説明

水中点検システム

【課題】水中ロボットを収容したランチャを安全に、かつ、よりスムーズに昇降させる一方、水中ロボットをランチャに回収する時に、配管などに絡み付いたケーブルの回収不能や切断などのトラブルを回避する。
【解決手段】少なくとも目視用のカメラ21と推進装置25〜27を備えた水中点検ロボット20をランチャ4内に収容し、該ランチャ4をウインチ11から繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部50の近傍に降下させ、その後、前記ランチャ4から発進した前記水中点検ロボット20によって前記被検査部50の点検を行うようにした水中点検システムである。前記ランチャ4の昇降を、前記被検査部50の近傍に設けたランチャガイド5によって誘導する一方、前記水中点検ロボット20の前進に伴って繰り出されたケーブル18を、水中点検ロボット20内に設けたケーブルドラム24によって巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電所の導水路や天然ガスの地下備蓄施設において、水を満たした縦坑内の各種配管などの水中点検に適用する水中点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水中点検方法は、ケーブルオペレータがケーブルを繰り出し、ロボットオペレータが水中ロボットを操縦して水中ロボットを点検位置まで移動させた後、水中ロボットに搭載したTVカメラなどを用いて点検を実施しているが、検査部位が垂直配管の深部に位置する場合には、水中ロボットの移動作業のために多大な労力を費やしていた。
【0003】
ところで、水中ロボットを単独で使用するのではなく、水中ロボットを収容容器に収容した後、ホイストなどの懸垂装置を用いて水中ロボットを収容した収容容器を検査部位の近傍に降下させるようにした容器内検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、この容器内検査装置は、ケーブルオペレータがケーブルを繰り出す方法よりも水中ロボットを簡単に降下させることができるが、収容容器を吊り下げるワイヤーロープと、水中ロボットに電力及び制御信号を供給するケーブルとが別個になっているため、水中ロボットを収容した収容容器が検査部位に降下する間に水中ロボットに接続しているケーブルが炉内構造物に接触するなどのトラブルが発生し易い。
【0005】
また、水中ロボットが複数の各種配管をかいくぐって移動して点検した場合には、ケーブルが配管などに絡み付き、水中ロボットをランチャ側から引っ張ってもケーブルと配管との摩擦によってケーブルが動かなくなって回収不能になったり、更には、引っ張り過ぎてケーブルが切断するおそれがある。
【特許文献1】特開平7−218681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、第1の目的は、水中ロボットを収容した収容容器を安全に、かつ、よりスムーズに昇降させることができる水中点検システムを提供することにある。第2の他の目的は、水中ロボットを収容容器に回収する時に、配管などに絡み付いたケーブルの回収不能や切断などのトラブルを回避することができる水中点検システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、請求項1に記載の発明に係る水中点検システムは、少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャの昇降を、前記被検査部の近傍に設けたランチャガイドによって誘導する一方、前記水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取ることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る水中点検システムは、少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャに、目視用のカメラ及びランチャの水平方向の位置と方位とを制御するための推進器を設ける一方、前記水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取ることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の水中点検システムにおいて、前記ランチャの重量を水よりも重くすることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の水中点検システムにおいて、前記ランチャガイドを、水面近傍から水中の被検査部まで概ね垂直に結ぶ1本または複数のレールとし、該レールの断面形状をL型、T型、H型、I型とすることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の水中点検システムにおいて、前記ランチャガイドを、テンションが付加された1本または複数のワイヤーロープにより構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の如く、請求項1に記載の発明は、少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャの昇降を、前記被検査部の近傍に設けたランチャガイドによって誘導するため、水中点検ロボットを収容したランチャが内部構造物などに接触することもなく、被検査部の近傍まで安全に、かつ、速やかに移動させることが可能になった。
【0013】
また、この発明では、水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取るので、配管などに絡み付いたケーブルをランチャ側から引っ張ることもなく、容易に回収することができる。更には、引っ張り過ぎてケーブルが切断するおそれもない。
【0014】
請求項2に記載の発明は、少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャに、目視用のカメラ及びランチャの水平方向の位置と方位とを制御するための推進器を設けたため、水中点検ロボットを収容したランチャが内部構造物などに接触することもなく、被検査部の近傍に安全に、かつ、速やかに移動させることが可能になった。
