説明

気液分離器

【課題】冷媒の気液分離性の悪化に伴う冷凍能力の低下を招くことなく、オイルが圧縮機に戻り難くなることを回避し、気液分離部材の圧力損失を低減可能な気液分離器を提供する。
【解決手段】一端が開口した筒状の胴体2と、胴体の開口端を封止し、冷媒流入孔3dが穿設されたヘッダ3と、ヘッダの冷媒流入孔から流入した冷媒を気液分離する気液分離部材7と、気液分離部材によって分離されたガス冷媒を、前記胴体の底部に貯留されたオイルと共に冷媒流出孔3eに導く冷媒吐出管5とを備える気液分離器1において、気液分離部材7は、冷媒流入孔3dから流入した冷媒を整流化するため、冷媒流入孔に対向する面に、冷媒流入孔側に漸次突出する凸状部7aを有する。気液分離部材の凸状部を冷媒流入孔側に円錐状に突出させることができ、気液分離部材の凸状部の頂部を冷媒流入孔内に位置させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に関し、特に、冷凍サイクルを循環する冷媒等を気液分離して貯留する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記気液分離器の一例として、特許文献1には、冷媒流入孔が設けられたヘッダと、ヘッダの下方に配置された有蓋円筒状の分離部と、冷媒流出孔が設けられた胴体と、胴体内に収容されたパイプ等で構成され、冷媒流入孔から流入した冷媒が、分離部により気液分離され、気液分離後のガス冷媒がパイプを介して冷媒流出孔から流出する気液分離器が開示されている。
【0003】
また、上記気液分離器とは異なる構造を有する気液分離器として、図4に示すように、有底筒状の胴体22と、この胴体22の上部開口端を封止するヘッダ23と、胴体22の内部に配置された筒状の冷媒吐出管25と、冷媒吐出管25を囲繞する冷媒吸込管24と、冷媒吸込管24の下端部に形成されたオイル戻し穴24aを囲繞するように胴体22の底面22a上に配置されたストレーナ26と、下方に開口するカップ状の気液分離部材27等を備える気液分離器が用いられている。
【0004】
上記気液分離器21において、蒸発器等からヘッダ23の冷媒流入孔23dを介して胴体22の内部に流入した冷媒は、気液分離部材27によって気液分離され、分離された液冷媒、及び冷媒中に含まれていたコンプレッサオイル(圧縮機用の潤滑油、以下「オイル」という)は、そのまま直進下降して胴体22の内部に貯留される。その後、液冷媒Lとオイルとの分離が進み、オイルは液冷媒Lの下方に溜まる。
【0005】
一方、気液分離部材27によって分離されたガス冷媒は、胴体22の内部の液冷媒Lに合流する前に上方へ移動し、冷媒吸込管24の上部開口から冷媒吸込管24の内部に進入し、冷媒吸込管24の内周面と冷媒吐出管25の外周面との間を下降した後、一旦冷媒吸込管24の下端部に達し、オイル戻し穴24aから液冷媒Lの下方に溜まったオイルを吸引しながら上方へ折り返して冷媒吐出管25の内部を上昇し、ヘッダ23の冷媒流出孔23eからオイルを含んだガス冷媒が排出され、圧縮機へ戻される。また、冷媒に含まれていた異物は、上記液冷媒と同様のルートにて胴体22の底部に達し、ストレーナ26によって捉えられ、圧縮機への異物の侵入を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の気液分離器21においては、冷媒流入孔23dから流入する高圧の冷媒は、図5において矢印で示すように、気液分離部材27の上面に衝突した後、この上面とヘッダ23の下面との間で衝突を繰り返して気泡となり、これによって、冷媒の気液分離性が悪化し、冷凍能力が低下するおそれがあると共に、オイルがオイル戻し穴24aから冷媒吐出管25を経て圧縮機に戻り難くなり、さらに、気液分離部材27における圧力損失が大きくなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の気液分離器における問題点に鑑みてなされたものであって、冷媒の気液分離性の悪化に伴う冷凍能力の低下を招くことなく、気液分離部材の圧力損失を低減可能な気液分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、一端が開口した筒状の胴体と、該胴体の前記開口端を封止し、冷媒流入孔が穿設されたヘッダと、該ヘッダの前記冷媒流入孔から流入した冷媒を気液分離する気液分離部材と、該気液分離部材によって分離されたガス冷媒を、前記胴体の底部に貯留されたオイルと共に冷媒流出孔に導く冷媒吐出管とを備える気液分離器において、前記気液分離部材は、前記冷媒流入孔から流入した冷媒を整流化するため、前記冷媒流入孔に対向する面に整流部を有することを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、気液分離部材に整流部を設けたため、冷媒流入孔から流入する高圧の冷媒を整流化し、気液分離部材の冷媒流入孔に対向する面における気泡の発生を防止することができる。これによって、冷媒の気液分離性の悪化に伴う冷凍能力の低下や、オイルが圧縮機に戻り難くなることを回避し、圧力損失を低減することもできる。
