説明

気液分離装置および気液分離装置を備えた冷凍装置。

【課題】 表面張力効果により気液分離装置のより一層の高性能化、小形化が図れる気液分離装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
気液二相流を気相と液相に分離させる気液分離装置において、気液二相流の入口管後流に入り口仕切り体をもって作られる狭小空間を構成し、入り口仕切り体の一部は溝付き面の溝頂部に概略接し、入り口仕切り体の後流に急拡大部を設け、気液二相流を該狭小空間を通した後で気液分離室に導き、溝付き面で液相は表面張力の効果により溝内に保持され溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行く気液分離機構を持ち、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下、二相流のボイド率をβ、液相が流れる溝の流路断面積をSl、気相が流れる流路断面積をSg、としたとき、Sg/(Sg+Sl)≦βとする気液分離機構とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷凍サイクルや蒸気サイクル等の熱機関の気液分離装置に関し、詳細には、より一層の高性能化並びに小形化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍サイクルで使用される気液分離装置としては、重力によって液を溜めるタンクを用いたり、旋回流の遠心力によって液相を外壁に付着させ、重力によって液を回収する気液分離装置等が用いられている。
又、上記気液分離を重力場のみならず微少重力あるいは無重力環境でも気液分離が出来るよう濡れ性の良い面と悪い面を作り、気液を分離することが出来るようにした提案もあるが、このものに於いては気液を効率良く分離する手段は開示されていなかった。換言すると気液が混合された状態で排出路2(本来なら気相主体)に供給されてしまっていた。
【0003】
かかる構成の気液分離装置では、基本的に重力や遠心力などの体積力によって密度の大きい液相を分離する構造となっている。このため、気液分離装置の設置位置や向きに自由度が少ない上、タンクや旋回流発生装置を用いるため大形の装置となっている。更には気液を効率良く分離する手段が示されていないものであった。
【特許文献1】特許公開平11−3722号公報
【特許文献1】特許公開2003−114293号公報
【特許文献1】特許公開2002−204905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の気液分離装置では、密度の大きな液相を重力や遠心力などの体積力で分離する構造となっているため、体積力が支配的となるように設置方向と重力方向とをマッチングさせる必要があったり、また旋回流れや曲がり流れのような加速度を伴う流れを発生させるなどの工夫が必要であった。
【0005】
これらは、重力方向に距離を確保したタンクが必要である、あるいは旋回流れを用いる場合は旋回羽根が必要である。また、曲がり流れを発生させるために仕切り板によって流れの向きを変える必要がある。このため、装置が大形なものとなり、小形化が困難であった。又、濡れ性を利用する気液分離装置にあっては液体を濡れ性の良い所に、気体を濡れ性の悪い所に効率良く供給する手段は開示されていなかった。
【0006】
装置を小形化しようとする場合には、遠心力や重力等の体積力に対して粘性力や表面張力等の影響が無視できなくなるため、装置自体の気液分離特性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、表面張力効果を用いることで、気液分離装置をより高性能化並びに小形化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、気液二相流の入口管後流に入り口仕切り体をもって作られる狭小空間を構成し、入り口仕切り体の一部は液相取り出し側出口管に向かう溝付き面の溝頂部に概略接し、入り口仕切り体の後流に急拡大部を設け、気液二相流を該狭小空間を通した後で急拡大室に導き、上記気液二相流を気相と液相に分離する気液分離機構を持つことを特徴とする。なお、上記した概略接しとは、設計上では接するように設計しても、実際には加工上の寸法公差により入り口仕切り体と溝頂部がわずかに離れ、近接状態にある場合を含めたことを意味する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気液分離装置であって、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下とし、表面張力支配型にした気液分離機構を持つことを特徴とする。ここに、σは表面張力、gは重力加速度、ρは密度である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の気液分離装置であって、二相流のボイド率をβ、液相が流れる溝の流路断面積をSl、気相が流れる流路断面積をSgとしたとき、Sg/(Sg+Sl)≦βとすることにより、液相が溝から溢れないようにした気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、急拡大部の上流側に抵抗体を充填した気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、急拡大部の上流側に案内ベーンを設けた気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置において、急拡大部の下流側溝付き面に流れと垂直の横幅方向にも貫通する溝を設けた気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、溝付き面を円筒内面に形成した気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、溝付き面を円筒外面に形成した気液分離機構を持つことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