるため、且つより人間工学的な設計選択肢が可能であるため、効率は改善されるであろう。
【0041】
区画化された静止型気体透過性装置は、従来の培養装置の代替品を提供する別の種類の製品である。しかし、これらもまた、培地の高さの制限及び培地容積に対する過剰な気体透過性表面積の割合によってスケールアップ効率が制限されている。これらの種類の装置は、気体透過性膜と半透過性膜との間に細胞をトラップすることにより、高密度培養環境を作製するのに特に有用である。市販化されてはいないものの、ボグラー(Vogler)(特許文献13)は、細胞を気体透過性物質の近傍に配置し、且つ非気体透過性側壁を含有する区画化装置構成を開示する。細胞区画は、下方気体透過性物質から成り、上方の半透過性膜により囲まれている。培地区画は、半透過性膜上に直接的且つ全体的に存在する。気体透過性膜は、この培地区画の頂部上に存在する。培地は、装置の気体透過性底部上に全体的に存在するように制約される。この特許は、0.4cmの側壁を有する細胞培養区画、0.8cmの側壁を有する培地区画、9mlの細胞培養容積、18mlの基本培地容積、22cm2の下方気体透過性膜、及び22cm2の上方気体透過性膜での試験を記載する。これは、0.4cmの細胞区画培地の高さを生じ、培地区画内において培地が0.8cmの高さで存在することを可能にする。さらに、1.76cm2/mlの、総培地容積に対する高い総気体透過性表面積の割合が存在する。非特許文献5において、ボグラーは特許文献13の装置を使用した生物学的結果を提示する。非特許文献5は、非特許文献1及び非特許文献3を、「操作の理論的基礎」として具体的に引用している。試験装置(fixture )に関する寸法は、28.7cm2の下方気体透過性膜及び28.7cm2の上方気体透過性膜、5.1mlの培地を細胞区画内に存在させる0.18cmの細胞区画の壁高、並びに27.8mlの培地を培地区画内に存在させる0.97cmの培地区画の壁高を記載している。培地の高さの合計は、細胞区画内においては0.18cm、培地区画内においては0.97cmに制限されており、1.74cm2/mlの、総培地容積に対する高い総気体透過性表面積の割合を有する。
【0042】
インテグラバイオサイエンス社(Integra Biosciences )は、CELLine(商標)と呼ばれる区画化気体透過性製品を市場で売っている。ボグラーの装置のように、細胞区画は、下方気体透過性膜及び上方半透過性膜により囲まれる。しかし、ボグラーの形状とは異なり、装置内の全ての培地は、気体透過性膜上に全体が存在する必要はない。一部の基礎培地のみが、半透過性膜上に存在する必要がある。インテグラバイオサイエンス社の製品を含む特許、及び製品チラシは、細胞区画内の液体の高さを約15mmより低く維持する必要性を記載している。気体透過性膜表面積1cm2当たり5ml〜10mlの栄養
培地の割合が、適切な細胞サポートとして記載されている(特許文献14及び特許文献15)。細胞培養面積に対して培地容積を増大することは供給の頻度を最小化する観点において有利であるものの、実際には、気体透過性表面積の各cmより高い培地高は制限されている。これらの特許に含まれる装置の市販設計は、他の気体透過性装置のように、これらは細胞上に存在することができる培地の量を制限することを示す。培地容積の半分より多くが、半透過性膜のすぐ上の領域には存在せず、細胞のすぐ上に存在している培地の高さを減少させる。装置の非気体透過性側壁は、使用に関する指示に従って操作されるとき、CELLine(商標)製品における半透過性膜上に培地が存在する場所の高さが、CL1000ウェルにおいてはおよそ3.8cm、CL350ウェルにおいては2.6cm、CL6ウェルにおいては1.9cmであるように設計されている。使用に関する指示に従って操作されるとき、細胞培養区画内に存在している培地の高さは、CL1000ウェルに関しては15mm、CL350ウェルに関しては14mm、CL6ウェルに関しては26mmである。この特許は、装置は培地の上方面で気体/液体界面を一体化すると記載する。したがって、気体移動が装置の底部を介して且つ培地の頂部で起こるため、培地容積に対する気体移動表面積の割合もまた制限される。各装置に関する培地容積に対する気体移動表面積の割合は、CL1000ウェルに関してはおよそ0.31cm2/ml、CL350ウェルに関しては0.32cm2/ml、CL6ウェルに関しては1.20cm2/mlである。
【0043】
ベイダー(Bader )(特許文献16)もまた、区画化気体透過性装置を導入する。側壁がなく、これは袋の形態である。これは区画化され、細胞を栄養素から、微孔膜によって分離する。他の区画化気体透過性装置のように、培地の高さは制限される。特許文献16は、この装置において最大1〜2cmまでの培地の高さを達成することができるが、実際の高さは、「フィックの拡散の法則に従う培地層」の関数としてのO2供給に基づいて調整される必要があることを記述している。バッグの上方及び下方面は気体透過性であるため、装置をその最大容積まで充填すると、1.0cm2/mlの、総培地容積に対する最小の総気体透過性表面積の割合が得られる。
【0044】
区画化気体透過性装置が垂直方向にスケールアップする能力を増加することができたなら、これらの装置は、培養の規模が増大するに従って、より効率的な設置面積を有するであろう。垂直のスケールアップを提供する静止区画化気体透過性装置が必要である。
【0045】
静止気体透過性装置と比較して効率を改善することを試みる気体透過性装置が導入されてきた。これらの装置は、従来のローラボトルと類似した様式で動作し、回転動作(rolling action)を付随する培地混合により物質移動を改善することを試みる。しかし、効率的なスケールアップは達成されていない。この1つの理由は、静止装置のように、設計仕様が、気体透過性装置の壁から培地が存在することのできる距離を制約することにある。このことは装置の培地容積を制限する。したがって、複数の装置がスケールアップのために必要となる。
【0046】
スポルディング(Spaulding )(特許文献17)は、ドーナツ型の気体透過性壁を備えて構成されたローラボトルを開示する。内部円筒壁及び外部円筒壁は、周囲気体と連通する。壁の気体透過性の性質は酸素を細胞に提供し、細胞は内部及び外部の円筒壁により囲まれた区画内に存在する。細胞区画は培地で完全に満たされ、これは細胞せん断を制限する観点において有利である。スポルディングは、「酸素効率は培養培地中の移動(travel)距離の関数として減少し、有効性は酸素表面から約2.54cm(約1インチ)以下に制限される」と記述している。したがって、スポルディングにより記述されたこの設計制限は、十分な酸素添加を提供するために、内部円筒壁と外部円筒壁との間の距離を5.01cm以下に維持することを含む。この様式では、細胞は、気体透過性壁から2.505cmより遠くに存在することができない。このことはまた、約0.79cm2/mlの、
培地容積に対する気体透過性表面積の割合をもたらす。さらに、中空の気体透過性コアを有する必要性は、空間を無駄にする。この装置は、5cmの長さ当たり100mlの培地の内部容積しか有さず、等しい長さの従来のボトルの500mlと対照的である。培地容積の制限は、この装置を、従来のローラボトルよりもスケールアップ効率が低いものとしているが、これは、より多くのボトルが等量の培養に必要であるからである。この装置に伴なう別の問題は、エッチングされた孔(直径90μm(ミクロン))を気体移動のために使用することである。これらの孔は、気体の進入を可能にするのに十分大きいが、液体が細胞区画から出ることを防ぐのに十分小さい。しかし、ほとんどの滅菌フィルターは0.45μm(ミクロン)、より一般的には0.2μm(ミクロン)の粒子が通過することを妨害するため、これらの孔は細胞区画の細菌侵入を許してしまうであろう。
【0047】
1992年12月に出願された特許において、ウルフ(Wolf)他(特許文献18)は、ディスク形状に構成された気体透過性バイオリアクターを記載し、これはその軸の周囲を回転する。この装置の形状は、シュワルツ(Schwarz )他(特許文献19)の提案に伴なう欠陥を修正することを試みている。特許文献19では、気体透過性管状挿入物(tubular insert)が、円筒型ローラボトル内に存在し、外部ハウジングは気体透過性でない。これは、ビーズに付着した接着細胞を培養することに成功したものの、懸濁細胞を培養することは成功しなかったとウルフ他は記述している。この装置は、平坦な末端の一方又は両方が気体に透過性である状態で構成される。ディスクは、遠心力の影響を低減するために、約15.24cm(約6インチ)の直径に制限されている。この発明者等は、「培養培地中の酸素の部分圧又は部分圧勾配は、透過性膜からの距離の関数として減少する」と記述しており、これはイェンセンによって1976年に発表された思考プロセスと同じである。この発明者等は、「細胞が透過性膜から離れすぎている場合、細胞は増殖しないであろう」とも記述している。したがって、ディスクの両端が気体透過性である場合、幅は約5.08cm(2インチ)未満に制限される。これらの寸法制限は、装置が保持することのできるほとんどの培地は、1,502ml未満であることを意味する。したがって、培養の大きさをスケールアップするに従って、より多くの装置を使用しなければならない。また、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は少なくとも0.79ml/cm2でなければならず、細胞は気体透過性壁から1.27未満の位置に存在しなければならない。さらに、装置は既存の研究器材との使用に適してはおらず、且つ特殊な回転器材及び空気ポンプを必要とする。
【0048】
1996年2月に出願された特許において、シュワルツ(特許文献20)は、ローラボトルと類似した様式で回転する気体透過性末端を有するディスク形状の気体透過性バイオリアクターを記載する。残念ながら、特許文献18と同様に、バイオリアクターの長さは約2.54cm以下に制限されている。バイオリアクターの全ての面が気体透過性でない限り、距離はさらに小さくなる。装置の最大直径は15.24cmである。したがって、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は少なくとも0.79ml/cm2でなければならず、細胞は気体透過性壁から1.27cmより遠くには決して存在することはできない。回転動作を伴なったとしても、従来の静止培養バッグと比較して、培地に対する気体透過性表面積の割合の実質的な減少を提供せず、培養の大きさをスケールアップするに従って、より多くの装置を使用する必要がある。
【0049】
シンセコン社(Synthecon Incorporated)から市販されている、RotaryCellCultureSystem(商標)と呼ばれる製品ラインは、スポルディング、シュワルツ及びウルフ他の特許のさまざまな態様を一体化する。結果として得られる製品は、少ない培地容積(10ml〜500ml)を有し、特別注文の回転器材を必要とし、標準的な研究室ピペットと適合性でなく、且つ等容積の培地を保持する従来の装置の費用と比較した場合に非常に高価である。したがって、これらは、単一装置フォーマットにおける効率の改善の必要性に取り組んでいないため、市場に対して小さな影響しか与えなかった。
【0050】
ファルケンベリ(Falkenberg)他(特許文献21及び特許文献22)は、透析膜により区画化された気体透過性ローラボトルを記載する。このボトルにより収容され得る培地容積は360mlであり、そのうちの60mlは細胞区画内に、300mlは栄養素区画内に存在する。一実施の形態において、ボトルの末端は気体透過性である。特許文献22は、ボトルの末端が気体透過性である場合、「少なくとも50cm2の表面積を有する気体交換膜は、35mlの細胞培養に適していることが証明された」と記述している。したがって、容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は1.43cm2/mlである。別の実施の形態では、ボトルの本体が気体透過性であり、表面積は240cm2である。この気体透過性表面は、槽内に存在する360ml容積の培地全体に酸素添加する。したがって、容積に対する最小の気体透過性表面積の割合は0.67cm2/mlである。ボトルの直径はおよそ5cmであり、ボトルの長さはおよそ15cmである。このように、ボトルは、およそ11.5cmの直径及び最大およそ33cmの長さを有する従来のローラボトルよりもはるかに小さい。この装置は高密度懸濁細胞培養に関して有用であるものの、その制限された培地容積は、スケールアップに必要な装置の数を減少させることができない。さらに、付着面領域を提供しないため、この装置は接着培養には適さない。
【0051】
ファルケンベリ他(特許文献23)は、特許文献21及び特許文献22において規定される装置の改良版を記載する。内部の加圧による損傷を防ぐ崩壊可能なシージングの形態における特徴が開示される。気体はボトルの末端を介して供給され、気体透過性シージングを介して「供給チャンバ内に拡散する」ことができる。残念ながら、ボトル寸法が変えられないままであるため、この装置は、スケールアップに必要な装置の数を減少させることができない。さらに、この装置は接着培養に不適なままである。
【0052】
ザルトリウスグループのビバサイエンス社は、ファルケンベリ他の特許と関連するminiPERMと呼ばれる製品を販売している。最大の細胞区画モジュールは50mlであり、最大の栄養素モジュールは400mlである。したがって、この市販の装置中に存在することができる最大の培地の容積は450mlである。この市販の装置の小さいサイズは、特別注文の回転器材の必要性とあいまって、スケールアップの問題の解決を難しくしている。
【0053】
回転型気体透過性装置が1つの装置当たりにより多くの培地を供給することができ、それによりスケールアップに必要な装置の数が減少するように該装置を改善する必要性がある。これは、培地容積に対する減少した気体透過性表面積の割合が存在する場合に達成することができる。別の問題は、非標準的な研究室器材が、既存の装置の操作に必要であることである。標準的な研究室器材の使用はまた、より多くの使用者がこの技術を利用することを可能にするであろう。
【0054】
上記の考察は、既存の及び提案された細胞培養装置における効率的なスケールアップを制限する設計欠陥に焦点を当ててきた。上述した制限に加えて、接着細胞培養が目的である場合にスケールアップの効率を制限するさらなる問題が存在する。
【0055】
酸素添加のために気体/液体界面に依存する従来の静止装置に関して、接着細胞培養の非効率性は、1つの装置当たり制限された付着面領域により生じる。例えば、装置の底部のみが、ペトリ皿、マルチウェルプレート及び組織培養フラスコを用いた細胞付着に適している。従来のフラスコが、この問題のよい例を提供する。上述したように、典型的なT−175フラスコは約936cm3を占める。しかし、これは、接着細胞が付着するための表面積をわずか175cm2しか与えない。したがって、増殖面に対する占められた空間の割合(5.35cm3/cm2)は非常に非効率的なものである。
【0056】
従来フラスコの表面積における欠陥に取り組むことを試みる製品が入手可能である。マルチシェルフ組織培養フラスコ、例えばNUNC(商標)CellFactory(特許文献24)及びコーニング製のCellStack(商標)(特許文献25)は、ポリスチレンシェルフを垂直方向に積層させる(stack )ことにより、表面積を増大させる。この装置は、培地及び気体をシェルフ間に存在させるように設計されている。これは、培養される細胞の数が増加される場合、装置の設置面積を従来のフラスコと比較して減少させる。マルチシェルフフラスコのプロファイル(profile )もまた、従来のフラスコよりも空間効率が良い。例えば、NUNC(商標)CellFactoryのシェルフ間の空間は約1.4cmであるが、これは典型的なT−175フラスコの底部と頂部との間の距離である3.7cmと対照的である。空間の使用の低減は、滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間及び装置の廃棄の観点から費用を節約する。この形式の装置はまた、スケールアップ時の取り扱い量を減少させるが、これは、複数の組織培養フラスコを満たすのではなく、1つのマルチシェルフ装置を満たせばよいからである。さらに、従来のポリスチレンの使用が容易に適応させられる。残念ながら、この装置は、そのシェルフがそれぞれ、酸素を供給するために気体/液体界面を必要とするため、未だ有効性において最適とは言えない。
【0057】
CellCube(登録商標)は、コーニングライフサイエンス社(Corning Life Science)から入手可能な接着細胞培養装置である。これは、マルチシェルフ組織培養フラスコと類似した様式で構成されているが、気体/液体界面を排除している。したがって、気体が存在しないために、垂直に積層された細胞付着シェルフ間の距離は減少する。このことは、装置が占める空間量を減少させる。しかし、気体交換を提供するために、酸素添加した培地の連続的な潅流が必要である。このことは、コーニング製のCellStack(商標)と比較して非常に高いレベルでの費用及び複雑性をもたらし、研究規模の培養に関して劣ったものとしている。
【0058】
静止気体透過性装置は、NUNC(商標)CellFactory、コーニング製のCellStack(商標)又はCellCube(登録商標)より優れた代替品を提供しない。細胞培養用バッグ及び気体透過性カートリッジは、従来の組織培養フラスコよりも広い付着領域を提供することができる。これは、細胞を装置の上方面及び下方面の両方で培養することが可能になるからである。しかし、細胞付着に適した気体透過性物質は、従来のポリスチレンよりもはるかに高価であり得る。また、気体透過性装置の上方面及び下方面の両方が細胞を増殖させたとしても、同じ設置面積を占める従来の気体/液体界面形式の装置と比較して、わずか2倍の表面積の増加しか得られないであろう。さらに、上述したスケールアップによる欠陥による制限は残っている。
