説明

水の循環給水システム

【課題】大量の水が一時的にオーバーフローする際にもオーバーフロー水と常時循環水の流量を調節し、オーバーフロー水の量が減少した場合において速やかに通常運転に復帰させる水の循環給水システムを提供する。
【解決手段】常時循環路2と、水槽1からオーバーフローした水を一旦オーバーフロー回収タンク6に導入した後に合流点100で常時循環路に合流させるオーバーフロー循環路5とを備え、制御部Cは、第1の流量調節手段を開いて、プールの水Wを常時循環路に通水して循環させた後、第2の流量調節手段を開き、オーバーフロー回収タンク6の水を合流させてプールからのオーバーフローを開始させ、オーバーフロー水をオーバーフロー回収タンクに戻し、オーバーフロー回収タンクの水位レベルが所定のレベルになるように、第2の流量調節手段の開度を制御し、プールの水を常時オーバーフローの状態で、通水量の総和を一定に保った通常運転をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プールや大型浴槽のように、一度に多数人が入る水槽等において、運転開始時から速やかに通常運転に移行し、プール等の水槽において大量の水が一時的にオーバーフローするような異常時の際にもオーバーフロー水と常時循環水の流量を調節し、オーバーフロー水の量が減少した場合において速やかに通常運転に復帰させることができる水の循環給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プールや大型浴槽に用いられる水の循環給水システムとしては、例えば特許文献1に記載されているような循環給水システムがある。
すなわち、プール等の水槽内の水を、常時濾過器を通して循環させる常時循環路と、水槽からオーバーフローした水を一旦オーバーフロー回収タンクに導入した後に前記常時循環路に合流させるオーバーフロー循環路とを備え、前記オーバーフロー回収タンクにおけるオーバーフロー時に、前記オーバーフロー回収タンクに対してそのオーバーフロー量に相応する給水を行うとともに、循環する水の総量を一定にしたまま、オーバーフロー回収タンクにおけるオーバーフローによって減少した場合に補給をすることによって、排水を最小限に抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−349075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水の循環給水システムにあっては、プール底部吸込、側面吐出を基本とする常時オーバーフロー(見せかけ上溢れている)回収システムであった。節水効果は、従来の技術より優れている。しかし、その後、アクアビクス等などにおいて、オーバーフロー回収タンクに大量にプール水が還ってくると、オーバーフロー回収ポンプの能力を超えたプール水が、オーバーフロー回収タンクの容量(高さ)を超えオーバーフロー回収タンクの排水路より排水される(溢れる)現象が見られるようになった。
排水された分のプール水は、一定の補給水量しか補う事が出来ず、オーバーフロー回収タンクから大量の排水が有った場合、プール水位の回復に時間がかかり、プールプログラムの休憩時間内にプール水位が回復出来ないという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するものであり、水槽内の水を循環させるシステムにおいて、運転開始時から速やかに通常運転に移行し、プール等の水槽において大量の水が一時的にオーバーフローするような異常時の際にもオーバーフロー水と常時循環水の流量を調節し、オーバーフロー水の量が減少した場合において速やかに通常運転に復帰させることができる水の循環給水システムを提供することを目的とする。
また、本発明の他の課題として、オーバーフロー回収タンクへの水の補給が従来よりも少なくすることができ、水の節約につながる水の循環給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の水の循環給水システムは、
水槽内の水を常時循環させる常時循環路と、
水槽からオーバーフローした水を一旦オーバーフロー回収タンクに導入した後に合流点で常時循環路に合流させるオーバーフロー循環路とを備え、
常時循環路における前記合流点の上流側に第1の流量調節手段を設置するとともに、
オーバーフロー循環路における前記合流点の上流側に第2の流量調節手段を設置し、
制御部は、
運転開始時において、
常時循環路の第1の流量調節手段を開いて、
水槽の水を常時循環路に通水して循環させた後、
第2の流量調節手段を開いて、
