説明

気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法

【課題】オーバーラン値を高くし、しかも、気泡を均等に分散し得る気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法を提供する。
【解決手段】油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料Mを送出する送出用ポンプ1と、その送出用ポンプ1から送出される原料Mに気体Gを含有させる含気手段3と、その含気手段3により気体Gが含有された流動状態にある含気原料Mgを細分化すると共に再混合して、その含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化する細分混合手段30と、その細分混合手段30にて細分化された気泡を含む含気原料Mgを冷却して固形化する冷却手段40とが設けられている気泡含有固形状油脂食品の製造システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法は、空気や窒素等の気泡が含有された固形状油脂食品を製造するものであり、固形状油脂食品の具体例としては、例えばマーガリンやバター等がある。
一般に、マーガリンやバター等の固形状油脂食品は、冷蔵庫等の低温下で保存することにより固形状に保つことになる。
そして、このような固形状油脂食品を冷蔵庫等の保存温度と同等の低温状態でも柔らかくして、食パン等の食材に塗り易くする等のために、固形状油脂食品に気泡を含有させている。
【0003】
このような気泡含有固形状油脂食品の製造システムにおいて、従来は、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出する送出用ポンプと、その送出用ポンプから送出される原料に気体を含有させる含気手段と、その含気手段により気体が含有された含気原料を冷却して固形化する冷却手段とが設けられていた。
つまり、含気手段により気体が含有された含気原料をそのまま冷却手段に供給して、冷却手段で冷却して固形化する製造方法になっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、気泡含有固形状油脂食品における気体の含有率を表す指標として、一般に、下記の式で求められるオーバーラン値が用いられるので、以下の説明において、気泡含有固形状油脂食品における気体の含有率の大小を論じる際には、このオーバーラン値を用いて説明する。
オーバーラン値={(気泡を含まない固形状油脂食品の所定体積での重量−気泡含有固形状油脂食品の所定体積での重量)÷気泡含有固形状油脂食品の所定体積での重量}×100[%]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−154487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、気泡含有固形状油脂食品は、オーバーラン値を高くするほど低温状態でも柔らかくすることができるのであるが、従来では、以下の理由でオーバーラン値を高くし難く、オーバーラン値を高くする上で改善の余地があった。
即ち、含気手段により気体が含有された含気原料をそのまま冷却手段に供給して、冷却手段で冷却して固形化するものであるので、冷却手段に供給される含気原料中の気泡の大きさが大きく、しかも、大きな気泡は気泡同士が一体化し易いので更に大きくなり易く、そして、気泡が大きいほど含気原料から抜け易い。
従って、含気手段から冷却手段に至る経路中や、冷却手段にて冷却される間に、含気原料から気泡が抜け、結果的に、オーバーラン値を高くし難かった。
例えば、マーガリンやバター等の油脂のみが組成の原料の場合、従来では、オーバーラン値を高くするにしても10数%までが限度であった。
【0007】
ちなみに、含気手段において気体を噴出する噴出孔をより小さくすることにより、原料に含有させる気泡の大きさを小さくすることが考えられる。しかしながら、昇温した原料は、流動可能であってもなお粘度が比較的高いため、含気手段における気体の噴出孔を小さくするほど原料に気体を注入させ難くなり、含気手段のみにより原料に含有させる気泡の大きさを小さくするにも限界がある。
【0008】
尚、上記の特許文献1では、原料として、油脂に加えて蜂蜜が含有されたものを用いている。そして、油脂に加えて蜂蜜が含有された原料は、油脂のみが組成の原料に比べて、流動可能な状態での粘度が高いので、気泡が抜け難く、オーバーラン値を高くすることができる。
即ち、蜂蜜を含有する油脂はオーバーラン値を高くし易いが、気泡含有固形状油脂食品としては、オーバーラン値を高くし難い油脂単独のものでもオーバーラン値を高くしたいものである。
つまり、油脂単独のもののみならず、油脂に加えて蜂蜜等、油脂以外の素材を含むものを原料とする場合でも、オーバーラン値をより高くすることが望まれている。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オーバーラン値を高くし、しかも、気泡を均等に分散し得る気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの特徴構成は、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出する送出用ポンプと、その送出用ポンプから送出される原料に気体を含有させる含気手段と、その含気手段により気体が含有された流動状態にある含気原料を細分化すると共に再混合して、その含気原料に含まれる気泡を細分化する細分混合手段と、その細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料を冷却して固形化する冷却手段とが設けられている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、送出用ポンプにより、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料が送出され、含気手段により、送出用ポンプから送出される原料に気体を含有させる。