【0059】
フュラー他(特許文献12)は、気体移動及び細胞付着に関するより広い表面積を可能にするために気体透過性物質の表面に模様をつける新規なバッグを提示する。しかし、培地の高さはまた、市販のバッグの高さに制限されている。これは、このバッグが他のバッグと同一の様式で製作されるからである。培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、他のバッグよりも高くさえなるが、不均一な培地分布が存在する。
【0060】
ベスホスキー(Basehowski)他(特許文献26)は、底部を気体透過性にし、平滑にし、且つ細胞付着のために帯電させることにより、接着培養に適した気体透過性バッグを提案する。このバッグの頂部の内表面は下方気体透過性表面とくっつくことを防ぐために模様をつけられている。このバッグは、下方面しか細胞付着に使用せず、表面積対設置面積比の効率は従来のフラスコと同じでしかない。
【0061】
今日まで、気体/液体界面への依存を排除し、且つ潅流の必要なしに多層フラスコのスカフォールドを一体化することができる装置を、いかにして作製するかについての指針は
不十分である。静止気体透過性装置は、装置の底部及び頂部を介する気体移動のみを可能にする。したがって、従来のスカフォールド(マルチシェルフ組織培養フラスコ内に備えられたスチレンシェルフ等)を含む場合、これらは細胞がある位置での気体交換を阻害する効果を有するであろう。気体透過性物質は、付着スカフォールドが十分な気体移動を妨げない様式で位置決めするべきである。これがいかに有益になるかは、本明細書中の発明の詳細な説明においてさらに説明されるであろう。
【0062】
スケールアップ時により効率的な細胞培養装置を提供する必要性は、静止細胞培養装置に制限されず、ローラボトルにも当てはまる。従来のローラボトルは、気体/液体界面の使用により機能する。その形状は、より大きい表面積及びより多い培地容積を巧みな様式で提供する一方、フラスコ及びバッグよりも小さい設置面積を占める。これらの全世界的な使用は、在庫品用空間、インキュベータ用空間、労力及び生物学的有害物質の廃棄用空間の使用の減少をもたらすため、より効率的な配置を提供する装置に対する市場の要求の証拠を提供する。
【0063】
ボトルが接着培養に使用される場合、細胞はボトルの内壁に付着する。回転ボトルが付着した細胞を周期的に培地及び気体空間中を移動させるのに従って、細胞は栄養素及び気体交換を得る。ローラボトルの使用は接着細胞に制限されない。これらはまた、懸濁細胞を培養するのにも一般的に使用される。例えば、モノクローナル抗体を産生するためのマウスハイブリドーマの培養は、ローラボトル内で日常的に行われている。典型的な懸濁細胞培養の用途において、設置面積及びサイズ対フラスコに関する効率の改善を達成することができ、ローラボトルの取り扱いの簡便性が細胞培養用バッグよりも優れており、少ない費用及び低い複雑性のレベルがスピナーフラスコよりも優れている。ローラボトルの有数の供給業者であるコーニング(登録商標)は、850cm2ボトルに対して、170ml〜255mlの間の培地容積を推奨している。ボトルの実際の容積は約2,200mlである。したがって、ローラボトルは接着細胞培養及び懸濁細胞培養の両方に対して有利であるものの、培養プロセス中のローラボトルの大部分(約88%)は気体から成るため、これは未だ非常に非効率的な形状である。ローラボトルはまた、静止装置の簡便性からも逸脱するが、これは、補助的なローラメカニズムが必要であるためである。さらに、これらは細胞にせん断力を与える。これらのせん断力は、せん断を受けやすい細胞を損傷又は殺傷し得、また従来の静止装置には存在しない。
【0064】
マッカリール(McAleer )他(特許文献27)は、細胞が、ボトルの長さに沿って下に向かって配置された平行なディスクの両側に付着することを可能にするように構成されたローラボトル装置を記載する。水平位置で回転する従来のボトルとは異なり、この装置は培地中へ、次に気体中へディスクを持っていくように転倒(tumbles end over end)する。これは、ボトル中に存在する気体の容積を減少させることはない。それどころか、「本発明の別の利点は、非常に少ない容積の液体を使用することができることである」と記述している。これは、機能するために、ボトル中の、潅流されなければならない大容積の気体の存在に完全に依存する。従来のボトルにおける空間の効率的な使用を妨げる過剰容積の気体が残存する。また、せん断力は低減されない。
【0065】
スピルマン(Spielmann )(特許文献28)は、拡大した液体/気体交換表面を提供するローラボトル装置を記載する。複数のトレーがボトル内に平行に配置されている。トレーは、培養のための表面積を増大させ、ボトルが回転するに従って液体がトレー上を流れることを可能にするように設計されている。接着細胞の場合、付着のためにより広い表面積が利用可能である。懸濁細胞の場合、細胞は「気体相及び液体相と接触しながら」トレーによって攪拌される。せん断力は存在したままである。この装置は改善された表面積を備えるものの、気体交換を提供するためにはボトル中の気体の存在に完全に依存している。したがって、この装置は空間効率における基本的な制限(ボトル中に存在しなくてはな
らない過剰容積の気体)に取り組んでいない。
【0066】
ローラボトルが大幅に改善された培地容積対気体比を可能にするように作製されたならば、スケールアップに必要とされる装置の数が低減されることになるため、これはより経済的な選択肢を提供するであろう。850cm2ボトルに関する典型的な培地容積は170ml〜255mlであるが、その許容積は2,200mlであるため、約9〜13倍の栄養素許容積の増大が、ボトルを培地で満たすことにより利用可能となり得る。簡便性を保つため、気体/液体界面から独立している、培養物に酸素添加する複雑ではない方法が存在することが必要であろう。また、接着培養に関して、表面積は、培地容積の増大と比例して増大するべきである。これらの特徴を有する気体透過性装置は、滅菌の費用、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、労力及び廃棄費用を9倍〜13倍減少させることができる。細胞にかかるせん断力もまた、低減され得る。
【0067】
接着培養に関して、提案された及び市販の回転型気体透過性装置は、従来のボトルより優れた代替品を提供しないが、これは、従来の付着面を一体化していないからである。代わりに、これらの装置は、小区域の付着面又はビーズに依存している。ビーズは、接着培養を実施する装置に対して新たな一連の問題をもたらす。ビーズは、均一に播種するのが難しく、顕微鏡的に細胞の集密性又は形態を査定することが不可能であり、細胞の回収が望ましい場合は、ビーズに付着している細胞とビーズを分離しなくてはならない。
【0068】
気体透過性ローラボトルにおけるビーズの使用を排除することが試みられてきた。ネーゲル(Nagel )他(特許文献29)は、ファルケンベリ他の装置に対して、ビーズを用いることなく接着細胞に対する培養能を生み出すことを試みている。1つの細胞付着マトリックスが、細胞培養区画内の気体膜の内部面(face)に備えられている。接着培養が可能であるものの、ボトルの寸法は変えられないままであり、その小さいサイズのために、スケールアップに必要とされる装置の数を減少させることはできない。また、酸素は、まず気体透過性膜、次に細胞付着マトリックスを通って細胞に到達するように移動されなければならない。さらに、わずか1つの細胞付着マトリックス層しか利用可能ではなく、これは、NUNC(商標)CellFactory及びコーニング製のCellStack(商標)の多層とは対照的である。さらに、細胞の集密性及び形態の顕微査定は適応されない。
【0069】
改善された気体透過性ローラボトルが必要である。これは、培地で満たされることが可能であり、標準的なローララックにおいて使用され、培地容積の増大と正比例して細胞付着面積を増大させ、且つ従来のボトルの使いやすさを保持するべきである。本明細書中に、このローラボトルがいかにして達成され得るかが示されるであろう。
【0070】
シン(Singh )(特許文献30)は、「気体透過性表面に依存している装置の全て」に関して、「スケールアップは制限される」と記述している。気体透過性装置のスケールアップの欠陥を解決するために、バッグが開示されている。非気体透過性バッグは、培地と気体とを、おおよそ等しい比率で一体化する。このバッグはロッカープレート上に位置決めされ、この振とう運動(rocking motion)が培地内中に波を生み出し、これは気体移動を促進する。この特許は、WaveBioreactorと呼ばれる、ウェーブバイオテック社(Wave Biotech)から入手可能な市販製品を含む。残念ながら、この装置を機能させるためには、特別注文の振とう及び温度制御器材を購入しなくてはならず、このバッグは培地を保持する許容積を実質的に変えない。気体透過性バッグのように、WaveBioreactorバッグは、それが担持する許容積の1/2未満の培地で満たされる。したがって、このバッグは培地の高さを制限し、且つ気体透過性バッグと同様のスケールアップの欠陥を受け継いでいる。
【0071】
要約すると、研究規模の細胞培養により高い効率性をもたらし、且つスケールアップ時に効率性を失わない、改善された細胞培養装置及び細胞培養法に対する必要性が存在する。機能するために気体/液体界面に依存している従来の装置は、労力、滅菌費用、出荷費用、保管費用、インキュベータ用空間の使用、廃棄費用及び混入の危険性の観点で非効率的である。これらの装置は、ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、マルチシェルフ組織培養フラスコ及びローラボトルを含む。気体透過性装置もまた非効率的であり、多くの場合、機能するために気体/液体界面を必要とする装置の簡便性を失う。petriPERM及びLumoxMultiwellプレート気体透過性装置は、それらの従来の相当物(counterpart )の形態であり、従来装置の非効率性を受け継いでいる。気体透過性バッグは、培地の高さの制限、不均一な培地分布、培地容積に対する高い気体透過性物質表面積の割合の使用、及び充填中に存在する混入の危険性のために、非効率的である。気体透過性カートリッジは、低い高さの培地を有し、培地容積に対する高い気体透過性表面積の割合を使用し、小容積の培地を収容し、且つスケールアップ時に非常に多くの数のユニットが維持される必要があるため、非効率的である。回転型気体透過性装置は、その壁が互いに分離され得る距離を制限する形状的な制約を有し、制限された培地容積に応じて、スケールアップ時に多くの数のユニットを必要とし、且つしばしば特別注文の回転器材を必要とするため、スケールアップに関して非効率的である。接着培養が望ましい場合、従来装置は、非常に非効率的な付着表面積に対する装置容積の割合を有し、空間を無駄にする。静止型、混合型、及び回転型気体透過性装置は、制限された表面積、表面積を増大するためのビーズの使用、従来のシート状スチレン表面の欠失、及び顕微的な評価を実施することの不能性等の理由から、接着培養に関してさらに非効率的となる。
【0072】
本明細書中に開示される或る実施形態は、より効率的な細胞培養装置及び細胞培養法を提供し、さまざまな新規の特質を一体化することができる気体透過性装置を作製することにより、従来の装置及び方法の制限を克服する。これらのさまざまな特質は、気体/液体界面に依存しない気体交換、培地の高さの増大、培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減、装置の側壁を介した気体交換、従来の材料から成る細胞サポートスカフォールド、及び気体透過性物質の厚みの増加を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】米国特許第5,686,304号
【特許文献2】米国特許第4,829,002号
【特許文献3】米国特許第4,937,194号
【特許文献4】米国特許第5,935,847号
【特許文献5】米国特許第6,297,046号
【特許文献6】米国特許第4,847,462号
【特許文献7】米国特許第4,945,203号
【特許文献8】米国特許第5,225,346号
【特許文献9】米国特許出願第10/183132号
【特許文献10】WO00/56870
【特許文献11】米国特許第4,435,508号
【特許文献12】IPN WO01/92462
【特許文献13】米国特許第4,748,124号
【特許文献14】米国特許第5,693,537号
【特許文献15】米国特許第5,707,869号
【特許文献16】米国特許第6,468,792号
【特許文献17】米国特許第5,330,908号
【特許文献18】米国特許第5,153,131号
【特許文献19】米国特許第5,026,650号
【特許文献20】米国特許第5,702,941号
【特許文献21】米国特許第5,449,617号
【特許文献22】米国特許第5,576,211号
【特許文献23】米国特許第5,686,301号
【特許文献24】米国特許第5,310,676号
【特許文献25】米国特許第6,569,675号
【特許文献26】米国特許第4,939,151号
【特許文献27】米国特許第3,839,155号
【特許文献28】米国特許第5,650,325号
【特許文献29】米国特許第5.702,945号
【特許文献30】米国特許第6,190,913号
【非特許文献】
【0074】
【非特許文献1】イェンセン(Jensen)他、「気体透過性及び気体非透過性のサポート上での組織培養における拡散(Diffusion in Tissue Cultures on Gas-permeable and Impermeable Supports)」、J. Theor. Biol. 56, 443-458 (1976)
【非特許文献2】イェンセン、モナ(Mona)・D、「制御環境における大量細胞培養:細胞培養及びその応用(Mass cell culture in a controlled environment, Cell Culture and its Applications)」、Academic Press 1977
【非特許文献3】イェンセン、「バイオテクノロジーと生物工学(Biotechnology and Bioengineering)」、Vol. XXIII, Pp. 2703-2716 (1981)
【非特許文献4】Genetic Engineering News (Vol. 20 No. 21 December 2000)
【非特許文献5】ボグラー、「動物細胞の培養のための区画化装置(A Compartmentalized Device for the Culture of Animal Cells)」(Biomat., Art. Cells, Art. Org., 17(5), 597-610 (1989) )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0075】
[発明の概要]
下方気体透過性物質から成る気体透過性装置に関して、培地の高さを、従来の見識により決定される、又は市販されている装置において利用可能な高さよりも増大させることは有益であり得ることが発見された。本発明の発明者等によって、細胞培養培地内の基質の対流は、従来認識されているよりも重要な役割を果たすと予想される。物質移動のための拡散への歴史的な依存は、対流が与える寄与を過小評価しているように見受けられる。このことは、細胞培養培地中のグルコース及び乳酸塩等の基質の移動速度を過小評価することにつながり、従来許容されていたよりも細胞から遠くに存在する培地が細胞に対して有用であり得ることを認識することができないであろう。培地中の基質の移動速度が過小評価されると、細胞から遠すぎると思われている領域内に存在する培地は、無駄であると間違って見なされるであろう。論理的な結論として、装置によって占められる空間を減少させ、より経済的に滅菌、出荷、保管及び廃棄されるようにするために、気体透過性装置が細胞に対して有用であり得るよりも少ない培地を保持するように不必要に構成されることになる。
【0076】
いずれにしても、従来の見識よりも離れた距離に存在している培地がいかに有益であり得るかの例として、試験を実施し、ここで、培地の高さは、従来提言されている高さ、さらには市販されている静止気体透過性装置において可能である高さをはるかに超えて増大された。通常の細胞培養用途の評価(マウスハイブリドーマを使用)は、従来の見識と比較して培地の高さを増大させることにより、より多くの細胞が、装置の所定の設置面積内に存在することが可能であることを示した。以前には認識されていないこの有益性は、よ
り効率的な細胞培養及びプロセススケールアップを提供するさまざまな細胞培養装置構成を可能にする。
【0077】
本明細書中における本発明の装置及び方法は、装置の壁が気体透過性であり、スカフォールドが存在し、且つ装置が静止モードで操作される場合、気体/液体界面は十分な気体交換に必要ないことを示す。このことは、従来装置における気体の存在に起因する過剰な装置サイズに対する必要性を排除し、且つ気体透過性装置が従来のスカフォールドを一体化することを可能にする。これは、従来装置よりも小さな空間を占めるさまざまな細胞培養装置構成を可能にし、且つこれらの装置をスケールアップに関してより効率的にする。やはり、本発明者等により、対流の役割は寄与因子であり得ることが予期される。