オーバーフロー回収タンクの水を、上記すでに循環を開始している常時循環回路の循環水と合流点において合流させて、水槽からのオーバーフローを開始させ、
オーバーフロー水をオーバーフロー回収タンクに戻し、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルを水位センサーで測定し、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルが所定のレベルになるように、
第2の流量調節手段の開度を制御し、
水槽の水を常時オーバーフローの状態で、通水量の総和を一定に保った通常運転をするとともに、
この時点での第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の開度を記憶し、
水槽からのオーバーフロー水が急増した異常運転時において、
水位レベルが上昇したオーバーフロー回収タンクの水位センサーからの信号を検知して、
第2の流量調節手段を急速に開いてオーバーフロー循環路の循環通水量を増加させ、上昇するオーバーフロー回収タンクの水位レベルの上昇を抑え、
その一方で、常時循環回路からの循環水を減少させるため、第1の流量調節手段の開度を絞り、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルが上記通常運転時の水位レベルに戻った時点で、
第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の開度を前記記憶した開度に戻し、通常運転時の状態に復帰させることを特徴とする。
(2)本発明の水の循環給水システムは、前記(1)において、
前記制御部は、
水槽の底に設けた超音波などを利用する水位センサーからの信号を受けて、
所定値よりも水槽の水位レベルが低い場合は、
補給路に設けられた電動式開閉弁を開にして補給水をオーバーフロー回収タンクに供給して、水槽の水位レベルを上げ、
所定値よりも水位レベルが高い場合は、
補給路に設けられた電動式開閉弁を閉にすることを特徴とする。
(3)本発明の水の循環給水システムは、前記(1)又は(2)において、
前記第1の流量調節手段が常時循環水調節バルブであり、
前記第2の流量調節手段がオーバーフロー水調節バルブであることを特徴とする。
(4)本発明の水の循環給水システムは、前記(1)又は(2)において、
前記第1の流量調節手段が濾過ポンプであり、
前記第2の流量調節手段がオーバーフロー回収ポンプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水の循環給水システムは、水槽内の水を循環させるシステムにおいて、運転開始時から速やかに通常運転に移行し、プール等の水槽において大量の水が一時的にオーバーフローするような異常時の際にもオーバーフロー水と常時循環水の流量を調節し、オーバーフロー水の量が減少した場合において速やかに通常運転に復帰させることができる。
また、本発明の水の循環給水システムの使用によって、オーバーフロー回収タンクへの水の補給が従来よりも少なくすることができ、水の節約につながる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1に係る水の循環給水システムのフローシート図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る水の循環給水システムのフローシート図である。
【図3】実施例の水の循環給水システムにおいて、運転開始から通常運転および異常運転に移行する場合の常時循環路とオーバーフロー循環路の通水量の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る水の循環給水システムは、水槽1内の水を常時循環させる常時循環路2と、水槽1からオーバーフローした水を一旦オーバーフロー回収タンク6に導入した後に合流点100で常時循環路2に合流させるオーバーフロー循環路5とを備え、常時循環路2における前記合流点100の上流側に第1の流量調節手段21(29)を設置するとともに、オーバーフロー循環路5における前記合流点100の上流側に第2の流量調節手段53(59)を設置し、
