説明

気密コンパクト

【課題】十分な気密性を有しながら、使用時においては簡易にコンパクトを開口出来る気密コンパクトを提供。
【解決手段】気密コンパクトは、化粧料を収納するコンパクト本体2と蓋体3とを蝶番部等で接合したフックピース4付きのコンパクト容器1において、コンパクト本体2の内周縁部若しくは蓋体3内周縁部にゴム、シリコンゴム等の弾性体からなるシール部18を設け、コンパクト本体2に弁機構及びフックピース4内に気密調整部を設け、フックの開閉動作と連動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンパクト、さらに具体的には揮発性成分を含んだファンデーション、おしろい、アイシャドウ等の化粧料を収納するための気密コンパクトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファンデーション、おしろい等のベースメイク、アイシャドウ、チーク等のポイントメイクにおいては、使用時において、汗や水などで容易に落ちないこと(いわゆる持続性)が求められるようになった。そこで、これら化粧料の持続性を向上させる為に、化粧料に揮発性成分を配合することが試みられている。このような揮発性成分を配合した化粧料を通常のコンパクトに収納すると、経時的に揮発性成分が揮発してしまい、化粧料の品質を損ねていた。
そこで、揮発性成分を含有する化粧料をコンパクトに収納する際には、通常のコンパクトよりも気密性を高める試みがなされてきた。
【0003】
最も一般的には、コンパクト本体内周縁部若しくは蓋体内周縁部にゴム等のシール部を設け、コンパクト本体と蓋体の嵌合時にシール部を密着させて気密性を得るようにしている(例えば、特開9−56454号公報)。しかしながら、未だ十分な気密が保たれていないのが現状である。一方、使用性について言うならば、気密性を高めたが故に、コンパクトが容易に開口しづらい場合があるという問題点が生じていた。
【0004】
他方、気密性を高める技術としては、食品の鮮度を向上させる為に、蓋体を押すことで容器内の空気を押し出し、弁等の構造を用いて容易に空気が逆流しないようにする食品保存容器等がある(例えば、特開平7−277374号公報)。このような容器では、蓋体の一部に、蓋を開口する為の機構(当該公報でいう回動体)を設ける必要があり、そのままコンパクトに応用する場合には、美観を損ねる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開9−56454号公報
【特許文献2】特開平7−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、十分な気密性を有しながら、使用時においては、簡易にコンパクトを開口出来る気密コンパクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気密コンパクトは、化粧料を収納するコンパクト本体と蓋体とを蝶番部等で接合したフックピース付きのコンパクト容器において、コンパクト本体の内周縁部若しくは蓋体内周縁部にゴム、シリコン等の弾性体からなるシール部を設け、コンパクト本体に弁機構及びフックピース内に気密調整部を設け、フックの開閉動作と連動させることにより、上記課題を解消した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、十分な気密状態と優れた使用性を両立させ、更には審美性優れた気密性コンパクトを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1におけるコンパクトの斜視図である。
【図2】実施例1におけるA−A断面図である。
【図3】図2における破線円部を分解した拡大図である。
【図4】実施例1における弁機構の分解斜視図である。
【図5】蓋体を閉める前後の弁機構周辺の断面図である。
【図6】コンパクトを開けた際の空気の流れを示したフックピース付近の拡大図である。
【図7】弁機構ヘッド部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る気密コンパクトを実施する為の最良の形態に関し、図面を参照して詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは、言うまでもない。
【実施例1】
【0011】
図1は、本願発明のコンパクト1を閉じた状態の斜視図ある。外観上は、通常のフックピース付きコンパクトと何ら変わりはない。言い換えれば、本発明の気密機構は、コンパクトの審美性を損ねることはない。図2は、図1のA−A断面図である。本コンパクト1は、コンパクト外周と化粧料等の収納部50との間の隙間スペースに弁機構8を備えている。また、本コンパクトの蓋体3には、本コンパクト1を閉口した際に、本弁機構8のヘッド部9を押す事が出来る位置に、突起部20を備えている。
【0012】
図3は、図2の破線円部分拡大し、フックピース4を外した状態を示している。本発明におけるフックピース4は、通常のフック機能を有するフック部(5a、5b)の他に、フックピース4の押し位置を誘導する目印となるボタン部6、本コンパクト1の気密状態を調節する機能を有する気密調整部17を備えている。
