説明

気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの打設方法

【課題】 気泡含有グラウトの打設の作業性を向上させつつ、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制する気泡含有グラウトの打設装置を提供することを一の課題とする。
【解決手段】 気泡含有グラウトが流入される流入開口部を有する流入部と、該流入された気泡含有グラウトが流出される流出開口部を有する流出部とを含む打設手段を備えてなる気泡含有グラウトの打設装置であって、
前記流出部が前記流出開口部を複数有してなり、流出開口部の断面積の合計が流入開口部の断面積よりも大きくなるように前記流出開口部が形成されてなることを特徴とする気泡含有グラウトの打設装置を提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を有しているグラウトたる気泡含有グラウトを打設する、気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡含有グラウトとは、グラウトと、起泡剤で形成した気泡の集合体たる気泡体とが混合されたグラウトのことであり、気泡含有グラウトとしては、例えば、セメントミルクと気泡体とが混合されたエアミルクや、セメントモルタルと気泡体とが混合されたエアモルタル等が挙げられる。
【0003】
斯かる気泡含有グラウトは、微細な気泡を有していることから軽量であるため、例えば、気泡含有グラウトが、垂直壁を持つ道路盛土材として用いられた場合、気泡含有グラウトの打設時における型枠材へかかる圧力が小さいため型枠の崩壊が生じ難くなるという利点がある。このような利点から、気泡含有グラウトは、道路盛土材としてだけでなく、例えば、橋の背面部の裏込め材、トンネル背面空洞部の充填材等としても用いられている。
【0004】
従来、グラウトを打設する方法としては、シュート等を介してグラウトを直接流し込む直接投入方式と、ホース等の移送管を介してポンプで移送するポンプ移送方式とが用いられている。
【0005】
気泡含有グラウトの打設の際は、打設された気泡含有グラウトが硬化して形成される気泡混合軽量土の単位体積当たりの重量が大きくならないようにすべく、該気泡混合軽量土が形成されるまで気泡含有グラウトに含まれる微細な気泡が減少しないように、気泡含有グラウトを打設することが重要である。直接投入方式を用いて気泡含有グラウトを打設した場合、ポンプ移送方式に比して、気泡含有グラウトが打設面に強く打ちつけられて、気泡含有グラウトの気泡が減少してしまうため、気泡含有グラウトの打設には、通常、ポンプ移送方式が用いられている(非特許文献1)。
【0006】
【非特許文献1】日本道路公団、土工施工管理要領 −気泡混合軽量土工編(案)−、平成17年4月、p.54−56
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のポンプ移送方式を用いた場合でも、流出されている気泡含有グラウトの勢いによって、気泡含有グラウトの気泡が減少してしまう虞がある。
【0008】
ポンプ移送方式で気泡含有グラウトを打設する際に用いられる移送管としては、打設中に移送管の重量が重くなりすぎて作業者が移送管を取り回しすることが困難とならないようにするという観点や、把持のしやすさの観点から、移送管の径があまり大きなものを用いることができず、通常、この径が35〜50mm程度のものが用いられている。
一方で、斯かる移送管から流出される気泡含有グラウトの量は、気泡含有グラウトを製造するプラントの製造能力や、ポンプの移送能力等にもよるが、通常、300〜1000L/分程度である。
【0009】
例えば、径が50mm程度の移送管を用いて気泡含有グラウトを800L/分で流出させた場合、気泡含有グラウトが移送管の先端から約10m飛ぶほどの勢いが、流出されている気泡含有グラウトに生じる。このように流出されている気泡含有グラウトの勢いによって、流出された気泡含有グラウトの気泡が消泡して減少してしまうという虞がある。
また、この勢いによって、既に打設された気泡含有グラウト中に乱流が生じ、この打設され固まっていない気泡含有グラウト中の気泡も減少してしまうという虞もある。さらに、この勢いによって、気泡どうしが結合して気泡の微細性が保持されず、また、この気泡がグラウトの他の材料から分離してしまうため、形成される気泡混合軽量土の物性である単位体積重量及び圧縮強度が不均一になってしまうという虞もある。
【0010】
また、従来のポンプ移送方式では、この勢いによって移送管が暴れてしまう虞があるため、打設作業者は、打設作業中に移送管をしっかりと把持する必要があり、打設作業者の体力が消耗されてしまう虞がある。
【0011】
さらに、従来のポンプ移送方式では、この勢いによって、例えば、簡易型枠材や型枠兼用壁面材等の型枠材に余計な圧力がかかってしまい、型枠材の変形や崩壊により気泡含有グラウトが漏出してしまう虞や、型枠材の目地のシール材が気泡含有グラウトに押し退けられて、この目地から気泡含有グラウトが漏出してしまう虞もある。
【0012】
