説明

水上気体構造体

【課題】 安全性やデザイン性を向上することが可能な水上気体構造体を提供する。
【解決手段】 気体を注入した状態で水に浮かぶ浮き袋本体2と、この浮き袋本体2の内部を複数の気室31,32に分割する分割壁3と、気室31,32の各々に設けられて気体を注入する気体注入部4と、気室31,32の各々に設けられて気体を排出する気体排出部5とを有し、浮き袋本体2には、ユーザの胴体を収めるための胴体収容部21が水上での進行方向に対して凹状に形成されており、気室31,32は、それぞれ前記進行方向に対して左右対称に形成されているとともに、前記凹状の胴体収容部21に対して内外方向に層状に隣接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を注入して使用する水上気体構造体に関し、特に、ボディボードや浮き輪等の水上用運動具や、ゴムボート等の水上乗り物として構成するのに好適な水上気体構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムボートや浮き輪等のように、気体を注入して使用する浮き具が知られている。例えば、特開平7−329876号公報には、複数個に分割され各分割部分ごとに空気注入孔を備えた気胴に船底部を装着したゴムボートが提案されている(特許文献1)。また、実用新案登録第3022494号公報には、三角形状の前空気室と、3つに分割された方形状の後空気室とを結合させて、全体として略矢印形状に構成したボディーボードが記載されている。これにより、押し寄せる波を受けやすく、推進方向への水の抵抗が少なくなるので容易に波に乗ることができるとの効果が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−329876号公報
【特許文献2】実用新案登録第3022494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された発明を含めて従来の浮き具においては、破損等により気体が漏洩した場合の危険に対して安全性を確保すべき技術上の改善が十分になされていない。例えば、特許文献1のゴムボートや特許文献2に記載のボディーボードの場合、海上において、いずれかの空気室に穴が空いて空気が漏れてしまうと、浮力バランスを大きく崩してしまい、ユーザが海中に放り出されるおそれがある。
【0005】
特に、特許文献1に記載されたゴムボートは、単に前方と後方とに分割されているだけであって、一方の気室が破損した場合、他方の気室による浮力が残るものの、ゴムボート全体のバランスが著しく失われるため、波や風の作用で簡単に転覆してしまう。また、もしアクシデントによって全ての空気室の空気が漏れてしまった場合には、もはや浮力を失って沈んでしまうため致命的な状況に至るという問題もある。これを回避するにはユーザがライフジャケットを身につけていなければならないだろう。
【0006】
一方、従来の水上空気構造体では、外観デザインを表現することに限界があり、特に先鋭的な形状や美しい流線形状を表現できないという問題がある。近年、水上空気構造体はリング状の浮き輪に限らず、ワニやイルカ等の動物や海洋生物を模した浮き具を目にするが、先端部分はいずれも丸みを帯びた形状になってしまい、先鋭的な形状を表現できていない。
【0007】
例えば、動物であれば尻尾の先端部分や爪、耳等のように先鋭的な形状を備えているが、空気を充満させると膨らんで丸みを帯びてしまい、先鋭形状が失われる。また、航空機のような美しい流線形状の変化を表現したい場合でも、空気を充満すると曲線の変曲点が膨らんでしまいぼやけてしまう。これでは、外観デザイン上、子供のおもちゃのレベルを脱することができず、大人が楽しめるリゾートの雰囲気に適した水上遊戯具のニーズには応えられない。
【0008】
また、従来の水上気体構造体は、空気を十分に満たした状態でも剛性が低い。このため、ユーザが上に乗ったりすると、その形状を維持できずに簡単に変形してしまう。したがって、デザイン性が損ねられてしまう他、操作性や乗り心地も好ましくないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、安全性やデザイン性を向上することが可能な水上気体構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水上気体構造体は、気体を注入した状態で水に浮かぶ浮き袋本体と、この浮き袋本体の内部を複数の気室に分割する分割壁と、前記気室の各々に設けられて気体を注入する気体注入部と、前記気室の各々に設けられて気体を排出する気体排出部とを有し、前記浮き袋本体には、ユーザの胴体を収めるための胴体収容部が水上での進行方向に対して凹状に形成されており、前記気室は、それぞれ前記進行方向に対して左右対称に形成されているとともに、前記凹状の胴体収容部に対して内外方向に層状に隣接されている。
