説明

水なし平版印刷版原版およびそれを用いることを特徴とする画像形成方法

【課題】印刷法におけるディスプレイのパターン形成や配線パターンの形成において、パターン加工性に優れた水なし平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】基板上に、少なくとも感熱層あるいは感光層とシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、該シリコーンゴム層表面の中心平均粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、ディスプレイパターン形成用または配線パターン形成用であることを特徴とする水なし平版印刷版原版により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパターン形成用または配線パターン形成用であることを特徴とする水なし平版印刷版原版およびそれを用いることを特徴とする画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、携帯電話等の携帯用電子機器や画像機器等の進展に伴い、プリント配線基板やICタグ等、柔軟性のあるフィルム状プリント配線基板に対する大量供給と低コスト化の要求が急速に高まってきている。また、液晶表示用カラーフィルターやプラズマディスプレイ、有機EL(Electoro Luminescence)素子等のディスプレイのパターン形成や、TFTアレイ等、ディスプレイの電極パターン形成にも同様な要求が高まりつつある。この様な電子情報材料分野での要求を満足しうるパターン形成方法として、従来のフォトリソグラフィー法に変わって、オフセット印刷法が注目を浴びており、様々な印刷手法が提案されている。例えば、シリコーン樹脂を用いた転写胴にインキを塗布し、その後凸版を用いてインキをパターンニングし、印刷を行う方法(例えば特許文献1参照)や、その改良方法(例えば特許文献2参照)等が挙げられる。
【0003】
一方、フィルムやガラス基板等の非吸収体への印刷が容易であることから、水なし平版印刷版を用いた印刷方法も提案されている。例えば、水なし平版印刷版とインキへの外場の印加を用いた方法(例えば特許文献3参照)、凹版転写印刷法と水なし平版印刷版を応用した方法(例えば特許文献4参照)が挙げられる。また、水なし平版印刷版の刷版においてシリコーンゴム層に形成される凹部のエッジ形状を台形にすることで、得られたパターンのうねりなどの欠陥を防止しようとする改良方法も提案されている(例えば特許文献5参照)。最近では、水なし平版印刷板を用いたフォトリソグラフィー法の品質に近い高品質の画像が得られる印刷方法として、シリコーンゴム層部分にインキを塗布し、その部分が画線部となる方法(例えば特許文献6参照)も提案されている。
【0004】
このような従来公知の印刷方法に用いる水なし平版印刷版は、通常の商業印刷をターゲットに組成設計された水なし平版印刷版を用いている。従って、印刷分野での使用は問題ないが、電子材料分野でパターン形成法として使用する場合、フォトリソグラフィー法に比較してパターン加工性が不十分であるといった問題を有していた。
【特許文献1】特許第3689536号公報(第2−5頁)
【特許文献2】特許第3730002号公報(第2−11頁)
【特許文献3】特開平8−187927号公報(第2−6頁)
【特許文献4】特許昭62−275752号公報(第2−4頁)
【特許文献5】特開2004−191964号公報(第2−3頁)
【特許文献6】特開2004−249696号公報(第2−7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、印刷法におけるディスプレイのパターン形成や配線パターンの形成において、パターン加工性に優れた水なし平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板上に、少なくとも感熱層あるいは感光層と、シリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、該シリコーンゴム層表面の中心平均粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、ディスプレイパターン形成用または配線パターン形成用であることを特徴とする水なし平版印刷版原版である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷法によるディスプレイのパターン形成または配線パターン形成において、均一な平滑性と良好な再現性を有するパターンを形成することができる水なし平版印刷版原版を提供することができる。本発明のディスプレイパターン形成用または配線パターン形成用であることを特徴とする水なし平版印刷版原版を用いることによって、フォトリソグラフィー加工と同等の品質であるパターンを容易に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳しく説明する。なお、本発明にかかる印刷物は表示ディスプレイの表示画面を構成する光学部品として好適に利用できる。光学部品としては、例えば、有機EL素子を例示することができ、また、カラー液晶ディスプレイを構成するカラーフィルタを例示することができる。また、このほか、本発明にかかる印刷物として、回路基材、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を例示することができる。
【0009】
本発明の水なし平版印刷版原版は、基板上に、少なくとも感熱層あるいは感光層、及びシリコーンゴム層を有し、電子材料分野でのパターン形成用途に適したものである。具体的には、印刷法によるディスプレイのパターン形成や導電性材料を用いた配線パターン形成用途に適したものである。平版印刷版原版を用いたディスプレイのパターンは、各種ディスプレイパターンを構成する材料からなるインキを用いて印刷することによって得ることができる。例えば、カラーフィルターであれば、カラーフィルターに要求される分光特性を満足できるRGBのインキであり、有機EL素子であれば発光材料からなるインキとなる。本発明において、ディスプレイのパターン形成用水なし平版印刷版原版とは、各種ディスプレイパターンを構成する材料からなるインキを用いたパターン印刷に適した水なし平版印刷版原版をいう。
