説明

気泡含有樹脂組成物

【課題】ブリードの発生が実質的になく、硬さの設計がある程度容易な樹脂組成物、及びその樹脂組成物からなる粘着剤、粘着剤が塗工された粘着製品を提供する。
【解決手段】(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、樹脂組成物中に気泡を更に含むことを特徴とする気泡含有樹脂組成物である。気泡含有樹脂組成物は、気泡を含む前の樹脂組成物の体積に対し、気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積(体積増加率)が、1倍より大きく、かつ、4.5倍以下であることが好ましい。本発明の気泡含有組成物は、体積増加率を広範囲に変更できるので、硬さの設計が容易であり、粘着製品に好適に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系トリブロック共重合体を含む気泡含有樹脂組成物に関し、更に、その気泡含有樹脂組成物を使用した粘着剤、その粘着剤が塗工された粘着製品に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌、住宅、医療及びラベル製品等、種々の分野において、部材を接着固定するために、粘着テープが広く用いられている。粘着テープには、通常有機溶剤型粘着剤が塗工されており、有機溶剤型粘着剤の一例としてアクリル系粘着剤が知られている。
近年、揮発性有機化学物質(VOC)の低減等、環境問題の重要性が高まり、粘着テープには低臭気性が求められている。一般的に、有機溶剤型粘着剤は、トルエン等の有機溶剤を含み、それを粘着製品製造時に排出するので、環境面を考慮すると、必ずしも好ましくない。
例えば、特許文献1〜4には、トルエンを用いながら揮発性成分量を低下させる粘着剤及びトルエンを使用しないで酢酸エチル等を用いた粘着剤が開示されているが、環境面について十分とは言えず、有機溶剤を使用しないホットメルトタイプの粘着剤が注目されている。
【0003】
ところで、特許文献5には、アクリルブロックコポリマーを含むホットメルト粘着剤が開示されている。該粘着剤は、医療用途(皮膚適用品)、工業的用途(工業テープ)、不織布用途(生理用ナプキン)及びびんへの貼り付け(ラベル)等に使用可能であることが開示されている。しかしながら、該粘着剤に含有されている低分子量成分がブリードとして被着体に析出することがある。
更に、粘着剤を幅広い用途で使用するために、粘着剤を構成する樹脂組成物の硬さ、柔らかさを容易に設計できることが好ましい。現在では、このような高い要求を満たす樹脂組成物(粘着剤)は見出されておらず、その開発が急務であった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−306650号公報
【特許文献2】特開2004−315767号公報
【特許文献3】特開2005−139323号公報
【特許文献4】特開2007−91918号公報
【特許文献5】特開2004−204231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの課題を達成するためになされたものであり、ブリードの発生が実質的になく、硬さの設計がある程度容易な樹脂組成物、及びその樹脂組成物からなる粘着剤、粘着剤が塗工された粘着製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、アクリル系トリブロック共重合体の樹脂組成物に気泡を含ませることで、組成物の硬さの設計がある程度容易になり、なおかつ、ブリードの発生も同時に抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、一の要旨において、
(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物中に気泡を更に含むことを特徴とする気泡含有樹脂組成物を提供する。
本発明は、他の要旨において、本発明に係る気泡含有樹脂組成物を使用した粘着剤を提供する。
本発明は、更なる別の要旨において、本発明に係る粘着剤が塗工された粘着製品を提供する。
【0008】
本明細書において、「粘着剤」とは、粘着性を有する樹脂組成物を意味する。「粘着性」とは、高粘度液体に一般的にみられる現象であるが、「粘着テープ」等に使用する観点からは、特に、水、溶剤、熱等を利用することなく、手で軽く貼り合わせると直ちに実用に耐え得る接着力を発揮することをいう。この性質は、「感圧タック」若しくは単に「タック」と呼ばれる。一般的に「粘着剤」には、「粘着性」を発揮するため、被着体に濡れる「流動性」と、接着後の剥離に抵抗する「凝集力」という、相反する二つの特性が要求される。
【0009】
更に、本発明において「粘着製品」とは、一般に粘着製品と称されるものであってよいが、そのようなものとして、例えば、医療用テープ、工業用テープ、カイロ、貼布剤、シート、シール、ラベル及びネームプレート等の他に、床材に貼り付ける断熱シート及び再閉鎖可能なファスナー等を例示できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、組成物中に気泡を更に含む。
(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物をフォーム(発泡体)化させることで、ノンフォームのアクリル系トリブロック樹脂組成物に見られたブリード析出が、実質的になくなり、なおかつ、断熱性が向上する。更に、本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、硬さの設計がある程度容易になるので、医療用途及び工業用途等、幅広い分野で使用可能となる。
【0011】
気泡を含む前の樹脂組成物の体積を基準として、気泡を含む樹脂組成物の体積が、1倍よりも大きく、かつ、4.5倍以下の気泡含有樹脂組成物は、硬過ぎず適度なソフト感があり、なおかつ、優れた易剥離性を有する。
(I)アクリル系トリブロック共重合体がメタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)からなるA-B1-A型トリブロック共重合体である気泡含有樹脂組成物は、高い剪断応力、及び溶融時における低い粘度を有し得る。
【0012】
気泡を含む前の樹脂組成物がホットメルトタイプである気泡含有樹脂組成物は、溶剤系接着剤と比較すると、環境負荷が低減され、作業性も向上する。また、エマルジョン型粘接着と比較すると、本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、乾燥工程を含まないので作業性に優れる。
気泡を含む前の樹脂組成物において、24℃における周波数1.6Hzの動的せん断貯蔵弾性率(G’)が1.0×10Pa以上である気泡含有樹脂組成物は、気泡をより容易に維持し得る。