【0011】
また、本発明において、前記分割壁は、前記気室の各々の重心が平面視において同一直線上に配置されるように分割してもよい。
【0012】
さらに、本発明において、少なくとも1以上の前記気室の内部には、1以上の浮力材が前記水上気体構造体のバランスを保持する位置に内蔵されていてもよい。
【0013】
また、本発明において、前記浮力材が内蔵された気室には、その浮力材の両端近傍に当該浮力材の位置ズレを防止する位置ズレ防止用仕切壁が設けられ、この位置ズレ防止用仕切壁には、前記気室内に注入された気体を通気可能な通気孔が形成されていてもよい。
【0014】
さらに、本発明において、前記気室の内部には、筒状に形成された補強用気室がその両端を前記気室の内表面に固着されており、当該補強用気室には、前記気室に連通する複数の連通孔が形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明において、前記浮き袋本体は、先端が細く先鋭形状に構成された先鋭部を有しており、前記分割壁は、前記先鋭部の先端にまで設けられていてもよい。
【0016】
さらに、本発明において、前記浮き袋本体の前記胴体収容部の前方には、開口部が形成されており、この開口部には、水密に形成された内部空間を有する透明スコープが設けられていてもよい。
【0017】
また、本発明において、浮き袋本体を構成する生地よりも伸縮性の小さい生地により構成され、分割された気室をひとまとまりに包み込んで外観形状を維持する形状維持カバーを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水上気体構造体の安全性やデザイン性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る水上気体構造体の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の水上気体構造体1を示す斜視図であり、図2は、後述する形状維持カバー7および透明スコープを取り外した状態を示す斜視図である。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態の水上気体構造体1は、主として、気体を注入した状態で水に浮かぶ浮き袋本体2と、この浮き袋本体2の内部を複数の気室31,32に分割する分割壁3と、各気室31,32に気体を注入する気体注入部4と、各気室31,32から気体を排出する気体排出部5と、所定の気室32内に内蔵される浮力材6と、浮き袋本体2を被覆する形状維持カバー7とから構成されている。以下、各構成部について詳細に説明する。
【0021】
浮き袋本体2は、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料や、ゴムシート等の弾性材料等の生地から構成されており、気体を封入しうる袋状に形成されている。なお、生地とは、一般に織物や材料、また本来の性質や状態のことをいうが、本実施形態では、浮き袋本体2や形状維持カバー7を構成する布地や織物の他、織りのない樹脂材料も含む趣旨である。
【0022】
本実施形態において、浮き袋本体2には、図1から図3に示すように、ユーザの胴体を収めるための胴体収容部21が水上での進行方向に対して凹状に形成されている。この胴体収容部21は、図3に示すように、胴体の収まりの良さを考慮して平面視で円弧状ないし湾曲状に形成されているが、胴体が収まる形状であれば適宜変更してよい。
【0023】
また、胴体収容部21の両側には、先端が次第に細く先鋭形状に構成された2本の先鋭部22,22が形成されている。各先鋭部22は、図4に示すように、先端に向かうに従って徐々に下方へ湾曲される形状に構成されている。これにより浮き袋本体2の前側に気体が集まって浮力が大きくなっている状態に対して、後側が沈みすぎないようにバランスが取られている。また、先鋭部22のような形状に構成することで、ユーザが両脚を巻き付けることも可能であり、浮き心地の改善が図られている。
【0024】