このような問題を解消すべく、従来のポンプ移送方式において、移送管の径が大きいものを用いることが考えられるが、上述したように、打設中に移送管の重量が重くなりすぎて作業者が移送管を取り回しすることが困難とならないようにするという観点や、把持のしやすさの観点から、移送管の径が大きいものを用いることは難しい。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、気泡含有グラウトの打設の作業性を向上させつつ、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制する気泡含有グラウトの打設装置を提供することを一の課題とする。また、本発明は、気泡含有グラウトの打設の作業性を向上させつつ、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制する気泡含有グラウトの打設方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、気泡含有グラウトが流入される流入開口部を有する流入部と、該流入された気泡含有グラウトが流出される流出開口部を有する流出部とを含む打設手段を備えてなる気泡含有グラウトの打設装置であって、
前記流出部が前記流出開口部を複数有してなり、流出開口部の断面積が流入開口部の断面積よりも大きくなるように前記流出開口部が形成されてなることを特徴とする気泡含有グラウトの打設装置にある。
【0015】
斯かる気泡含有グラウトの打設装置によれば、前記流出部が前記流出開口部を複数有してなり、流出開口部の断面積が流入開口部の断面積よりも大きくなるように前記流出開口部が形成されてなることにより、前記流出開口部の単位断面積当たり、単位時間当たりの流出されている気泡含有グラウトの量が、前記流入開口部の単位断面積当たり、単位時間当たりの流入されている気泡含有グラウトの量よりも少なくなるため、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制することができる。
【0016】
そして、この勢いを抑制することにより、斯かる気泡含有グラウトの打設装置によれば、流出されている気泡含有グラウトの気泡の減少を抑制することができる。
また、この勢いを抑制することにより、既に打設されたグラウト中に乱流が生じ難くなり、この打設されたグラウト中の気泡の減少も抑制することができる。
さらに、この勢いを抑制することにより、気泡の微細性が保持されやすく、また、この気泡がグラウトの他の材料から分離し難くなるため、気泡混合軽量土の物性である単位体積重量及び圧縮強度が均一となるように形成することができる。
また、この勢いを抑制することにより、簡易型枠材や型枠兼用壁面材等の型枠材にかかり得る圧力を抑制することができ、型枠材の変形や崩壊から気泡含有グラウトが漏出し難くなる。
さらに、この勢いを抑制することにより、型枠材の目地のシール材が気泡含有グラウトに押し退けられ難くなり、この目地から気泡含有グラウトが漏出され難くなる。
また、この勢いを抑制することにより、この勢いによる流出部への反作用も抑制されるため、打設の作業性が向上する。
【0017】
尚、本発明における流出開口部の断面積とは、各流出開口部から気泡含有グラウトが流出される方向に対して垂直な面における該各流出開口部の断面積の全流出開口部における合計の断面積のことをいう。
また、本発明における流入開口部の断面積とは、流入開口部に気泡含有グラウトが流入される方向に垂直な面における該流入開口部の断面積のことをいう。
【0018】
また、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置は、好ましくは、流出開口部から気泡含有グラウトが流出される流出方向の軸どうしが、各流出開口部の流出方向に対して該流出開口部よりも後方で交わるように、前記流出部が形成されてなる。また、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置は、より好ましくは、前記流出方向の軸どうしのなす角の角度が30〜90度である。
【0019】
斯かる気泡含有グラウトの打設装置によれば、流出開口部から気泡含有グラウトが流出される流出方向の軸どうしが、各流出開口部の流出方向に対して該流出開口部よりも後方で交わるように、前記流出部が形成されてなることにより、各流出開口部から流出されている気泡含有グラウトどうしが接触しないため、該流出されているグラウトの気泡の減少を抑制することができるという利点がある。
また、各流出開口部から流出される気泡含有グラウトによる打設手段にかかる反作用どうしが互いに弱めあうため、打設手段が暴れるのを抑制することができ、その結果、打設作業者が打設手段を把持して打設する場合、打設作業者が打設手段を把持しやすくなり、打設作業者の体力が消耗され難くなるという利点もあり、また、打設作業者が打設手段を把持することなく打設することも可能となり得るという利点もある。
さらに、流出方向が複数存在するので、気泡含有グラウトが施工場所に均一に流し込まれるようにするために打設作業者が流出方向を変える手間を軽減できるという利点もある。
【0020】
さらに、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置は、好ましくは、前記流出部が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなる。
【0021】
斯かる気泡含有グラウトの打設装置によれば、前記流出部が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなることにより、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制する方向に打設作業者が流出方向を変更しやすくなるという利点がある。
