説明

気液分離装置

【課題】気液分離装置において、内部に導入される流体と内部で分離された気体との干渉を防止して分離効率の向上を図ると共に装置の小型化を図る。
【解決手段】円筒密閉形状をなすケース12に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する導入部13を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部14を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部15を設け、導入部13としてケース12の軸方向に長い長円形状をなす導入口13aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関における動弁系や摺動系などの潤滑必要部に潤滑油を供給する潤滑装置において、潤滑油に混入した空気を分離して除去する気液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおいて、吸気弁及び排気弁の開閉駆動を行う動弁系、クランクシャフトやピストンなどを駆動する摺動系に対して、常時潤滑油を供給して磨耗や発熱を防止し、円滑な作動を確保するようにしている。一般的に、潤滑油はエンジン下部に装着されたオイルパンに貯留されており、オイルポンプによってこのオイルをオイルギャラリを通してエンジンの各潤滑必要部に供給している。
【0003】
ところで、上述したように、この潤滑油は、動弁系や摺動系などのエンジンの各潤滑必要部に供給することで、磨耗や発熱を防止しているが、潤滑油の循環中にこの潤滑油が攪拌されることで空気(気泡)が混入する。潤滑油に気泡が混入すると、所定量の潤滑油を供給することができず、潤滑油不足による焼き付などが発生してしまう。
【0004】
そこで、潤滑油に混入した気泡を除去する除去装置が、例えば、下記特許文献1に記載されて提案されている。この特許文献1に記載された気液分離タンクは、底部に液体排出管を有して頂部に気体排出管を有する円筒縦型タンクと、このタンクの円筒壁上部に設けられ円筒内周接線方向に流体を吐出する上部ノズルと、タンクの円筒壁下部に設けられ円筒内周接線方向で上部ノズル4反対回りに液体を吐出する下部ノズルとを設けたものである。
【0005】
【特許文献1】特開平10−057710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した従来の気液分離タンクでは、上部ノズルから供給された流体と、内部で分離された気体とが干渉してしまい、気液分離効率が低下してしまう。即ち、図15に示すように、従来の気液分離タンク001にて、気液二相流体がタンク002の上部ノズル003から内部に導入されると、遠心分離作用により空気がタンク002の軸中心側に移動することで分離され、その浮力によりそのまま上昇して気体排出管004から排出される一方、液体は旋回しながら下降し、液体排出管005から排出される。しかし、タンク002内に導入する気液二相流体の導入量を確保するために、上部ノズル003の開口面積を大きくすると、この上部ノズルから供給された流体が、タンク002内で分離された気体と干渉し、気体が螺旋形状となって気液分離効率が低下する。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するものであって、内部に導入される流体と内部で分離された気体との干渉を防止して分離効率の向上を図ると共に装置が小型化を図った気液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決してその目的を達成するために、本発明の気液分離装置は、気液二相流体の旋回による遠心力を利用して液体と気体とに分離する気液分離装置であって、円筒密閉形状をなすケースと、該ケースの外周部に設けられて該ケース内に気液二相流体を導入する導入部と、前記ケースの下部に設けられて気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部と、前記ケースの上部に設けられて気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部とを具え、前記導入部は、前記ケースの軸方向に長い長孔形状をなす導入口を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の気液分離装置では、前記導入口は、長円形状または矩形形状または多数の円が連続した形状であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の気液分離装置では、前記導入部は、前記ケースの周方向に複数設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明の気液分離装置では、前記複数の導入部は、前記ケースの軸方向における異なる位置に設けられることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の気液分離装置は、気液二相流体の旋回による遠心力を利用して液体と気体とに分離する気液分離装置であって、円筒密閉形状をなすケースと、該ケースの外周部に設けられて該ケース内に気液二相流体を導入する導入部と、該導入部から前記ケース内に導入する気液二相流体の導入量を調整する導入量調整手段と、前記ケースの下部に設けられて気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部と、前記ケースの上部に設けられて気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部とを具えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の気液分離装置では、前記ケースは、同心円上に配設される外側ケース及ぶ内側ケースにより構成されることで、外側旋回室と内側旋回室が形成され、前記外側旋回室と前記内側旋回室とを連通する連通口が設けられ、前記導入量調整手段は、前記連通口の通路面積を調整する開閉体を有することを特徴としている。
【0014】
本発明の気液分離装置では、前記開閉体は、前記導入部から前記ケース内に導入される気液二相流体の導入速度に応じて前記連通口の通路面積を変更することを特徴としている。
【0015】
本発明の気液分離装置では、前記液体排出部に液体搬送ポンプが連結される一方、前記気体排出部に気体搬送ポンプが連結されることを特徴としている。
【0016】
本発明の気液分離装置では、前記液体排出部に液体搬送ポンプが連結される一方、前記気体排出部が液体を貯蔵タンクに戻す戻し通路が連結されることを特徴としている。
【0017】
本発明の気液分離装置では、前記ケースは、上部と下部の内径が同寸法に設定され、前記液体排出部が前記ケースの外周下部に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の気液分離装置によれば、円筒密閉形状をなすケースに対して、外周部に内部に気液二相流体を導入する導入部を設け、下部に気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部を設け、上部に気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部を設け、導入部としてケースの軸方向に長い長孔形状をなす導入口を設けたので、内部に導入される流体と内部で分離された気体との干渉を防止して分離効率の向上を図ることができ、また、装置の小型化を図ることができる。
【0019】
