説明

水上地盤改良船

【課題】水上地盤改良船の軽量化及び小型化を図ることで、水上地盤改良船として安価なものにすると共に、その搬送においても陸上輸送を可能にして、搬送費用を安くできるようにする。
【解決手段】河川や海などの水面あるいは海面上から地盤改良を行う水上地盤改良船であって、地盤改良用台船1と、スパッド装置21を備えて地盤改良施工機械23の足場として用いるスパッドプレート2と、からなり、スパッドプレート2は、地盤改良用台船1により移動自在とすると共に、スパッド装置21によって、地盤改良用台船1と分離すること、または地盤改良用台船1に預けることが可能となる水上地盤改良船である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮流、波、潮位変動のある河川や海などにおける水底あるいは海底の地盤改良を行う水上地盤改良船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潮流、波、潮位変動のある河川や海などにおける水底あるいは海底の地盤を改良するため、水上地盤改良船を用いて地盤改良を行っており、この水底あるいは海底の地盤改良にあっては、たとえば、水底あるいは海底の地盤に地盤改良用ロッドを挿入し、挿入した地盤改良用ロッドから高圧ジェット水を噴射して地盤を切削して行き、そこに硬化材を噴射して充填し、地盤中に円柱状の固結改良体を造成するようになる高圧噴射攪拌工法による地盤改良が知られていた。
【0003】
そして、この地盤改良に用いられる水上地盤改良船は、図6に示すように、台船30の上に地盤改良を行うための付属設備を搭載している。主な設備としては、高圧ポンプ31、水槽32、エアコンプレッサー33、供給ポンプ34、硬化材プラント35、発電機36などであり、これらを台船30の上に重量バランスが保たれるように配置していた。さらに、台船30の前部には地盤改良用ロッド37の地盤への挿入あるいは引抜きを行う地盤改良施工機械38を備えると共に、台船30の前後左右の四隅にスパット装置39を備えていた。
【0004】
また、これとほぼ共通する構造となる水上地盤改良船にあっては、特開2004−19113号公報にも開示されている。
【0005】
このような水上地盤改良船では、地盤改良を行う地点まで水上地盤改良船を移動すると、まず、台船30の四隅に備えたスパッド装置39にて四本のスパッド40を地盤に打ち込み台船30を安定させる。そして、作業中に潮位変動や波の影響を受けないようにするため、台船30自体を持ち上げて、台船30を固定し、台船30を固定したのちに、台船30の前部に備えた地盤改良施工機械38を用いて水底あるいは海底の地盤に地盤改良用ロッド37を挿入して高圧噴射攪拌工法における地盤改良を行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−19113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水上地盤改良船にあっては、台船の上にスパッド装置や地盤改良施工機械、付属設備すべてを搭載する構造であることから、水上地盤改良船としては具体的には排水トン数300トン以上の大きくかつ重量のある大型の船となり、このため、作業時における台船を固定する際、台船自体を持ち上げるようにしていたが、この台船の持ち上げ作業に大掛かりな装置が必要になり、スパッド及びスパッド装置も大きくなり、台船のさらなる大型化や高価なものになるといった問題があった。また、この水上地盤改良船の大型化に伴い、潮流、波、潮位変動のある河川や海などの地盤改良を行う現場への水上地盤改良船の搬送についても、大型トレーラや大型トラックとった陸上輸送手段を用いることができず、搬送費用が高くなるといった問題もあった。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、水上地盤改良船の軽量化及び小型化を図ることで、水上地盤改良船として安価なものにすると共に、その搬送においても陸上輸送を可能にして、搬送費用を安くできるようにすることを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、河川や海などの水面あるいは海面上から地盤改良を行う水上地盤改良船であって、地盤改良に用いる付属設備を搭載した地盤改良用台船と、スパッド装置を備えて地盤改良施工機械の足場として用いるスパッドプレートと、からなる水上地盤改良船である。
【0010】
第二の発明は、第一の発明におけるスパッドプレートを、地盤改良用台船により移動自在とした水上地盤改良船である。
【0011】
