説明

水供給装置

【課題】周囲の環境に与える影響を低減するとともに、水資源の有効な利用を図りつつ、負荷機器へ水を安定して供給する水供給装置を提供する。
【解決手段】水供給装置は、負荷機器、雨水捕集部、地下井戸、第一ポンプ、地下貯水部、第二ポンプおよび水供給制御部を備える。負荷機器は、冷却または洗浄の少なくともいずれか一方を必要とする。雨水捕集部は、雨水を捕集する。地下井戸は、地下水脈から湧き出した地下水を貯える。第一ポンプは、地下井戸から地下水を汲み上げる。地下貯水部は、雨水捕集部で捕集した雨水、および負荷機器を冷却した冷却排水を貯える。第二ポンプは、地下貯水部から水を汲み上げる。水供給制御部は、第一ポンプで汲み上げた地下井戸の地下水、および第二ポンプで汲み上げた地下貯水部の水を負荷機器に供給する。これとともに、水供給制御部は、負荷機器を冷却した冷却排水の少なくとも一部を地下貯水部へ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば無人運転のポンプ場では、ポンプや付帯設備の冷却や洗浄に井戸水を利用している。このような設備の場合、一年を通して水温が安定し、かつ清浄であることから、井戸水は負荷機器の冷却や洗浄に幅広く利用されている。
しかしながら、負荷機器の冷却や洗浄に井戸水を多量に利用すると、地下水脈の水量の減少あるいは枯渇を招くおそれがある。また、井戸水の大量の利用は、地下水脈の近傍における地盤の変化など、周囲の環境に影響を及ぼすおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−344081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、周囲の環境に与える影響を低減するとともに、水資源の有効な利用を図りつつ、負荷機器へ水を安定して供給する水供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の水供給装置によれば、負荷機器、雨水捕集部、地下井戸、第一ポンプ、地下貯水部、第二ポンプおよび水供給制御部を備えている。負荷機器は、冷却または洗浄の少なくともいずれか一方を必要とする。雨水捕集部は、雨水を捕集する。地下井戸は、地中に設けられ、地下水脈から湧き出した地下水を貯える。第一ポンプは、前記地下井戸から地下水を汲み上げる。地下貯水部は、地中に設けられ、前記雨水捕集部で捕集した雨水、および前記負荷機器を冷却した冷却排水を貯える。第二ポンプは、前記地下貯水部から水を汲み上げる。水供給制御部は、前記第一ポンプで汲み上げた前記地下井戸の地下水、および前記第二ポンプで汲み上げた前記地下貯水部の水を前記負荷機器に供給する。これとともに、水供給制御部は、前記負荷機器を冷却した冷却排水の少なくとも一部を前記地下貯水部へ送る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態による水供給装置を適用した排水ポンプ場を示す模式図
【図2】第1実施形態による水供給装置の概略的な構成を示すブロック図
【図3】第1実施形態による水供給装置の要部を示す模式図
【図4】第2実施形態による水供給装置の図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、水供給装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態による水供給装置を適用した排水ポンプ場を図1に示す。排水ポンプ場10は、ポンプ原動機11、地下ポンプ井12および排水管13を備えている。ポンプ原動機11は、水供給装置15の負荷機器を構成している。ポンプ原動機11は、排水ポンプ場10の建屋16に収容されている。地下ポンプ井12は、建屋16が構築されている地表面17よりも低い地下に設けられている。地下ポンプ井12は、排水が流れる排水路18に接続している。排水路18は、降水時の雨水が流れる図示しない下水路に接続しており、各所から集められた雨水が流れる。排水路18を流れる雨水は、流入ゲート21から建屋16の地下に設けられている地下ポンプ井12へ流入する。地下ポンプ井12へ流入した雨水は、除塵機22を通過することにより、含まれる異物が除去される。
【0008】
排水管13は、一方の端部が地下ポンプ井12の底部付近に設けられ、他方の端部が放流渠23に設けられている。放流渠23は、排水管13と反対側の端部が図示しない河川に接続している。ポンプ原動機11は、この排水管13を経由して地下ポンプ井12の雨水を放流渠23へ排水する。これにより、地下ポンプ井12から放流渠23へ排水された雨水は、図示しない河川へ放流される。排水管13は、地下ポンプ井12の底部側の端部に吸引ポンプ24を有している。