その含気手段により気体が含有されて流動状態にある含気原料は、細分混合手段において細分化されると共に再混合されて、その含気原料に含まれる気泡が細分化され、冷却手段において、細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料が冷却されて固形化される。尚、含気原料が冷却手段に供給されるまでは、含気原料は昇温状態にあり、冷却手段では含気原料は冷却状態にある。
つまり、細分混合手段にて、含気原料中の気泡が細分化されると共に含気原料中の全域にわたって均等に分散されるので、細分化された小さい気泡は含気原料から抜け難く、又、細分化された小さい気泡は一体化し難いため大きくなり難く、しかも、小さな気泡が含気原料中に分散された状態が維持される。
そして、そのように気泡が細分化され均等に分散された含気原料が細分混合手段から冷却手段に供給されることになって、細分混合手段から冷却手段に至る経路中や冷却手段にて冷却されている間で、含気原料から気泡が抜け難いので、冷却手段において、細分化された気泡を十分に保持した状態で含気原料を冷却して固形化することができる。又、含気手段から投入される気体を無駄なく気泡含有固形状油脂食品中に保持させることができる。
従って、オーバーラン値を高くし、しかも、気泡を均等に分散し得る気泡含有固形状油脂食品の製造システムを提供することができる。
【0012】
本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの更なる特徴構成は、前記細分混合手段から送出される含気原料を昇圧して前記冷却手段に供給する昇圧用ポンプが設けられている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、細分混合手段から送出される含気原料は、昇圧用ポンプにより昇圧された後に冷却手段に供給される。
つまり、昇圧用ポンプにより含気原料の送出圧力が高められることにより、含気原料からより一層気泡が抜け難くなるので、細分混合手段から冷却手段に至る経路中や、冷却手段にて冷却されている間で、含気原料から気泡が抜けるのをより一層抑制することができる。
従って、オーバーラン値をより一層高くすることができる。
【0014】
本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの更なる特徴構成は、前記含気手段が、先端が閉塞され且つ径方向外方に気体を噴出する複数の噴出孔を筒壁の先端側に周方向に分散して備えた筒状の気体噴出ノズルにて構成され、
その気体噴出ノズルが、前記送出用ポンプから送出された原料が流動する原料供給路内に、長手方向を原料流動方向に沿わせた姿勢で配設されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、含気手段の各噴出孔から気体が原料供給路における原料の流動方向と交差する方向(気体噴出ノズルの径方向外方)に噴出され、しかも、複数の噴出孔から異なる方向に気体が噴出されるので、噴出された気体は気泡となって、原料供給路を流動する原料の広い範囲に分散される。
そして、気泡が含気原料のより広い範囲に分散した状態で、含気原料が細分混合手段に供給されるので、その細分混合手段において、気泡を細分化して、その細分化した気泡を含気原料のより広い範囲にわたって、より一層均等に分散することができる。
従って、オーバーラン値が高く、しかも、気泡が更に均等に分散した気泡含有固形状油脂食品を製造することができる。
【0016】
本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの更なる特徴構成は、前記細分混合手段が、含気原料を複数箇所で屈曲させて流動可能な複数の狭隘な細分処理路を備えて構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、含気原料は、各細分処理路の屈曲部分を形成する部材に衝突して屈曲することを繰り返しながら、複数の狭隘な細分処理路を並行して流動する。
そして、含気原料は、複数の狭隘な細分処理路を流動して合流し、各細分処理路の屈曲部分の形成部材に衝突して屈曲する度に、せん断作用により細分化されると共に再混合されるので、含気原料に含まれる気泡がより一層細分化されると共に含気原料中の全域にわたってより一層均等に分散される。
従って、オーバーラン値がより一層高く、しかも、気泡がより一層均等に分散した気泡含有固形状油脂食品を製造することができる。
【0018】
本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの更なる特徴構成は、前記細分混合手段が、筒状の外側部材と、外周面が前記外側部材の内周面と間隔を隔てた状態で前記外側部材内に配設された内側部材とを備えて構成され、
前記外側部材の内周面に、径方向内方に向けて突出する複数の棒状又は歯状の外側突起が周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の外側突起列の複数列が、軸心方向に間隔を隔てて備えられ、
前記内側部材の外周面に、径方向外方に向けて突出する複数の棒状又は歯状の内側突起が周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の内側突起列の複数列が、1列ずつ前記外側突起列間にその外側突起列と間隔を隔てて入り込み且つ各内側突起が各外側突起と周方向において互い違いになる形態で、軸心方向に間隔を隔てて備えられ、
