説明

気管切開部噴霧用パッド

【解決手段】 気管切開チューブに噴霧するための方法および器具が開示されている。噴霧用パッド(100)は、フラップ(105)と噴霧剤を含んでいる吸収性中心コア(110)とを含む。前記吸収性中心コアは噴霧剤で飽和され、前記気管切開チューブの縁部に前記フラップを接着することにより、前記気管切開チューブの開口部(510)の近傍に取着される。利用者は前記吸収性中心コアを通して前記気管切開チューブ(300)内へ空気(700)を吸入することにより、前記気管切開チューブに噴霧する。吸入された空気が前記吸収性中心コアを通過する際、前記噴霧剤の少なくとも一部は蒸気の形で前記空気と混合する。この湿った空気の気体混合物は、次に前記気管切開チューブに入り、前記チューブおよび気管に噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸療法の分野の装置一般に関し、より具体的には気管切開チューブの開口部と流通し、吸収性噴霧用パッドを通過した水蒸気を吸入することによって生じる湿空気を利用者の気管に継続的に供給するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気管切開チューブは、呼吸障害を有する患者に空気を提供するために使用される。通常の手術では、気管切開チューブを着用している個人は、前記チューブから空気を吸入および排出する。前記気管切開チューブから吸入された空気は、正常な呼吸中に湿気を与える口腔または鼻腔のいずれも通過しないため、湿気を欠く場合がある。乾燥した吸入空気によって前記利用者の気管チューブが損傷する可能性がある。さらに、前記気管が経時的に刺激され、前記利用者の気管または瘻孔に障害が起きる可能性がある。
【0003】
噴霧装置は、気管切開チューブから吸入された空気に湿気を提供するために開発されてきた。これまでに開発された噴霧装置の中には、通常電動式で非携帯型であるものもあった。そのため、前記装置においては、前記噴霧プロセス中、利用者は通常一定の場所にいることが必要であった。他の装置では利用者は、首の周りに紐、リボン、ストラップを結び、前記噴霧装置を前記気管切開チューブの正面に位置合わせする必要があった。このような装置は前記利用者に不快感を与える可能性がある。さらに、このような装置は、前記利用者の動作によって望ましい位置からずれる可能性が高い。
【0004】
前記利用者が携帯しやすいように、前記気管の噴霧を可能にする噴霧装置が必要とされているものである。さらに、前記噴霧プロセス中、気管切開チューブの開口部の近接部に維持される携帯噴霧装置の必要性が考慮されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の1若しくはそれ以上の必要性または問題の解決を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な1実施形態において、噴霧用パッドは、フラップおよび前記フラップに取着された吸収性中心コアを含む。前記フラップは感圧接着性である粘着性コーティングを含む。前記粘着性コーティングは1若しくはそれ以上の粘着性ストリップを含む。1実施形態では、前記フラップはアーチ型長方形に成形されている。また、前記フラップは柔軟材でできている場合もある。1実施形態では、前記吸収性中心コアは繊維と、天然繊維と、合成繊維と、セルロース誘導体からなる郡から選択された素材で形成されている場合もある。前記吸収性中心コアは、液体透過性である1若しくはそれ以上の部分を含んでいる場合もある。
【0007】
好適な1実施形態では、フラップおよび同フラップに取着された吸収性中心コアを有する噴霧用パッドを使用して、利用者の気管切開チューブを噴霧する方法は、前記噴霧用パッドの前記吸収性中心コアが前記気管切開チューブの開口部の正面に配置されるように、前記気管切開チューブの縁部に前記噴霧用パッドのフラップを接着する工程と、前記吸収性中心コアに噴霧剤を配置する工程と、前記噴霧剤を使用して、前記気管切開チューブを噴霧する工程を含む。前記フラップは粘着性コーティングを含み、前記気管切開チューブの上部外縁に接着されるのが好ましい。1実施形態では、前記フラップの粘着性コーティングは感圧接着性であり、1若しくはそれ以上の粘着性ストリップを含む。1実施形態では、前記噴霧剤は水を含む。前記吸収性中心コアは、前記気管切開チューブの開口部の近接して配置されている場合もある。1実施形態では、前記噴霧剤を配置する工程は、前記噴霧剤で前記吸収性中心コアを飽和させる工程を有する。1実施形態では、前記噴霧剤を使用する工程は、前記利用者が前記気管切開チューブから吸入する工程と、前記吸入に反応して、前記気管切開チューブを少なくとも前記噴霧剤の一部で噴霧する工程を含む。