また、浮き袋本体2の胴体収容部21の前方には、透明スコープ8を取りつけるための開口部23が浮き袋本体2の形状に合わせて略馬蹄状に形成されている。透明スコープ8は、水中を観察するためのものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明材料ないし半透明材料から構成されている。本実施形態において、透明スコープ8は、図4および図5に示すように、略ドーム状に形成されており、凹状に形成された底面によって水密に形成された内部空間を有している。
【0025】
なお、本実施形態では、開口部23の底面側に、透明スコープ8を支持するための透明板24が圧着されている。一方、透明スコープ8は、図7および図8に示すように、底面の縁部に沿って開口部23よりも一回り大きなフランジ部81が形成されている。したがって、浮き袋本体2の空気を抜いた状態で、透明スコープ8を開口部23に嵌め込むと、その底面が透明板24によって支持される。そして、透明スコープ8を嵌め込んだ後、浮き袋本体2に空気を充満すると、開口部23の内壁面がフランジ部81上に迫り出し、透明スコープ8を固定するようになっている。
【0026】
なお、透明スコープ8を固定する構造は、上記の手段に限られるものではなく、例えば硬化樹脂で形成した略馬蹄形状の支持用フランジを前記開口部23の下縁に沿って圧着し、この支持用フランジで透明スコープ8の底面を支持するようにしてもよい。また、その支持用フランジを上下2枚に分割し、この間に前記透明スコープ8のフランジ部81を挿入して狭持させることで固定してもよい。
【0027】
また、透明スコープ8は、その表面を着色したり、ミラーコーティングを施して美感を高めるようにしてもよい。さらに、透明スコープ8に開閉蓋を設け、貴重品等の小物類を水に濡れないように収納可能に構成してもよい。また、透明スコープ8に着脱可能な防水ケース(図示せず)を備え、この防水ケース内に携帯電話や携帯型音楽プレイヤー、携帯型テレビ等の携帯型電子機器を収容可能に構成してもよい。この場合、浮き袋本体2に防水スピーカ(図示せず)を装備し、この防水スピーカへの電気的接続口を防水ケース内に設ければ、この防水ケースを介して前記防水スピーカと前記携帯型電子機器とが電気的に接続され、音楽や映像を視聴することも可能となる。
【0028】
分割壁3は、浮き袋本体2の内部を複数の気室31,32に分割するためのものであり、浮き袋本体2と同じ素材によって形成されている。本実施形態において、分割壁3は、図2および図3に示すように、浮き袋本体2の内部を凹状の胴体収容部21に対して内外方向に層状に隣接する内方気室31と外方気室32とに分割するように設けられている。また、これら内方気室31および外方気室32は、それぞれ水上での進行方向に対して左右対称に形成されている。
【0029】
また、本実施形態において、分割壁3は、図3に示すように、内方気室31および外方気室32の各重心が平面視において同一直線上に配置されるように浮き袋本体2の内部を分割している。理想的には、前記重心が、それぞれ内方気室31および外方気室32の中心線上に位置し、かつ、ユーザの体重がかかりやすい胴体収容部21から開口部23の間に位置するのが好ましい。また、分割壁3は、各先鋭部22の先端にまで設けられており、平面視で略U字形状に形成されている。
【0030】
なお、分割壁3の数、形状、配置等は、上述した構成に限られるものではなく、分割された各気室31,32が、それぞれ前記進行方向に対して左右対称に形成され、かつ、胴体収容部21に対して内外方向に層状に隣接されていれば、2以上に分割してもよいし、任意の形状、配置を選択してよい。ここで、内外方向に層状に隣接させる位置関係は、同じ高さで隣接させる場合に限らず、斜め方向に高さを変えて隣接させる場合や、分割壁3を略水平方向に配置して上下方向に層状に隣接させる場合も含まれる。したがって、たとえば真横および上下の4つの気室によって構成してもよい。
【0031】
気体注入部4および気体排出部5は、バルブ等から構成されており、気体を注入および排出するものである。気体注入部4および気体排出部5は、各気室31,32ごとにそれぞれ1つずつ設けられている。本実施形態では、気体注入部4および気体排出部5として、本願発明者が発明したフラットバルブ装置(特許第3504945号)を採用した。
【0032】