【0010】
平版印刷版原版を用いた配線パターンは、導電性材料を用いて印刷することによって得ることができる。本発明において、配線パターン形成用の水なし平版印刷版原版とは、導電性材料を用いた配線パターンの印刷に適した水なし平版印刷版原版をいう。導電性材料としては、例えば導電性ペーストおよび導電性インキが挙げられる。
【0011】
導電性ペーストおよび導電性インキは金属、金属酸化物、磁性材料、高誘電体材料、導電性ポリマーなどの導電性材料を少なくとも1つ以上含有し、導電性材料と揮発性材料(例えば、有機溶剤、水など)からなる、溶液、ペースト、インキ(インク)、分散液などの流動性の材料が好ましく用いられる。特に平版印刷に用いる場合、取り扱いの面で導電性インキがより好ましい。
【0012】
一般的に導電性インキとは、金属粉末(例えば、金・銀・銅・アルミなど)、カーボン、カーボンナノチューブ、金属酸化物、磁性材料粉末(例えば、フェライト粉末など)、高誘電体材料粉末(例えば、セラミック粉末など)などをペースト状としたものとビヒクルなどのバインダーからなる組成物である。最近では導電性ポリマー(例えば、ドーピング等で導電率を向上させた公知のπ共役系ポリマー、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の錯体など)とビヒクルなどのバインダーからなる導電性インキも開発されつつある。
【0013】
本発明に用いられる導電性ペースト及び導電性インキは、従来公知のものであれば特に問題なく使用できる。例えば、導電性ペーストは特開平5−1120公報、特開平5−20920公報などに開示されているものが挙げられる。導電性インキとしては特開2004−87183公報、特開2004−241494公報などに開示されている金属粉末を用いた導電性インキや特開2000−191971公報、特開2001−49170公報などに開示されている導電性ポリマーを用いたものが挙げられる。
【0014】
本発明者らは、水なし平版印刷版を用いたオフセット印刷法を用いて電子材料分野での様々なパターン形成を行った。具体的には、印刷法によるディスプレイのパターン形成や導電性材料を用いた配線パターン形成を行い、得られたパターンについて様々な解析を進めた。解析の結果、電子材料分野に使用する水なし平版印刷版は、商業印刷と求められる特性が異なるという結果を導き出した。例えば、商業印刷では、得られた印刷物のインキの形状はさほど重要ではないが、ディスプレイのパターン形成や導電性材料を用いた配線パターン形成では、パターン形状が極めて重要となる。特に、得られたパターンの上に更にパターンを形成し、最終的に積層体を作製するため、形成したパターンの天井部分において均一な平滑性が求められる。
【0015】
このようなパターンの加工性を実現するためには、現在、商業印刷用途で販売、使用されている水なし平版印刷版原版では、実現が困難であることがわかった。そこで、更に水なし平版印刷版原版の組成にさかのぼって鋭意検討を進めた結果、シリコーンゴム層の表面の粗さが、パターン天井部の平滑性に極めて重要なファクターとなることを見いだすことができた。
【0016】
本発明の最大の特徴は、シリコーンゴム層の表面の粗さが中心線平均粗さ(Ra)0.4μm以下であることである。従来公知の水なし平版印刷版はシリコーンゴム層の表面の粗さが規定されておらず、調査の結果、中心線平均粗さ(Ra)は0.5μm以上であることがわかった。
【0017】
パターン作成に水なし平版印刷版を使用する場合、例えば、特開平8−187927号公報、特許昭62−275752号公報等のようにシリコーンゴム層をインキ反発層として使用するパターン形成の場合、シリコーンゴム層の表面の粗さが中心線平均粗さ(Ra)0.40μmより大きいため、シリコーンゴム層のインキ反発性にバラツキが生じ、非画線部にインキが付着するため、パターン形成が不良となる。また、特開2004−249696号公報のようにシリコーンゴム層をインキ着肉性層として使用する場合、インキ着肉性にバラツキが生じるため、得られたパターンに濃度ムラが生じてしまう。よって、作製したパターン天井部分において平滑性が得られないため、得られたパターン上に更にパターンを形成することができない。
【0018】
すなわち、シリコーンゴム層の表面粗さを中心線平均粗さ(Ra)0.4μm以下に調整することで、ディスプレイのパターン形成や導電性材料を用いた配線パターン形成に有効な水なし平版印刷版原版が得られることを発見した。パターン天井部の平滑性の点から、好ましくは0.3μm以下であり、更に好ましくは0.2μm以下である。
【0019】
中心線平均粗さRaが0.40μmより大きいと、表面の粗さによって、シリコーンゴム層のインキ反発性やインキ着肉性といった性能についてバラツキがでてしまい、作製したパターン天井部において均一な平滑性が得られない。そのためパターン形成が不良となり、断線の原因となる。すなわち、シリコーンゴム層の表面の粗さを中心線平均粗さ(Ra)0.4μm以下に調整することで、印刷法におけるディスプレイのパターン形成や配線パターンの形成において、パターン加工性に優れた水なし平版印刷版原版を得ることができる。
【0020】
ここで、中心線平均粗さ(Ra)の測定方法について説明する。本発明においてシリコーンゴム層表面の中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B0601 付属書2(2001)における表面粗さの定義に基づくものであり、具体的には、市販されている表面形状測定機、触針計、レーザー顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0021】