【0022】
また、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置は、好ましくは、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなる。
【0023】
斯かる気泡含有グラウトの打設装置によれば、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなることにより、打設作業者が打設手段を常時把持することなく、打設面からの流出開口部の高さを気泡含有グラウトがより一層減少され難い高さに調整して気泡含有グラウトを打設することができるという利点がある。
【0024】
さらに、本発明は、前記気泡含有グラウトの打設装置を用いて気泡含有グラウトを打設することを特徴とする気泡含有グラウトの打設方法にある。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの打設方法によれば、気泡含有グラウトの打設の作業性を向上させつつ、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置1は、気泡含有グラウトを打設する打設手段10と、該打設手段に気泡含有グラウトを移送する気泡含有グラウト移送手段70とを備えてなる。
【0028】
打設手段10は、図2に示すように、気泡含有グラウトが流入される流入部20と、該流入された気泡含有グラウトが流出される流出部30とを備えてなる。
【0029】
流入部20は、管状に形成され、気泡含有グラウトが流入される流入開口部21を備え、流入開口部21に流入された気泡含有グラウトが流入部20から流出部30へ流されるように構成されてなる。
流入部20には、気泡含有グラウトが流入開口部21から流入されるべく、流入部20と気泡含有グラウトを移送する気泡含有グラウト移送手段とが接続されるように、接続部(図示せず)が設けられてなる。
【0030】
流出部30は、流入部20を流された気泡含有グラウトが流される本流部35、及び本流部35を流された気泡含有グラウトが二手に分かれて流される第一分流部31及び第二分流部32を備えてなり、本流部35、第一分流部31、及び第二分流部32は、管状に形成されてなる。
【0031】
第一分流部31及び第二分流部32は、それぞれ第一流出開口部33、第二流出開口部34を備え、流出部30は、第一分流部31、第二分流部32を流された気泡含有グラウトが、それぞれ第一流出開口部33、第二流出開口部34から流出されるように構成されてなる。
【0032】
第一分流部31及び第二分流部32は、第一流出開口部33から気泡含有グラウトが流出される第一流出方向D33の軸と、第二流出開口部34から気泡含有グラウトが流出される第二流出方向D34の軸とが、第一流出方向D33に対して第一流出開口部33よりも後方、且つ第二流出方向D34に対して第二流出開口部34よりも後方で交わるように形成されてなる。
【0033】
また、第一分流部31及び第二分流部32は、第一流出開口部33の軸と、第二流出開口部34の軸とのなす角の角度が30〜90度となるように形成され、好ましくは、この角度が30〜60度となるように形成されてなる。
【0034】
さらに、第一分流部31及び第二分流部32は、第一流出方向D33の軸と流入方向D20の軸とのなす角が、第二流出方向D34の軸と流入方向D20の軸とのなす角と略等しく、且つ第一流出方向D33の軸、第二流出方向D34の軸、及び流入方向D20の軸が同一平面上に存在するように形成されてなる。
【0035】
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置は、前記流出部30が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなり、具体的には、第一分流部31及び第二分流部が流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなる。
【0036】
第一流出開口部33及び第二流出開口部34は、第一流出開口部33の断面積と、第二流出開口部34の断面積とが略等しくなるように形成されてなる。
【0037】
また、第一流出開口部33及び第二流出開口部34は、第一流出開口部33の断面積と第二流出開口部34の断面積との合計が流入開口部21の断面積よりも大きくなるように形成されてなる。
【0038】
流入開口部21の断面積に対する、第一流出開口部33の断面積及び第二流出開口部34の断面積との合計の比は、流入開口部21の面積にもよるが、好ましくは、1.2〜2.0であり、より好ましくは、1.5〜2.0である。
【0039】
打設手段は、流入部30に流れる直前の気泡含有グラウトが流入部20を流される流入方向D20の軸に対して線対称となるように形成され、打設手段の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、Y字管が例示される。
【0040】
流入部、本流部、分流部の材質は、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、特に限定されるものではないが、例えば、合成樹脂、ゴム、金属等が例示される。流入部、本流部、分流部がそれぞれ異なる材質から形成されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置は、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなる。
