気象画像解析方法
【課題】気象衛星の画像データを用いて地震の発生を的確に検出可能な画像解析方法を提供する。
【解決手段】気象衛星による気象画像データを解析する方法は、取得した気象画像データを、地形画像データとの対応する領域を明らかにするように、画像上に棒状マーカーを表示して地形画像データに載せ、気象画像データについてしきい値として設定した複数の明度値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、気象画像データを3次元表示し、得られた明度差および3次元データから、地震の有無を検出する。
【解決手段】気象衛星による気象画像データを解析する方法は、取得した気象画像データを、地形画像データとの対応する領域を明らかにするように、画像上に棒状マーカーを表示して地形画像データに載せ、気象画像データについてしきい値として設定した複数の明度値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、気象画像データを3次元表示し、得られた明度差および3次元データから、地震の有無を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の発生を検出可能な気象画像解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震発生時にはその規模により、特殊な気象画像が確認されている。
気象衛星の画像は、地形データに重ね合わせて用いられるが、地形データに対応したいずれの位置に雲が存在するのか、また、台風級の大きな勢力の低気圧に伴う雲の流れや台風の目の存在、気圧配置等を確認することができる。
【0003】
このような、気象衛星の画像データは、所定時間ごと(現在は30分ごと)に更新され、天気予報や台風の進路予想等に使用されている。
【0004】
気象衛星の画像としては、可視画像と赤外線画像がある。可視画像は太陽の反射光を捕らえた画像で、白い雲ほど厚みがあり、視覚的に認識できる。赤外線画像は温度観測により、雲頂の高度を見積もり、可視画像とは異なる。ただし、夜間の観測も可能である。
ある地域の一定時間継続した特殊な気象画像では、その地域で際立って明度の差が生じている。ここでは、そのような特殊な画像を異常気象画像と称する。
2008年6月14日8時43分ごろ、マグニチュード7.2の岩手・宮城内陸地震が発生した。この地域のその時刻の4時間前の前後で同様な異常気象画像が確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−209417号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国土地理院:数値地図1kmメッシュ(標高),1997年7月
【非特許文献2】榎田:光弾性実験の画像解析法の研究,日本実験力学会講演論文集,pp.327−330,3,2006
【非特許文献3】グラフィソフト社:ArchiCAD11,2007
【非特許文献4】産業技術総合研究所:全国主要活断層活動確率地図,2005年9月
【非特許文献5】東京大学出版会:活断層詳細デジタルマップ,2007年5月
【非特許文献6】国土地理院:数値地図250mメッシュ(標高),1997年7月
【非特許文献7】日本大地図帳 十訂版:平凡社,2008
【非特許文献8】世界を見渡す3Dソフトウェア,http://earth.google.co.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したように、気象衛星の画像は、地形データに対応した雲の位置や、大きな勢力の低気圧に伴う雲の流れや台風の目の存在を確認することができるが、地震等の発生は、その画像の特質から確認、あるいは予測することが極めて困難である。
【0008】
地震の検出のために、気象衛星の画像を3次元表示することにより、解明の糸口を得ることができる可能性があるものと考えられる。
しかしながら、たとえば大きな勢力の台風を含む気象衛星の可視画像は、九州や四国の全体を覆うような厚い雲が存在する場合、明度が高く明度差が少ないため、3次元表示をすることは困難である。
【0009】
3次元表示がより明確な赤外線画像を利用することも可能であるが、地形データに比べて、気象データはそのピクセル数が少なく粗いために、現状では気象異常状態の発生検出に用いることは難しい。
【0010】
また、気象画像データのデータ間を線形補間してデータ数を増やす処理を行うことにより、前記気象データのピクセル数は多少改善されてはいるが、デジタル画像のような、鮮明な地形データとはなかなか合致しないのが現状であった。
【0011】
本発明は、効果的にフーリエ近似および地形データと気象画像データの位置合わせを行うことにより、地震時における気象画像データから得られるデータが、地形画像データとほぼ一致する程度まで精度の高められた、気象画像データの解析方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、気象衛星による原気象画像データを解析する気象画像解析方法であって、地形データを、メッシュ地図を用いて3次元表示して地形画像データとし、前記地形画像データから海域と湖を示すデータを削除した後地形をいくつかに分割し、前記原気象画像データについて、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成することによりデータ数を増やし、取得した線形補間後気象画像データを、前記地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて前記地形画像データに載せ、前記気象画像データ中の明度の高い、少なくとも経線、緯線、地形境界線を削除して、当該線の周辺の雲または隣り合う明度に置き換えて画像に修正し、前記気象画像データについて複数の明度値をしきい値として設定し、当該設定値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、前記気象画像データを3次元表示し、前記明度差および前記3次元表示気象画像データから、地震の有無および震源地を検出する。
【0013】
好適には、地形画像データと気象画像データの連結は、両画像を棒状マーカーで結ぶことによりなされる。
【0014】
本発明の第2の観点は、最低明度値を求める基準、気象画像データの精度を高める基準など、求められる基準によって、線形補間の倍率およびフーリエ級数近似曲線の級数項数を変更し、有効な明度差を得ることができる。
【0015】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0016】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による70〜80%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0017】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による80〜90%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0018】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による90〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0019】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0020】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による70〜80%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0021】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による80〜90%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0022】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による90〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0023】
好適には、原気象画像を、最低明度値を得る場合よりも高いピクセル数および/または級数項数フーリエ級数近似曲線で作成されることにより、地震による異常気象画像を検出するための最高明度値、および高精度の気象画像データを得る。
【0024】
本発明において、原気象画像データとは、変更、調整しない気象衛星による気象画像データである。
【0025】
また、本発明において、メッシュとは、グリッドデータのことをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、気象衛星の画像データの明度差を利用することにより地震の発生および震源を的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(A)はメッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加したものである。図1(B)は削除されたメッシュ番号を除いて、メッシュを通し番号に並べ替え、その座標軸を入れ替えさらに節点番号を通し番号順に並べ替えたものである。
【図2】図2は東北の地形画像である。
【図3】図3はメッシュ削除後の3次元表示である。
【図4】図4はデータ数を増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した東北地方の地形画像である。
【図5】図5はデータ数を増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した東北地方の地形画像である。
【図6】図6は気象庁発表の2008年06月14日08時43分頃発生した岩手・宮城内陸地震の各地の震度に関する情報である。
【図7】図7は、気象庁発表の同地震の推計震度4以上の範囲を示した詳細である。
【図8】図8は震度計の設置位置を示す。
【図9】図9は岩手県周辺の活断層分布を示す。図9(A)は2005年度版、図9(B)は2007年度版での表示である。
【図10】図10は図9(A)の活断層分布に、地表地震断層の調査地点を重ねて示している。
【図11】図11は岩手・宮城県内陸南部で発生した地震の明度の高い経線、緯線、地形境界線の削除前後の赤外画像である。
【図12】図12は線形補間前後の画像のピクセル数を示す。図12(A)は線形補間前(37行37列)であり、図12(B)は線形補間後(3倍80%,109行109列)である。
【図13】図13は地震発生時刻(8時43分)から4時間前の前後の各時刻の気象画像である。
【図14】図14は図13(A)の拡大図である。
【図15】図15は図13(B)の拡大図である。
【図16】図16は図13(C)の拡大図である。
【図17】図17は図13(D)の拡大図である。
【図18】図18は図13(E)の拡大図である。
【図19】図19は岩手県付近を拡大した画像で、図19(A)・(C)・(E)は経線等削除前、図19(B)・(D)・(F)は削除後の画像である。
【図20】図20は岩手県付近を拡大した画像で、図20(A)・(C)は経線等削除前、図20(B)・(D)は削除後の画像である。
【図21】図21は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下で削除した表示である。図22は3倍100%で明度値145以下を削除した表示である。図21〜図29において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点を表す。
【図22】図22は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値145以下を削除した表示である。
【図23】図23は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図24】図24は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図25】図25は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図26】図26は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図27】図27は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図28】図28は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、図27の上空からの視線の平面表示である。
【図29】図29は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図30】図30は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値103以下で削除した表示である。図30〜図38において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図31】図31は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値107以下を削除した表示である。
【図32】図32は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図33】図33(A)・(B)は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図34】図34は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図35】図35は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図36】図36は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図37】図37は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり図36の上空からの視線の平面表示である。
