説明

気流層ガス化炉及びその運転方法

【課題】気流層ガス化炉について、ガス化部の炉壁に対する熱負荷を低減できるようにする。
【解決手段】石炭バーナ7により酸化剤とともに供給される微粉炭をガス化させるガス化部3を備え、かつガス化部で旋回流Sを形成せるようになっている気流層ガス化炉について、ガス化による生成ガスより低温のガスが用いられる熱遮蔽ガスを旋回流と同じ方向でガス化部の耐火水冷壁6に沿って流れる状態にしてガス化部に噴出流14として噴出させる熱遮蔽ガスノズル8を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭などの固体原料をガス化させて生成ガスを得るガス化装置におけるガス化炉に係り、特に微粉化した固体原料を酸化剤とともに原料バーナによりガス化部に噴出供給してガス化を行うようになっている気流層ガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
気流層ガス化炉では、固体原料を微粉化して得られる微粉固体原料を酸化剤とともに原料バーナによりガス化部に噴出供給し、ガス化部の温度を原料灰の溶融温度(1300〜1600℃)以上に保った状態で反応させてガス化を行うとともに、原料灰を有害成分のないスラグに変換する。このため気流層ガス化炉は、他の方式のガス化炉に比較しガス化効率が高い、適用炭種が広い、環境適合性が優れるなどの特徴を有し、こうしたことから合成ガス製造用、複合発電用、燃料電池の燃料製造用、化学原料製造用など多くの分野に適しており、国内外で広く開発が進められている。
【0003】
このような気流層ガス化炉については、旋回型ガス化方式が知られている。すなわちガス化部で旋回流を形成せることで反応時間をより長く確保できるようにし、これによりガス化効率を高める方式である(例えば特許文献1、特許文献2)。また気流層ガス化炉については、ガス化部が原料灰の溶融温度以上といった高温になることから、メンブレン構造の水冷壁を設けることでガス化部における圧力容器の炉壁を高温ガスから分離する構造が知られている(例えば特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−65094号公報
【特許文献2】特開平11−172263号公報
【特許文献3】特開平10−237463号公報
【特許文献4】特開2001−220587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旋回型ガス化方式の気流層ガス化炉は、1室2段旋回型ガス化方式とすることでガス化効率をより高めることができる。1室2段旋回型ガス化方式では、ガス化部(反応室)に上下2段にして原料バーナを設け、上段原料バーナと下段原料バーナのそれぞれについて旋回流を形成させるようにする。この場合、上段原料バーナと下段原料バーナで旋回流の旋回径比(ガス化部の径に対する旋回流の径の比)を異ならせ、上段原料バーナにおける旋回径比を下段原料バーナにおけるそれより大きくするのが通常で、例えば上段原料バーナによる旋回流は0.7といった旋回径比にされる。このため上段原料バーナによる旋回流がガス化部の炉壁に近接することになり、これにより大きな熱負荷がかかってガス化部の炉壁に熱的ダメージを生じ易くなる。
【0006】
このような旋回流の形成に伴う炉壁の熱的ダメージ問題は、ガス化部にメンブレン構造の水冷壁を設ける場合に特に影響が大きくなる。メンブレン構造の水冷壁は、伝熱管を平板状のメンブレンバーで連結した構成となっており、これをガス化部に設ける場合には、伝熱管やメンブレンバーがガス化部の高温ガスに直接的に曝されないようにするために内側を耐火材で被覆して耐火水冷壁とする。この場合、被覆耐火材が上述のような熱的ダメージを受けることになるが、その熱的ダメージにより被覆耐火材の減肉が進むと伝熱管やメンブレンバーが露出する状態になってしまう。そしてそのような状態になるとガス化装置の運転を停止してガス化炉の大掛かりな修繕を行うなどの対応が必要となる。
【0007】
こうしたことから気流層ガス化炉、特に旋回型ガス化方式の気流層ガス化炉については、ガス化部の炉壁に対する熱負荷をできるだけ低減できるようにすることが望まれる。
【0008】