前記外側部材と前記内側部材との間に、前記複数列の外側突起列及び前記複数列の内側突起列により、前記複数の細分処理路が形成される点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、外側部材と内側部材との間の環状の空間に、複数列の外側突起列及び複数列の内側突起列により、より多数の細分処理路が形成され、しかも、そのように形成される多数の細分処理路は、網の目のように接続されていて、複数箇所で合流及び分岐が繰り返されるように構成される。
そして、網の目状の細分処理路を流動する含気原料は、外側突起や内側突起(細分処理路の形成部材に相当する)に衝突して細分化され、そのように細分化されると再び合流して含気原料同士が衝突することを何回も繰り返すので、含気原料は更に効果的に細分化されると共に再混合されることになり、含気原料に含まれる気泡が更に細分化されると共に原料中の全域にわたって更に均等に分散される。
従って、オーバーラン値が更に高く、しかも、気泡が更に均等に分散した気泡含有固形状油脂食品を製造することができる。
【0020】
本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造システムの更なる特徴構成は、前記外側部材の内周面及び前記内側部材の外周面夫々の横断面形状が円であり、
前記外側部材及び前記内側部材のいずれか一方が駆動回転されるように構成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、外側部材及び内側部材のいずれか一方が駆動回転されるので、含気原料は、外側部材及び内側部材のうちの静止状態の部材の突起間から流出するときには、外側部材及び内側部材のうちの回転状態の部材の突起と衝突し、且つ、外側部材及び内側部材のうちの回転状態の部材の突起間から流出するときには、外側部材及び内側部材のうちの静止状態の部材の突起に衝突することを繰り返しながら、外側部材と内側部材との間の複数の細分処理路を合流及び分流を繰り返しつつ流動する。
従って、含気原料が極めて効果的に細分化されると共に再混合されることになり、含気原料に含まれる気泡が極めて効果的に細分化されると共に含気原料中の全域にわたって均等に分散されるので、オーバーラン値が更に高く、しかも、気泡が更に均等に分散した気泡含有固形状油脂食品を製造することができる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る気泡含有固形状油脂食品の製造方法の特徴構成は、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出用ポンプにより送出し、その送出用ポンプから送出される原料に含気手段により気体を含有させ、その含気手段により気体が含有された流動状態にある含気原料を細分混合手段により細分化すると共に再混合して、その含気原料に含まれる気泡を細分化し、その細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料を冷却手段により冷却して固形化する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、送出用ポンプにより、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出し、含気手段により、送出用ポンプから送出される原料に気体を含有させる。
その含気手段により気体が含有されて流動状態にある含気原料を、細分混合手段において細分化すると共に再混合して、その含気原料に含まれる気泡を細分化し、冷却手段において、細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料を冷却して固形化する。尚、含気原料を冷却手段に供給するまでは、含気原料は昇温状態にあり、冷却手段では含気原料は冷却状態にある。
つまり、細分混合手段にて、含気原料中の気泡を細分化すると共に含気原料中の全域にわたって均等に分散するので、細分化された小さい気泡は含気原料から抜け難く、又、細分化された小さい気泡は一体化し難いため大きくなり難く、しかも、小さな気泡が含気原料中に分散された状態が維持される。
そして、そのように気泡を細分化し均等に分散した含気原料を細分混合手段から冷却手段に供給することができ、細分混合手段から冷却手段に至る経路中や冷却手段にて冷却している間に、含気原料から気泡が抜け難いので、冷却手段において、細分化された気泡を十分に保持した状態で含気原料を冷却して固形化することができる。又、含気手段から投入される気体を無駄なく気泡含有固形状油脂食品中に保持させることができる。
従って、オーバーラン値を高くし、しかも、気泡を均等に分散し得る気泡含有固形状油脂食品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】気泡含有固形状油脂食品の製造システムの全体概略構成を示すブロック図
【図2】気体噴出ノズル周辺を示す要部の断面図
【図3】細分混合部の一部切り欠き斜視図
【図4】細分混合部におけるロータの回転軸心に直交する面での部分断面図
【図5】細分混合部におけるロータの回転軸心に沿う面での部分断面図
【図6】攪拌冷却部の一部切り欠き側面図
【図7】図6のVII−VII矢視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、気泡含有固形状油脂食品の製造システム(以下、油脂食品製造システムと略称する場合がある)は、油脂が含まれる原料Mを貯留すると共に流動可能に昇温する加熱貯留部20と、その加熱貯留部20により流動可能に昇温された原料Mを送出する送出用ポンプ1と、その送出用ポンプ1から送出される原料Mにボンベ等の気体供給源2からの気体Gを含有させる気体噴出ノズル3(含気手段の一例)と、その気体噴出ノズル3により気体Gが含有された流動状態にある含気原料Mgを細分化すると共に再混合して、その含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化する細分混合部30(細分混合手段の一例)と、その細分混合部30にて細分化された気泡Bを含む含気原料Mgを攪拌しながら冷却して固形化する攪拌冷却部40(冷却手段の一例)とを備えて構成されている。