【図38】図38は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、南西方向からの視線の3次元表示である。
【図39】図39は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示である。図39〜図47において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5は小高明度地点を表す。
【図40】図40は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値120以下を削除した表示である。
【図41】図41は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図42】図42は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図43】図43は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図44】図44(A)・(B)は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、図44(A)は3倍80%で作成した震源地付近東西断面であり、図44(B)は3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図45】図45は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図46】図46は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、図45の上空からの視線の平面表示である。
【図47】図47は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、東方向からの視線の3次元表示である。
【図48】図48は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示である。図48〜図56において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図49】図49は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値106以下を削除した表示である。
【図50】図50は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図51】図51は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図52】図52は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図53】図53は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図54】図54は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図55】図55は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり図54の上空からの視線の平面表示である。
【図56】図56は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図57】図57は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値101以下で削除した表示である。図57〜図63において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点を表す。
【図58】図58は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値114以下を削除した表示である。
【図59】図59は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図59(A)・(B)は3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図60】図60は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図60(A)・(B)は3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。図60(A)は3倍80%で作成した震源地付近東西断面であり、図60(B)は3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図61】図61は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図62】図62は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図61の上空からの視線の平面表示である。
【図63】図63は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図64】図64は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、平面で5倍100%フーリエ近似により明度値115以下を削除した表示である。
【図65】図65は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、平面で5倍100%フーリエ近似により明度値117以下を削除した表示である。
【図66】図66は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、図64を用いて震源地付近の震度分布を震度5弱以上について表示している。
【図67】図64の地形の中央部分を図67(A)は1kmメッシュを用いた表示で、図67(B)は250mメッシュを用いた表示である。
【図68】図68は3倍80%で作成した震源付近の東西断面で、地形は250mメッシュの表示である。
【図69】図69は南北断面で、地形中央部分は250m、両端は1kmメッシュの表示である。
【図70】図70は震源付近の衛星画像である。
【図71】図71は震源付近の分県図である。
【図72】図72(A)は震源付近の3次元地形であり、図72(B)は震源付近の地形拡大図である。
【図73】図73は地震直後の荒砥沢ダムの上空写真である。
【図74】図74は岩手県付近の地形に4時の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下を削除した表示である。aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図75】図75は数値地図1kmメッシュデータである。
【図76】図76は、本発明の実施形態に係る画像解析装置(気象異常検出装置)の構成例を示すブロック図である。
【図77】画像データ群を示すグラフであり、図77(A)はフーリエ級数に回帰させるデータ群のグラフであり、図77(B)は図77(A)に示すデータ群をフーリエ級数に回帰させて得られる近似曲線のグラフである。
【図78】気象画像の基点として日本地形の区域での4交点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0029】
図76は、本発明の実施形態に係る気象画像解析において使用する気象画像解析装置(気象異常検出装置)の構成例を示すブロック図である。
【0030】
気象画像解析装置(気象異常検出装置)10は、図76に示すように、地形データ記憶部11、気象画像データ提供部12、気象画像データ取得部13、記憶部14、操作部15、表示部16、および処理部17を主構成要素として有している。
【0031】
地形データ記憶部11は、5mから1kmメッシュまで種々の数値地図として国土地理院から公開(たとえば非特許文献1あるいは非特許文献6参照)されている地形データのうち、たとえば1kmメッシュの地形データを記憶する。
地形データ記憶部11は、たとえばCDROM等の記憶媒体として形成され、処理部17によりアクセス可能な図示しない光記録再生装置等にセットされ、処理部17により記憶データが読み出される。
この読み出される地形データの数値データは、地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されるように形成されている。
【0032】
気象画像データ提供部12は、気象衛星を通して撮像された気象画像データを記憶するデータベースとして形成され、気象画像データ取得部13を介して取得可能に構成されている。
気象画像データ提供部12は、気象衛星を通して赤外線画像あるいは可視画像として撮像され、30分ごとに更新され、所定期間のデータが蓄積される。
【0033】
気象画像データ取得部13は、処理部17による気象画像データ取得の指示に応答して、気象画像データ提供部12にデータ要求等の送受によるネゴシエーション(データの交換手続)等を行って気象画像データを取得する。
気象画像データ取得部13により取得された気象画像データは、記憶部14に格納される。
【0034】
記憶部14は、処理部17のメインプログラムや気象画像の解析プログラム、計算プログラム等を記憶する。
また、記憶部14は、画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、あるいは解析処理中のデータ等が一時的にあるいは保存データとして記憶される。
記憶部14は、処理部17によりアクセスされ、データが読み出されたり、書き込まれたりする。
【0035】
操作部15は、キーボードやマウス等により構成され、処理部17において、所望のプログラムを実行するためのコマンドや設定値を入力し、処理部17に指示するために使用される。
【0036】
表示部16は、たとえば、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示パネル(LDC)等の各種表示装置により構成され、表示部16のモニタ部には、取得した画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、解析処理のデータ、解析結果が表示される。
また、表示部16のモニタ部には、処理部17への処理の指示のためのGUI(Graphical User Interface)画面が表示される。
【0037】
処理部17は、気象画像解析装置10全体の各部の制御を行う。
処理部17は、操作部15の操作入力に応答して気象画像解析のため、地形データ記憶部11による地形データの取得、気象画像データ取得部13を通しての気象画像データの取得、取得データの記憶部14への格納処理、読み出し処理を行う。
さらに、処理部17は、以下に詳述するような、取得したデータのモディファイ処理、合成処理、気象画像データの複数の明度値をしきい値としたスキャン処理等を行って、気象画像データの解析処理を行い、取得した画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、解析処理のデータ、解析結果等の表示部16への3次元表示制御等を行う。
【0038】
以下、本実施形態に係る気象画像データの解析処理について、図面に関連付けて説明する。
【0039】
<処理の概略>
地形データは5mから1kmメッシュまで種々の数値地図として国土地理院から公開(非特許文献1および6)されている。
本実施形態においては、たとえば、1kmメッシュを用いて地形を3次元表示する。この数値データは地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されている。まず、これらの海域と湖を地形データから削除して3次元表示する。海域と湖を省くことで地形の表示がより明確になり、画像表示時間も短縮できる。
【0040】
次に、本実施形態においては、気象衛星ひまわりの気象画像データを地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて地形画像データ上に載せて、その明度差を利用して3次元表示する。その際、明度の低いデータを削除して表示する。これにより、明度の高い厚い雲等が表示可能になる。なお、画像の明度は、0〜255の256の値をとることが可能であり、明度値255に近いほど画像は白く表示され、明度値0に近いほど画像は黒く表示される。
【0041】
また、地形画像データと気象画像データの同じ領域において、地形画像データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく粗いために、後で詳述するように、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、そのデータ数を増やす処理を行う。
【0042】
以下の処理部17における気象画像データの解析処理のより具体的な処理について、順を追って説明する。
【0043】
<地形データの海域と湖の削除>
上述したように、1kmメッシュの数値地図は地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されている。その行列数は80×80で、そのユニットを連結して求める地形が表示できる。
ここでは、そのユニットを連結して九州の地形データの行列を作成する。地形標高データを3次元表示するために、そのデータをDXF(Drawing Interchange File)変換して3次元CADで読み込み、地形メッシュを作成する。
その際、湖と海域の標高0m以下のメッシュを削除する。
【0044】
図1(A)・(B)は地形データのメッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加した例を示す図であって、図1(A)はメッシュの削除前を示し、図1(B)はメッシュの削除後を示している。
【0045】
地形データは、図1(A)に示すように、メッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加したものである。その後、標高0の節点を含むメッシュ、たとえば、図1(A)で番号6,7,10,11のメッシュを削除する。
図1(B)に示すように、削除されたメッシュ番号を除いて、メッシュを通し番号に並べ替え、その座標値を入れ替える。さらに節点番号を通し番号に並べ替える。
これにより、節点番号が1から昇順に付加されてDXF変換が可能になる。
【0046】
