説明

水上で藻類の成長を促進させるための手法とその栽培装置

海又は湖等の水上に構築した装置で藻類の成長を促進させるための手法とその装置である。装置中には不浸透性の膜或いは裏地から成る貯水部若しくは密閉部があり、その周囲の海水から切り離された部分に藻を置く。満潮時には貯水部から基盤部分へ、干潮時には基盤部分から貯水部へ藻が流れるよう、海水の異なるレベルで浮く浮揚性の構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運用や土地利用に係る経費を削減する手法で海や湖などの水面上に構築した装置の中での水生藻類の栽培の手法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
藻類の利用は数多の産業で良く知られるところである。例えば、藻類中の含有物であるゲル剤、懸濁化剤、分解防止剤、乳化剤は化粧品工業や塗料工業の分野で消費され、活用される。農業においては、養鶏飼料に混ぜる、或いは作物の肥料として施肥することができる。幾つかの藻類には、特有の薬効成分もある。例えばそれらの藻類にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれている。また藻類は、燃焼させることで発電できるバイオディーゼルやバイオマスといった燃料も生成することができる。
【0003】
海や湖で自然成長した藻類は、殆どの水中生物の食物や酸素源として水中の食物連鎖を支えており、水中生物や漁業の基盤である。昨今の商業的な藻類栽培での努力は、即席土壌や囲い込んだ土壌での藻類栽培に集約されている。
【0004】
本発明の目的は、海やその他の水上に内蔵的に構築した装置での藻類栽培である。装置中では、藻類の成長に必要な水分は、ビニール製、ゴム製、その他の不浸透性の物質のシートによって確保されている。成長に必要な水分を確保するのは、頂部が空いている、又は装置内に入ってくる余剰な二酸化炭素を排出するように調整した密閉装置である。
【0005】
本発明の更なる目的は、潮流や波のエネルギーを利用して藻の栽培にかかる費用を減らすことである。その他にも、変動の低い海の気温を藻類の成長に最大限に生かす事も、本発明を持って可能となる。
【0006】
更にもう一つの目的は、効率を最大化し費用を削減できるような一連の工程を統合することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つ目の特徴は、ポンプによる揚水・排水にかかる費用を削減するための潮流の利用である。例えば満潮の時は、藻を育てる水は海上の装置から干潮レベルにある陸地までの傾斜を流れ、同様に干潮の時は苗床の藻は満潮レベルの陸地から海上にある装置へと流れることができる。これが、陸地での藻の栽培にかかる主な費用を削減する。
【0008】
二つ目に、本装置は海の波の有効利用を提供することができる。連続かくはん動作によって全ての藻を均一に太陽光に当てるように、波を利用することで装置中の水と藻をかくはんし、藻の自然成長を促進することができる。これにより、陸上で藻を栽培する際にかかるもう一つの主要な経費を削減することができる。
【0009】
三つ目に、本装置は周りの水域から切り離された水域で藻を成長させることができる。装置の頂部は開くことも可能であり、過剰な二酸化炭素を排出するためのバルブを取り付けて密閉することも可能である。
【0010】
四つ目に、本装置によって、藻を燃焼させた灰と植物に栄養を供給する際の余熱によって凝縮された海水中のミネラルを利用することができる。
【0011】
五つ目に、本装置によって、装置中の容器の熱交換面により、海などの緩やかな温度差を利用して、培養基中の温度変動を低く維持することができる。
【0012】
更に、他の同目的のために栽培されるどの植物よりも遥かに多くのバイオディーゼルを生産できる藻を育てるためには、海での、特に陸地が十分に確保できない、又は地価が高価である場所では、本装置の利用は容易である。その他にも、海での藻栽培は、食用作物の生産に必要な陸地利用とは競合しないという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
基盤が満潮線よりも高い水位から干潮線よりも低い水位に勾配するよう、基盤は防壁の後方の岸に構築する。これらの水位は、実際に自然の海の汀線に基づくものであり、勾配を作るのに土木作業は不要である。
【0014】
藻の苗床は、満潮線かそれより高い位置に置かれ、藻が含有される水は潮の低い方へ向かって流れることができる。それぞれの分離した浮体構造は、代わる代わる苗床となる。
【0015】
藻の成長場は浮体構造の上になる。浮体構造は、周囲の水から分離された不浸透性のプールを形成するように、ビニールや、ゴム、ゴム引き布のような物質で作られたシートを流したり留めたりすることができる竹、木製又は空洞のプラスチックのような物質で作られた枠組みで構築される。このプールは、密閉することも開封することも可能である。
【0016】
こうした構造の一つの例として、20メートル四方、又はその他のサイズの枠組みである。水が注げるように、その内部又は外部にはフィルムが付いている。
【0017】
これらは、遠くに流れるのを防ぐ既存の方法のいずれでも、海面上に、又は多くの場合は相互的に支えることができる。
【0018】
これらの構造が波の動きによって絶えず相互接触する際、例えば古いタイヤを四方にかけることによって十分強化し、衝撃を吸収させる必要があるだろう。
【0019】
藻の収穫時期には、水と藻は干潮線より同様もしくは低い海面にある防壁の後方の池に流れる。