図3では、フックピース4を長方形とし、長手方向の中央付近に軸部(7a,7b)を設けている。厳密に言えば、フックピース4側に軸部7bを設け、コンパクト本体2側に軸部7aを設けている。図3においては、軸部7aの突起部が軸部7bの穴に嵌めこまれる。図3においては、軸部7aが凸状、軸部7bは穴としているが、軸部7a側を凹状、軸部7b側を凸状にしたりすることも可能である。言い換えれば、フックピース4が、シーソーの様に動くことが出来れば良い。
【0013】
ここで、図3を用いてフックピース4の構造を説明する。軸部(7a、7b)に対し、向かって右側にボタン部6、その内側に通常のフック機能を有するフック部(5a、5b)を設け、左側に気密状態を調節する気密調整部17を設けている。フックピース4のボタン部6を押すと、公知の方法により、フック部(5a、5b)のフック機構が解除されると同時に、前記軸部(7a、7b)を支点に、フックピース4がシーソーの様に動き、フックピース4の左側の気密調整部17が本コンパクト1の外周方向に押し上げられ、本コンパクト1の気密状態が解除される。
気密状態の設定、解除の方法については、後で詳述する。
尚、図3では、フックピース4を横長の長方形とし、その右側にフック部(5a、5b)、左側に気密調整部17を配置した例を示したが、フックピース4に軸部(7a、7b)を設け、軸部(7a、7b)を挿んでフック部と気密調整部が設けられていれば良い。図3とは、左右逆であっても良いし、スペース的に可能であれば、フックピース4を縦長の長方形とし、上下にシーソーの様に動く配置することも可能である。
【0014】
図4は、本コンパクト1の気密状態の設定・解除に関わる弁機構8を取り出し、分解した図である。本弁機構8は、主に収納部50の空気を取り込み、空気をコンパクトの外部に押し出すヘッド部9と、空気の逆流を防ぐ弁部11から構成されている。図4では、ヘッド部9と弁部11は別パーツとして示しているが、一体成形しても差し支えない。ヘッド部9には、空気孔10が開けられており、本空気孔10を通して、収納部50の空気が出入りする。本弁機構8は、シリコン、ゴム等の弾性体からなる。
【0015】
図2、図5を用いて、本コンパクト1を閉口した際の空気の流れを説明する。
図5は、本コンパクト1を閉口した際の空気の流れを示している。本コンパクト1の蓋体3内側には、突起部20が設けられている。本突起部20は、本コンパクト1を閉口した際に、弁機構8のヘッド部9の上部に来るように設けられている。
つまり、本コンパクト1を閉口すると、蓋体3内側に設けられた突起部20が、ヘッド部9上部を押圧する。すると、ヘッド部9上部付近にあった空気が下方に押し下げされ、弁部11を通って空気通過部12に送られる。この時、この空気の流れの陰圧効果によって、収納部50の空気も一緒に、ヘッド部9に設けられた空気孔10から吸い出される。一旦空気が押し出さると、弁部11は、その弾性力により、元の位置に戻り、空気の逆流をある程度防ぐ。尚、弁部11は、一方向に空気の流れを作る役割と、陰圧の補助をする役割を持つが、完全に空気の逆流を防ぐものではない。つまり、本コンパクト1の収納部50の内圧を下げる為の補助機構であり、弁部11は、最悪なくても良い。その場合は、蓋体3自体をポンプの役割として蓋体3を押すことで、本コンパクト1の収納部50内の空気を押し出すことで対応出来る。
【0016】
以降の空気の流れについては、図2を用いて説明する。ヘッド部9によって押し出された空気は、空気通過部12を通り、空気通過管13を経て、吸盤部15と吸着受シート部16との隙間から押し出される。吸盤部15と吸着受シート16は、密着状態ではないが、予め接した状態になる位置に設けられているので、空気が押し出された後には、吸盤部15と吸着受シート部16内にある空気は陰圧状態になり、自然に吸盤部15と吸着受シート部16は密着状態になり、空気の逆流が防がれると同時に本コンパクト内の気密状態が設定される。つまり、ここで気密状態が完了する。
【0017】
前述の吸盤部15及び吸着受シート16は、ゴム、シリコン等の弾性体からなる。吸着受シート16は、フックピース4の内部壁面に設けられ、吸着受シート16の中央部付近には、小さな突起を設けている。本突起は、必須の構成ではないが、吸盤部15と吸着受シート16とが密着状態になるのを助ける。
吸着受シート16は、フックピース4の内部壁面に直接貼り付けることも可能であるが、吸着受シート16を挿入できるような構造を設けても良い(図3参照)。
【0018】
吸着空気通過部12及び空気通過管13は、コンパクト本体2に予め設けられている。ヘッド部9、弁部11、吸盤部15は、コンパクト本体2に予め設けられた空間の大きさに応じて、空気の漏れがないように適宜配置される。図5では、空気通過部12と空気通過管13は、本コンパクト1に予め設けられた空間として記載しているが、別パーツとして作成しても差し支えない。空気の漏れ等を考慮すると、本コンパクト1に予め空間として設けておくのが望ましい。
【0019】
また、本コンパクト1は、蓋体3の内側縁部或いは、コンパクト本体2の内側縁部に、ゴム・シリコン等の弾性体からなるシール部18を備えているので、本コンパクト1を閉口すると、通常のフック機構によりコンパクトが閉じられると共に、本シール部18及び弁機構8のヘッド部9が元の形状に戻ろうとする力(復元力)によって、本コンパクト1の気密状態が保たれる。