図2(A)・(B)は、海域と湖の削除前後の東北の地形画像を示す図であって、図2(A)が海域と湖の削除前の画像を示す図であり、図2(B)が海域と湖の削除後の画像を示す図である。
図3は、海域と湖の削除後の東北の3次元表示画像を示す図である。
【0047】
図2は、行列数80×80のユニットを3行3列連結したもので、海域と湖のメッシュ削除前と削除後の表示である。図3は、同様にメッシュ削除後の3次元表示である。震源地を垂直な棒状マーカーでマークしている。この図では特に傾きの大きい部分でメッシュが粗い。
【0048】
また、地形画像と気象画像の同じ領域において、地形画像データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく表示が粗くなる。
そこで、本実施形態においては、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、データ数を増やして表示する。
【0049】
図4、5はデータを増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した。図2、3と比較してより細密な地形画像表示である。3次元の傾きの大きい部分も、鮮明に表示されている。震源地付近は山間部で、西部には標高1600mの栗駒山があり、東部は標高350m前後の山が散在している。
【0050】
以下、上記実施の形態を実際の地震の検出に適用した具体例を述べる。
【0051】
岩手・宮城内陸地震
2008年06月08日8時43分頃、岩手県で地震が発生した。震源地は岩手県南部(北緯39度2分、東経140度53分)で震源の深さは約8km、地震の規模(マグニチュード)は7.2と推定されている。岩手県奥洲市衣川区で最大震度は6強である。気象庁発表の各地の震度に関する情報、地震情報を図6、7に示す。
【0052】
岩手県周辺の活断層、地震分布を図9に示す。図9(A)は2005年度版(非特許文献4)、図9(B)は2007年度版(非特許文献5)での表示である。この時点までに岩手県南部の活断層は見つかっていなかったため、×印の震源付近に活断層は表示されていない。
【0053】
図9(A)の活断層分布に、地表地震断層の調査地点を重ねて、活断層分布と地震発生後確認された断層を図10に示している。
【0054】
気象衛星の画像には、気象画像のほかに、明度の明るい経線、緯線、地形境界線などが含まれているので、それらの線を削除して気象画像の明度のみを表示する必要がある。そのため、それらの線の周辺の隣り合う明度に置き換えて、余計なデータを削除した画像に修正する。
【0055】
気象衛星の画像には可視画像と赤外画像があり、可視画像は太陽の反射光を捕らえた画像で、白い雲ほど厚みがあり、視覚的に認識できる。一方、赤外画像は赤外線の強さから物体の表面温度を測定し、白い雲ほど温度の低い高い位置の雲、あるいは積乱雲等を表示している。ただし、夜間の測定も可能である。
【0056】
可視画像は一般的に明度差が少ないため、明度差を利用した3次元表示を明確にできない。そこで、ここでは3次元表示がより明確な赤外画像を利用する。
【0057】
図11は岩手・宮城県内陸南部で発生した地震の明度の高い経線、緯線、地形境界線の削除前後の赤外線画像である。
【0058】
また、地形と気象画像の同じ領域において、地形データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく、表示が粗くなる。そこで、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、データ数を増やして表示する。
【0059】
次に、地形データの海域と湖の削除と同様に、明度の低い気象画像データを削除して表示する。
これにより、明度の高い厚い雲等が表示可能になる。
図12は線形補間前後の赤外線画像の3次元表示例である。
【0060】
図12(A)・(B)は、線形補間前後の赤外線画像表示を示す図であって、図12(A)が画像のピクセル数の少ない線形補間前(37行37列)の赤外線画像を示す図であり、図12(B)が線形補間後(3倍,80%,109行109列)の赤外線画像を示した図である。図12(A)・(B)に示すように、ピクセル数の少ない線形補間前の画像を線形補間すると、線形補間後の画像はその3倍(級数の項数80%)のピクセル数で、細密で滑らかな曲面になっている。
【0061】
本実施形態においては、気象画像データを線形補間し、たとえば等間隔にサンプリングされている離散画像データ群、あるいは、不等間隔にサンプリングされている離散画像データ群を元にして、データ数が画像データ群のデータ数の所定倍の回帰用データを生成し、この回帰用データを、項数が画像データ群のデータ数よりも小さいフーリエ級数に回帰させて元の画像データ群を近似する。その結果、近似により得られたデータ群の各データは滑らかに変化するようになり、かつ、近似の精度が向上する。
【0062】
すなわち、本実施形態においては、画像データ群をフーリエ級数に回帰させることによる近似を行う。
後述するとおり、画像データ群のデータ数が多いほど近似精度が良くなり、項数が少なくなるほど、計算時間は短くなる。そこで、本実施形態においては、対象の地形をいくつかに分割し、単位画像あたりのデータ数を多くすることによって高精度の近似を得る。
【0063】
離散データ群をフーリエ級数へ回帰させる手法について、以下に簡単に説明する。
【0064】
フーリエ級数を用いると、回帰曲線により再現しようとする離散データ群の曲線を、三角関数を用いて1つの式によって表現することができる。
等間隔にN個のデータがサンプリングされる関数x(t)をフーリエ級数で表わすとすると、A0,A1,A2,…,AkおよびB0,B1,B2,…,Bkを適宜決められる定数としたとき、x(t)=A0+A1cost+A2cos2t+…+Akcoskt+…+B0+B1sint+B2sin2t+…+Bksinkt+…として表わすことができる。
上式をまとめると下記式(1)のようになる。
【0065】
【数1】
【0066】
式(1)において、Δtがサンプリング間隔を示し、NΔtが関数x(t)の継続区間を示している。
式(1)はkについて0から無限大まで総和している無限級数であるが、k=N/2までで打ち切ると、下記式(2)で表される有限三角級数となる。
【0067】
【数2】
【0068】
上式(2)によって表わされる関数を、サンプリング間隔ΔtでサンプリングされたN個のサンプル値xm(m=0,1,2,…,N−1)を通るような関数に直すと、各サンプル値xmは以下の式(3)のように表わすことができる。
【0069】
【数3】
【0070】
上式(3)における係数Ak、Bkはそれぞれ下記式(4)、(5)で表すことができる。
【0071】
【数4】
【0072】
【数5】
【0073】
上式(3)で表わされる関数は、各サンプル値xmを全て正確に通過する。したがって、上式(3)を用いれば、画像データ群をフーリエ級数に回帰させて、近似曲線を得ることができる。
【0074】
ただし、式(3)の関数をそのまま用いて画像データ群を全て通過するように回帰させると、フーリエ級数に回帰させて得られた近似曲線は図77(A)に示すグラフGDC1のように細かい増減を繰返す曲線となってしまう。
フーリエ級数近似後のデータの値が細かく増減することを防止して滑らかな近似曲線が得られるようにするために、本実施形態においては、式(3)の関数の項数、すなわち係数Ak、Bkの数を、ステップST1において得られた画像データ群のデータ数よりも小さい所定の数にして画像データ群をフーリエ級数に回帰させる。
【0075】
フーリエ級数の項数の数については、画像データ群のデータ数の約数十%程度にすることが、等高線等の特定のためには好ましい。
画像データ群のデータ数が少な過ぎると、十分な近似精度が得られなくなるほど項数pの数が少なくなる。
したがって、必要な近似精度にもよるが、項数pを増加してある程度の近似精度を確保するために、元となる画像データ群のデータ数もある程度必要である。画像データ群のデータ数が多いほど近似精度が良くなる。
【0076】
項数pが少なくなるほど、式(3)の関数の計算時間は短くなり、得られる近似曲線は滑らかになる傾向にある。
ただし、項数pが少なくなると画像データ群の後ろの部分において近似値との間の誤差が大きくなってくる。そこで、近似の精度を高めるために、本実施形態においては画像データ群に付加的な付加データ群を加えて、フーリエ級数に回帰させるデータ数を画像データ群の所定倍に増やす。
【0077】
処理部17は、フーリエ級数に回帰させるデータ数を増やすために、得られた画像データ群に加える付加データ群を生成する。
フーリエ級数は周期関数であるため、この性質を利用して近似の精度を高めるために、付加データ群は、その個々のデータが、その大きさについて画像データ群の最後のデータを中心として画像データ群の各々のデータの大きさに対称となるように配列されたデータ群として生成する。
本実施形態においては、付加データ群の個々のデータを破線により繋いだグラフGDC1’が、図77(A)に示すように画像データ群のグラフGDC1の最後の点を通る縦線に対してグラフGDC1に線対称になるように付加データ群を生成する。
グラフGDC1’がグラフGDC1の最後の点を中心としてグラフGDC1に点対称になるように付加データ群を生成してもよいが、近似精度向上の観点からは、図77(A)に示すようにグラフが線対称となるようなデータを付加データ群とすることが好ましい。
【0078】
以上のように、画像データ群の最後のデータに対称となるように配列した付加データ群を画像データ群に付加することより、式(3)におけるサンプル値の数をN個ではなくαN個とすることができる。αN個となったデータ群を、回帰用データ群と呼ぶ。
ここで、係数αは、データ数を増やすという観点から自然数とする。特に、フーリエ級数の周期的性質を利用して近似の精度を向上させるという観点からは、係数αを偶数とすることが好ましい。係数αを偶数(たとえば2)とすれば、元の画像データ群の全てのデータが、画像データ群の最後のデータを中心として対称な大きさを持つデータとして全て用いられるためである。
ただし、データ数を増やすという観点からは、係数αを正の小数とすることもできる。
係数αを2以上にして最初のN個のデータの2倍以上のデータ数にするためには、最初の画像データ群に基づいて生成した回帰用データ群を第1のデータ群と考え、このデータ群の最後のデータを中心として対称となるように新たなデータ群を生成すればよい。
【0079】
以上のように生成して得た回帰用データ群を、処理部17がフーリエ級数に回帰させる。
【0080】
回帰用データ群をフーリエ級数に回帰させて得られる近似曲線のグラフFGDC1を図77(B)に示す。図77(B)の横軸は図77(A)と同じ測定軸MAL上の基準位置Aからの距離[mm]を表わしており、縦軸は輝度の大きさを表わしている。
回帰用データ群をフーリエ級数に回帰させると回帰用データ群全体についての近似曲線を得ることができるが、等色線の位置特定のためには測定軸MAL上の画像データ群に関する解析結果のみが必要であるため、図77(B)には元の画像データ群に関する部分の近似曲線のグラフFGDC1のみを示している。
【0081】
グラフFGDC1から明らかなように、項数pをある程度小さくしてフーリエ級数に回帰させることにより、各データの値は滑らかに変化するようになる。
また、付加データ群を含めて数が増えたデータを用いて回帰させているため、フーリエ級数への近似後の各データは滑らかに変化しつつも元の画像データ群との誤差は小さくなり、近似の精度が向上している。
元の画像データ群を用いることにより、生成した回帰用データ群が周期的なデータになるほど、近似の精度は向上すると考えられる。ただし、得られる近似曲線の滑らかさと近似の精度は、画像データ群の変化の特性や項数p、回帰用データ群のデータ数等のパラメータの組み合わせにより複雑に変化し、一概に決まるものではない。
【0082】
そして、このようにして得られたフーリエ近似曲線による輝度値をDXF変換して3次元のメッシュ画像として表示させた。
【0083】
次に、地形画像と気象画像の3次元表示について説明する。
【0084】
<地形画像と気象画像の3次元表示>
気象画像の基点として日本地形の区域では、東経130度、北緯30度、東経140度、北緯30度、東経130度、北緯40度および東経140度、北緯40度の4交点が利用可能である。
図78は、気象画像の基点として日本地形の区域での4交点を示す図である。
処理部17は、この交点を基点として地形画像と気象画像を一致させて両画像を表示部16に表示させる。
東北地方の地形ではその交点の東経140度、北緯40度を基点として利用する。また、地形データに対して気象データを約1.7倍拡大して大きさを地形と一致させている。
【0085】
次に、各時刻の気象画像と地形との関係を検討する。図13は地震発生時刻(8時43分)から4時間前の前後の各時刻の気象画像である。また、図19・20は岩手県付近を拡大した画像で、図19(A),(C),(E),図20(A),(C)はそれぞれ経線等削除前、図19(B),(D),(F),図20(B),(D)はそれぞれ削除後の画像であり、気象画像と地形との対応位置として、2個の基点を→で示す。画像解析時には、これらの基点により、気象画像の最低明度値や最高明度値の地点が地形のどの位置かを特定するために棒状マーカーを立てる。
【0086】
図21〜63は岩手県付近の地形に各時刻の気象画像を乗せた画像である。その平面と断面および3次元表示で、↑は視線方向、□は長方形の断面範囲を示す。a(長円柱)は震源地、b(短円柱)は栗駒山、1(短円柱)は荒砥沢ダム付近の明度の低い地点、2、3(短円柱)は震源地周辺の明度の高い地点である。
【0087】
図21〜図29は3時00分の表示である。図21は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図22は3倍100%で明度値145以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより、近似の精度が高められて、図22の画像は図13(A)および図14の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むA1とA2断面および震源地を含む東西断面A−EWと南北断面A−NSを作成する。
【0088】