この実施形態では、油脂食品製造システムには、更に、細分混合部30から送出される含気原料Mgを昇圧して攪拌冷却部40に供給する昇圧用ポンプ4が設けられている。
尚、この実施形態では、油脂が含まれる原料Mとしてマーガリンを用い、気体Gとして窒素ガスを用いる場合を例にして説明する。
【0026】
図1に示すように、加熱貯留部20の送出口21と攪拌冷却部40の受入口41とが原料供給路5にて接続され、その原料供給路5に、上流側から下流側に向けて順に、送出用ポンプ1、細分混合部30、昇圧用ポンプ4が設けられている。又、攪拌冷却部40の送出口42には、気泡含有固形状油脂食品Fが送出される油脂食品送出路6が接続されている。
気体供給源2から気体Gが送出される気体供給路7が、原料供給路5における送出用ポンプ1と細分混合部30との間の部分に気体噴出ノズル3を介して接続され、その気体供給路7には、原料供給路5を流動する原料Mへの気体Gの供給量を調節する気体流量調整弁8が設けられている。尚、原料供給路5を流動する原料Mの流量は、送出用ポンプ1により調節される。
【0027】
次に、油脂食品製造システムの各部について、説明を加える。
図1に示すように、加熱貯留部20は、原料Mを貯留する貯留槽22と、その貯留槽22の外周を覆う温水ジャケット23等を備えて構成され、流動可能に昇温された原料Mを原料供給路5に送出する送出口21が貯留槽22の底部に設けられている。
そして、温水供給源(図示省略)により、所定温度に温調した温水を温水ジャケット23に循環供給することにより、貯留槽22内の原料Mを流動可能な温度に加熱するように構成されている。ちなみに、原料Mがマーガリンの場合、温水ジャケット23により、マーガリンを例えば40℃程度に加熱する。そして、そのようにマーガリンを40℃程度に加熱すると、マーガリンは、粘度が65cP程度に低下して流動可能な状態となる。
送出用ポンプ1は、貯留槽22の送出口21に吸引作用するように原料供給路5に設けられている。
【0028】
図2に示すように、気体噴出ノズル3は、先端が閉塞された円筒状体3aの筒壁の先端側(先端からやや引退した箇所)に、径方向外方に気体Gを噴出する複数の噴出孔3bを周方向に分散して備えて構成されている。
この実施形態では、2個の噴出孔3bが、円筒状体3aの筒壁にその円筒状体3aの軸心に対して互いに反対側に振り分けて備えられている。
【0029】
図2及び図3に示すように、細分混合部30の受入口31には、一端が閉塞された円筒状の細分混合部側管体9が連通接続され、その細分混合部側管体9の閉塞端側には、それと略直角状に送出ポンプ側管体10が連通接続され、これら送出ポンプ側管体10及び細分混合部側管体9により、原料供給路5の一部が形成されている。
そして、気体噴出ノズル3が、その長手方向を細分混合部側管体9の長手方向に沿わせ且つ先端の噴出孔3bを細分混合部30の受入口31に近付けた状態で、細分混合部側管体9内にその閉塞端からそれと略同心状に挿入されている。
つまり、気体噴出ノズル3が、送出用ポンプ1から送出された原料Mが流動する原料供給路5内に、長手方向を原料流動方向に沿わせた姿勢で配設されていることになる。
【0030】
図2に示すように、気体噴出ノズル3の各噴出孔3bから気体Gが原料供給路5における原料Mの流動方向(図2の左右方向)と略直交する方向に噴出され、しかも、2個の噴出孔3bから互いに反対方向に気体Gが噴出されるので、噴出された気体Gは気泡Bとなって、原料供給路5を流動する原料Mの広い範囲に分散されることになる。
更に、細分混合部30の受入口31の上手近くで、気体噴出ノズル3から原料Mに対して気体Gが噴出されるので、気泡Bを含気原料Mgの内部に十分に留まらせた状態で、含気原料Mgを細分混合部30内に供給することができる。
従って、気泡Bを含気原料Mgの広い範囲に分散して留まらせた状態で、含気原料Mgを細分混合部30内に供給することができるので、その細分混合部30において、気泡Bを細分化すると共に、細分化した気泡Bを含気原料Mの全体にわたって均等に分散することができる。
【0031】
又、昇圧用ポンプ4にて昇圧する前に、気体噴出ノズル3により気体Gを原料Mに含有させるので、気体噴出ノズル3から噴出される気体Gの圧力を高くしなくても、原料供給路5内の圧力よりも少し高くするだけで、気体噴出ノズル3により原料Mに気体Gを含有させることができる。
従って、除菌フィルタを通して気体Gを気体噴出ノズル3に送るようにして、気体供給源2から気体噴出ノズル3に送る途中で気体Gの圧力が低下しても、気体噴出ノズル3により原料Mに気体Gを含有させることができる。
又、気体供給源2として窒素ガスボンベを用いる場合に、高圧(例えば、5MPa等)のボンベを用いる必要がなく、並びに、コンプレッサ等、気体Gを昇圧する手段も不要となる。ちなみに、コンプレッサを用いて気体Gを昇圧して気体噴出ノズル3に送る場合は、気体Gの衛生を保つために、オイルミストセパレータをコンプレッサの下流に設ける。又、昇圧用ポンプ4にて昇圧した原料Mに対して、気体Gをコンプレッサにて昇圧して気体噴出ノズル3により含有させる場合は、コンプレッサとして、より高圧での吐出が可能な高価なものを用いる必要がある。
【0032】
図3〜図5に示すように、細分混合部30は、含気原料Mgを複数箇所で屈曲させて流動可能な複数の狭隘な細分処理路33を備えて構成されている。
この実施形態では、細分混合部30が、筒状の外側部材としてのステータ34と、外周面がステータ34の内周面と間隔を隔てた状態でステータ34内に配設された内側部材としてのロータ35とを備えて構成されている。