【0009】
降水によって排水路18から地下ポンプ井12へ雨水が流入し、地下ポンプ井12の水位が予め設定されている排水水位まで上昇すると、ポンプ原動機11は運転を開始する。ポンプ原動機11は、排水管13に設けられている吸引ポンプ24を駆動する。これにより、吸引ポンプ24から吸引された地下ポンプ井12の雨水は、排水管13を経由して放流渠23へ排出される。放流渠23へ排出された雨水は、放流渠23を経由して河川へ放流される。
【0010】
次に、上記の排水ポンプ場10の水供給装置15について図1から図3を用いて説明する。
水供給装置15は、負荷機器としてのポンプ原動機11、雨水捕集部31、地下井戸32、第一ポンプ33、地下貯水部34および第二ポンプ35を備えている。第1実施形態の場合、負荷機器は、排水ポンプ場10の主要な設備であるポンプ原動機11である。ポンプ原動機11は、冷却部36に供給された水によって冷却される。ポンプ原動機11の場合、冷却部36は図示しない軸受などのようにポンプ原動機11の運転によって熱を発生する部分を冷却する。また、ポンプ原動機11は、洗浄部37に供給された水によって洗浄される。
【0011】
雨水捕集部31は、建屋16に設けられており、降水などによる雨水を捕集する。雨水捕集部31は、例えば濾過処理部38を有している。濾過処理部38は、雨水に含まれる異物を除去する。地下井戸32および地下貯水部34は、地下ポンプ井12と同様にいずれも地表面17より低い地下に設けられている。地下井戸32は、図3に示すように地下水脈39に接続している。そのため、地下井戸32は、地下水脈39から湧き出した地下水が貯えられる。一方、地下貯水部34は、雨水捕集部31で捕集した雨水を貯える。このように、地下貯水部34は、地下水脈39から湧き出した地下水ではなく、雨水捕集部31で捕集した雨水が貯えられる。
【0012】
水供給装置15は、図2に示すように地下水配管部41、再生水配管部42、供給配管部43、冷却排水配管部44、放流配管部45および雨水配管部46を備えている。地下水配管部41は、地下井戸32と供給配管部43とを接続している。再生水配管部42は、地下貯水部34と供給配管部43とを接続している。供給配管部43は、これら地下水配管部41および再生水配管部42とポンプ原動機11の冷却部36および洗浄部37とを接続している。冷却排水配管部44は、ポンプ原動機11の冷却部36と地下貯水部34とを接続している。放流配管部45は、冷却排水配管部44から分岐し、冷却排水配管部44と放流渠23とを接続している。雨水配管部46は、雨水捕集部31と地下貯水部34とを接続している。供給配管部43には、切替弁47が設けられている。切替弁47は、供給配管部43を経由して供給された水の流れを冷却部36または洗浄部37へ切り替える。洗浄部37は、例えば図示しない出水口を有している。ポンプ原動機11は、この出水口から吐出された水によって洗浄される。供給配管部43には、逆止弁48が設けられている。逆止弁48は、地下水配管部41から再生水配管部42側への地下水の逆流を防止する。冷却排水配管部44と放流配管部45とが分岐する部分には、放流弁49が設けられている。放流弁49は、放流配管部45を開閉し、冷却排水配管部44から放流配管部45へ放流される冷却排水の流量を調整する。
【0013】
第一ポンプ33は、地下水配管部41に設けられている。第一ポンプ33は、地下井戸32に貯えられている地下水を汲み上げ、汲み上げた地下水を地下水配管部41および供給配管部43を経由して冷却部36または洗浄部37へ供給する。第二ポンプ35は、再生水配管部42に設けられている。第二ポンプ35は、地下貯水部34に貯えられている再生水を汲み上げ、汲み上げた再生水を再生水配管部42および供給配管部43を経由して冷却部36または洗浄部37へ供給する。これにより、地下井戸32に貯えられている地下水、および地下貯水部34に貯えられている再生水は、供給配管部43を経由してポンプ原動機11の冷却部36または洗浄部37へ供給される。冷却部36から排出された冷却排水は、一部が冷却排水配管部44を経由して地下貯水部34へ戻されるとともに、残りが放流配管部45を供給して放流渠23へ放流される。これにより、冷却部36に供給された水のうち地下貯水部34へ戻された一部は、再生水として再利用される。
【0014】
