説明

水内包粒子、その製造方法および用途

【課題】 可燃性が低く、発泡剤として作用する水の揮散が長期間保管しても抑制され、基材の軽量化を図ることができる水内包粒子、その製造方法および用途を提供する。
【解決手段】 水内包粒子は、水を含有する吸水性樹脂からなるコア部と、前記コア部を被覆し金属を含む架橋層とから構成される。水内包粒子の製造方法は、金属を含有する有機化合物で、水を含有する吸水性樹脂からなる原料粒子Bの表面に架橋層を形成する工程Cを含む製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水内包粒子、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、ペンタン、ヘキサン等の低沸点炭化水素が発泡剤としてその内部に封入された構造を有する熱膨張性マイクロカプセルは、古くから知られている(特許文献1参照)。これらの熱膨張性マイクロカプセルは、その発泡剤が低沸点炭化水素であるために、可燃性が高く、取扱いに注意が必要である。また、熱膨張性マイクロカプセルは膨張する際、低沸点炭化水素が外殻を透過して外に漏れだすことがあるので、大気汚染が懸念される。
最近、発泡剤としての水を含んだ吸収性樹脂からなるコア部と、熱可塑性樹脂からなるシェルとから構成された熱膨脹マイクロスフェアー(特許文献2参照)が開発されている。しかし、この熱膨脹マイクロスフェアーにおいて、水は熱可塑性樹脂を透過しやすいために、内包された水は保持されにくく、加熱膨張する前に抜け出てしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3615972号明細書
【特許文献2】特開2009−67898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、可燃性が低く、発泡剤として作用する水の揮散が長期間保管しても抑制され、基材の軽量化を図ることができる水内包粒子、その製造方法および用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水を含んだ吸収性樹脂の表面に金属を含む架橋層を形成することによって、上記課題が達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明にかかる水内包粒子は、水を含有する吸水性樹脂からなるコア部と、前記コア部を被覆する金属を含む架橋層とから構成される。
【0006】
この水内包粒子が以下の(1)〜(4)に示す要件を少なくとも1つ満足すると好ましい。
(1)前記金属が周期表3〜14族に属する。
(2)前記コア部がカルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる吸水性樹脂からなり、前記架橋層が金属を含有する有機化合物と前記カルボキシル基との反応によって形成される層である。
(3)前記金属の重量割合が前記水内包粒子の乾燥粒子の重量に対して0.05〜15重量%である。
(4)含水量が粒子全体の5〜40重量%である。
【0007】
本発明にかかる水内包粒子の製造方法は、金属を含有する有機化合物で、水を含有する吸水性樹脂からなる原料粒子Bの表面に架橋層を形成する工程Cを含む製造方法である。
この水内包粒子の製造方法が以下の(A)〜(D)に示す要件を少なくとも1つ満足すると好ましい。
【0008】
(A)前記吸水性樹脂がカルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる樹脂である。
(B)前記金属を含有する有機化合物が油溶性であり、前記金属が周期表3〜14族に属する。
(C)前記金属を含有する有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物である。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜14族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
(D)前記工程Cに先立ち、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して、得られた原料粒子Aを単離する工程Aと、前記原料粒子Aに水を含ませて前記原料粒子Bを調製する工程Bとを行う。
本発明の組成物は、上記水内包粒子および/または上記製造方法で得られる水内包粒子と、基材成分とを含む組成物である。
本発明の成形物は、上記組成物を成形してなる成形物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水内包粒子は、可燃性が低く、発泡剤として作用する水の揮散が長期間保管しても抑制されており、基材の軽量化を図ることができる。
本発明の水内包粒子の製造方法は、上記水内包粒子を効率よく製造することができる。
【0010】
本発明の組成物は、上記水内包粒子を含有するので、可燃性が低く、発泡剤として作用する水の揮散が長期間保管しても抑制されており、基材の軽量化を図ることができる。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、製造時に安全性が高く、軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】水内包粒子の一例を示す概略図である。
【図2】発泡シートの成形温度と真比重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔水内包粒子の製造方法〕
本発明の水内包粒子の製造方法は、金属を含有する有機化合物で水を含有する吸水性樹脂からなる原料粒子Bを表面処理する工程Cを含む製造方法である。以下では、簡単のために、「金属を含有する有機化合物」を「金属含有有機化合物」ということがある。
本発明の水内包粒子の製造方法は、前記工程Cに先立って、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して、得られた原料粒子Aを単離する工程Aと、前記原料粒子Aに水を含ませて前記原料粒子Bを調製する工程Bとをさらに含むものであってもよい。
以下では、工程Aおよび工程Bについて先に説明した上で、工程Cを詳しく説明する。
【0013】
(工程A)
工程Aは、重合性成分を重合して原料粒子Aを得て、単離する工程である。
重合性成分は、カルボキシル基含有単量体を必須とする。カルボキシル基含有単量体は、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時に中和されていてもよい。上記カルボキシル基含有単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がさらに好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0014】
重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、水が十分に保持され、その揮散抑制や、工程Cで用いる金属含有有機化合物に対する高い反応性という観点からは、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。カルボキシル基含有単量体の重量割合の上限は100重量%である。カルボキシル基含有単量体の重量割合が10重量%未満であると、水の十分な保持性や、その揮散抑制の効果が十分に得られないことがある。