ステータ34の内周面には、径方向内方に向けて突出する複数の歯状の外側突起34pが周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の外側突起列34Lの複数列が、軸心方向に間隔を隔てて備えられている。
又、ロータ35の外周面には、径方向外方に向けて突出する複数の歯状の内側突起35pが周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の内側突起列35Lの複数列が、1列ずつ外側突起列34L間にその外側突起列34Lと間隔を隔てて入り込み且つ各内側突起35pが各外側突起34pと周方向において互い違いになる形態で、軸心方向に間隔を隔てて備えられている。
具体的には、ロータ35が所定の回転位相(各内側突起35pが各外側突起34pと周方向において互い違いになる回転位相)で停止している状態では、そのロータ35の軸心に直交する方向視において、複数の外側突起34p及び複数の内側突起35pが千鳥状に並んでいる。
ちなみに、歯状の外側突起34p及び歯状の内側突起35p夫々の形状は、奥行き(ステータ34やロータ35の軸心に沿う方向での長さ)よりも幅(ステータ34やロータ35の周方向に沿う方向での長さ)の方が長い扁平な角柱状である。
【0033】
そして、ステータ34とロータ35との間に、複数列の外側突起列34L及び複数列の内側突起列35Lにより、複数の細分処理路33が形成される。
例えば、ロータ35が所定の回転位相(各内側突起35pが各外側突起34pと周方向において互い違いになる回転位相)の状態では、複数列の外側突起列34L及び複数列の内側突起列35Lにより、多数の細分処理路33が、網の目状に接続されて多数の箇所で合流及び分岐する形態となるように形成される。
【0034】
細分混合部30について説明を加えると、図3〜図5に示すように、ステータ34は、内周面の横断面形状(軸心に直交する面での断面形状)が円となる概ね円筒状であり、その一端に先端ほど小径となる先細り状の受入筒36が接続され、他端は閉塞されて、その閉塞端に後述するロータ35が片持ち状で回転自在に支持されている。
そして、受入筒36の開放端が受入口31とされ、ステータ34の周壁における受入口31とは反対側の端部に送出口32が形成されて、それら受入口31及び送出口32を介して、細分混合部30が原料供給路5に設けられている。
【0035】
ロータ35は両端が閉塞された円筒状であり、その円筒状のロータ35の回転軸37がステータ34の閉塞端に貫通状態で軸支されることにより、ロータ35がステータ34にそれと同心で回転自在に片持ち状で支持されている。
そして、回転軸37のステータ34からの突出端が細分混合用モータ38に伝動連結されて、その細分混合用モータ38によりロータ35が駆動回転されるように構成されている。
【0036】
上記の細分混合部30によれば、以下のように、含気原料Mgを細分化すると共に再混合して、その含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化することができる。
即ち、ロータ35が駆動回転される状態で、流動可能な含気原料Mgが受入口31に供給されると、含気原料Mgはステータ34とロータ35との間に流入する。
そして、含気原料Mgは、回転状態のロータ35の内側突起35pから流出するときには静止状態のステータ34の外側突起34pに衝突してせん断作用を受け、且つ、静止状態のステータ34の外側突起34p間から流出するときには回転状態のロータ35の内側突起35pと衝突してせん断作用を受けることを繰り返しながら、ステータ34とロータ35との間の多数の細分処理路33を合流及び分流を繰り返しつつ流動する。
従って、含気原料Mgが極めて効果的に細分化されると共に再混合されるので、含気原料Mgに含まれる気泡Bが極めて効果的に細分化されると共に、含気原料Mg中の全域にわたって均等に分散される。
【0037】
図1に示すように、昇圧用ポンプ4は、細分混合部30の送出口32に吸引作用し、吸引した含気原料Mgを昇圧して吐出するように原料供給路5に設けられる。ちなみに、昇圧用ポンプ4として、例えば、プランジャーポンプが用いられる。
【0038】
図6及び図7に示すように、攪拌冷却部40は、両端が受入側蓋体43及び送出側蓋体44にて閉塞された円筒状のシリンダ45、攪拌モータ(図示省略)により駆動回転自在な状態でシリンダ45内に配設された円筒状の攪拌ロータ46、回転自在に支持された状態で攪拌ロータ46内に配設された三角筒状の三角ロータ47、攪拌ロータ46の外周面にその軸心方向に沿う揺動軸心回りに揺動自在に設けられた複数枚のスクレーパ48、及び、シリンダ45の外周を覆う円筒状の冷媒ジャケット49等を備えて構成されている。ちなみに、図7に示すように、三角ロータ47の横断面形状は、3つの角部が丸みを帯びた形状の概ね正三角形状であり、その三角ロータ47が、3つの角部が攪拌ロータ46の内周面に近接して回転自在な状態で、攪拌ロータ46内に配設されている。
【0039】
図6に示すように、シリンダ45及び冷媒ジャケット49は、受入側フレーム50及び送出側フレーム51により支持されている。
説明を加えると、受入側フレーム50にはシリンダ45を挿通自在な取付口50aが設けられ、送出側フレーム51にもシリンダ45を挿通自在な取付口51aが設けられている。
そして、シリンダ45の一端が受入側フレーム50の取付口50aに挿通され、且つ、他端が送出側フレーム51の取付口51aに挿通され、並びに、シリンダ45の外部に配設された冷媒ジャケット49の一端が受入側フレーム50に固着され、且つ、その他端が送出側フレーム51に固着されることにより、シリンダ45及びその外周を囲む冷媒ジャケット49が受入側フレーム50及び送出側フレーム51に支持されている。