また、本発明の気液分離装置によれば、円筒密閉形状をなすケースに対して、外周部に内部に気液二相流体を導入する導入部を設けると共に、この導入部から内部に導入する気液二相流体の導入量を調整する導入量調整手段を設け、下部に気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部を設け、上部に気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部を設けたので、内部に導入される流体と内部で分離された気体との干渉を防止して分離効率の向上を図ることができ、また、装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる気液分離装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る気液分離装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の気液分離装置における平面図、図3は、実施例1の気液分離装置の作用を表す概略図である。
【0022】
実施例1の気液分離装置は、内燃機関の潤滑装置に適用されており、気液二相流体として、空気(気泡)が混入した潤滑油(オイル)を旋回することで、発生するオイルの遠心力を利用して液体(オイル)と気体(空気)とに分離するものである。即ち、図1及び図2に示すように、実施例1の気液分離装置11は、ケース12と、導入部13と、液体排出部14と、気体排出部15とから構成されている。そして、導入部13にオイルタンク16からの供給通路17が連結され、この供給通路17にオイルポンプ18が設けられている。また、液体排出部14にオイル潤滑部19への液体排出通路20が接続される一方、気体排出部15に気体排出通路21が接続されている。なお、ここで、オイル潤滑部19は、例えば、エンジンの吸気弁及び排気弁の開閉駆動を行う動弁系、クランクシャフトやピストンなどを駆動する摺動系である。
【0023】
上述したケース12は、円筒密閉形状をなし、軸方向に沿って内径が一定である上円筒部12aと、軸方向下方に沿って内径が小さくなる下円錐部12bとから構成されている。導入部13は、ケース12の上部、つまり、上円筒部12aの外周部に形成された導入口13aと、この導入口13aに連結される連結通路13bとから構成されている。この導入口13aは、ケース12の軸方向に長い長孔形状をなし、本実施例では、長円形状となっている。連結通路13bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路17が連結される一方、先端部が導入口13aに連結されている。この場合、供給通路17及び連結通路13bは、ケース12の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルタンク16に貯留されているオイルを、オイルポンプ18により供給通路17を通してケース12の導入口13aからその内部に導入し、ケース12の内部を旋回させることができる。
【0024】
液体排出部14は、ケース12における下円錐部12bの下面部に設けられており、ケース12の内部で空気を分離除去したオイルを排出することができる。また、気体排出部15は、ケース12における上円筒部12aの上面部に設けられており、オイルから分離した空気を排出することができる。
【0025】
従って、エンジンの駆動に同期してオイルポンプ18が作動すると、オイルタンク16に貯留されているオイルが供給通路17を通してケース12の内部に導入される。このとき、オイルは、連結通路13bから導入口13aを通してケース12の内壁面に沿ってその接線方向に導入されることから、ケース12の内部で旋回流となる。すると、遠心分離作用によりオイルに混入した空気がケース12の軸中心側に移動することで分離され、その浮力によりそのまま上昇し、気体排出部15から気体排出通路21に排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部14から液体排出通路20に排出される。
【0026】
このとき、図3に示すように、ケース12の導入口13aが、ケース12の軸方向に長い長円形状であることから、導入口13aからケース12の内部に導入されたオイルは内壁面に沿って適正に旋回するため、このオイルと、ケース12の内部で分離されて中心部を旋回しながら上昇する空気との干渉が防止される。
【0027】
このように実施例1の気液分離装置11にあっては、円筒密閉形状をなすケース12に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する導入部13を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部14を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部15を設け、導入部13としてケース12の軸方向に長い長円形状をなす導入口13aを設けている。
【0028】
従って、オイルが導入部13の導入口13aからケース12内に導入されると、ケース12の内部で旋回流となり、混入した空気が遠心分離作用によりケース12の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部15排出される一方、空気が分離されたオイルがケース12内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部14から排出される。このとき、ケース12の導入口13aが、ケース12の軸方向に長い長円形状であることから、導入口13aからケース12の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース12の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉を防止することができる。その結果、気液分離効率の向上を図ることができると共に、導入口13aの通路面積を縮小する必要がなく、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部19への適正なオイル供給量を確保することができる。また、従来のように、予備旋回通路などを設ける必要がなく、装置の小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0029】
図4は、本発明の実施例2に係る気液分離装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0030】
実施例2において、図4に示すように、気液分離装置31は、ケース32と、導入部33と、液体排出部34と、気体排出部35とから構成されている。そして、導入部33に供給通路36が連結されている。
【0031】
このケース32は、円筒密閉形状をなし、上円筒部32aと下円錐部32bとから構成されている。導入部33は、ケース32の上部、つまり、上円筒部32aの外周部に形成された導入口33aと、この導入口33aに連結される連結通路33bとから構成されている。この導入口33aは、ケース32の軸方向に長い長孔形状をなし、本実施例では、2つの円が連続しただるま形状となっている。即ち、ケース32の上円筒部32aに対して、2回のドリル加工を施すことで、2つの円が連続しただるま形状をなす導入口33aを形成することができる。なお、この導入口33aはこのだるま形状に限らず、3つ以上の円が連続した形状としてもよく、また、後加工により円の連続部を直線状に仕上げてもよい。連結通路33bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路36が連結される一方、先端部が導入口33aに連結されている。この場合、供給通路36及び連結通路33bは、ケース32の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルを供給通路36を通してケース32の導入口33aからその内部に導入し、ケース32の内部を旋回させることができる。