置を冷凍サイクルの減圧器の下流に設けたことを特徴とする気液分離装置を備えた冷凍装置である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、溝付き面から構成される蒸発器において、請求項1から請求項3に記載の気液分離機構をその上流に配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の蒸発器において、急拡大部の上流または下流に、溝に流入する二相流を各溝に均等に配分する流路構成体を配置したことを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項10または請求項11に記載の蒸発器を備えた冷凍装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の気液分離装置によれば、急拡大部の上流に入り口仕切り体を持って狭小空間を作ると共に入り口管より導かれた気液二相流を該狭小空間を通した後で急拡大部に導き、気液二相流が急拡大部に至ると、急に流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなる。入り口仕切り体で作る狭小空間で気液二相流を急拡大部の溝付き部に供給する傾向付けをするので、液相は表面張力の作用により溝内に保持され流れる。このとき気相は液相より分離し溝外に出て行くため、二相流は確実に気液に分離される。急拡大部の下流側の溝内に保持され流れる液相と溝外の気相の界面は凹面となり、その曲率半径が小さい場合は大きな表面張力が発生し、重力よりも表面張力が支配的になり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、気液分離装置の取り付け姿勢にかかわらず安定した気液分離装置が実現できる。
【0021】
また、請求項2に記載の気液分離装置によれば、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下としているため、表面張力の効果が非常に強くなり、より効果的な気液分離を実現することができる。
【0022】
請求項3に記載の気液分離装置によれば、二相流のボイド率をβ、液相が流れる溝の流路断面積をSl、気相が流れる流路断面積をSg、としたとき、 Sg/(Sg+Sl)≦βとしているので、液が溝から溢れることがなく、有効に気液分離を行うことができる。
【0023】
請求項4に記載の気液分離装置によれば、急拡大部の上流側の溝頂部と入り口仕切り体が接している部分の上流の狭小空間内に抵抗体を充填しているので、拡大面に至る間に流れの偏流が抑えられ、より一様な気液分離を実現できる。
【0024】
請求項5に記載の気液分離装置によれば、急拡大部の上流側の溝頂部と入り口仕切り体が接している部分の上流の狭小空間内に案内ベーンを設けたので、拡大面に至る間に流れの偏流が抑えられ、より一様な気液分離を実現できる。
【0025】
請求項6に記載の気液分離装置によれば、急拡大部の下流側溝付き面に流れと垂直の横幅方向にも貫通する溝を設けることで、拡大部下流側で気液分離が実現された後で、液相のみを幅方向に分配することが可能となり、より広い範囲で一様な気液分離を実現できる。
【0026】
請求項7および請求項8に記載の気液分離装置によれば、管加工技術を活用することにより、小形で安価で、良好な気液分離装置を実現できる。
【0027】
請求項9に記載したように、請求項1から請求項3に記載の気液分離装置を冷凍サイクルの減圧器の下流に設けたことを特徴とする冷凍装置によれば、蒸発器には液相冷媒が主体に供給されるので空気温度が低い場合でも蒸発器圧力損失を抑えることができ、圧縮機吸い込み圧力の低下を軽減できるので高効率な運転ができる。また、1段目と2段目の二つのシリンダを持つ圧縮機および1段目と2段目の二つの減圧器を持つ冷凍サイクルの1段目の減圧器下流に気液分離装置を設けることにより、気液分離装置で分離された気相冷媒は気相取り出し側出口管から第二のシリンダに吸い込まれるため、気液分離装置で分離された蒸発に寄与しない気相冷媒は第一のシリンダで圧縮する必要が無く、圧縮動力が節減でき、高効率な運転を可能にできる。
さらに、本発明の気液分離装置は重力に関係なく表面張力の作用でその機能を果たすため、気液分離装置設置の向きおよび位置の自由度が大きいという効果が得られる。
【0028】
請求項10に記載の溝付き面から構成される蒸発器によれば、請求項1から請求項3に記載の気液分離機構を配置しているため、液相は溝内を流れ、溝内を流れる液相の液面は表面張力の作用により円弧状になるため溝頂部付近で溝壁面に接する液膜は極めて薄くなる。蒸発現象における熱抵抗は液膜の厚さに大きく依存するため、液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、本発明の気液分離機構を蒸発器に適用することで極めて高い性能の蒸発器が構成される。
【0029】
請求項11に記載の蒸発器によれば、溝に流入する二相流を各溝に均等に配分する流路構成体を配置したため、液相が各溝に一様に供給される。蒸発器にあっては、液相が各溝に一様に供給されることが性能低下に直結するドライアウトを避けるうえで非常に重要であり、この理由により、蒸発器の性能が安定して発揮できるようになる。
【0030】
請求項12に記載の本発明の蒸発器を備えた冷凍サイクルによれば、溝付き面溝頂部の液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、効率的な被冷却体の冷却が可能になる。また、本発明の気液分離機構を適用しているため、表面張力が支配的であり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、蒸発器の取り付け姿勢にかかわらず極めて高い性能の被冷却体の冷却が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
「第1の実施の形態」