制御部Cは、運転開始時において、常時循環路2の第1の流量調節手段(常時循環水調節バルブ29)を開いて、水槽の水Wを常時循環路2に通水して循環させた後、第2の流量調節手段(オーバーフロー水調節バルブ59)を開いて、オーバーフロー回収タンク6の水を、上記すでに循環を開始している常時循環回路2の循環水と合流点100において合流させて、水槽からのオーバーフローを開始させ、オーバーフロー水をオーバーフロー回収タンク6に戻し、オーバーフロー回収タンク6の水位レベルを水位センサー9で測定し、オーバーフロー回収タンク6の水位レベルが所定のレベルになるように、第2の流量調節手段(オーバーフロー水調節バルブ59)の開度を制御し、水槽1の水を常時オーバーフローの状態で、通水量の総和を一定に保った通常運転をするとともに、この時点での常時循環水調節バルブ29及びオーバーフロー水調節バルブ59の開度を記憶し、水槽からのオーバーフロー水が急増した異常運転時において、水位レベルが上昇したオーバーフロー回収タンク6の水位センサー9からの信号を検知して、オーバーフロー水調節バルブ59を急速に開いてオーバーフロー循環路5の循環通水量を増加させ、上昇するオーバーフロー回収タンク6の水位レベルの上昇を抑え、その一方で、常時循環回路2からの循環水を減少させるため、常時循環水調節バルブ29の開度を絞り、オーバーフロー回収タンク6の水位レベルが上記通常運転時の水位レベルに戻った時点で、常時循環水調節バルブ29及びオーバーフロー水調節バルブ59の開度を前記記憶した開度に戻し、通常運転時の状態に復帰させるように調整する。
【0010】
このような水の循環給水システムにおける制御方法は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、
(A)<水槽底部吸込配管及びオーバーフロー回収タンク吸込配管をバルブ制御する方法>
このバルブ制御する方法においては、水槽底部吸込配管及びオーバーフロー回収タンク吸込配管を同口径とし、オーバーフロー回収タンクの水位をセンサー(例えば、超音波センサー・微差圧センサー等)で測定する。
オーバーフロー回収タンクの水位が急激に上昇した場合は、オーバーフロー回収タンク配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)の開度を高め、水槽底部吸込配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)の開度を下げる。
オーバーフロー回収タンクの水位が下降した場合は、オーバーフロー回収タンク配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)の開度を下げ、水槽底部吸込配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)の開度を上げる。
水槽底部吸込配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)とオーバーフロー回収タンク配管に設置したバルブ(例えば、比例制御等)の開度を調節し、それぞれの通水量を調節する。
【0011】
(B)<濾過ポンプ及びオーバーフロー回収ポンプの回転効率を制御する方法>
この制御方法は、濾過ポンプ及びオーバーフロー回収ポンプの能力を同一化しオーバーフロー回収タンクの水位をセンサー(例えば、超音波センサー・微差圧センサー等)で測定する。
オーバーフロー回収タンクの水位が急激に上昇した場合は、オーバーフロー回収ポンプのポンプモーターの回転効率(例えば、インバーター等)を上げ、濾過ポンプのポンプモーターの回転効率(例えば、インバーター等)を下げる。
オーバーフロー回収タンクの水位が下降した場合は、オーバーフロー回収ポンプのポンプモーターの回転効率(例えば、インバーター等)を下げ、濾過ポンプのポンプモーターの回転効率(例えば、インバーター等)を上げよう制御する。
【0012】
上記(A)又は(B)の方法による制御の実行により、運転開始時から速やかに通常運転に移行し、プール等の水槽において大量の水が一時的にオーバーフローするような異常時の際にもオーバーフロー水と常時循環水の流量を調節し、オーバーフロー水の量が減少した場合において速やかに通常運転に復帰させることができる。
また、オーバーフロー回収タンクへの水の補給が従来よりも少なくすることができ、水の節約を図ることができる。
さらに、オーバーフロー回収タンクの排水路より排水されるプール水が少ない為、プールプログラムの休憩時間内にプール水位を回復する可能性を従来のシステムよりも向上させることができる。
なお、(B)のシステムは濾過ポンプ及びオーバーフロー回収ポンプを使用するが、(A)のシステムはオーバーフロー回収ポンプの設置が不要である。
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明の水の循環給水システムの実施形態1を、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る水の循環給水システムのフローシート図である。