【0078】
また、気体透過性ローラボトルに対する形状構成(従来の見識の指示と相反する)は、細胞を首尾よく培養することができるということが発見された。この新たな形状は、装置が、従来可能であるよりも多くの培地を収容することを可能にし、それによりスケールアップ効率を改善する幾何形状を得る。このことは、酸素添加のための気体を収容する従来のボトルの無駄な空間を排除し、且つスケールアップ効率の観点で気体透過性ボトルよりも優れる細胞培養装置構成が存在することを可能にする。
【0079】
また、細胞を、従来の見識が提唱するよりも厚いシリコーン気体透過性物質を使用して、効率的に培養することができることが発見された。
これらの発見は、細胞を培養する新たな装置及び方法を作り出すことを可能にし、これらは、現在の装置(ペトリ皿、マルチウェル組織培養プレート、組織培養フラスコ、マルチシェルフ組織培養フラスコ、ローラボトル、気体透過性ペトリ皿、気体透過性マルチウェルプレート、気体透過性細胞培養用バッグ、区画化気体透過性装置及び気体透過性回転装置等)を上回る劇的な効率及びスケールアップの改善を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0080】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、優れた気体透過性細胞培養装置を提供する。
【0081】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さを増大すること及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、気体透過性細胞培養装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0082】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体透過性物質から少なくとも部分的に成る側壁を介して気体交換を可能にすることにより、優れた細胞培養装置を提供する。
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体透過性物質から少なくとも部分的に成る側壁を介して気体交換を可能にすることにより、気体透過性装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0083】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性マルチウェル組織培養プレートに対する優れた代替物を提供する。
【0084】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性ペトリ皿に対する優れた代替物を提供する。
【0085】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、より多くの栄養を含むサポートを提供する
ために培地の高さを増大すること、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、気体透過性細胞培養用バッグにおける細胞培養の方法に対する優れた代替法を提供する。
【0086】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、気体透過性カートリッジに対する優れた代替物を提供する。
【0087】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地を従来可能であるよりも気体透過性物質から遠い位置に存在させることを可能にする形状を作製することにより、気体透過性ローラボトルに対する優れた代替物を提供する。
【0088】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、水平位置及び垂直位置で操作することができる優れた気体透過性細胞培養装置を提供する。
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さの増大及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合の低減を可能にするために壁高を増大することにより、区画化気体透過性装置に対する優れた代替物を提供する。
【0089】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、培地の高さを増大すること、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合を低減することにより、区画化気体透過性装置を使用する優れた細胞培養法を提供する。
【0090】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、気体交換のためにシリコーン材料を利用する優れた気体透過性細胞培養装置を、0.013cm(0.005インチ)よりも大きい厚さであるシリコーンを用いて構成することにより、提供する。
【0091】
本明細書中に開示される或る実施の形態は、改善された細胞培養用バッグを提供し、ここでは、気体透過性物質は、0.013cm(0.005インチ)を超える厚さであるシリコーンである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】Dcmが培地の拡散係数であり、PO2及びPCO2の定常値に関するモデルが気体透過性容器内に示されるこのイェンセン他の論文の図2を示す、断面図。
【図1B】Dcmが培地の拡散係数であり、PO2及びPCO2の定常値に関するモデルが気体透過性容器内に示されるこのイェンセン他の論文の図3を示す、断面図。
【図2】イェンセン、「制御環境における大量細胞培養」、細胞培養及びその応用、Academic Press(1977年)からの図2の複写図であり、下方培地高容積を備えて構成された気体透過性細胞培養装置を示す、断面図。
【図3】Si−Culture(商標)バッグ(メドトロニック社)として商品化されている米国特許第5,686,304号の図2の複写図であり、典型的な細胞培養用バッグ断面を示す断面図。
【図4A】大きな容積の培地を下方気体透過性物質上に存在させるように構成された、その下方気体透過性物質から成るハウジングを備えた細胞培養装置(取り外し可能なリッドがその装置を混入から保護する)を示す一実施形態の断面図。
【図4B】大きな容積の培地を下方気体透過性物質上に存在させるように構成された、その下方気体透過性物質から成るハウジングを備えた細胞培養装置(容器は隔壁から出入可能)の一実施形態を示す断面図。
【図4C】装置がその側面を下にして置かれ、非回転位置又は回転位置で操作され得るような気体透過性物質から成る壁を備えた細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図5】細胞を下方気体透過性物質の下面にほぼ均等に分布させ、下方気体透過性物質の底面(underside )に気体を提供させるように構成された、下方気体透過性物質を備えた気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図6】装置プロファイルをさらに増大させることなく、さらに栄養補助を提供するために、培養される細胞の真上ではない領域に培地を維持するように構成された、気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図7A】気体透過性細胞培養装置内の培地の容積が変わる場合、その装置の高さを調節し、それにより培養プロセスの各段階でできるだけ小さな空間を占め、且つプロセスの費用を削減する最小容積状態で、滅菌、出荷、保管、及び廃棄能を可能とし得るように構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図7B】気体透過性細胞培養装置内の培地の容積を変える場合、その装置の高さを調節し、それにより培養プロセスの各段階でできるだけ小さな空間を占め、且つプロセスの費用を削減する最小容積状態で、滅菌、出荷、保管、及び廃棄能を可能とし得るように構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図8】従来のマルチウェル組織培養装置に比べ、1つのウェル当たり増加される培地の容積を保持することが可能であり、それにより1つのウェル当たりに存在する細胞数(amount)を増加することにより、より効率的な研究規模の培養を可能とし、栄養供給の頻度を低減させ、且つより良いクローン選択の可能性を与える、マルチウェルフォーマットにおいて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す斜視図。
【図9A】気体透過性側壁を備えて構成されたマルチウェルフォーマットにおける気体透過性細胞培養装置(装置の各ウェルの下面は、従来の組織培養フラスコとまったく同一の材料から成り得る。気体交換に必要とされるような気体/液体界面の除去は、1つのウェル当たりの細胞数の増加、及び/又は栄養供給の頻度の減少、インキュベータ用空間のより良い使用、並びに滅菌、出荷、保管、及び廃棄の費用削減を可能とする。)の実施形態を示す斜視図。
【図9B】気体透過性側壁を備えて構成されたマルチウェルフォーマットにおける気体透過性細胞培養装置(装置の各ウェルの下面は、従来の組織培養フラスコとまったく同一の材料から成り得る。気体交換に必要とされるような気体/液体界面の除去は、1つのウェル当たりの細胞数の増加、及び/又は栄養供給の頻度の減少、インキュベータ用の空間のより良い使用、並びに滅菌、出荷、保管、及び廃棄の費用削減を可能とする。)の実施形態を示す断面図。
【図10A】気体/液体界面の必要性がなく、接着細胞を培養するためのスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置(水平及び垂直方向に直線的に規模拡大可能であり、従来の接着培養装置に比べ、より優れた効率性を生み出す。スカフォールドの片面又は両面で細胞を培養することが可能である。回転型又は非回転型状態のいずれかで操作され得る。)の一実施形態を示す断面図。
【図10B】気体/液体界面の必要性がなく、接着細胞を培養するためのスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置(水平及び垂直方向に直線的にスケールアップ可能であり、従来の接着培養装置に比べ、より優れた効率性を生み出す。スカフォールドの片面又は両面で細胞を培養することが可能である。回転型又は非回転型状態のいずれかで操作され得る。)の一実施形態を示す断面図。
【図11】少なくとも1つが最適な顕微的細胞査定に適した複数のスカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態を示す断面図。
【図12A】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す斜視図。
【図12B】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す断面図。
【図12C】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す上面図。
【図12D】表面積のさらなる増大を提供し、気体透過性細胞培養装置にさらに高い効率性をもたらすように構成されたスカフォールドの実施形態を示す断面図。
【図13】複数のスカフォールド及び気体透過性物質から成る少なくとも1つの側壁を備えた気体透過性細胞培養装置(気体交換の手段としての気体/液体界面の必要性を排除し、より効率的な空間の使用、並びに関連した滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、及び廃棄に関する費用の有益性をもたらす。)の一実施形態を示す分解斜視図。
【図14A】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14B】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14C】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14D】スカフォールドを備えて構成された気体透過性細胞培養装置の一実施形態(その位置決めは、トリプシンの使用を最小限にし、細胞領域に対する培地の割合を変更し、且つ出荷、在庫、及び廃棄用空間を最小限にすることを含み得る有益性のために調整され得る。)を示す断面図。
【図14E】隣接するスカフォールドとの間で等間隔を維持するために構成されたスカフォールドを示す斜視図。
【図15A】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図15B】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図15C】装置の本体が固定された高さに保たれたまま、スカフォールド間の距離が変更され得るように構成されたスカフォールドの一実施形態(装置の本体の形を変えさせる必要がなく、トリプシンの使用を最小限にし、又は培養領域に対する培地の割合を変更することを含む有益性を提供することができる。)を示す断面図。
【図16】培地の高さが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす効果を査定するために使用される筒状試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、従来の見識における限界を超えて培地の高さを増す有益性、及び従来の装置の培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らす能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図17】試験装置の側壁を介した気体移動を可能とすることにより気体/液体界面の非存在下で接着細胞を培養する能力を査定するために使用される試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図18】試験装置の側壁を介した気体移動を可能とすることにより気体/液体界面の非存在下で接着細胞を培養する能力を査定するために使用される試験装置(複数のスカフォールドをその試験装置に一体化させた。この試験装置を用いた生物学的評価は、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力を示した。これらの驚くべき結果は、以前に考えられていない装置構成が存在することを可能とする。)の断面図。
【図19A】スカフォールドの上面及び下面上に細胞を播種する能力を査定するために使用される試験装置(この試験装置を用いた生物学的評価は、装置の側壁を介して気体交換が行われた場合、気体/液体界面の非存在下で細胞を培養する能力、それは接着表面積に対する下方気体透過性物質の表面積が機能的であり、培地容積に対する下方気体透過性物質の表面積が機能的であり、且つ装置が非回転型位置又は回転型位置にある場合、細胞を培養し得ることを示した。)の断面図。
【図19B】図19Aの試験装置の1つのスカフォールドを示す斜視図。
【図20】実施例4に記載された、細胞分布パターンを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0093】
[発明の詳細な説明]
従来の細胞培養装置又は方法では考えられていない高さに培地を保持することができる気体透過性装置を構成することにより、取り扱い頻度、労力、滅菌費用、出荷費用、保管費用、インキュベータ用空間の使用、廃棄費用、及び混入の危険性を減らすことを含む利点を生じることができる。また、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を、従来の細胞培養装置又は方法では考えられていない割合まで減少させることも、培養効率を増大させ得る。これにより、装置の長さ又は幅を対応して増大させることなく、培地の高さを増大させることが可能となる。好ましい実施形態では、培地の高さを増大させるか、又は培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすかのいずれかを可能とする措置がとられる。培地の高さを増大させ、且つ培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすことの両方を可能とする措置がとられる。
【0094】
培地が従来の見識を超えた高さにあることを可能とする気体透過性装置及び方法に関する多種多様な実施形態が可能である。それらは、従来の装置の形態又は完全に新規の形態を取ることができる。形態が最大で50mm径の気体透過性ペトリ皿である場合、培地の高さは、好ましくは0.36cmを上回るべきである。好ましい壁高は、6mmを上回る。形態が50mm径を超える気体透過性ペトリ皿である場合、培地の高さは、好ましくは0.51cmを上回るべきである。好ましい壁高は12mmを上回る。形態が384ウェル以上のマルチウェル組織培養プレートである場合、培地の高さは、好ましくは、0.91cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは11.5mmを上回る。24ウェル未満〜384ウェル未満では、培地の高さは、好ましくは0.97cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは10.9mmを上回る。24ウェル以下では、培地の高さは、好ましくは1.03cmを上回るべきであり、好ましいウェルの深さは16.5mmを上回る。形態が気体透過性カートリッジである場合、培地の高さ及び壁高は、好ましくは1.27cmを超えるべきである。細胞培養用バッグの形態では、培地の高さは最高点で2.0cm高を超えていることが好ましい。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体に存在する場合、栄養区画の培地の高さは、好ましくは半透過性膜の上の1.0cm高であるべきである。形態が区画化された気体透過性装置である場合、栄養区画の培地の高さは、好ましくは半透過性膜の上の3.8cm高を超えるべきである。
