説明

水中音響測定装置

【課題】音響材料の音響特性を、水圧下において効率的に測定することができる水中音響測定装置を提供する。
【解決手段】両端が密閉された中空円筒体1内の一端部に送波器5を設置すると共に、前記送波器5に対向して音響材料9を配置し、前記送波器と前記音響材料9との間に1台の受波器7を設け、前記密封された中空円筒体1内に水を充満させた水中音響測定装置において、前記受波器7を前記中空円筒体1内の長手方向に沿って移動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中音響測定装置に関し、更に詳しくは、音響材料の音響特性を、水圧下において効率的に測定することができる水中音響測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音や遮音を目的とする材料(以下「音響材料」という。)の音響特性、例えば、音響インピーダンスや音響透過損失などの測定には、いわゆる音響管と呼ばれる測定装置が用いられる。この音響管は、例えば特許文献1の図1に示すように、両端が密閉された中空円筒体の端部に設置した送波器に対向して音響材料を設置し、それら送波器と音響材料との間に発生する定在波を、長手方向に沿って配列した複数の受波器で測定することを基本的な原理としている。
【0003】
しかし、上記の音響管のように複数の受波器を用いた場合には、各受波器の感度を揃えるための校正作業に多大な手間と時間を要し、測定時間が長期化するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するには、上記特許文献1の従来技術(図3)にあるように、単一の受波器を音響管の長手方向に沿って移動させながら定在波を測定することが考えられる。
【0005】
しかし、そのような従来の音響管では、音響管内の水に圧力を加えた状態で音響材料の音響特性を測定することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−105041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、音響材料の音響特性を水圧下において効率的に測定することができる水中音響測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の水中音響測定装置は、両端が密閉された中空円筒体内の一端部に送波器を設置すると共に、前記送波器に対向して音響材料を配置し、前記送波器と前記音響材料との間に受波器を設け、前記密封された中空円筒体内に水を充満させた水中音響測定装置において、前記受波器を前記中空円筒体の長手方向に沿って移動可能に構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中音響測定装置によれば、水を充満させた中空円筒体からなる本体内で1台の受波器を長手方向に移動可能になるように構成したことにより、本体内を密閉状態に容易に維持することができると共に、複数の受波器の感度を揃えるための校正作業が不要であるため、水圧下における音響材料の音響特性を効率的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態からなる水中音響測定装置を示す断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態からなる水中音響測定装置を示す断面図である。
【図3】本発明の更に別の実施形態からなる水中音響測定装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態からなる水中音響測定装置を示す。
【0013】
この水中音響測定装置は、いわゆる音響管と呼ばれ、縦置きにした中空円筒体1の上下端部を上側フランジ2及び下側フランジ3でそれぞれ密閉して本体4を構成し、下側フランジ3上に送波器5を設置すると共に、上側フランジ2から剛体6を吊設し、それら送波器5と剛体6との間に1台の受波器7を配置したものである。この本体4内には、水8が充満されている。
【0014】
上側フランジ2から吊設された剛体6は、ステンレス製の中実円柱体から構成され、平板状に加工された音響材料9が下面に取り付けられている。受波器7は、剛体6及び音響材料9を上下に貫通する支持棒10の下端に固定されている。支持棒10の上部は、上側フランジ2を貫通して本体4の外側へ延びており、上側フランジ2の上方に設置された駆動手段である電動機11により上下方向に駆動される。
【0015】
また、送波器5、受波器7及び電動機11は、それぞれ信号線12a、12b、12cを通じてコントローラ13に電気的に接続されている。このコントローラ13は、中央演算処理装置(CPU)を備えたパソコンなどから構成することができる。
【0016】