図1に示すように、実施形態1に係る水の循環給水システムは、プール(水槽)1、このプール1の底部に設置された環水口11、このプール1の側面に設置された給水口12、このプール1の上面周囲に設置されたオーバーフロー溝13を備えている。
【0014】
また、常時循環路2は、環水口11、11と給水口12、12とを繋いでいる。環水口11,11から吸引されたプール1の水Wは、常時循環路2を循環しながら濾過され、給水口12,12を介してプール1に戻される(矢印方向)。
【0015】
濾過ポンプ21は制御部Cに基づいて作動する。また、除毛器22は、常時循環路2における濾過ポンプ21の上流側(プール1方向、反対方向を下流という。以下において同じ)に設置されている。この除毛器22は、濾過ポンプ21に流れ込むプールの水に混じった毛髪類を除去するためのものである。
【0016】
常時循環水調節バルブ29(第1の流量調節手段)は、常時循環路2における除毛器22の上流側に設置されている。常時循環水調節バルブ29は、電動式開閉弁(以下において電動式開閉弁は開閉弁の一例を示す)であり、その開度を前記制御部Cによって調節され、環水口11,11から吸引され、濾過ポンプ21に流れるプール1の水Wの通水量を調節する。
【0017】
濾過タンク23は、常時循環路2における濾過ポンプ21の下流側に設置されている。循環する水はこの濾過タンク23を通過することによって濾過される。
【0018】
熱交換器やボイラー等の熱源25は、常時循環路2における濾過タンク23の下流側に設置されている。循環する水は熱源25を通過することによって所定の温度に維持される。
なお、温度調節用の弁としての一例である電動式三方向弁251は、制御部Cによって制御され、熱源25への給湯を調節して、その設定温度を調節する。
【0019】
殺菌装置40は、殺菌剤注入路41を介して、常時循環路2における濾過ボンプ21の下流側に繋がれており、制御部Cを介して作動することによって、常時循環路2を循環する水に定期的に殺菌剤が注入されるようになっている。
【0020】
プール1の水Wは、濾過ポンプ21の作動によって、環水口11,11から吸引され、常時循環路2を循環しながら、除毛器22によって毛髪などを除去し、濾過タンク23によって濾過され、熱源25によって所定の温度に維持され、殺菌された状態で、給水口12,12を介してプール1に還流される。
【0021】
排水路3は、プール1における環水口11,11近傍において、常時循環路2にバルブ31を介して繋がれている。排水路3は、原則としてプール1内の水Wを排水する場合に使用される。
なお、排水路3には濾過タンク23からの排水路32も合流している。これは、不用となった濾過タンク23内のドレンを排水及び逆洗排水するためである。
実施形態1における逆洗排水時には、オーバーフロー水調節バルブ(第2の流量調節手段)を全閉にし常時循環水調節バルブ(第1の流量調節手段)を全開にする。
また、後述する実施形態2における逆洗排水時には、オーバーフロー回収ポンプ(第2の流量調節手段)を停止し濾過ポンプ(第1の流量調節手段)のみ運転する。
【0022】
次に、オーバーフロー回収タンク6は、オーバーフロー流入路(オーバーフロー循環路)51を介して、プール1のオーバーフロー溝13に繋がれている。プール1内の水Wがオーバーフローすると、オーバーフロー水Wは、オーバーフロー溝13に浸入する。
そして、オーバーフロー流入路51、流量計101を介して、オーバーフロー回収タンク6に流れ込み、一時的に貯留される。オーバーフローしたプール1の水Wの量は流量計101によって計測され、制御部Cに送信される。
なお、オーバーフロー回収タンク6には常時、一定量の水が貯留されており、この一定量の水の水位を所定の水位とすることもできる。
【0023】
オーバーフロー流出路(オーバーフロー循環路)52は、上流端を前記オーバーフロー回収タンク6に繋ぎ、下流端をオーバーフロー水調節バルブ59(第2の流量調節手段)を介して常時循環路2における常時循環水調節バルブ29の下流側に合流している。
オーバーフロー水調節バルブ59は電動式開閉弁であり、その開度を制御部Cによって調節され、オーバーフロー回収タンク6から吸引され、濾過ポンプ21に流れる通水量を調節する。
オーバーフロー水調節バルブ59の通水量及び常時循環水調節バルブ29の通水量は、
制御部Cを介して各々のその開度を調節し、それらの合流点100での通水量の総和が制御されるようになっている。