【0042】
設置部の高さ方向の間隔は、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、特に限定されるものではないが、例えば、20〜50cmが例示される。この間隔は、好ましくは20cm〜30cmである。
【0043】
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置が使用する気泡含有グラウトとしては、グラウトと、気泡剤で形成した気泡の集合体たる気泡体とを混合したものを採用することができる。
【0044】
グラウトを製造するための材料としては、グラウトがセメントミルクの場合、セメント、水等が挙げられ、また、グラウトがセメントモルタルの場合、セメント、細骨材、水等が用いられる。また、必要に応じて、混和剤も用いられる。
【0045】
前記セメントは、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、特に限定されるものはなく、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント等を1種単独又は2種以上混合したものを採用することができる。
【0046】
前記細骨材は、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、特に限定されるものはなく、例えば、川砂、山砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂等を1種単独又は2種以上混合したものを採用することができる。
【0047】
前記混和剤は、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、特に限定されるものはなく、例えば、減水剤、高性能減水剤、流動剤、防錆剤、防水剤、収縮低減剤、水和熱抑制剤等を1種単独又は2種以上混合したものを採用することができる。
【0048】
気泡体を製造する材料としては、起泡液と空気とが用いられる。
起泡液としては、起泡剤を適宜水で希釈したものを採用することができる。
起泡剤としては、例えば、界面活性剤、動物性たんぱく質、樹脂石けん、及び金属アルミニウム粉末等を1種単独又は2種以上混合したものを採用することができる。
【0049】
次に、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置で用いる気泡含有グラウトを製造する、気泡含有グラウトの製造装置について説明する。
気泡含有グラウト製造装置は、図1に示すように、グラウトを製造するグラウト製造装置40と、気泡体を製造する気泡体製造装置50と、該グラウトと該気泡体とを混合し、気泡含有グラウトを製造する気泡含有グラウト混合装置60とを備えてなる。
【0050】
グラウト製造装置40は、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置が使用する気泡含有グラウトの材料を貯蔵する貯蔵庫42と、貯蔵庫42から移送された、気泡含有グラウトの材料を撹拌しグラウトを製造するグラウトミキサー41とを備え、グラウトミキサー41で製造されたグラウトを気泡含有グラウト混合装置60に移送するように構成されてなる。
【0051】
貯蔵庫42は、前記材料を貯蔵し、詳しくは、セメント、細骨材、水、混和剤をそれぞれ貯蔵するセメントサイロ42a、細骨材サイロ42b、水タンク42c、混和剤タンク42dを備えてなる。
尚、グラウトとしてセメントミルクを製造する場合、グラウト製造装置40は、細骨材サイロ42bがない構成であってもよい。
【0052】
気泡体製造装置50は、起泡液を貯蔵する起泡液タンク51、圧縮空気を製造するコンプレッサー52、及び起泡液タンク51から移送された起泡液とコンプレッサー52から移送された圧縮空気とを混合して気泡体を製造する気泡体混合装置53を備え、気泡体混合装置53で製造された気泡体を気泡含有グラウト混合装置60に移送するように構成されてなる。
【0053】
したがって、斯かる構成の気泡含有グラウトの製造装置を用いた気泡含有グラウトの製造方法は、グラウトを製造するグラウト混合工程と、気泡体製造装置50を用いて気泡体を製造する気泡体混合工程と、グラウト混合工程で製造されたグラウト、及び気泡混合工程で製造された気泡を気泡混合グラウト混合装置60で混合し気泡含有グラウトを製造する気泡含有グラウト混合工程とを備えてなる。
【0054】
グラウト混合工程は、貯蔵庫42に貯蔵された材料をグラウトミキサー41に供給し、この材料をグラウトミキサー41で混合してグラウトを製造して、該製造されたグラウトを気泡含有グラウト混合装置60に移送する工程である。
【0055】
気泡体混合工程は、起泡液タンク51に貯蔵される起泡液を気泡体混合装置53に移送し、コンプレッサー52で製造された圧縮空気を気泡体混合装置53に移送して、起泡液と圧縮空気とを気泡体混合装置53で混合して気泡体を製造し、該気泡体を気泡含有グラウト混合装置60に移送する工程である。
【0056】
このようにして製造された気泡含有グラウトは、この気泡含有グラウトがエアミルクである場合、例えば、水/粉体重量比が0.8〜1.0であり、空気/グラウト体積比が0.5〜0.7であり、比重が0.5〜0.7であるものが例示される。