【0013】
気泡が窒素ガス又は炭酸ガスを用いて形成される気泡含有樹脂組成物は、比較的、容易に製造される。窒素ガスや炭酸ガスは、樹脂組成物をフォーム(発泡体)化するために適する。
更に、25℃での粘度が1.0×10〜5.0×10mPa.sである(II)常温液状樹脂を含む本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、塗工性がより良く、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にブリード抑制の効果を奏し得る。
更に、(II)常温液状樹脂が、(I)アクリル系トリブロック共重合体に相溶する場合、更に塗工性がより良く、低温でもより粘着性に優れ、被着体に粘着層をより残さないで界面剥離でき、更によりブリード抑制の効果を奏し得る。
ここで、(II)常温液状樹脂が、(I)アクリル系トリブロック共重合体に「相溶」するとは、(I)アクリル系トリブロック共重合体の溶融時に、(I)アクリル系トリブロック共重合体100重量部に対して(II)室温液状樹脂10重量部を混合させた場合、両者が分離しないで、単一の相を形成することをいう。
【0014】
(I)アクリル系トリブロック共重合体100重量部に対し、(II)常温液状樹脂が30〜150重量部含まれる気泡含有樹脂組成物は、塗工性により優れ、かつ、ブリード析出をより抑制できる。
(II)常温液状樹脂がアクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含む気泡含有樹脂組成物は、(I)と相溶しやすいので、ブリード析出をより抑制することができる。
【0015】
(i)(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む溶融物を製造する工程;
(ii)上記溶融物とガスを加圧下で混合した後、混合物を大気圧下に開放して、樹脂組成物の内部に気泡を含ませて気泡含有樹脂組成物を得る工程;
を含む製造方法で得られた気泡含有樹脂組成物は、化学的な発泡ではなく、物理的な発泡で得られたものであり、物理的発泡は化学的発泡よりも安定しているので、本発明では、ムラのない、より安定な気泡含有樹脂組成物を比較的容易に提供できる。
【0016】
本願に係る気泡含有樹脂組成物は、(I)アクリルトリブロック共重合体を含んで成り、他の樹脂から成る気泡含有樹脂組成物、例えば、スチレン樹脂から成る気泡含有樹脂組成物やウレタン樹脂系から成る気泡含有樹脂組成物よりも耐候性に優れ、ブリードも発生し難い。
【0017】
上記気泡含有樹脂組成物を使用した粘着剤は、硬さ、柔らかさの調整が容易であり、断熱性に優れ、ブリードの抑制に優れるので、様々な分野に使用することができる。
上記粘着剤が塗工された粘着製品は、上述の気泡含有樹脂組成物及び粘着剤に由来する効果を奏し、従来既知の粘着製品と比較して優れた性質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、樹脂組成物中に気泡を更に含むことを特徴とする気泡含有樹脂組成物を提供する。
本発明の好ましい形態において、気泡含有樹脂組成物は、気泡を含む前の樹脂組成物の体積を基準として、気泡を含んだ後の樹脂組成物(即ち、気泡含有樹脂組成物)の体積は、1倍よりも大きく、かつ、4.5倍以下である。1.5〜4.0倍であることがより好ましく、1.8〜4.0倍であることが更により好ましく、2.0〜4.0倍であることが特に好ましい。
【0019】
気泡含有樹脂組成物は、気泡を含む前の樹脂組成物の体積を基準とする、気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積を、本明細書では、気泡含有樹脂組成物の体積増加率(単に「体積増加率」)ともいい、下記式(a)で算出する。
一般式(a):気泡含有樹脂組成物の体積増加率=
(気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積)/(気泡を含む前の樹脂組成物の体積)
体積増加率が1倍以下の場合、樹脂組成物は気泡を含むとは言えず、4.5倍より大きい場合、樹脂組成物が柔らかくなり過ぎ、被着体から剥がした時に糊残りが発生し得る。
【0020】
樹脂組成物が含有する「気泡」の形状及び寸法等は、目的とする気泡樹脂組成物が得られる限り、特に制限されるものではない。気泡の形態は、連続気泡及び独立気泡のいずれであってもよいが、独立気泡が気泡サイズを制御しやすいので好ましい。独立している気泡の形状は、球状であることが好ましい。また、気泡の直径は、一般的に0.2〜500μmであり、0.5〜500μmであることがより好ましく、2〜300μmであることが特に好ましい。
【0021】
本発明では、(I)アクリル系トリブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)からなるA−B1−A型トリブロック共重合体である。
本明細書において「・・・に由来する」とは、「・・・に基づいて得られる」ことを意味し、より具体的には「・・・が反応して得られる又は出発物質として・・・から誘導される」ことを意味する。従って、「メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック」とは、「メタクリル酸誘導体に基づいて得られる重合体ブロック」を意味し、その重合体ブロックはメタクリル酸誘導体に基づく重合単位を有する。「アクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック」とは、「アクリル酸誘導体に基づいて得られる重合体ブロック」を意味し、その重合体ブロックは、アクリル酸誘導体に基づく重合単位を有する。
【0022】
本発明において、「(I)アクリル系トリブロック共重合体」とは、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含んで成るブロック共重合体をいう。「(I)アクリル系トリブロック共重合体」は、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られる限り、他の重合体ブロック、重合部分、重合単位等を含んで成ってよく、特に制限されるものではないが、他の重合体ブロック、重合部分、重合単位等を含まない方が好ましい。
【0023】
「重合体ブロック(A)」とは、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロックをいい、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
ここで、「メタクリル酸誘導体」とは、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいう。「メタクリル酸エステル」とは、式(1)で示される化合物をいう。
