説明

水位検知システム

【課題】実際に現地で検査することなく検知器が正常に動作しているか否かを自動的に診断することができる水位検知システムを提供する。
【解決手段】監視地域内の所定箇所を通過するように敷設された第1の光ファイバに接続された第1検知手段60と、第2の光ファイバに接続された第2検知手段70と、第1の光ファイバに光を入射して反射光を検出する第1の測定装置30と、第2の光ファイバに光を入射して反射光を検出する第2の測定装置42と、第1の測定装置の測定結果と第2の測定装置の測定結果とから所望の情報処理を行う演算装置10と、を備えた水位検知システムにおいて、演算装置は、第2の測定装置の測定結果より監視対象の水位を演算し、同一箇所に設置されている第1の測定装置の測定結果と第2の測定装置の測定結果とから第2の測定装置が正常か否かを判定するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを使用した遠隔監視システムさらには水位検知システムに関し、特に水位計の自己診断機能を有する水位検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道設備などにおいては、大雨などによるオーバーフローに備えて水位を監視する必要がある。従来、水位の検出を行う装置の例として、フロートの位置を機械的、電気的に検出するものや、水位自体を光学的に検出して電気信号に変換する方式のものが一般的であった。しかしながら、これらの水位検出器は機械的可動部分が多く故障の原因となったり、電気回路の電源を確保するために水位検出器の近くにバッテリーを設置したりする必要がある等の問題があった。
【0003】
そこで、近年においては、光FBG(ファイバブラッググレーティング)と呼ばれる光ファイバの特性を利用して水位を測定するようにした光水位検出器に関する発明が種々提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−132772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、浮力を利用したフロートにシャフトを介して連結されたプレートと、複数のV溝からなる回折面を形成したV溝アレイとの間に、通信用シングルモード光ファイバを挟むことで長周期グレーティングを構成し、水位の高さに応じて生じるフロートの浮力によってファイバに加わる圧力で特定波長に損失を生じるのを監視して水位を検出するようにした技術が開示されている。
【0005】
さらに、この特許文献1には、V溝アレイのV溝が延びる方向とファイバの方向とがなす角度を変えることで、損失が生じる特定波長が変わるという現象を利用して、1本のファイバにV溝の角度を変えた複数の長周期グレーティングを設けて、複数箇所の水位を検出する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の光FBGを利用した水位検知システムにおいては、各検知器が正常に動作しているか否かは、実際に現地でメジャー等による水位測定を行って確認しないと知ることができない。そのため、例えば下水道の水位検知システムでは、検知器が設置されている箇所が車道下のマンホールのように点検作業が困難な場所である場合や有毒ガスが存在する場所である場合には、点検コストが高くなってしまうという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、実際に現地で検査することなく検知器が正常に動作しているか否かを自動的に診断することができる水位検知システムを提供することにある。
【0008】
この発明の他の目的は、正確な水位を検知したい場所の他に単に所定の水位に達しているか否かを検知したい場所がある場合に、検知器を自動的に診断できるとともにトータルコストを抑えることができる水位検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る水位検知システムは、
監視地域内の所定箇所を通過するように並行して敷設された第1の伝送媒体および第2の伝送媒体と、前記所定箇所に設置され前記第1の伝送媒体に接続された第1検知手段と、前記所定箇所に設置され前記第2の伝送媒体に接続された第2検知手段と、前記第1の伝送媒体を介して供給される前記第1検知手段からの情報に基づいて監視対象の変化を検出する第1の測定装置と、前記第2の伝送媒体を介して供給される前記第2検知手段からの情報に基づいて監視対象の変化を検出する第2の測定装置と、前記第1の測定装置の測定結果と前記第2の測定装置の測定結果とから所望の情報処理を行う監視装置と、を備えた水位検知システムであって、
前記監視装置は、前記第2の測定装置の測定結果より監視対象の水位を演算し、同一箇所に設置されている前記第1の測定装置の測定結果と前記第2の測定装置の測定結果とから前記第2の測定装置が正常か否かを判定するように構成したものである。
【0010】