【0032】
従って、エンジンの駆動に同期して図示しないオイルポンプが作動すると、オイルが供給通路36を通してケース32の内部に導入される。このとき、オイルは、連結通路33bから導入口33aを通してケース32の内壁面に沿ってその接線方向に導入されることから、ケース32の内部で旋回流となる。すると、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース32の軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇し、気体排出部35から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部34から排出される。
【0033】
このとき、ケース32の導入口33aが、ケース32の軸方向に長いだるま形状であることから、導入口33aからケース32の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース32の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉が防止される。
【0034】
このように実施例2の気液分離装置31にあっては、円筒密閉形状をなすケース32に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する導入部33を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部34を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部35を設け、導入部33としてケース32の軸方向に長い長円形状、つまり、だるま形状の導入口33aを設けている。
【0035】
従って、オイルが導入部33の導入口33aからケース32内に導入されると、ケース32の内部で旋回流となり、混入した空気がその遠心分離作用によりケース32の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部35排出される一方、空気が分離されたオイルがケース32内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部34から排出される。このとき、ケース32の導入口33aが、ケース32の軸方向に長いだるま形状であることから、導入口33aからケース32の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース32の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉を防止することができる。その結果、気液分離効率の向上を図ることができると共に、導入口33aの通路面積を縮小する必要がなく、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0036】
また、実施例2では、この導入口33aを、ケース32の軸方向に長い長孔形状とし、複数の円が連続しただるま形状としており、複数回のドリル加工を施すことで、この導入口33aを容易に形成することができ、製造の容易化及び製造コストを低減することができる。そして、本実施例では、従来のように、予備旋回通路などを設ける必要がなく、装置の小型化を図ることができる。
【実施例3】
【0037】
図5は、本発明の実施例3に係る気液分離装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0038】
実施例3において、図5に示すように、気液分離装置41は、ケース42と、導入部43と、液体排出部44と、気体排出部45とから構成されている。そして、導入部43に供給通路46が連結されている。
【0039】
このケース42は、円筒密閉形状をなし、上円筒部42aと下円錐部42bとから構成されている。導入部43は、ケース42の上部、つまり、上円筒部42aの外周部に形成された導入口43aと、この導入口43aに連結される連結通路43bとから構成されている。この導入口43aは、ケース42の軸方向に長い長孔形状をなし、本実施例では、矩形形状となっている。即ち、上円筒部42aは、上円筒42a1と、中円筒42a2と、下円筒42a3とが結合して形成され、上円筒42a1は板部材をC字形状に加工することで、矩形形状をなす開口、つまり、導入口43aを形成することができる。連結管43bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路46が連結される一方、先端部が導入口43aに連結されている。この場合、供給通路36及び連結通路43bは、ケース42の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルを供給通路46を通してケース42の導入口43aからその内部に導入し、ケース42の内部を旋回させることができる。
【0040】
従って、エンジンの駆動に同期して図示しないオイルポンプが作動すると、オイルが供給通路46を通してケース42の内部に導入される。このとき、オイルは、連結通路43bから導入口43aを通してケース42の内壁面に沿ってその接線方向に導入されることから、ケース42の内部で旋回流となる。すると、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース42の軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇し、気体排出部45から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部44から排出される。
【0041】
このとき、ケース42の導入口43aが、ケース42の軸方向に長い長円形状であることから、導入口43aからケース42の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース42の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉が防止される。
【0042】
このように実施例3の気液分離装置41にあっては、円筒密閉形状をなすケース42に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する導入部43を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部44を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部45を設け、導入部43としてケース42の軸方向に長い長円形状をなす矩形形状の導入口43aを設けている。
【0043】
従って、オイルが導入部43の導入口43aからケース42内に導入されると、ケース42の内部で旋回流となり、混入した空気が遠心分離作用によりケース42の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部45排出される一方、空気が分離されたオイルがケース42内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部44から排出される。このとき、ケース42の導入口43aが、ケース42の軸方向に長い矩形形状であることから、導入口43aからケース42の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース42の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉を防止することができる。その結果、気液分離効率の向上を図ることができると共に、導入口43aの通路面積を縮小する必要がなく、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0044】