シリコーンゴム層を表面制御することで中心線平均粗さ(Ra)が上記範囲のシリコーンゴム層を作製することができる。シリコーンゴム層表面の中心線平均粗さRaを制御するための手段としては、様々な方法があるが、特に好ましく用いられる方法としては、水なし平版印刷版原版作製後に行う方法とシリコーンゴム層作製直後に行う方法が挙げられる。例えば、水なし平版印刷版原版作製後に行う方法として、水なし平版印刷版原版作製後にシリコーンゴム層を機械的粗面化、電気化学的粗面化等の従来公知の粗面化処理を用いて削りとり、表面を均一にすることが挙げられる。具体的には、サンドブラスト法やドライエッチング法等が挙げられる。
【0022】
また、シリコーンゴム層作製直後に行う方法としては、シリコーンゴム層作製直後にシリコーンゴム層の保護の目的で用いる保護フイルムをラミネートする際、シリコーンゴム層表面と接触する面のフイルムの表面形状が中心線平均粗さ(Ra)が0.4μm以下である保護フイルムを使用する方法が挙げられる。この方法は、保護フイルムのラミネートによって、フイルムの表面形状がシリコーンゴム層表面に転写することを防止することによって、所望のシリコーンゴム層表面の中心線平均粗さ(Ra)にすることができる。
本発明は、これらの方法を単独で用いても良いし、両方を併用しても良い。
【0023】
本発明に用いられるシリコーンゴム層は付加反応型、縮合反応型いずれであってもよい。
付加反応型のシリコーンゴム層は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)、反応抑制剤および硬化触媒を含む組成物(以下、シリコーン液という)から形成される。
【0024】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。
−(SiR−O−)− (I)
【0025】
式中、nは2以上の整数を示し、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。
【0026】
上記式中、RおよびRは全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0027】
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンシロキサンである。オルガノハイドロジェンは直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンを2種以上用いてもよい。上式中、Rはアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。
【0028】
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレート等のジメチルハイドロジェンシリル基含有アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリル等のモノマーとを共重合したオリゴマーが挙げられる。
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0029】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールが好ましく用いられる。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0030】
硬化触媒は公知のものから選ばれるが、好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーン液の安定性の観点から、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0031】
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、特にビニル基やアリル基を有するものが好ましい。
【0032】
縮合反応型のシリコーンゴム層は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒を含む組成物(シリコーン液)から形成される。
【0033】
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、前記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。
【0034】
一般式(I)中のRおよびRは、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。その取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0035】
縮合反応型のシリコーンゴム層に用いられる架橋剤としては、下記一般式(II)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミノシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
(R4−nSiX(II)
【0036】
式中、nは2〜4の整数を示し、Rは同一でも異なってもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xは同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミノ基、アミノオキシ基、アミド基またはアルケニルオキシ基である。上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
【0037】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン等のケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン等のアルケニルオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。
【0038】
