説明

気化冷却装置

【課題】 気化冷却室の真空状態を検出して正確に維持することのできる気化冷却装置を提供する。
【解決手段】 反応釜1のジャケット部2に、冷却流体供給管5と蒸気供給管8を接続する。ジャケット部2の下部に、エゼクタ10を介在して、組み合わせ真空ポンプ4を接続する。ジャケット部2に、内部の真空圧力状態を検出することのできる圧力センサ16を取り付ける。圧力センサ16には、図示しない計時部を内蔵する。
反応釜1を冷却する場合は、冷却流体供給管5からジャケット部2内へ冷却流体を供給することによって、冷却流体が蒸発気化して反応釜1の熱を奪うことによって、反応釜1を気化冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化冷却室で冷却流体の蒸発潜熱によって被冷却物を冷却する気化冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気化冷却装置は、熱交換室に熱交換流体供給管と吸引手段を接続して、冷却流体供給管の下部に集液板を取り付けると共に、冷却流体供給管と集液板に圧縮空気を吹き付ける圧縮空気供給管を接続したもので、冷却流体供給管の外周で蒸気を凝縮して冷却流体とし、この冷却流体を集液板に集液して圧縮空気によって被冷却物の全体に且つ均一に供給することにより、被冷却物の全体をムラなく冷却することができるものである。
【0003】
この気化冷却装置においては、気化冷却室の真空状態を検出することができないために、気化冷却の温度を正確に維持することができず、被冷却物に熱損傷を来たしてしまう問題があった。
気化冷却装置においては、気化冷却室内の真空圧力状態によって、気化冷却の温度が左右されるために、特に僅かな温度変化で熱損傷を来たす被冷却物の場合は、正確な冷却温度を維持するために気化冷却室の真空圧力状態を検出して常に正確に維持しなければならない。
【特許文献1】特許第3170669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、気化冷却室の真空状態を検出して正確に維持することのできる気化冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被冷却物を冷却する気化冷却室を形成して、当該気化冷却室に冷却流体を供給すると共に、気化冷却室を吸引手段と接続して被冷却物を気化冷却するものにおいて、気化冷却室内の真空状態を検出することのできる気化冷却室真空状態検出手段を取り付けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気化冷却装置は、気化冷却室内の真空状態を検出することのできる気化冷却室真空状態検出手段を取り付けたことにより、気化冷却室の真空状態を必要な時期に検出してその値を正確に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、気化冷却室真空状態検出手段を取り付けたものであるが、真空状態検出手段としては、気化冷却室内が所定の真空度に到達するまでの所要時間を測定するものや、気化冷却室内が所定の真空度まで到達しない場合に例えば所定の真空度×1.5の値まで真空度が到達したことを測定するもの、あるいは、気化冷却室内へ大気が吸引される際に発生する超音波振動の強弱又は振動数を測定するもの等を用いることができる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、気化冷却室として反応釜1のジャケット部2を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被冷却物を、ジャケット部2に供給する冷却源としての冷却流体によって熱交換するものである。
【0009】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成して、このジャケット部2に吸引手段としての組み合わせ真空ポンプ4と、本実施例においては冷却のみならず加熱もできるように加熱流体としての蒸気供給管8、及び、冷却流体供給管5を接続する。
【0010】
冷却流体供給管5の下方部は、組み合わせ真空ポンプ4の循環路15の一部と接続すると共に、上方部をジャケット部2と接続する。
【0011】
ジャケット部2の右側上部には、流量調節弁7を介在した蒸気供給管8を接続する。この蒸気供給管8から、所定圧力すなわち温度の加熱用蒸気が、ジャケット部2へ供給されることによって、反応釜1内の被加熱物を加熱することもできるものである。
【0012】
蒸気供給管8と並行してバイパス管路11を設けて、スチームエゼクタ12を取り付ける。スチームエゼクタ12の吸引口に後述するフラッシュ蒸気管9の一端を接続する。
【0013】
ジャケット部2内の真空圧力値を検出する圧力センサ16を取り付ける。圧力センサ16には、所定の時間を計測することのできる計時部を内蔵する。また、圧力センサ16は、図示しない冷却装置全体の制御部と電気的に接続する。本実施例においては、これらの制御部と計時部を内蔵した圧力センサ16とで、気化冷却室真空状態検出手段を構成する。
【0014】
ジャケット部2の下方に排出管20,21を接続して、組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ10と接続する。排出管20には蒸気トラップ22を取り付け、また、排出管21には制御弁23を取り付ける。
【0015】
組み合わせ真空ポンプ4を、エゼクタ10と、循環ポンプ14と冷水タンク13とヒートポンプ3を順次に循環路15で連通して形成すると共に、循環ポンプ24と温水タンク25とヒートポンプ3を循環路26で連通して形成する。冷水タンク13の底部には、ヒートポンプ3の冷却部27を配置する。また、温水タンク25の底部にはヒートポンプ3の加熱部28を配置する。