また、実施例3では、ケース42の上円筒部42aを、上円筒42a1とC字形状の中円筒42a2と下円筒42a3を結合することで、矩形形状をなす導入口43aを形成しており、ドリルなどによる穴加工を不要とすることで、この導入口43aを容易に形成することができ、製造の容易化及び製造コストを低減することができる。そして、本実施例では、従来のように、予備旋回通路などを設ける必要がなく、装置の小型化を図ることができる。
【実施例4】
【0045】
図6は、本発明の実施例4に係る気液分離装置を表す概略構成図、図7は、実施例4の気液分離装置における平面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0046】
実施例4において、図6及び図7に示すように、気液分離装置51は、ケース52と、2つの導入部53と、液体排出部54と、気体排出部55とから構成されている。そして、各導入部53に供給通路56が連結されている。
【0047】
このケース52は、円筒密閉形状をなし、上円筒部52aと下円錐部52bとから構成されている。各導入部53は、ケース52の上部、つまり、上円筒部52aの外周部に形成された導入口53aと、この導入口53aに連結される連結通路53bとから構成されている。この場合、ケース52の周方向に均等間隔で、且つ、軸方向における同一位置に2つの導入部53が設けられている。連結通路53bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路56が連結される一方、先端部が導入口53aに連結されている。この場合、供給通路56及び連結通路53bは、ケース52の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルを各供給通路56を通してケース52の各導入口53aからその内部に導入し、ケース52の内部を旋回させることができる。
【0048】
従って、エンジンの駆動に同期して図示しないオイルポンプが作動すると、オイルが各供給通路56を通してケース52の内部に導入される。このとき、オイルは、各連結通路53bから導入口53aを通してケース52の内壁面に沿ってその接線方向に導入されることから、ケース52の内部で旋回流となる。すると、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース52の軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇し、気体排出部55から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部54から排出される。
【0049】
このとき、ケース52の導入口53aが、ケース52の軸方向に長い長円形状であることから、導入口53aからケース52の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース52の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉が防止される。また、オイルが2つの導入部53からケース52内に導入されることから、ケース52内へのオイル導入量が増加されると共に、ケース52の内部におけるオイルの旋回速度が上昇され、オイル分離効率が向上する。
【0050】
このように実施例4の気液分離装置51にあっては、円筒密閉形状をなすケース52に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する複数の導入部53を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部54を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部55を設け、各導入部52としてケース52の軸方向に長い長円形状をなす導入口53aを設けている。
【0051】
従って、オイルが導入部53の導入口53aからケース52内に導入されると、ケース52の内部で旋回流となり、混入した空気が遠心分離作用によりケース52の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部55排出される一方、空気が分離されたオイルがケース52内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部54から排出される。このとき、ケース52の導入口53aが、ケース52の軸方向に長い長円形状であることから、導入口53aからケース52の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース52の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉を防止することができる。その結果、気液分離効率の向上を図ることができると共に、導入口53aの通路面積を縮小する必要がなく、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0052】
また、実施例4では、ケース52に対して、その周方向に均等間隔で、且つ、軸方向における同一位置に2つの導入部53を設けている。従って、オイルが2つの導入部53からケース52内に導入されるため、ケース52内へのオイル導入量を増加することができると共に、ケース52の内部におけるオイルの旋回速度を上昇することができ、オイル分離効率を向上することができる。
【実施例5】
【0053】
図8は、本発明の実施例5に係る気液分離装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0054】
実施例5において、図8に示すように、気液分離装置61は、ケース62と、2つの導入部63と、液体排出部64と、気体排出部65とから構成されている。そして、各導入部63に供給通路66が連結されている。
【0055】
このケース62は、円筒密閉形状をなし、上円筒部62aと下円錐部62bとから構成されている。各導入部63は、ケース62の上部、つまり、上円筒部62aの外周部に形成された導入口63aと、この導入口63aに連結される連結通路63bとから構成されている。この場合、ケース62の周方向に均等間隔で、且つ、軸方向に異なる位置に2つの導入部63が設けられている。連結通路63bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路66が連結される一方、先端部が導入口63aに連結されている。この場合、供給通路66及び連結通路63bは、ケース62の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルを各供給通路66を通してケース62の各導入口63aからその内部に導入し、ケース62の内部を旋回させることができる。
【0056】