重合性成分は、カルボキシル基含有単量体を必須成分とし、その他の単量体成分を1種または2種以上併用してもよい。その他の単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0015】
重合性成分は、上記に示すカルボキシル基含有単量体やその他の単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合することにより、3次元網目構造を形成し水の十分な保持性を高めることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
架橋剤の量については、特に限定はないが、架橋剤の重量割合が小さいと、吸水性樹脂の架橋密度が低くなり、架橋によって形成される3次元の網目が大きくなるため、水の吸収力が高まる。しかし、架橋剤の重量割合が小さすぎるとゲル強度が保てなくなるという観点からは、重合性成分に占める架橋剤の重量割合は、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%である。
工程Aにおいては、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
【0017】
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートおよびジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−オクチルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、たとえば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。上記重合開始剤のなかでも、パーオキシジカーボネートが好ましい。
【0018】
これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
重合開始剤の量については、特に限定はないが、前記重合性成分100重量部に対して、0.3〜8重量部であると好ましい。
【0019】
工程Aでは、連鎖移動剤等の存在下で重合してもよい。
工程Aでは、通常、水性分散媒中で重合が行われる。水性分散媒中で重合性成分等を分散させ、重合性成分を含む微細な液滴を形成させ、重合させることによって、粒子状の原料粒子Aを効率良く製造することができる。
【0020】
水性分散媒は、イオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0021】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水性分散媒中に溶出した重合性成分の重合抑制効果が十分に得られないことがある。一方、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下し、原料である重合性成分の残存量が増加することがある。
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
【0022】
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0023】
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤および/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
【0024】
工程Aでは、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
工程Aでは、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に乳化分散させる。
【0025】
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の原料粒子Aの沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0026】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。
原料粒子Aは、以上説明した工程Aで得られると好ましいが、その調製方法を限定するわけではない。
【0027】
このようにして、工程Aで得られた重合液に対して、通常の分離方法、たとえば、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作により、原料粒子Aを水性分散媒から分離する。さらに、分離後に得られた原料粒子Aの含液ケーキを気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作により、原料粒子Aを乾燥状態で得ることができる。
乾燥後の原料粒子Aの水分は特に限定されないが、工程Bにおける有機溶媒中での分散性を高め、水を均一に吸収させる観点からは、原料粒子A全体の20%以下であることが好ましい。
【0028】
原料粒子Aの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が100μm超であると、基材と水内包粒子とを含む組成物を成形して得られる成形物の強度が低下することがある。一方、平均粒子径が1μm未満であると、得られる水内包粒子の表面積が大きくなるため、水の長期間の保持性が低下することがあり、また、基材と水内包粒子とを含む組成物中で水内包粒子の分散性が低下することがある。
原料粒子Aは、上記に示した工程A以外にも、たとえば、溶液重合、乳化重合、分散重合等の公知の重合法や、吸水性樹脂架橋物をジェットミル等の装置等により機械的に粉砕するという方法等で得ることもできる。
【0029】
(工程B)
工程Bは、工程Aで単離された原料粒子Aに水を含ませて原料粒子Bを調製する工程である。
工程Bは、たとえば、原料粒子Aおよび水を有機溶媒中で混合して行われる。
【0030】
有機溶媒としては、特に限定はないが、水と相溶および/または混和しない有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、たとえば、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;1−ノナナール、メチルエチルケトン等のケトン;サリチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、オクタナール等のアルデヒド;ヘプタン酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、サリチル酸メチル等のエステル;炭化水素等が挙げられるが、その中でも炭化水素がさらに好ましい。