【0008】
本装置および方法は、患者の快適性の向上、損傷の可能性が低下することによる気管切開チューブの信頼性の向上と寿命の延長などを含むいくつかの利点を提供する。さらに、前記気管と瘻孔の持続的な噴霧により高度の医療が実現されるものである。前記装置の別の利点は、一般的な製造技術および手法を利用して、容易に入手可能な素材で同装置を製造することができる点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本組成と方法を説明する前に、説明される特定の組成、方法論、またはプロトコールは様々である可能性があるため、本発明はこれらに限定されないことは理解されるものとする。前記説明に使用される用語は、特定の種類または実施例のみを説明することを目的としたもので、前記添付の請求項のみで限定される、本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されることとする。
【0010】
本文および添付の請求項に用いられるとおり、文脈が明確にそうでないことを示していない限り、単数型の「a」、「an」、「the」は複数の言及も含めることにも注意して頂きたい。従って、例えば、「噴霧性パッド」という言及は1若しくはそれ以上の噴霧性パッドおよび当業者に周知の同等物などを言及している。それ以外に定義されているのではない限り、本文に用いられるすべての技術的、科学的用語は、通常の当業者の1人によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本文に説明したものと同様またはそれに相当するすべての方法、装置、および材料は、本発明の実施例を実行または検討するために用いることができるが、前記好適な方法、装置、材料が今回報告される。本文に述べたすべての文献は、参考文献に含められている。本文では、本発明が事前の発明に基づき、そのような開示に先行する権利はないことの承認として解釈されることはない。
【0011】
図1は、本発明の実施例に従った典型的な気管切開噴霧性パッドの正面図を示している。前記気管切開噴霧性パッド100は、フラップ105と吸収性中心コア110とを含んでもよい。前記吸収性中心コア110は、繊維、天然繊維、合成繊維、セルロース誘導体、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される物質から形成されうる。前記吸収性中心コア110は、液体を透過させる上部および下部シートを含んでもよい。
【0012】
図2は、本発明の実施例に従った典型的な気管切開噴霧性パッドの粘着面を組み入れた背面図を示している。前記噴霧性パッド100の前記フラップ105は、気管切開チューブの露出面に接触する片面に基材を含んでもよい。前記基材は図4に示すとおり、前記気管切開チューブの表面に接着する接触面に、圧力性接着コーティング400を含んでもよい。前記フラップ105の本体には柔軟性のある軸を含んでもよく、前記フラップは前記吸収性中心コア100から折り曲げられ、壁の基部を形成する。図3に示すとおり、この壁は前記フラップ105の本体で前記柔軟性のある軸にまで伸びることにより、気管切開チューブ300上に折り曲げられる。前記噴霧性パッド100の前記吸収性中心コア110は、前記フラップ105の接合線および長手方向の縁部で曲がることが好ましい。前記フラップ105は、不透水性の前面および背面シートを含むのが好ましい。さらに、前記フラップ105は、前記フラップが前記吸収性中心コア110に直角に折り曲げられことができるように、柔軟性のある軸を有してもよい。好適な実施例では、前記フラップ105が柔軟であってもよい。
【0013】
図3は、本発明の実施例に従った気管切開チューブに接着された典型的な気管切開噴霧性パッドの正面図を示している。 好適な実施例では、前記フラップ105の接着基材は前記気管切開チューブ300の外部表面縁部に接着される。前記気管切開チューブ300に付着している間に前記フラップ105が適切に置かれていると、前記気管切開チューブは確実に持続的に噴霧され、前記利用者の不快感が最小限となる可能性がある。
【0014】