従って、エンジンの駆動に同期して図示しないオイルポンプが作動すると、オイルが各供給通路66を通してケース62の内部に導入される。このとき、オイルは、各連結通路63bから導入口63aを通してケース62の内壁面に沿ってその接線方向に導入されることから、ケース62の内部で旋回流となる。すると、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース62の軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇し、気体排出部65から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部64から排出される。
【0057】
このとき、ケース62の導入口63aが、ケース62の軸方向に長い長円形状であることから、導入口63aからケース62の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース62の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉が防止される。また、オイルが2つの導入部63からケース62内の異なる位置に導入されることから、ケース62内へのオイル導入量が増加されると共に、ケース62の内部におけるオイルの旋回速度が上昇され、オイル分離効率が向上する。
【0058】
このように実施例5の気液分離装置61にあっては、円筒密閉形状をなすケース62に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入して軸方向に異なる位置に設けられた複数の導入部63を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部64を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部65を設け、各導入部62としてケース62の軸方向に長い長円形状をなす導入口63aを設けている。
【0059】
従って、オイルが導入部63の導入口63aからケース62内に導入されると、ケース62の内部で旋回流となり、混入した空気が遠心分離作用によりケース62の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部65排出される一方、空気が分離されたオイルがケース62内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部64から排出される。このとき、ケース62の導入口63aが、ケース62の軸方向に長い長円形状であることから、導入口63aからケース62の内部に導入されて内壁面に沿って旋回するオイルと、ケース62の内部で分離されて中心側を旋回しながら上昇する空気との干渉を防止することができる。その結果、気液分離効率の向上を図ることができると共に、導入口63aの通路面積を縮小する必要がなく、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0060】
また、実施例5では、ケース62に対して、その周方向に均等間隔で、且つ、軸方向の異なる位置に2つの導入部63を設けている。従って、オイルが2つの導入部63からケース62内の異なる位置に導入されるため、ケース62内へのオイル導入量を増加すると共にその流量を軸方向で均一化ことができ、また、ケース62の内部におけるオイルの旋回速度を上昇することができ、オイル分離効率を向上することができる。
【0061】
なお、上述した実施例4、5にて、ケース52,62に2つの導入部53,63を設けたが、2つの限らず3つ以上設けてもよく、実施例5では、異なる3つ以上の位置に導入部63を設けてもよい。
【実施例6】
【0062】
図9は、本発明の実施例6に係る気液分離装置を表す概略構成図、図10は、実施例6の気液分離装置における水平断面図、図11は、実施例6の気液分離装置における作動状態を表す水平断面図である。
【0063】
実施例6において、図9及び図10に示すように、気液分離装置71は、ケース72と、導入部73と、液体排出部74と、気体排出部75とから構成されている。そして、各導入部73に供給通路76が連結されており、ケース72に、導入部73からケース72内に導入するオイルの導入量を調整する導入量調整機構が設けられている。
【0064】
このケース72にて、外側ケース81内に内側ケース82が同心円上配設されることで、外側ケース81と内側ケース82の間に外側旋回室83が形成され、内側ケース82の内部に内側旋回室84が形成されている。そして、この内側ケース82には、外側旋回室83と内側旋回室84とを連通する複数の連通口85a,85bが形成され、この連通口85a,85bは、内側旋回室84における内側ケース82の内壁面に対して接線方向に傾斜して形成されている。外側ケース81及び内側ケース82は、円筒密閉形状をなし、上円筒部81a,82aと下円錐部81b,82bとから構成されている。導入部73は、内側ケース82の上部、つまり、上円筒部82aの外周部に形成された導入口73aと、この導入口73aに連結される連結通路73bとから構成されている。
【0065】
導入量調整機構として、内側ケース82の外周部には、開閉体としての開閉筒86が周方向に回転自在に嵌合している。そして、複数の連通口85a,85bに対応して開口部87a,87bが形成されている。そして、外側ケース81と開閉筒86との間には、付勢部材としてのスプリング88が張設されており、図10にて開閉筒86を反時計回り方向、つまり、オイルの旋回方向とは逆方向に付勢支持されている。
【0066】
従って、導入部73からケース72の外側旋回室83に導入されるオイルの導入速度が低速であるとき、開閉筒86は、スプリング88の付勢力及び図示しないストッパにより図10に示す低速位置に位置決めされている。そのため、開閉筒86の開口部87bにより3つの連通口85bが閉止され、開口部87aにより3つの連通口85aだけが開放状態となっている。そして、導入部83からケース82の外側旋回室83に導入されるオイルの導入速度が高速になると、開閉筒86は、オイルの旋回力によりスプリング88の付勢力に抗して回動し、図11に示す高速位置に移動する。そのため、各開口部87a,87bにより全ての連通口85a,85bが開放状態となり、通路面積を拡大することができる。
【0067】
また、連結通路73bは、基端部に対して先端部が上下に拡径したラッパ形状をなし、基端部に供給通路76が連結される一方、先端部が導入口73aに連結されている。この場合、供給通路76及び連結通路73bは、ケース72の外周面に対して接線方向に連結されており、オイルを各供給通路76を通してケース72の各導入口73aからその内部に導入し、ケース72の内部を旋回させることができる。
【0068】
従って、エンジンの駆動に同期して図示しないオイルポンプが作動すると、オイルが供給通路76を通してケース72の内部に導入される。このとき、エンジンが低回転数領域にあると、図10に示すように、オイルは、連結通路73bから導入口73aを通して外側旋回室83の内壁面に沿ってその接線方向に導入され、更に、開放状態にある3つの連通口85aを通って内側旋回室84に導入されることから、この内側旋回室84の内部で旋回流となる。そのため、エンジンが低回転で、供給オイルの流量も少ないときには、外側旋回室83と内側旋回室84との開口面積(連通口85aの開口面積)を小さくすることで、内側旋回室84に導入されるオイルの旋回速度が上昇する。すると、内側旋回室84では、オイルが適正な速度で旋回することとなり、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース72の軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇し、気体排出部75から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部74から排出される。