図1は第1の実施の形態の気液分離装置全体像を示す斜視図である。図2は図1に示す気液分離装置のB−B断面図である。基本実施の形態の気液分離装置は、図2に示すように気液二相流は入口管5から気液分離室に流入し、入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12に流入し、溝付き面2と概略接している入り口仕切り体16との間を流れ、急拡大部3で入り口仕切り体16は溝頂部30から離れ、その結果流路断面積が拡大する。入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12で気液二相流を急拡大部3後流の溝付き面2の溝部に供給する傾向付けをするので、液相は表面張力の作用により溝内に保持され流れる。このとき、急拡大部3で急に流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行くため、二相流は確実に気液に分離される。この気液分離手段を気液分離機構と言う。
流路壁1と溝付き面2とで挟まれた流路で気液分離された後、分離された気相と液相が混じり合わないように仕切り板4で気相と液相の流路が分けられ、気相取り出し側出口6から気相が、液相取り出し側出口7から液相が流出する。
【0033】
図3は図1に示す気液分離装置のA−A断面図である。本実施の形態の気液分離装置では、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下とする気液分離機構を持っている。このことで、重力よりも表面張力が支配的となり、急拡大部3の下流側の溝内には、液相だけが保持され、気相は拡大した流路壁1側を流れる。このことで重力方向にかかわらず良好な気液分離性能が得られる。
なお、図3には三角形断面の溝を示したが、溝の断面形状は図4または図5に示すような形状でも良い。図4は溝底部が平らになっている場合であり、図5は溝頂部が平らになっている場合である。この他に色々な断面形状の溝が考えられるが、いづれの場合も溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下とすることで、重力よりも表面張力が支配的となり、急拡大部3の下流側の溝内には、液相だけが保持され、気相は拡大した流路壁1側を流れ、重力方向にかかわらず良好な気液分離性能が得られる。
【0034】
また、図3において、拡大部の溝頂部30から流路壁1までの距離hは二相流のボイド率βを用いて決められる。すなわち、ボイド率とは全流路断面積に占める気相断面積の割合であり、気相断面積をSg、液相断面積をSlとしたとき、
Sg/(Sg+Sl)≦β ……………………式1
とする気液分離機構を持つことにより液相は溝内に保持され、液溢れが生じない。すなわち、溝幅をw、三角形溝の底角をθ、溝頂部から流路壁までの距離をhとしたとき、
Sg=h・w ……………………式2
Sl=w/(4・tan(θ/2)) ……………………式3
となる。ここで式2、式3を式1に代入し、整理するとhは次式となる。

【0035】
ここで、例えば溝形状を底角90度の直角三角形とした場合には、全流路断面積に占める溝以外の領域の断面積の比はw・h/(w・h+w/4)となる。
従って、w・h/(w・h+w/4)≦β、即ち、h≦{β/4(1−β)}w のとき、液相は溝内に保持され液溢れが生じない。ボイド率βの算出に当たっては、例えば有名なSmithの式を用いれば乾き度χと気液密度比ρ/ρの関数で表すことができることが知られている。

【0036】
図6は、溝付き面を重力方向下向きに向け、水平方向に冷媒R123を流した場合の気液分離特性試験結果を示す。横軸は、入口質量流量W入口に対する液相取り出し側出口の質量流量W液相側出口の比であり、縦軸は入口乾き度χ入口に対する液相取り出し側出口の乾き度χ液相側出口の比である。図中の実線は、入口から流入した全ての液が液相取り出し側出口から流出した場合を表す。液相は重いので通常であれば液は重力方向に落下し、気相取り出し側出口に流れてしまうはずであるが、本実施の形態の気液分離装置においては、液は溝内に保持される結果、液が液相取り出し側出口に良好に気液分離されていることがわかる。
【0037】
「第2の実施の形態」
図7には第2の実施の形態の気液分離装置の断面図を示す。図8は図7のA−A部を上方から見た流路図である。急拡大部の上流側の入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12に気液分離機構の一部として金網や多孔質体を抵抗体8として充填している。抵抗体の上流側、すなわち、入り口管5が狭小空間12に開口する位置では二相流は流れ方向の運動量を有しているが、抵抗体の前後の静圧差が、流入する流れの動圧に比べ十分に大きい場合は、抵抗体を通過する流れの幅方向の偏流は小さくなり、溝付き面幅方向に一様な流れを溝付き面2へ導くことができる。すなわち、上記した抵抗体8がない場合には入り口管5から流入した二相流は溝付き面2の中心近くに集中して流れようとする傾向になり、急拡大部3で流路断面積の拡大により流速が低下し、液相冷媒が溝内に沿って流れるとき、液相冷媒が溝から溢れる傾向になり、溝付き面2での気液分離に支障をきたす。したがって、上記抵抗体を充填することにより、幅方向の偏流を小さくし、溝付き面幅方向に一様な流れを溝付き面2へ導くことにより良好な気液分離を行うことができる。
「第3の実施の形態」
【0038】
図9には第3の実施の形態の気液分離装置の断面図を示す。図10は図9のA−A部を上方から見た流路図である。ここでは、急拡大部3の上流側の入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12に気液分離機構の一部として入り口管5から流入した二相流を溝付き面幅方向に一様な流れを溝付き面2へ導くための案内ベーン9が設けられている。案内ベーン9は入り口管5付近から溝付き面2の入り口近くまで、二相流が溝付き面幅方向に広がるように設置されており、入口管5から流入した二相流は、案内ベーン9に沿って溝付き面2の幅方向に一様に導かれる。
「第4の実施の形態」
【0039】