式(1):CH=C(CH)−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
【0024】
メタクリル酸誘導体は、メタクリル酸エステルであることが好ましく、メタクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。
そのような「メタクリル酸誘導体」として、下記の化合物を例示することができる:
メタクリル酸;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明では、重合体ブロック(A)を得るために使用されるメタクリル酸誘導体は、上記式(1)の化合物であって、Rが、1〜10の炭素原子を含むメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0026】
また「重合体ブロック(B1)」とは、アクリル酸に由来する重合体ブロックをいい、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
ここで、「アクリル酸誘導体」とは、アクリル酸及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいう。「アクリル酸エステル」とは、式(2)で示される化合物をいう。
式(2):CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、4〜8であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
【0027】
アクリル酸誘導体は、アクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。
そのような「アクリル酸誘導体」として、下記化合物を例示することができる:
アクリル酸;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、i−オクチルアクリレート、デシルメチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、トリフルオロメチルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート等のアクリル酸エステル。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明では、重合体ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、上記式(2)の化合物であって、Rが、1〜12の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルアクリレートがより好ましく、n−ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0029】
本発明における(I)アクリル系トリブロック共重合体は、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られる限り、形状によって特に制限されるものではなく、線状ブロック又は分岐状(星状)ブロックの形状を有して良く、線状ブロック及び分岐状ブロック共重合体から選択される少なくとも1種のブロック共重合体であってよい。
「線状ブロック共重合体」は、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られる限り、そのブロック形式によって特に制限されることはなく、組成物の物性の点からジブロック共重合体を含有しても差し支えないが、トリブロック共重合体を必須成分として含まなければならない。
これらを考慮すると、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)、アクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を用いて、(I)アクリル系トリブロック共重合体の構造を示すと、A−B1−A型又はB1−A−B1型が考えられる。
【0030】
分岐状(星状)ブロック共重合体は、いずれの構造のものであってもかまわないが、組成物の物性の点から、前記線状ブロック共重合体を基本単位とするブロック共重合体であることが好ましい。
(I)アクリル系トリブロック共重合体が含有するブロック形状として、線状ブロック、分岐状ブロック以外では、マルチブロック形状が挙げられる。マルチブロック形状、すなわち、マルチブロック共重合体の構造としては、nを1以上の整数として、A−(B1−A)n−B1型、A−B1−(A−B1)n−A型、B1−(A−B1)n−A−B1型を例示できる。
【0031】
本発明における(I)アクリル系トリブロック共重合体は、A−B1−Aで示されるトリブロック共重合体であることが好ましい。重合体ブロックA及びB1の各々は、上述したメタクリル酸及びアクリル酸から誘導されることが好ましい。重合体ブロックAは、上記式(1)の化合物であって、Rが、1〜10の炭素原子を含むメタクリル酸アルキルエステルから誘導され、重合体ブロックB1は、上記式(2)の化合物であって、Rが、1〜12の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルから誘導されることが好ましい。重合体ブロックAは、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートから誘導され、重合体ブロックB1は、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルアクリレートから誘導されることがより好ましい。重合体ブロックAはポリメチルメタクリレート、重合体ブロックB1はポリn−ブチルアクリレートであることが特に好ましい。
【0032】
(I)アクリル系トリブロック共重合体」の重量平均分子量(Mw)は、10000〜200000が好ましい。(I)アクリル系トリブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される。より具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定された値をいう。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いた。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−M 2本を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求めた。
【0033】