本発明は、以上のような事情を背景になされてものであり、気流層ガス化炉について、ガス化部の炉壁に対する熱負荷を低減できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために、原料バーナにより酸化剤とともに供給される微粉固体原料をガス化させるガス化部を備え、かつ前記ガス化部で旋回流を形成せるようになっている気流層ガス化炉において、前記ガス化による生成ガスより低温のガスが用いられる熱遮蔽ガスを前記旋回流と同じ方向で前記ガス化部の炉壁に沿って流れる状態にして前記ガス化部に噴出させる熱遮蔽ガスノズルが設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような本発明による気流層ガス化炉では、熱遮蔽ガスノズルから噴出される熱遮蔽ガスがガス化部の炉壁に沿って生成ガスの旋回流と同じ方向に流れる流れを形成する。そしてこの熱遮蔽ガスの流れは、熱遮蔽ガスが生成ガスより低温のガスであることにより、ガス化部における高温ガスによる熱に対して炉壁を効果的に遮蔽するように機能する。すなわち熱遮蔽ガスの炉壁に沿った流れにより、炉壁がガス化部の高温ガスに直接的に曝されるのを効果的に防ぐことができ、これにより炉壁に対する熱負荷を大幅に低減できるようになる。
【0011】
以上のような熱遮蔽ガスの熱遮蔽機能は、熱遮蔽ガスの流れの流速を生成ガスの旋回流の流速と同じ程度とすることで、より効果的に発揮させることができる。こうしたことから本発明では、上記のような気流層ガス化炉について、前記旋回流の前記炉壁側での流速と同じ程度の流速で前記熱遮蔽ガスを噴出させるようにすることを好ましい形態としている。
【0012】
また本発明では、上記のような気流層ガス化炉について、前記熱遮蔽ガスノズルは、前記原料バーナに対応させて設けるのを好ましい形態としている。このようにすることにより、熱遮蔽ガスの熱遮蔽機能をより効果的に発揮させることができる。
【0013】
また本発明では、上記のような気流層ガス化炉について、伝熱管を平板状のメンブレンバーで連結してなる水冷壁が前記ガス化部に設けられている場合に、前記熱遮蔽ガスノズルは、前記メンブレンバーを貫通するようにして設けるのを好ましい形態としている。このようにすることにより、水冷壁に対する必要な加工の手数を減らすことができ、製作コストを低減することができる。
【0014】
また本発明では、上記課題を解決するために、原料バーナにより酸化剤とともに供給される微粉固体原料をガス化させるガス化部を備え、かつ前記ガス化部で旋回流を形成せるようになっている気流層ガス化炉の運転方法において、前記ガス化による生成ガスより低温のガスが用いられる熱遮蔽ガスを前記旋回流と同じ方向で前記ガス化部の炉壁に沿って流れる状態にして前記ガス化部に噴出させるようにしたことを特徴としている。
【0015】
このような気流層ガス化炉の運転方法は、上記気流層ガス化炉の場合と同様に、熱遮蔽ガスの熱遮蔽機能により、炉壁に対する熱負荷を大幅に低減することができる。
【0016】
上記のような気流層ガス化炉の運転方法については、前記旋回流の前記炉壁側での流速と同じ程度の流速で前記熱遮蔽ガスを噴出させるようにするのが好ましく、このようにすることにより、熱遮蔽ガスによる熱遮蔽機能をより効果的に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明によれば、気流層ガス化炉について、ガス化部の炉壁に対する熱負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態による気流層ガス化炉の構成を簡略化して示す図である。
【図2】上段石炭バーナと熱遮蔽ガスノズルの設置構造を模式化して示す図である。
【図3】上段石炭バーナと熱遮蔽ガスノズルの耐火水冷壁に対する貫通構造の例を示す図である。
【図4】図3中のB方向から見た状態を模式化して示す図である。
【図5】第2の実施形態による気流層ガス化炉の要部であるガス化部の構成を簡略化して示す図である。
【図6】図5中のC方向から見た状態を模式化して示す図である。
【図7】図5中のC方向から見た第3の実施形態の状態を模式化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明による気流層ガス化炉は、石炭ガス化装置におけるガス化炉として特に適している。したがって以下では固体原料が石炭であり、その石炭を微粉化して得られる微粉炭を微粉固体原料とする場合の実施形態について説明する。
【0020】
図1に、第1の実施形態による気流層ガス化炉の構成を簡略化して示す。本実施形態の気流層ガス化炉1は、1室2段旋回型ガス化方式であり、圧力容器2の内部にガス化部3、熱回収部4およびスラグ冷却部5を設けた構成とされ、そのガス化部3と熱回収部4には、それらにおける高温のガスから圧力容器2の炉壁を分離する耐火水冷壁6が設けられている。