図11には第4の実施の形態の気液分離装置の断面図を示す。図12は図11のA−A部を上方から見た流路図である。本実施の形態の気液分離装置では、二相流は入り口管5から狭小空間12に流入し、入り口溝45を通り急拡大部3で流路断面積の拡大により流速が低下し、液相冷媒が横方向溝部10内に保持され表面張力の作用により横方向に広がり流れ、気相冷媒は横方向溝部10の外側に出ることにより液相のみが横方向溝部10へと導入される気液分離機構を持っている。横方向溝部10では、液相は表面張力の効果によって横方向へ有効に広がり、部分的に設けられた多数の横突起部11の間の流路を通り次の横方向溝部へと流れる。最終的に液相が溝付き面2の幅方向に一様になった位置で溝付き面2へと導かれる。このようにすれば、幅が広い溝付き面であっても一様に液相を分配することが出来る。
第2の実施の形態および第3の実施の形態では、急拡大部3の上流で二相流を溝付き面2の幅方向に一様に流す手段を提供しているのに対して、第4の実施形態は急拡大部3の下流側で横方向溝部10内に保持された液相冷媒を溝付き面2の幅方向に一様に流す手段を提供している。
なお、図12では入り口溝45を溝付き面2の溝とその幅が異なる場合を図示したが、両者の溝形状は同じでも良い。
「第5の実施の形態」
【0040】
図13には第5の実施の形態の気液分離装置の断面図を示す。図14は図13のA−A部を上方から見た流路図である。本実施の形態の気液分離装置では、急拡大部3の下流に多数の菱形突起部13を構成し、それら菱形突起部13の間に斜め溝46を構成している。二相流は入り口管5から狭小空間12に流入し、入り口溝45を通り急拡大部3で流路断面積の拡大により流速が低下し、液相冷媒が斜め溝46内に保持され表面張力の作用により斜め横方向に広がり流れ、気相冷媒は斜め溝46の外側に出ることにより液相のみが斜め溝46へと導入される気液分離機構を持っている。液相冷媒は表面張力の作用により次々と斜め溝を通り横方向に広がり、最終的に液相が溝付き面2の幅方向に一様になった位置で溝付き面2へと導かれる。このようにすれば、幅が広い溝付き面であっても一様に液相を分配することが出来る。
第5の実施形態も急拡大部3の下流側で斜め溝46内に保持された液相冷媒を溝付き面2の幅方向に一様に流す手段を提供している。
なお、図14では入り口溝45を溝付き面2の溝とその幅が同じ場合を図示したが、両者の溝形状は異なっても良い。
「第6の実施の形態」
【0041】
図15では第6の実施形態の気液分離装置の断面図を示す。また、図16では図15のA−A断面を示す。図16において溝は円周の全周に設けているが、簡単のためにその一部を図示している。本実施形態の気液分離装置では溝付き面を円筒面の外面に構成した場合であり、ローレット加工法等により管に後加工で溝を加工できる。図15の構成は、入り口管5と、外管15と一体で構成される入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12が構成され、狭小空間12内に抵抗体8が設けられている。入り口仕切り体16の下流側は溝付き面2の溝頂部に概略接し、急拡大部3から下流では溝付き面2と外管15の間に環状流路が形成されている。溝付き面2の下流はその溝頂部が外管15と一体となっている仕切り板4相当に概略接し、環状流路には気相取り出し側出口管6が、仕切り板4相当側には液相取り出し側出口管7が接続されている。
二相流は入り口管5に設けた複数の放射状穴14から狭小空間12内に流入し、抵抗体8を通過することにより円周方向に一様に分配される。抵抗体8を通過した二相流は狭小空間12により溝付き面2の溝に二相流が流入するように傾向付けられており、二相流は溝付き面2の溝に流入する。急拡大部3で流路壁1は溝頂部から離れ、その結果流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行く気液分離機構となっている。
流路壁1と溝付き面2とで挟まれた環状流路で気液分離された後、液相は表面張力の効果により溝内に保持され流れる。溝付き面2の下流において、外管15と一体となっている仕切り板4相当は溝頂部に概略接しているため、溝内に保持され流れる液相は液相取り出し側出口管7より取り出され、気相は気相取り出し側出口管6より取り出され、良好に気液分離される。
「第7の実施の形態」
【0042】
図17では第7の実施形態の気液分離装置の断面図を示す。また、図18では図17のA−A断面を示す。図17において溝は円周の全周に設けているが、簡単のためにその一部を図示している。本実施形態の気液分離装置では溝付き面を円筒面の内面に構成した場合であり、予め管内面に溝加工を行った管を使用すると良い。図17の構成は、溝付き面2と一体となっている管47と入り口仕切り体16をもって作られる環状の狭小空間12が構成され、狭小空間12内に環状の抵抗体8が設けられている。本実施の形態では狭小空間12がその上流側が下流側よりも厚めにした場合を示している。
入り口仕切り体16の下流側は溝付き面2の溝頂部に概略接し、急拡大部3から下流では溝付き面2に囲まれた流路が形成されている。溝付き面2の下流はその溝頂部が気相取り出し側出口管6と一体となっている仕切り板4相当に概略接し、管47と気相取り出し側出口管6により形成される環状流路には液相取り出し側出口管7が接続されている。
二相流は入り口管5から入り、抵抗体8を通過することにより円周方向に一様に分配される。抵抗体8を通過した二相流は狭小空間12により溝付き面2の溝に二相流が流入するように傾向付けられており、二相流は溝付き面2の溝に流入する。急拡大部3で流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行く気液分離機構となっている。
溝付き面2で囲まれた流路で気液分離された後、液相は表面張力の効果により溝内に保持され流れ、溝部下流において気相取り出し側出口管6と一体となっている仕切り板4相当は溝頂部に概略接しているため、溝内に保持され流れる液相は液相取り出し側出口管7より取り出され、気相は気相取り出し側出口管6より取り出される。