【0069】
一方、エンジンが高回転数領域にあるとき、図11に示すように、オイルは、各連結通路73bから導入口73aを通して外側旋回室83の内壁面に沿ってその接線方向に導入され、更に、開放状態にある全ての連通口85a,85bを通って内側旋回室84に導入されることから、この内側旋回室84の内部で旋回流となる。そのため、エンジンが高回転で、供給オイルの流量が多いときには、外側旋回室83と内側旋回室84との開口面積(連通口85a,85bの開口面積)を大きくすることで、内側旋回室84に導入されるオイルの旋回速度を維持したまま、その導入量が増加する。すると、内側旋回室84では、多量のオイルが適正な速度で旋回することとなり、すると、オイルに混入した空気が遠心分離作用によりケース72の軸中心側に移動することで分離され、そのまま上昇し、気体排出部75から排出される。一方、空気が分離されたオイルは、旋回しながら下降し、液体排出部74から排出される。
【0070】
このように実施例6の気液分離装置71にあっては、円筒密閉形状をなすケース72に対して、外周部に内部に空気が混入したオイルを導入する導入部73を設け、下部に空気を分離したオイルを排出する液体排出部74を設け、上部にオイルから分離した空気を排出する気体排出部75を設け、ケース72に導入部73からケース72内に導入するオイルの導入量を調整する導入量調整機構を設けている。
【0071】
従って、オイルが導入部73の導入口73aからケース72内に導入されると、エンジンが低回転数領域にあるとき、導入口73aから外側旋回室83に導入されたオイルは、3つの連通口85aを通って内側旋回室84に導入される一方、エンジンが高回転数領域にあるとき、このオイルは、全ての連通口85a,85bを通って内側旋回室84に導入される。そのため、この内側旋回室84で適正速度の旋回流となり、混入した空気が遠心分離作用によりケース72の軸中心側に移動しながら上昇することで分離され、気体排出部75に排出される一方、空気が分離されたオイルがケース72内を内壁面に沿って旋回しながら下降し、液体排出部74から排出される。その結果、オイルの流量が変化しても適正にオイルから空気を分離することができ、気液分離効率の向上を図ることができると共に、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0072】
そして、実施例6では、ケース72を、同心円上に配設される外側ケース81及ぶ内側ケース82により構成することで、外側旋回室83と内側旋回室84を形成し、外側旋回室83と内側旋回室84とを連通する連通口85a,85bを形成し、導入量調整機構としての開閉筒86によりこの連通口85a,85bを開閉して通路面積を調整可能としている。従って、簡単な構成で、容易に通路面積を変更することができ、気液分離効率の向上を図ることができる一方で、装置の簡素化を図ることができる。
【0073】
そして、開閉筒86を、導入部73からケース72内に導入されるオイルの導入速度に応じて連通口85a,85bの通路面積を変更可能としている。従って、オイルの導入速度に応じて適正に通路面積が変更されることとなり、気液分離効率の向上を図ることができる。
【0074】
なお、上述の実施例では、開閉筒86をスプリング88の付勢力により所定の位置に付勢支持し、オイルの旋回力により回転するようにしたが、電磁ソレノイドなどによりスイッチングにより連通口85a,85bの通路面積を変更可能としてもよい。この場合、エンジンの暖機時には、オイルが高粘度であることから、連通口85a,85bの通路面積を拡大してオイルポンプの負荷を低減する。また、オイルの分離効率を高めたいときには、連通口85a,85bの通路面積を縮小して導入されるオイルの流速を上げる。また、エンジンコントロールユニットからの制御信号により開閉筒86を歯車などの駆動力伝達機構により回転するように構成してもよい。
【実施例7】
【0075】
図12は、本発明の実施例7に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【0076】
実施例7のエンジンの潤滑装置において、図12に示すように、気液分離装置91は、ケース92と、導入部93と、液体排出部94と、気体排出部95とから構成されている。そして、導入部93にオイルタンク96からの供給通路97が連結されている。また、液体排出部94にオイル潤滑部98への液体排出通路99が接続され、この液体排出通路99にオイルポンプ(液体搬送ポンプ)100が設けられる一方、気体排出部95にオイルタンク96への気体排出通路101が接続され、この気体排出通路101にエアポンプ(気体搬送ポンプ)102が設けられている。そして、オイルポンプ100とエアポンプ102は、制御装置103によりエンジン運転状態に応じて制御可能となっている。なお、気液分離装置91は、上述した実施例6の気液分離装置71と同様に、導入部93からケース92内に導入するオイルの導入量を調整する導入量調整機構が設けられている。
【0077】
従って、制御装置103によりオイルポンプ100とエアポンプ102を駆動制御すると、オイルポンプ100により液体排出通路99を介して気液分離装置91に負圧が作用し、オイルタンク96のオイルが供給通路97を通して気液分離装置91に吸入される。すると、この気液分離装置91にて、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルが旋回しながら下降する。そして、空気は、気体排出通路101によりオイルタンク96に戻される一方、オイルは、液体排出通路99によりオイル潤滑部98へ供給される。
【0078】
そして、エンジンの運転状態に応じてオイル潤滑部98へのオイル供給量に変動があったときには、制御装置103がオイルポンプ100及びエアポンプ102を制御することで、オイルタンク96から供給通路97を通して気液分離装置91に導入するオイルの導入量を増減することで、オイル潤滑部98へのオイル供給量を増減することができる。
【0079】
このように実施例7の気液分離装置91を有するエンジンの潤滑装置にあっては、気液分離装置91の導入部93にオイルタンク96からの供給通路97を連結し、液体排出部94にオイル潤滑部98への液体排出通路99を接続してオイルポンプ100を設ける一方、気体排出部95にオイルタンク96への気体排出通路101を接続してエアポンプ102を設けている。
【0080】
従って、オイルポンプ100を駆動すると、液体排出通路99を介して気液分離装置91に負圧が作用し、オイルタンク96のオイルが供給通路97を通して気液分離装置91に吸入され、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルは旋回しながら下降する。そのため、気液分離装置91では、常時負圧状態となって減圧沸騰の作用によりオイルから空気の分離性能が向上することとなり、気液分離効率の向上を図ることができる。
【0081】
また、本実施例では、制御装置103によりオイルポンプ100及びエアポンプ102を制御することで、オイルタンク96から供給通路97を通して気液分離装置91に導入するオイルの導入量を増減し、オイル潤滑部98へのオイル供給量を増減することができ、また、気液分離装置91では、オイルの流量が変化しても適正にオイルから空気を分離することができ、気液分離効率の向上を図ることができると共に、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【実施例8】
【0082】
図13は、本発明の実施例8に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【0083】