【0021】
ガス化部3は、1室2段旋回型ガス化方式であることから、上段反応部と下段反応部に分けられ、上段反応部には、原料バーナである石炭バーナ7(上段石炭バーナ7a)が設けられるとともに、熱遮蔽ガスノズル8が設けられ、下段反応部には、石炭バーナ7(下段石炭バーナ7b)が設けられている。
【0022】
石炭バーナ7は、原料搬送ライン11と酸化剤搬送ライン12が接続されている。原料搬送ライン11は、図外の微粉炭供給系から窒素ガスなどの不活性ガスを用いた気流搬送で搬送されてくる微粉炭を石炭バーナ7に供給し、一方、酸化剤搬送ライン12は、酸素や空気などが用いられる酸化剤を石炭バーナ7に供給する。これにより石炭バーナ7は、微粉炭を酸化剤と混合させてガス化部3に噴出させる。
【0023】
また石炭バーナ7は、上段石炭バーナ7aと下段石炭バーナ7bそれぞれについて、ガス化部3の円形断面上で均等的な配置となるようにして複数設けられている。その設置構造を上段石炭バーナ7aについて図1中のA-A視として図2に示す。図2の例では、4個の上段石炭バーナ7aが設けられており、これら各上段石炭バーナ7aは、ガス化部3に仮想される仮想円Sに接する状態にして噴出流(バーナ火炎)9を噴出させるようにされており、これにより仮想円Sに沿った旋回流(以下、仮想円Sと同等とみなして旋回流Sと記す)をガス化部3に形成させるようにされている。このようにするのは、反応時間をより長く確保できるようにしてガス化効率を高めるためである。なお、こうした設置構造は下段石炭バーナ7bについても同様である。ただし、下段石炭バーナ7bは、旋回径比が上段石炭バーナ7aによる旋回流Sにおけるそれよりも小さな旋回流を形成させるように設けられる。したがって、上段バーナ7aの火炎は下段バーナ7bより炉壁側に形成されるため、上段バーナ部の炉壁の熱負荷は下段バーナに比較して高い。
【0024】
熱遮蔽ガスノズル8は、図2に示すように、4個の上段石炭バーナ7aそれぞれに対応させるようにして4個設けられている。具体的には、4個の上段石炭バーナ7aそれぞれに側面方向で隣接する位置で熱遮蔽ガスノズル8を1個ずつ設けている。これら各熱遮蔽ガスノズル8は、熱遮蔽ガス搬送ライン13が接続されており、この熱遮蔽ガス搬送ライン13で供給される熱遮蔽ガスを噴出流14としてガス化部3に噴出させる。
【0025】
熱遮蔽ガスとしては、ガス化部3でのガス化で生成される生成ガスより低温とされた窒素ガス、水蒸気、あるいはリサイクルガス(気流層ガス化炉1からの生成ガスを精製して得られる精製ガスを気流層ガス化炉1の冷却用などとして用いる場合のガス)などが用いられる。
【0026】
熱遮蔽ガスの噴出流14は、旋回流Sとの混合をできるだけ生じない状態にして上段石炭バーナ7aのバーナ火炎9の近傍で噴出させる。より具体的には、旋回流Sとガス化部3の炉壁、つまり耐火水冷壁6の間で旋回流Sと同じ方向で耐火水冷壁6に沿って流れる状態にして上段石炭バーナ7aのバーナ火炎9の近傍で噴出させる。また噴出流14は、その流速が旋回流Sの流速と同じ程度となるように噴出させる。例えば上段石炭バーナ7aにおける微粉炭の噴出速度が5〜10m/sであると、酸化剤との反応によって生じる高温の生成ガスの旋回流Sにおける耐火水冷壁6の側での流速は20〜30m/sとなる。この場合、熱遮蔽ガスの噴出流14は、10〜30m/s程度の流速とするのが好ましいことになる。
【0027】
このような噴出流14は、熱遮蔽ガスが生成ガスより低温であることにより、ガス化部3における高温ガス、特にバーナ火炎9の近傍における高温ガスによる熱に対して耐火水冷壁6を効果的に遮蔽するのに機能し、これにより耐火水冷壁6に対する熱負荷を大幅に低減することができる。したがってバーナ火炎9の近傍の高温ガスで耐火水冷壁6の被覆耐火材が大きな熱的ダメージを受けて損傷するのを効果的に防ぐことができ、耐火水冷壁6の寿命を長くすることができる。さらに、炉壁の熱ダメージを低減することができるため、上段バーナの酸素量も増加できる。石炭は、C、H、Oの化合物であり、Cの含有量が多い高炭化度の石炭ではガス化に必要な酸素量は多くなる。下段バーナ部に必要以上の酸素を配分すると炉壁全体が熱ダメージを受けるため好ましくない。しかしながら、本発明では上段バーナに多くの酸素を配分できるため、熱ダメージを増加させることなく特に炭化度の進んだ石炭に関してもガス化が可能となる。なお、特開平8−239797号公報、特開平9−92573号公報、特開平6−228578号公報では、炉壁のメンブレンバー(すなわち、炉壁は鋼管、数mm厚の平鋼、鋼管、数mmの平鋼が順番に数十本並んでおり、断面めがね構造に溶接されたパネル構造体からなるが、このうち平鋼を指す。)にノズルを設置しているが、これらは全てスラグ付着防止であり、本発明とは目的等が全く異なる。