ここで、総和とは、プール1、オーバーフロー回収タンク6、常時循環路2及びオーバーフロー循環路52に貯留されている水の総量をいう。
【0024】
なお、オーバーフロー流入路51とオーバーフロー流出路52とによって、オーバーフロー循環路5が構成される。
【0025】
なお、排水路(オーバーフロー回収タンク6の)57は、オーバーフロー回収タンク6内の清掃等を行う時の排水路である。
【0026】
オーバーフロー回収タンク6に給水をするための補給路7は、途中に例えば電動式開閉弁71が設置されている。電動式開閉弁71を制御部Cからの信号によって開放することによって、オーバーフロー回収タンク6に給水することができる。
なお、電動式開閉弁71と平行に手動コック72も設置され、手動によっても給水可能にしている。
実施形態1における給水時には、制御部Cからの信号によって、オーバーフロー水調節バルブ(第2の流量調節手段)を全開にし常時循環水調節バルブ(第1の流量調節手段)を全閉にする。
また、後述する実施形態2における給水時には、制御部Cからの信号によって、オーバーフロー回収ポンプ(第2の流量調節手段)を運転し濾過ポンプ(第1の流量調節手段)停止する。
【0027】
レベル計81は、オーバーフロー回収タンク6に2台設置されている。このレベル計81は5P電極(上方の電極から下方に向かって順次1P電極、2P電極・・・という)からなり、水位の上限・下限を検知して制御部Cへ信号を送信する。
即ち、2P電極及び3P電極によって水位の下限を検知し制御部Cへ信号を送信して、制御部Cからの信号によって電動式開閉弁71を開放して、オーバーフロー回収タンク6への給水を開始し、水位の上限を検知し制御部Cへ信号を送信して、制御部Cからの信号によって電動式開閉弁71を閉止して、前記オーバーフロー回収タンク6への給水を停止する。
また、濾過ポンプ又はオーバーフロー回収ポンプの空転防止のため、別の電極2P電極及び3P電極からの信号を制御部Cへ送信して、制御部Cからの信号によって、それらのポンプの入切制御をする。これらの制御はすべて制御部(制御盤)Cを介して行われる。
【0028】
水位センサー9は、オーバーフロー回収タンク6の上部又は下部に設置されている。この水位センサー9は例えば超音波によって、その設置位置から水面までの距離を計測することによって、オーバーフロー回収タンク6の水位を計測し制御部Cへ信号を送信する。
そして、制御部Cを介して、所定の範囲内において、水位に応じてオーバーフロー水調節バルブ59の開度を調節して通水量を変動させ、オーバーフロー回収タンク6の水位が高くなったときに大きくし、低くなったときに小さくするように制御する。
すなわち、常時循環水調節バルブ29の通水量は、その総和が一定の範囲内において、オーバーフロー回収タンク6の水位が高くなったときに小さくし、低くなったときに大きくするように制御する。
【0029】
なお、オーバーフロー水調節バルブ59の通水量及び常時循環水調節バルブ29の通水量は、制御部Cからの信号によって、各々のバルブの開度を制御することによって調節される。
この場合、これらの通水量は、常時循環水調節バルブ29、オーバーフロー水調節バルブ59の下流に設けた流量計101,101で計測した通水量の信号を制御部Cに送信し、
また、合流点100の下流点に設けた流量計101で計測した通水量の信号を制御部Cに送信し、通水量の総和を確認することができる。
なお、制御部Cによって、常時循環水調節バルブ29の通水量及びオーバーフロー水調節バルブ59の通水量をそれぞれ制御し、合流点100に流れ込む通水量の総和を制御するようにしている。
【0030】
<本システム全体の制御>
<通常運転時の、常時循環水調節バルブ29(第1の流量調節手段)及びオーバーフロー水調節バルブ59(第2の流量調節手段)の開度の設定>
まずは、通常運転時の、第1の流量調節手段(常時循環水調節バルブ29)の開度及び第2の流量調節手段(オーバーフロー水調節バルブ59)の開度の設定を行う。
すなわち、図3に示すように、前回の運転停止状態から、本実施形態の水の循環給水システムを再起動する場合は、水槽(プール)1はオーバーフロー寸前の状態であるので、常時循環水調節バルブ29(第1の流量調節手段)を制御部Cからの指令により全開の状態にして、常時循環路において通水し循環させる。
この状態では、プール水は、オーバーフローせずに常時循環路を循環しているので、プールのレベルは変化しない。
【0031】
次に、オーバーフロー回収タンク6に溜まっている水を、第2の流量調節手段(オーバーフロー水調節バルブ59)を制御部Cからの指令により開の状態にして、上記すでに循環している常時循環回路の循環水と合流点においてさせる。