【0095】
従来の見識に比べて、培地容積に対する気体透過性表面積の割合を減らすことを目的とした設計である場合、気体透過性装置及び方法に関する多種多様な実施形態が可能である。それらは、従来の装置の形態又は完全に新規の形態を取ることができる。形態が50mm径以下の気体透過性ペトリ皿である場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは2.74cm2/mlを下回るべきである。形態が50mm径以上の気体透過性ペトリ皿である場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.96cm2/mlを下回るべきである。形態が384ウェル以上のマルチウェル組織培養プレートである場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.10cm2/mlを下回るべきである。24ウェル未満〜384ウェル未満では、培地容積に
対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.03cm2/mlを下回るべきである。24ウェル以下では、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは0.97cm2/mlを下回るべきである。形態が、カートリッジの2つの側面が気体透過性である気体透過性カートリッジの場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは0.79cm2/mlを下回るべきである。細胞培養用バッグの形態では、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が1.0cm2/mlを下回ることが好ましい。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体に存在する場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは1.74cm2/mlを下回るべきである。形態が区画化された装置であり、その装置内の培地全てが半透過性膜の上全体には存在しない場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、好ましくは、0.31cm2/mlを下回るべきである。
【0096】
図4Aは、本発明の一実施形態の断面図を示す。気体透過性細胞培養装置10は、細胞20が下方気体透過性物質30上に存在することが可能となるように構成されている。図4Aは、ペトリ皿の形式で組み立てられた気体透過性細胞培養装置10を示すが、培地が従来の見識の高さを超えた高さに位置させることを可能にする、かなり多くの形状及び大きさでも可能である。
【0097】
頂部カバー55を取り外して、培地50を、注入又はピペット操作のいずれかで都合よく気体透過性細胞培養装置10へ添加し、且つ気体透過性細胞培養装置10から除去することを可能とすることができる。しかし、培地50に対するアクセスはまた、細胞培養装置に共通したかなりの数の方法、例えば、蓋、隔壁及び管で行うことができる。閉鎖系が望まれる場合では、気体透過性細胞培養装置10は注入管及び排出管を備えて構成され得る。それらの管は、テルモメディカル社(Terumo Medical Corp.)(サマセット、NJ)製の器材等を用いて、滅菌管状材料の結合により、培地源及び廃棄袋と接続され得る。また、隔壁構成又は当業者に既知の任意の他の技法を用いて、密閉容器を作製することもできる。例えば、図4Bに示されるように、気体透過性細胞培養装置10は、隔壁65を備えた密閉容器として代替的に構成され得る。
【0098】
気体透過性細胞培養装置10が培地50で完全に満たされ、且つ細胞が重力により培地50外に沈むことを意図する場合では、気体透過性細胞培養装置10の頂部形状により、培地50が下方気体透過性物質30上に均一な高さで存在することが可能となることが好ましい。それにより、細胞が培地50内で懸濁状態から重力によって沈む場合、下方気体透過性物質30上で細胞の均一な堆積が可能となる。図4Bの構成はこの目的を達成する。
【0099】
下方気体透過性物質、例えば物質30は、任意の膜、フィルム又は気体透過性細胞培養装置に使用される材料、シリコーン、フルオロエチレンポリプロピレン、ポリオレフィン及び酢酸ビニルエチレン共重合体等、であり得る。細胞培養における気体透過性物質及びそれらの使用についての学識に関する広範囲に及ぶ情報源は、さらなる指針(例えば、同時係属中の米国特許出願第10/460,850号(その全体が本明細書中に援用される))に用いることができる。フィルム及び膜という用語の使用は、気体透過性物質全体にわたる非常に薄い間隔(distance)を含意する。また、本発明の実施形態は、記載された装置及び方法の気体透過性物質が、フィルム及び膜に付随した厚さを超える場合に機能することを本発明者等は見出した。したがって、培養物の気体交換に寄与する装置の一部は、本明細書中で気体透過性物質と呼ばれる。
【0100】
気体透過性物質は、気体透過性、透湿性、細胞との所望の細胞相互作用に向けて改変する能力、光学的透明度、物理的強度等を含む多様な特性を基に選択されるべきであることが当業者に認識されよう。細胞培養に首尾よく使用されている気体透過性物質の種類を記
載する多種多様の情報が存在する。シリコーンはしばしば、良好な選定子となる。シリコーンには優れた酸素透過性があり、光学観察を可能とし得り、簡単には破壊せず、通常、細胞がシリコーンに結合せず、多種多様な形状に簡単に製造され得る。シリコーンが使用される場合、気体移動が望まれる部位で、約0.508cm(0.2インチ)未満、約0.254cm(0.1インチ)未満、約0.127cm(0.05インチ)未満、又は約0.076cm(0.030インチ)未満であり得る。材料の最良の選択法は用途による。例えば、低温保存にさらされるであろう用途では、Teflon(登録商標)が好ましいであろう。細胞が気体透過性物質に付着する接着培養に関しては、WO01/92462号、米国特許第4,939,151号、米国特許第6,297,046号及び米国特許出願第10/183,132号に、指針を与える多くの情報源がある。
【0101】
シリコーンが気体透過性物質として使用される場合、従来の見識を超えて厚さを拡大することは、設計に関する選択肢を拡大し、製造プロセスの費用を削減し、且つ破壊の可能性を最小限にし得る。例えば、大きな表面積を有する一部を成形することは、その一部が非常に薄くなければならない場合、おそらく難しい。なぜなら、成形物のコアと本体との間の非常に小さな間隙に、材料が流れ込まない場合があるからである。その一部を厚くすること、つまりその間隙を広げることは、成形プロセスを容易にすることができる。成形に対する利点があり得ることに加えて、より厚い気体透過性物質はまた、ほとんど破壊しないか又はピンホールを示さない。
【0102】
壁の高さ、例えば壁40は、装置のスケールアップ効率に重要な役割を担っている。従来の静止気体透過性装置では、培地の高さに限界がある。例えば、バッグは壁を備えておらず、指示書は培地の高さを制限し、カートリッジ式装置のみ非常に高さの低い壁を備える(例えば、Opticell(登録商標)カートリッジ、CLINIcell(登録商標)培養カセット、及びPetaka(商標)カートリッジ)。本発明の目的は、培地の高さを増大させ、それにより装置の効率を増大させることである。壁の高さは、どのくらいの培地が装置に存在できるかを決定し得る。培地を加えることによって、より大きな供給源である基質(substrate) 、及び廃棄生成物用のより大きなシンクを提供する。壁高を高めることにより、スケールアップの間、より多くの培地が必要とされる場合、装置の配置はインキュベータ、フローフード及び生物学的有害廃棄物袋の形状と適合する。さらに、細胞が存在する表面積に対する容積の増大は、存在する細胞当たり、より多くの培地が与えられることを可能とし得る。そのことは、栄養供給の頻度を減らす効果があり、したがって労力及び混入の危険性を減らすことができる。装置設置面積1cm2当たり存在する細胞数を増大させる効果もあり得る。
【0103】
また、培地の容積を増大させる壁を組み立てることは、培地蒸発の影響を小さくする有益な効果もあり得る。培地蒸発は、培地内に存在する溶質の濃度を変えてしまうため、細胞培養では問題となる。既存の気体透過性装置はこのような事象になりやすい。なぜなら、それらの装置の培地容積に対する気体透過性表面積の割合が高いからである。このような事象を防止する試みは、例えば米国特許出願第10/216,554号及び米国特許第5,693,537号に記載されているが、装置内の培地の容積を増大させるだけで、蒸発の影響を減らすことができる。従来の静止気体透過性装置に気体透過性表面積に対する培地容積の割合を増大させた場合、溶質濃度変化の割合は、蒸発がある場合に比例的に減少し得る。
【0104】
好ましい実施形態では、壁は、気体/液体界面に依存した装置の高さを超過した高さに培地を存在させることができるようにすべきであり、通常の静止気体透過性装置の高さを上回ることがより好ましい。例えば、壁40の高さは、3mmを超え、より好ましくは2.0cmを超え、その結果利点を与え得る。従来の気体透過性装置よりもより多くの培地を装置に加える選択肢を装置の使用者に提供することにより、1つの装置当たりより多く
の細胞を収容する能力、装置への栄養供給頻度の低減、及び設置面積を増大させることのない装置のスケールアップを含む、多くの利点が生じる。壁は任意の生体適合性材料から構成することができ、液体密封シール(liquid tight seal )を形成するように下方気体透過性物質と結合させる(mate: 噛み合わせる)べきである。下方気体透過性物質を壁と結合させる方法としては、接着結合、ヒートシール、圧縮圧密(compression squeeze )、及び部分間の封止を作り出すために一般的に使用される任意の他の方法が挙げられる。任意選択として、壁及び下方気体透過性物質は、同一の材料で形成され、単一体として製造することができる。例えば、シリコーンが用いられる場合、壁及び下方気体透過性物質は、単一気体透過性部品となるように液体注入成形されるか又はディップ成形され得る。それにより、気体透過性細胞培養装置が、図4Bに示されるように垂直に立てて置かれるか、又は、その上に細胞20が静置している気体透過性壁41を示している図4Cに示されるように、装置の側面を下に置く場合に細胞がその上に存在するような気体透過性面を作る利点がある。
【0105】
或る特定の気体透過性細胞培養装置の側面を下に置くことは、装置が、狭間隔のインキュベータ棚に対して高すぎる場合に、装置のプロファイル(profile :横幅)が小さくなるため、インキュベータ用空間を最適に使用するのに役立つことができる。気体透過性細胞培養装置の側面を下に置くことが望ましい場合、装置を円形にする代わりに正方形又は長方形にすれば、装置の側面を下に置いた場合に、細胞が存在する平面が作り出されるであろう。これは、細胞が互いの上に積み重なり、場合によっては危険な勾配を生じることになる、集中局在化領域を防ぐため、有利である。装置の深さと幅の寸法が異なる場合、細胞がその上に存在するような3つの相互性表面領域を利用することができる。また、気体透過性細胞培養装置が配置された位置に応じて3つの代替的な最大培地高が存在する。装置がこれらの代替位置での操作用に組み立てられた場合、装置が置かれる面は気体透過性物質から成ることが好ましい。それにより、この面に重力によって沈む細胞が気体交換に最適な近傍にあることを可能とする。
【0106】
実験室の空間の使用を最も効率的にし、培地内の勾配形成を最小限にし、且つ播種中に下方気体透過性物質上で細胞が均一に堆積することを可能にするために、培地を気体透過性物質上に比較的対称的な形状で保持する、構造的に十分な強度を有する壁が構成されることが好ましい。pH又は混入状態を判定するために、壁は培地の色変化を視覚的に評価することが可能であれば、また有利である。気体透過性細胞培養装置が容易に手で持ち上げられることが可能なように壁が構成されてもよい。壁が気体透過性であることが望ましい場合、また、頑丈な位置に壁を固定するために、別個の独立体が壁の周辺に設置された場合、大部分の壁と気体の接触が阻止されないようにすることが好ましい。
【0107】
気体透過性細胞培養装置は、静止モード又は回転モードのいずれかで機能するように構成され得る。そのようにするためには、気体透過性細胞培養装置は、好ましくは円筒型であるべきである。円筒型に形作られた本体は、装置が標準的なローララックに配置される場合、正方形又は長方形の本体よりもより多くの容積を備える。しかし、非筒状の本体形状でも、本体の周りに円形のハウジングを取り付けることにより、ローララックで機能することができる。使用者に、装置を垂直、水平又は回転位置で機能させる選択を与えることが望ましい場合、気体透過性細胞培養装置の底及び側壁の両方が気体透過性物質から成るべきである。装置が水平、回転又は非回転位置で操作されるだけの場合、費用面でより効率的であり、装置の端面が気体透過性物質から成らない場合に蒸発する表面積を最小限にし得る。
【0108】
気体透過性細胞培養装置が下方気体透過性物質を備えた筒状の形状に構成され、且つその壁が気体透過性物質から成る場合、使用者の選択に応じて装置が垂直に立てて配置されるか、又は回転され得る。最大混合が或る用途(例えば、抗体産生時間を減らすように求
められる場合であり得る)に有益性がある場合、気体透過性細胞培養装置を回転することが有利であり得る。この任意選択性が望まれる場合、気体透過性細胞培養装置の壁は、下方気体透過性物質について記載された同一方法で気体透過性にされるべきである。ボトルの長さ又は直径に制限はないが、気体透過性細胞培養装置が標準的なローララックで機能することができるように壁が標準的なローラボトルの直径と一致している場合、有利であり得る。
【0109】
細胞のせん断を低減させることが望ましい場合、細胞のせん断の一因となり得ないように、装置全体を培地で満たすことによりその装置から気体を除去し得る。ポートは、培地が装置全体を満たす際の混入の危険性を減らす、かなりの数の方法で設計され得る。また、装置が回転されるか、又は装置の側面で機能する場合、側面だけが気体透過性物質から成る必要がある。
【0110】
培地が従来の見識を上回る高さで存在することを可能とする装置によってもたらされる、スケールアップの利点は、本明細書中の生物学的結果を示す実施例を踏まえて、当業者に明らかとなるであろう。スケールアップの効率性の例として、気体透過性細胞培養装置が、垂直位置で操作される円筒型であり、その底部が気体交換に付される場合、直径を倍にすると、容積は、高さが一定に保たれる場合の4倍に増大する。例えば、およそ11.430cm(4.5インチ)径及び約19.558cm(7.7インチ)高の装置は、約2Lの培地を収容し得る。装置の直径を約22.860cm(9.0インチ)にすることにより、装置は8Lの培地を収容し得る。装置の直径を約45.720cm(18.0インチ)にすることにより、装置は32Lの培地を収容し得る。したがって、重要なパラメータ、例えば、培地の高さ、及び培地容積に対する気体透過性表面積の割合、を一定に保ちながら、培養容積を容易にスケールアップすることができる。これらのパラメータを一定に保つことにより、小容積用の装置に開発されたプロトコルは、装置の容積が増大してもおそらく不変のままである。
【0111】
気体透過性細胞培養装置が垂直位置で操作され、且つ懸濁細胞が培養される場合、周囲気体が、下方気体透過性物質の下面と比較的非閉塞的に接触し得る場合に利点がある。例えば、棚が穿孔されていないインキュベータ内で、下方気体透過性物質がインキュベータの棚と接触するようにした場合、培養物内及び培養物外への気体の移動が制限され得る。図5の断面図に示される実施形態では、下方気体透過性物質サポート80は、下方気体透過性物質30が気体区画90を維持することにより周囲気体と必ず接触するよう作用する。好ましい実施形態では、培養物をサポートするのに必要とされる気体交換の量を減らさずに下方気体透過性物質サポート80が下方気体透過性物質30と部分的に接触することができるようにすることで、気体区画90が維持される。周囲気体にさらすことに加えて、下方気体透過性物質サポート80は、細胞20がどんなに低い位置でも積み重ならないように実質的に水平な状態で下方気体透過性物質30を維持する。これは、細胞20が下方気体透過性物質30の全体にわたって均等に分布し得る状態に対して、拡散勾配を生じ、且つ細胞増殖を制限するであろう。したがって、下方気体透過性物質サポート80の設計目的は、物質が実質的に水平に保たれることを必要とする多くの場所で、下方気体透過性物質30の下面と十分な気体を接触させたまま、下方気体透過性物質30と接触させることであり得る。当業者は、この目的を達成する多くの方法があることを認識しているであろう。図5に示されるように、突出部110がこの目的を達成する。
【0112】