【0015】
また、この発明では、水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取るため、配管などに絡み付いたケーブルをランチャ側から引っ張ることもなく、容易に回収することができる。更には、引っ張り過ぎてケーブルが切断するおそれもない。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記ランチャの重量を水よりも重くするので、ウインチからワイヤーロープを繰り出すだけで、ランチャをガイドレールに沿って速やかに移動又は降下させることが可能になった。また、ウインチにエンコーダなどを設けることにより、垂直方向の位置も精度よく検知することが可能になった。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記ランチャガイドを、水面近傍から水中の被検査部まで概ね垂直に結ぶ1本または複数のレールとし、該レールの断面形状をL型、T型、H型、I型とするので、前記水中検査ロボットが内部構造物に接触したり、或いは、衝突することなく、被検査部の近傍に速やかに移動させることが可能になった。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ランチャガイドを、テンションが付加された1本または複数のワイヤーロープにより構成したので、レール式のランチャガイドに比べて安価に設置することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1において、符号1は、縦坑であり、地下の岩盤内に構築した天然ガス備蓄用の空洞(図示せず)内に挿入され、その内部は、空洞内に注入した水Wによって満たされている。この縦坑1の中には、直径の異なる多数のガス管(内部構造物)2が設けられている。これらのガス管2は、多段に設けたステージ3の穴(図示せず)に通されている。
【0020】
また、この縦坑1は、その中にランチャガイド5を設けてランチャ4の昇降を誘導するようになっている。図2のランチャガイド5は、空洞を構築する時に使用したエレベータのガイドレール6を利用したものであるが、これに限定されることはない。例えば、ランチャガイド5は、水面近傍から水中の被検査部まで概ね垂直に結ぶ1本または複数のレールでも差し支えがない。また、レールの断面形状は、L型、T型、H型、I型でも差し支えがない。要は、ランチャ4を水面近傍から水中の被検査部まで略垂直に誘導できるものであればよい。
【0021】
図1に戻って説明すると、地上7には、発電機8と、制御コンテナ室9と、クレーン10とが設定され、クレーン10に具備したウインチ11から引き出した1次ケーブル12の先端にランチャ4が取り付けられている。1次ケーブル12は、複合ケーブルであり、ランチャ昇降用ワイヤーロープに電力及び光通信用ケーブルを組み込んだものである。その際、ランチャ4の重量を水よりも重くしてウインチ11を繰り出すだけでランチャ4がガイドレール6に沿って降下するようになっている。
【0022】
また、ウインチ11にエンコーダなどを設けることによってランチャ4の垂直方向の位置を正確に知ることができるようになっている。なお、図1中、符号13は電力ケーブル、14は電力及び光通信用ケーブル、15はクレーン先端のシーブ、16は作業指揮者、17はロボットオペレータを示している。
【0023】
上記ランチャ4は、正面に開口部4aを有し、水中点検ロボット20が自由に出入りできるようになっている。水中点検ロボット20は、図3及び図4に示すように、目視検査用のTVカメラ21、照明装置22、超音波探傷装置23、ケーブルドラム24、水平スラスタ25、横スラスタ26、垂直スラスタ27、横行車輪28などをロボット本体29に搭載している。
【0024】
上記TVカメラ21は、ロボット本体29の頭部に設けられ、被検査部の目視検査や、移動時における障害物の有無などを目視するようになっている。また、上記照明装置22は、TVカメラ21の両側に設けられ、ロボット本体29の前方を照射するようになっている。更に、上記ケーブルドラム24は、ロボット本体29の後部に設けられ、ドラム駆動モータ(図4参照)30によって駆動されるようになっている。このケーブルドラム24の後方には、一対のローラ31が設けられ、ケーブルドラム24から引き出された2次ケーブル18をガイドするようになっている。図4中、符号32はスリップリング、36は張力センサを示している。
【0025】
上記超音波探傷装置23は、図3に示すように、ケーブルドラム24の下方に設けられ、被検査部の探傷検査を行うようになっている。また、上記水平スラスタ25は、ロボット本体29の後部の左右両側と上部とにそれぞれ1基ずつ水平に設けられ、前後方向の移動及びロボットのトリム制御ができるようになっている。上記横スラスタ26は、ロボット本体29の横腹を貫通する水平ダクト33内に水平に設けられ、横行時に使用するようになっている。上記垂直スラスタ27は、ロボット本体29を貫通する垂直ダクト34内に垂直に設けられ、上下方向の移動時に使用するようになっている。また、ロボット本体29は、その底部に全輪駆動式の横行車輪28を設けている。尚、この横行車輪28は、ステアリング付きでも良いし、2輪駆動でも良い。
【0026】
上記2次ケーブル18は、電力及び光通信用ケーブルであり、その一端は、1次ケーブル12の電力及び光通信用ケーブル14に接続し、他端は、水中点検ロボット20内の各種の機器と電気的、或いは光学的に接続されている。ここで、水中点検ロボット20と2次ケーブル18とは、重量が水とバランスするように作られており、水中点検ロボット20が水中を容易に移動したり、或いは、静止することができるようになっている。
【0027】
次に、上記水中点検ロボットによる被検査部(例えば、溶接部50)の目視検査および探傷検査について説明する。
【0028】
(1) 陸上において、ランチャ4内に水中点検ロボット20を収容し、前記水中点検ロボット20内のケーブルドラム24に2次ケーブル18を巻き取る。その後、ケーブルドラム24が動かないように図示しないドラムロック手段によってロックする。