(I)アクリル系トリブロック共重合体の重量平均分子量が10000より低い場合、凝集力が低くなり、好ましい粘着特性、例えば、耐熱性、充分な剥離性等が発現されない場合がある。一方、(I)アクリル系トリブロック共重合体の重量平均分子量が200000よりも大きいと、粘度が高くなりすぎ、塗工適性が低下することがある。
【0034】
(I)アクリル系トリブロック共重合体は、この分野において既知の方法で、製造することができる。本発明の実施において使用するブロックコポリマーは、例えば、特開平11−302617号に記載されているアニオン重合により、P. Mancinelli、「Materiaux et Techniques」、March−April 1990、pp. 41−46に記載されている遊離基重合により、例えば、米国特許第5,679,762号に記載されている多官能性連鎖移動剤により、EP 0 349 270号(B1)に記載されているイニファーター (iniferter) 重合により及び/又は同時出願中の普通に譲渡された米国特許出願第10/045881号に記載されている遊離基戻り沈殿(free radical retrograde precipitation)により製造することができる。アニオン重合により製造された(I)アクリル系トリブロック共重合体が特に好ましい。
【0035】
上記気泡を含む前の樹脂組成物は、ホットメルトタイプであることが好ましい。ホットメルトタイプの粘着剤とは、一般的に、熱可塑性の粘着剤であって、加熱することで溶融する粘着剤をいう。
【0036】
気泡を含む前の樹脂組成物において、24℃における周波数1.6Hzの動的せん断貯蔵弾性率(G’)は、1.0×10Pa以上である。特に、4.0×10〜7.5×10Paであることが好ましい。弾性、粘性を併せ持つ高分子の力学的特性を分析する方法として、動的粘弾性測定方法があるが、貯蔵弾性率G’とは、弾性に相当する特性値である。貯蔵弾性率G’を測定するときは、動的粘弾性測定装置によって、周波数を1.6Hzに固定し、固体せん断モードで測定される。
【0037】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物において、気泡は、窒素ガス又は炭酸ガスを用いて形成されることが好ましい。
「気泡」は、樹脂組成物に気泡を含ませることができる方法であれば、いずれの方法を用いて含ませてもよい。そのような方法として、例えば、特公昭60−3350号公報等に記載された方法を例示することができる。この特許公報は、引用することによって本明細書に組み込まれる。気泡を含ませる方法として、例えば、窒素ガス及び炭酸ガス等の気体(又はガス)を用いる方法が好ましい。樹脂組成物が気泡を含むことによって、後述する(II)常温液状樹脂の含有量を少なくすることができ、強度的に優れた気泡含有樹脂組成物を提供することが可能になる。
【0038】
本発明では、気泡含有樹脂組成物は、下記工程を含む製造方法によって、製造される。
(i) (I)アクリル系トリブロック共重合体を含む溶融物を製造する工程;
(ii) 上記溶融物とガスを加圧下で混合した後、混合物を大気圧下に開放して、樹脂組成物の内部に気泡を含ませて気泡含有樹脂組成物を得る工程。
上記工程によって、本発明に係る気泡含有樹脂組成物は製造されるが、一般的には、気泡含有樹脂組成物を含んで成る樹脂組成物の溶融物に、窒素又は二酸化炭素等の気体を加圧下にて混合後、大気圧に開放することで気泡を含む樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物内部での気泡の形成については、その一例を、以下に説明する(特公昭60−3350号公報参照)。
【0039】
以下に例示する気泡を形成する方法の重要な特徴は、窒素及び二酸化炭素等のガスを、(I)アクリル系トリブロック共重合体を含んで成る樹脂組成物を加熱して溶融した溶融物と加熱して混合した、混合物を製造することである。即ち、ガスを、加圧下で溶融した液状の樹脂組成物と混合すると、少なくとも一部のガスが樹脂組成物の溶融物に溶解した混合物を形成することができる。この混合物を、一般的な弁型アプリケーターによって大気圧下に開放すれば、ガスは混合物から放出されて樹脂組成物の中に捕捉され、その結果、樹脂組成物内に気泡が含まれた本発明に係る気泡含有樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
具体的には、(I)アクリル系トリブロック共重合体を含んで成る樹脂組成物は、加熱タンク内で加熱されて溶融する。この溶融した樹脂組成物(溶融物)は、2段式ギアポンプ内に送られる。そこで、樹脂組成物の溶融物は、ポンプに供給されるガスと加圧下で混合される。2段式ギアポンプの各ギアは、所定の回転数に設定される。通常、1段目に樹脂組成物の溶融物が送られ、2段目にガスが送られて、溶融物にガスが含まれることとなる。両者のギアの回転数を調節することで、気泡を含む前の樹脂組成物の体積を基準とする気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積(即ち、「体積増加率」)を制御することができる。得られたガスを含む溶融物は、例えば、弁型アプリケーターから、大気圧下に開放される。溶融物がアプリケーターのノズルから出る時に、樹脂組成物の溶融物に溶解しているガスは、溶融物中で小さな泡の形で成長して樹脂組成物を膨張させ、気泡を含む樹脂組成物が得られる。
尚、「アプリケーター」として、例えば、ハンドガンタイプ、ブロック溶融タイプ、バルクタイプ及びフォームタイプ等を使用することができ、市販品として、例えば、ノードソン社製のバルクメルターBMシリーズ(商品名)及びフォームメルターFMシリーズ(商品名)等を利用できる。
【0041】
本発明の更に好ましい実施形態として、25℃での粘度が1.0×10〜5.0×10mPa・sである、(II)常温液状樹脂を含む、気泡含有樹脂組成物を提供する。
本発明において、(II)常温液状樹脂とは、常温(即ち、25℃)で、液状の樹脂であって、目的とする気泡含有樹脂組成物を得られるものであれば、特に限定されることはない。
【0042】
(II)常温液状樹脂は、常温で液状であり、その25℃での粘度は、 ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製 BH又はDV−I+)で測定される。上記粘度が1.0×10mPa・s未満の場合にはブリードが析出し得、5.0×10mPa・sを超える場合には塗工適性が低下し得る。
(I)アクリル系トリブロック共重合体100重量部に対し、(II)常温液状樹脂が30〜150重量部含まれることが好ましい。30重量部未満の場合、粘着性が発現しにくくなり得、150重量部を超える場合、泡抜けが発生しやすく成り得、フォームがその発泡体の形態を維持し難くなり得る。
【0043】
(II)常温液状樹脂は、特に限定されることはないが、例えば、下記の重合体を含むことが好ましい:
アクリル酸誘導体及び/又はメタクリル酸誘導体に由来する重合体(例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体等);
脂肪族エステル(例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル)に由来する重合体(例えば、これらの単量体に由来するポリエステル);
ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等)。
上記重合体は、二種以上の単量体が共重合した共重合体であってもよく、共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0044】
本発明における(II)常温液状樹脂のガラス転移温度は10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が10℃より高い場合、低温における作業性が悪くなり得る。
ここで、(II)常温液状樹脂のガラス転移温度とは、DSC(示差走査熱量計)を用いて、−150℃から、1分間に10℃ずつ昇温させるという条件で測定して得られた値をいう。
【0045】
(II)常温液状樹脂は、(I)アクリル系トリブロック共重合体に相溶することが好ましく、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含むことがより好ましい。尚、(II)常温液状樹脂は、(B2)以外の他の重合部分、重合単位等を含んで成ってよく、それが含む重合単位によって特に制限されるものではない。
【0046】
ここで、重合体(B2)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」は、アクリル酸及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいい、上述のブロック重合体(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体と同様であり、式(3)で示される。
式(3):CH=CH(CH)−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、4〜8であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
で示される化合物をいう。
アクリル酸誘導体は、アクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートであることが特に好ましい。
【0047】
重合体(B2)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」として、(I)アクリル系トリブロック共重合体で記載したブロック重合体(B1)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」を例示できる。即ち、重合体(B2)は、(I)アクリル系ブロック共重合体の(B1)に例示したものと重複し得る。(B1)と(B2)とは実質的に同一でも異なっていても構わないが、本発明では(B1)と(B2)とが実質的に同一の組成を有することがより好ましい。両者が同一の組成を有することによって、(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)常温液状樹脂との相溶性が更に向上し、気泡含有樹脂組成物を含有する粘着剤のブリード発生が抑えられるからである。
【0048】
また、(II)常温液状樹脂は、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。そのようなポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンポリオール、好ましくはポリアルキレングリコールを例示できる。
【0049】
(II)常温液状樹脂のMwは、(II)常温液状樹脂が室温で液状である限り、特に限定されるものではない。(II)室温液状樹脂が、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含む場合、Mwは、500〜150000であることが好ましく、500〜100000であることがより好ましく、1000〜70000であることが特に好ましい。(II)室温液状樹脂が、ポリアルキレンポリオールを含む場合、Mwは、350〜20000であることが好ましく、500〜15000であることがより好ましく、1000〜10000であることが特に好ましい。尚、(II)室温液状樹脂のMwは、上述した(I)アクリル系トリブロック共重合体のMwの測定と同様の方法を用いて測定する。
【0050】
(II)常温液状樹脂は、水性媒体中での懸濁重合や乳化重合、有機溶剤中での溶液重合、或いは塊状重合など通常のラジカル重合(又は付加重合)方法等の、既知の方法を用いて製造することができる。有機溶剤としては、通常用いられるものが使用でき、例えば下記のものを例示できる。
テトラヒドロフランおよびジオキサン等の環状エーテル類;
ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素化合物;
酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;
メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール類等;
これら具体例の中から、1種を又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
上記重合に用いるラジカル発生型重合開始剤として、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびジターシャリーブチルパーオキサイド等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物を使用できる。また、連鎖移動剤は耐候性の低下につながるため、使用しないことが好ましい。
【0051】
上記重合は、重合温度が20〜300℃、圧力が常圧〜10MPaで行い、加圧の場合は耐圧オートクレーブを用いて5分〜20時間の反応時間で行うことができる。重合方法はバッチ重合、セミバッチ重合、或いは連続重合でもよい。
【0052】
これまでの記載を踏まえると、本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、A−B1−Aで示される(I)アクリル系トリブロック共重合体と、(II)常温液状樹脂を含んで成ることが好ましい。
特に、(I)アクリル系トリブロック共重合体は、重合体ブロックAが、上記式(1)の化合物であって、Rが、1〜10の炭素原子を含むメタクリル酸アルキルエステルから誘導され、重合体ブロックB1が、上記式(2)の化合物であって、Rが、1〜12の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルから誘導されることが好ましい。