【0011】
上記気液分離器において、前記気液分離部材の整流部を、前記冷媒流入孔側に円錐状に突出させることができる。
【0012】
また、上記気液分離器において、前記気液分離部材の整流部の頂部を、前記冷媒流入孔内に位置するように構成してもよい。これにより、筒状の胴体のより上方で冷媒の整流化を行うことができるため、冷媒の流入速度の低い状態で気液分離を行うことができ、冷媒の気液分離性をより向上させることができる。また、胴体の内容積を実質的に拡大することができる。
【0013】
上記アキュムレータにおいて、前記整流部を前記気液分離部材と一体成形することができ、部品点数及び組立工数を削減してアキュムレータの製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、冷媒の気液分離性の悪化に伴う冷凍能力の低下を招くことなく、オイルが圧縮機に戻り難くなることを回避し、気液分離部材の圧力損失を低減可能な気液分離器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる気液分離器の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の気液分離器の気液分離部材及びその近傍を示す拡大断面図である。
【図3】本発明にかかる気液分離器の第2の実施形態の気液分離部材及びその近傍を示す断面図である。
【図4】従来の気液分離器の一例を示す断面図である。
【図5】図4の気液分離器の気液分離部材及びその近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる気液分離器の第1の実施形態を示し、この気液分離器1は、有底筒状の胴体2と、この胴体2の開口端を封止するヘッダ3と、胴体2の内部に配置された筒状の冷媒吐出管5と、冷媒吐出管5を囲繞する冷媒吸込管4と、冷媒吸込管4の下端部に形成されたオイル戻し穴4aを囲繞するように胴体2の底面2a上に配置されたストレーナ6と、下方に開口するカップ状の気液分離部材7等で構成される。
【0018】
胴体2は、アルミニウム合金等の金属からなり、有底円筒状で上部が開口する瓶状に形成される。上述のように、胴体2の上部開口はヘッダ3によって封止され、胴体2の内部には、冷媒吸込管4、冷媒吐出管5、ストレーナ6及び気液分離部材7が収容される。
【0019】
ヘッダ3は、アルミニウム合金等の金属からなり、円板状の基部3aと、基部3aから下方に突出する円筒状の下部3cとで構成され、これらを冷媒流入孔3d及び冷媒流出孔3eが上下方向に貫通する。上面3bには、冷媒流入孔3d及び冷媒流出孔3eに嵌合する配管をヘッダ3に装着するための雌ねじ部(不図示)が螺設される。
【0020】
冷媒吐出管5は、アルミニウム合金等の金属からなり、冷媒吸込管4の内部に軸線方向に延設されたリブ等(不図示)によって冷媒吸込管4内に圧入固定される。冷媒吐出管5のの上端部5aは冷媒流出孔3eの下部に圧入固定される。
【0021】
冷媒吸込管4は、冷媒吐出管5を囲繞し、上端部が開口すると共に、下端部にオイル戻し穴4aが形成される。
【0022】
ストレーナ6は、冷媒吸込管4の下端部の下方に位置し、オイル戻し穴4aを囲繞した状態で胴体2の底面2a上に固定される。
【0023】
気液分離部材7は、ヘッダ3と一体に樹脂又は金属により成形され、上面に上方に突出する円錐状部7aを備える。この円錐状部7aの頂部は、上方のヘッダ3の冷媒流入孔3dの中心線上に存在し、冷媒流入孔3dから流入する冷媒を放射状に整流化する。
【0024】
次に、上記構成を有する気液分離器1の動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、気液分離器1を冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に配置し、蒸発器からの冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、液冷媒を気液分離器1内に貯留し、ガス冷媒を圧縮機へ戻す場合(所謂アキュムレータ)を例にとって説明する。