ここで、好ましくは、前記第2の伝送媒体は光ファイバであり、前記第2の測定装置は当該光ファイバに光を入射して反射光を検出するものとする。また、前記第1の伝送媒体は光ファイバであり、前記第1の測定装置は当該光ファイバに光を入射して反射光を検出するものとする。さらに、好ましくは、前記第1の測定装置は、監視対象の水位が予め設定された所定のレベルを越えたか否かを検出するものとする。
【0011】
また、好ましくは、前記監視装置は、前記第1の測定装置の測定値が所定レベルを越えたことを検出した際の前記第2の測定装置の測定結果を予め対応付けられた所定のデータと比較して前記第2の測定装置が正常か否かを判定するようにする。
【0012】
また、前記第2検知手段が設置されている箇所に対応して、各々検知レベルの異なる複数の第1検知手段が設置されそれぞれ前記第1の伝送媒体に接続されるようにする。
【0013】
さらに、前記監視装置は、同一箇所に設置された各々検知レベルの異なる前記複数の第1検知手段からの情報に基づく前記第1の測定装置の測定結果から前記第1検知手段が正常か否かを判定するようにする。
【0014】
また、好ましくは、前記第1検知手段は、監視対象の水位が所定のレベルを越えた場合に反射光量が変化する反射型検知器とする。また、前記第1の測定装置は、前記第1の伝送媒体へパルス光を入射して反射光を時間軸で測定するOTDRとする。
【0015】
さらに、好ましくは、前記第2検知手段は、ファイバーグレーティングを有する水位計とする。また、前記第2の測定装置は、前記第2の伝送媒体へ所定の波長のレーザ光を入射する光源および前記第2の伝送媒体からの反射光の波長を測定する波長測定器を備えるようにする。
【0016】
さらに、本発明の他の態様では、前記第2検知手段が設置されている箇所に対応して前記第1検知手段が設置される一方、前記第2検知手段が設置されていない箇所に設置され前記第1の伝送媒体に接続された第1検知手段を備えるようにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、実際に現地で検査することなく検知器が正常に動作しているか否かを離れた場所で診断することができ、それによってメンテナンス費用を低減できる水位検知システムを実現することができる。また、正確な水位を検知したい場所の他に単に所定の水位に達しているか否かを検知したい場所がある場合に、検知器を自動的に診断できるとともにトータルコストを抑えることができる水位検知システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明を一例として例えば下水道設備のような複数箇所の水位を検知したい水位検知システムに適用した場合の第1の実施形態を示す。
【0020】
この実施形態の水位検知システムは、複数の水位センサからの信号を集中して処理、分析して必要な情報を出力する集中監視装置10と、該集中監視装置10の制御下で第1の光ファイバ21にパルス光を入射し反射光を監視するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)30と、第2の光ファイバ22にサーキュレータ51を介して所定の波長のレーザ光を入射する光源41および第2の光ファイバ22からの反射光の波長を測定する波長測定器42などを備える。サーキュレータ51は、光源41から出射されたレーザ光を第2の光ファイバ22へ入射する一方、第2の光ファイバ22からの反射光を波長測定器42へ入射する方向性結合器として機能する。
【0021】
第1の光ファイバ21および第2の光ファイバ22は、監視地域内の水位を検知したい場所を通過するように並行して敷設される。そして、第1の光ファイバ21の途中には、分岐用の光カプラ52a,52b,52c……が設けられ、各光カプラ52a,52b,52c……には分岐ファイバ21a,21b,21c……が接続され、分岐ファイバ21a,21b,21c……の先端には浸水検知器60a,60b,60c……が結合されている。第2の光ファイバ22は、途中にFBG(ファイバーブラッググレーティング)を利用した光水位計70a,70b……が設けられている
光水位計70a,70b……は、ファイバのコアに周期的な屈折率変調構造を持たせたセンサ(FBGセンサ)であり、下水道設備では水位を監視したいマンホールなどに設置される。FBGセンサは反射型のセンサであるため、アナログ出力センサ側にバッテリーを設ける必要がなくメンテナンスが簡単になるという利点がある。
【0022】
また、本実施形態では、FBGセンサ(70a,70b,……)は、それぞれ反射波のピーク波長(中心波長)が異なったものとなるようにグレーティング格子が形成されている。光源20は、光ファイバ10に接続されている全てのセンサのピーク波長λa、λb、……を含む波長域のレーザ光を出力するように構成される。このように中心波長の異なるFBGセンサを使用することで、複数箇所に設置した場合にどの箇所からの反射波であるかを識別することができる。
【0023】