図23〜26は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は91.2(81行44列)で、最高値172.57との明度差は81.55である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値182.90(62行14列)と3地点162.24(59行35列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約74kmである。同様に、1地点と3地点の水平距離は約52kmである。例えば図23にあるように、画像解析時に気象画像および地形画像を結んだ棒状マーカーは、断面表示上は気象画像下部で切断している。
【0089】
図27は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図28は図27の上空からの視線の平面表示である。地形上の気象画像のメッシュの明度による高低を明確にするために、地形と同様に低所から高所の順に青から赤色の順で着色して表示する。
図31は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0090】
図30〜図38は4時00分の表示である。図30は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値103以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図31は3倍100%で明度値107以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより、近似の精度が高められて、図31の画像は図13(B)および図14の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むB1とB2とB3断面および震源地を含む東西断面B−EWと南北断面B−NSを作成する。ここで、B1とB2は明度の小高い地点5、6を含む。
【0091】
図32〜35は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は99.48(69行53列)で、最高値169.87との明度差は70.39である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値174.21(65行17列)と3地点163.98(51行36列)と4地点171.43(45行76列)を平均した。2地点と5地点の水平距離は約92kmである。同様に、3地点と6地点は約72kmである。1地点と4地点は約70kmである。
【0092】
図36は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図37は図36の上空からの視線の平面表示である。図38は南西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0093】
図39〜図47は4時30分の表示である。図39は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図40は3倍100%で明度値120以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の精度が高められて、図40の画像は図13(C)および図16の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むC1とC2とC3断面および震源地を含む東西断面C−EWと南北断面C−NSを作成する。ここで、C3は明度の小高い地点5を含む。
【0094】
図41〜44は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は90.01(70行76列)で、最高値156.19との明度差は66.18である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値160.71(65行20列)と3地点150.02(48行33列)と4地点157.85(38行70列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約108kmである。同様に、1地点と3地点は約93kmである。4地点と5地点は約105kmである。
【0095】
図45は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図46は図45の上空からの視線の平面表示である。図47は東方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0096】
図48〜図56は5時00分の表示である。図48は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図49は3倍100%で明度値106以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の精度が高められて、図49の画像は図13(D)および図17の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むD1とD2断面および震源地を含む東西断面D−EWと南北断面D−NSを作成する。ここで、D1とD2は明度の小高い地点5、6を含む。
【0097】
図50〜53は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は87.73(77行60列)で、最高値154.43との明度差は66.70である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値159.11(69行14列)と3地点149.74(45行42列)を平均した。2地点と5地点の水平距離は約119kmである。同様に、3地点と6地点は約112kmである。
【0098】
図54は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図55は図54の上空からの視線の平面表示である。図56は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0099】
図57〜図63は5時30分の表示である。図57は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値101以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図58は3倍100%で明度値114以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の制度が高められて、図58の画像は図13(E)および図18の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むE1とE2断面および震源地を含む東西断面E−EWと南北断面E−NSを作成する。
【0100】
図59(A)・(B),図60(A)・(B)は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は98.01(67行62列)で、最高値140.69との明度差は42.68である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値149.71(84行13列)と3地点131.66(39行77列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約99kmである。同様に、1地点と3地点は約68kmである。
【0101】
図61は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図62は図61の上空からの視線の平面表示である。図63は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0102】
各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の画像について、特に震源地付近の地形との関係を詳細に検討する。図64は平面で5倍100%フーリエ近似により明度値115以下を削除した表示であり、3倍100%フーリエ近似により明度値107以下を削除した、図30、図31と比較して気象画像により近似している。
【0103】
図65は平面で5倍100%フーリエ近似により明度値117以下を削除した表示であり、同近似により明度値107以下を削除した、前記図64と比較して、震源地(a)付近で気象画像にさらに近似している。
【0104】
図66は図64を用いて震源地付近の震度分布を震度5弱以上について表示している。
図10と同様に地震発生後確認された断層を重ねて表示した。図8から震源地付近に震度計が設置されていないため、新たに発見された断層付近の震度表示は無いが、荒砥沢をはさんで南部と北部で震度6強であった。また、図64の明度値の低い1地点は荒砥沢ダムの南部に位置し、新たに確認された断層は明度値の低いこの地域に存在している。震源地の東部の石蔵山付近に明度の低い地域がある。この地域の標高は約350mで平地に近い。
【0105】
震源地付近の地形の形状を250mメッシュ(非特許文献6)を用いて詳細に表示する。
図64の地形の中央部分を図67(A)は1kmメッシュを用いた表示で、同様に図67(B)は250mメッシュを用いた表示である。250mメッシュは緻密な表示になっている。
【0106】
図68は3倍80%で作成した震源地付近の東西断面で、地形は250mメッシュの表示である。1kmメッシュと比較して、地形をより詳細に検討できる。同様に、図69は南北断面で、地形中央部分は250m、両端は1kmメッシュの表示である。
【0107】
図70は震源地付近の衛星画像(非特許文献8)である。図に示す線は震源地を通過する東西の線分である。図70〜図72に示すように、震源地付近は栗駒山(標高1627m)など、標高の高い山が連なっているが、震源より東側は石蔵山(356m)のように低い山があり、ほぼ平野となっている。さらに東部には室根山(895m)のように高い山がある。
【0108】
図73は地震直後の荒砥沢ダムの上空写真である。円形に大きく地すべりしている。円形の距離は約500mである。その周囲にも地すべりが散在している。
【0109】
図74は4時の画像について、平面で3倍80%フーリエ近似により明度105以下を削除した表示である。荒砥沢を中心に、直径約23kmの円形に削除されている。
【0110】
以上のことから明らかなように、地震時の気象画像データを3次元表示し、その明度差から震源地を特定することができた。
すなわち、具体例における地震時気象画像解析結果から、既に気象画像の特異な現象が顕著であった地震発生時刻の4時間43分前に異常画像の明度解析が可能である。
【0111】
また、対象となる地形をいくつかに分割し、フーリエ近似の精度を適宜変更してデータを得ることによって、デジタル画像のような鮮明な地形データにも合致する精度の気象画像データを得ることが可能である。
【0112】
各時刻画像解析から以下のことが言える。
(1)明度の最低地点周辺の最高地点は北側周辺に存在している。北側周辺の平均最高値と最低地の差は、4時に最大値70である。また、その範囲は約70〜92kmである。
(2)地震発生時刻の4時間43分前に既に気象画像の特異な現象が顕著であった。
(3)最低明度値は荒砥沢ダムの南部に位置し、新たに確認された断層は明度値の低いこの地域に存在している。
(4)震源地付近に震度計が設置されていないため、新たに確認された断層付近の震度表示は無いが、荒砥沢を挟んで、南部と北部で震度6強であった。
(5)震源地の東部の石蔵山付近に明度値の低い地域がある。この地域の標高は350mで平地に近い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、地震等の異常気象の発生を的確に検出することができる。
【0114】
この技術分野における、上記明細書において開示されているこれらの技術の概念及び具体的実施態様は、本発明と同目的の、他の実施態様における実施のための修正または設計の基礎として容易に利用し得るものと認められる。また、この技術分野における、このような同等の実施形態にかかるこれらの技術は、クレームに付随するこの発明の特質や範囲から外れるものではないと認められる。
【符号の説明】
【0115】
10 気象画像解析装置(気象異常検出装置)
11 地形データ記憶部
12 気象画像データ提供部
13 気象画像データ取得部
14 記憶部
15 操作部
16 表示部
17 処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の発生を検出可能な気象画像解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震発生時にはその規模により、特殊な気象画像が確認されている。
気象衛星の画像は、地形データに重ね合わせて用いられるが、地形データに対応したいずれの位置に雲が存在するのか、また、台風級の大きな勢力の低気圧に伴う雲の流れや台風の目の存在、気圧配置等を確認することができる。
【0003】
このような、気象衛星の画像データは、所定時間ごと(現在は30分ごと)に更新され、天気予報や台風の進路予想等に使用されている。
【0004】
気象衛星の画像としては、可視画像と赤外線画像がある。可視画像は太陽の反射光を捕らえた画像で、白い雲ほど厚みがあり、視覚的に認識できる。赤外線画像は温度観測により、雲頂の高度を見積もり、可視画像とは異なる。ただし、夜間の観測も可能である。
ある地域の一定時間継続した特殊な気象画像では、その地域で際立って明度の差が生じている。ここでは、そのような特殊な画像を異常気象画像と称する。
2008年6月14日8時43分ごろ、マグニチュード7.2の岩手・宮城内陸地震が発生した。この地域のその時刻の4時間前の前後で同様な異常気象画像が確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−209417号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国土地理院:数値地図1kmメッシュ(標高),1997年7月
【非特許文献2】榎田:光弾性実験の画像解析法の研究,日本実験力学会講演論文集,pp.327−330,3,2006
【非特許文献3】グラフィソフト社:ArchiCAD11,2007
【非特許文献4】産業技術総合研究所:全国主要活断層活動確率地図,2005年9月