本実施例のように管内面に溝を設けることにより、小型で大きな流量の二相流の気液分離が可能になる。すなわち、二相流の流量が増大するに従いフローパターンは環状流になる性質があり、液相は確実に溝に沿い流れ、良好に気液分離される。
【0043】
第1の実施例から第6の実施例においては溝頂部30から流路壁1までの距離hは式4となるが、第7の実施例のように溝を管内面に設けた場合には、全流路断面積に占める気相断面積の割合は近似的に以下のようになる。すなわち、図19に示すように液相が流れる一つの溝▽BCDに対応する気相が流れる部分は△OCDとなり、気相断面積Sg、液相断面積Slはそれぞれ次式となる。

式6と式7を式1に代入し、

ここに、γはsin(γ/2)=w/(2・R)で定義される。式8より気相が流れる溝頂点仮想円の半径Rが数値解として求められる。図3に示す平面溝を溝が管内面になるように丸めていき、円管になると、図3の流路壁1は等価的に図19に示す溝頂点仮想円の中心線Oとなり、溝付き面2を円筒面の内面に構成した場合には上記より求められるRが溝頂部から流路壁までの距離hと物理的意味で等価になる。
「第8の実施の形態」
【0044】
図20は第8の実施の形態として、上記した気液分離装置を冷凍サイクルに使用した場合の第一の冷凍サイクル構成図である。図20に示した冷凍サイクル構成図には本実施形態を説明するために必要な基本的構成要素を示している。すなわち、圧縮機17は第一のシリンダ18と第二のシリンダ19を有し、圧縮機で吸い込んだ低温低圧の気相冷媒は第一のシリンダ18と第二のシリンダ19で二段に圧縮され高温高圧気相冷媒となり冷媒吐出管20を経て、凝縮器21で凝縮器用送風機22で送られる空気に放熱し、低温高圧液冷媒となる。その液冷媒は第一の減圧器23で減圧され二相流となり、入り口管5から気液分離装置33に流入し、液相冷媒は液相取り出し側出口管7から第二の減圧器24でさらに減圧され、蒸発器25に入り蒸発器用送風機26で送られる空気から熱を奪い低温低圧の気相冷媒となり、圧縮機17に吸い込まれる。一方、気液分離装置33で分離された気相冷媒は気相取り出し側出口管6から第二のシリンダ19に吸い込まれるため、気液分離装置33で分離された蒸発に寄与しない気相冷媒は第一のシリンダ18で圧縮する必要が無く、圧縮動力が節減でき、高効率な運転を可能にできる。
「第9の実施の形態」
【0045】
図21は第9の実施の形態として、上記した気液分離装置を冷凍サイクルに使用した場合の第二の冷凍サイクル構成図である。図21に示した冷凍サイクル構成図には本実施形態を説明するために必要な基本的構成要素を示している。すなわち、圧縮機17は第一のシリンダ18のみを有し、圧縮機で吸い込んだ低温低圧の気相冷媒は第一のシリンダ18で圧縮され高温高圧気相冷媒となり冷媒吐出管20を経て、凝縮器21で凝縮器用送風機22で送られる空気に放熱し、低温高圧液冷媒となる。その液冷媒は第一の減圧器23で減圧され二相流となり、入り口管5から気液分離装置33に流入し、液相冷媒は液相取り出し側出口管7から蒸発器25に入り蒸発器用送風機26で送られる空気から熱を奪い低温低圧の気相冷媒となり、圧縮機17に吸い込まれる。一方、気液分離装置で分離された気相冷媒は気相取り出し側出口管6から蒸発器バイパス管27を経て圧縮機17に吸い込まれる。
【0046】
気液分離装置33を用いない場合には、減圧器23で減圧された二相流の気相冷媒も蒸発器に流入するため、特に、蒸発器用送風機26で送られる空気温度が低い場合には蒸発圧力が低下し、気相冷媒の密度は小さくなり体積流量が大きくなるため、蒸発器25での圧力損失が大きく蒸発器25の出口圧力、即ち、圧縮機吸込み圧力が低下するため、圧縮動力が増大し、高効率な運転ができなくなる。
それに対して、本実施例で示したように気液分離装置33を設け、分離された気相冷媒を気相取り出し側出口管6から蒸発器バイパス管27を経て圧縮機17に吸い込ませることにより、蒸発に寄与しない気相冷媒は蒸発器25に流入しないため蒸発器25での圧力損失を抑えることができ、圧縮動力が節減でき、高効率な運転を可能にできる。
【0047】
従来、冷凍サイクルで使用される気液分離装置としては、重力によって液を溜めるタンクを用いたり、旋回流の遠心力によって液相を外壁に付着させ、重力によって液を回収する気液分離装置等が用いられていたが、かかる構成の気液分離装置では、基本的に重力や遠心力などの体積力によって密度の大きい液相を分離する構造となっているため、気液分離装置の設置位置や向きに自由度が少ない上、タンクや旋回流発生装置を用いるため大形の装置となっていたが、本発明の気液分離装置を使用することにより、小形で、設置位置や向きの自由度が大きい効果を発揮しながら、上記第8の実施例、第9の実施例で述べたように高効率な運転を可能にできる。
「第10の実施の形態」
【0048】
図22には第10の実施の形態として、気液分離装置をマイクロチャネルリアクタに使用した場合のシステム構成図を示す。マイクロチャネルリアクタ34はその中にマイクロスケールの反応部38有し、微少量の原料を正確に制御された条件で反応させるものである。図22の実施例では、試薬A容器35と試薬B容器36から試薬Aと試薬Bをポンプ37によりマイクロチャネルリアクタ34のマイクロスケールの反応部38に送り反応させ、反応生成物ABを得る。試薬Aと試薬Bをマイクロチャネルリアクタ34に送るとき、それらの試薬液の中に気泡が混入していると、反応部38はマイクロスケールであるため液流量が変動したり閉塞等の問題が発生する可能性があるため、マイクロチャネルリアクタ34に入る手前に気液分離装置33を設ける。気液分離装置33の入口管5から試薬が流入し、気体成分は分離され、気相取り出し側出口管6より流出し、液体のみが液相取り出し側出口管7より流出しマイクロチャネルリアクタ34に供給される。この気液分離装置としては例えば図2に示した気液分離装置が用いられる。
なお、図22には試薬を送る手段としてポンプ37を示したが、試薬を送る手段として他の圧力源または重力でもよい。
「第11の実施の形態」
【0049】