図6及び図7に示すように、冷媒ジャケット49における受入側フレーム50の側の下部には、冷媒供給口52が冷媒ジャケット49内に連通するように設けられ、冷媒ジャケット49における送出側フレーム51の側の上部には、冷媒排出口53が冷媒ジャケット49内に連通するように設けられている。
【0040】
図6に示すように、三角ロータ47を回転自在に支持するために、三角ロータ47の一端に軸支用凹部47aが設けられ、他端に軸部47bが設けられている。
受入側蓋体43は、シリンダ45の一端を閉塞する状態で受入側フレーム50に固着され、その受入側蓋体43には、その上部に受入口41がシリンダ45内に連通するように設けられ、並びに、シリンダ45と同心状に軸支用貫通口43aが設けられている。
回転シャフト54が受入側蓋体43の軸支用貫通口43aに回転自在に支持されている。回転シャフト54におけるシリンダ外の端部には、攪拌モータ(図示省略)が伝動連結され、回転シャフト54におけるシリンダ45内に位置する部分には、三角ロータ47の軸支用凹部47aに嵌め込まれる軸部54aが突設されている。
送出口側蓋体44は、シリンダ45の他端を閉塞する状態で送出側フレーム51に固着され、その送出側蓋体44には、その下部に送出口42がシリンダ45内に連通するように設けられ、並びに、シリンダ45と同心状に軸支用凹部44aが設けられている。
そして、三角ロータ47が、その一端の軸支用凹部47aが回転シャフト54の軸部54aに回転自在に支持され、且つ、その他端の軸部47bが送出側蓋体44の軸支用凹部44aに回転自在に支持されており、三角ロータ47が、攪拌ロータ46とは無関係に単独で回転可能な状態で攪拌ロータ46内に配設されていることになる。
【0041】
図6及び図7に示すように、攪拌ロータ46には、筒内外に貫通する複数の流通孔46aが周方向及び長手方向に分散した状態で形成されている。
その攪拌ロータ46は、一端が回転シャフト54に固着され、且つ、他端が三角ロータ47の軸部47bに回転自在に支持された状態で設けられて、攪拌ロータ46が攪拌モータにより駆動回転される構成となっている。
この実施形態では、24枚のスクレーパ48が、長手方向に等間隔で6枚並ぶ列が周方向に等間隔で4列並ぶ形態で、攪拌ロータ46の外周面に分散されて設けられている。
【0042】
図示を省略するが、シリンダ45の冷却用として冷凍装置が設けられ、冷媒ジャケット49は、冷凍装置において蒸発器として機能するように設けられている。
つまり、膨張弁で減圧された冷媒液が冷媒供給口52から冷媒ジャケット49に供給され、冷媒ジャケット49において気化熱を奪取して蒸発した冷媒蒸気が冷媒排出口53から圧縮機に送られるように、冷媒ジャケット49が冷媒回路に組み込まれることになる。
【0043】
上記の攪拌冷却部40によれば、以下のように、流動状態の含気原料Mgが攪拌されながら冷却されて固形化される。
即ち、攪拌モータ(図示省略)を作動させると、攪拌ロータ46が駆動回転され(図7において反時計回り方向)、複数のスクレーパ48は、遠心力により先端がシリンダ45の内面に当接しながら攪拌ロータ46と一体的に回転されることになる。
一方、攪拌ロータ46が駆動回転されても、三角ロータ47は、攪拌ロータ46と一体的に駆動回転されるものではなく、単独で回転可能である。
又、冷凍装置を作動させて冷媒液を冷媒ジャケット49に供給すると、冷媒液は冷媒ジャケット49内においてシリンダ45を通して気化熱を奪取して蒸発するので、シリンダ45が冷却される。
【0044】
受入口41からシリンダ45内に供給された流動状態の含気原料Mgは、シリンダ45の内周面に接触している部分から冷却されて粘度が高くなって、シリンダ45の内周面に付着し、そのようにシリンダ45の内周面に付着した含気原料Mgは、攪拌ロータ46と共に回転するスクレーパ48により掻き落とされて、攪拌ロータ46の流通孔46aを通って攪拌ロータ46内に入り込んで、三角ロータ47上に載る。
三角ロータ47は、含気原料Mgが載ることにより平衡状態がずれると回転し、三角ロータ47に載っている含気原料Mgは、攪拌ロータ46の流通孔46aを通って攪拌ロータ46外に出て、再び、シリンダ45の内周面に接触して冷却されて粘度が高くなり、シリンダ45の内周面に付着する。
このように、シリンダ45内に供給された流動状態の含気原料Mgは、シリンダ45の内周面に接触して冷却されてシリンダ45の内周面に付着したり、スクレーパ48によりシリンダ45の内周面から掻き落とされるのを繰り返されながら送出口42に向けて送られ、その間に攪拌されながら固形化される。
そして、気泡含有固形状油脂食品Fが、送出口42から油脂食品送出路6に送出されることになる。
【0045】
上記のように構成した油脂食品製造システムを用いて、以下のような気泡含有固形状油脂食品の製造方法を実行することができる。
即ち、送出用ポンプ1により、油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料Mを送出し、気体噴出ノズル3により、送出用ポンプ1から送出される原料Mに気体Gを含有させる。
その気体噴出ノズル3により気体Gが含有されて流動状態にある含気原料Mgを、細分混合部30において細分化すると共に再混合して、その含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化し、昇圧用ポンプ4により、細分混合部30から送出される含気原料Mgを昇圧して攪拌冷却部40に供給する。
そして、攪拌冷却部40により、細分混合部30にて細分化されると共に再混合された含気原料Mgを攪拌しながら冷却して固形化する。
【0046】
つまり、細分混合部30により、含気原料Mg中の気泡Bを細分化すると共に含気原料Mg中の全域にわたって均等に分散することができるので、細分化された小さい気泡Bは含気原料Mgから抜け難く、又、細分化された小さい気泡Bは一体化し難いため大きくなり難く、しかも、小さな気泡Bが含気原料Mg中に分散された状態が維持される。