【非特許文献5】東京大学出版会:活断層詳細デジタルマップ,2007年5月
【非特許文献6】国土地理院:数値地図250mメッシュ(標高),1997年7月
【非特許文献7】日本大地図帳 十訂版:平凡社,2008
【非特許文献8】世界を見渡す3Dソフトウェア,http://earth.google.co.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したように、気象衛星の画像は、地形データに対応した雲の位置や、大きな勢力の低気圧に伴う雲の流れや台風の目の存在を確認することができるが、地震等の発生は、その画像の特質から確認、あるいは予測することが極めて困難である。
【0008】
地震の検出のために、気象衛星の画像を3次元表示することにより、解明の糸口を得ることができる可能性があるものと考えられる。
しかしながら、たとえば大きな勢力の台風を含む気象衛星の可視画像は、九州や四国の全体を覆うような厚い雲が存在する場合、明度が高く明度差が少ないため、3次元表示をすることは困難である。
【0009】
3次元表示がより明確な赤外線画像を利用することも可能であるが、地形データに比べて、気象データはそのピクセル数が少なく粗いために、現状では気象異常状態の発生検出に用いることは難しい。
【0010】
また、気象画像データのデータ間を線形補間してデータ数を増やす処理を行うことにより、前記気象データのピクセル数は多少改善されてはいるが、デジタル画像のような、鮮明な地形データとはなかなか合致しないのが現状であった。
【0011】
本発明は、効果的にフーリエ近似および地形データと気象画像データの位置合わせを行うことにより、地震時における気象画像データから得られるデータが、地形画像データとほぼ一致する程度まで精度の高められた、気象画像データの解析方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、気象衛星による原気象画像データを解析する気象画像解析方法であって、地形データを、メッシュ地図を用いて3次元表示して地形画像データとし、前記地形画像データから海域と湖を示すデータを削除した後地形をいくつかに分割し、前記原気象画像データについて、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成することによりデータ数を増やし、取得した線形補間後気象画像データを、前記地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて前記地形画像データに載せ、前記気象画像データ中の明度の高い、少なくとも経線、緯線、地形境界線を削除して、当該線の周辺の雲または隣り合う明度に置き換えて画像に修正し、前記気象画像データについて複数の明度値をしきい値として設定し、当該設定値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、前記気象画像データを3次元表示し、前記明度差および前記3次元表示気象画像データから、地震の有無および震源地を検出する。
【0013】
好適には、地形画像データと気象画像データの連結は、両画像を棒状マーカーで結ぶことによりなされる。
【0014】
本発明の第2の観点は、最低明度値を求める基準、気象画像データの精度を高める基準など、求められる基準によって、線形補間の倍率およびフーリエ級数近似曲線の級数項数を変更し、有効な明度差を得ることができる。
【0015】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0016】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による70〜80%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0017】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による80〜90%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0018】
好適には、原気象画像データを、3倍〜5倍の線形補間による90〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0019】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0020】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による70〜80%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0021】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による80〜90%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0022】
好適には、原気象画像データを、5倍〜7倍の線形補間による90〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得る。
【0023】
好適には、原気象画像を、最低明度値を得る場合よりも高いピクセル数および/または級数項数フーリエ級数近似曲線で作成されることにより、地震による異常気象画像を検出するための最高明度値、および高精度の気象画像データを得る。
【0024】
本発明において、原気象画像データとは、変更、調整しない気象衛星による気象画像データである。
【0025】
また、本発明において、メッシュとは、グリッドデータのことをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、気象衛星の画像データの明度差を利用することにより地震の発生および震源を的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(A)はメッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加したものである。図1(B)は削除されたメッシュ番号を除いて、メッシュを通し番号に並べ替え、その座標軸を入れ替えさらに節点番号を通し番号順に並べ替えたものである。
【図2】図2は東北の地形画像である。
【図3】図3はメッシュ削除後の3次元表示である。
【図4】図4はデータ数を増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した東北地方の地形画像である。
【図5】図5はデータ数を増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した東北地方の地形画像である。
【図6】図6は気象庁発表の2008年06月14日08時43分頃発生した岩手・宮城内陸地震の各地の震度に関する情報である。
【図7】図7は、気象庁発表の同地震の推計震度4以上の範囲を示した詳細である。
【図8】図8は震度計の設置位置を示す。
【図9】図9は岩手県周辺の活断層分布を示す。図9(A)は2005年度版、図9(B)は2007年度版での表示である。
【図10】図10は図9(A)の活断層分布に、地表地震断層の調査地点を重ねて示している。
【図11】図11は岩手・宮城県内陸南部で発生した地震の明度の高い経線、緯線、地形境界線の削除前後の赤外画像である。
【図12】図12は線形補間前後の画像のピクセル数を示す。図12(A)は線形補間前(37行37列)であり、図12(B)は線形補間後(3倍80%,109行109列)である。
【図13】図13は地震発生時刻(8時43分)から4時間前の前後の各時刻の気象画像である。
【図14】図14は図13(A)の拡大図である。
【図15】図15は図13(B)の拡大図である。
【図16】図16は図13(C)の拡大図である。
【図17】図17は図13(D)の拡大図である。
【図18】図18は図13(E)の拡大図である。
【図19】図19は岩手県付近を拡大した画像で、図19(A)・(C)・(E)は経線等削除前、図19(B)・(D)・(F)は削除後の画像である。
【図20】図20は岩手県付近を拡大した画像で、図20(A)・(C)は経線等削除前、図20(B)・(D)は削除後の画像である。
【図21】図21は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下で削除した表示である。図22は3倍100%で明度値145以下を削除した表示である。図21〜図29において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点を表す。
【図22】図22は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値145以下を削除した表示である。
【図23】図23は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図24】図24は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図25】図25は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図26】図26は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図27】図27は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図28】図28は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、図27の上空からの視線の平面表示である。
【図29】図29は岩手県付近の地形に3時00分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図30】図30は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値103以下で削除した表示である。図30〜図38において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図31】図31は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値107以下を削除した表示である。
【図32】図32は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図33】図33(A)・(B)は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図34】図34は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図35】図35は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図36】図36は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図37】図37は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり図36の上空からの視線の平面表示である。
【図38】図38は岩手県付近の地形に4時00分の気象画像を乗せた画像であり、南西方向からの視線の3次元表示である。
【図39】図39は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示である。図39〜図47において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5は小高明度地点を表す。
【図40】図40は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値120以下を削除した表示である。
【図41】図41は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図42】図42は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図43】図43は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図44】図44(A)・(B)は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、図44(A)は3倍80%で作成した震源地付近東西断面であり、図44(B)は3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図45】図45は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図46】図46は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、図45の上空からの視線の平面表示である。
【図47】図47は岩手県付近の地形に4時30分の気象画像を乗せた画像であり、東方向からの視線の3次元表示である。
【図48】図48は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示である。図48〜図56において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図49】図49は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値106以下を削除した表示である。
【図50】図50は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図51】図51は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図52】図52は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近東西断面である。
【図53】図53は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図54】図54は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図55】図55は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり図54の上空からの視線の平面表示である。