架橋剤の含有量は、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の強度や印刷版の耐傷性の観点から、シリコーン液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0039】
硬化触媒としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中で、金属の有機酸塩が好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩が好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性、接着性の観点から、シリコーン液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0040】
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、さらには公知のシランカップリング剤を含有してもよい。
【0041】
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層の膜厚は0.3〜20g/mが好ましく、0.3〜2g/mであることがより好ましい。膜厚を0.3g/m以上とすることで印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20g/m以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。
【0042】
本発明に用いられる感光(熱)層としては、これまでに感光(熱)層残存型水なし平版印刷版用感光(熱)層として提案された何れのタイプの感光(熱)層も使用可能である。以下、具体例を挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0043】
(感熱層−1)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平11−221977号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0044】
(感熱層−2)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開2005−300586号公報に記載の気泡を含んだ感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0045】
(感熱層−3)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平9−131981号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で破壊されるタイプの感熱層である。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が破壊された感熱層と一緒に除去され画線部となる。一般的にこのような感熱層は検版性の観点から感熱層を深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし感熱層を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると感熱層の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。感熱層の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明の有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には感熱層の大部分が残存しても検版が可能となる。
【0046】
(感熱層−4)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平7−314934号公報や特開平9−086065号公報に記載の金属、またはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物の薄膜等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で金属薄膜が破壊される。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。感熱層−3同様、一般的にこのような金属薄膜も検版性の観点から深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし金属薄膜を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると金属薄膜の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。金属薄膜の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明の有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には金属薄膜の大部分が残存しても検版が可能となる。
【0047】
(感熱層−5)ポジ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平11−157236号公報や、特開平11−240271号公報に記載の熱硬化型感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で熱活性化架橋剤による架橋構造が形成されるタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー未照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0048】
(感光層−1)ネガ型水なし平版印刷版原版用感光層