【0020】
成長した藻は自身から油分を出し、残留物は、医学と健康目的のために人間や魚、他の海生物の食糧源、発酵による燃料としてのエタノール生成、嫌気的消化によるメタン生成、そして直接利用による電機生成など、様々な用途に使用できる。魚油に似た藻の油は様々な用途があり、またバイオディーゼル生成にも利用される。
【0021】
一つの具体化では、発酵物はバイオディーゼル生産に利用できるエタノールの生成に使用し、石油代替物としてウ売り、その残留物は電気生成のために燃やし、残った灰は藻の肥料にし、余剰熱はより多くの栄養を藻に与えるために円錐を蒸発させるのに利用できる。発酵工程で生成された二酸化炭素は、不純物を含まず、質の良いものは藻の成長に利用できる。
【0022】
藻の収穫、油の抽出、及びバイオディーゼル生産のような、陸における全ての操作で電気を生成できる。余剰な電気はグリッドで売ることもできる。
【0023】
浮体構造物の大きさ、形、及び構造は、かき混ぜる行為を最適化できるように設計される。例えば、よりかき混ぜる行為が必要な場合は、より多くの竹か他の浮揚装置を追加することによって、入り込む波に直面している側の浮力を増加でき、波で更に持ち上げることができる。かき混ぜ方を変える別の方法としては、浮体構造の長さを波の通り道に沿って調整する方法がある。例えば、構造物の長さが波の長さ波の長さと同じかどうか、或いは1.5倍かどうかによって、かき混ざる度合いは変わる。
【0024】
淡水藻も海水藻も、この海上の浮揚構造の中で育つことができる。実際、淡水藻の生息を脅かす他の生物がいない海では良く育つし、海水藻もまた淡水で育つ。望ましい種の汚染は、陸上での藻栽培において重大な問題である。
【0025】
浮揚構造で成長する望ましい種をより攻撃的で望ましくない在来種による汚染と交換から保護するため、陸上の閉ざされた構造が時々使用される。そうした閉ざされた構造での重大な問題の一つは、温室と同様であるその環境と、太陽の罠である。それによって気温が上昇し、成長培地の藻の成長に影響を及ぼす。海との絶妙な接触によってより大きな熱交換ができ、成長培地や藻そのものの温度は、藻の成長に遥かに適したものに保たれる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水のような水で藻を栽培する海上の浮揚装置。装置中には不浸透性の膜或いは裏地から成る貯水部若しくは密閉部があり、その周囲の海水から切り離された部分に藻を置く。満潮時には貯水部から基盤部分へ、干潮時には基盤部分から貯水部へ藻が流れるよう、海水の異なるレベルで浮く浮揚性の構造である。
【請求項2】
請求項1に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置では、貯水部分は装置中で波によって浮揚し、波によって藻は絶え間なくかき混ぜられ均等に太陽光に当てられる。
【請求項3】
請求項1、2に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置では、装置そのものは竹の棒とプラスチック又はその類の物で装置を構成する。
【請求項4】
請求項1、2、3に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置では、波に対面する部分に竹の棒を追加することで持ち上げ、かき混ぜ運動を増加することができる。
【請求項5】
請求項1、2、3、4に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置では、波の運動線に沿って装置の長さを調節することで装置の浮力を増加することができる。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、5に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置は、固定した基盤部分と藻の苗床(貯水部)から成っている。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5、6に記述の海上で浮揚する藻の栽培装置では、藻の肥料として貯水部に二酸化炭素を供給する。
【請求項8】
海上に浮揚する装置で藻を栽培する方法は、以下の手順による。
水生の藻を貯水部によって周囲の海水から分離する;貯水部を波の動きと海水面とは異なるレベルで浮揚させることにより、藻が日光に当たるよう貯水部を連続的に動かす;満潮時には貯水部から満潮レベルと同様の高さにある岸の基盤部分に藻を流す;干潮時には基盤部分から貯水部へ藻を流す。

【公表番号】特表2010−518881(P2010−518881A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553533(P2009−553533)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/MY2008/000009
【国際公開番号】WO2008/105649
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509258717)
【氏名又は名称原語表記】KAURAH,Jagjit Singh
【住所又は居所原語表記】c/o Ranjit Thomas & Kula,24,Jalan Teh Huang Kiat 12/13,Petaling Jaya,46200 Selangor Darul Ehsan,Malaysia.
【Fターム(参考)】