炭化水素としては、たとえば、イソブタン、シクロブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン(2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2―ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン)、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン(2,2,3−トリメチルブタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2−メチルヘキサン)、3−エチルペンタン、3−メチルヘキサン、1,1,2,2−テトラメチルシクロプロパン、イソオクタン、オクタン、デカン、テトラデカン、アイコサン、イソブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、ノルマルペンチルシクロペンタン、tert−ブチルシクロヘキサン、trans−1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサン、ウンデカン、アミルシクロヘキサン、ドデカン、イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、2−メチルウンデカン)、3−メチルウンデカン、シクロドデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、4−メチルドデカン、ペンチルシクロヘキサン、テトラデカン、ノルマルオクチルシクロヘキサン、ペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、ヘキサデカン、7−メチルトリデカン、イソヘキサデカン(2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナンヘキサデカン)、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼン、フラン、ピロール、シクロペンタジエン、1−メチルエチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、オクタデカン、デシルシクロヘキサン、ヘプタデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、イソエイコサン等を挙げることができる。
【0031】
これらの炭化水素でも、沸点が120℃以上のものが、工程Cにおける処理温度よりも高い沸点を有する炭化水素が望まれるため好ましい。沸点が120℃以上の炭化水素としては、たとえば、オクタン、デカン、テトラデカン、アイコサン、イソブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、ノルマルペンチルシクロペンタン、tert−ブチルシクロヘキサン、trans−1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサン、ウンデカン、アミルシクロヘキサン、ドデカン、イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、2−メチルウンデカン)、3−メチルウンデカン、シクロドデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、4−メチルドデカン、ペンチルシクロヘキサン、テトラデカン、ノルマルオクチルシクロヘキサン、ペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、ヘキサデカン、7−メチルトリデカン、イソヘキサデカン(2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナンヘキサデカン)、オクタデカン、デシルシクロヘキサン、ヘプタデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、イソエイコサン、エチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
これらの炭化水素でも、炭素数9未満の炭化水素では、原料粒子Aに含浸してしまい、含浸した有機溶媒が発泡剤として作用することによって可燃性の問題が生じることがあるので、沸点が120℃以上で、且つ、炭素数9以上の炭化水素がよい。このような炭化水素としては、たとえば、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、イソドデカン、アイコサン、7−メチルトリデカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、ペンタデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0032】
工程Bにおける原料粒子Aの添加量は特に限定はないが、有機溶媒100重量部に対し、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜35重量部である。
工程Bで用いられる水のpHは、特に限定はないが、水の吸収効率向上、および、後述する工程Cにおける金属含有有機化合物との反応性の観点から、好ましくは3〜12、さらに好ましくは5〜12、特に好ましくは8〜10である。水のpHが3未満の場合、工程Bの時間が長くなることがある。一方、水のpHが12超であると、金属含有有機化合物との反応性が低下することがある。
【0033】
工程Bで用いられる水のpHは、たとえば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質や、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の酸性物質を用いて調整されていてもよい。
水の添加量は、原料粒子A100重量部に対して5〜65重量部が好ましい。水の添加量が5重量部未満の場合、理論量通りの含水率が得られないことがある。一方、水の添加量が65重量部を超える場合、得られる原料粒子B同士が引っ付いて合一してしまうことがあるため、次の工程Cで得られる水内包粒子表面に均一に架橋層が形成されず、水の揮散が十分に抑制されないことがある。
【0034】
原料粒子Bの調製工程は、攪拌下で行われることが好ましく、その攪拌は、たとえば、原料粒子Aの沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
工程Bの所要時間については、特に限定はないが、原料粒子Aと水とが接触し、原料粒子Aが徐々に水を含浸していくので、好ましくは15分間以上、さらに好ましくは30分間以上である。工程Bの所要時間が15分間より短時間であると、十分に水を含浸しないことがある。
工程Bの処理温度については特に限定はないが、水が液体状態であることが好ましいことから、好ましくは5〜80℃、より好ましくは15〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃である。
【0035】
(工程C)
工程Cは、金属含有有機化合物で原料粒子Bの表面に架橋層を形成する工程である。原料粒子Bは、水を含有する吸水性樹脂からなる。
この吸水性樹脂が、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる樹脂であると好ましい。なお、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分については、既に上記で説明したとおりである。
【0036】
原料粒子Bのカルボキシル基は、その一部または全部が中和された状態であるカルボキシレート基であってもよい。