また、このようにして製造された気泡含有グラウトは、この気泡含有グラウトがエアモルタルである場合、例えば、セメント100重量部に対して細骨材が100〜500重量部であり、水/粉体重量比が0.9〜1.8であり、空気/グラウト体積比が0.4〜0.7であり、比重が0.6〜1.2であるものが例示される。
【0057】
次に、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法について説明する。
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、上記のような気泡含有グラウトの製造方法によって製造された気泡含有グラウトを打設する方法である。
【0058】
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、前記気泡含有グラウト混合装置60で製造された気泡含有グラウトを気泡含有グラウト移送手段70を介して流入開口部21に流入させ、そして、該流入開口部21に流入された気泡含有グラウトを流入部20から本流部35へ流し、その後、該本流部35に移送された気泡含有グラウトを第一分流部31及び第二分流部32に流し、そして、第一分流部31及び第二分流部32に移送された気泡含有グラウトを第一流出開口部33及び第二流出開口部34から流出させる方法である。
【0059】
また、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台を設け、該打設手段を設置部に設置して気泡含有グラウトを打設する方法である。
打設手段を設置部に設置する際、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、打設面からの流出開口部の高さの範囲が、0cm〜50cmとなるように設置し、打設面の上昇に伴い打設手段を設置する打設部を変更する方法である。より好ましくは、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、この高さが5cm〜30cmとなるように設置する方法である。
【0060】
本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置、及び本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設方法は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
即ち、本実施形態は、第一流出方向D33の軸と第二流出方向D34の軸とが、第一流出方向D33に対して第一流出開口部33よりも後方、且つ第二流出方向D34に対して第二流出開口部34よりも後方で交わるように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなることにより、第一流出開口部33から流出されている気泡含有グラウトと、第二流出開口部34から流出されている気泡含有グラウトとが接触しないため、該流出されているグラウトの気泡の減少をより一層抑制することができるという利点がある。
また、本実施形態は、第一流出開口部33から流出されている気泡含有グラウトによる打設手段10にかかる反作用と、第二流出開口部34から流出されている気泡含有グラウトによる打設手段10にかかる反作用とが互いに弱めあうため、打設手段10が暴れるのを抑制することができ、その結果、その結果、打設作業者が打設手段を把持して打設する場合、打設作業者が打設手段を把持しやすくなり、打設作業者の体力が消耗され難くなるという利点もあり、また、打設作業者が打設手段を把持することなく打設することも可能となるという利点もある。
さらに、本実施形態は、第一流出方向D33と、第二流出方向D34とが異なるため、気泡含有グラウトを施工場所に均一に流し込もうとするのに第一流出方向D33、及び第二流出方向D34を変える手間を軽減することができるという利点もある。
【0061】
また、本実施形態は、第一流出開口部33の軸と、第二流出開口部34の軸とのなす角の角度が30度以上であることにより、第一流出開口部33から流出されている気泡含有グラウトによる打設手段10にかかる反作用と、第二流出開口部34から流出されている気泡含有グラウトによる打設手段10にかかる反作用とがより一層弱めあうという利点がある。また、本実施形態は、第一流出開口部33の軸と、第二流出開口部34の軸とのなす角の角度が90度以下であることにより、打設作業者が気泡含有グラウトをかぶってしまう虞を抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施形態は、第一流出方向D33の軸と流入方向D20の軸とのなす角が、第二流出方向D34の軸と流入方向D20の軸とのなす角と略等しく、且つ第一流出方向D33の軸、第二流出方向D34の軸、及び流入方向D20の軸が同一平面上に存在するように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなり、また、第一流出開口部33及び第二流出開口部34が、第一流出開口部33の断面積と第二流出開口部34の断面積とが略等しくなるように形成されてなることにより、第一流出開口部33から流出される気泡含有グラウトの量と、第二流出開口部34から流出される気泡含有グラウトの量との間に偏りが生じ難くなるという利点がある。