例えば特開平11−352672号公報に記載の感光層等を挙げることができる。紫外線の照射により感光層表面の前処理液に対する溶解性が大きくなることで、現像処理によって、紫外線を照射した部分のシリコーンゴム層が除去され、未照射部分のシリコーンゴム層が残存する。露光部の感光層は現像後も残存する。
【0049】
(感光層−2)ポジ型水なし平版印刷版原版用感光層
例えば特開平6−118629号公報に記載の感光層等を挙げることができる。紫外線の照射により発生したラジカルでエチレン性不飽和二重結合含有化合物の重合が起こり、現像処理によって、紫外線を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部分のシリコーンゴム層が除去される。未露光部の感光層は現像後も残存する。
【0050】
本発明に用いられる基板としては、従来印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、フイルム等を使用することができる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフイルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフイルムなどが挙げられる。プラスチックフイルムは透明、不透明何れのものでも使用できる。中でも不透明のフイルムを用いることは検版性の点から好ましい。
【0051】
これら基板のうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用のフレキシブルな基板としては、ポリエチレンテレフタレートフイルムが特に好ましい。
【0052】
基板と感光層間の接着性向上、光ハレーション防止、検版性向上、断熱性向上、耐刷性向上等を目的に、前述の基板の上にプライマー層を有してもよい。本発明に用いられるプライマー層としては、例えば特開2004−199016号公報等に記載されたプライマー層を挙げることができる。
【0053】
上述したように構成された水なし平版印刷版原版は、シリコーンゴム層保護の目的で保護フイルムや合紙を有してもよい。保護フイルムおよび合紙は、そのどちらか一方を単独で有してもよいし、両方を併用してもよい。保護フイルムとしては、シリコーンゴム層表面と接触する面のフイルムの表面形状が中心線平均粗さ(Ra)が0.4μm以下である保護フイルムを用いることができる。また、露光光源波長の光を良好に透過する厚み100μm以下のフイルムが好ましい。代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。また、曝光による原版の感光を防止する目的で、特開平2−63050号公報に記載されたような種々の光吸収剤や光退色性物質、光発色性物質を保護フイルム上に有してもよい。原画フイルムを用いて露光する場合は、原画フイルムとの密着性向上の観点から、特開昭55−55343号公報や特開平2−063051号公報に記載されたような凹凸加工された保護フイルムを用いてもよい。
【0054】
本発明に用いられる合紙としては、平版印刷版原版に用いられる従来公知の合紙を用いることができる。重量としては秤量30〜120g/mのものが好ましく、より好ましくは30〜90g/mである。秤量30g/m以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、水なし平版印刷版原版と紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m(王子製紙(株))、クルパック73g/m(王子製紙(株))などがあげられるがこれらに限定されるものではない。
【0055】
次に、本発明の水なし平版印刷版原版の製造方法を記載する。塗布面を脱脂した基板上に、必要によりプライマー液またはそれを溶剤で希釈したプライマー希釈液を塗布し、プライマー層を設ける。乾燥や硬化のために加熱処理を行ってもよい。その後プライマー層と同様の方法で、感光(熱)層、シリコーンゴム層を順次設けることで水なし平版印刷版原版を得ることができる。各液の塗布方法としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーターなどによる塗布方法が用いられる。各層の加熱には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。
【0056】
このようにして得られた水なし平版印刷版原版は、保護フイルム上、または保護フイルム剥離後、画像フイルムを介して露光するか、デジタルデータによりレーザー走査露光することにより画像様に露光される。露光光源としては、例えば、カーボンアーク灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、紫外光レーザー、可視光レーザー、(近)赤外光レーザーなどが挙げられる。
【0057】
露光後の原版は、現像液の存在下もしくは非存在下での摩擦処理により現像がなされる。摩擦処理は、不織布、脱脂綿、布、スポンジ、ブラシ等で版面を擦ることによって、あるいは、現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジ等で版面を拭き取ることによって行うことができる。また、現像液で版面を前処理した後に水道水等をシャワーしながら回転ブラシで擦ることや、高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射することによっても行うことができる。
【0058】
現像に先立ち、前処理液中に一定時間版を浸漬する前処理を行ってもよい。前処理液としては、例えば、水や水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。界面活性剤としては、安全性、廃棄する際のコスト等の点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10重量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄コスト等の経済性の点でも好ましい。さらに、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましく、アミン化合物を共存させることがより好ましい。