OTDR30は第1の光ファイバ21からの反射光を時間軸で測定することにより、光ファイバの途中の損失やその地点までの距離を検出する測定器であり、このような測定器は種々のものが提供されており、本発明においてもそのような既知のOTDRを使用することができる。集中監視装置10は、プログラム動作可能なコンピュータのような演算装置などにより構成され、波長測定器42による測定値に基いて各光水位計70a,70b……の検出水位を演算したり、波長測定器42およびOTDR30の測定値から光水位計の異常の有無を判定し、得られた情報をモニタ11などに出力したりする機能を有する。OTDRを使用することで、反射光がどこに設置したセンサからのものかを識別できるとともに、複数の監視点を有する監視システムを低コストで実現できる。
【0024】
本実施形態においては、第2の光ファイバ22の途中に設けられた光水位計70a,70b……に対応して浸水検知器60a,60b……が設置されている。すなわち、光水位計70a,70b……の設置場所には必ず浸水検知器60a,60b……が設置されている。一方、光水位計が設置されていなくとも浸水検知器が設置されることもある(例えば60c)。浸水検知器60a,60b,60c……は監視場所の水位が単に予め設定した所定のレベルに達したか否かを検知する、光水位計70a,70b……よりも構成が簡単で安価に構成できる測定器である。
【0025】
上記のように、アナログ出力が得られる光水位計とハイまたはロウの2値出力が得られる浸水検知器とを使い分けて設置することで、多くの監視箇所からの情報を収集できる水位監視システムを低コストで実現することができる。また、情報の伝送媒体として光ファイバを使用し検知器として光反射型のセンサを使用することで、検知器側にバッテリーを設ける必要がなくメンテナンスが簡単になるという利点がある。
【0026】
図2および図3には、図1の水位検知システムに使用して好適な浸水検知器の実施例が示されている。図2は浸水検知器の概観図、図3は内部構造を示す構成図である。この実施例の浸水検知器60は、図2に示されているように、円筒状の保護カバー61の上半分に収納固定された磁気検知型の近接スイッチ62と、保護カバー61の下半分に上下移動可能に収納されたフロート63とからなり、近接スイッチ62に分岐ファイバ21a,21b,21c……の端部が接続され、フロート63の上面に永久磁石64が載置されている。
【0027】
近接スイッチ62は、磁気ファラデー効果を利用したセンサであり、図3に示されているように、内部に光ファイバの端面と対向するレンズ65と、複屈折素子66と、リング状磁石67およびこれに保持された第1ファラデー回転子68aと、第2ファラデー回転子68bと、反射ミラー69が直列に配置されてなる。水位上昇によりフロート63が上昇して永久磁石64が近接スイッチ62に近づくと、内部のファラデー回転子68a,68bが回転して偏光面が回転し光ファイバの端面から入射した光が反射ミラー69で強く反射することで、水位が所定のレベル以上に上昇したことを反射光で報知する。
【0028】
図4にはOTDRによる測定波形の一例が示されている。OTDRにより検出される反射光のレベル(光ファイバにおける損失)は距離に比例しており、水位が低い平常時には、図4(A)のように右下がりの直線となる。一方、浸水検知器を設置した場所の水位が上昇すると、図4(B)のように設置場所までの距離に応じた部位に、センサからの反射光によるヒゲ状の波形Pが観測されるようになる。
【0029】
図4(B)において、LaはOTDR30から浸水検知器60aまでの距離(ファイバの長さ)、Lbは浸水検知器60bまでの距離、Lcは浸水検知器60cまでの距離である。図4(B)には、浸水検知器60bが水位上昇を検出し、他の浸水検知器60a,60cは検出してない場合の波形が示されている。集中監視装置10は、OTDR30による測定波形を解析することで、どの場所で水位が監視レベルに達したかを知ることができる。なお、浸水検知器は、図2および図3に示すような構成のものに限定されず、例えば特開2003−166898号公報に開示されているような光ファイバの変形による損失増加現象を検知する方式のものであっても良い。
【0030】
次に、本実施形態の水位検知システムにおける集中監視装置10による光水位計の自己診断処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
集中監視装置10は、OTDR30の測定データからいずれかの浸水検知器60a,60b,60c……で水位が浸水検知レベルに達したか否か判定し、検知レベルに達していないときはステップS1からS2へ移行して、光水位計70a,70b……による測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高いか否か判定する。ここで、「NO」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低い場合には、その水位計は正常と判定する(ステップS4)。また、「YES」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高い場合には、その水位計は異常と判定する(ステップS5)。αは浸水検知器および光水位計の許容誤差である。