水供給制御部50は、第一ポンプ33、第二ポンプ35、切替弁47および放流弁49を制御する。水供給制御部50は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するコンピュータで構成されており、予め設定されたコンピュータプログラムにしたがって水供給装置15を制御する。具体的には、水供給制御部50は、第一ポンプ33および第二ポンプ35の運転、切替弁47の開閉、ならびに放流弁49の開放率を制御する。
【0015】
上記の構成による水供給装置15を適用した排水ポンプ場10の作動について説明する。
通常の降水などのように比較的降水量が少ないとき、排水路18を流れる雨水は、排水路18を経由して河川へ放流される。すなわち、通常の降水の場合、雨水は、自然な流れによって河川へ放流される。そのため、排水路18を流れる雨水は、排水ポンプ場10の地下ポンプ井12にほとんど流入しない。一方、通常の降水の場合、雨水捕集部31は、排水ポンプ場10の建屋16およびこの周辺に降った雨水を捕集する。捕集された雨水は、濾過処理部38において異物が除去された後、地下貯水部34へ供給される。このとき、雨水捕集部31で捕集された水は、重力による自然な流れによって地下貯水部34へ送られる。地下貯水部34へ送られた雨水は、地下貯水部34に貯えられる。また、地下水脈39に接続している地下井戸32は、地下水脈39の水位に応じた量の地下水を貯えている。
【0016】
これに対し、集中豪雨など通常の降水を超える大量の降水があるとき、排水路18を流れる雨水を河川へ放流しても、排水が不十分になるおそれがある。この場合、排水路18における水位の上昇にともない、排水路18を流れる雨水は排水路18から排水ポンプ場10の地下ポンプ井12へ流入する。そして、地下ポンプ井12における雨水の水位が予め設定されている排水水位まで上昇すると、ポンプ原動機11は起動され運転が開始される。ポンプ原動機11の起動とともに吸引ポンプ24は雨水の吸引を開始する。これにより、地下ポンプ井12に流入した雨水は、排水管13および放流渠23を経由して河川に放流される。
【0017】
このようにポンプ原動機11の運転が開始されると、水供給制御部50は、ポンプ原動機11の冷却を開始する。具体的には、水供給制御部50は、ポンプ原動機11の運転が開始されると、第一ポンプ33を起動し、地下井戸32に貯えられている地下水をポンプ原動機11の冷却部36へ供給する。第一ポンプ33が運転されると、地下井戸32に貯えられている地下水は、地下水配管部41および供給配管部43を経由して冷却部36へ供給される。冷却部36へ供給された地下水は、ポンプ原動機11の軸受や変速機など発熱をともなう部位を冷却する。
【0018】
冷却部36へ供給された地下水は、冷却部36を通過した後、冷却排水配管部44を経由して冷却排水として冷却部36から排出される。冷却部36から排出された冷却排水は、放流弁49において放流配管部45側と地下貯水部34側とに分配される。この放流弁49における分配率は、例えばポンプ原動機11の起動からの経過時間、地下井戸32から供給可能な地下水の量、冷却部36および地下水の温度、冷却部36で必要な水の量、ならびに地下貯水部34の容量など各種の条件に応じて任意に設定されている。冷却部36から排出された冷却排水は、少なくとも一部が冷却排水配管部44を経由して地下貯水部34へ送られるとともに、その他が放流弁49から放流配管部45および放流渠23を経由して河川へ放流される。冷却部36を通過した冷却排水は、ポンプ原動機11の発熱部分を冷却する際に温度が上昇している。そのため、冷却排水を単に循環させると、冷却部36の冷却が不十分になるおそれがある。また、ポンプ原動機11の発熱部分は各種の摩擦要素を含むため、冷却部36を通過した冷却排水には微細な異物が含まれるおそれがある。そのため、冷却排水を単に循環させると、ポンプ原動機11の発熱部分への異物の侵入や噛み込みを招くおそれがある。一方、冷却排水をすべて河川へ放流すると、地下井戸32および地下水脈39の水位の低下、あるいは地下水脈39の涸渇など、環境へ負荷を与えるおそれがある。
【0019】
そこで、冷却排水は、一部が河川へ放流されるとともに、それ以外が地下貯水部34へ送られる。地下貯水部34は、上述の通り、通常の降水時に捕集した雨水が貯えられている。また、地下貯水部34は、文字通り地下に設けられているため、地下水と同様に一定の温度に維持しやすい。さらに、この地下貯水部34は、水の流れがほとんど生じない。そのため、地下貯水部34に冷却排水を貯えることにより、冷却排水に含まれる異物は地下貯水部34において沈殿する。その結果、地下貯水部34に貯えられた水は、地下水に近い温度まで冷却されるとともに、含まれる異物が沈殿によって分離される。これにより、地下貯水部34には、雨水捕集部31で捕集された雨水および冷却部36から排出された冷却排水が再生水として貯えられる。