このフラットバルブ装置は、気体注入部4および気体排出部5の機能を兼ね備えるものであり、図2および図3に示すように、内方気室31と外方気室32の底面側にそれぞれに設けられている。また、フラットバルブ装置と空気注入具(図示せず)との接続構造には、本願発明者が発明した接続構造(特願2008-143011号)が採用されている。なお、気体注入部4および気体排出部5は、上記の構成に限られるものではなく、従来の逆止弁等を使用してもよい。
【0033】
浮力材6は、万が一、全ての気室が破損してしまった場合でも、ユーザが掴まって浮いていられる浮力を確保するためのものである。本実施形態において、浮力材6は、ライフジャケット等に用いられる発泡体等から構成されており、図2および図3に示すように、一対の浮力材6,6が、浮き袋本体2の中心線に対して対称位置であって、外方気室32の前方に内蔵されている。このため、水上での浮き袋本体2は、ユーザが胴体収容部21から水上気体構造体1に乗った状態で、略水平状態を保持するように設計されている。
【0034】
なお、浮力材6の配置は、上記の構成に限られるものではなく、内方気室31にも内蔵させてよいし、少なくとも1以上の気室の内部に配置されればよい、また、浮力材6の数も1対の構造に限らず、水上気体構造体1のバランスを保持する位置に内蔵されていれば1つでもよいし、2以上であってもよい。また、浮力材6の材質は、所定の浮力を有するものであればどのような素材でもよく、小さな浮き袋でもよい。
【0035】
また、本実施形態において、各浮力材6が内蔵された外方気室32には、図2および図3に示すように、その浮力材6の両端近傍に当該浮力材6の位置ズレを防止するための位置ズレ防止用仕切壁33が設けられている。そして、これら各位置ズレ防止用仕切壁33には、気室内に注入された気体を通気可能な通気孔34が形成されている。
【0036】
また、本実施形態では、図2から図4に示すように、外方気室32の前方近傍における内部には、浮き袋本体2の局所における形状を保持するための補強用気室35が設けられている。この補強用気室35は、略円筒状に形成されており、その上下端部が外方気室32の内表面に固着されている。また、補強用気室35には2以上の連通孔36が形成されており、外方気室32に気体を注入すると、補強用気室35に気体が充満するようになっている。
【0037】
なお、補強用気室35の構成は、上記の構成に限られるものではなく、連通孔36を備えて形状保持に寄与するものであれば特に限定されない。また、補強用気室35の配置は、形状の保持が難しい位置や複雑な形状を呈する位置に設けると効果的である。
【0038】
形状維持カバー7は、図1および図3から図6に示すように、浮き袋本体2を被覆して損傷から保護するとともに、浮き袋本体2の形状を維持する役割を果たすものである。本実施形態において、形状維持カバー7は、浮き袋本体2を構成する生地よりも伸縮性の小さい生地により構成され、浮き袋本体2と略同形状に形成されている。このため、分割された気室をひとまとまりに包み込んで、先鋭形状や流線形状等の気体注入によって膨らんで丸みを帯びやすい外観形状を所望の形状に維持するようになっている。
【0039】
また、本実施形態において、形状維持カバー7には、持ち易くするための把持部71と、推進力や直進性を高めるフィン72が設けられている。把持部71は、帯状に形成されており、形状維持カバー7の前方周縁部に沿って設けられている。具体的には、図5に示すように、把持部71を布地で長尺帯状に形成し、その上端縁部を形状維持カバー7に固着するとともに、適当な間隔で縦線状に固着部分を設けている。このような構成を採用しているため、下端縁部から指先等を挿入し易いし、抜きやすく、怪我もしにくい。また、薄い帯状に形成しているため邪魔にならない。
【0040】
また、本実施形態では、図4および図6に示すように、水上気体構造体1の底面であって各先鋭部22の基端部近傍には、一対のフィン72,72が設けられている。これにより水上に浮いたときの安定性が増し、直線的な推進力も得やすい。なお、本実施形態において、形状維持カバー7の底面には、フラットバルブ装置を露出させるためのバルブ穴が2つ形成されている。
【0041】
つぎに、以上のような構成を備えた本実施形態における水上気体構造体1の作用について説明する。
【0042】
まず、本実施形態の水上気体構造体1をユーザが使用する場合、内方気室31および外方気室32のそれぞれの気体注入部4から気体を注入する。このとき、本実施形態では、上述した接続構造が、気体注入具を簡単かつ確実にフラットバルブ装置に接続する。また、上述したフラットバルブ装置が、薄型でスタイリッシュな外観でありながら、高い気密性を確保する。