そして、そのように気泡Bが細分化され均等に分散された含気原料Mgが細分混合部30から攪拌冷却部40に供給されることになって、細分混合部30から攪拌冷却部40に至る経路中や攪拌冷却部40にて攪拌しながら冷却している間に、含気原料Mgから気泡Bが抜け難いので、気泡Bを十分に保持した状態で含気原料Mgを冷却して固形化することができる。
その結果、オーバーラン値が高く、しかも、気泡Bが均等に分散した気泡含有固形状油脂食品を製造することができる。
【0047】
次に、気体噴出ノズル3により気泡Bが含有された含気原料Mgを攪拌冷却部40に供給する前に、細分混合部30により含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化することにより、オーバーラン値を高くできることを検証した検証試験の結果を説明する。
この検証試験では、気体噴出ノズル3により気泡Bを含有させた含気原料Mgを細分混合部30を介することにより、含気原料Mgに含まれる気泡Bを細分化して攪拌冷却部40に供給する場合(以下、再混合有りと記載する場合がある)と、気体噴出ノズル3により気泡Bを含有させた含気原料Mgを細分混合部30を介さずに攪拌冷却部40に供給する場合(以下、再混合無しと記載する場合がある)とで、オーバーラン値を比較した。ちなみに、この検証試験では、原料Mとしてマーガリンを用い、気体Gとして窒素ガスを用いた。
【0048】
検証試験の条件は以下の通りである。
・加熱貯留部20から送出される原料Mの粘度及び温度:約65cP、40℃
・送出用ポンプ1にて送出される流動可能な原料Mの流量:約1000リットル/h
・気体Gの流量:約500リットル/h
・送出用ポンプ1による原料Mの送出圧力:0.16Mpa(再混合有り)、0.18〜0.20MPa(再混合無し)
・気体噴出ノズル3による気体Gの供給圧力:0.17MPa(再混合有り)、0.19〜0.21MPa(再混合無し)
・昇圧用ポンプ4による含気原料Mgの送出(吐出)圧力:1.9MPa(再混合有り)、1.5〜1.8MPa(再混合無し)
・攪拌冷却部40から送出される気泡含有固形状油脂食品の温度:10.4℃(再混合有り)、11.5℃(再混合無し)
・細分混合部30におけるロータ35の回転数:1800rpm
【0049】
攪拌冷却部40から送出された気泡含有固形状油脂食品のオーバーラン値は、再混合有りの場合は46%であり、再混合無しの場合は3.5%であった。尚、これらのオーバーラン値は、それぞれ10回ずつ気泡含有固形状油脂食品Fをサンプリングした際の平均値である。
この検証試験により、含気原料Mgを攪拌冷却部40に供給する前に細分混合部30により細分化すると共に再混合し、含気原料Mg中に含まれる気泡Bを細分化することにより、オーバーラン値を高くできることが分かった。
【0050】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(A)細分混合部30の具体構成は、上記の実施形態において説明した構成に限定されるものではない。
(A−1)細分混合部30を複数の狭隘な細分処理路33を備えて構成する場合、上記の実施形態のように、外側部材34に備えた複数列の外側突起列34Lと内側部材35に備えた複数列の内側突起列35Lとにより、複数の狭隘な細分処理路33を形成する場合に限定されるものではない。例えば、ブロック状の処理路形成部材に、複数個所で屈曲する狭隘な溝を複数並行状に形成して、それら複数の狭隘な溝により複数の狭隘な細分処理路33を構成しても良い。
(A−2)細分混合部30を複数の狭隘な細分処理路33を備えて構成する場合、複数の細分処理路33を形成するために外側部材34、内側部材35にそれぞれ備える外側突起34p、内側突起35pの形状は、上記の実施形態の如き歯状に限定されるものではなく、円柱等の棒状でも良い。
(A−3)細分混合部30を上記の実施形態のように外側部材34と内側部材35とにより構成する場合、上記の実施形態では、外側部材34及び内側部材34のいずれか一方(上記の実施形態では内側部材としてのロータ35)が駆動回転される場合について例示したが、外側部材34及び内側部材35の両方を固定状態で設けても良い。
この場合、外側部材34の内周面及び内側部材35の外周面夫々の横断面形状は、円に限定されるものではない。
(A−4)細分混合部30を上記の実施形態のように外側部材34と内側部材35とにより構成する場合、外側部材34の内周面及び内側部材35の外周面夫々の横断面積を流動方向の下手側ほど徐々に狭くなるように構成しても良い。
(A−5)含気原料Mgを流動させる管体内で、複数の刃を備えたブレード又はスクリューを駆動回転することにより、含気原料Mgを細分化すると共に再混合するように構成して、細分混合部30を管体とその管体内で駆動回転されるブレード又はスクリューとにより構成しても良い。
【0051】
(B) 上記の実施形態では、昇圧用ポンプ4を原料供給路5における細分混合部30と攪拌冷却部40との間に設けたが、原料供給路5における気体噴出ノズル3と細分混合部30との間に設けても良い。又、昇圧用ポンプ4を省略することも可能である。
【0052】
(C) 気体噴出ノズル3に周方向に分散して備える噴出孔3bの個数は、上記の実施形態において例示した2個に限定されるものではなく、3個以上でも良い。又、噴出孔3bを気体噴出ノズル3の長手方向に沿って複数列備えても良い。
【0053】
(D) 冷却手段の具体例として、上記の実施形態では、含気原料Mgを冷却する冷却機能に加えて含気原料Mgを攪拌する攪拌機能を備えた攪拌冷却部40を用いたが、冷却機能のみを備えたものでも良い。
【0054】
(E) 上記の実施形態において、攪拌冷却部40の下流側に、その攪拌冷却部40から送出される気泡含有固形状油脂食品Fを冷却することなく攪拌混合する攪拌混合部を設けても良い。
この攪拌混合部としては、例えば、以下の構成のものを用いることができる。