【0025】
蒸発器からの冷媒は、ヘッダ3の冷媒流入孔3dから胴体2の内部に流入した後、気液分離部材7に衝突して気液分離される。この際、上述のように、気液分離部材7の上面に上方に突出する円錐状部7aが設けられているため、冷媒は放射状に整流され、図2に示すように、滑らかに気液分離部材7の上面及び側面を整流化された状態で移動する。これによって、気液分離部材7の上面での気泡の発生を防止することができ、冷媒の気液分離性の悪化に伴う冷凍能力の低下や、オイルが圧縮機に戻り難くなることを回避し、圧力損失を低減することもできる。
【0026】
気液分離部材7によって分離された液冷媒、及び冷媒中に含まれていたオイルは、図1に示すように、そのまま直進下降して胴体2の内部に貯留される。その後、液冷媒Lとオイルとの分離が進み、オイルは液冷媒Lの下方に溜まる。
【0027】
一方、ガス冷媒は、胴体2の内部の液冷媒Lに合流する前に上方へ移動し、冷媒吸込管4の上部開口から冷媒吸込管4の内部に進入し、冷媒吸込管4の内周面と冷媒吐出管5の外周面との間を下降した後、一旦冷媒吸込管4の下端部に達し、オイル戻し穴4aから液冷媒Lの下方に溜まったオイルを吸引しながら上方へ折り返して冷媒吐出管5の内部を上昇し、ヘッダ3の冷媒流出孔3eからオイルを含んだガス冷媒が排出され、圧縮機へ戻される。また、冷媒に含まれていた異物は、上記液冷媒と同様のルートにて胴体2の底部に達し、ストレーナ6によって捉えられる。
【0028】
次に、本発明にかかる気液分離器の第2の実施形態について、図3を参照しながら説明する。
【0029】
この気液分離器11は、図1に示した気液分離器1の気液分離部材7全体を上方に移動させ、円錐状部7aの頂部が冷媒流入孔3dの内部に位置するように構成したものである。これにより、胴体2のより上方で冷媒の整流を行うことができるため、冷媒の流入速度の低い状態で気液分離を行うことができ、冷媒の気液分離性をより向上させることができる。また、胴体2の内容積を実質的に拡大することができる。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、気液分離部材7の上面に冷媒を整流化するための凸状部として円錐状部7aを設けたが、この凸状部は円錐状に限定されることなく、例えばドーム状でもよく、冷媒流入孔3dの方向に漸次突出して冷媒を整流化することができるすべての凸状部を含む。
【0031】
また、上記実施の形態においては、冷媒吸込管4と冷媒吐出管5とが二重管状に形成され、ヘッダ3の冷媒流入孔3dと冷媒流出孔3eの両方を備えた気液分離器1、11に本発明を適用した場合について説明したが、特許文献1に記載の気液分離器のように、胴体の上方開口端部に配置されたヘッダに冷媒流入孔が設けられ、胴体の下部に冷媒流出孔が穿設された構成を有する気液分離器等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 気液分離器
2 胴体
2a 底面
3 ヘッダ
3a 基部
3b 上面
3c 下部
3d 冷媒流入孔
3e 冷媒流出孔
4 冷媒吸込管
4a オイル戻し穴
5 冷媒吐出管
5a 上端部
6 ストレーナ
7 気液分離部材
7a 円錐状部(整流部)
11 気液分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した筒状の胴体と、該胴体の前記開口端を封止し、冷媒流入孔が穿設されたヘッダと、該ヘッダの前記冷媒流入孔から流入した冷媒を気液分離する気液分離部材と、該気液分離部材によって分離されたガス冷媒を、前記胴体の底部に貯留されたオイルと共に冷媒流出孔に導く冷媒吐出管とを備える気液分離器において、
前記気液分離部材は、前記冷媒流入孔から流入した冷媒を整流化するため、前記冷媒流入孔に対向する面に整流部を有することを特徴とする気液分離器。
【請求項2】
前記気液分離部材の整流部は、前記冷媒流入孔側に円錐状に突出することを特徴とする請求項1に記載の気液分離器。
【請求項3】
前記気液分離部材の整流部の頂部は、前記冷媒流入孔内に位置することを特徴とする請求項2に記載の気液分離器。
【請求項4】
前記整流部を前記気液分離部材と一体成形したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108709(P2013−108709A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255872(P2011−255872)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)