すると、プール1の水はオーバーフローして、オーバーフロー溝13からオーバーフロー回収タンク6に入り、オーバーフロー回収タンク6のレベルが上昇し、このときの水位レベルをレベル計81及び水位センサー9で逐次計測し、そのデータを制御部Cへ送信する。
【0032】
次に、制御部Cは、レベル計81,水位センサー9からの信号を受信して、第2の流量調節手段(オーバーフロー水調節バルブ59)をさらに大きく開くように信号を送り、上昇基調にあるオーバーフロー回収タンクの水位レベルの上昇を抑え、所定の水位レベルを維持するようにオーバーフロー水調節バルブ59の開度を制御する。
この時点で、プール1の水は、常時循環回路2を通って循環するとともに、オーバーフロー水をオーバーフロー溝13からオーバーフロー回収タンク6に回収され、常時循環路2及びオーバーフロー循環路5を循環する通水量のバランスが保たれた状態になる。
このときの、常時循環水調節バルブ29及びオーバーフロー水調節バルブ59の開度を制御部Cに記憶させる(記憶1)。
【0033】
この常時循環水調節バルブ29及びオーバーフロー水調節バルブ59の開度は、オーバーフロー水をどの程度の量にするかのバランスをとるようにする。
オーバーフロー水の量は、オーバーフロー流入路51の途中に設けた流量計101からの信号によって把握できる。
【0034】
また、実施形態における水の循環給水システムにおいて、制御部Cは、プールの底に設けた超音波などを利用する水位センサー1aからの信号を受けて、所定値よりもプールの水位レベルが低い場合は、補給路7に設けられた電動式開閉弁71を開にして補給水をオーバーフロー回収タンク6に供給して、プールの水位レベルを上げ、所定値よりも水位レベルが高い場合は、補給路7に設けられた電動式開閉弁71を閉にする制御を実行することもできる。
これにより、循環路における水の漏れがあった場合などにおいて、プールの水位レベルを速やかに通常のレベルに戻すことができる。
【0035】
<異常運転時の、常時循環水調節バルブ29(第1の流量調節手段)及びオーバーフロー水調節バルブ59(第2の流量調節手段)の開度の設定>
たとえば、大勢の人が一度に入ったときなどには、プールからのオーバーフロー水が急増し、オーバーフロー回収タンク6の水位レベルが急上昇するので、レベル計81及び水位センサー9からの信号を検知して、制御部Cは、オーバーフロー水調節バルブ59を急速に開いてオーバーフロー循環路5の循環通水量を増加させ、上昇するオーバーフロー回収タンク6の水位レベルの上昇をストップさせる。
その一方で、常時循環回路2からの循環水を少なくするため、常時循環水調節バルブ29の開度を絞るように制御する。
【0036】
<通常運転状態への復帰>
オーバーフロー回収タンク6の水位レベルの上昇がストップし、上記の通常運転時の水位レベルに戻ったら、制御部Cは、常時循環水調節バルブ29及びオーバーフロー水調節バルブ59の開度を前記記憶1の開度に戻し、通常運転時の状態に復帰させる。
【0037】
このような制御の結果、大人数が一度にプールに入水するアクアビクス等などで大量のプール水がオーバーフロー回収タンクに還ってきたときにおいて、実施形態1の循環給水システムでは、オーバーフロー回収タンクの水位は500mm程度で安定している。この事からオーバーフロー回収タンク6の排水路56より排水される事は、殆ど無い。
したがって、オーバーフロー回収タンクの高さを低くすることができ、省スペース、コスト削減につながる。
【0038】
<実施形態1の作用効果>
実施形態1の循環給水システムは、オーバーフロー回収タンクにおいて水の補給が従来よりも少なくなり、また、水の補給が少なくなるため給水した際に一時的に下がる水(循環している水)の温度を加熱して元の温度にする手間も少なくなる。
さらに、従来2台必要としていたポンプが濾過ポンプ1台のみで済むため、装置自体がコンパクトになり、施工がしやすいとともに設置スペースが少なくてすみ、更に、装置のメンテナンスが従来よりも容易になる。この結果、プール等における水の循環給水システムに利用することができる。
【0039】
<実施形態2>
図2は実施形態2に係る水の循環給水システムのフローシート図である。
実施形態2では、実施形態1と同一の部分は、同じ符号で示し、その説明を省略する。
【0040】
図2において、濾過ポンプ21(第1の流量調節手段)の作動によって常時循環路2をプールの水Wは強制循環するようにしており、濾過ポンプ21の運転効率は制御部Cに基づいてインバーター等によってアナログ的に調節している。
【0041】