原料粒子Bの含水率について、特に限定はないが、好ましくは粒子全体の5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。原料粒子Bの含水率が5重量%未満の場合、基材の軽量化が十分に行えないことがある。一方、原料粒子Bの含水率が40重量%を超える場合、原料粒子B同士が引っ付いて合一してしまうことがあるため、得られる水内包粒子表面に均一に架橋層が形成されず、水の揮散が十分に抑制されないことがある。
【0037】
原料粒子Bの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が100μm超であると、基材と水内包粒子とを含む組成物を成形して得られる成形物の強度が低下することがある。一方、平均粒子径が1μm未満であると、得られる水内包粒子の表面積が大きくなるため、水の長期間の保持性が低下することがあり、また、基材と水内包粒子とを含む組成物中で水内包粒子の分散性が低下することがある。
原料粒子Bとしては、工程Aおよび工程Bを経て製造されたものが、その平均粒子径や含水率の調整を容易にできるために好ましい。しかし、原料粒子Bの製造方法は、上記工程Aおよび工程Bに限定されるものではなく、たとえば、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる吸水性樹脂の塊を粉砕して粒子化する製造方法等でもよい。ここで、吸水性樹脂中のカルボキシル基は、アルカリ性物質等で一部または全部が中和されていてもよい。
【0038】
金属含有有機化合物は、水溶性および油溶性のいずれでもよいが、原料粒子Bの表面に架橋層を形成する効率を高めるためには、金属含有有機化合物が油溶性であると好ましい。ここで、油溶性とは、トルエン100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
金属含有有機化合物に含まれる金属は、周期表3〜14族に属する金属であれば特に限定はなく、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム等の3族金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4族金属;バナジウム、ニオビウム、タンタル等の5族金属;クロム、モリブデン、タングステン等の6族金属;マンガン、レニウム等の7族金属;鉄、ルテニウム、オスミウム等の8族金属;コバルト、ロジウム等の9族金属;ニッケル、パラジウム等の10族金属;銅、銀、金等の11族金属;亜鉛、カドミウム等の12族金属;アルミニウム、ガリウム等の13族金属;スズ、鉛等の14族金属等を挙げることができる。これらの金属は1種または2種以上を併用してもよい。上記金属の分類は、社団法人日本化学会発行の「化学と教育」、54巻、4号(2006年)の末尾に綴じこまれた「元素の周期表(2005)」(2006日本化学会原子量小委員会)に基づいている。
【0039】
これらの金属のうちでも、遷移金属(3〜11族に属する金属)が好ましく、4〜5族に属する金属がさらに好ましい。
遷移金属としては、たとえば、スカンジウム、イッテルビウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀、金等が挙げられる。その中でも、スカンジウム、イッテルビウム、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオビウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、銀等の周期表4〜5周期に属する遷移金属が好ましく、チタン、ジルコニウムおよびバナジウム等であると、水の揮散が十分に抑制されるのでさらに好ましい。
【0040】
上記金属の原子価数については、特に限定はないが、1金属原子当りの架橋効率が高いという点で、2〜5価が好ましく、3〜5価がさらに好ましく、4〜5価が特に好ましい。原子価数が1価であると、水内包粒子の耐溶剤性が低くなることがある。また、6価以上であると架橋効率が下がることがあり好ましくない。
金属含有有機化合物を構成する金属種およびその原子価数の組合せとしては、耐熱性向上の観点からは、亜鉛(II)、カドミウム(II)、アルミニウム(III)、バナジウム(III)、イッテルビウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉛(IV)、セリウム(IV)、バナジウム(V)、ニオビウム(V)、タンタル(V)等が好ましい。
【0041】
前記金属含有有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物であると好ましい。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜14族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
まず、一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物を詳しく説明する。
【0042】
−一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物−
一般式(1)で示される金属原子−酸素原子間の結合(M−O間の結合)は、イオン結合、共有結合(配位結合を含む)のいずれであってもよいが、共有結合が好ましい。
上記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物が、金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物であると、水の揮散に対する高い抑制効果を水内包粒子に付与することができる。以下では、簡単のために、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合」を「MO結合」と記載し、「金属−アルコキシド結合および/または金属−アリールオキシド結合を有する化合物」を「MO化合物」と記載することがある。
【0043】
MO化合物は、金属−アルコキシド結合または金属−アリールオキシド結合を少なくとも1つ有する化合物である。MO化合物は、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)、金属−OCON結合(金属−カーバメート結合)、金属=O結合(金属オキシ結合)や、以下の一般式(2)(式中、R、Rは互いに同一であっても、相異していても良い有機基である。)に示した金属−アセチルアセトナート結合等の、MO結合ではない金属に対する結合をさらに有していてもよい。Mは金属を示す。
【0044】
【化1】

【0045】
上記でも明らかであるが、MO結合と金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)とは相違する概念であって、金属−O−C=O結合(金属−アシレート結合)にはMO結合はない。
MO化合物は、たとえば、以下に示す化合物(1)〜化合物(4)の4つに分類される。
【0046】
化合物(1):
化合物(1)は、金属アルコキシドおよび金属アリールオキシドであり、たとえば、以下の化学式(A)で示される化合物である。
M(OR) (A)