図23には第11の実施の形態として、気液分離装置をマイクロチップ培養槽に使用した場合のシステム構成図を示す。通常の細胞培養槽としてはシャーレ等が使用されるが、きわめて微細な細胞を培養するにはシャーレ等では大きすぎ、単一細胞や可算個の細胞を扱う実験にはマイクロチップ培養槽40が使用される。マイクロチップ培養槽40内のマイクロチップ培養槽流路44には培養する細胞41が入れられており、細胞の培養に必要な栄養分と酸素を供給し、さらに培養により発生する老廃物を除去するため、マイクロチップ培養槽40には灌流液容器42からポンプ37により灌流液が送られ、灌流液排出管43から排出される。灌流液をマイクロチップ培養槽40に送るとき灌流液の中に気泡が混入していると、マイクロチップ培養槽流路44はマイクロスケールであるため液流量が変動したり閉塞等の問題が発生する可能性があるため、マイクロチップ培養槽40に入る手前に気液分離装置33を設ける。気液分離装置33の入口管5から灌流液が流入し、気体成分は分離され、気相取り出し側出口管6より流出し、液体のみが液相取り出し側出口管7より流出しマイクロチップ培養槽40に供給される。この気液分離装置としては例えば図2に示した気液分離装置が用いられる。
なお、図23には試薬を送る手段としてポンプ37を示したが、試薬を送る手段として他の圧力源または重力でもよい。
「第12の実施の形態」
【0050】
図24には第12の実施の形態の蒸発器の断面図を示す。図24に示す本実施の形態の蒸発器は本発明の気液分離機構を蒸発器の高性能化に応用したものであり、その構成は、溝付き面2と一体で構成される冷却面48と入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12が構成され、狭小空間12内に抵抗体8が充填されている。抵抗体8は金網や多孔質体で構成される。入り口仕切り体16の下流側は溝付き面2の溝頂部に概略接し、急拡大部3から下流では溝付き面2と流路壁1の間に流路50が形成されている。流路50には気相取り出し側出口管6が接続されている。また、溝付き面2の反対側の面は被冷却体49が熱的に接触する冷却面48となっている。
気液二相流は入口管5から流入し、抵抗体8が充填されている狭小空間12に流入し、狭小空間12内に充填された抵抗体8の作用により二相流は溝付き面幅方向に一様な流れとなり溝付き面2へ導かれる。さらに、狭小空間12で気液二相流を急拡大部3後流の溝付き面2の溝部に供給する傾向付けをするので、液相は表面張力の作用により溝内に保持され流れる。このとき、急拡大部3で急に流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行くため、二相流は確実に気液に分離される。
【0051】
溝付き面2の反対側の面は被冷却体49が熱的に接触する冷却面48となっており、被冷却体49から発する熱は溝付き面2を加熱するため、溝内の液相は蒸発し気相冷媒となり、蒸発した気相冷媒が気相取り出し側出口管6から流出する。微細溝の場合、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下としているため、表面張力の効果が非常に強くなり、図25に示すように溝内を流れる液相28の液面29は表面張力の作用により円弧状になるため溝頂部30付近で溝壁面に接する液膜は極めて薄くなる。蒸発現象における熱抵抗は液膜の薄ささに大きく依存するため、液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、本発明の気液分離機構を蒸発器に適用することで極めて高い性能の蒸発器が構成される。また、本発明の気液分離機構を適用しているため、表面張力が支配的であり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、蒸発器の取り付け姿勢にかかわらず極めて高い性能の蒸発器を提供できる。
「第13の実施の形態」
【0052】
図26では第13の実施形態の蒸発器の断面図を示す。また、図27では図26のA−A断面を示す。本実施形態の蒸発器では溝付き面を円筒面の外面に構成した場合であり、ローレット加工法等により管に後加工で溝を加工できる。図26の構成は、被冷却流体入り口管31と、外管15と一体となっている入り口仕切り体16をもって作られる狭小空間12が構成され、そこに入り口管5が接続され、狭小空間12内に抵抗体8が設けられている。入り口仕切り体16の下流側は溝付き面2の溝頂部に概略接し、急拡大部3から下流では溝付き面2と外管15の間に環状流路が形成されている。環状流路には気相取り出し側出口管6が接続されている。被冷却流体入り口管31の下流は被冷却流体出口管32となっている。
二相流は入り口管5から狭小空間12内に流入し、抵抗体8を通過することにより円周方向に一様に分配される。抵抗体8を通過した二相流は狭小空間12により溝付き面2の溝に二相流が流入するように傾向付けられており、二相流は溝付き面2の溝に流入する。急拡大部3で流路壁1は溝頂部から離れ、その結果流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は表面張力の効果により溝内に保持され溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行く気液分離機構となっている。
この場合、入り口管5を図27に示すようにタンジェンシャルに取りつけることにより、狭小空間12内流入したとき旋回流となり、二相流は一層円周方向に均一に分配できる。
一方、被冷却流体は被冷却流体入り口管31から流入し、被冷却流体出口管32から流出する。溝内を流れる液は蒸発により被冷却流体を冷却することにより溝内で気相になり、気相は溝の外に出て気相取り出し側出口管6より流出する。溝頂部付近に付着する液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、極めて高い性能の蒸発器が構成される。また、本発明の気液分離機構を適用しているため、表面張力が支配的であり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、蒸発器の取り付け姿勢にかかわらず極めて高い性能の蒸発器を提供できる。
「第14の実施の形態」
【0053】