【0059】
前処理液、現像液、後処理液としては、特開昭63−179361号公報、特開平4−163557号公報、特開平4−343360号公報、特開平9−34132号公報、特許第3716429号公報に記載されたような水なし平版印刷版原版の現像に関して開示されたものを用いることができる。前処理液の具体例としては、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、PH−7N、CP−1、NP−1、DP−1(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。後処理液の具体例としては、PA−1、PA−2、PA−F(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。
【0060】
上記現像処理は自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部、現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置等を使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(共に東レ(株)製)等や、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができ、これらを単独または併用して使用することができる。
【0061】
現像処理された印刷版を積み重ねて保管する場合には、印刷版保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【実施例】
【0062】
本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
【0063】
実施例に用いた特性の定義及び測定法は次の通りである。
【0064】
<シリコーンゴム層表面の中心線平均粗さ(Ra)>
得られた水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム表面を、バイオレットレーザー顕微鏡VK9500((株)KEYENCE製)を用いて以下の条件により観察し、中心平均粗さ(Ra)を測定した。
画像取り込みソフト:VK Viewer
深さピッチ:0.01μm
倍率:×200
解析ソフト:VK Analyzer
【0065】
<印刷版評価(パターン再現性)>
得られた水なし平版印刷版を光学顕微鏡で観察し、配線パターンの再現性を調べた。配線パターン10μmが100%再現されているものは◎、20μmが再現されているものは○、30μmが再現されているものは△、まったく再現されていないものは×とした。
【0066】
<配線パターン評価>
得られた配線パターンを光学顕微鏡で観察し、配線パターンの再現性を調べた。配線パターン10μmが100%再現されているものは◎、20μmが再現されているものは○、30μmが再現されているものは△、まったく再現されていないものは×とした。また断線の有無も確認した。
【0067】
<有機EL発光パターンの発光評価>
得られた有機EL素子パネルに電圧を印加し発光状態を確認した。パネル上の未発光部分の有無をルーペで観察した。未発光部分がない場合は「良好」と判断した。1ヶ所以上の未発光部分がある場合は不良とした。
【0068】
<導電性インキの組成>
(1)銀粉体(球形状、平均粒径0.8μm):80重量部
(2)ガラスフリット(ビスマス系、軟化点500℃、平均粒径0.9μm):3重量部
(3)バインダー樹脂(アリルエーテルと無水マレイン酸の共重合体物、粘度2,000P):16重量部
(4)石油系溶剤:1重量部。
【0069】
<酸化チタン分散液の作製>
N,N−ジメチルホルムアミド10重量部中に、酸化チタン“CR−50”(石原産業(株)製)10重量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08)を15重量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去ることで酸化チタン分散液を得た。
【0070】
<断熱層溶液の組成>
(1)エポキシ樹脂:エピコート(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):49重量部
(2)ポリウレタン樹脂:サンプレン(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):98重量部
(3)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):11.2重量部
(4)ビニル系重合物:ディスパロン(登録商標)LC951(楠本化成(株)製):0.2重量部
(5)酸化チタン分散液(濃度50%):84重量部(酸化チタン:42重量部)
(6)N,N−ジメチルホルムアミド:302.5重量部
(7)メチルエチルケトン:315.6重量部。
【0071】
<感熱層溶液の組成>
(1)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):16重量部
(2)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):ナーセム(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):37.5重量部
(3)フェノールノボラック樹脂:スミライトレジン(登録商標)PR53195(住友デュレズ(株)製):60重量部
(4)ポリウレタン樹脂:サンプレン(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):125重量部(ポリウレタン樹脂:25重量部)