【0063】
また、本実施形態は、第一分流部31及び第二分流部32が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなることにより、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制する方向に打設作業者が第一流出方向D33、第二流出方向D34を変更しやすくなるという利点がある。
【0064】
さらに、本実施形態は、第一流出開口部33の断面積と第二流出開口部34の断面積との合計が流入開口部21の断面積よりも大きくなるように、第一流出開口部33及び第二流出開口部34が形成されてことにより、流出開口部の単位断面積当たり、単位時間当たりにおける流出されている気泡含有グラウトの量が、前記流入開口部の単位断面積当たり、単位時間当たりにおける流入されている気泡含有グラウトの量よりも少なくなるため、流出されている気泡含有グラウトの勢いを抑制することができる。
そして、この勢いを抑制することにより、既に打設されたグラウト中に乱流が生じ難くなり、この打設されたグラウト中の気泡の減少も抑制することができる。
また、この勢いを抑制することにより、気泡の微細性が保持されやすく、また、この気泡がグラウトの他の材料から分離し難くなるため、気泡混合軽量土の物性である単位体積重量と圧縮強度が均一となるように形成することができる。
さらに、この勢いを抑制することにより、簡易型枠材や型枠兼用壁面材等の型枠材にかかり得る圧力を抑制することができ、型枠材の変形や崩壊から気泡含有グラウトが漏出され難くなる。
また、この勢いを抑制することにより、型枠材の目地のシール材が気泡含有グラウトに押し退けられ難くなり、この目地から気泡含有グラウトが漏出され難くなる。
さらに、この勢いを抑制することにより、この勢いによる流出部への反作用も抑制されるため、打設の作業性が向上する。
【0065】
また、本実施形態は、流入開口部21の断面積に対する、第一流出開口部33の断面積及び第二流出開口部34の断面積との合計の比が1.2以上であることにより、流出されている気泡含有グラウトの勢いをより一層抑制することができるという利点がある。また、この比が2.0以下であることにより、本実施形態は、打設作業者が打設手段を把持しやすく、打設作業者の体力を消耗し難くなるという利点がある。
【0066】
さらに、本実施形態は、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなることにより、打設作業者が打設手段を常時把持することなく、打設面からの流出開口部の高さを気泡含有グラウトがより一層減少され難い高さに調整して気泡含有グラウトを打設することができるという利点がある。
【0067】
尚、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの打設方法は、上記構成により、上述の利点を有するものであったが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの打設方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0068】
例えば、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸と第二流出方向D34の軸とが、第一流出方向D33に対して第一流出開口部33よりも後方、且つ第二流出方向D34に対して前記第二流出開口部34よりも後方で交わるように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸と第二流出方向D34の軸とが交わらないように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてもよい。
【0069】
また、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出開口部33の軸と第二流出開口部34の軸とのなす角の角度が30〜90度となるように第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出開口部33の軸と第二流出開口部34の軸とのなす角の角度が30度よりも小さく若しくは90度よりも大きくなるように第一分流部31及び第二分流部32が形成されてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸と流入方向D20の軸とのなす角が、第二流出方向D34の軸と流入方向D20の軸とのなす角と略等しくなるように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸と流入方向D20の軸とのなす角が、第二流出方向D34の軸と流入方向D20の軸とのなす角と異なるように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてもよい。
【0071】