【図56】図56は岩手県付近の地形に5時00分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図57】図57は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値101以下で削除した表示である。図57〜図63において、aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2および3は最高明度地点を表す。
【図58】図58は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、3倍100%で明度値114以下を削除した表示である。
【図59】図59は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図59(A)・(B)は3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。
【図60】図60は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図60(A)・(B)は3倍80%で作成した荒砥沢ダム付近断面である。図60(A)は3倍80%で作成した震源地付近東西断面であり、図60(B)は3倍80%で作成した震源地付近南北断面である。
【図61】図61は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、南方向からの視線の3次元表示である。
【図62】図62は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、図61の上空からの視線の平面表示である。
【図63】図63は岩手県付近の地形に5時30分の気象画像を乗せた画像であり、西方向からの視線の3次元表示である。
【図64】図64は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、平面で5倍100%フーリエ近似により明度値115以下を削除した表示である。
【図65】図65は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、平面で5倍100%フーリエ近似により明度値117以下を削除した表示である。
【図66】図66は、各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の震源地付近の地形との関係についての表示であり、図64を用いて震源地付近の震度分布を震度5弱以上について表示している。
【図67】図64の地形の中央部分を図67(A)は1kmメッシュを用いた表示で、図67(B)は250mメッシュを用いた表示である。
【図68】図68は3倍80%で作成した震源付近の東西断面で、地形は250mメッシュの表示である。
【図69】図69は南北断面で、地形中央部分は250m、両端は1kmメッシュの表示である。
【図70】図70は震源付近の衛星画像である。
【図71】図71は震源付近の分県図である。
【図72】図72(A)は震源付近の3次元地形であり、図72(B)は震源付近の地形拡大図である。
【図73】図73は地震直後の荒砥沢ダムの上空写真である。
【図74】図74は岩手県付近の地形に4時の気象画像を乗せた画像であり、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下を削除した表示である。aは震源地、bは栗駒山、1は最低明度地点、2、3および4は最高明度地点、5および6は小高明度地点を表す。
【図75】図75は数値地図1kmメッシュデータである。
【図76】図76は、本発明の実施形態に係る画像解析装置(気象異常検出装置)の構成例を示すブロック図である。
【図77】画像データ群を示すグラフであり、図77(A)はフーリエ級数に回帰させるデータ群のグラフであり、図77(B)は図77(A)に示すデータ群をフーリエ級数に回帰させて得られる近似曲線のグラフである。
【図78】気象画像の基点として日本地形の区域での4交点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0029】
図76は、本発明の実施形態に係る気象画像解析において使用する気象画像解析装置(気象異常検出装置)の構成例を示すブロック図である。
【0030】
気象画像解析装置(気象異常検出装置)10は、図76に示すように、地形データ記憶部11、気象画像データ提供部12、気象画像データ取得部13、記憶部14、操作部15、表示部16、および処理部17を主構成要素として有している。
【0031】
地形データ記憶部11は、5mから1kmメッシュまで種々の数値地図として国土地理院から公開(たとえば非特許文献1あるいは非特許文献6参照)されている地形データのうち、たとえば1kmメッシュの地形データを記憶する。
地形データ記憶部11は、たとえばCDROM等の記憶媒体として形成され、処理部17によりアクセス可能な図示しない光記録再生装置等にセットされ、処理部17により記憶データが読み出される。
この読み出される地形データの数値データは、地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されるように形成されている。
【0032】
気象画像データ提供部12は、気象衛星を通して撮像された気象画像データを記憶するデータベースとして形成され、気象画像データ取得部13を介して取得可能に構成されている。
気象画像データ提供部12は、気象衛星を通して赤外線画像あるいは可視画像として撮像され、30分ごとに更新され、所定期間のデータが蓄積される。
【0033】
気象画像データ取得部13は、処理部17による気象画像データ取得の指示に応答して、気象画像データ提供部12にデータ要求等の送受によるネゴシエーション(データの交換手続)等を行って気象画像データを取得する。
気象画像データ取得部13により取得された気象画像データは、記憶部14に格納される。
【0034】
記憶部14は、処理部17のメインプログラムや気象画像の解析プログラム、計算プログラム等を記憶する。
また、記憶部14は、画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、あるいは解析処理中のデータ等が一時的にあるいは保存データとして記憶される。
記憶部14は、処理部17によりアクセスされ、データが読み出されたり、書き込まれたりする。
【0035】
操作部15は、キーボードやマウス等により構成され、処理部17において、所望のプログラムを実行するためのコマンドや設定値を入力し、処理部17に指示するために使用される。
【0036】
表示部16は、たとえば、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示パネル(LDC)等の各種表示装置により構成され、表示部16のモニタ部には、取得した画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、解析処理のデータ、解析結果が表示される。
また、表示部16のモニタ部には、処理部17への処理の指示のためのGUI(Graphical User Interface)画面が表示される。
【0037】
処理部17は、気象画像解析装置10全体の各部の制御を行う。
処理部17は、操作部15の操作入力に応答して気象画像解析のため、地形データ記憶部11による地形データの取得、気象画像データ取得部13を通しての気象画像データの取得、取得データの記憶部14への格納処理、読み出し処理を行う。
さらに、処理部17は、以下に詳述するような、取得したデータのモディファイ処理、合成処理、気象画像データの複数の明度値をしきい値としたスキャン処理等を行って、気象画像データの解析処理を行い、取得した画像解析のために取得した気象画像データ、地形データ、解析処理のデータ、解析結果等の表示部16への3次元表示制御等を行う。
【0038】
以下、本実施形態に係る気象画像データの解析処理について、図面に関連付けて説明する。
【0039】
<処理の概略>
地形データは5mから1kmメッシュまで種々の数値地図として国土地理院から公開(非特許文献1および6)されている。
本実施形態においては、たとえば、1kmメッシュを用いて地形を3次元表示する。この数値データは地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されている。まず、これらの海域と湖を地形データから削除して3次元表示する。海域と湖を省くことで地形の表示がより明確になり、画像表示時間も短縮できる。
【0040】
次に、本実施形態においては、気象衛星ひまわりの気象画像データを地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて地形画像データ上に載せて、その明度差を利用して3次元表示する。その際、明度の低いデータを削除して表示する。これにより、明度の高い厚い雲等が表示可能になる。なお、画像の明度は、0〜255の256の値をとることが可能であり、明度値255に近いほど画像は白く表示され、明度値0に近いほど画像は黒く表示される。
【0041】
また、地形画像データと気象画像データの同じ領域において、地形画像データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく粗いために、後で詳述するように、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、そのデータ数を増やす処理を行う。
【0042】
以下の処理部17における気象画像データの解析処理のより具体的な処理について、順を追って説明する。
【0043】
<地形データの海域と湖の削除>
上述したように、1kmメッシュの数値地図は地形標高の他に標高0mの海域は−9999、湖は00000で表示されている。その行列数は80×80で、そのユニットを連結して求める地形が表示できる。
ここでは、そのユニットを連結して九州の地形データの行列を作成する。地形標高データを3次元表示するために、そのデータをDXF(Drawing Interchange File)変換して3次元CADで読み込み、地形メッシュを作成する。
その際、湖と海域の標高0m以下のメッシュを削除する。
【0044】
図1(A)・(B)は地形データのメッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加した例を示す図であって、図1(A)はメッシュの削除前を示し、図1(B)はメッシュの削除後を示している。
【0045】
地形データは、図1(A)に示すように、メッシュにその番号と節点番号、さらに座標値を付加したものである。その後、標高0の節点を含むメッシュ、たとえば、図1(A)で番号6,7,10,11のメッシュを削除する。
図1(B)に示すように、削除されたメッシュ番号を除いて、メッシュを通し番号に並べ替え、その座標値を入れ替える。さらに節点番号を通し番号に並べ替える。
これにより、節点番号が1から昇順に付加されてDXF変換が可能になる。
【0046】
図2(A)・(B)は、海域と湖の削除前後の東北の地形画像を示す図であって、図2(A)が海域と湖の削除前の画像を示す図であり、図2(B)が海域と湖の削除後の画像を示す図である。
図3は、海域と湖の削除後の東北の3次元表示画像を示す図である。
【0047】
図2は、行列数80×80のユニットを3行3列連結したもので、海域と湖のメッシュ削除前と削除後の表示である。図3は、同様にメッシュ削除後の3次元表示である。震源地を垂直な棒状マーカーでマークしている。この図では特に傾きの大きい部分でメッシュが粗い。
【0048】
また、地形画像と気象画像の同じ領域において、地形画像データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく表示が粗くなる。
そこで、本実施形態においては、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、データ数を増やして表示する。
【0049】
図4、5はデータを増やして、3倍線形補間によるフーリエ級数近似曲線(80%)で作成した。図2、3と比較してより細密な地形画像表示である。3次元の傾きの大きい部分も、鮮明に表示されている。震源地付近は山間部で、西部には標高1600mの栗駒山があり、東部は標高350m前後の山が散在している。
【0050】
以下、上記実施の形態を実際の地震の検出に適用した具体例を述べる。
【0051】
岩手・宮城内陸地震
2008年06月08日8時43分頃、岩手県で地震が発生した。震源地は岩手県南部(北緯39度2分、東経140度53分)で震源の深さは約8km、地震の規模(マグニチュード)は7.2と推定されている。岩手県奥洲市衣川区で最大震度は6強である。気象庁発表の各地の震度に関する情報、地震情報を図6、7に示す。
【0052】
岩手県周辺の活断層、地震分布を図9に示す。図9(A)は2005年度版(非特許文献4)、図9(B)は2007年度版(非特許文献5)での表示である。この時点までに岩手県南部の活断層は見つかっていなかったため、×印の震源付近に活断層は表示されていない。
【0053】
図9(A)の活断層分布に、地表地震断層の調査地点を重ねて、活断層分布と地震発生後確認された断層を図10に示している。
【0054】
気象衛星の画像には、気象画像のほかに、明度の明るい経線、緯線、地形境界線などが含まれているので、それらの線を削除して気象画像の明度のみを表示する必要がある。そのため、それらの線の周辺の隣り合う明度に置き換えて、余計なデータを削除した画像に修正する。
【0055】
気象衛星の画像には可視画像と赤外画像があり、可視画像は太陽の反射光を捕らえた画像で、白い雲ほど厚みがあり、視覚的に認識できる。一方、赤外画像は赤外線の強さから物体の表面温度を測定し、白い雲ほど温度の低い高い位置の雲、あるいは積乱雲等を表示している。ただし、夜間の測定も可能である。
【0056】
可視画像は一般的に明度差が少ないため、明度差を利用した3次元表示を明確にできない。そこで、ここでは3次元表示がより明確な赤外画像を利用する。
【0057】
図11は岩手・宮城県内陸南部で発生した地震の明度の高い経線、緯線、地形境界線の削除前後の赤外線画像である。
【0058】
また、地形と気象画像の同じ領域において、地形データに比べて、気象画像データはそのピクセル数が少なく、表示が粗くなる。そこで、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成し、データ数を増やして表示する。