(5)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(6)テトラヒドロフラン:993重量部
(7)エタノール:64重量部。
【0072】
<シリコーンゴム層溶液1の組成>
(1)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンDMS−V42(重量平均分子量72,000、GELEST Inc.製):100重量部
(2)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、SiH基含有ポリシロキサンHMS−071(GELEST Inc.製):4重量部
(3)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:3重量部
(4)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):10重量部
【0073】
<有機EL発光パターン形成用基板の作製>
300mm角のガラス基板上に、スパッタ法を用いてITO膜を形成し、フォトリソ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングした。陽極である第一電極のラインパターンは、線幅40μm、スペース20μmで、ラインが1950ライン形成されるパターンとした。その上に、スピンコーターを用いて正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、有機発光パターン形成用基板を作製した。
【0074】
<有機EL発光パターン形成用インキの調製>
赤色、緑色、青色(RGB)の3色からなる以下の有機EL発光パターン形成用インキを調製した。
赤色発光インク(R):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製赤色発光材料商品名Red1100)。
緑色発光インク(G):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製緑色発光材料商品名Green1300)。
青色発光インク(B):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製青色発光材料商品名Blue1100)。
【0075】
(実施例1)
厚さ0.225mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に前記断熱層溶液を塗布し、200℃で1分間乾燥し、膜厚10g/mの断熱層を設けた。この断熱層の上に前記感熱層溶液を塗布し、150℃で80秒間乾燥し、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。この感熱層上に、前記シリコーンゴム溶液1を塗布し、125℃で80秒間乾燥し、膜厚2.0g/mのシリコーンゴム層を設け、水なし平版印刷版原版を得た。
【0076】
更に、カバーフィルムとして、シリコーンゴム層表面に中心線平均粗さ(Ra)0.40μmのポリプロピレンフィルム(6μm)をラミネートした。これにより、シリコーンゴム層の中心線平均粗さ(Ra)0.4μmの表面状態を作製した。得られた水なし平版印刷版原版を、製版機:GX−3600(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー200mJ/cmで上述した条件で露光した。
【0077】
続いて、自動現像機:TWL−860KII(東レ(株)製、前処理部液:NP−1、現像部液:水、後処理部液:PA−F)により、版搬送速度80cm/分(前処理温度35℃)で、上記露光済み版の現像を行い、線幅30μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、線幅20μm(画線部)、スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、および線幅10μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターンが設けられた印刷版Aを作製した。印刷版Aをルーペで観察したところ、パターンは10μmまで再現でき良好なパターン再現性が得られた。また、レーザー顕微鏡により中心線平均粗さ(Ra)を測定した結果、0.4μmであった。結果を表1、2に示す。
【0078】
また、同様に上記露光済み版の現像を、自動現像機:TWL−860KII(東レ(株)製、前処理部液:NP−1、現像部液:水、後処理部液:PA−F)により、版搬送速度80cm/分(前処理温度35℃)で、縦方向にのみ線幅30μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、線幅20μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、および線幅10μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターンが設けられた印刷版Bを作製した。
【0079】
更に上記露光済み版の現像を、自動現像機:TWL−860KII(東レ(株)製、前処理部液:NP−1、現像部液:水、後処理部液:PA−F)により、版搬送速度80cm/分(前処理温度35℃)で、横方向にのみ線幅30μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、線幅20μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターン、および線幅10μm(画線部)・スペース150μm(非画線部)のストライプパターンが設けられた印刷版Cを作製した。
【0080】
さらに得られた印刷版Bをオフセット印刷機に取り付け、上記導電性インキを用いて、印刷版の版面温度20℃で20インチサイズの厚み3mmのガラスに対して印刷を行った。このガラス基板をオーブンで200℃で10分乾燥し、その後1時間の焼成を行うことで配線パターンを形成した。その上に印刷版Cをオフセット印刷機に取り付け、同様の条件で印刷、乾燥した後、焼成を行うことで配線パターン1を作製した。ガラス基板上に作製した配線について、光学顕微鏡で形状を観察し、パターン再現性と断線の有無を評価した。20μmのパターンを再現し良好なパターン再現性が得られ、断線も確認できなかった。結果を表2に示す。