濾過タンク23は、電動式開閉弁24を介して、常時循環路2における濾過ポンプ21の下流側に設置されている。循環する水はこの濾過タンク23を通過することによって濾過される。
電動式開閉弁24は制御部Cによって制御され、濾過ポンプ21が作動して常時循環路2に循環水が流れる場合にのみ開放し、循環水が流れない場合には閉止される。
【0042】
プール1の水Wは、濾過ポンプ21の作動によって、常時循環路2を循環しながら、除毛器22によって毛髪類を除去され、濾過タンク23によって濾過され、熱交換器25によって所定の温度に維持されている。
【0043】
オーバーフロー流出路(オーバーフロー循環路)52は、上流端をオーバーフロー回収タンク6に繋ぎ、下流端を常時循環路2における電動式開閉弁24の下流側に合流している。
即ち、電動式開閉弁24および濾過ポンプ21は、常時循環路2におけるこのオーバーフロー流出路52の合流点100よりも上流側に設置されている。
【0044】
なお、オーバーフロー流入路51とオーバーフロー流出路52とによって、実施形態2の「オーバーフロー循環路」が構成される。
【0045】
オーバーフロー回収ポンプ53(第2の流量調節手段)は、オーバーフロー流出路52の途中に設置されている。
オーバーフロー回収ポンプ53の作動によってオーバーフロー回収タンク6に貯留しているオーバーフロー水は常時循環路2に合流し、プールの水Wとして強制循環する。
オーバーフロー回収ポンプ53の運転効率(通水量)及び濾過ポンプ21の運転効率(通水量)は、各々のインバーター等によって制御され、各運転効率(通水量)の総和が調節される。
【0046】
なお、実施形態2の場合においても、これらの通水量は、オーバーフロー回収ポンプ53の下流に設けた流量計101、濾過ポンプ21の下流に設けた流量計101、及び合流点100の下流点に設けた流量計101によって確認できる。
なお、制御部Cによって、オーバーフロー回収ポンプ53の通水量及び濾過ポンプ21の通水量をそれぞれ制御し、合流点100に流れ込む通水量の総和を調整するように、本システム全体を制御するようにしている。
【0047】
特殊除毛器54は、オーバーフロー流出路52におけるオーバーフロー回収ポンプ53の上流側に設置されている。特殊除毛器54はオーバーフロー流出路52を流れるオーバーフロー水に混じった汚れ及び毛髪類を除去するためのものである。
特殊除毛器54は、設置されない場合も有る。
なお、オーバーフロー回収用の電動式開閉弁55は、オーバーフロー流出路52におけるオーバーフロー回収ポンプ53の下流側に設置されている。
オーバーフロー回収用の電動式開閉弁55は、オーバーフロー回収ポンプ53が作動してオーバーフロー流出路52にオーバーフロー水が流れる場合にのみ開放し、オーバーフロー水が流れない場合には閉止される。
【0048】
水位センサー9は、オーバーフロー回収タンク6の上部又は下部に設置されている。この水位センサー9は例えば超音波によって、その設置位置から水面までの距離を計測することによって、オーバーフロー回収タンク6の水位を計測する。そして、制御部Cを介して、所定の範囲内において、水位に応じてオーバーフロー回収ポンプ53の運転効率を変動させ、水位が高くなったときに大きく、低くなったときに小さくなる。
すなわち、濾過ポンプ21の運転効率は、オーバーフロー回収タンク6の水位が高くなったときに小さく、低くなったときに大きくなる。
【0049】
<実施形態2の作用効果>
実施形態2のシステムは、オーバーフロー回収タンクにおいて水の補給が従来よりも少なくなるとともに水の補給が少なくなるため給水した場合に一時的に下がる水(循環している水)の温度を加熱して元の温度にする手間も少なくなる結果、プール等における水の循環給水システムに利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
従来、浴槽等水量の少ないオーバーフロー回収システムは、入浴者が浴槽等から出た場合に水面の低下が起こり、回復に時間がかかる為、水位の回復を早める事を目的に、浴槽等に直接水位を測るレベル計を設置する事を余儀なくされ、この事により余分な補給水が供給されていたが、本発明の水の循環給水システムの使用によって、水位の回復能力を従来より早くでき、オーバーフロー回収タンクを従来より小型化でき、レベル計を設置しなくても良い可能性も有る。この事により節水効果、燃料費削減効果が得られる可能性が高い。また、水景施設(滝のオーバーフロー等)に応用が可能になる。
よって、本発明の水の循環給水システムは産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0051】