【0016】
循環路15と26の接続部には三方切換弁29を接続する。三方切換弁29の上部弁をエゼクタ10と接続する。温水タンク25の上部には、フラッシュ蒸気管9を接続すると共に、余ったフラッシュ蒸気を排出するフラッシュ蒸気排出管30を接続する。なお、フラッシュ蒸気管9には、温水タンク25からスチームエゼクタ12へのフラッシュ蒸気の通過だけを許容する逆止弁6を取り付ける。
【0017】
エゼクタ10と冷水タンク13の上部を管路31で接続すると共に、エゼクタ10と温水タンク25の上部を管路32で接続する。
【0018】
反応釜1内の被冷却物を冷却する場合は、三方切換弁29を切り換えて、循環路15とエゼクタ10だけが連通して、循環路26とエゼクタ10は遮断しておく。循環ポンプ14を駆動して冷水タンク13内の冷却水を、エゼクタ10と冷却流体供給管5からジャケット部2へ供給する。なお、一部の冷水は管路31を通って冷水タンク13へと循環する。
【0019】
冷水タンク13内の冷水は、ヒートポンプ3の冷却部27によって所定の温度まで冷却されており、この冷水がエゼクタ10を通過することにより、エゼクタ10で所定の吸引力を発生して、排出管20または21を介してジャケット部2内を所定の圧力状態、例えば、大気圧以下の真空状態、とすることにより、ジャケット部2内へ噴射される冷却水が反応釜1内の図示しない被冷却物の熱を奪って蒸発気化することにより、その蒸発潜熱によって被冷却物を気化冷却することができる。
【0020】
ジャケット部2で被冷却物を冷却した冷却流体の気化蒸気及び気化しきれなかった冷却水の一部は、排出管20または21を通ってエゼクタ10に吸引され冷水タンク13に至る。
【0021】
エゼクタ10で発生することのできる吸引力は、エゼクタ10を流下する流体の温度によって決まるために、ヒートポンプ3の冷却部27の温度を適宜調節することによって、エゼクタ10を流下する冷却水温度を調節して、エゼクタ10の吸引力をコントロールすることができる。
【0022】
一方、反応釜1内の被加熱物を加熱する場合は、蒸気供給管8から加熱に適した温度の蒸気をジャケット部2へ供給することによって、蒸気が反応釜1内の図示しない被加熱物に熱を与えて加熱する。この場合、組み合わせ真空ポンプ4の三方切換弁29を切り換えて、循環路26とエゼクタ10だけを連通し、循環路15とエゼクタ10間は遮断すると共に、エゼクタ10と冷却流体供給管5の間のバルブ33も閉弁しておく。従って、循環ポンプ24を駆動することにより、温水タンク25内の温水は、三方切換弁29とエゼクタ10と管路32を通って循環する。
【0023】
ジャケット部2内で加熱により蒸気の凝縮した復水と一部の蒸気は、排出管20と21を通って、エゼクタ10に吸引され温水タンク25に至る。
【0024】
温水タンク25内の温水は、ヒートポンプ3の加熱部28で所定温度まで加熱されることにより、タンク25内で再蒸発してフラッシュ蒸気となり、フラッシュ蒸気管9からスチームエゼクタ12に吸引され、蒸気供給管8からの蒸気と混合されてジャケット部2へ供給される。
【0025】
計時部を内蔵した圧力センサ16で、ジャケット部2内の真空状態を検出して所定の真空状態を維持しているのか否かを検出することができる。所定の真空圧力状態になっていない場合は、装置を停止して、ジャケット部2と接続しているバルブや配管の接合部、あるいは、ジャケット部2と反応釜1の接合部を点検して大気を吸引している箇所を修理することによって、所定の真空状態を維持することができる。
【0026】
冷却装置の初期立ち上げ時に、計時部を内蔵した圧力センサ16で、ジャケット部2内が所定の真空状態になるまでの所要時間を計測することによって、この所要時間が短ければ、ジャケット部2への大気の吸引量は少ないと判断され、一方、所要時間が長い場合は、ジャケット部2への大気の吸引量が多いと判断され、冷却装置を本格駆動する前に、大気の多量吸引箇所を修理することによって、ジャケット部2での真空状態を所定値に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の気化冷却装置の実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0028】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 ヒートポンプ
4 組み合わせ真空ポンプ
5 冷却流体供給管
8 蒸気供給管
9 フラッシュ蒸気管
10 エゼクタ
12 スチームエゼクタ
13 冷水タンク
14 循環ポンプ
15 循環路
16 圧力センサ
20 排出管
21 排出管
24 循環ポンプ
25 温水タンク
26 循環路
27 冷却部
28 加熱部
29 三方切換弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を冷却する気化冷却室を形成して、当該気化冷却室に冷却流体を供給すると共に、気化冷却室を吸引手段と接続して被冷却物を気化冷却するものにおいて、気化冷却室内の真空状態を検出することのできる気化冷却室真空状態検出手段を取り付けたことを特徴とする気化冷却装置。


【図1】
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【公開番号】特開2009−168307(P2009−168307A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5366(P2008−5366)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】