図5は、本発明の実施例に従った瘻孔に挿入された気管切開チューブに接着された、典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。通常の手術では、前記気管505に連通するため、気管切開チューブ300が頸部の瘻孔500から挿入される。前記フラップ105が前記気管切開チューブ300の縁部に取着されることにより、前記吸収性中心コア110は前記気管切開チューブの通路開口部510上に配置される。好適な実施例では、前記フラップ105が前記気管切開チューブ300の表面外縁部に取着されることにより、前記吸収性中心コア110は前記通路開口部510を覆う。図6は、前記チューブの開口部とそろうように、前記気管切開チューブ300の周縁部を覆っている前記吸収性中心コア110のより詳細な図を示している。好適な実施例では、図6に示すとおり、円筒型の気管切開チューブ300に接着するようにアーチ型の長方形として、前記フラップ105が形作られる。
【0015】
図7は、典型的な気管切開噴霧性パッドからの水蒸気が吸入空気と混合され、この水蒸気が前記気管切開チューブ通路を通り開口部(オリフィス)に達して湿気を与えている時の、本発明の実施例に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。前記フラップ105が前記気管切開チューブ300にしっかりと付着されている時、前記吸収性中心コア110は前記気管切開チューブ300の通路開口部510に非常に近接しているが、接触はしていないことが好ましい。水などの噴霧剤で飽和状態の前記吸収性中心コア110により、利用者は前記吸収性中心コアを通して湿った空気700を吸入できるようになる。利用者が前記気管切開チューブ300を通して空気700を吸入する時、前記吸収性中心コア110の噴霧剤は蒸気の形で前記吸収性中心コアから前記気管切開チューブ300内へ引き出される。結果として、前記利用者が前記気管切開チューブ300を通して吸引する度に、前記吸収性中心コア110は気管505に噴霧するために使用される。そのようにして、前記吸収性中心コア110を用いたこの方法は、気管および瘻孔に持続的な噴霧を提供することができる。
【0016】
図8は、呼気が前記気管切開チューブ通路を妨げられず通過する時の、本発明の実施形態に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。利用者が前記気管切開チューブ300を通して息を吐き出す時、前記気管切開チューブと前記覆われた吸収性中心コア110の間のスペースにより、空気800は障害なしに吐き出されることができる。
【0017】
図9は、分泌物が前記気管切開チューブ通路の前記開口部(オリフィス)から喀出される時の、本発明の実施形態に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。照射組織、粘液、血液、胆汁などの様々な分泌物900は、利用者が咳をしたときに生じる力などの強い力で気管切開チューブ300を通して喀出される。噴霧性パッド100なしでは、これらの分泌物900は前記気管切開チューブ300から、利用者の前にある対象物に喀出されるかもしれない。そのような場合、前記噴霧性パッド100は吸収壁としての機能を果たす。分泌物900が前記気管切開チューブ300を通して前記通路開口部の外へ吐き出される時、前記分泌物900は、空気中に自由に放出される代わりに、前記吸収性中心コア110に接触する。
【0018】
手術では、前記噴霧性パッド100は利用者、介護人、および/または医療機関(提供者)によって結果的により快適さをもたらす方法で容易に利用され、利用者に対する医療効果を高めるものである。前記噴霧性パッド100を使用することにより、毎日利用者に必要とされる(噴霧療法中利用者の動作を制限する)他の時間のかかる噴霧手続の数が軽減されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
一つには、本発明の実施例の他の側面、特徴、利益、利点は、以下の説明、添付の請求項、付図について明白である:
【図1】図1は、本発明の実施例に従った、典型的な気管切開噴霧性パッドの正面図を示している。
【図2】図2は、本発明の実施例に従った、典型的な気管切開噴霧性パッド接着面を組み入れた背面図を示している。
【図3】図3は、本発明の実施例に従った、気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの正面図を示している。
【図4】図4は、本発明の実施例に従った、取着された粘着ストリップを有する典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。
【図5】図5は、本発明の実施例に従った、瘻孔に挿入された気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。
【図6】図6は、本発明の実施例に従った、気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。