【0032】
一方、ステップS1においていずれかの浸水検知器60a,60b,60c……で水位が浸水検知レベルに達したと判定したときはステップS1からS3へ移行して、対応する光水位計70a,70b……による測定水位が、(浸水検知器の検知レベル−α)よりも高く(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低いか否か判定する。ここで、「NO」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル−α)よりも低いか(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高い場合には、その水位計は異常と判定する(ステップS5)。
【0033】
また、ステップS3で「YES」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル−α)よりも高く(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低いと判定した場合には、その水位計は正常と判定する(ステップS4)。そして、それぞれの判定結果は、モニタ11等に表示される(ステップS6)。以上の処理によって、本実施形態の水位検知システムでは、光水位計の設置場所に赴いて実際に水位を測定することなく、光水位計が正常か異常かを自動的に判定し判定結果を知らせることができるようになっている。
【0034】
上記のように、本実施形態の水位検知システムは、水位の監視系統を2つ有しているため、FBGを利用した光水位計70a,70b……と波長測定器42などからなる1系統の監視系のみからなる従来の水位検知システムに比べるとコストが高くなる。しかしながら、2系統の監視系を有することにより、光水位計の異常の有無を判定することができるという利点がある。
【0035】
さらに、監視対象によっては、監視したい場所のすべてにおいて正確な水位を検知する必要はなく、水位が単に所定のレベルに達したか否かを検知したい場所が幾つもあるような場合もある。そのような監視対象に本実施形態を適用すると、水位を監視したいすべての場所に高価な光水位計を設置する必要がなく安価な浸水検知器のみを設置すればよい場所があるため、トータルコストを抑えることが可能となる。
【0036】
(実施例2)
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図6は、本発明を適用した水位検知システムの第2の実施形態を示す。
【0038】
この実施形態の水位検知システムは、第1の光ファイバ21の途中に、分岐用の光カプラ52a,52b,52c……を介して、それぞれ分岐ファイバ21a,21b,21c……と浸水検知器60a,60b,60c……を2組ずつ設け、各組の浸水検知器はそれぞれ検知水位を異ならせるように構成したものである。それ以外の構成は図1のものと同じである。
【0039】
この第2実施形態によると、1つの水位計に対して2つの浸水検知器を設けているため、各水位計の正常/異常をより正確に検出できるとともに、対をなす浸水検知器の出力から相互に浸水検知器の正常/異常を検出することができるようになるという利点がある。
【0040】
次に、第2の実施形態の水位検知システムにおける集中監視装置10による自己診断処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
集中監視装置10は、OTDR30の測定データから各浸水検知器60a,60b,60c……の反射光のトレンドの作成すなわち検知器の感度変動を求める(ステップS11,S12)。そして、検知水位が高い側の浸水検知器の感度と検知水位が低い側の浸水検知器の感度との差がβよりも小さくかつ各浸水検知器の感度がそれぞれγよりも高いか否か判定し、「NO」すなわち感度差がβよりも大きいか各浸水検知器の感度のいずれかがγよりも小さいと判定したときは、ステップS13からS14へ移行して浸水検知器が異常であると判定してその判定結果を出力する(ステップS25)。ここで、浸水検知器の感度とは、図4(B)におけるヒゲ状の検出波形の相対的な高さ(当該位置での反射光の平常時強度に対するヒゲの高さ)に相当する。βとγはそれぞれ使用する浸水検知器およびOTDRに応じて予め適宜設定した定数である。
【0042】
さらに、第2の実施形態においては、OTDR30の測定データからいずれかの監視場所の検知水位の高い側の浸水検知器(上)で水位が浸水検知レベルに達したか否か判定し、検知レベルに達していないときはステップS15からS16へ移行して、光水位計70a,70b……による測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高いか否か判定する。ここで、「NO」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低い場合には、その水位計は正常と判定する(ステップS18)。また、「YES」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高い場合には、その水位計は異常と判定する(ステップS19)。