「インサーキットテスター(bed of nails:ネイルベッド)」構成は、十分な気体交換をさせながら、実質的に水平位置で下方気体透過性物質30を維持する1つの方法である。例えば、均等に分布され、且つ下方気体透過性物質サポートから1mm突出する1mm×1mmの正方形は、実質的に水平位置で下方気体透過性物質を保持することができる。突出部110が、図5に示されるように、下方気体透過性物質サポート80の表面の50
%を占める場合、この構成は、十分な気体交換により、約0.010cm(0.004インチ)厚のシリコーン膜上で1cm2当たり約1億〜1.5億個のマウスハイブリドーマ細胞を培養することを可能とする。また、図5に示されるように、下方の気体出入開口部100は、気体が受動拡散により下方気体透過性物質サポート80の気体区画90に対する出入りを可能にする。これは、気体透過性細胞培養装置10Bを、補助的なポンプ機構を必要とせずに周囲条件下で機能させる。足場95は下方気体透過性物質サポート80を持ち上げ、周囲気体が下方の気体出入開口部100で利用可能になるようにさせる。この情報はまた、装置が回転モード又は非回転モードのいずれかで、装置の側面について記載されるように機能する場合、側壁周辺の気体区画を維持するのに適用される。気体透過性物質に十分な気体の接近を可能にする他の可能性も利用できる。インテグラバイオサイエンス社(Integra Biosciences AG)製、例えばCELLine(商標)製品は、下方のプラスチックサポートから30.48cm(1フィート)持ち上げたオープンメッシュを用いて、気体透過性膜への気体のアクセスを可能にしている。また、米国特許第5,693,537号もこの特徴に対する付記的なガイダンスを提供している。
【0113】
図5に示される構成では、蓋70が培地出入口60を覆い、混入を防ぐ。O−リング75は、装置が水平位置にあるか、完全に満たされているか、又は偶発的に落下するような場合等、培地50が気体透過性細胞培養装置10Bから漏れないように保証する。
【0114】
或る特定の実施形態では、培地は下方気体透過性物質上全体に存在する必要はない。棚間の距離が制限されたインキュベータでの使用に望まれ得るような、垂直な細胞培養装置のプロファイルを減らすために、培地の一部は下方気体透過性物質の直に上ではない領域に存在し得る。図6の断面図は、垂直位置で操作される場合の気体透過性細胞培養装置10Cのプロファイルを減らすために、壁40Cが下方気体透過性物質30から隔てられた懸濁細胞培養用に構成された実施形態を示す。この構成では、気体透過性細胞培養装置10Cの幅又は直径を単に拡大することにより、装置のプロファイルを減らしながら、細胞が存在する表面積に対する培地容積の割合が一定に保たれ得る。細胞20が、播種、栄養供給及び取り扱いの際に、下方気体透過性物質30上に存在し続けることを確実にするよう留意すべきである。内壁42は、重力により細胞20を下方気体透過性物質30上の領域に維持することにより、このことを達成する。好ましい実施形態では、壁は、3mmを上回る下方気体透過性物質30よりも上の高さに培地を存在させることができるようにすべきである。
【0115】
図7A及び図7Bは、装置内に存在する培地容積に応じて装置の高さを上げるか、又は下げることができる、気体透過性細胞培養装置に関する好ましい実施形態の断面図を示す。図7Aでは、培地50を気体透過性細胞培養装置10Dに加え、浮き胴(buoyant shoulder)25と接触させる。図7Bでは、培地50は浮き胴25に上方の力を及ぼし、その結果、培地50の容積が増大するに応じて気体透過性細胞培養装置10Dの高さが上がる。示された構成では、壁40Dは気体透過性細胞培養装置10Dの高さを伸縮させるように形作られたベローである。浮き胴25は、培地50よりも密度が小さい任意の生体適合性材料であり得る。また、浮き胴は壁40の一体部分であり得る。気体透過性細胞培養装置10Dを上方に伸長するのに十分な力を発揮するには、培地50の適切な容積を移動させる大きさに作るべきである。この構成では、気体透過性細胞培養装置10Dは、培養を行うのに必要な分だけの空間だけを占め、1つの製品で様々な用途に最適な大きさとなり得る。例えば、ハイブリドーマを培養することに適した培地の容積は、膵島を維持することに適した培地の量とは異なる場合がある。そのような場合、気体透過性細胞培養装置10Dは、各用途に必要な分だけの空間を占めるだけでよい。また、最小容積の状態で、滅菌、出荷、保管、インキュベーション及び廃棄することが可能であり、それにより培養プロセスの費用を削減できる。当業者は、例えば、同時係属中の米国特許出願第10/460,850号で記載されるような多種多様な機械的メカニズム等、浮力以外の装置の形状
(プロファイル)を変更する多くの他の方法があることを認識するであろう。
【0116】
図8は、各ウェルの底部が気体透過性である、気体透過性マルチウェルプレート15に関する実施形態を示す。下方気体透過性物質30Aの特性は、図4Aの実施形態で記載されたものと同一である。6ウェルプレートを示すが、従来の6ウェル、24ウェル、48ウェル、及び96ウェルフォーマットを含む、かなりの数の個々のウェル45を提示することができる。壁40Eは、従来のマルチウェルプレートの壁高を超過する下方気体透過性物質30Aを越える高さに、培地を存在させるように構成されている。それにより、従来のマルチウェルプレートに比べて設置面積を減らしつつ、各ウェルに存在し得る細胞の数を増大させる。例えば、マウスハイブリドーマ細胞は通常、培地1ml当たり1×106個の細胞の密度で存在し得る。ウェルが8.6mm径、培地の高さが2mmである場合、0.12mlの培地では、約0.12×106個の細胞が1つのウェル当たり存在することができる。壁を高くすることにより、1mlの培地がウェルに存在し得る場合、ほぼ5倍もの細胞(すなわち、1ml当たり1×106個の細胞)をサポートするのに十分な培地が1つのウェル当たり存在し得る。但し、多数の細胞が0.58cm2の表面積(すなわち、8.6mm径)の気体透過性物質上に存在し得るとする。実施例1は、1×106個を超える多くのマウスハイブリドーマ細胞が、培地容積に依存したこの大きさの表面積に存在し得ることを示す。より多くの培地が、より多くの細胞のサポートができるので、栄養供給の頻度を減らし、培地の組成を変える蒸発速度を低減することができる。
【0117】
壁は任意の生体適合性材料から構成することができ、液体密封シールを形成する方法で、下方気体透過性物質に噛み合わされなければならない。下方気体透過性物質30Aを壁40Eに噛み合わせる方法は、図4Aの実施形態に関して記載されたものと同一である。また、図4Aの実施形態に記載されるように、壁40E及び下方気体透過性物質30Aは同一の材料で形成され、且つ単一体として製造され得る。下方気体透過性物質30Aは、図5に示されるように実質的に水平位置で支えられ得る。ここで、下方気体透過性物質サポート80は、気体区画90と連通する下方気体出入開口部100を備えて構成される。ウェル45の底部のスパンが小さい場合、サポートは不必要である場合がある。なぜなら、気体透過性物質の厚さ及び物理特性によっては、下方気体透過性物質30Aの物理的強度が下方気体透過性物質30Aを適切な水平位置に保持し得るからである。この場合、気体移動が、穿孔されていない棚を備えたインキュベータにおいて問題とならないように、足場95Aを用いて気体透過性マルチウェルプレート15を持ち上げることができる。頂部カバー55Aは、混入を防ぎ、蒸発を最小限にする。
【0118】
図9Aは、一部を切り取った斜視図を示し、図9Bのウェル45Aは、気体透過性マルチウェルプレート16に関する好ましい実施形態のA−Aでの断面図を示す。この実施形態では、ウェルの壁は気体透過性である。6ウェルプレートを示すが、従来の6ウェル、24ウェル、48ウェル、及び96ウェルフォーマットを含む、かなりの数の個々のウェル45Aが提示され得る。従来のマルチウェル組織培養プレートの顕微的付着表面、又は可視光特性のいずれかを保持することが望ましい場合、この構成は有益であり得る。さらに、各ウェル45Aを、細胞培養に使用される従来のマルチウェルプレートの最大の深さよりも深くすることにより、より多くの培地が培養に利用することができ、且つ壁の気体透過性の性質が培養物の適切な気体交換を可能とし、気体/液体界面の位置決めが重要ではないように得る。非気体透過性底部31を液密的に気体透過性壁41と噛み合わせる。この目的を達成する多くの方法がある。例えば、非気体透過性底部31の直径が気体透過性壁41の直径を僅かに上回ると、気体透過性壁41に非気体透過性底部31に対し力が加えられ、それにより液体密封シールを作製することができる。気体透過性壁41は、図4Aの気体透過性物質に関して記載されたような任意の特性を有し得る。しかし、好ましい実施形態では、気体透過性壁41はシリコーンから成る。なぜなら、シリコーンには、液体注入成形により容易に製造される性能、並びに延伸及び非気体透過性底部31に対す
る液体密封シールを付与する潜在的性能があるからである。非気体透過性底部31は、従来のマルチウェル組織培養プレートで一般に使用される任意のプラスチック、又は当業者には既知の任意の他の細胞付着材料であり得る。
【0119】
気体透過性物質から気体透過性マルチウェルプレート16のウェル底部を含む各ウェルを製造することで、シール接合部がなくて済むため、それほど高価ではないであろう。そのため、接着培養が望まれる場合、適したスカフォールドがウェルの底部に配置され得る。顕微的な評価が望まれる場合、光学的透明度を確実にするように留意すべきである。細胞培養の熟練者(当業者)に既知のいかなる細胞付着面もウェルに配置され得る。細胞付着面が浮揚性である場合、細胞付着面をウェル内に圧入することにより、細胞付着面を所望の位置に維持させることができる。細胞付着面を適所に保持する多くの他の方法もまた可能である。
【0120】
図10A及び図10Bは、接着細胞を培養する場合、空間をより効率的に利用する気体透過性細胞培養装置の一実施形態の断面図を示す。スカフォールド120は気体透過性細胞培養装置10E内に存在する。側壁40Fは気体透過性物質から成り、そのため装置の側面を介した気体交換が可能である。この様式では、高さが増大するに伴いスカフォールド120が均一に拡大(scale )され得るため、気体透過性細胞培養装置10Eは高さに制限はない。より多くの細胞を培養させるには、装置をより高くし、より多くのスカフォールド120を加えるだけでよい。好ましい実施形態では、各スカフォールド120間の距離は、スケールアップの間、一定に維持される。例えば、スペーサ135を有するスカフォールド120を構成することにより、スカフォールドが等しい距離離れて維持され、且つ気体透過性細胞培養装置10Eの底部と平行に保持され、垂直直線方向にスケールアップされる。ピペット出入開口部125は、気体透過性細胞培養装置10E全体からピペット出入を可能とし、培地が加えられる際にガス抜きをするための開口部を備える。ピペット出入は、中央に示されているが、任意の位置にあることができるか、又は針若しくは隔壁等の任意の他の液体取り扱い形態に有利になるように、完全に取り除くことができる。図10Aでは、各スカフォールド120上の種菌130の容積が等しいので、細胞20Aは種菌130内でよく懸濁されており、且つ各スカフォールド120の上面の周りで均等に分配され得る。スカフォールド120の両面が接着細胞を培養することを意図する場合、図10Aに示されるように、播種は先にスカフォールド120の片面を播種することにより2段階で行われ得る。細胞が重力によって堆積し、スカフォールド120の表面に付着した後、気体透過性細胞培養装置10Eは再播種され、180度回転してスカフォールド120の反対面を露出させる。その後、図10Bに示すように、細胞20Aを固着させ、スカフォールド120の露出面に付着させる。
【0121】
細胞付着後、スカフォールドの片面に播種するには通常24時間未満かかり、利便性(convenient)のある任意の静止位置、例えば垂直、転置又はその側面上等で装置が操作され得る。必要に応じて、使用者がローラボトルにより等しいフォーマットを望む場合、装置が回転され得る。従来の装置とは異なり、気体交換が気体透過性壁によって生じ、且つ気体/液体界面の必要性がないため、装置は完全に培地で満たされ得る。この様式では、装置は従来の装置よりも、装置の空間の使用に効率的である。なぜなら、培養物の気体交換のために、装置内に気体を存在させる必要がないからである。装置内で培養され得る細胞数に対する制限要因としては、スカフォールド表面積の量、培地が存在する容積、装置の壁に使用される材料の気体透過性及び厚さ、細胞が存在する、装置の気体透過性壁からの距離、並びに培養される細胞の型が挙げられる。
【0122】
気体透過性細胞培養装置を設計する場合に、スカフォールド領域に対する培地容積の割合が重要であることを理解することは、装置のアウトプットを予測する助けと成り得る。例えば、培養がこれまでローラボトルで行われている場合、ローラボトル培養の表面積に
対する培地の容積は気体透過性細胞培養装置に再現され得る。例えば、150mlの培地を用いて既存の培養が従来の850cm2ローラボトルで行われ、且つ気体透過性培養細胞装置が、従来のボトルと同一の外側形状を有している場合、表面積に対する培地容積の割合は一定に保たれ得る。従来の850cm2ローラボトルの形状で構成された気体透過性細胞培養装置は、約2,200mlの培地を保ち得る。それは、従来のローラボトルの150ml培地容積に比べ、培地容積が14.67倍増加する。したがって、12,470cm2である表面積における14.67倍の増加は、相当の表面積に対する培地の割合を等しく維持する必要がある。そのため、気体透過性細胞培養装置が2,200mlの培地を含有し、且つスカフォールド表面積が12,470cm2である場合、通常1つのボトル当たり150mlで操作する約15個の従来の850cm2ローラボトルで培養される細胞と同数の細胞を培養することが予想され得る。また、栄養供給の頻度もほとんど同一であるはずである。
【0123】
細胞の集密性を顕微的に査定する性能は、多くの用途に有用である。最も下のスカフォールドが気体透過性細胞培養装置の底部を成す場合、細胞の集密性を査定するのに用いられ得る。各スカフォールド上に存在する培地の容積が播種の間等しい場合、任意のスカフォールド上に存在する細胞の量は培養中比較的等しくなる。したがって、1つのスカフォールドが他のスカフォールドの代表例となり得る。いくつかの顕微鏡では、最も下のスカフォールドを、逆転させて顕微的に観察できる位置に物理的に移動させる性能は、集密性及び形態を良好に査定しやすくし得る。図11の断面図に示される構成は、このことを達成し得る方法を示す。壁4GHが柔軟性である場合、シリコーン等の多くの気体透過性物質の中から製造されるような場合に、気体透過性細胞培養装置10Fに対して最も下のスカフォールド120の移動を可能とするために襞が付けられ得る(pleated )。顕微的な評価はまた、図11に示された固定化位置に気体透過性細胞培養装置10Fを製造することにより可能とすることができ、それにより、気体透過性細胞培養装置10Fに対して最も下のスカフォールド120を移動させる必要がなくなる。
【0124】
図10A、図10B及び図11に示されるスカフォールドは平坦であるが、スカフォールドは細胞が付着できるいかなる配置形状であってもよい。例えば、表面を波形に成形することは平面に対して表面積を増大することができ、それにより所定のスカフォールド上に存在し得る接着細胞の量を増大させる。図12Aは、波形に成形された丸状のスカフォールド120Aの斜視図を示す。このスカフォールド120Aは直線方向に波形に成形される。図12BはA−Aでの断面図を示す。図12Cは丸状の波形に成形されたスカフォールド120Bの斜視図を示す。このスカフォールド120Bは、円方向で波形に成形され、図12DはB−Bでの断面図を示す。速い速度の気体移動が非常に活発な細胞をサポートするために必要であるいくつかの用途では、図12Aの構成が優れ得る。なぜなら、図12Cの構成の場合のように、気体移動用のチャネルがスカフォールドの端によって閉塞されない(unobstructred )ためである。気体透過性細胞培養装置が回転される他の用途では、図12Cの構成が優れ得る。なぜなら、その形状が、細胞のせん断を引き起こし得る渦巻きを最小限にし得るからである。
【0125】
構成、顕微的観察の方法、並びに図10A、図11及び図12に記載されたもの等のスカフォールド領域を増大する方法は、マルチウェルフォーマットに一体化され得る。これらの構成は、大きさにおいて完全にスケーリング可能である。図9Bは、スペーサ135により所定の距離離れて維持された複数のスカフォールド120を備えて構成された大表面積ウェル46を示す。それらを通常の伝統的なマルチウェル組織培養プレートのウェルの大きさにすることにより、1つのウェル当たりに存在する接着細胞数を実質的に増大させ得る。壁41Aは気体透過性であることが好ましい。
【0126】
図13は、組織培養フラスコフォーマットと同様のフォーマットで細胞を培養するのに