更に、(I)アクリル系トリブロック共重合体は、重合体ブロックAが、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートから誘導され、重合体ブロックB1が、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルアクリレートから誘導されることがより好ましい。
最も好ましい(I)アクリル系トリブロック共重合体は、重合体ブロックAがポリメチルメタクリレート、重合体ブロックB1がポリn−ブチルアクリレートである。
尚、(I)アクリル系トリブロック共重合体のMwは、10000〜200000であることが好ましく、30000〜200000であることがより好ましく、50000〜200000であることが特に好ましい。
【0053】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物には、(I)アクリル系ブロック共重合体及び(II)常温液状樹脂として、これら2成分を得るために用いた単量体と共重合可能な単量体を共重合したものを使用すること、及び(I)アクリル系ブロック共重合体及び(II)常温液状樹脂にそのようなものを添加することも可能である。
そのような共重合可能な単量体の具体例として、
メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類;
アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;
クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;
スチレン、−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンモノマー;
エチレン、プロピレン等のオレフィン;
ε−カプロラクトン、バレロラクトン等
を例示できる。
【0054】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、必要に応じて粘着付与剤等を含むことが好ましい。ブロックコポリマー、粘着付与剤は、意図する最終用途に要求される必要な特性が得られるのに有効な量が配合される。
粘着付与剤としては、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジンエステル、天然テルペン等が挙げられる。さらに詳細な具体例を以下に挙げる。
任意の相溶性樹脂またはそれらの混合物、例えば、天然ロジンおよび変性ロジン、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジンおよび重合ロジン;
天然および変性ロジンのグリセロールおよびペンタエリトリトールエステル、例えば、淡色ウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリトリトールエステルおよびロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステル;
天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー、例えば、スチレン/テルペンおよびα−メチルスチレン/テルペン;
ASTM法E28−58Tによる測定で、約80℃〜150℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂;
フェノール変性テルペン樹脂およびそれらの水素化誘導体、例えば、二環式テルペンおよびフェノールの、酸性媒質中の、縮合反応から生ずる樹脂生成物;
約70℃〜135℃の環球軟化点を有する脂肪族石油炭化水素樹脂;
芳香族石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体;
並びに脂環族石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体;
環式または非環式C5樹脂および芳香族変性非環式または環式樹脂も包含される。
これら粘着付与樹脂は、単独で用いられても良いし、2種以上が混合されても良い。
【0055】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物に、酸化防止剤又は安定剤を、約3重量%までの量で添加することが好ましい。
安定剤または酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール単独物、または一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との混合物がある。一次酸化防止剤としてはヒンダードフェノールが挙げられ、二次酸化防止剤としてはジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(「DLTDP」)が例示される。
代表的酸化防止剤として、具体的には、
1,3,5−トリメチル2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリトリチルテトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、4,4’−メチレンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、6−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,4−ビス(n−オクチル−チオ)−1,3,5−トリアジン、ジ−n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエートおよびソルビトールヘキサ[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、IRGAFOS 168 (Chibaから入手可能である二次酸化防止剤) およびIRGANOX 1010 (Chiba−Geigyから入手可能であるヒンダードフェノール一次酸化防止剤)が例示される。
他の酸化防止剤としては、ETHANOX 330 (Albermarleからのヒンダードフェノール)、SANTOVAR (Monsantoからの2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン)およびNAUAGARD P (Uniroyalからのトリス (p−ノニル) ホスファイト) が挙げられる。
【0056】
また、異なる性質を満足しかつ特定の適用必要条件を満足するため、他の添加剤を、本発明の気泡含有樹脂組成物に添加することができる。このような添加剤は、例えば、充填剤、顔料、流れ調整剤、染料を包含し、これらは目的に依存して接着剤配合物に少量または大量に混入することができる。