【0020】
ここで、本コンパクト1のフック部(5a、5b)とシール部18との位置関係を詳述する。本コンパクト1においては、コンパクトのフック部(5a、5b)が閉まるまえに、コンパクトをシールしているシール部18が、本コンパクト1内を密閉状態にしている。よって、フック部(5a、5b)が閉まった時には、シール部18は、やや押し潰された状態になる。フック部(5a、5b)が閉まる時に、本コンパクト1内の収納部50中の空気が、本コンパクト1外に押し出され、空気の流れが止まる。
シール部18は、弾性体で出来ている為、フック部(5a、5b)が閉まった後、元の形に戻ろうとする力が発生する。この時、収納部50内の空気は陰圧状態になる。
【0021】
前記空気孔10は、空気が行き来できる大きさであれば良い。もっとも、弁機構8のヘッド部9を蓋体3の突起部20が押圧した際に、ヘッド部9上部にある空気が、化粧料等の収納部に流れ込むのを防止する為、出来る限り小さい形状、具体的には、直径1mm〜1.5mm程度であることが望ましい。気密状態を設定する際に、弁機構8のヘッド部9上部の空気が、化粧料等の収納部50に流れ込みにくくする為に、空気孔10の形状を、収納部側からヘッド部内部に向かって細くなるテーパ状にすることも可能である。
【0022】
図6は、本コンパクト1を開口する際の空気の流れを示した図である。使用者が、フックピース4に設けられたボタン部6を押すと、公知の方法により、フック部(5a、5b)のフック機構が解除され、蓋体3を押し上げると同時に、軸部(7a、7b)が支点となって、シーソーの様に動き、気密調整部17がコンパクト外周方向に押し上げられる。そうすると、吸盤部15と吸着受シート部16の密着状態が解除され、空気が一気にコンパクト内部に入り込む。流れ込んだ空気は、空気通過管13、空気通過部12、弁部11を通じヘッド部9に流れ、ヘッド部9に設けられた空気孔10から、収納部50へと流れ込む。これにより、蓋体3内側縁部或いは、コンパクト本体2の内側縁部に設けられたシール部18の気密状態も解除され、コンパクト1が開口される。
【0023】
図7は、本コンパクト1の弁機構8におけるヘッド部9の形状のバリエーションである。コンパクト1外周と化粧料等の収納部50の間のスペースの形に応じて、弁機構8のヘッド部9の形状を変えることが出来き、ヘッド部9を上から見た状態で、図4、図7のような円形、三角形の他、楕円形、長方形、正方形、台形とすることも可能である。また、図4では、ヘッド部9の上部が半球状になっているが、本コンパクト1を閉口した際に、突起部20が、本ヘッド部9を押すことが出来れば良いので、図7のように平面状であっても差し支えない。
【0024】
前記弁機構8の大きさは、コンパクト1外周と化粧料等の収納部50の間のスペースの形や大きさに応じて、適宜調節される。もっとも、気密コンパクトに要求される気密度は、真空レベルではなく、揮発性成分が経時的に揮発することを防止することが出来るレベルである為、弁機構8のヘッド部9は直径で5mm以上10mm程度あれば、十分効果を奏することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、コンパクトの外観に影響する事無く、コンパクトの気密状態を設定出来るだけでなく、使用者は、フックピースにおける操作のみ、コンパクトの気密状態を解除出来る、従来にない優れた気密コンパクトを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0026】
1:コンパクト
2:コンパクト本体
3:蓋体
4:フックピース
5a、5b:フック部
6:ボタン部
7a、7b:軸部
8:弁機構
9:ヘッド部
10:空気孔
11:弁部
12:空気通過部
13:空気通過管
14:連結部
15:吸盤部
16:吸着受シート部
17:気密調整部
18:シール部
20:突起部
50:収納部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクト本体と、該コンパクトに開閉自在に設けられる蓋体と、該コンパクトを開閉する為のフックピースと、
該蓋体或いはコンパクト本体の内周縁部に、該蓋体の閉口状態で前記コンパクト本体の収納部を覆ってその内部を密閉する弾性体からなるシール部からなる気密コンパクトにおいて、蓋体内側に突起部を設け、コンパクト本体に空気の出し入れを調節する弁機構を設け、フックピース内部にフック部と気密調整部を設けたことを特徴とする気密コンパクト。
【請求項2】
コンパクト本体の外周と化粧料等の収納部との隙間部にヘッド部と弁部からなる弁機構を設け、蓋体内側に突起部を設け、該突起部は、蓋体閉口時に、該ヘッド部上部を押圧可能な位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の気密コンパクト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213463(P2012−213463A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79719(P2011−79719)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)