第三の発明は、第一、第二の発明におけるスパッドプレートを、スパッド装置によって、地盤改良用台船と分離すること、または地盤改良用台船に預けることが可能となるようにした水上地盤改良船である。
【発明の効果】
【0012】
スパッドプレートを地盤改良用台船と分離することが可能となることから、水底あるいは海底の地盤の改良において、地盤改良施工機械を備えたスパッドプレートのみをスパッド装置のスパッドで固定すればよく、従来のような台船全体を固定する必要がなくなることで、大掛かりな装置を不要とし、潮流、波、潮位変動に伴う調整が不要となることから、作業を容易なものにして作業時間の短縮を図ると共に、地盤改良用台船やスパッドプレートの軽量化及び小型化を図ることで、水上地盤改良船として安価なものにできる。
【0013】
しかも、軽量化、小型化された地盤改良用台船とスパッドプレートとを別々に分離できることから、水上地盤改良船の搬送においても、それぞれを分離した状態で大型トレーラや大型トラックとった陸上輸送手段を用いて陸上輸送することができ、搬送費用を安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水上地盤改良船の側面図である。
【図2】本発明の水上地盤改良船の斜視図である。
【図3】本発明の水上地盤改良船を使用した地盤改良作業を示す説明図である。
【図4】本発明の水上地盤改良船における別の使用例を示す説明図である。
【図5】本発明の水上地盤改良船の別の例の斜視図である。
【図6】従来の水上地盤改良船の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による水上地盤改良船の一実施形態について説明する。
水上地盤改良船としては、図1及び図2に示すように、地盤改良用台船1と、スパッド装置21を備えて地盤改良施工機械23の足場として用いるスパッドプレート2と、からなる。そして、スパッドプレート2は、地盤改良用台船1により移動自在とすると共に、スパッド装置21によって、地盤改良用台船1と分離すること、または地盤改良用台船1に預けることが可能にしている。
【0016】
地盤改良用台船1は、その前部にスパッドプレート2を預ける、すなわち載置するためのプレート用スペース11を設けると共に、その他の部分に地盤改良に用いる付属設備を搭載する。主な設備としては、地盤改良時に用いる高圧ジェット水を供給するための高圧ポンプ12や水槽13やエアコンプレッサー14であり、また硬化材を供給するための供給ポンプ15や硬化材プラント16であり、さらにこれらの動力源である発電機17などである。そして、これらを地盤改良用台船1の上に重量バランスが保たれるように配置する。
【0017】
スパッドプレート2は、地盤改良用台船の前部に設けたプレート用スペース11に預け、または分離することが可能になるものであって、その形は、左右細長の略長方形の平板状で、その長手方向の長さは地盤改良用台船の左右方向である幅寸法より長くし、地盤改良用台船の上に左右に向かってまたがる形で預けられるようになる。
【0018】
そして、このスパッドプレート2の左右端部にはスパッド装置21を前後にそれぞれ備え、要するに四隅にスパッド装置21を備えており、これらのスパッド装置21ではスパッド22を降下して水底あるいは海底の地盤にスパッド22を打ち込むようにしている。
【0019】
また、このスパッドプレート2の前部に二つの地盤改良施工機械23を備えており、この地盤改良施工機械23は高圧ジェット水の噴射や硬化材の噴射を行う地盤改良用ロッド24の地盤への挿入あるいは引抜きなどの地盤改良の作業を行うものであり、この地盤改良用ロッド24には、図示していないが、高圧ジェット水や硬化材を供給するための管路を接続している。
【0020】
次に、このような地盤改良用台船1とスパッドプレート2とから構成した水上地盤改良船を使用した地盤改良作業について説明する。なお、この作業現場としては海である。
【0021】
図3(a)に示すように、地盤改良用台船1の前部のプレート用スペース11にスパッドプレート2を預けた状態で、海上を地盤改良を行う作業現場まで曳船等で移動し、係留アンカー18を設置して所定の位置で地盤改良用台船1を停止させる。
【0022】
そして、図3(b)に示すように、スパッドプレート2において、スパッド装置21により四本のスパッド22を海底の地盤に打ち込みながら、地盤改良用台船1とスパッドプレート2を分離して、このスパッドプレート2を地盤改良用台船1から影響を受けない状態で固定する。このとき、スパッドプレート2については、作業中の潮位変動や波の影響を受けないようにするため、所定の高さまで持ち上げて固定する。一方、地盤改良用台船1については、係留アンカー18及びアンカーワイヤー19などの別の手段で係留するようにしている。