図28では第14の実施形態の蒸発器の断面図を示す。本実施形態の蒸発器では溝付き面を円筒面の内面に構成した場合であり、予め管内面に溝加工を行った管を使用すると良い。図28の構成は、溝付き面2と一体となっている入り口管5の内面と入り口仕切り体16をもって作られる環状の狭小空間12が構成され、狭小空間12内に環状の抵抗体8が設けられている。本実施の形態では狭小空間12がその上流側が下流側よりも厚めにした場合を示している。
入り口仕切り体16の下流側は溝付き面2の溝頂部に概略接し、急拡大部3から下流では溝付き面2に囲まれた流路が形成されている。溝付き面2の下流は気相取り出し側出口管6となっている。一方、被冷却流体は被冷却流体入り口管31から流入し、外管15により形成される環状流路を通り被冷却流体出口管32から流出する。
二相流は入り口管5から入り、抵抗体8を通過することにより円周方向に一様に分配される。抵抗体8を通過した二相流は狭小空間12により溝付き面2の溝に二相流が流入するように傾向付けられており、二相流は溝付き面2の溝に流入する。急拡大部3で流路断面積が拡大するため流速が低下し、その条件に応じたボイド率の流れとなり、液相は溝内を流れ続け、気相は液相より分離し溝外に出て行く気液分離機構となっている。
溝付き面2で囲まれた流路で気液分離された後、液相は表面張力の効果により溝内に保持され流れる。
液は蒸発により被冷却流体を冷却することにより溝内で気相になり気相取り出し側出口管6より流出する。溝頂部付近に付着する液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、極めて高い性能の蒸発器が構成される。また、本発明の気液分離機構を適用しているため、表面張力が支配的であり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、蒸発器の取り付け姿勢にかかわらず極めて高い性能の蒸発器を提供できる。
【0054】
なお、従来管内に溝を設け伝熱を促進する技術が知られているが、それら従来技術は溝を設けることにより流れを乱し伝熱を促進することを主眼としている。
それに対して本発明では、全流路断面積に占める気相断面積の割合である二相流のボイド率をβ、気相断面積をSg、液相断面積をSlとしたとき、
Sg/(Sg+Sl)≦β
の関係で流路断面積を規定することにより液相を溝から溢れないように流し、さらに、溝幅wで定義したボンド数ρgw/σを1程度以下とした微細溝にすることにより表面張力の効果が非常に強く、溝内を流れる液相の液面は表面張力の作用により円弧状になり溝頂部付近で溝壁面に接する液膜は極めて薄くなる。蒸発現象における熱抵抗は液膜の厚さに大きく依存するため、液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるためドライアウトすることなく極めて高い蒸発熱伝達が実現できる。
さらに、本発明では、液相を溝内に流すことにより、液膜が極めて薄くなる薄液膜効果を利用しているため、二相流の流量が少ない場合でも極めて高い蒸発熱伝達が実現できる。
「第15の実施の形態」
【0055】
図29は第15の実施の形態として、上記した蒸発器を冷凍サイクルに使用した場合の冷凍サイクル構成図である。図29に示した冷凍サイクル構成図には本実施形態を説明するために必要な基本的構成要素を示している。すなわち、圧縮機17は第一のシリンダ18のみを有し、圧縮機で吸い込んだ低温低圧の気相冷媒は第一のシリンダ18で圧縮され高温高圧気相冷媒となり冷媒吐出管20を経て、凝縮器21で凝縮器用送風機22で送られる空気に放熱し、低温高圧液冷媒となる。その液冷媒は減圧器23で減圧され二相流となり、入り口管5から蒸発器51に入り蒸発器51と熱的に接触している被冷却体49から熱を奪い低温低圧の気相冷媒となり、圧縮機17に吸い込まれる。ここで使用されている蒸発器51は例えば図24に示した蒸発器であり、被冷却体49はたとえば発熱のある電子機器部品である。本発明の蒸発器を使用することにより溝付き面溝頂部の液膜が極めて薄くなる薄液膜効果により極めて高い蒸発熱伝達が実現でき、さらに、蒸発により液が壁面から除かれても表面張力の作用により薄膜部に液が供給されるため、極めて高い性能の蒸発器が構成され、効率的な被冷却体の冷却が可能になる。また、本発明の気液分離機構を適用しているため、表面張力が支配的であり、重力にかかわらず安定な気液界面が構成されるため溝内には液相、溝外には溝内から離脱した気相が流れることになり、蒸発器の取り付け姿勢にかかわらず極めて高い冷却性能の蒸発器を提供できる。
【産業上の利用可能性】
本発明は気液二相流を狭小空間を通すことで、液相を表面張力効果を有する側に効率良く供給し、取付位置や取付角度に関係なく気液分離を効率良く行うようにしたものであるから、冷凍装置の小形化に追従出来る冷凍サイクルの提供を可能とすることは勿論、冷凍装置の冷却性能改善に大幅に貢献出来るものである。又、このほか本発明の気液分離装置はマイクロチャネルリアクタ、マイクロチップ培養槽等への適用も可能にしているものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施の形態の気液分離装置の全体像を示す斜視図である。
【図2】図1に示す気液分離装置のB−B線断面図である。
【図3】図1に示す気液分離装置のA−A線断面図である。
【図4】気液分離装置の他の溝断面形状断面図である。
【図5】気液分離装置の他の溝断面形状断面図である。
【図6】溝付き面を重力方向下向きに向けた場合の気液分離特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図8】図7に示す気液分離装置のA−A部を上方から見た図である。
【図9】第3の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図10】図9に示す気液分離装置のA−A部を上方から見た図である。
【図11】第4の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図12】図11に示す気液分離装置のA−A部を上方から見た図である。