実施例8のエンジンの潤滑装置において、図13に示すように、気液分離装置111は、ケース112と、導入部113と、液体排出部114と、気体排出部115とから構成されている。この場合、ケース112は、上部と下部の内径が同寸法に設定され、液体排出部114がケース112の外周下部に設けられている。そして、導入部113にオイルタンク116からの供給通路117が連結されている。また、液体排出部114にオイル潤滑部118への液体排出通路119が接続され、この液体排出通路119にオイルポンプ(液体搬送ポンプ)120が設けられる一方、気体排出部115にオイルタンク116への気体排出通路121が接続され、この気体排出通路121にエアポンプ(気体搬送ポンプ)122が設けられている。そして、オイルポンプ120とエアポンプ122は、制御装置123によりエンジン運転状態に応じて制御可能となっている。なお、気液分離装置111は、上述した実施例6の気液分離装置71と同様に、導入部113からケース112内に導入するオイルの導入量を調整する導入量調整機構が設けられている。
【0084】
従って、制御装置123によりオイルポンプ120とエアポンプ122を駆動制御すると、オイルポンプ120により液体排出通路119を介して気液分離装置111に負圧が作用し、オイルタンク116のオイルが供給通路117を通して気液分離装置111に吸入される。すると、この気液分離装置111にて、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルは旋回しながら下降する。そして、空気は、気体排出通路121によりオイルタンク116に戻される一方、オイルは、液体排出通路119によりオイル潤滑部118へ供給される。
【0085】
そして、エンジンの運転状態に応じてオイル潤滑部118へのオイル供給量に変動があったときには、制御装置123がオイルポンプ120及びエアポンプ122を制御することで、オイルタンク116から供給通路117を通して気液分離装置111に導入するオイルの導入量を増減することで、オイル潤滑部118へのオイル供給量を増減することができる。
【0086】
このように実施例8の気液分離装置111を有するエンジンの潤滑装置にあっては、気液分離装置111の導入部113にオイルタンク116からの供給通路117を連結し、液体排出部114にオイル潤滑部118への液体排出通路119を接続してオイルポンプ120を設ける一方、気体排出部115にオイルタンク116への気体排出通路121を接続してエアポンプ122を設けている。
【0087】
従って、オイルポンプ120を駆動すると、液体排出通路119を介して気液分離装置111に負圧が作用し、オイルタンク116のオイルが供給通路117を通して気液分離装置111に吸入され、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルは旋回しながら下降する。そのため、気液分離装置111では、常時負圧状態となって減圧沸騰の作用によりオイルから空気の分離性能が向上することとなり、気液分離効率の向上を図ることができる。
【0088】
また、本実施例では、制御装置123によりオイルポンプ120及びエアポンプ122を制御することで、オイルタンク116から供給通路117を通して気液分離装置111に導入するオイルの導入量を増減し、オイル潤滑部118へのオイル供給量を増減することができる。また、気液分離装置111では、オイルの流量が変化しても適正にオイルから空気を分離することができ、気液分離効率の向上を図ることができると共に、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0089】
更に、本実施例の気液分離装置111では、ケース112の上部と下部の内径を同寸法に設定し、液体排出部114をケース112の外周下部に設けている。従って、ケースに円錐部が不要となって構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができると共に、空気を分離したオイルを旋回したままで液体排出部114から排出することができ、ここでの圧力損失を低減して気液分離効率の向上を図ることができる。
【実施例9】
【0090】
図14は、本発明の実施例9に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【0091】
実施例8のエンジンの潤滑装置において、図14に示すように、気液分離装置131は、ケース132と、導入部133と、液体排出部134と、気体排出部135とから構成されている。そして、導入部133にオイルタンク136からの供給通路137が連結されている。また、液体排出部134にオイル潤滑部138への液体排出通路139が接続され、この液体排出通路139にオイルポンプ(液体搬送ポンプ)140が設けられている。一方、オイル潤滑部138からオイルタンク136へのオイルの戻り通路141が設けられ、この戻り通路141のベンチュリ部142に気体排出部135からの気体排出通路143が接続されている。そして、オイルポンプ140は、制御装置144によりエンジン運転状態に応じて制御可能となっている。なお、気液分離装置131は、上述した実施例6の気液分離装置71と同様に、導入部133からケース132内に導入するオイルの導入量を調整する導入量調整機構が設けられている。
【0092】
従って、制御装置144によりオイルポンプ140を駆動制御すると、オイルポンプ140により液体排出通路139を介して気液分離装置131に負圧が作用し、オイルタンク136のオイルが供給通路137を通して気液分離装置131に吸入される。すると、この気液分離装置131にて、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルが旋回しながら下降する。そして、オイルは、液体排出通路139によりオイル潤滑部138へ供給され、戻し通路141を通ってオイルタンク136に戻される。また、空気は、ベンチュリ部142で発生する吸引力により、気体排出通路143を介して吸引され、オイルタンク136に戻される。
【0093】
そして、エンジンの運転状態に応じてオイル潤滑部138へのオイル供給量に変動があったときには、制御装置144がオイルポンプ140を制御することで、オイルタンク136から供給通路137を通して気液分離装置131に導入するオイルの導入量を増減することで、オイル潤滑部138へのオイル供給量を増減することができる。
【0094】
このように実施例9の気液分離装置131を有するエンジンの潤滑装置にあっては、気液分離装置131の導入部133にオイルタンク136からの供給通路137を連結し、液体排出部134にオイル潤滑部138への液体排出通路139を接続してオイルポンプ140を設ける一方、気体排出部135からの気体排出通路143を、オイル潤滑部138からオイルタンク136への戻し通路141のベンチュリ部142に接続している。
【0095】
従って、オイルポンプ140を駆動すると、液体排出通路139を介して気液分離装置131に負圧が作用し、オイルタンク136のオイルが供給通路137を通して気液分離装置131に吸入され、内部でオイルが旋回することで、このオイルに混入した空気が遠心分離作用により軸中心側に移動することで分離され、浮力によりそのまま上昇する一方、空気が分離されたオイルは旋回しながら下降する。そのため、気液分離装置131では、常時負圧状態となって減圧沸騰の作用によりオイルから空気の分離性能が向上することとなり、気液分離効率の向上を図ることができる。
【0096】