【0057】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、公知技術を用いて製造することができる。典型的には、(I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)常温液状樹脂とが均質にブレンドされるまで、一般に約1〜5時間、約100〜200 ℃の温度で両成分を溶融配合し、上述の方法で気泡を形成することにより、気泡含有樹脂組成物が製造される。
(I)と(II)との配合法は特に限定されるものではない。粘着付与樹脂、酸化防止剤等の各種添加剤は、(I)と(II)とを配合するときに一緒に配合するのが好ましいが、(I)と(II)とが均一に配合されてから、後添加しても差し支えない。
【0058】
本発明に係る気泡含有樹脂組成物は、粘着剤として好適であり、ホットメルトタイプの粘着剤として更に好適である。本発明に係るホットメルトタイプの粘着剤は、例えば、医療用途、工業的用途、位置決め粘着剤、びんラベル貼り粘着剤、及び断熱用途について好適に使用される。
本発明の粘着剤は、テープ、フィルム、シート等の基材に塗工され、粘着製品の製造に利用される。基材の材質としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、エチレン酢酸ビニル、アセタール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、金属箔等を例示できる。
【0059】
本発明に係る粘着剤から製造される粘着製品としては、医療用テープ、工業用テープ、シート、カイロ、貼布剤、シール、ラベル、ネームプレート、床材に貼り付ける断熱シート、再閉鎖可能なファスナーを例示できる。
粘着製品の一態様である「医療用テープ」とは、薬剤を含有する経皮吸収品、薬剤を含有しない単なるテープの双方を含む。この場合、粘着製品が貼り付けられる被着体は、人肌となる。
【0060】
本明細書において、「工業用テープ」とは、いわゆるシーリングテープや養生テープをいう。金属、プラスチック、無機材料等の被着体に多く利用される。
粘着製品が「カイロ」の場合、基材はポリエステル等のフィルムや不織布であり、被着体は、綿、毛、シルク、レーヨン、ポリエステル等を素材とする衣類となる。
粘着製品が「ラベル」の場合、被着体は、瓶(ガラス)、缶(金属)、プラスチックとなり、ラベルはこれらの被着体に貼り付けられて飲料用途に適用され得る。
【0061】
粘着製品が「床材に貼り付ける断熱シート」の場合、この断熱シートは、木材、合板、金属板、コンクリート等の床材および発熱体構成部材表面に使用されるPETシートなどに貼り付けられ、暖房用途、保温用途として利用される。
このように、本発明に係る粘着製品には種々の態様があるが、いずれもブリードの発生がなく、被着体から剥離させたとき、粘着層が被着体に残らずに界面剥離するように、設計される。
【0062】
以下に、本発明の主な態様を記載する。
1.
(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物中に気泡を更に含むことを特徴とする気泡含有樹脂組成物。
2.
気泡を含む前の樹脂組成物の体積に対し、気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積は、1倍より大きく、かつ、4.5倍以下である上記1に記載の気泡含有樹脂組成物。
3.
(I)アクリル系トリブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)からなるA−B1−A型トリブロック共重合体である上記1又は2に記載の気泡含有樹脂組成物。
4.
上記気泡を含む前の樹脂組成物がホットメルトタイプである上記1〜3のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
5.
気泡を含む前の樹脂組成物の24℃における周波数1.6Hzの動的せん断貯蔵弾性率(G’)が1.0×10Pa以上である上記1〜4のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
6.
上記気泡は、窒素ガス又は炭酸ガスを用いて形成される上記1〜5のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
7.
25℃での粘度が1.0×10〜5.0×10mPa.sである(II)常温液状樹脂を、更に含む上記1〜6のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
8.
(I)アクリル系トリブロック共重合体100重量部を基準として、(II)常温液状樹脂が30〜150重量部含まれる上記1〜7のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
9.
(II)常温液状樹脂は、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含む上記1〜8のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物。
10.
下記工程を含む製造方法によって、製造されることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の気泡含有樹脂組成物:
(i) (I)アクリル系トリブロック共重合体を含む溶融物を製造する工程;
(ii) 上記溶融物とガスを加圧下で混合した後、混合物を大気圧下に開放して、樹脂組成物の内部に気泡を含ませて気泡含有樹脂組成物を得る工程。
11.
上記1〜10のいずれかに記載された気泡含有樹脂組成物を使用した粘着剤。
12.
上記11に記載の粘着剤が塗工された粘着製品。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
(I)アクリル系トリブロック共重合体、(II)常温液状樹脂、(T)粘着付与剤、(S)酸化防止剤を表1及び2に記載した組成(重量部)で配合し、その配合物を万能攪拌機に加え、約190℃で約4時間溶融混合し、気泡を含む前の樹脂組成物を得た。樹脂組成物の各成分を以下に記載する。
【0064】
(I)アクリル系トリブロック共重合体として、(I-1)及び(I-2)を用いた。
(I−1);(ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B)−ポリメチルメタクリレート(A))で表されるトリブロック共重合体[クラレ社製の商品名「LA2140e」(重量平均分子量Mw=約70000)]