【0043】
各気室31,32へ気体の注入が完了すると、内方気室31内の気体と外方気室32内の気体とが、分割壁3を両面から押圧して分割壁3を張設する。これにより、分割壁3が、浮き袋本体2の剛性を高めて変形し難くしている。また、本実施形態では、分割壁3が先鋭部22の先端にまで延出されているため、変形し易い先鋭部22の剛性を向上させ、ねじれ等にも強くなる。さらに、伸縮性の小さい形状維持カバー7で浮き袋本体2を覆っているため、流線形状や先鋭形状等のデザインがきれいに表現できる。
【0044】
また、外方気室32内では、各位置ズレ防止用仕切壁33が、各浮力材6の位置ズレを防止するとともに、注入された気体を通気させる。このため、位置ズレ防止用仕切壁33が気体の流通を邪魔することなく、外方気室32全体に空気が行き渡る。また、補強用気室35が、連通孔36から気体を取り入れて筒状を形成し、その両端部で外方気室32の内表面を外方向に支持する。これにより、浮き袋本体2の前方近傍が補強されるため、本来の外観形状をキープする作用を奏する。
【0045】
一方、形状維持カバー7によって浮き袋本体2全体が保護されているため、固い岩や鋭利なゴミ等に衝突しても破れたり穴が空いてしまうのを防止する。また、形状維持カバー7は、浮き袋本体2の過度の膨張を抑制するため、浮き袋本体2に大きな負担をかけることなく気体を多めに注入でき、剛性および浮力の向上に寄与する。さらに、把持部71は、その下端縁部から簡単に指を差し込ませ、水上気体構造体1を持ち易くする。
【0046】
つぎに、本実施形態の水上気体構造体1を用いて水上で遊んだり運動する場合、ユーザは胴体収容部21に胴体を入れて、上半身を水上気体構造体1上に乗せ、手や足で水を掻く動作を行う。このとき、分割壁3や補強用気室35、あるいは形状維持カバー7が、浮き袋本体2の剛性を高めるとともに、高い浮力を実現させる。また、浮力の小さい先鋭部22では、その先端を下方に湾曲させているため水中に沈みにくくなる。このため、大人が乗っても変形し難く、乗り心地や操作性が低下するのを防止する。また、水上気体構造体1の外観形状が変形によって美感を損ねるのを防止する。
【0047】
また、水上では、透明スコープ8を介して水中を覗くことができる。このため、大人の女性であっても、顔を水に浸けることなく珊瑚礁や魚の泳ぐ姿を観賞でき、化粧落ちを気にする必要がない。また、底面に配置した一対のフィン72,72が、安定性や推進性を高めるため、手や足で軽く水を掻くだけで水上気体構造体1がスピーディに水上を走行する。
【0048】
また、水上で遊んでいる最中、不慮の事故等によって、いずれかの気室31,32から気体が漏れてしまった場合でも、胴体収容部21に対して内外方向に隣接する他方の気室31,32が、進行方向に対して左右対称に形成されているため、水上気体構造体1は全体のバランスを保ちながら浮いた状態を保持する。特に、左右のバランスが保持できるためユーザは乗っている姿勢や状態を大きく変える必要がなく、不慮の事故に対して冷静に対応できる。さらに、万が一、全ての気室から気体が漏れてしまった場合でも、各浮力材6や透明スコープ8の内部空間によって、人間が浮いていられるのに最低限の浮力を確保する。
【0049】
そして、水上気体構造体1を使用した後は、気体排出部5から気体を排出することで、小さく折り畳むことができ、持ち運びに便利になる。また、本実施形態では、フラットバルブ装置を採用することで、内方気室31および外方気室32内の気体が簡単かつ迅速に排出される。
【0050】
以上のような本実施形態の水上気体構造体1によれば、
1.水上での安全性を向上でき、子供や女性でも安心して使用することができる。
2.先鋭的な形状を実現し、デザイン性を向上することができる。
3.剛性を向上することができ、操作性や乗り心地の低下を防止することができる。
4.顔を水に濡らすことなく水中を観察することができる。
5.推進性や直進性を向上でき、水上でスピード感溢れる行動を楽しむことができる等の効果を奏する。
【0051】
なお、本発明に係る水上気体構造体1の実施例として、試作品のデジタル写真画像を図9に示す。図9に示すように、本実施例の水上気体構造体1は、海洋生命体を想起させる有機的な美しい曲線が実現されている。
【0052】
また、本発明に係る水上気体構造体1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0053】