W …プール(水槽)の水
C …制御部
1 …プール(水槽)
11 …環水口
12 …給水口
13 …オーバーフロー溝
2 …常時循環路
21 …濾過ポンプ(実施形態2の第1の流量調節手段)
22 …除毛器
23 …濾過タンク
24 …電動式開閉弁
25 …熱交換器,ボイラー等の熱源
251 …温度調節用の電動三方向弁
29 …常時循環水調節バルブ(実施形態1の第1の流量調節手段)
3 …排水路
31 …バルブ
40 …殺菌装置
41 …殺菌剤注入路
5 …オーバーフロー循環路
51 …オーバーフロー流入路(オーバーフロー循環路)
52 …オーバーフロー流出路(オーバーフロー循環路)
53 …オーバーフロー回収ポンプ(実施形態2の第2の流量調節手段)
54 …特殊除毛器
55 …オーバーフロー回収用の電動式開閉弁
56 …排水路(オーバーフロー回収タンクオーバーフロー排水の)
57 …排水路(オーバーフロー回収タンクの)
59 …オーバーフロー水調節バルブ(実施形態1の第2の流量調節手段)
6 …オーバーフロー回収タンク
7 …補給路
71 …電動式開閉弁
72 …手動コック
81 …レベル計
9 …水位センサー
100 …合流点
101 …流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の水を常時循環させる常時循環路と、
水槽からオーバーフローした水を一旦オーバーフロー回収タンクに導入した後に合流点で常時循環路に合流させるオーバーフロー循環路とを備え、
常時循環路における前記合流点の上流側に第1の流量調節手段を設置するとともに、
オーバーフロー循環路における前記合流点の上流側に第2の流量調節手段を設置し、
制御部は、
運転開始時において、
常時循環路の第1の流量調節手段を開いて、
水槽の水を常時循環路に通水して循環させた後、
第2の流量調節手段を開いて、
オーバーフロー回収タンクの水を、上記すでに循環を開始している常時循環回路の循環水と合流点において合流させて、水槽からのオーバーフローを開始させ、
オーバーフロー水をオーバーフロー回収タンクに戻し、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルを水位センサーで測定し、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルが所定のレベルになるように、
第2の流量調節手段の開度を制御し、
水槽の水を常時オーバーフローの状態で、通水量の総和を一定に保った通常運転をするとともに、
この時点での第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の開度を記憶し、
水槽からのオーバーフロー水が急増した異常運転時において、
水位レベルが上昇したオーバーフロー回収タンクの水位センサーからの信号を検知して、
第2の流量調節手段を急速に開いてオーバーフロー循環路の循環通水量を増加させ、上昇するオーバーフロー回収タンクの水位レベルの上昇を抑え、
その一方で、常時循環回路からの循環水を減少させるため、第1の流量調節手段の開度を絞り、
オーバーフロー回収タンクの水位レベルが上記通常運転時の水位レベルに戻った時点で、
第1の流量調節手段及び第2の流量調節手段の開度を前記記憶した開度に戻し、通常運転時の状態に復帰させることを特徴とする水の循環給水システム。
【請求項2】
前記制御部は、
水槽の底に設けた超音波などを利用する水位センサーからの信号を受けて、
所定値よりも水槽の水位レベルが低い場合は、
補給路に設けられた電動式開閉弁を開にして補給水をオーバーフロー回収タンクに供給して、水槽の水位レベルを上げ、
所定値よりも水位レベルが高い場合は、
補給路に設けられた電動式開閉弁を閉にすることを特徴とする請求項1に記載の水の循環給水システム。
【請求項3】
前記第1の流量調節手段が常時循環水調節バルブであり、
前記第2の流量調節手段がオーバーフロー水調節バルブであることを特徴とする。
【請求項4】
前記第1の流量調節手段が濾過ポンプであり、
前記第2の流量調節手段がオーバーフロー回収ポンプであることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−36713(P2012−36713A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254322(P2010−254322)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(599006074)エムズジャパン株式会社 (6)