また、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸、第二流出方向D34の軸、及び流入方向D20の軸が同一平面上に存在するように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出方向D33の軸、第二流出方向D34の軸、及び流入方向D20の軸が同一平面上に存在しないように、第一分流部31及び第二分流部32が形成されてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一分流部31及び第二分流部が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一分流部31又は第二分流部32のどちらか一方のみが該フレキシブルホースを備え、もう一方が、非可撓性の材質で形成されてもよい。斯かる構成を採用することにより、打設作業者が、非可撓性の材質を備える分流部をしっかりと把持しつつ、フレキシブルホースを備える分流部で、第一流出開口部33の軸と第二流出開口部34の軸とのなす角度を自在に変更できるという利点がある。
また、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、本発明の効果を損ねない範囲内であれば、第一分流部31及び第二分流部32が非可撓性の材質で形成されてもよい。
【0073】
また、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出開口部33の断面積と第二流出開口部34の断面積とが略等しくなるように、第一流出開口部33及び第二流出開口部34が形成されてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、第一流出開口部33の断面積と第二流出開口部34の断面積とが異なるように、第一流出開口部33及び第二流出開口部34が形成されてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、流出開口部を2つ備えてなるが、本発明の気泡含有グラウトの打設装置は、流出開口部を3つ以上備えてもよい。
【0075】
また、本実施形態の気泡含有グラウトの打設装置は、流出開口部が開閉自在となるように各分流部に各流出開口部の開閉手段を備えてもよい。斯かる構成を採用することにより、打設作業者は、気泡含有グラウトを打設したい方向の流出開口部のみ開いて打設することができ、打設場所に気泡含有グラウトを均一に打設することができる。
【0076】
さらに、本実施形態に係る気泡含有グラウトの打設装置は、前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなるが、本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置は、このような架台が設けられてなくてもよい。
本発明に係る気泡含有グラウトの打設装置に架台が設けられてない場合、本発明に係る気泡含有グラウトの打設方法では、打設作業者が打設手段を把持して気泡含有グラウトの打設を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】一実施形態の気泡含有グラウトの打設装置、及び気泡含有グラウトの製造装置の模式図。
【図2】一実施形態の打設手段の斜視図。
【符号の説明】
【0078】
1:打設手段、20:流入部、21:流入開口部、30:流出部、33:第一流出開口部、34:第二流出開口部、D33:第一流出方向、D34:第二流出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡含有グラウトが流入される流入開口部を有する流入部と、該流入された気泡含有グラウトが流出される流出開口部を有する流出部とを含む打設手段を備えてなる気泡含有グラウトの打設装置であって、
前記流出部が前記流出開口部を複数有してなり、流出開口部の断面積の合計が流入開口部の断面積よりも大きくなるように前記流出開口部が形成されてなることを特徴とする気泡含有グラウトの打設装置。
【請求項2】
流出開口部から気泡含有グラウトが流出される流出方向の軸どうしが、各流出開口部の流出方向に対して該流出開口部よりも後方で交わるように、前記流出部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の気泡含有グラウトの打設装置。
【請求項3】
前記流出方向の軸どうしのなす角の角度が30〜90度であることを特徴とする請求項2記載の気泡含有グラウトの打設装置。
【請求項4】
前記流出部が、流出方向を変更することができるフレキシブルホースを備えてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気泡含有グラウトの打設装置。
【請求項5】
前記打設手段が設置される設置部を高さ方向に複数有する架台が設けられてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気泡含有グラウトの打設装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の気泡含有グラウトの打設装置を用いて気泡含有グラウトを打設することを特徴とする気泡含有グラウトの打設方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−7345(P2010−7345A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167291(P2008−167291)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(391051049)株式会社エステック (28)
【Fターム(参考)】