例えば、上述した本実施形態では、先鋭部22を有する斬新な外観形状の水上気体構造体1について説明したが、この形状に限られるものではなく、従来の浮き輪等に適用してもよい。具体的には、図10に示すように、分割壁3によって浮き輪9の内部を内方気室31と外方気室32に分割し、各気室に気体注入部4および気体排出部5を設けるようにしてもよい。また、この場合、浮き輪9の上面を透明材料で形成するとともに、動物等のキャラクターを模した浮力材6を配置すれば、実用性とデザイン性を兼ね備えた浮力材6として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る水上気体構造体の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態において、形状維持カバーおよび透明スコープを取り外した状態の水上気体構造体を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の水上気体構造体を示す平面図である。
【図4】図3の4A−4A線断面図である。
【図5】図3の5A−5A線断面図である。
【図6】図3の6A−6A線断面図である。
【図7】本実施形態の透明スコープを示す平面図である。
【図8】図7の正面図である。
【図9】本発明に係る水上気体構造体の実施例を示すデジタル写真画像である。
【図10】本発明に係る水上気体構造体を浮き輪に適用した実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 水上気体構造体
2 浮き袋本体
3 分割壁
4 気体注入部
5 気体排出部
6 浮力材
7 形状維持カバー
8 透明スコープ
9 浮き輪
21 胴体収容部
22 先鋭部
23 開口部
24 透明板
31 内方気室
32 外方気室
33 位置ズレ防止用仕切壁
34 通気孔
35 補強用気室
36 連通孔
71 把持部
72 フィン
81 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を注入した状態で水に浮かぶ浮き袋本体と、
この浮き袋本体の内部を複数の気室に分割する分割壁と、
前記気室の各々に設けられて気体を注入する気体注入部と、
前記気室の各々に設けられて気体を排出する気体排出部とを有し、
前記浮き袋本体には、ユーザの胴体を収めるための胴体収容部が水上での進行方向に対して凹状に形成されており、前記気室は、それぞれ前記進行方向に対して左右対称に形成されているとともに、前記凹状の胴体収容部に対して内外方向に層状に隣接されている水上気体構造体。
【請求項2】
請求項1において、前記分割壁は、前記気室の各々の重心が平面視において同一直線上に配置されるように分割している水上気体構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、少なくとも1以上の前記気室の内部には、1以上の浮力材が前記水上気体構造体のバランスを保持する位置に内蔵されている水上気体構造体。
【請求項4】
請求項3において、前記浮力材が内蔵された気室には、その浮力材の両端近傍に当該浮力材の位置ズレを防止する位置ズレ防止用仕切壁が設けられ、この位置ズレ防止用仕切壁には、前記気室内に注入された気体を通気可能な通気孔が形成されている水上気体構造体。
【請求項5】
請求項1において、前記気室の内部には、筒状に形成された補強用気室がその両端を前記気室の内表面に固着されており、当該補強用気室には、前記気室に連通する複数の連通孔が形成されている水上気体構造体。
【請求項6】
請求項1において、前記浮き袋本体は、先端が細く先鋭形状に構成された先鋭部を有しており、前記分割壁は、前記先鋭部の先端にまで設けられている水上気体構造体。
【請求項7】
請求項1において、前記浮き袋本体の前記胴体収容部の前方には、開口部が形成されており、この開口部には、水密に形成された内部空間を有する透明スコープが設けられている水上気体構造体。
【請求項8】
請求項1において、浮き袋本体を構成する生地よりも伸縮性の小さい生地により構成され、分割された気室をひとまとまりに包み込んで外観形状を維持する形状維持カバーを有する水上気体構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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