また、本実施例では、制御装置144によりオイルポンプ140を制御することで、オイルタンク136から供給通路137を通して気液分離装置131に導入するオイルの導入量を増減し、オイル潤滑部138へのオイル供給量を増減することができ、また、気液分離装置131では、オイルの流量が変化しても適正にオイルから空気を分離することができ、気液分離効率の向上を図ることができると共に、所定の処理量、つまり、オイル潤滑部への適正なオイル供給量を確保することができる。
【0097】
更に、本実施例の気液分離装置131では、気体排出部135からの気体排出通路143を戻し通路141のベンチュリ部142に接続しており、ベンチュリ部142で発生する吸引力により気体排出通路143からオイルタンク136に戻されることとなり、エアポンプを不要として構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明に係る気液分離装置は、内部に導入される流体と内部で分離された気体との干渉を防止して分離効率の向上を図ると共に装置の小型化を図るものであり、内燃機関に限定されるものではなく、いずれの気液分離装置に適用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施例1に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の気液分離装置における平面図である。
【図3】実施例1の気液分離装置における作用を表す概略図である。
【図4】本発明の実施例2に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図5】本発明の実施例3に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図6】本発明の実施例4に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図7】実施例4の気液分離装置における平面図である。
【図8】本発明の実施例5に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図9】本発明の実施例6に係る気液分離装置を表す概略構成図である。
【図10】実施例6の気液分離装置における水平断面図である。
【図11】実施例6の気液分離装置における作動状態を表す水平断面図である。
【図12】本発明の実施例7に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【図13】本発明の実施例8に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【図14】本発明の実施例9に係る気液分離装置が適用されたエンジンの潤滑装置を表す概略構成図である。
【図15】従来の気液分離装置における作用を表す概略図である。
【符号の説明】
【0100】
11,31,41,51,61,71,91,111,131 気液分離装置
12,32,42,52,62,72,92,112,132 ケース
13,33,43,53,63,73,93,113,133 導入部
13a,33a,43a,53a,63a,73a 導入口
14,34,44,54,64,74,94,114,134 液体排出部
15,35,45,55,65,75,95,115,135 気体排出部
81 外側ケース
82 内側ケース
83 外側旋回室
84 内側旋回室
85a,85b 連通口
86 開閉筒(導入量調整、開閉体)
87a,87b 開口部
88 スプリング
96,116,136 オイルタンク(貯蔵タンク)
100,120,140 オイルポンプ(液体搬送ポンプ)
102,122 エアポンプ(気体搬送ポンプ)
141 戻し通路
142 ベンチュリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二相流体の旋回による遠心力を利用して液体と気体とに分離する気液分離装置であって、円筒密閉形状をなすケースと、該ケースの外周部に設けられて該ケース内に気液二相流体を導入する導入部と、前記ケースの下部に設けられて気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部と、前記ケースの上部に設けられて気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部とを具え、前記導入部は、前記ケースの軸方向に長い長孔形状をなす導入口を有することを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気液分離装置において、前記導入口は、長円形状または矩形形状または多数の円が連続した形状であることを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の気液分離装置において、前記導入部は、前記ケースの周方向に複数設けられることを特徴とする気液分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載の気液分離装置において、前記複数の導入部は、前記ケースの軸方向における異なる位置に設けられることを特徴とする気液分離装置。
【請求項5】
気液二相流体の旋回による遠心力を利用して液体と気体とに分離する気液分離装置であって、円筒密閉形状をなすケースと、該ケースの外周部に設けられて該ケース内に気液二相流体を導入する導入部と、該導入部から前記ケース内に導入する気液二相流体の導入量を調整する導入量調整手段と、前記ケースの下部に設けられて気液二相流体から分離した液体を排出する液体排出部と、前記ケースの上部に設けられて気液二相流体から分離した気体を排出する気体排出部とを具えたことを特徴とする気液分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の気液分離装置において、前記ケースは、同心円上に配設される外側ケース及ぶ内側ケースにより構成されることで、外側旋回室と内側旋回室が形成され、前記外側旋回室と前記内側旋回室とを連通する連通口が設けられ、前記導入量調整手段は、前記連通口の通路面積を調整する開閉体を有することを特徴とする気液分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の気液分離装置において、前記開閉体は、前記導入部から前記ケース内に導入される気液二相流体の導入速度に応じて前記連通口の通路面積を変更することを特徴とする気液分離装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の気液分離装置において、前記液体排出部に液体搬送ポンプが連結される一方、前記気体排出部に気体搬送ポンプが連結されることを特徴とする気液分離装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つ記載の気液分離装置において、前記液体排出部に液体搬送ポンプが連結される一方、前記気体排出部が液体を貯蔵タンクに戻す戻し通路が連結されることを特徴とする気液分離装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つ記載の気液分離装置において、前記ケースは、上部と下部の内径が同寸法に設定され、前記液体排出部が前記ケースの外周下部に設けられることを特徴とする気液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−246370(P2008−246370A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90793(P2007−90793)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】