【0043】
次に、ステップS15においていずれかの浸水検知器(上)で水位が浸水検知レベルに達したと判定したときはステップS15からS17へ移行して、対応する光水位計70a,70b……による測定水位が、(浸水検知器の検知レベル−α)よりも高く(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低いか否か判定する。ここで、「NO」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル−α)よりも低いか(浸水検知器の検知レベル+α)よりも高い場合には、その水位計は異常と判定する(ステップS19)。また、「YES」すなわち光水位計の測定水位が(浸水検知器の検知レベル−α)よりも高く(浸水検知器の検知レベル+α)よりも低い場合には、その水位計は正常と判定する(ステップS18)。そして、異常判定をした場合には、判定結果をモニタ11等に表示する(ステップS25)。
【0044】
その後、ステップS20へ移行して、監視場所の検知水位の低い側の浸水検知器(下)の測定データに基いて上記ステップS15〜S19と同様な処理(S20〜S25)を行う。以上の処理によって、本実施形態の水位検知システムでは、光水位計の設置場所に赴いて実際に水位を測定することなく、光水位計および浸水検知器が正常か異常かを自動的に判定し判定結果を知らせることができる。
【0045】
なお、本実施形態におけるステップS11〜S14の処理は、比較的頻繁に水位が上下動する設備や予め監視場所の水位を強制的に上下させて測定データを得ることができる設備に適用する場合に有効な手法である。長期間水位が大きく変動せずまれに水位が検知レベルに達するような設備や、水位を強制的に上下さるような機能がない設備に適用する際には、ステップS11〜S14の処理を省略するか、ある程度長期間システムを稼動させて所定量の測定データが蓄積された段階で実行するように構成しても良い。
【0046】
また、図7の処理では、浸水検知器と水位計が正常か否かを判定すると説明したが、この実施例では浸水検知器が2個設けられているとともに、構成が単純であって故障しにくくかつオンかオフかの情報を得るものであり検知出力の信頼性が高いため、浸水検知器からの情報に基いて、水位計からの反射波に基づいて水位の測定値を演算する際に使用する式の係数や定数を補正するような処理を行うことも可能となり、それによって水位の測定精度を高めることもできるようになる。このことは、例えば水位計の精度が経年変化するような場合においても、長期間にわたって高精度の測定結果が得られることを意味している。
【0047】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、水位計としてFBGを利用した光水位計を使用した場合について説明したが、それ以外の水位計(例えば特開2000−111361号公報に開示されている光路差を利用したセンサを水位計とするもの等)を使用する場合にも適用することができる。
【0048】
また、前記第2実施例では、浸水検知器を2個設けたシステムを説明したが、検知レベルすなわち高さの異なる3個以上の浸水検知器を設けて、測定精度および測定値の信頼性をさらに向上させるように構成することも可能である。さらに、第2実施例では、浸水検知器としてファラデー素子を使用し情報の伝送媒体として光ファイバを使用しているが、ケーブル等を使用して電気信号で情報を伝達するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である下水道設備の水位検知システムに適用した場合を説明したが、河川やダム、池などの水位検知システムさらには風速など他の物理量の変化を監視したいシステムにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を水位検知システムに適用した場合の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の水位検知システムに使用して好適な浸水検知器の一実施例を示す概観図である。
【図3】図2の浸水検知器の内部構造を示す構成図である。
【図4】OTDRによる測定波形の一例を示すもので、(A)は平常時の波形図、(B)は水位上昇時の波形図である。
【図5】第1の実施形態の水位検知システムにおける集中監視装置による光水位計の自己診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明を適用した水位検知システムの第2の実施形態を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態の水位検知システムにおける集中監視装置による光水位計の自己診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 集中監視装置