有用である気体透過性細胞培養装置に関する構成の一切断面を示す。この実施形態では、装置の少なくとも1つの壁が気体移動を行う。この装置は、空間をよりコンパクトに使用できるようにしながら、気体透過性細胞培養装置に従来の組織培養フラスコと同一の特質を保持させるので有益である。望ましい特質としては、注入又はピペット操作での培地の搬入及び除去の容易さ、顕微的観察能、混入又はpHの変化を示し得る培地の色の変化が容易に見られること、並びに出荷、保管及びインキュベータ用空間を最も効率的に利用するための装置の積載可能性が挙げられる。しかし、組織培養フラスコ操作に必要とされる気体/液体界面が除かれ、且つ1つ又は複数のスカフォールドが存在し得るため、気体透過性細胞培養装置は組織培養フラスコよりも優れる。図示の実施形態では、気体透過性細胞培養装置12は、少なくとも1つの気体透過性壁200を備えた液体密封外枠から成る。培地出入口60Aは蓋70Aで覆われる。スカフォールド120Dは、種菌と培地が各スカフォールド120Dの間に存在できる間隔を有して、互いに平行に配向される。好ましくは、各スカフォールド上に存在する種菌又は培地を等量にするために、スカフォールド120Dは等間隔に位置付けられる。気体透過性壁200の気体透過性物質は、図4Aに示される実施形態の下方気体透過性物質30に関して記載されたものと同一の特質を有する。好ましい実施形態では、スカフォールド120Dは、従来の組織培養フラスコに存在する物質の特徴と一致した物質の特徴を有する。頂部壁201及び最も底部のスカフォールド120Dは透明であるので、培地の色を視覚的に査定すること、並びに底部のスカフォールド120Dを顕微的に評価することが可能である。後部壁又は他の壁を気体透過性にすることにより、さらに気体移動能を作り出すことができる。それは、気体透過性細胞培養装置12の設置面積をさらに増大させることが可能となる効果を有し得る。例えば、気体透過性壁200の気体移動能が、約12.700cm(5インチ)幅のスカフォールド120D上に存在する細胞をサポートする場合、反対側の壁を気体透過性にするとスカフォールド120Dが約25.400cm(10インチ)幅である場合に十分な気体移動能が可能となる。気体透過性細胞培養装置12が垂直方向にスケールアップする機能(capacity)に制限はない。
【0127】
図14A〜図14Eは、細胞を培養する際に、より効率的に空間を利用する別の方法を示す。この構成では、スカフォールド120Eは気体透過性細胞培養装置10G内に存在する。この装置は培地50が加えられると容積を拡大することができる。図14Aでは、気体透過性細胞培養装置10Gが装置自体の重さで崩壊の状態にある。これにより、使用される前に、出荷、滅菌及び保管用の空間を効率的に使用することが可能である。スカフォールド120Fをできる限り互いに近接させる。各スカフォールド120Fは、下方の隣接したスカフォールド120Fに力を及ぼすスプリングアーム145を用いて成形される。圧縮されたスプリングアーム145は拡張しようとするが、気体透過性細胞培養装置10Gの上方部分の重さがスプリング力を上回るため、拡張することができない。図14Bでは、種菌130Aを加えることにより浮き胴25Aに対して働いた力を受けて、気体透過性細胞培養装置10Gの高さが上がっている。浮き胴25Aによる種菌130Aの転移により働く上方への力は、スプリングアーム145Kのスプリング力と組み合わされた場合、気体透過性細胞培養装置10Gの上方部分の重さを上回る。スプリングアーム145がその下方の隣接したスカフォールド120Fに対して及ぼす力のため、スカフォールド120Fが離れて互いに等間隔で保持される。各スカフォールド120F上に直接存在する種菌130Aの体積が、各スカフォールド120F上に堆積され得る細胞の量を表す場合、互いに等間隔を保持することは、播種の際に特に有益である。スカフォールド120Fのそれぞれの上に存在する種菌130Aを等しい体積にすることにより、等しい数の細胞が各スカフォールド120F上に存在することができる。図14Cでは、細胞集団の拡大と栄養要求量の増大に伴う培地50の追加に応じて、図14Bに比べ、気体透過性細胞培養装置10Gの高さを再度上げている。スカフォールド120Fは、スプリ
ングアーム145がその下方の隣接したスカフォールド120Fに対して及ぼす力のため、さらに離れて互いに等間隔で保持される。各スカフォールド120Fの間の一定した距
離は、細胞の位置する場所全てにおいて表面積に対する培地50の容積の一定の割合を保障し、勾配形成の可能性を減らす。図14Dにおいて、培地50の除去及び浮き胴25Aの上方への力の喪失により、気体透過性細胞培養装置10Gは崩壊している。気体透過性細胞培養装置は、今は廃棄用に効率的な大きさとなっている。接着細胞の回復が必要な場合では、気体透過性細胞培養装置10Gを崩壊させることは、培地50を除去するとともにトリプシンを加える場合、有益である。この様式では、細胞を回復させるのにわずか少量のトリプシンしか必要とされない。当業者は、気体透過性細胞培養装置10Gの高さを変更する多くの他の方法が適用され得ることを認識するであろう。
【0128】
図14Eの斜視図に示されるように、スプリングアーム145はスカフォールド120F内に直接成形され得る。スプリングアーム145は、少なくとも3つの場所に位置決めすることが好ましく、スカフォールド120Fが平面であり、且つ隣接したスカフォールド120Fに平行のままであることを確実にする。細胞接着につながるあらゆる材料が許容されるが、好ましいスカフォールド120F用の材料はかなり脆性のあるポリスチレンである。したがって、スプリングアーム145が、圧力で亀裂が生じることを防止するために良好な成形部品設計によって構成されることを確実にするよう留意すべきである。応力の低い部品設計の技法は、プラスチック部品設計の熟練者(当業者)によく知られている。
【0129】
気体透過性細胞培養装置の高さに関係なくスカフォールドの位置を移動することが望まれる場合がある。例えば、伸長しない壁を備えた気体透過性細胞培養装置を構成するほうが、より経済的だが、培養中それぞれのスカフォールド上の表面積に対する培地容積の割合を変更することによってその用途が依然として利益を得られる場合、これは実用的であり得る。図15A〜図15Cはそのような目的を達成する一実施形態を示す。明確には、気体透過性細胞培養装置の一部だけが示される。図15Aに示される気体透過性細胞培養装置の一部の上面図では、スカフォールド間の距離を変えるために、3つの持ち上げポスト(elevation post)160が3つのランプ150のそれぞれを上方に移動するように位置付けされる。
【0130】
スカフォールド間の距離を変える方法は、図15B及び図15Cを検討することにより最もよく理解され得る。図15Bは図15AのA−A断面図を示す。図15Bで示されるように、2つのスカフォールド120G間の距離が最小となる位置のスカフォールド120Gを示す。ランプ150はスカフォールド120Gの頂部から延び、持ち上げポスト160はスカフォールドロケータスクリュー170から延びる。持ち上げポスト160はランプ150の上方への移動を始めていない。スカフォールド間の最小距離は、ランプ150上に存在するスカフォールド120Gの下方面と接触するランプ150の高さによって決まることが分かる。図15Cを参照すると、スカフォールド120Gはそれらの間の距離が最大となる位置にある。スカフォールドロケータスクリュー170が回転矢印180の方向に回転することで、持ち上げポスト160がランプ150を上り、その上に存在するスカフォールド120Gを上昇させる。持ち上げポスト160がランプ150Lの最も高い点に存在する場合、ランプ150の高さと持ち上げポスト160の高さを足したものに等しいスカフォールド120L間の最大距離が達成される。スカフォールドロケータスクリュー170が回転する際、スカフォールド120Gが回転するのを防止することにより、持ち上げポスト160がランプ150を上昇移動する間に、ランプ150を固定位置に留まらせる。これは、さねはぎ配置で気体透過性細胞培養装置壁の内部にスカフォールド120Gを噛み合わせることにより達成することができる。図15Aのスカフォールドの上面図で最もよく示されるように、つまみ212は気体透過性壁40Hから延び、各スカフォールド120Gの溝215と噛み合う。これは、ロケータスクリュー170の回転中にスカフォールド120Gの回転を防止するだけではなく、スカフォールド120Gから気体透過性壁40Hが引き離されるのも阻止する。こうして、気体透過性細胞培養装置
の形状が保持される。ロケータスクリュー170は、滅菌ピペットチップにより回転されるように構成され、それにより装置の混入を防ぎ、標準的な実験器具の使用によりスカフォールド間の距離を再配置することを可能にし得る。
【0131】
本発明は以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに説明される。
実施例
【実施例1】
【0132】
培地の高さが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす効果
下方気体透過性物質から成る装置により、培地の高さを変更することが細胞増殖及び抗体産生に及ぼす影響を査定するため、評価を行った。培地容積に対する気体透過性物質表面積の割合を変更することの効果もまた査定された。下方気体透過性物質及び従来の見識を超えた高さで培地を保持する能力を備えて構成された単区画の試験装置を、従来の見識の範囲内の高さで培地を保持した単区画の対照試験装置と比較した。Si−Cultureバッグ(米国特許第5,686,304号)に定められた1.6cmという培地の高さの限定に対して比較を行った。対照試験装置は、高さ1.6cmで培地を収容するように構成し、試験装置全てに使用された気体透過性物質は、実際のSi−Culture(商標)バッグから得られた気体透過性物質から成っていた。
【0133】
管状試験装置105を図16に示されるように構成した。壁40IをUltem1000(高温ポリカーボネート)円筒型ストックから機械加工し、内径約2.540cm(1.00インチ)及び外径約3.810cm(1.50インチ)の管が得られた。厚い壁により、壁を介した気体移動が培養を促進しないことを保証した。下方気体透過性物質30Aを、Si−Culture(商標)バッグから除去されたシリコーンから成る厚さ0.045のシートから製造し、機械加工された管の底部に液密的に固定し、その上に存在する細胞20B用の5.07cm2の生育面積が得られた。下方気体透過性物質サポート80Mもまた、Ultem1000から機械加工した。下方気体透過性物質30Aを、気体区画90Aを保持するメッシュ115により水平位置に保った。メッシュ115は、約2.540cm(1インチ)当たり16本の約0.051cm(0.020インチ)径のストランドで構成された。下方気体出入開口部100Aを、5%CO2、95%R.H.および37Cの周囲環境で気体連通させた。試験装置内に備えた培地50Aの量を異なるものとした時の、細胞20Bを増殖させる装置の生産能力を比較した。壁40Iに密着固定した蓋70Bにより筒状の試験装置105を混入から保護した。試験によって、培地50Aが細胞上約1.6cm、3.2cm、5.6cm、10.2cm、15.3cm、及び20.4cmの高さに存在した場合の結果を比較した。培地50Aは、10%のHycloneFBSが添加されたHycloneHyQSFM4MAb−Utilityで構成された。細胞20BはIgGを分泌するマウスハイブリドーマ細胞であり、下方気体透過性物質30A 1cm2当たり0.76×106個の播種密度で播種した。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。周期的に細胞の計数とモノクローナル抗体産生の測定値をELISAにより取った。表1はその結果を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
従来の見識を代表する試験装置の対応するパラメータ(すなわち1.6cm)で任意の所定の試験装置で測定された各パラメータを割ると、従来の見識を超えた高さに培地を存在させる利点が明らかに示される。試験装置が1.6cm(すなわち、1.25cm2/ml)の高さで培地を含有する場合、培地容積に対する気体透過性表面積の割合は、Si−Culture(商標)バッグの割合で試験装置の割合を割ることにより求められる。表2にこの様式における表1のデータを提示する。
【0136】
【表2】
【0137】
表2のデータは、気体透過性細胞培養装置の配置を変更してより多くの培地を細胞上に存在させる利点を明らかに示す。例えば、最後の行は、装置が従来の細胞培養用バッグの
12.75倍の高さに培地を保持することができる場合、この装置はそれが占める据付面積1cm2当たり2.91倍の細胞を培養することか可能であり、完全産生時間が2.83倍増加するだけで11.99倍のモノクローナル抗体(Mab)を産生することを示す。また、培養容積に対する気体透過性物質表面積の割合がSi−Culture(商標)バッグのものと比較された場合、劇的にその割合が減少し得る。その割合がSi−Culture(商標)バッグにより使用される割合のわずか4%であった場合でさえ、培養物を効率的に増殖させた。これにより、培地の高さを上げつつ、装置の設置面積は固定されたままにさせることを含む、多種多様の装置構成の存在が可能である。また、より多くの培地が気体透過性表面積1cm2当たりに存在するので、蒸発の影響を最小限にさせる。
【0138】
重要なことに、このデータは、培養物が増えるが装置の設置面積は小さいままであり得ることを示す。表3は、試験装置に存在する培地の容積を収容するために必要な装置の設置面積の表面積を示す。1行目は試験装置内の培地容積を示す。2行目は、培地を益々加える際に固定されたままの試験装置の設置面積を示す。3行目は、試験装置に存在する培地の容積を保つために通常のバッグで必要とされ得る設置表面積を示す。この場合、設置面積は、メーカの推奨する培地の高さである1.6cmで1行目の容積を含有する場合のSi−Culture(商標)バッグに関して示される。4行目は設置面積の差異を示す。例えば、試験装置が103.4mlの培地を含む場合、メーカの推奨に従って操作された場合のSi−Culture(商標)バッグの設置面積は64.6cm2となり得るが、試験装置の設置面積はわずか5.1cm2で済む。そのため、培地を20.39cmの高さに存在させた試験装置は、ほぼ同一の量のMabを産生するためにSi−Culture(商標)バッグに必要な設置面積の8%の設置面積が必要なだけで済んだ。
【0139】
【表3】
【0140】
従来の構成の全てに関連する非常に多くの有益性がある。扱いにくい形状の従来の細胞培養用バッグを除外し、インキュベータ用空間のより効率的な使用、より容易な培地の搬入と除去、及び混入危険性の減少に関連した多種多様な有益性を生じることができる。気体透過性カートリッジに存在する少容積の培地は、カートリッジを高くし、培地容積の許容積に対する気体透過性膜の割合を減らすことにより大幅に増加され得る。それは、スケールアップの際にほとんど構成部品が必要とされないことを可能とする効果を有する。従来の気体透過性のペトリ皿及びマルチウェルプレートのフォーマットに関して、装置の設置面積、又は必要とされる装置の数を増やすことなく、より多くの細胞が1つのユニット当たりで存在し得る。また、栄養供給の頻度を低減させ得る。蒸発の影響を最小限にすることは全ての構成で成し遂げられ得る。なぜなら、培地容積に対する気体透過性表面積の割合が大幅に低減され得るからである。
【実施例2】
【0141】
気体透過性シリコーンの厚さが細胞増殖に及ぼす影響
米国特許第5,686,304号及び米国特許出願第10/183132号によって記載されたような従来の見識、及びシリコーンを使用する市販の気体透過性製品のデザインは、約0.013cm(0.005インチ)を超える厚さのシリコーンが使用されるべき
ではないことを指示している。しかし、厚さを増大することは製造面及び製品の信頼性の点で利点がある。したがって、下方シリコーン気体透過性物質の厚さが細胞増殖に及ぼす影響を査定するために評価を行った。従来の見識の物質の厚さを、厚さを増大させた同一の材料と比較した。
【0142】
筒状の試験装置を図16に示されるように構成した。壁をUltem1000(高温ポリカーボネート)円筒型ストックの中から機械加工し、内径約2.540cm(1.00インチ)及び外径約3.810cm(1.50インチ)の筒が得られた。下方気体透過性物質の4つのはっきり異なる厚さの構成物を、Si−Culture(商標)バッグから除去されたシリコーンのシートから作製した。下方気体透過性物質30Aを2重、3重、及び4重の層に製造したが、それは、面の周りに均等に分布されたUV硬化シリコーングルーを用いてシリコーンシートを接着し、シート間に空気の隙間を残さずに積層することにより形成した。硬化後、積層シート及び単一シート対照物を機械加工された筒の底部に液密的に固定し、細胞をその上に存在させる5.07cm2の生育面積を得た。試験を3回行った。下方気体透過性物質30Aを、実施例1で説明したように構成された下方気体透過性物質サポート80により水平位置に保たせた。試験によって、培地が細胞上20.4cmの高さに存在した場合の結果を比較した。培地は10%のHycloneFBSを添加したHycloneHyQSFM4MAb−Utilityで構成された。マウスハイブリドーマ細胞を、下方気体透過性物質1cm2当たり4.3×106個の生細胞の播種密度で播種した。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。周期的に細胞を計数し、グルコースの測定値を取った。表4はその結果を示す。
【0143】
【表4】
【0144】