【0020】
集中豪雨の継続などによりポンプ原動機11の運転が長期間に及ぶと、地下井戸32における地下水の水位は低下する。そこで、水供給制御部50は、ポンプ原動機11の運転による地下水の水位の低下を検出すると、第一ポンプ33に加えて第二ポンプ35を起動する。第二ポンプ35が運転されると、地下貯水部34に貯えられている地下水は、再生水配管部42および供給配管部43を経由して冷却部36へ供給される。このとき、水供給制御部50は、第一ポンプ33からの地下水の吐出量を低下、または第一ポンプ33の運転を停止させる。一方、水供給制御部50は、第一ポンプ33によって冷却部36へ供給される地下水の減少を補うために、第二ポンプ35により地下貯水部34に貯えられている再生水を冷却部36へ供給する。すなわち、水供給制御部50は、地下井戸32に貯えられている地下水を優先してポンプ原動機11の冷却部36へ供給するとともに、地下井戸32における地下水の水位の低下が検出されると、地下貯水部34に貯えられている再生水をポンプ原動機11の冷却部36へ供給する。
【0021】
これにより、ポンプ原動機11の冷却部36には、地下水だけでなく、地下貯水部34で冷却および異物が除去された再生水が供給される。そのため、地下水の過剰な消費は抑制され、冷却排水および雨水が再生水として有効に利用される。また、ポンプ原動機11は、運転時における冷却部36の冷却に限らず、運転停止時に洗浄が行われる。このようにポンプ原動機11を洗浄する場合、清浄度の高い地下水を必要とするとは限らない。そこで、ポンプ原動機11の洗浄を行う場合、水供給制御部50は、第二ポンプ35を優先的に運転し、地下貯水部34に貯えられている再生水をポンプ原動機11の洗浄部37へ供給する。これにより、ポンプ原動機11は、地下貯水部34から供給された再生水によって洗浄される。
【0022】
以上説明した第1実施形態では、雨水および冷却排水を再生水として地下貯水部34に貯えている。地下貯水部34に貯えられた再生水は、ポンプ原動機11の洗浄および冷却部36の冷却に利用される。そのため、地下井戸32の地下水は、必要以上に消費されず、地下水脈39の水位の低下および涸渇などが抑制される。したがって、ポンプ原動機11の冷却に地下水を安定して供給することができるとともに、周囲の環境に与える影響を低減することができ、水資源の有効な利用を図ることができる。
【0023】
また、第1実施形態では、雨水捕集部31で捕集された雨水および冷却部36から排出された冷却排水は、地下貯水部34に貯えられる。地下貯水部34は、地下にあるため、地下水と同様に比較的低温に維持される。また、地下貯水部34はほとんど流れが形成されないため、貯えられている雨水や冷却排水に含まれる異物は沈殿によって分離される。したがって、清浄且つ低温の再生水をポンプ原動機11へ供給することができる。
【0024】
さらに、第1実施形態では、水供給制御部50は、ポンプ原動機11を冷却する場合、地下井戸32に貯えられている冷却水を優先してポンプ原動機11の冷却部36へ供給する。地下井戸32から汲み上げられた地下水は、比較的温度が低い。したがって、ポンプ原動機11の冷却部36を効率よく冷却することができる。また、地下井戸32から汲み上げられた地下水は、清浄度も高い。そのため、地下水に含まれる異物がポンプ原動機11に影響を与えることもない。
【0025】
ところで、従来の地下水を利用した水供給装置の場合、地下水の利用の継続によって地下井戸が涸渇することが考えられる。また、地下井戸を採掘したものの、想定した地下水脈の水量が不十分なことも考えられる。このように地下水を汲み上げるために利用した地下井戸が涸渇したり、採掘した地下井戸の水量が不十分だった場合、別の地下水脈に接続する新たな地下井戸を採掘することが考えられる。このように、涸渇したり水量不足の地下井戸に代えて新たな地下井戸を採掘する場合、上述した第1実施形態を適用してもよい。すなわち、涸渇した地下井戸や水量不足の地下井戸を第1実施形態における地下貯水部34として利用する。そして、新たに採掘した地下井戸を第1実施形態における地下井戸32として利用する。これにより、涸渇した地下井戸は、地下貯水部34として再利用することができる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態による水供給装置を図4に示す。