攪拌混合部は、ステータと、そのステータ内にて駆動回転されるロータとを備え、ステータ内で気泡含有固形状油脂食品Fを冷却することなく攪拌混合するように構成される。
具体的には、ステータの内周面に、複数のピンをステータの軸心方向に沿う直線状の列状に設け、ロータの外周面に、複数のピンを、ロータが回転したときに1ピンずつステータのピン間を通過する状態で、ロータの軸心と同軸の螺旋状の列状に設ける。
ちなみに、ステータの内周面に直線状の列状に設けるピンの列数は例えば1列であり、ロータの外周面に螺旋状の列状に設けるピンの列数は例えば2列であるが、それらの列数は適宜に設定することができる。
【0055】
(F) 原料Mの具体例としては、上記の実施形態において例示したマーガリンに限定されるものではなく、昇温すると流動可能な状態となり、その流動可能な状態から冷却すると固形化する種々の油脂、例えばバター等を用いることができる。又、油脂のみが組成のもの以外に、蜂蜜等の油脂以外の素材を含むものも用いることができる。
気体Gの具体例としては、上記の実施形態において例示した窒素ガスに限定されるものではなく、窒素ガス以外の不活性ガスや空気等、種々のものを用いることが可能であり、又、複数種の気体が混合されたものも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、オーバーラン値を高くし、しかも、気泡を均等に分散し得る気泡含有固形状油脂食品の製造システム及び気泡含有固形状油脂食品の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 送出用ポンプ
3 気体噴出ノズル(含気手段)
3b 噴出孔
4 昇圧用ポンプ
5 原料供給路
30 細分混合部(細分混合手段)
33 細分処理路
34 ステータ(外側部材)
34p 外側突起
34L 外側突起列
35 ロータ(内側部材)
35p 内側突起
35L 内側突起列
40 攪拌冷却部(冷却手段)
B 気泡
F 気泡含有固形状油脂食品
G 気体
M 原料
Mg 含気原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出する送出用ポンプと、その送出用ポンプから送出される原料に気体を含有させる含気手段と、その含気手段により気体が含有された流動状態にある含気原料を細分化すると共に再混合して、その含気原料に含まれる気泡を細分化する細分混合手段と、その細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料を冷却して固形化する冷却手段とが設けられている気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項2】
前記細分混合手段から送出される含気原料を昇圧して前記冷却手段に供給する昇圧用ポンプが設けられている請求項1に記載の気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項3】
前記含気手段が、先端が閉塞され且つ径方向外方に気体を噴出する複数の噴出孔を筒壁の先端側に周方向に分散して備えた筒状の気体噴出ノズルにて構成され、
その気体噴出ノズルが、前記送出用ポンプから送出された原料が流動する原料供給路内に、長手方向を原料流動方向に沿わせた姿勢で配設されている請求項1又は2に記載の気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項4】
前記細分混合手段が、含気原料を複数箇所で屈曲させて流動可能な複数の狭隘な細分処理路を備えて構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項5】
前記細分混合手段が、筒状の外側部材と、外周面が前記外側部材の内周面と間隔を隔てた状態で前記外側部材内に配設された内側部材とを備えて構成され、
前記外側部材の内周面に、径方向内方に向けて突出する複数の棒状又は歯状の外側突起が周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の外側突起列の複数列が、軸心方向に間隔を隔てて備えられ、
前記内側部材の外周面に、径方向外方に向けて突出する複数の棒状又は歯状の内側突起が周方向に間隔を隔てて並ぶ環状の内側突起列の複数列が、1列ずつ前記外側突起列間にその外側突起列と間隔を隔てて入り込み且つ各内側突起が各外側突起と周方向において互い違いになる形態で、軸心方向に間隔を隔てて備えられ、
前記外側部材と前記内側部材との間に、前記複数列の外側突起列及び前記複数列の内側突起列により、前記複数の細分処理路が形成される請求項4に記載の気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項6】
前記外側部材の内周面及び前記内側部材の外周面夫々の横断面形状が円であり、
前記外側部材及び前記内側部材のいずれか一方が駆動回転されるように構成されている請求項5に記載の気泡含有固形状油脂食品の製造システム。
【請求項7】
油脂が含まれ且つ流動可能に昇温された原料を送出用ポンプにより送出し、その送出用ポンプから送出される原料に含気手段により気体を含有させ、その含気手段により気体が含有された流動状態にある含気原料を細分混合手段により細分化すると共に再混合して、その含気原料に含まれる気泡を細分化し、その細分混合手段にて細分化された気泡を含む含気原料を冷却手段により冷却して固形化する気泡含有固形状油脂食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44898(P2012−44898A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188523(P2010−188523)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】