【図13】第5の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図14】図13に示す気液分離装置のA−A部を上方から見た図である。
【図15】第6の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図16】図15に示す気液分離装置のA−A断面図である。
【図17】第7の実施の形態の気液分離装置の断面図である。
【図18】図17に示す気液分離装置のA−A断面図である。
【図19】第7の実施の形態の気液分離装置の気相流路半径を求めるための物理モデル図である。
【図20】第8の実施の形態として、気液分離装置を冷凍サイクルに使用した場合の第一の冷凍サイクル構成図である。
【図21】第9の実施の形態として、気液分離装置を冷凍サイクルに使用した場合の第二の冷凍サイクル構成図である。
【図22】第10の実施の形態として、気液分離装置をマイクロチャネルリアクタに使用した場合のシステム構成図である
【図23】第11の実施の形態として、気液分離装置をマイクロチップ培養槽に使用した場合のシステム構成図である
【図24】第12の実施の形態の蒸発器を示す断面図である。
【図25】溝内液面形状を示す断面図である。
【図26】第13の実施の形態の蒸発器の断面図である。
【図27】図26に示す蒸発器のA−A断面図である。
【図28】第14の実施の形態の蒸発器の断面図である。
【図29】第15の実施の形態として、本発明の気液分機構を適用した蒸発器を冷凍サイクルに使用した場合の冷凍サイクル構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1…流路壁 2…溝付き面
3…急拡大部 4…仕切り板
5…入口管 6…気相取り出し側出口管
7…液相取り出し側出口管 8…抵抗体
9…案内ベーン 10…横方向溝部
11…横突起部 12…狭小空間
13…菱形突起部 14…放射状穴
15…外管 16…入り口仕切体
17…圧縮機 18…第一のシリンダ
19…第二のシリンダ 20…冷媒吐出管
21…凝縮器 22…凝縮器用送風機
23…第一の減圧器 24…第二の減圧器
25…蒸発器 26…蒸発器用送風機
27…蒸発器バイパス管 28…液
29…液面 30…溝頂部
31…被冷却流体入り口管 32…被冷却流体出口管
33…気液分離装置 34…マイクロチャネルリアクタ
35…試薬A容器 36…試薬B容器
37…マイクロポンプ 38…反応部
39…反応生成物AB 40…マイクロチップ培養槽
41…細胞 42…灌流液容器
43…灌流液排出管 44…マイクロチップ培養槽流路
45…入り口溝 46…斜め溝
47…管 48…冷却面
49…被冷却体 50…流路
51…溝付き蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液分離室の一部に液相出口管に向かう溝付き部を設け、その気液分離室の上流に入り口仕切り体をもって狭小空間を作ると共に入り口管より導かれた気液二相流を該狭小空間を通した後で気液分離室に導き、上記気液二相流を気相と液相に分離し、液相は溝付き部を通して液相取り出し側出口管に導くようにした気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気液分離装置であって、溝幅wを代表長さとするボンド数ρgw/σを1程度以下とした気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の気液分離装置であって、二相流のボイド率をβ、液相が流れる溝の流路断面積をSl、気相が流れる流路断面積をSg、としたとき、
Sg/(Sg+Sl)≦βとした気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、前記急拡大部の上流側に抵抗体を充填した気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、前記急拡大部の上流側に案内ベーンを設けた気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置において、前記急拡大部の下流側溝付き面に流れと垂直の横幅方向にも貫通する溝を設けた気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、溝付き面を円筒面内面に形成した気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項8】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置であって、溝付き面を円筒面外面に形成した気液分離機構を持つことを特徴とする気液分離装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3に記載の気液分離装置を冷凍サイクルの減圧器の下流に設けたことを特徴とする気液分離装置を備えた冷凍装置。
【請求項10】
溝付き面から構成される蒸発器において、請求項1から請求項3または請求項7または請求項8に記載の気液分離機構を配置したことを特徴とする蒸発器。
【請求項11】
請求項10に記載の蒸発器において、請求項4または請求項5または請求項6に記載の気液分離機構を配置したことを特徴とする蒸発器。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の蒸発器を備えた冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−170589(P2006−170589A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382493(P2004−382493)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(596083364)日冷工業株式会社 (10)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)