従来の見識を代表する単一の約0.011cm(0.0045インチ)厚のシートに関して収集したデータに対してデータを参照することによりデータを正規化した。厚さを劇的に増加させる効果が細胞増殖を支援する能力において著しく負の影響とはならないことがはっきりと分かる。物質の厚さを約4倍、すなわち約0.011cm(0.0045インチ)から約0.041cm(0.016インチ)に増加させた場合、細胞増殖における影響はなかった。シリコーン膜の厚さを5.33倍、すなわち約0.011cm(0.0045インチ)から約0.061cm(0.024インチ)に増加させた場合、生育能は11%だけ減少した。同様に、従来の見識を超えた7.33倍の厚さの増大は生育能を21%だけ減少させた。モノクローナル抗体の産生のためのハイブリドーマ培養等の多くの細胞培養の用途で、79%の生存度が一般に認められている。例えば、CELLine(商標)製品では、操作説明書に記載されているように、ハイブリドーマ生存度は通常50%である。そのため、装置のデザインは、劇的に性能を低下させることなくより厚いシリコーンの壁を収納し得る。単純化された液体注入成形又はより低いピンホール電位(potential) 等の組み立て及び機能の改善は、厚さの増加による結果であり得る。要約すれば、以前まで可能であると思われていたものよりも厚い壁を備えた高い機能性を有する細胞培
養装置の設計が可能である。
【実施例3】
【0145】
回転型及び非回転型装置での高い液体の高さでの細胞の培養能
従来の見識とは異なる様式で気体透過性細胞培養装置を構成することにより得られる利点を査定するために評価を行った。2つの一般的なフォーマット、すなわち、1)非回転型気体透過性装置、及び2)回転型気体透過性装置を評価した。非回転型気体透過性装置の構成では、培地の高さは、従来の見識によって課された制限をかなり超えていた。培地容積に対する気体透過性表面積の割合は従来の見識のものよりもかなり低く減少した。回転型気体透過性装置の構成では、最新型の気体透過性回転型ボトルのものよりも、培地を気体透過性壁からさらに離れて存在させ、より多くの培地を1つの装置当たりに存在させた。
【0146】
モノクローナル抗体は通常、細胞培養用バッグ及び回転ボトルを利用して産生される。従来の850cm2のローラボトルは対照物としての機能を果たした。試験装置を図4に示される実施形態に従って構成し、従来の850cm2のCorning(登録商標)ローラボトルと同一の寸法を有するように寸法を構成した。気体透過性物質は、米国特許第5,686,304号でさらに規定されたようなSi−Culture(商標)バッグのものと同一であった。非回転型試験装置の気体透過性表面積は装置の底部面の面積に限定され、98cm2であった。側壁は気体透過性ではなかった。回転型試験装置の気体透過性表面積は、装置の円筒の側壁面全体の面積に限定され、850cm2であり、その端部は気体透過性ではなかった。培地は、2.5%のHycloneFBSを添加したHycloneSFM4MAbで構成された。各試験装置に、使用される培地1ml当たり細胞密度0.04×106個のマウスハイブリドーマ細胞を播種した。試験装置それぞれに2,050mlの培地を入れた。周囲条件を5%CO2、95%R.H.、及び37Cとした。
【0147】
従来のローラボトルに、ローラボトルでの使用に推奨される最大量の培地である255mlの培地を入れた。抗体の存在をELISAで確かめた。表5はその結果を示す。
【0148】
【表5】
【0149】
表5は、従来のローラボトル対照物と同一容積の空間を占める回転型及び非回転型気体透過性試験装置が、如何に約9倍多くの抗体を産生することができるかを示す。表5はまた、如何に回転型気体透過性フォーマットを使用して、静置型気体透過性対応物に比べて抗体を産生するのに必要な時間の総計を減らすことができるのかを示す。20%の時間削減(3日)が達成された。重要なことに、回転型及び非回転型フォーマットは空間面で効
率的な配置で少なくとも9倍の改善を生み出すことができ、従来のローラボトルと比較して、滅菌、出荷、保管、労力、インキュベータ用空間、及び廃棄の費用の削減をもたらす。
【0150】
この結果はまた、従来の見識からかけ離れた様式で気体透過性装置を構成することにより得られる利点を明らかに示す。非回転型試験装置における培地の高さは約20.9cmであり、従来の細胞培養用バッグの推奨された最高高さを10倍超えた高さであった。装置が2.0cmの培地の高さに組み立てられた場合、等量の培地を収容するために、非回転型試験装置の設置面積の10倍を超える1,025cm2の設置面積が必要であったであろう。
【0151】
回転型気体透過性装置の配置の有益性は大変多い。回転型試験装置は従来のローラボトル(255ml)で推奨される培地の最大容積の8倍近い培地の容積、シンセコン社からのRotaryCellCultureSystem(商標)の4倍を超える培地容積、MiniPERMの5倍近い培地容積、及びスポウドリィング(Spaudling) 、シュワルツ(Schwarz) 及びウルフ(Wolf)他、及びファルケンブルク(Falkenberg)他の特許提案で可能とされたよりもかなり多くの培地容積を収容した。また、培地は、スポルディング、シュワルツ及びウルフ他の特許提案で特定された限度の2倍を超えた、試験装置の気体透過性壁の任意の部分から最大5.6cmに存在した。回転させるための特別な機器をいずれも必要とする、市販のシンセコン(Synthecon) 社(商標)からのRotaryCellSystem(商標)、及びザルトリウスグループのビバサイエンス社からのminiPERM(商標)とは異なり、回転型試験装置は標準的なローララック上で機能することができた。そのため、回転型気体透過性装置のスケールアップ効率は他の装置及び手法よりもはるかに優れる。
【実施例4】
【0152】
気体/液体界面の非存在下での接着細胞の培養能
気体透過性壁を介して生じる気体交換を可能とすることにより、気体/液体界面が存在しない場合の接着細胞の培養能を査定するために評価を行った。試験装置を図17に示されるような様式で構成した。この装置は気体/液体界面により気体が移動する可能性を排除した。気体透過性壁試験装置12は、長方形の液体密封外枠241から成り、1つの気体透過性壁200A及び5つの非気体透過性壁210で構成された。気体透過性壁200Aはシリコーン膜から成り、およそ0.0045の厚さであり、メドトロニック社(ミネアポリス)から購入した。この膜はメドトロニック社で、Si−Culture(商標)バッグを製造するために使用される。液体搬入口220及び液体除去口230は、播種及び栄養供給を可能とする。対照Falcon(商標)T−175組織培養フラスコに相当する接着面を設けるために、底部接着スカフォールド240は、Falcon組織培養フラスコから除去されたプラスチックの断片で構成された。外枠241の内寸法は深さ6cm、幅10cm、及び高さ0.635cmであった。そのため、気体透過性壁200Aは幅10cm及び高さ0.635cmであり、6.35cm2の表面積を生じた。底部接着スカフォールド240は幅10cm及び深さ6cmであり、60cm2の接着面を可能とした。気体透過性壁試験装置12を、播種中、培地で全体的に満たし、それにより全ての気体/液体界面が排除された。そのため、気体交換は気体透過性壁200Aに対しての垂直方向への拡散によって生じるだけとなり得る。60,000個のBHK生細胞(98%の生存度)から成る種物を、10%のHycloneFBS及び1%のL−グルタミンを添加した38.1mlのEMEM培地に懸濁させた。そのため、播種密度は、利用可能な接着スカフォールド240領域1cm2当たり生細胞10,000個であった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は0.167cm2/mlであった。接着スカフォールドの表面積に対する気体透過性膜の表面積は0.106cm2/cm2であった。対照T−175組織培養フラスコに同じ播種密度及び生存度で同一の細胞を播種した。気体透過
性壁試験装置12及びT−175対照を5%CO2、95%R.H.、及び37℃の標準的な細胞培養用インキュベータに配置した。
【0153】
細胞は底部接着スカフォールド240及び対照T−175フラスコ上に重力により沈降し、集密に達するまでその培養物を維持した。試験装置及び対照物の両方が接着スカフォールド全体にわたって集密な単層を示した。視覚的な顕微比較により、気体透過性試験装置12及びT−175対照フラスコの両方の細胞密度はほぼ一致して現れた。T−175フラスコをトリプシン処理し、細胞を計数すると、細胞は1cm2当たりおよそ190,000個の細胞の密度に達していることが確認された。試験装置をライトギムザ染色し、底部接着スカフォールド240全体にわたって細胞分布を確認した。図20は、分布パターンを示し、ここで「前」は気体透過性壁200に近接しており、「中間」は気体透過性壁200と反対の非気体透過性壁210の間のほぼ中間であり、且つ「後」は反対の非気体透過性壁210に近接している。
【0154】
図20は、装置の壁が気体透過性である場合、細胞が気体/液体界面、機械混合、又は潅流の非存在下でスカフォールド上で集密に増殖し得ることをはっきりと示す。そのため、壁による気体移動は、図9A、図9B、図10A、図10B、図11、及び図14A〜図14Eに示される装置を含む本明細書中に記載されるタイプの細胞培養装置が十分に機能するために適切である。実施例4はまた、気体透過性細胞培養装置の壁のうちのただ1つが気体透過性物質から成っていればよいことを示しており、よって豊富な装置設計の選択肢が見えてくる。例えば、気体透過性装置は、1つの側壁を気体透過性にすることにより従来のT−フラスコフォーマットに構築されてもよい。この様式では、気体/液体界面が必要とされないので、より多くの培地が培養に利用され得るか又は装置のプロファイルが低減され得る。
【実施例5】
【0155】
気体/液体界面の非存在下における、複数の接着スカフォールド上での細胞の培養能
気体/液体界面が存在することなく複数のスカフォールド上に接着細胞を培養する能力を査定するために、評価を行った。気体交換は気体透過性装置の壁を介して行われた。気体透過性試験装置は、気体/液体界面による気体移動の可能性を排除した図18に示したような様式で構成された。マルチスカフォールド試験装置14は、1つの気体透過性壁200B及び5つの非気体透過性壁210Aで構成された長方形の液体密封外枠で構成された。気体透過性壁200Bは、0.015厚の成形シリコーン物質で構成された。液体搬入口220A及び液体除去口230Aは播種及び栄養供給を可能とする。接着スカフォールド240Aは、NUNC(商標)CellFactory細胞培養装置から除去されたプラスチックで構成された。マルチスカフォールド試験装置14の内寸法は長さ15.24cm、幅7.62cm、及び高さ2.54cmであった。そのため、気体透過性壁200Bは幅7.62cm、及び高さ2.54cmであり、19.35cm2の気体透過性物質表面積を生じた。各接着スカフォールド240Aは幅6.6cm、及び長さ15.03cmであり、1つの接着スカフォールド240A当たり99cm2の接着表面積を生じた。
【0156】
マルチスカフォールド試験装置14の1つの試験群では、4つの接着スカフォールド240Aが、これらのスカフォールドのそれぞれの間の間隙を5.08mmとして上下に垂直に配置され、その結果、総接着表面積が1つの装置当たり396cm2となった。このバージョンのマルチスカフォールド試験装置14内の培地の容積は、195mlであった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は、0.099cm2/mlであった。接着スカフォールド240Aの総表面積に対する気体透過性膜の表面積は、0.049cm2/cm2であった。
【0157】
マルチスカフォールド試験装置14の別の試験群では、5つの接着スカフォールドが、これらのスカフォールドのそれぞれの間の間隙を2.54mmとして上下に垂直に配置され、その結果、総接着表面積が1つの装置当たり495cm2となった。各マルチスカフォールド試験装置内の培地の容積は、170mlであった。培地の容積に対する気体透過性膜の表面積は、0.114cm2/mlであった。接着スカフォールド240Aの総表面積に対する気体透過性膜の表面積は、0.039cm2/cm2であった。
【0158】
マルチスカフォールド気体透過性試験装置14を、播種中、培地で全体的に満たし、それによりいかなる気体/液体界面をも排除した。そのため、気体交換は気体透過性壁に対して垂直方向に拡散することでのみ生じ得る。播種密度は、利用可能な接着スカフォールド領域1cm2当たり15,000個のBHK生細胞であった。培地は、10%のHycloneFBS及び1%のGibcoPenicillinStreptmycinを添加したGibcoGMEMで構成された。また、対照T−175組織培養フラスコに、同じ播種密度及び生存度で、BHK細胞を30mlの同一の培地組成中に播種した。マルチスカフォールド気体透過性試験装置14及びT−175対照物を5%CO2、95%R.H.、及び37℃の標準的な細胞培養インキュベータに配置した。
【0159】
細胞は各接着スカフォールド240A及び対照T−175フラスコ上に重力により沈降し、集密に達するまでその培養物を維持した。4日以内に培養を終結させた。接着スカフォールド240A全てをマルチスカフォールド気体透過性試験装置14から除去した。視覚的な顕微比較により、マルチスカフォールド気体透過性試験装置14及びT−175対照フラスコの両方の試験群の細胞密度がほぼ一致して現れ、およそ95%の集密性であった。
【0160】
このことは、培養装置内に気体ヘッドスペースを維持する必要性を排除することにより、空間をさらにより効率的に使用する能力を示す。装置が培養を支援するのに必要とされる培地のみを保持するため、装置のプロファイルが著しく低減され得る。この新規装置は従来のT−フラスコ、NUNC(商標)CellFactory、及びCorningCellStack(商標)よりもさらによりコンパクトである。このことは、滅菌、出荷、保管、及び廃棄費用の節約をもたらす。さらに、インキュベータ用空間、及びフローフード用の空間がより効率的に使用される。
【実施例6】
【0161】
垂直位置において播種された接着細胞培養に関する気体透過性非回転型細胞培養装置
従来のフラスコに比べ、細胞を培養するために1つを超えるスカフォールドを備えて構成された非回転型気体透過性細胞培養装置の性能を評価するために試験装置を構成した。図19Aは、気体透過性試験装置260の断面図を示す。スカフォールド120Hを垂直に配置し、一貫した間隙をスペーサ135Bにより各スカフォールド120H間で維持した。壁40Jは気体透過性であり、メドトロニック社(ミネアポリス)から購入したシリコーンから成り、およそ0.0045の厚さであった。縫合部(suture)270は気体透過性壁40に力を加え、バルクヘッドガスケット280に気体透過性壁40を押し付け、気体透過性壁40と、上方のバルクヘッド290及び下方のバルクヘッド300との間に液体密封シールを作製した。培地出入口60Bは、気体透過性試験装置260に対する液体の搬入及び除去を可能にした。蓋70Cは混入を防ぎ、操作中は密栓されていた。図19Bはスカフォールド120Hの斜視図を示す。このスカフォールドは組織培養処理されたポリスチレンから作られ、約0.102cm(0.040インチ)の厚さであった。直径約1.905cm(0.75インチ)のピペット出入開口部125Aはピペットの出入を可能とし、スカフォールド120H間で気体がトラップされるのを防いだ。4つのベントスロット190は、トラップされた気体が出るためのさらなる領域を可能とし、気体/液体界面がすべて除去されるのを確実にした。各スカフォールド120Hの片面当たりの
表面積は約86cm2であった。気体透過性試験装置260の内径は約11.176cm(4.4インチ)であり、下方バルクヘッド300の内側面から上方(上部)バルクヘッド290の内側面へ測定した場合の内高は約5.715cm(2.25インチ)であった。そのため、気体透過性物質の表面積は561cm2であった。8つのスカフォールド120Hは、スペーサ135Bを用いて垂直に積層され、スカフォールドそれぞれの間の間隙を約0.635cm(0.25インチ)に維持した。8つのスカフォールド120Hの上面の表面積を合わせると、695cm2であった。気体透過性試験装置260の内容積はおよそ500mlであった。したがって、培地容積に対する気体透過性物質の割合は561cm2/500ml、すなわち1.12cm2/mlであった。
【0162】
1%GibcoAminoAcidsSolution及び10%HycloneFBSを添加した500mlのGibcoGMEM培地に懸濁させた10.425×106BHK細胞を、気体透過性試験装置260Pに播種し、接着表面積1cm2当たり細胞15,000個の播種密度を生じた。また、対照T−175フラスコにも、30mlの同等培地の接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞を播接した。
【0163】
およそ96時間後、培養を完結させた。気体透過性試験装置260を分解し、スカフォールド120Hのそれぞれを顕微的に検査したところ、細胞の集密パターンが8つのスカフォールド120Hのそれぞれの上方面上に存在したことを示唆した。また、顕微的な評価により確認されたように、対照T−175フラスコも集密性であった。T−175フラスコ及び気体透過性試験装置260をトリプシン処理し、標準的な細胞計数技法を用いて、存在する細胞数を測定した。表6はその結果を要約する。
【0164】
【表6】
【0165】
表6は、細胞が気体/液体界面の非存在下にもかかわらず新規気体透過性試験装置260で増殖及び健全に生き残ることができたことを示す。
各装置によって占められる空間の容積は注目に値する。気体透過性試験装置260の設置面積は100cm2であり、ネックを含めた高さは7.6cmであった。そのため、占められた空間は約760cm3であった。ネックを含めたT−175フラスコの設置面積はおよそ長さ23cm×幅11cmであり、本体は高さ約3.7cmであった。そのため、占められた空間は約936cm3であった。気体透過性試験装置260はT−175フラスコよりも約8.4倍多い細胞を培養したので、同一の時間で同じ量の細胞を得るには8.4個のT−175フラスコを用いることになるであろう。表7は、表6の実験結果に基づいて、気体透過性試験装置260により培養された同数の細胞をT−175フラスコを用いて生成した場合、占められたであろう空間の差異を示す。