11 モニタ
21 第1の光ファイバ
22 第2の光ファイバ
30 OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)
41 光源
42 波長測定器
51 サーキュレータ
52 光カプラ
60 浸水検知器(第2検知手段)
61 保護カバー
62 磁気検知型近接スイッチ
63 フロート
64 永久磁石
65 レンズ
66 複屈折素子
67 リング状磁石
68a 第1ファラデー回転子
68b 第2ファラデー回転子
69 反射ミラー
70 光水位計(第2検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視地域内の所定箇所を通過するように並行して敷設された第1の伝送媒体および第2の伝送媒体と、
前記所定箇所に設置され前記第1の伝送媒体に接続された第1検知手段と、
前記所定箇所に設置され前記第2の伝送媒体に接続された第2検知手段と、
前記第1の伝送媒体を介して供給される前記第1検知手段からの情報に基づいて監視対象の変化を検出する第1の測定装置と、
前記第2の伝送媒体を介して供給される前記第2検知手段からの情報に基づいて監視対象の変化を検出する第2の測定装置と、
前記第1の測定装置の測定結果と前記第2の測定装置の測定結果とから所望の情報処理を行う監視装置と、を備えた水位検知システムであって、
前記監視装置は、前記第2の測定装置の測定結果より監視対象の水位を演算し、同一箇所に設置されている前記第1の測定装置の測定結果と前記第2の測定装置の測定結果とから前記第2の測定装置が正常か否かを判定することを特徴とする水位検知システム。
【請求項2】
前記第2の伝送媒体は光ファイバであり、前記第2の測定装置は当該光ファイバに光を入射して反射光を検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の水位検知システム。
【請求項3】
前記第1の伝送媒体は光ファイバであり、前記第1の測定装置は当該光ファイバに光を入射して反射光を検出するものであることを特徴とする請求項2に記載の水位検知システム。
【請求項4】
前記第1の測定装置は、監視対象の水位が予め設定された所定のレベルを越えたか否かを検出するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水位検知システム。
【請求項5】
前記監視装置は、前記第1の測定装置の測定値が所定レベルを越えたことを検出した際の前記第2の測定装置の測定結果を予め対応付けられた所定のデータと比較して前記第2の測定装置が正常か否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の水位検知システム。
【請求項6】
前記第2検知手段が設置されている箇所に対応して、各々検知レベルの異なる複数の第1検知手段が設置されそれぞれ前記第1の伝送媒体に接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載の水位検知システム。
【請求項7】
前記監視装置は、同一箇所に設置された各々検知レベルの異なる前記複数の第1検知手段からの情報に基づく前記第1の測定装置の測定結果から前記第1検知手段が正常か否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の水位検知システム。
【請求項8】
前記第1検知手段は、監視対象の水位が所定のレベルを越えた場合に反射光量が変化する反射型検知器であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の水位検知システム。
【請求項9】
前記第1の測定装置は、前記第1の伝送媒体へパルス光を入射して反射光を時間軸で測定するOTDRであることを特徴とする請求項8に記載の水位検知システム。
【請求項10】
前記第2検知手段は、ファイバーグレーティングを有する水位計であることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の水位検知システム。
【請求項11】
前記第2の測定装置は、前記第2の伝送媒体へ所定の波長のレーザ光を入射する光源および前記第2の伝送媒体からの反射光の波長を測定する波長測定器を備えることを特徴とする請求項10に記載の水位検知システム。
【請求項12】
前記第2検知手段が設置されている箇所に対応して前記第1検知手段が設置される一方、前記第2検知手段が設置されていない箇所に設置され前記第1の伝送媒体に接続された第1検知手段を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の水位検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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