【0028】
以上のような気流層ガス化炉1におけるガス化部3では、下段石炭バーナ7bにおける酸化剤の量を多くすることで、下段反応部の温度が石炭灰の溶融温度以上に維持される。このため下段反応部で発生する石炭灰は、溶融スラグとなり、ガス化部3の底部に設けてあるスラグタップ15を通ってスラグ冷却部5へ落下する。そしてスラグ冷却部5に落下した溶融スラグは、スラグ冷却部5に貯留されている冷却水に接して水砕スラグ化された後、スラグ排出ライン16より炉外へ排出される。
【0029】
一方、上段反応部では、上段石炭バーナ7aにおける酸化剤の量を下段石炭バーナ7bにおけるそれよりも少なくすることで、ガス化反応に対して活性なチャーを発生させ、石炭中の可燃分を一酸化炭素と水素に富むガスに変換させる。これにより得られる生成ガスは、ガス化部3の上部に設けられている熱回収部4を通ることで熱回収がなされた後、生成ガス出口ライン17から図外のガス精製装置へ送られる。ガス精製装置では、生成ガスの精製が行われる。具体的には、生成ガスに同伴する未反応チャーや石炭灰を除去する徐塵や脱硫などがなされ、これにより精製ガスが得られる。ガス精製装置で得られた精製ガスは、必要に応じて、気流層ガス化炉1の冷却ガスや原料の搬送ガスなどとして利用される。
【0030】
ここで、石炭バーナ7や熱遮蔽ガスノズル8は、耐火水冷壁6を貫通する状態にして設けられることになる。図3に示すのは、上段石炭バーナ7aと熱遮蔽ガスノズル8を耐火水冷壁6に貫通させる場合の貫通構造の例である。耐火水冷壁6は、冷却水ないしそれが気化して生成される蒸気が流れる伝熱管21を平板状のメンブレンバー22で連結して構成され、伝熱管21とメンブレンバー22が一定の間隔で交互に配列したメンブレン構造の水冷壁23をその内側について数cm程度の厚さの耐火材24で被覆した構造とされている。また耐火水冷壁6は、圧力容器2の炉壁25との間に加圧空隙26を介在させて設けられており、加圧空隙26に適度な圧力のガスを注入することでガス化部3の内圧に耐えることができるようにされている。
【0031】
このような耐火水冷壁6に上段石炭バーナ7aと熱遮蔽ガスノズル8を貫通させるには、上段石炭バーナ7aと熱遮蔽ガスノズル8を覆うシールボックス27を設け、貫通部位を通してガス化部3からガスが漏れるのを防止できるようにする。そして上段石炭バーナ7aについては、図3中のB方向から見た状態を模式化して示す図4に見られるように、伝熱管21を部分的に折り曲げて伝熱管21の配列間隔を部分的に拡げることで貫通部28を形成し、この貫通部28で貫通させる。一方、熱遮蔽ガスノズル8については、通常の配列間隔における伝熱管21の間のメンブレンバー22で貫通させる。このようにして熱遮蔽ガスノズル8を耐火水冷壁6に貫通させるようにすることにより、耐火水冷壁6に対する必要な加工の手数を減らすことができ、製作コストを低減することができる。
【0032】
以下では第2の実施形態について説明する。図5に、第2の実施形態による気流層ガス化炉の要部であるガス化部31の構成を簡略化して示す。なお、図5では、図1におけるガス化部3と共通する要素については同一の符号を付してある。
【0033】
第1の実施形態では、上段石炭バーナ7aに対応させ熱遮蔽ガスノズル8を設けるについて、1個の上段石炭バーナ7aに1個の熱遮蔽ガスノズル8が対応するようにしていたが、これに対し本実施形態では、1個の上段石炭バーナ7aに2個の熱遮蔽ガスノズル8を対応させるようにしている。より具体的には、1個の上段石炭バーナ7aの上下で熱遮蔽ガスノズル8を1個ずつ設けるようにしている。
【0034】