(但し、Mは金属を示し;nは金属Mの原子価数であり;Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、n個あるそれぞれの炭化水素基は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。)
【0047】
化合物(1)において、M(金属)およびn(原子価数)は上記で説明したとおりである。
また、Rは、脂肪族であっても芳香族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、n−デシル基、トリデシル基、ステアリル基、シクロペンチル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0048】
化合物(1)としては、たとえば、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛等の亜鉛(II)アルコキシド;カドミウムジメトキシド、カドミウムジエトキシド等のカドミウム(II)アルコキシド;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウム(III)アルコキシド;バナジウムトリエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシド等のバナジウム(III)アルコキシド;イッテルビウムトリエトキシド、イッテルビウムトリイソプロポキシド等のイッテルビウム(III)アルコキシド;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシドチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラフェノキシチタン等のチタン(IV)アルコキシド;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)ジルコニウム、テトラフェノラートジルコニウム等のジルコニウム(IV)アルコキシ;テトラノルマルプロポキシ鉛、テトラノルマルブトキシ鉛等の鉛(IV)アルコキシド;テトラメトキシセリウム、テトラエトキシセリウム、テトライソプロポキシセリウム、テトラノルマルプロポキシセリウム、テトラノルマルブトキシセリウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)セリウム、テトラフェノラートセリウム等のセリウム(IV)アルコキシド;ニオビウムペンタメトキシド、ニオビウムペンタエトキシド、ニオビウムペンタブトキシド等のニオビウム(V)アルコキシド;トリメトキシオキシバナジウム、トリエトキシオキシバナジウム、トリ(n−プロポキシ)オキシバナジウム、イソプロポキシオキシバナジウム、トリ(n−ブトキシド)オキシバナジウム、イソブトキシオキシバナジウム等のアルコキシオキシバナジウム(V);その他、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属の金属アルコキシド等が挙げられる。
上記および以下に示す金属含有有機化合物の例示のうちで、化合物名の末尾に「」印があるものは、油溶性である。
【0049】
化合物(2):
化合物(2)は上記化合物(1)のオリゴマーおよびポリマーであり、一般には化合物(1)を縮合して得られるものである。化合物(2)は、たとえば、以下の化学式(B)で示される化合物である。化学式(B)では、部分的に加水分解した構造を示している。
RO[−M(OR)O−]x−1R (B)
(但し、MおよびRは化学式(A)と同じ;xが2以上の整数である。)
【0050】
化合物(2)の分子量については、特に限定はないが、数平均分子量が好ましくは200〜5000、特に好ましくは300〜3000である。数平均分子量が200未満は架橋効率が低くなることがある。一方、数平均分子量が5000超では架橋度合いのコントロールが難しくなることがある。
化合物(2)としては、たとえば、化学式(B)でx=2〜15を満足するチタンアルコキシポリマーやチタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
【0051】
化合物(2)の具体例としては、たとえば、ヘキサメチルジチタネート、オクタメチルトリチタネート等のチタンメトキシポリマー;ヘキサエチルジチタネート、オクタエチルトリチタネート等のチタンエトキシポリマー;ヘキサイソプロピルジチタネート、オクタイソプロピルトリチタネート、ヘキサノルマルプロピルジチタネート、オクタノルマルプロピルトリチタネート等のチタンプロポキシポリマー;ヘキサブチルジチタネート、オクタブチルトリチタネート等のチタンブトキシポリマー;ヘキサフェニルジチタネート、オクタフェニルトリチタネート等のチタンフェノキシポリマー;ポリヒドロキシチタンステアレート(化学式:i−CO〔Ti(OH)(OCOC1735)O〕−i−C等のアルコキシチタン−アシレートポリマー;チタンメトキシダイマー、チタンエトキシダイマー、チタンブトキシダイマー、チタンフェノキシダイマー等、チタンアルコキシダイマー等が挙げられる。
【0052】
化合物(3):
化合物(3)は、MO結合を有する金属キレート化合物である。化合物(3)は、MO結合を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、ケト基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の電子供与性基を有する配位子化合物がMに配位した金属キレート化合物である。配位子化合物には、電子供与性基が1個以上あればよいが、2〜4個あるものが好ましい。化合物(3)には、MO結合、Mおよび配位子化合物が複数個あってもよい。
配位子化合物としては、特に限定はないが、たとえば、アルカノールアミン類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸(塩)類、β−ジケトン、β−ケトエステル、ジオール類およびアミノ酸類等が挙げられる。
【0053】
アルカノールアミン類としては、たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等が挙げられる。
カルボン酸類としては、たとえば、酢酸等が挙げられる。
【0054】
β−ケトエステルとしては、たとえば、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
ジオール類としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0055】
配位子化合物がアルカノールアミン類である化合物(3)としては、たとえば、チタンテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、チタンテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシチタントリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシセリウムビス(ジエタノールアミネート)、セリウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシセリウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシセリウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシセリウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