【0081】
また得られた印刷版Bを特開2004−249696に記載されている胴型印刷機に取り付け、特開2004−249696に記載されている印刷方法により、上記導電性インキを用いて、印刷版の版面温度20℃で20インチサイズの厚み3mmのガラスに対して印刷を行った。このガラス基板をオーブンで200℃で10分乾燥し、その後1時間の焼成を行うことで配線パターンを形成した。その上に印刷版Cをオフセット印刷機に取り付け、同様の条件で印刷、乾燥した後、焼成を行うことで配線パターン2を作製した。ガラス基板上に作製した配線について、光学顕微鏡で形状を観察し、パターン再現性と断線の有無を評価した。10μmのパターンを再現し良好なパターン再現性が得られ、断線も確認できなかった。結果を表2に示す。
【0082】
(実施例2〜4)
表1に記載のカバーフィルムを変更した以外は実施例1と同様の操作で水なし平版印刷版原版を作製し、評価を行った。現像後の印刷版をルーペで観察したところ、良好なパターン再現性が得られた。また、得られた配線パターンについて評価した結果、良好に再現し、断線もなかった。結果を表1、2に示す。
【0083】
(実施例5)
カバーフィルムをラミネートしない以外は実施例1と同様の操作で水なし平版印刷版原版を作製し、評価を行った。現像後の印刷版をルーペで観察したところ、良好なパターン再現性が得られた。また、得られた配線パターンについて評価した結果、良好に再現し、断線もなかった。結果を表1、2に示す。
【0084】
(実施例6〜11)
表1に記載のシリコーンゴム層膜厚に変更した以外は実施例1と同様の操作で水なし平版印刷版原版を作製し、評価を行った。現像後の印刷版をルーペで観察したところ、良好なパターン再現性が得られた。また、得られた配線パターンについて評価した結果、良好なパターン再現性が得られた。また、得られた配線パターンについて評価した結果、良好に再現し、断線もなかった。結果を表1、2に示す。
【0085】
(実施例12)
実施例1と同様にして露光済み版の現像を、自動現像機:TWL−860KII(東レ(株)製、前処理部液:NP−1、現像部液:水、後処理部液:PA−F)により、版搬送速度80cm/分(前処理温度35℃)で、水なし平版印刷版原版をレーザー照射した後、現像し、線幅40μm・スペース20μmの水なし平版印刷版を得た。得られた水なし平版印刷版をオフセット印刷機に装着し、RGBそれぞれの有機EL発光インキの印刷を上記有機EL発光パターン形成用基板に対して行った。ストライプ状に有機発光層が形成された基板を150℃で5時間乾燥した後、基板上にカルシウムとアルミニウムからなる陰極(第二電極)を画素電極のラインパターンと直交するようなラインパターンで積層形成した。最後にこれらの有機EL構成体をガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子パネルを作製した。得られた有機EL素子パネルに電圧を印加し発光状態を確認した。パネル上の未発光部分の有無をルーペで観察したところ、まったく未発光部分がなく良好なパネルが得られた。結果を表3に示す。
【0086】
(比較例1〜4)
表1に記載のカバーフィルムに変更した以外は実施例1と同様の操作で水なし平版印刷版原版を作製し、評価を行った。現像後の印刷版をルーペで観察したところ、良好なパターン再現性は得られていたが、印刷を行って得られた配線パターンについて評価した結果、パターンが再現していない部分が生じ、断線も確認された。結果を表1、2に示す。
【0087】
(比較例5)
比較例3と同様の操作で水なし平版印刷版原版を作製し、実施例12と同様の条件で有機EL発光パターンを作製し評価を行った。得られた有機EL素子パネルに電圧を印加し発光状態を確認した。パネル上の未発光部分の有無をルーペで観察したところ、未発光部分が確認できた。結果を表3に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも感熱層あるいは感光層とシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、該シリコーンゴム層表面の中心平均粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、ディスプレイパターン形成用または配線パターン形成用であることを特徴とする水なし平版印刷版原版。
【請求項2】
前記シリコーンゴム層の中心平均粗さ(Ra)が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の水なし平版印刷版原版。
【請求項3】
前記シリコーンゴム層の膜厚が0.3g/m以上20g/m以下であることを特徴とする請求項1または2記載の水なし平版印刷版原版。
【請求項4】
前記シリコーンゴム層の膜厚が0.3g/m以上2g/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の水なし平版印刷版原版。
【請求項5】
樹脂に対し撥樹脂層と親樹脂層による画線部と非画線部を作り、全面に樹脂を塗布した後に撥樹脂層上の樹脂のみを別の撥樹脂層を設けたシート上に転写し、更にこの樹脂を基板上に転写する画像形成方法において、請求項1〜4いずれか記載の水なし平版印刷版原版を用いることを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2009−262354(P2009−262354A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112047(P2008−112047)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】