【0059】
次に、地形データの海域と湖の削除と同様に、明度の低い気象画像データを削除して表示する。
これにより、明度の高い厚い雲等が表示可能になる。
図12は線形補間前後の赤外線画像の3次元表示例である。
【0060】
図12(A)・(B)は、線形補間前後の赤外線画像表示を示す図であって、図12(A)が画像のピクセル数の少ない線形補間前(37行37列)の赤外線画像を示す図であり、図12(B)が線形補間後(3倍,80%,109行109列)の赤外線画像を示した図である。図12(A)・(B)に示すように、ピクセル数の少ない線形補間前の画像を線形補間すると、線形補間後の画像はその3倍(級数の項数80%)のピクセル数で、細密で滑らかな曲面になっている。
【0061】
本実施形態においては、気象画像データを線形補間し、たとえば等間隔にサンプリングされている離散画像データ群、あるいは、不等間隔にサンプリングされている離散画像データ群を元にして、データ数が画像データ群のデータ数の所定倍の回帰用データを生成し、この回帰用データを、項数が画像データ群のデータ数よりも小さいフーリエ級数に回帰させて元の画像データ群を近似する。その結果、近似により得られたデータ群の各データは滑らかに変化するようになり、かつ、近似の精度が向上する。
【0062】
すなわち、本実施形態においては、画像データ群をフーリエ級数に回帰させることによる近似を行う。
後述するとおり、画像データ群のデータ数が多いほど近似精度が良くなり、項数が少なくなるほど、計算時間は短くなる。そこで、本実施形態においては、対象の地形をいくつかに分割し、単位画像あたりのデータ数を多くすることによって高精度の近似を得る。
【0063】
離散データ群をフーリエ級数へ回帰させる手法について、以下に簡単に説明する。
【0064】
フーリエ級数を用いると、回帰曲線により再現しようとする離散データ群の曲線を、三角関数を用いて1つの式によって表現することができる。
等間隔にN個のデータがサンプリングされる関数x(t)をフーリエ級数で表わすとすると、A0,A1,A2,…,AkおよびB0,B1,B2,…,Bkを適宜決められる定数としたとき、x(t)=A0+A1cost+A2cos2t+…+Akcoskt+…+B0+B1sint+B2sin2t+…+Bksinkt+…として表わすことができる。
上式をまとめると下記式(1)のようになる。
【0065】
【数1】
【0066】
式(1)において、Δtがサンプリング間隔を示し、NΔtが関数x(t)の継続区間を示している。
式(1)はkについて0から無限大まで総和している無限級数であるが、k=N/2までで打ち切ると、下記式(2)で表される有限三角級数となる。
【0067】
【数2】
【0068】
上式(2)によって表わされる関数を、サンプリング間隔ΔtでサンプリングされたN個のサンプル値xm(m=0,1,2,…,N−1)を通るような関数に直すと、各サンプル値xmは以下の式(3)のように表わすことができる。
【0069】
【数3】
【0070】
上式(3)における係数Ak、Bkはそれぞれ下記式(4)、(5)で表すことができる。
【0071】
【数4】
【0072】
【数5】
【0073】
上式(3)で表わされる関数は、各サンプル値xmを全て正確に通過する。したがって、上式(3)を用いれば、画像データ群をフーリエ級数に回帰させて、近似曲線を得ることができる。
【0074】
ただし、式(3)の関数をそのまま用いて画像データ群を全て通過するように回帰させると、フーリエ級数に回帰させて得られた近似曲線は図77(A)に示すグラフGDC1のように細かい増減を繰返す曲線となってしまう。
フーリエ級数近似後のデータの値が細かく増減することを防止して滑らかな近似曲線が得られるようにするために、本実施形態においては、式(3)の関数の項数、すなわち係数Ak、Bkの数を、ステップST1において得られた画像データ群のデータ数よりも小さい所定の数にして画像データ群をフーリエ級数に回帰させる。
【0075】
フーリエ級数の項数の数については、画像データ群のデータ数の約数十%程度にすることが、等高線等の特定のためには好ましい。
画像データ群のデータ数が少な過ぎると、十分な近似精度が得られなくなるほど項数pの数が少なくなる。
したがって、必要な近似精度にもよるが、項数pを増加してある程度の近似精度を確保するために、元となる画像データ群のデータ数もある程度必要である。画像データ群のデータ数が多いほど近似精度が良くなる。
【0076】
項数pが少なくなるほど、式(3)の関数の計算時間は短くなり、得られる近似曲線は滑らかになる傾向にある。
ただし、項数pが少なくなると画像データ群の後ろの部分において近似値との間の誤差が大きくなってくる。そこで、近似の精度を高めるために、本実施形態においては画像データ群に付加的な付加データ群を加えて、フーリエ級数に回帰させるデータ数を画像データ群の所定倍に増やす。
【0077】
処理部17は、フーリエ級数に回帰させるデータ数を増やすために、得られた画像データ群に加える付加データ群を生成する。
フーリエ級数は周期関数であるため、この性質を利用して近似の精度を高めるために、付加データ群は、その個々のデータが、その大きさについて画像データ群の最後のデータを中心として画像データ群の各々のデータの大きさに対称となるように配列されたデータ群として生成する。
本実施形態においては、付加データ群の個々のデータを破線により繋いだグラフGDC1’が、図77(A)に示すように画像データ群のグラフGDC1の最後の点を通る縦線に対してグラフGDC1に線対称になるように付加データ群を生成する。
グラフGDC1’がグラフGDC1の最後の点を中心としてグラフGDC1に点対称になるように付加データ群を生成してもよいが、近似精度向上の観点からは、図77(A)に示すようにグラフが線対称となるようなデータを付加データ群とすることが好ましい。
【0078】
以上のように、画像データ群の最後のデータに対称となるように配列した付加データ群を画像データ群に付加することより、式(3)におけるサンプル値の数をN個ではなくαN個とすることができる。αN個となったデータ群を、回帰用データ群と呼ぶ。
ここで、係数αは、データ数を増やすという観点から自然数とする。特に、フーリエ級数の周期的性質を利用して近似の精度を向上させるという観点からは、係数αを偶数とすることが好ましい。係数αを偶数(たとえば2)とすれば、元の画像データ群の全てのデータが、画像データ群の最後のデータを中心として対称な大きさを持つデータとして全て用いられるためである。
ただし、データ数を増やすという観点からは、係数αを正の小数とすることもできる。
係数αを2以上にして最初のN個のデータの2倍以上のデータ数にするためには、最初の画像データ群に基づいて生成した回帰用データ群を第1のデータ群と考え、このデータ群の最後のデータを中心として対称となるように新たなデータ群を生成すればよい。
【0079】
以上のように生成して得た回帰用データ群を、処理部17がフーリエ級数に回帰させる。
【0080】
回帰用データ群をフーリエ級数に回帰させて得られる近似曲線のグラフFGDC1を図77(B)に示す。図77(B)の横軸は図77(A)と同じ測定軸MAL上の基準位置Aからの距離[mm]を表わしており、縦軸は輝度の大きさを表わしている。
回帰用データ群をフーリエ級数に回帰させると回帰用データ群全体についての近似曲線を得ることができるが、等色線の位置特定のためには測定軸MAL上の画像データ群に関する解析結果のみが必要であるため、図77(B)には元の画像データ群に関する部分の近似曲線のグラフFGDC1のみを示している。
【0081】
グラフFGDC1から明らかなように、項数pをある程度小さくしてフーリエ級数に回帰させることにより、各データの値は滑らかに変化するようになる。
また、付加データ群を含めて数が増えたデータを用いて回帰させているため、フーリエ級数への近似後の各データは滑らかに変化しつつも元の画像データ群との誤差は小さくなり、近似の精度が向上している。
元の画像データ群を用いることにより、生成した回帰用データ群が周期的なデータになるほど、近似の精度は向上すると考えられる。ただし、得られる近似曲線の滑らかさと近似の精度は、画像データ群の変化の特性や項数p、回帰用データ群のデータ数等のパラメータの組み合わせにより複雑に変化し、一概に決まるものではない。
【0082】
そして、このようにして得られたフーリエ近似曲線による輝度値をDXF変換して3次元のメッシュ画像として表示させた。
【0083】
次に、地形画像と気象画像の3次元表示について説明する。
【0084】
<地形画像と気象画像の3次元表示>
気象画像の基点として日本地形の区域では、東経130度、北緯30度、東経140度、北緯30度、東経130度、北緯40度および東経140度、北緯40度の4交点が利用可能である。
図78は、気象画像の基点として日本地形の区域での4交点を示す図である。
処理部17は、この交点を基点として地形画像と気象画像を一致させて両画像を表示部16に表示させる。
東北地方の地形ではその交点の東経140度、北緯40度を基点として利用する。また、地形データに対して気象データを約1.7倍拡大して大きさを地形と一致させている。
【0085】
次に、各時刻の気象画像と地形との関係を検討する。図13は地震発生時刻(8時43分)から4時間前の前後の各時刻の気象画像である。また、図19・20は岩手県付近を拡大した画像で、図19(A),(C),(E),図20(A),(C)はそれぞれ経線等削除前、図19(B),(D),(F),図20(B),(D)はそれぞれ削除後の画像であり、気象画像と地形との対応位置として、2個の基点を→で示す。画像解析時には、これらの基点により、気象画像の最低明度値や最高明度値の地点が地形のどの位置かを特定するために棒状マーカーを立てる。
【0086】
図21〜63は岩手県付近の地形に各時刻の気象画像を乗せた画像である。その平面と断面および3次元表示で、↑は視線方向、□は長方形の断面範囲を示す。a(長円柱)は震源地、b(短円柱)は栗駒山、1(短円柱)は荒砥沢ダム付近の明度の低い地点、2、3(短円柱)は震源地周辺の明度の高い地点である。
【0087】
図21〜図29は3時00分の表示である。図21は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値105以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図22は3倍100%で明度値145以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより、近似の精度が高められて、図22の画像は図13(A)および図14の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むA1とA2断面および震源地を含む東西断面A−EWと南北断面A−NSを作成する。
【0088】
図23〜26は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は91.2(81行44列)で、最高値172.57との明度差は81.55である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値182.90(62行14列)と3地点162.24(59行35列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約74kmである。同様に、1地点と3地点の水平距離は約52kmである。例えば図23にあるように、画像解析時に気象画像および地形画像を結んだ棒状マーカーは、断面表示上は気象画像下部で切断している。
【0089】
図27は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図28は図27の上空からの視線の平面表示である。地形上の気象画像のメッシュの明度による高低を明確にするために、地形と同様に低所から高所の順に青から赤色の順で着色して表示する。
図31は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0090】
図30〜図38は4時00分の表示である。図30は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値103以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図31は3倍100%で明度値107以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより、近似の精度が高められて、図31の画像は図13(B)および図14の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むB1とB2とB3断面および震源地を含む東西断面B−EWと南北断面B−NSを作成する。ここで、B1とB2は明度の小高い地点5、6を含む。
【0091】
図32〜35は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は99.48(69行53列)で、最高値169.87との明度差は70.39である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値174.21(65行17列)と3地点163.98(51行36列)と4地点171.43(45行76列)を平均した。2地点と5地点の水平距離は約92kmである。同様に、3地点と6地点は約72kmである。1地点と4地点は約70kmである。
【0092】
図36は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図37は図36の上空からの視線の平面表示である。図38は南西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0093】
図39〜図47は4時30分の表示である。図39は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図40は3倍100%で明度値120以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の精度が高められて、図40の画像は図13(C)および図16の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むC1とC2とC3断面および震源地を含む東西断面C−EWと南北断面C−NSを作成する。ここで、C3は明度の小高い地点5を含む。