【0056】
配位子化合物がヒドロキシカルボン酸(塩)類である化合物(3)としては、たとえば、チタンラクテート、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシチタンビス(グリコレート)、チタンラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムラクテート、モノヒドロキシジルコニウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシジルコニウムビス(グリコレート)、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシジルコニウムキレート化合物;セリウムラクテート、モノヒドロキシセリウムトリス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)モノアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(ラクテート)ジアンモニウム塩、ジヒドロキシセリウムビス(グリコレート)、セリウムラクテートアンモニウム塩等のヒドロキシカルボン酸(塩)−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
【0057】
配位子化合物がβ−ジケトンである化合物(3)としては、たとえば、亜鉛アセチルアセトネート等のアルコキシ亜鉛−β−ジケトンキレート化合物;アルミニウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシアルミニウムキレート化合物;バナジウムアセチルアセトナート等のβ−ジケトン−アルコキシバナジウムキレート化合物;チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジメトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジノルマルプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジブトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)等のβ−ジケトンキレート−アルコキシチタン化合物;ジヒドロキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;ジヒドロキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、セリウムテトラキス(アセチルアセトネート)、トリブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)、ジブトキシセリウムビス(アセチルアセトネート)、モノブトキシセリウムトリス(アセチルアセトネート)等のβ−ジケトン−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシチタンキレート化合物;ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0058】
配位子化合物がβ−ジケトンおよびβ−ケトエステルである化合物(3)としては、たとえば、モノブトキシチタンモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のアルコキシチタン−β−ジケトンおよびβ−ケトエステルキレート化合物;モノブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物;モノブトキシセリウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ジケトンおよびβ−ケトエステル−アルコキシセリウムキレート化合物等が挙げられる。
配位子化合物がジオール類である化合物(3)としては、たとえば、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)等のアルコキシチタン−ジオールキレート化合物等が挙げられる。
化合物(3)は、タンタル、マンガン、コバルト、銅等の金属原子に上記配位子化合物が配位した金属キレート化合物およびその誘導体であってもよい。
【0059】
化合物(4):
化合物(4)はMO結合および金属−アシレート結合をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物である。
化合物(4)は、たとえば、以下の化学式(C)で示される化合物である。
M(OCORn−m(OR) (C)
(但し、M、nおよびRは、化学式(A)と同じ;RはRと同一であっても異なっていてもよい。;mは1≦m≦(n−1)を満足する正の整数である。)
【0060】
化合物(4)は、化学式(C)で示される化合物が縮合して得られるものでもよい。
化合物(4)としては、たとえば、トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシチタン−アシレート化合物;トリブトキシジルコニウムモノステアレート等のアルコキシジルコニウム−アシレート化合物;トリブトキシセリウムモノステアレート等のアルコキシセリウム−アシレート化合物等が挙げられる。
【0061】
−金属アミノ酸化合物−
金属含有有機化合物は、金属アミノ酸化合物であってもよい。金属アミノ酸化合物は、周期表3〜14族に属する金属の塩と、以下に示すアミノ酸類との反応で得られるアミノ酸キレート金属化合物である。
アミノ酸類とは、アミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)を同一分子内に有するアミノ酸のみならず、アミノ基の代りにイミノ基(−NH)を有するプロリンやヒドロキシプロリン等のイミノ酸をも包含する。アミノ酸は、通常α−アミノ酸であるが、β、γ、δまたはω−アミノ酸であってもよい。
【0062】
アミノ酸類は、アミノ酸のアミノ基の水素原子の1つまたは2つが置換されたものや、アミノ酸のアミノ基の窒素とカルボキシル基の酸素でキレート化した錯体等のアミノ酸誘導体をも包含する。
アミノ酸類のpKaは、好ましくは1〜7である。
【0063】
アミノ酸類としては、たとえば、ジヒドロキシメチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、ジヒドロキシプロピルグリシン、ジヒドロキシブチルグリシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、ヒスチジン、トレオニン、グリシルグリシン、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、1−アミノシクロへキサンカルボン酸、2−アミノシクロヘキサンヒドロカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシン、セリン、トレオニン、グリシルグリシンが架橋効率という観点において好ましい。