第2実施形態の場合、図4に示すように水供給装置15は、地下貯水部34の構成が第1実施形態と異なる。第2実施形態の水供給装置15は、地下貯水部34に桶部材60を有している。第2実施形態の場合、地下貯水部34は、地下井戸32と同一または異なる地下水脈39に接続している。そのため、地下貯水部34には、地下水が湧き出している。桶部材60は、この地下貯水部34の内側を、地下水が貯えられている地下水溜61と、冷却排水および雨水からなる再生水を貯える再生水溜62とに区画している。桶部材60は、例えば熱伝導性が高く腐食しにくい金属などで形成されている。
【0027】
このように、桶部材60で地下貯水部34の内側を地下水溜61および再生水溜62に区画することにより、雨水捕集部31で捕集した雨水および冷却部36から排出された冷却排水は、再生水溜62に貯えられる。一方、地下水脈39から湧き出した地下水は、地下水溜61に貯えられる。地下水脈39から湧き出した地下水は、比較的低温である。そのため、再生水溜62に貯えられている再生水は、地下水溜61に貯えられている地下水によって冷却される。これにより、再生水溜62に貯えられている再生水は、地下水によって冷却がより促進される。
【0028】
第2実施形態では、再生水溜62に貯えられている雨水および冷却排水からなる再生水は、地下水溜61に貯えられている地下水によって冷却される。そのため、地下水の使用量を低減する場合でも、ポンプ原動機11の冷却部36には、地下水によって冷却された温度の低い再生水が供給される。したがって、地下水の使用量を抑えつつ、ポンプ原動機11の十分な冷却を図ることができる。
なお、桶部材60は、金属で形成する例を説明した。しかし、桶部材60は、地下貯水部34に固定する部分を金属で構成し、地下水溜61と再生水溜62とを区画する部分を例えば樹脂などにより袋状に形成してもよい。
【0029】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0030】
例えば、負荷装置としてポンプ原動機11を例に説明したが、負荷装置はポンプ原動機11に限らず、発熱をともなう装置あるいは洗浄を必要とする装置であれば任意に選択することができる。また、第一ポンプ33および第二ポンプ35は、通常の機械的なポンプに代えて、地下井戸32や地下貯水部34へ加圧した空気を供給することにより、この空気の圧力によって地下水や再生水を吐出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
図面中、10は排水ポンプ場、11はポンプ原動機(負荷機器)、15は水供給装置、31は雨水捕集部、32は地下井戸、33は第一ポンプ、34は地下貯水部、35は第二ポンプ、50は水供給制御部、60は桶部材、61は地下水溜、62は再生水溜を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却または洗浄の少なくともいずれか一方を必要とする負荷機器と、
雨水を捕集する雨水捕集部と、
地中に設けられ、地下水脈から湧き出した地下水を貯える地下井戸と、
前記地下井戸から地下水を汲み上げる第一ポンプと、
地中に設けられ、前記雨水捕集部で捕集した雨水、および前記負荷機器を冷却した冷却排水を貯える地下貯水部と、
前記地下貯水部から水を汲み上げる第二ポンプと、
前記第一ポンプで汲み上げた前記地下井戸の地下水、および前記第二ポンプで汲み上げた前記地下貯水部の水を前記負荷機器に供給するとともに、前記負荷機器を冷却した冷却排水の少なくとも一部を前記地下貯水部へ送る水供給制御部と、
を備える水供給装置。
【請求項2】
前記地下貯水部は、地下水脈から捕集した地下水が貯えられる地下水溜と、前記雨水捕集部で捕集した雨水および前記負荷機器を冷却した冷却排水を貯える再生水溜とを区画する桶部材を有し、
前記再生水溜に貯えられている再生水を、前記桶部材を経由して前記地下水溜に貯えられている地下水によって冷却する請求項1記載の水供給装置。
【請求項3】
前記水供給制御部は、前記負荷機器を冷却または洗浄するとき、冷却または洗浄の用途に基づいて、前記地下井戸に貯えられている地下水または前記地下貯水部に貯えられている再生水のいずれを優先して前記負荷機器へ供給するかを判断する請求項1または2記載の水供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−26087(P2012−26087A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162768(P2010−162768)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)