音響材料9の音響特性の測定は、あらかじめコントローラ13に組み込まれた手順に従って自動的に行われる。具体的には、まず送波器5から断続的に定在波(正弦波)を発振させ、電動機11を駆動して受波器7を送波器5と音響材料9との間の所定の位置に移動し、その位置で受波器7により定在波の音圧等を測定し、次いで電動機11を駆動して受波器7を次の位置に移動させて定在波を測定する作業を繰り返すようにする。
【0017】
このように水中音響測定装置を構成したことにより、本体4を密閉状態に容易に維持することができるため、水圧下における音響特性を評価できる。また、受波器7が1台であるので、複数の受波器の感度を揃えるための校正作業が不要であるため、効率的に測定を行うことができる。
【0018】
更には、受波器を任意の位置に移動させることができるため、複数の受波器を用いる場合に比べて測定ポイントを細かく設定できるので、音響特性をより詳細に測定することができる。
【0019】
図2は、本発明の別の実施形態からなる水中音響測定装置を示す。
【0020】
この実施形態は、本体4に水8の圧力(水圧)を調整する圧力ポンプ14と、その水圧を測定する圧力計15とを設置したものである。これら圧力ポンプ14及び圧力計15は、信号線12d、12eによりコントローラ13に電気的に接続しており、圧力計15の測定値を圧力ポンプ14の運転にフィードバックさせることにより、本体4内の水圧を所定の値に維持するようになっている。
【0021】
このように構成することにより、本体4内の水圧を調整しつつ受波器7を移動させて音響特性を測定することができるため、音響特性に対する水圧の影響を評価することができるようになる。
【0022】
図3は、本発明の更に別の実施形態からなる水中音響測定装置を示す。
【0023】
この実施形態は、本体4に水8の温度を測定する温度計16を設置すると共に、本体4の側面に加熱手段である電気ヒータ17を取り付けたものである。温度計16としては、熱電対などが例示される。また、電気ヒータ17は、中空円筒体1の壁面を通じて水8を加熱するようになっている。これら温度計16及び電気ヒータ17は、信号線12f、12gによりコントローラ13に電気的に接続しており、温度計16の測定値を電気ヒータ17の熱出力にフィードバックさせることにより、本体4内の水8の温度(水温)を所定の値に維持することができる。
【0024】
このようにすることで、音響特性に対する水温の影響を評価することができるようになる。
【0025】
上記の実施形態は、上述した圧力ポンプ14及び圧力計15を設けた実施形態と組み合わせることも可能である。また、上述した全ての実施形態においては、中空円筒体1を縦置きにしているが、これに限るものではなく、横置きにしてもよいことは勿論である。
【0026】
更に、上述した全ての実施形態においては、本体4内に水5を充満させているが、水5の代わりに他の液体、例えば塩水などを用いることができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1 中空円筒体
2 上側フランジ
3 下側フランジ
4 本体
5 送波器
6 剛体
7 受波器
8 水
9 音響材料
10 支持棒
11 電動機
12a〜12f 信号線
13 コントローラ
14 圧力ポンプ
15 圧力計
16 温度計
17 電気ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が密閉された中空円筒体内の一端部に送波器を設置すると共に、前記送波器に対向して音響材料を配置し、前記送波器と前記音響材料との間に1台の受波器を設け、前記密封された中空円筒体内に水を充満させた水中音響測定装置において、
前記受波器を前記中空円筒体内の長手方向に沿って移動可能に構成した水中音響測定装置。
【請求項2】
前記受波器を、前記中空円筒体の他端部を内外に貫通し、かつスライド可能な支持棒の先端に取り付けた請求項1に記載の水中音響測定装置。
【請求項3】
前記支持棒を、前記中空円筒体の長手方向に沿って移動させる駆動手段を具備する請求項2に記載の水中音響測定装置。
【請求項4】
前記中空円筒体に圧力ポンプを接続すると共に、該中空円筒体内の水圧を測定する圧力計を設置し、該中空円筒体内の水圧を調整しつつ前記受波器を移動できるように構成した請求項1〜4のいずれかに記載の水中音響測定装置。
【請求項5】
前記中空円筒体内の水の温度を測定する温度計を設置すると共に、該中空円筒体内の水を加熱する加熱手段を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の水中音響測定装置。
【請求項6】
前記音響材料の背面に剛体を取り付けた請求項1〜5に記載の水中音響測定装置。
【請求項7】
前記中空円筒体を前記送波器が設置された一端部が下側になるように縦置きにした請求項1〜6のいずれかに記載の水中音響測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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