上記アミノ酸類と反応する周期表3〜14族に属する金属の塩としては、塩基性塩化ジルコニルが好ましい。金属アミノ酸化合物の市販品としては、たとえば、オルガチックスZB−126(松本製薬工業社製)等が挙げられる。
【0064】
上記金属含有有機化合物の中でも、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)等であると、水の揮散が十分に抑制され、取扱いが容易であるので好ましい。
工程Cにおいて、金属含有有機化合物のモル比(金属含有有機化合物のモル数/原料粒子Bに含まれるカルボキシル基(カルボキシレート基も含む)のモル数)については、特に限定はないが、好ましくは0.001〜0.5、より好ましくは0.002〜0.3、さらに好ましくは0.003〜0.2、特に好ましくは0.004〜0.1、最も好ましくは0.005〜0.05である。金属含有有機化合物のモル比が0.001未満では、水の揮散が十分に抑制されなくなることがあり、基材の軽量化を図ることが困難になるおそれがある。一方、金属含有有機化合物のモル比が0.5超では、架橋層が不均一に形成されたり、水内包粒子の含水率が低下することがある。
【0065】
工程Cは、原料粒子Bと金属含有有機化合物とを接触させ、その表面に架橋層を形成させる工程であれば、特に限定はないが、原料粒子Bおよび金属含有有機化合物を前述の有機溶媒中で混合して行うと好ましい。
工程Cを有機溶媒中で行う場合、原料粒子B、金属含有有機化合物および有機溶媒等を含む分散混合物に対する原料粒子Bの重量割合は、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%である。原料粒子Bの重量割合が0.5重量%未満では、架橋層を形成する効率が低くなることがある。一方、原料粒子Bの重量割合が50重量%超では、架橋層が不均一に形成されることがある。
【0066】
分散混合物中の金属含有有機化合物の重量割合は、特に限定はないが、架橋層が均一に形成されるためには、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。金属含有有機化合物の重量割合が0.1重量%未満では、架橋層の形成効率が低くなることがある。一方、金属含有有機化合物の重量割合が20重量%超では、架橋層が不均一に形成されたり、水内包粒子の含水率が低下することがある。
工程Cは工程Bに引き続いて行うとよく、すなわち、工程Bで得られた原料粒子Bおよび有機溶媒を含む反応液に、金属含有有機化合物を添加して、水内包粒子を製造してもよい。この場合は、反応工程を簡略化できる。また、工程Cを有機溶媒中で行うことになるので、原料粒子Bの表面に架橋層を形成する効率を高めるためには、金属含有有機化合物が油溶性であると好ましい。
【0067】
工程Cは、上記で説明した以外の方法で行ってもよく、たとえば、湿化した原料粒子B(wetケーキ状の原料粒子B)表面に架橋層を形成する方法等を挙げることができる。この方法としては、たとえば、原料粒子Bと、金属含有有機化合物と、有機溶媒とを(均一に)含み、原料粒子Bの重量割合が、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である混合物を準備し、気流乾燥、減圧加熱乾燥等の操作を行って有機溶媒を除去して水内包粒子を得る方法等を挙げることができる。
工程Cにおける処理温度については特に限定はないが、好ましくは30〜180℃、さらに好ましくは40〜150℃、特に好ましくは50〜120℃の範囲である。この処理温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。
【0068】
工程Cにおける圧力については特に限定はないが、水の蒸発を抑制する観点から、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPa、特に好ましくは0.2〜2.0MPaの範囲である。
工程Cでは、通常、吸引濾過、遠心分離、遠心濾過等の操作後、表面に架橋層を形成した水内包粒子を有機溶媒から分離し、水内包粒子を得ることができる。
【0069】
〔水内包粒子およびその用途〕
以下、水内包粒子およびその用途について詳しく説明する。
本発明の水内包粒子は、たとえば、図1に示すように、コア部1と、前記コア部1を被覆し金属を含む架橋層2とから構成される。金属は、通常、イオン結合や共有結合(配位結合を含む)を形成した状態で含まれる。また、金属は、1〜6価の金属イオンの状態で架橋層2に含まれ、0価の単体状態ではないのがよい。コア部1は水を含有する吸水性樹脂から構成され、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られると好ましい。また、架橋層2は、金属を含有する有機化合物と前記カルボキシル基との反応によって形成される層であると好ましい。
【0070】
本発明の水内包粒子の構造は、前述の原料粒子Bの構造と比較して、架橋層2を除いて、外見上、大差はない。しかし、その諸物性には大差がある場合がある。
本発明の水内包粒子は、たとえば、上記で説明した工程Cを含む製造方法(好ましくは工程Bおよび工程Cを含む製造方法、さらに好ましくは工程A、工程Bおよび工程Cを含む製造方法)によって製造することができるが、これらの製造方法に限定されない。上記製造方法で既に説明した事項であって、水内包粒子および用途の説明にも関する事項については、冗長を避けるために以下では特段説明しないこともある。その場合は、製造方法の説明をそのまま援用するものとする。
【0071】
水内包粒子の乾燥粒子の重量に対する金属の重量割合は、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜14重量%、さらに好ましくは1.5〜10重量%である。金属の重量割合が0.05重量%未満では水の揮散の抑制が不十分になることがある。一方、金属の重量割合が15重量%超では、水内包粒子の含水率が低下することがある。ここで、乾燥粒子とは、水内包粒子を80℃の雰囲気下で48時間乾燥して得られる粒子である。
水内包粒子に含まれる金属の詳しい説明は、金属含有有機化合物を構成する金属の説明と同じである。周期表3〜14族に属する金属の中でも、好ましくは遷移金属であり、さらに好ましくは周期表4〜5族に属する金属である。
【0072】
水内包粒子の含水率について、特に限定はないが、好ましくは粒子全体の5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。水内包粒子の含水率が5重量%未満の場合、基材の軽量化が十分に行えないことがある。一方、水内包粒子の含水率が40重量%超の場合、基材の軽量化は図れるが、強度が低下することがある。
水内包粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。平均粒子径が100μm超であると、基材と水内包粒子とを含む組成物を成形して得られる成形物の強度が低下することがある。一方、平均粒子径が1μm未満であると、得られる水内包粒子の表面積が大きくなるため、水の長期間の保持性が低下することがあり、また、基材と水内包粒子とを含む組成物中で水内包粒子の分散性が低下することがある。
【0073】
本発明の組成物は、本発明の水内包粒子および/または本発明の水内包粒子の製造方法で得られる水内包粒子と、基材成分とを含む。