(I−2);(ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B)−ポリメチルメタクリレート(A))で表されるトリブロック共重合体(重量平均分子量Mw=約150000、ポリメチルメタクリレート含有量約30%)]
尚、(I)アクリル系トリブロック共重合体のMwは、GPC測定により行った。詳細は、先に記載したとおりである。
【0065】
(II)常温液状樹脂として、下記(II−1)〜(II−4)を用いた。尚、(II−1)の25℃の粘度は、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製 DV−I+)を用い、スピンドルF、回転数0.3回転/分で測定した。(II−2)〜(II−4)の25℃の粘度は、はブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製 BH)を用い、2番ローター、回転数20回転/分で測定した。
また、常温液状樹脂のMwの測定は、アクリル系トリブロック共重合体と同様の方法で行った。
(II−1);ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B)で表されるジブロック共重合体[クラレ社製 商品名「LA1114」(重量平均分子量Mw=約68000)(粘度:2.0×10mPa・s/25℃)]
(II−2);ポリブチルアクリレートである[東亜合成社製 商品名「ARUFON UP1020」(重量平均分子量Mw=約2200)(粘度:5.0×10mPa・s/25℃)]
(II−3);ポリブチルアクリレートである[東亜合成社製 商品名「ARUFON UP1000」(重量平均分子量Mw=約3000)(粘度:1.1×10mPa・s/25℃)]
(II−4);ポリプロピレングリコールである[第一工業製薬社製 商品名「ハイフレックス D-4000」(重量平均分子量Mw=約8100)(粘度:1.0×10mPa・s/25℃)]
【0066】
(T)粘着付与剤として、下記(T−1)から(T−5)を用いた。
(T−1);水素化ロジンエステル[荒川化学社製 商品名「パインクリスタル KE−311」]
(T−2);ロジンエステル[荒川化学社製 商品名「スーパーエステル A−75」]
(T−3);フェノール変性テルペン樹脂[ヤスハラケミカル社製 商品名「YSポリスター TH130」]
(T−4);芳香族石油炭化水素樹脂[イーストマンケミカル社製 商品名「クリスタレックス 3085」]
(T−5);フェノール変性テルペン樹脂[ヤスハラケミカル社製 商品名「YSポリスター T160」]
【0067】
(S)酸化防止剤として以下のものを使用した。
(S−1);一次酸化防止剤であるヒンダードフェノール系酸化防止剤[チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名「トミノックス TT」]
(S−2);二次酸化防止剤である硫黄系酸化防止剤[住友化学工業社製「スミライザー TPD」]
【0068】
気泡含有樹脂組成物の製造
樹脂組成物に気泡を含ませるために、ノードソン社製のFMシリーズ(商品名)のアプリケーターを用いた。即ち、実施例1〜5の樹脂組成物を加熱タンクに入れて加熱溶融し、この溶融物を2段式ギアポンプ内に送り、樹脂組成物の溶融物を、ポンプに供給される窒素ガスと加圧下で混合した。1段目に溶融物を送り、2段目に窒素ガスを送った。窒素ガスを送る時間と間隔を調節することで、気泡を含むことによる樹脂組成物の体積増加率を制御した。得られた窒素ガスを含む溶融物をコーターヘッドから大気圧下に開放し、気泡含有樹脂組成物を得た。
実施例の気泡含有樹脂組成物、比較例の樹脂組成物(気泡なし)について、以下の要領で評価した。
【0069】
<体積増加率>
気泡を含むことによる各樹脂組成物の体積増加率は、下記式(a)で定義される通りであり、この式(a)に基づいて体積増加率を算出した。
式(a):体積増加率=
気泡を含んだ後の樹脂組成物の体積/気泡を含む前の樹脂組成物の体積
尚、比較例の樹脂組成物において、体積増加率が1.0とは気泡を含まないことを意味する。
【0070】
<動的せん断貯蔵弾性率(G’)>
動的せん断貯蔵弾性率(G’)はユービーエム社製の動的粘弾性測定装置(Pheogel−E4000)を用いて、周波数を1.6Hzとし、固体せん断モードにて24℃の動的貯蔵弾性率を測定した。
<被着体へのブリード性>
厚さが38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布量150g/mとなるように粘着組成物を塗布し、試験体とした。上記サンプルを25℃雰囲気下SUS板上に貼りあわせ、同雰囲気下3分後に剥離した際のSUS板表面上のブリード性を評価した。SUS板表面上のブリードが全くないものを◎、ブリードがごくわずかあるものを○、一部にブリードがあるものを△、全面にブリードがあるものを×とした。
<断熱性>
50℃に温度を設定したアルミ板上に、上記試験体を貼付し、180秒後のPETフィルム表面の温度を測定した。即ち、PETフィルムの表面温度が低い程、断熱性に優れることを意味する。PETフィルムの表面温度が43℃未満であれば◎、43℃以上47℃未満であれば○、47℃以上49℃未満であれば△、49℃以上であれば×とした。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1に示されるように、実施例1〜5の気泡含有樹脂組成物は、表2の気泡を含有しない樹脂組成物(表2では、単に「樹脂組成物」と記載)と比較して、いずれも断熱性に効果がみられた。更に、表1の実施例1〜5の気泡含有樹脂組成物はSUS表面上のブリードもみられず、表2の気泡を含有しない樹脂組成物と比較して、低分子量成分の被着体へのブリードが改善された。尚、表1に示される実施例1〜5の気泡含有組成物は、体積増加率を1.2〜4.0の広範囲で変更することができるので、硬さの設計も容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)アクリル系トリブロック共重合体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物中に気泡を更に含むことを特徴とする気泡含有樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された気泡含有樹脂組成物を使用した粘着剤。

【公開番号】特開2009−40839(P2009−40839A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205522(P2007−205522)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(391047558)ヘンケルテクノロジーズジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】