【図7】図7は、本発明の実施例に従った、前記典型的な気管切開噴霧性パッドと前記気管切開呼吸路との間で次から次へと流れる気流を示した典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。
【図8】図8は、典型的な気管切開噴霧性パッドからの水蒸気が吸引された空気と混合し、前記前記気管切開チューブ通路を通って前記開口部(オリフィス)に達して湿気を与えている時の、本発明の実施例に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。
【図9】図9は、呼気が前記気管切開チューブ通路を妨げられず通過する時の、本発明の実施形態に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。 図10は、粘液、照射組織などの分泌が前記気管切開チューブの通路開口部を通り、前記開口部(オリフィス)から排出される時の、本発明の実施形態に従った気管切開チューブに取着された典型的な気管切開噴霧性パッドの側面図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧用パッドであって、
フラップと、
前記フラップに取着された吸収性中心コアとを有し、
前記フラップは粘着性コーティングを含むものである、
噴霧用パッド。
【請求項2】
請求項1記載の噴霧用パッドにおいて、前記粘着性コーティングは感圧接着性である。
【請求項3】
請求項1記載の噴霧用パッドにおいて、前記粘着性コーティングは1若しくはそれ以上の粘着性ストリップを含むものである。
【請求項4】
請求項1記載の噴霧用パッドにおいて、前記フラップはアーチ型長方形に成形されているものである。
【請求項5】
請求項1記載の噴霧用パッドにおいて、前記フラップは柔軟性があるものである。
【請求項6】
請求項1の噴霧用パッドにおいて、前記吸収性中心コアは、繊維と、天然繊維と、合成繊維と、セルロース誘導体からなる郡の1若しくはそれ以上の素材からできているものである。
【請求項7】
請求項1記載の噴霧用パッドにおいて、前記吸収性中心コアは液体透過性である1若しくはそれ以上の部分を含むものである。
【請求項8】
フラップおよびこのフラップに取着された吸収性中心コアを有する噴霧用パッドを使用して、利用者の気管切開チューブを噴霧する方法であって、
前記気管切開チューブの縁部に前記噴霧用パッドのフラップを接着する工程を有し、この工程により、前記噴霧用パッドの前記吸収性中心コアは前記気管切開チューブの開口部の正面に配置されるようになり、前記フラップは粘着性コーティングを含むものである、前記接着する工程と、
前記吸収性中心コアに噴霧剤を配置する工程と、
前記噴霧剤を使用して前記気管切開チューブを噴霧する工程と
を有する方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記噴霧用パッドのフラップは前記気管切開チューブの上部外縁部に接着されているものである。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記フラップの前記粘着性コーティングは、感圧接着性である。
【請求項11】
請求項8記載の方法において、前記フラップの前記粘着性コーティングは1若しくはそれ以上の粘着性ストリップを含むものである。
【請求項12】
請求項8記載の方法において、前記噴霧剤は水である。
【請求項13】
請求項8記載の方法において、前記吸収性中心コアは前記気管切開チューブの開口部に
近接しているものである。
【請求項14】
請求項8記載の方法において、前記噴霧剤を配置する工程は、前記噴霧剤で前記吸収性中心コアを飽和させる工程を有するものである。
【請求項15】
請求項8の方法において、前記噴霧剤を使用する工程は、
前記利用者が前記気管切開チューブから吸入する工程と、
前記吸入に反応して、前記気管切開チューブを少なくとも前記噴霧剤の一部を用いて噴霧する工程と
を有するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−507291(P2007−507291A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533884(P2006−533884)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/028842
【国際公開番号】WO2005/032633
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(506102064)