【0094】
図41〜44は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は90.01(70行76列)で、最高値156.19との明度差は66.18である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値160.71(65行20列)と3地点150.02(48行33列)と4地点157.85(38行70列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約108kmである。同様に、1地点と3地点は約93kmである。4地点と5地点は約105kmである。
【0095】
図45は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図46は図45の上空からの視線の平面表示である。図47は東方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0096】
図48〜図56は5時00分の表示である。図48は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値93以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図49は3倍100%で明度値106以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の精度が高められて、図49の画像は図13(D)および図17の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むD1とD2断面および震源地を含む東西断面D−EWと南北断面D−NSを作成する。ここで、D1とD2は明度の小高い地点5、6を含む。
【0097】
図50〜53は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は87.73(77行60列)で、最高値154.43との明度差は66.70である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値159.11(69行14列)と3地点149.74(45行42列)を平均した。2地点と5地点の水平距離は約119kmである。同様に、3地点と6地点は約112kmである。
【0098】
図54は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図55は図54の上空からの視線の平面表示である。図56は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0099】
図57〜図63は5時30分の表示である。図57は平面で、3倍80%フーリエ近似により明度値101以下で削除した表示であり、これにより最低明度値(1地点)を得ることができた。同様に図58は3倍100%で明度値114以下を削除した表示であり、明度値の高い地域を表示している。これにより近似の制度が高められて、図58の画像は図13(E)および図18の気象画像に近似した表示となった。この平面から各断面を作成する。1の荒砥沢ダム付近と明度の高い地点を含むE1とE2断面および震源地を含む東西断面E−EWと南北断面E−NSを作成する。
【0100】
図59(A)・(B),図60(A)・(B)は3倍80%で作成した断面で、1地点の明度値は98.01(67行62列)で、最高値140.69との明度差は42.68である。ここでの最高値は最低値周辺の最高地点を3次元画像で確認し、2地点の明度値149.71(84行13列)と3地点131.66(39行77列)を平均した。1地点と2地点の水平距離は約99kmである。同様に、1地点と3地点は約68kmである。
【0101】
図61は南方向からの視線の3次元表示である。各地点での気象画像の明度による高低が明確に表示されている。図62は図61の上空からの視線の平面表示である。図63は西方向からの視線の3次元表示である。気象画像は下から見上げた視線の表示である。1地点で震源地付近の最初の最低明度値が生じている。
【0102】
各時刻の中で特異な現象が顕著だった4時の画像について、特に震源地付近の地形との関係を詳細に検討する。図64は平面で5倍100%フーリエ近似により明度値115以下を削除した表示であり、3倍100%フーリエ近似により明度値107以下を削除した、図30、図31と比較して気象画像により近似している。
【0103】
図65は平面で5倍100%フーリエ近似により明度値117以下を削除した表示であり、同近似により明度値107以下を削除した、前記図64と比較して、震源地(a)付近で気象画像にさらに近似している。
【0104】
図66は図64を用いて震源地付近の震度分布を震度5弱以上について表示している。
図10と同様に地震発生後確認された断層を重ねて表示した。図8から震源地付近に震度計が設置されていないため、新たに発見された断層付近の震度表示は無いが、荒砥沢をはさんで南部と北部で震度6強であった。また、図64の明度値の低い1地点は荒砥沢ダムの南部に位置し、新たに確認された断層は明度値の低いこの地域に存在している。震源地の東部の石蔵山付近に明度の低い地域がある。この地域の標高は約350mで平地に近い。
【0105】
震源地付近の地形の形状を250mメッシュ(非特許文献6)を用いて詳細に表示する。
図64の地形の中央部分を図67(A)は1kmメッシュを用いた表示で、同様に図67(B)は250mメッシュを用いた表示である。250mメッシュは緻密な表示になっている。
【0106】
図68は3倍80%で作成した震源地付近の東西断面で、地形は250mメッシュの表示である。1kmメッシュと比較して、地形をより詳細に検討できる。同様に、図69は南北断面で、地形中央部分は250m、両端は1kmメッシュの表示である。
【0107】
図70は震源地付近の衛星画像(非特許文献8)である。図に示す線は震源地を通過する東西の線分である。図70〜図72に示すように、震源地付近は栗駒山(標高1627m)など、標高の高い山が連なっているが、震源より東側は石蔵山(356m)のように低い山があり、ほぼ平野となっている。さらに東部には室根山(895m)のように高い山がある。
【0108】
図73は地震直後の荒砥沢ダムの上空写真である。円形に大きく地すべりしている。円形の距離は約500mである。その周囲にも地すべりが散在している。
【0109】
図74は4時の画像について、平面で3倍80%フーリエ近似により明度105以下を削除した表示である。荒砥沢を中心に、直径約23kmの円形に削除されている。
【0110】
以上のことから明らかなように、地震時の気象画像データを3次元表示し、その明度差から震源地を特定することができた。
すなわち、具体例における地震時気象画像解析結果から、既に気象画像の特異な現象が顕著であった地震発生時刻の4時間43分前に異常画像の明度解析が可能である。
【0111】
また、対象となる地形をいくつかに分割し、フーリエ近似の精度を適宜変更してデータを得ることによって、デジタル画像のような鮮明な地形データにも合致する精度の気象画像データを得ることが可能である。
【0112】
各時刻画像解析から以下のことが言える。
(1)明度の最低地点周辺の最高地点は北側周辺に存在している。北側周辺の平均最高値と最低地の差は、4時に最大値70である。また、その範囲は約70〜92kmである。
(2)地震発生時刻の4時間43分前に既に気象画像の特異な現象が顕著であった。
(3)最低明度値は荒砥沢ダムの南部に位置し、新たに確認された断層は明度値の低いこの地域に存在している。
(4)震源地付近に震度計が設置されていないため、新たに確認された断層付近の震度表示は無いが、荒砥沢を挟んで、南部と北部で震度6強であった。
(5)震源地の東部の石蔵山付近に明度値の低い地域がある。この地域の標高は350mで平地に近い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、地震等の異常気象の発生を的確に検出することができる。
【0114】
この技術分野における、上記明細書において開示されているこれらの技術の概念及び具体的実施態様は、本発明と同目的の、他の実施態様における実施のための修正または設計の基礎として容易に利用し得るものと認められる。また、この技術分野における、このような同等の実施形態にかかるこれらの技術は、クレームに付随するこの発明の特質や範囲から外れるものではないと認められる。
【符号の説明】
【0115】
10 気象画像解析装置(気象異常検出装置)
11 地形データ記憶部
12 気象画像データ提供部
13 気象画像データ取得部
14 記憶部
15 操作部
16 表示部
17 処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象衛星による原気象画像データを解析する気象画像解析方法であって、
地形データを、メッシュ地図を用いて3次元表示して地形画像データとし、
前記地形画像データから海域と湖を示すデータを削除した後地形をいくつかに分割し、
前記原気象画像データについて、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成することによりデータ数を増やし、
取得した線形補間後気象画像データを、前記地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて前記地形画像データに載せ、
前記線形補間後気象画像データ中の明度の高い、少なくとも経線、緯線、地形境界線を削除して、当該線の周辺の雲または隣り合う明度に置き換えて画像に修正し、
前記線形補間後気象画像データについて複数の明度値をしきい値として設定し、当該設定値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、前記線形補間後気象画像データを3次元表示し、
前記明度差および前記3次元表示線形補間後気象画像データから、地震の有無を検出する、
気象画像解析方法。
【請求項2】
前記地形画像データと前記線形補間後気象画像データの連結は、両画像を棒状マーカーで結ぶことによりなされる、
請求項1に記載の気象画像解析方法。
【請求項3】
前記線形補間後気象画像を、3倍〜5倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得ることができる、
請求項1または2に記載の気象画像解析方法。
【請求項4】
前記線形補間後気象画像を、前記最低明度値を得る場合よりも高いピクセル数および/または級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最高明度値、および高精度の気象画像データを得ることができる、
請求項1または2に記載の気象画像解析方法。
【請求項1】
気象衛星による原気象画像データを解析する気象画像解析方法であって、
地形データを、メッシュ地図を用いて3次元表示して地形画像データとし、
前記地形画像データから海域と湖を示すデータを削除した後地形をいくつかに分割し、
前記原気象画像データについて、データ間を線形補間して高速フーリエ変換によりフーリエ級数近似曲線を作成することによりデータ数を増やし、
取得した線形補間後気象画像データを、前記地形画像データとの対応する領域を明らかにするように連結させて前記地形画像データに載せ、
前記線形補間後気象画像データ中の明度の高い、少なくとも経線、緯線、地形境界線を削除して、当該線の周辺の雲または隣り合う明度に置き換えて画像に修正し、
前記線形補間後気象画像データについて複数の明度値をしきい値として設定し、当該設定値より明度の低い気象画像データを削除してスキャンすることにより得られる明度差を利用して、前記線形補間後気象画像データを3次元表示し、
前記明度差および前記3次元表示線形補間後気象画像データから、地震の有無を検出する、
気象画像解析方法。
【請求項2】
前記地形画像データと前記線形補間後気象画像データの連結は、両画像を棒状マーカーで結ぶことによりなされる、
請求項1に記載の気象画像解析方法。
【請求項3】
前記線形補間後気象画像を、3倍〜5倍の線形補間による70〜100%級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最低明度値を得ることができる、
請求項1または2に記載の気象画像解析方法。
【請求項4】
前記線形補間後気象画像を、前記最低明度値を得る場合よりも高いピクセル数および/または級数項数フーリエ級数近似曲線で作成することにより、地震による異常気象画像を検出するための最高明度値、および高精度の気象画像データを得ることができる、
請求項1または2に記載の気象画像解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図23】
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【図26】
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【図29】
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【図31】
【図32】
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【図34】
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【図38】
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【図46】
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【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【公開番号】特開2010−210601(P2010−210601A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83396(P2009−83396)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
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