【0166】
【表7】
【0167】
気体/液体界面を排除する利点は明らかである。10倍を超える空間の減少が気体透過性試験装置260により得られる。このことは、滅菌、出荷、保管、インキュベータ用空間の使用、及び廃棄物処理の費用節約をもたらす。さらに、手で操作されることを必要とする装置の数は著しく減少し、劇的な労力及び混入危険性の低減をもたらす。
【実施例7】
【0168】
垂直位置及び反転位置における播種された接着細胞培養に関する気体透過性非回転型細胞培養装置
図19Aに示される試験装置を用いて、実施例6で前に規定されたように、細胞がスカフォールドの上面及び底面の両方に接着するかどうかを確かめるために実験を行った。このことは、2段階の播種により完遂し得る。段階1では、垂直位置に配向させたまま、第1の種菌を気体透過性試験装置に配置した。細胞を24時間かけて、スカフォールド上に重力で沈降させ、且つスカフォールドの上面に接着させた。段階2では、第2の種菌を気体透過性試験装置に配置した。気体透過性試験装置を反転させ、第2の種菌の細胞を、スカフォールド上に重力で沈降させ、且つスカフォールドの底面に接着させた。
【0169】
このプロセスを、1cm2当たり15,000個の細胞の密度でスカフォールドの露出表面に播種するのに十分なBHK細胞から成る各播種で行った。培地組成は実施例6に記載されたものと同一であった。1回目の播種と2回目の播種との間の時間間隔は24時間とした。2回目の播種後、培養を72時間で完結させた。装置を分解し、各スカフォールドを顕微的に査定した。細胞を各スカフォールドの上面と底面の両方の上に均一に分布させた。次に、細胞をトリプシンを用いて除去し、計数を行った。表面積1cm2当たり生細胞の平均数量は、144×105であり、99%を超える生存度であった。
【0170】
このようにして、細胞を、スカフォールド120の上面及び底面上に接着させ、且つ増殖させることができた。したがって、新規気体透過性細胞培養装置は、従来の装置に比べて大きさをさらに低減させることが可能である。接着細胞培養に関して、あらゆる平面に細胞接着領域を有する多種多様なスカフォールドの配置が存在し得る。
【実施例8】
【0171】
スカフォールド間の距離を制限した、垂直位置及び反転位置にて播種された接着細胞培養のための気体透過性非回転型細胞培養装置
装置内により大きなスカフォールド領域を挿入することにより、装置の大きさをさらに低減することができるかを確かめるために試験を行った。空間さらに節減するために、各スカフォールドの上方及び下方の面を用いて細胞を培養した。実施例7の気体透過性試験をさらなるスカフォールドを用いて製造した。表面積に対する容積の割合が従来の組織培養フラスコとほぼ同じとなるようにスカフォールドの数及びスカフォールド間の距離を選択した。従来のT−175フラスコに推奨される培地容積は、約16〜32mlと異なる
(インビトロジェンライフテクノロジー(Invitrogen Life Technologies))。このことは、接着表面から約0.09〜0.18cmのところに培地が存在することを要求する。この実施例の試験装置は2段階で播種され、細胞を各スカフォールドの上面及び下面上に存在させるようにした。したがって、空間及び労力節約の点で気体透過性細胞培養装置がもたらすことのできる価値の控えめな評価を得るために、各スカフォールド間に0.34cmの培地の高さが存在することを可能にした。この様式では、表面積に対する培地の割合は、T−175フラスコに対して一定に保たれた。事実上、各スカフォールド面はスカフォールド間の培地の半分を利用できた。また、そのスカフォールドに隣接したスカフォールドは、もう半分の培地を利用できた。そのため、スカフォールドの各面に利用可能な培地は、増殖表面1cm2当たり0.17cm高さの従来の組織培養フラスコと一致した。
【0172】
14個のスカフォールドを試験装置に挿入し、およそ0.34cmの等間隔で配置した。0.17cmの高さに存在する30mlの培地を有するT−175フラスコは、対照物として作用した。実施例7に詳細に記載されたように、BHK細胞を用いた播種を2段階で行った。培地組成は、実施例6に記載されたものと同一であった。2回目の播種から72時間後培養を終結させ、装置を分解し、各スカフォールドを上面及び下面上での細胞の分布に関して顕微的に査定した。各スカフォールドは、T−175フラスコのそれとほぼ同じ上面及び下面上での分布パターンを示した。表7は、新規気体透過生細胞培養装置の表面積を増大させることにより、所定の量の細胞を培養するのに必要とされる空間を従来のT−175フラスコと比較して減らす方法の例を示す。例えば、新規の気体透過性細胞培養装置が2,432cm2のスカフォールド表面積を含む場合、等しい表面積を提供するには14個のT−175フラスコが必要とされるであろう。スカフォールド表面積1cm2当たり1.7mmの培地が利用可能であるように意図される場合、新規気体透過生細胞培養装置により占められる空間の容積が決定され得る。表8は、この場合の、各タイプの装置により占められる空間の容積の劇的な差異を示す。
【0173】
【表8】
【0174】
気体透過性細胞培養装置が、従来のフラスコと同一の表面積に対する培地の割合を有するように設計される場合、空間のさらにより効率的な使用をもたらすことが分かる。同じ量の細胞が望まれる場合、気体透過性細胞培養装置が占める空間の容積はT−175フラスコが占める空間のわずか1/16である。このことは、滅菌、出荷、保管、及び廃棄に関する費用削減にそのまま言い換えられる。
【0175】
本発明は、例示の目的のために示され、且つ上述される上記の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内に含まれるそのいかなる変更又はその変形をも含むことを意図す
るものであると理解されるべきである。
【実施例9】
【0176】
垂直位置にて播種された接着細胞培養に関する気体透過性回転型細胞培養装置
図19Aの断面図で示されたように、且つ実施例5でさらに規定されたように、気体透過性試験装置260を構成し、1つを超えるスカフォールドを備えて構成される気体透過性細胞培養装置を回転させる性能を評価した。
【0177】
垂直な非回転位置における気体透過性試験装置260を用いて、1%のGibcoAminoAcidsSolution及び10%のHycloneFBSを添加した、500mlのGibcoGMEM培地に懸濁させた10.425×106個のBHK細胞を、気体透過性試験装置260内に播種し、接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞の播種密度を生じた。また、対照T−175フラスコにも、30mlの同等培地の接着表面積1cm2当たり15,000個の細胞を播種した。
【0178】
およそ24時間後、気体透過性試験装置を、1RPMで回転させた標準なローララック上に配置した。回転開始の3日後、気体透過性試験装置を分解し、スカフォールドのそれぞれを顕微的に試験したところ、細胞の集密パターンが8つのスカフォールドのそれぞれの上面に存在したことを示唆した。対照T−175フラスコもまた、顕微的な評価により確認されたように集密であった。
【0179】
このことは、細胞の増殖が新規の気体透過性細胞装置を回転することにより阻害されないことを示す。そのため、回転型又は非回転型であり得る装置を作製することは、使用者のプロトコル開発により多くの選択肢を可能とする。
【0180】
本明細書中に記載された本発明における精神から逸脱することなく、多様な変更が本開示に対して成され得ることを当業者は認識するであろう。したがって、例示された実施形態及び記載された実施形態に対して本発明の幅を制限することは意図されない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とその均等物により解釈されるべきである。本明細書中に引用された各刊行物、特許、特許出願、及び参考文献は、ここで参照により本明細書に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養するための方法において、
a.半透過性膜によって区画されておらず、かつ少なくとも一部が非孔性気体透過材料からなる細胞培養装置を形成する工程と、
b.前記細胞培養装置に一定体積の媒質と動物の細胞とを入れる工程と、
c.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記媒質は、媒質の最も上位の位置が最も下位の位置よりも2cmを超えた高さにあるように配置する工程と、
d.前記媒質中で前記細胞を重力によって沈降させる工程と、
e.前記細胞が重力によって前記媒質中で沈降した後に、静止細胞培養の様式にて前記細胞を培養する工程とを備える、細胞を培養するための方法。
【請求項2】
前記細胞培養装置を前記細胞培養位置に配置した後で前記細胞を静止細胞培養の様式にて培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細胞を培養するための方法において、
f.単一区画からなるとともに、少なくとも底部が少なくとも部分的に非孔性気体透過材料からなる細胞培養装置を形成する工程と、
g.前記単一区画に一定体積の媒質と動物の細胞とを入れる工程と、
h.前記細胞培養装置の底部が前記単一区画の最下面をなす位置に前記細胞培養装置が配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
i.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記細胞培養装置は前記底部が前記単一区画の前記最下面をなすように配置される、細胞培養位置に配置する工程と、
j.前記媒質中で前記細胞を重力によって沈降させる工程と、
k.前記細胞が重力によって前記媒質中で沈降した後に、静止細胞培養の様式にて前記細胞を培養する工程とを備える、細胞を培養するための方法。
【請求項11】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
細胞を培養するための方法において、
a.半透過性膜によって区画されておらず、かつ少なくとも一部が非孔性で湾曲していない気体透過材料からなる、内部で細胞を培養するための細胞培養装置を形成する工程と、b.単一区画に一定体積の媒質と動物の細胞とを細胞懸濁液ではない方式で入れる工程と、
c.前記細胞培養装置を細胞沈降位置に配置して前記細胞のうちの少なくとも一部を前記非構成で湾曲していない気体透過材料の少なくとも一部に沈降させ、及び、前記細胞培養装置が前記細胞沈降位置に配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
d.前記細胞培養装置の底部が前記単一区画の最下面をなす位置に前記細胞培養装置が配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
e.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記細胞の少なくとも一部が前期非孔性で湾曲していない気体透過材料の少なくとも一部にあるように、細胞培養位置に配置する工程を備える、細胞を培養するための方法。
【請求項19】
前記細胞培養装置を前記細胞培養位置に配置した後で前記細胞を静止細胞培養の様式にて培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
細胞を培養するための方法において、
a.半透過性膜によって区画されておらず、かつ少なくとも一部が非孔性気体透過材料からなる細胞培養装置を形成する工程と、
b.前記細胞培養装置に一定体積の媒質と動物の細胞とを入れる工程と、
c.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記媒質は、媒質の最も上位の位置が最も下位の位置よりも2cmを超えた高さにあるように配置する工程と、
d.前記媒質中で前記細胞を重力によって沈降させる工程と、
e.前記細胞が重力によって前記媒質中で沈降した後に、静止細胞培養の様式にて前記細胞を培養する工程とを備える、細胞を培養するための方法。
【請求項2】
前記細胞培養装置を前記細胞培養位置に配置した後で前記細胞を静止細胞培養の様式にて培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細胞を培養するための方法において、
f.単一区画からなるとともに、少なくとも底部が少なくとも部分的に非孔性気体透過材料からなる細胞培養装置を形成する工程と、
g.前記単一区画に一定体積の媒質と動物の細胞とを入れる工程と、
h.前記細胞培養装置の底部が前記単一区画の最下面をなす位置に前記細胞培養装置が配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
i.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記細胞培養装置は前記底部が前記単一区画の前記最下面をなすように配置される、細胞培養位置に配置する工程と、
j.前記媒質中で前記細胞を重力によって沈降させる工程と、
k.前記細胞が重力によって前記媒質中で沈降した後に、静止細胞培養の様式にて前記細胞を培養する工程とを備える、細胞を培養するための方法。
【請求項11】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
細胞を培養するための方法において、
a.半透過性膜によって区画されておらず、かつ少なくとも一部が非孔性で湾曲していない気体透過材料からなる、内部で細胞を培養するための細胞培養装置を形成する工程と、b.単一区画に一定体積の媒質と動物の細胞とを細胞懸濁液ではない方式で入れる工程と、
c.前記細胞培養装置を細胞沈降位置に配置して前記細胞のうちの少なくとも一部を前記非構成で湾曲していない気体透過材料の少なくとも一部に沈降させ、及び、前記細胞培養装置が前記細胞沈降位置に配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
d.前記細胞培養装置の底部が前記単一区画の最下面をなす位置に前記細胞培養装置が配置されたときに、前記媒質が前記底部の最も下位の位置から2.0cmを越えてあるように前記媒質の体積を調整する工程と、
e.前記細胞培養装置を細胞培養のために適切な組成を有する雰囲気ガスを有する細胞培養位置に配置する工程であって、前記細胞の少なくとも一部が前期非孔性で湾曲していない気体透過材料の少なくとも一部にあるように、細胞培養位置に配置する工程を備える、細胞を培養するための方法。
【請求項19】
前記細胞培養装置を前記細胞培養位置に配置した後で前記細胞を静止細胞培養の様式にて培養する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を撹拌するための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質の動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記静止細胞培養の様式では前記装置は前記媒質を混合するため動きを生じさせるための手段を備えていない、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から3.2cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から4.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から5.09cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記媒質は該媒質の前記最も下位の位置から6.0cmを超えて存在する、請求項1に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【公開番号】特開2012−40033(P2012−40033A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265191(P2011−265191)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2006−534398(P2006−534398)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(506118799)ウィルソン ウォルフ マニュファクチャリング コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WILSON WOLF MANUFACTURING CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2006−534398(P2006−534398)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(506118799)ウィルソン ウォルフ マニュファクチャリング コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WILSON WOLF MANUFACTURING CORPORATION
【Fターム(参考)】
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