図6に、図5中のC方向から見た状態を模式化して示す。この図6に見られるように、伝熱管21を部分的に折り曲げて伝熱管21の配列間隔を部分的に拡げることで貫通部32を形成し、この貫通部32で上段石炭バーナ7aとその上下における熱遮蔽ガスノズル8を耐火水冷壁6に貫通させる。図6では、上段石炭バーナ7aにより形成される旋回流の方向を矢印33で示し、上段石炭バーナ7aの上側の熱遮蔽ガスノズル8からの噴出流の方向を矢印34で示し、上段石炭バーナ7aの下側の熱遮蔽ガスノズル8からの噴出流の方向を矢印35で示してある。これから分かるように、上段石炭バーナ7aの上下における各熱遮蔽ガスノズル8からの噴出流は、上段石炭バーナ7aのバーナ火炎の近傍から耐火水冷壁6に沿う流れとなり、上段石炭バーナ7aのバーナ火炎の近傍における高温ガスによる熱に対して耐火水冷壁6を効果的に遮蔽するのに機能し、これにより耐火水冷壁6に対する熱負荷を大幅に低減することができる。また上段石炭バーナ7aの上下における各熱遮蔽ガスノズル8からの噴出流は、伝熱管21の配列間隔が拡がって冷却能力が低下している部分に対し重点的に熱遮蔽機能を発揮するようにもなっている。このため伝熱管21の配列間隔が拡がることで低下している冷却能力を補うのにも機能する。
【0035】
図7に、本発明の第3の実施形態として、図5注のC方向から見た図を示す。本実施形態は、上述したメンブレンバーに対して直角にノズルを設置したものであり、旋回方向に向けると旋回流との混合を抑制する効果が最も高いが、直角方向に噴出させても炉内旋回流によって流れ方向が変化するため熱遮断効果はある。
【0036】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これらは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば以上の実施形態は1室2段旋回型ガス化方式の場合であったが、本発明はこれに限られず、他のガス化方式の気流層ガス化炉にも適用できる。また以上の実施形態はガス化部に耐火水冷壁が設けられる場合であったが、本発明はこれに限られず、ガス化部が耐火水冷壁を有しない気流層ガス化炉にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 気流層ガス化炉
3、31 ガス化部
6 耐火水冷壁(炉壁)
7 石炭バーナ(原料バーナ)
8 熱遮蔽ガスノズル
11 原料搬送ライン
12 酸化剤搬送ライン
13 熱遮蔽ガス搬送ライン
21 伝熱管
22 メンブレンバー
23 水冷壁
S 旋回流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料バーナにより酸化剤とともに供給される微粉固体原料をガス化させるガス化部を備え、かつ前記ガス化部で旋回流を形成せるようになっている気流層ガス化炉において、
前記ガス化による生成ガスより低温のガスが用いられる熱遮蔽ガスを前記旋回流と同じ方向で前記ガス化部の炉壁に沿って流れる状態にして前記ガス化部に噴出させる熱遮蔽ガスノズルが設けられていることを特徴とする気流層ガス化炉。
【請求項2】
前記旋回流の前記炉壁側での流速と同じ程度の流速で前記熱遮蔽ガスを噴出させるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の気流層ガス化炉。
【請求項3】
前記熱遮蔽ガスノズルは、前記原料バーナに対応させて設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気流層ガス化炉。
【請求項4】
伝熱管を平板状のメンブレンバーで連結してなる水冷壁が前記ガス化部に設けられている場合に、前記熱遮蔽ガスノズルは、前記メンブレンバーを貫通するようにして設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の気流層ガス化炉。
【請求項5】
原料バーナにより酸化剤とともに供給される微粉固体原料をガス化させるガス化部を備え、かつ前記ガス化部で旋回流を形成せるようになっている気流層ガス化炉の運転方法において、
前記ガス化による生成ガスより低温のガスが用いられる熱遮蔽ガスを前記旋回流と同じ方向で前記ガス化部の炉壁に沿って流れる状態にして前記ガス化部に噴出させるようにしたことを特徴とする気流層ガス化炉の運転方法。
【請求項6】
前記旋回流の前記炉壁側での流速と同じ程度の流速で前記熱遮蔽ガスを噴出させるようにされていることを特徴とする請求項5に記載の気流層ガス化炉の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254727(P2010−254727A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102680(P2009−102680)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)