【0029】
(2) 次に、クレーン10によって吊り上げたランチャ4をランチャガイド5のガイドレール6間に嵌合させた後、ウインチ11から1次ケーブル12を繰り出し、前記ランチャ4を点検を実施する深度まで降下させる。
【0030】
(3) 次に、ドラムロック手段によるロックを解除して水中点検ロボット20内のケーブルドラム24の回転をフリーにする。その後、ロボットオペレータによって水中点検ロボット20を操縦して点検位置まで移動させる(図5参照。)。この時の水中点検ロボット20の移動は、おおよそ水平方向のみの移動である。
【0031】
(4) そして、溶接部(図示せず)の目視検査は、図6に示すように、水中点検ロボット20の頭部に設けたTVカメラ(図示せず)によって実施し、溶接部50の探傷検査は、図7に示すように、水中点検ロボット20内に設けた超音波探傷装置23によって実施する。その際、水中点検ロボット20の横行は、横スラスト26及び横行車輪35によって実施する。
【0032】
(5) 上記点検の終了後、水中点検ロボット20内に設けたケーブルドラム24に2次ケーブル18を巻き取る。水中点検ロボット20内のケーブルドラム24に2次ケーブル18を巻き取ることによって最終的に水中点検ロボット20は、ランチャ4内に格納される。ここで、ケーブルドラム24が動かないように図示しないドラムロック手段によってロックする。
【0033】
なお、水中点検ロボット20が、図6に示すように、縦坑1内に設けた複数のガス管2の間を縫うように前進したとしても、上記のように、水中点検ロボット20内のケーブルドラム24に2次ケーブル18を巻き取ることによって水中点検ロボット20がガス管2の外周面に沿って回頭するため、ランチャ4内に戻ることができる。
【0034】
(6) 陸上のウインチ11によって1次ケーブル12を巻き取ることにより、水中点検ロボット20をランチャ4と一緒に陸上に回収する。
【0035】
以上の説明では、ランチャ4の昇降ガイドとして、既存のガイドレール6を用いた場合について説明したが、これに限らず、例えば、図8に示すように、ウエイト40によってテンションが付加された複数のワイヤーロープ41を適用することができる。その際、ワイヤーロープ41を支持する支持アーム42を水平面内において前後及び左右移動可能にすることにより、ランチャ4と縦坑1内にある図示しない構造物との接触を回避することができる。この場合、ランチャ4に目視用のTVカメラ43及び照明装置44を設けて上記支持アーム42を位置を制御する必要がある。
【0036】
他方、上記の如きガイドを適用しない場合には、図9に示すように、ランチャ4に目視用のTVカメラ43、照明装置44およびスラスタ45を設けて縦坑1内にある図示しない構造物との接触を回避することができる。
【0037】
なお、この水中点検システムは、天然ガス備蓄設備の縦坑内の各種配管の点検のほか、水力発電所の導水路の水中点検などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る水中点検システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】上記第1の実施形態の要部の斜視図である。
【図3】水中点検ロボットの平面図である。
【図4】水中点検ロボットの側面図である。
【図5】水中点検ロボットがランチャーから前進した様子を示す説明図である。
【図6】水中点検ロボットによる目視検査の様子を示す説明図である。
【図7】水中点検ロボットによる探傷検査の様子を示す説明図である。
【図8】本発明に係る水中点検システムの第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図9】本発明に係る水中点検システムの第3の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0039】
4 ランチャ
5 ランチャガイド
11 ウインチ
18 ケーブル
20 水中点検ロボット
21 目視用のカメラ
24 ケーブルドラム
25,26,27 推進装置
50 被検査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャの昇降を、前記被検査部の近傍に設けたランチャガイドによって誘導する一方、前記水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取ることを特徴とする水中点検システム。
【請求項2】
少なくとも目視用のカメラと推進装置を備えた水中点検ロボットをランチャ内に収容し、該ランチャをウインチから繰り出したワイヤーロープを用いて水中の被検査部の近傍に降下させ、その後、前記ランチャから発進した前記水中点検ロボットによって前記被検査部の点検を行うようにした水中点検システムにおいて、前記ランチャに、目視用のカメラ及びランチャの水平方向の位置と方位とを制御するための推進器を設ける一方、前記水中点検ロボットの前進に伴って繰り出されたケーブルを、水中点検ロボット内に設けたケーブルドラムによって巻き取ることを特徴とする水中点検システム。
【請求項3】
前記ランチャの重量を水よりも重くすることを特徴とする請求項1又は2記載の水中点検システム。
【請求項4】
前記ランチャガイドを、水面近傍から水中の被検査部まで概ね垂直に結ぶ1本または複数のレールとし、該レールの断面形状をL型、T型、H型、I型とすることを特徴とする請求項1記載の水中点検システム。
【請求項5】
前記ランチャガイドを、テンションが付加された1本または複数のワイヤーロープにより構成することを特徴とする請求項1記載の水中点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−30597(P2008−30597A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206136(P2006−206136)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)