【0023】
それから、図3(c)に示すように、スパッドプレート2の前部に備えた二つの地盤改良施工機械23及び地盤改良用ロッド24を用いて海底の地盤中に円柱状の固結改良体を造成するようになる高圧噴射攪拌工法による地盤改良を行う。なお、この地盤改良については、高圧噴射攪拌工法に限定されるものではなく、他の工法でも良い。
【0024】
そして、海底の地盤中に固結改良体を造成したら、次に、海底の地盤に打ち込んだ四本のスパッド22を引抜くと共に、分離していたスパッドプレート2を地盤改良用台船1に預ける。
【0025】
それから、地盤改良用台船1を移動し、次の所定の地点で地盤改良用台船1を停止させてから、先程と同様、スパッド22を海底の地盤に打ち込んで、地盤改良用台船1とスパッドプレート2を分離しながら、スパッドプレート2を固定し、再び、スパッドプレート2に備えた地盤改良施工機械23及び地盤改良用ロッド24を用いて高圧噴射攪拌工法による地盤改良を行う。これを繰り返し行う。
【0026】
そして、作業現場全体に地盤改良を行って地盤改良の作業がすべて完了したら、スパッドプレート2を地盤改良用台船1に預けて、このスパッドプレート2を預けた状態で海上を移動し、地盤改良用台船1を別の作業現場に移動させる。
【0027】
なお、作業現場としては海であったが、これに限定されるものではなく、河川などでも良い。また、たとえば、河川などの狭い場所では、地盤改良用台船1を移動させる際、地盤改良用台船1の移動が不自由になることがあるが、このような場合は、図4に示すように、浮体であるフロートを複数連結したフロート船3を用いてスパッドプレート2を移動させて、作業を行うようにしても良い。
【0028】
また、スパッドプレート2を地盤改良用台船1に預ける場所であるプレート用スペース11は、前述のような地盤改良用台船1の前部に限定されるものではなく、図5に示すように、地盤改良用台船1の前後中央部にしても良く、このようにプレート用スペース11を地盤改良用台船1の前後中央部にすると、地盤改良用台船1に搭載する設備を前後方向において均等に配置することができ、地盤改良用台船1における重量バランスを最適なものにすることができる。なお、この場合、スパッドプレート2では、地盤改良施工機械23を左右の一方側に備える。
【0029】
また、このスパッドプレート2における地盤改良施工機械23の設置位置については、前後あるいは左右のどの位置でも良く、さらに、この設置位置を前後左右の複数箇所にして、地盤改良施工機械23を設置する際に複数の設置位置において変更できるようにしても良い。このように地盤改良施工機械23の設置位置を変更可能にしたことから、それぞれの作業現場に応じて地盤改良施工機械23を最適な設置位置に変更することで、作業現場に応じた最良な作業環境を作ることができ、作業性の向上を図る。
【符号の説明】
【0030】
1…地盤改良用台船、2…スパッドプレート、3…フロート船、11…プレート用スペース、12…高圧ポンプ、13…水槽、14…エアコンプレッサー、15…供給ポンプ、16…硬化材プラント、17…発電機、18…係留アンカー、19…アンカーワイヤー、21…スパッド装置、22…スパッド、23…地盤改良施工機械、24…地盤改良用ロッド、30…台船、31…高圧ポンプ、32…水槽、33…エアコンプレッサー、34…供給ポンプ、35…硬化材プラント、36…発電機、37…地盤改良用ロッド、38…地盤改良施工機械、39…スパット装置、40…スパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川や海などの水面あるいは海面上から地盤改良を行う水上地盤改良船であって、
地盤改良に用いる付属設備を搭載した地盤改良用台船と、スパッド装置を備えて地盤改良施工機械の足場として用いるスパッドプレートと、からなることを特徴とする水上地盤改良船。
【請求項2】
前記スパッドプレートは、前記地盤改良用台船により移動自在としたことを特徴とする請求項1記載の水上地盤改良船。
【請求項3】
前記スパッドプレートは、スパッド装置によって、地盤改良用台船と分離すること、または地盤改良用台船に預けることが可能となるようにしたことを特徴とする請求項1、2記載の水上地盤改良船。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−226223(P2011−226223A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99539(P2010−99539)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】