基材成分としては特に限定はないが、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの基材成分と水内包粒子とを混合することによって調製することができる。
【0074】
本発明の組成物の用途としては、たとえば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
本発明の組成物が、特に、水内包粒子とともに、基材成分として、比較的低い融点を有する化合物および/または熱可塑性樹脂(たとえば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー)を含む場合は、樹脂成形用マスターバッチとして用いることができる。この場合、この樹脂成形用マスターバッチ組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形等に利用され、樹脂成形時の気泡導入に好適に用いられる。樹脂成形時に用いられる樹脂としては、上記基材成分から選択されれば特に限定はないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等、およびそれらの混合物などが挙げられる。また、ガラス繊維やカーボンファイバーなどの補強繊維を含有していてもよい。
【0075】
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、たとえば、成形品や塗膜等の成形物等を挙げることができる。本発明の成形物では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
【0076】
本発明の成形物は、同一基材成分のみから構成された成形物と比較して軽量化がなされている。この軽量化は、本発明の組成物に含まれる水内包粒子のコア部にある水が、成形時に気化し水内包粒子の外部に漏れ出て、その結果として、基材成分中の水内包粒子の周囲に空間が形成されて体積が増加し、同時に水内包粒子の重量が減少するので、成形物は軽量化されることになる。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明の水内包粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものとする。
【0078】
〔平均粒子径の測定〕
測定装置として、日機装株式会社のマイクロトラック粒度分布計(型式9320−HRA)を使用し、D50値を粒子の平均粒子径とした。
【0079】
〔水内包粒子の含水率の測定〕
水内包粒子の含水率を、測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。また、水内包カプセルを環境温度25℃にて1ヶ月間放置した後の含水率の測定を行った。
【0080】
〔真比重の測定〕
試料の真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下において蒸留水を用いた液浸法(アルキメデス法)による以下の測定方法で測定した。
具体的には、容量100mlのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB)を秤量した。秤量したメスフラスコに蒸留水をメニスカスまで正確に満たした後、蒸留水100mlの充満されたメスフラスコの重量(WB)を秤量した。
また、容量100mlのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50mlの塩化ビニル樹脂を充填し、塩化ビニル樹脂の充填されたメスフラスコの重量(WS)を秤量した。そして、塩化ビニル樹脂の充填されたメスフラスコに、蒸留水を気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS)を秤量した。そして、得られたWB、WB、WS、WSおよびWSを下式に導入して、塩化ビニル樹脂の真比重(d)を計算した。
d={(WS−WS)×(WB−WB)/100}/{(WB−WB)−(WS−WS)}
【0081】
(実施例1)
〔工程A〕
イオン交換水680gに塩化ナトリウム205gを溶解し、次いで、ポリビニルピロリドン4.1g、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ30g、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン0.5gを添加し、硫酸を用いてpH2.8〜3.2に調整して、水性分散媒を調製した。
メタクリル酸200g、1,9−ノナンジオールジアクリレート2g、有効成分50%のジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート含有液14gを混合して、油性混合物を調製した。
水性分散媒および油性混合物を混合し、得られた混合液をクレアミクス(エム・テクニック社製)により分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で15時間重合した。得られた重合液を濾過し、脱液した後、乾燥を行って原料粒子Aを得た。
【0082】
〔工程B〕
有機溶媒であるヘキサデカン250gに原料粒子Aを30g加え、T.K ホモディスパー 2.5型(プライミクス社)にて攪拌回転数700rpmで分散させた。得られた分散液にpH=9である水(添加水)10.5gを添加し、30分間攪拌して、原料粒子Aに水を含ませて(中和膨潤して)原料粒子Bを調製した。
【0083】
〔工程C〕
上記で得られた原料粒子Bが分散したヘキサデカンに、金属含有有機化合物である有効成分99%のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンを2g添加した。得られた混合液を加圧反応器に移し、70℃で3時間加熱して、金属含有有機化合物で原料粒子Bの表面に架橋層を形成した。得られた反応液を濾過にて脱液し、ジエチルエーテルにより洗浄を2回程度行い、さらに、ヘキサデカンの洗浄を行って水内包粒子を得た。
得られた水内包粒子の含水率およびその1カ月後の含水率を測定した。さらに、この水内包粒子を80℃の雰囲気下で48時間乾燥して乾燥粒子を得た。この乾燥粒子についてICP質量分析を行い、乾燥粒子に含まれる金属の重量割合を計算した。これらの結果を表1に示す。
【0084】
〔水内包粒子の評価〕
塩化ビニル樹脂(ベストリット社、E−701)900g、炭酸カルシウム(備北粉化工業 BF−200)850g、フタル酸ジイソノニル1500gからなるPVCペーストを準備した。次いで、水内包粒子10gをPVCペースト90gに添加し、T.K ホモディスパー2.5型(プライミクス社)にて攪拌回転数700rpmで10分間分散後、0.3mm厚さで塗布してグリーンシートを調製した。得られたグリーンシートを、それぞれ100℃、110℃、120℃、130℃および140℃の成形温度に設定したオーブンで20分間加熱して、5枚の発泡シートを得て、それぞれの真比重を測定した。表1には成形温度120℃で20分間加熱して得られた発泡シートの真比重を代表値として示す。
また、実施例1で成形温度を変えて得られた5枚の発泡シートの真比重と、その成形温度とをプロットして、発泡シートの成形温度と真比重との関係を示すグラフを図1に示す。図1のブランクでは、上記PVCペーストのみから得られたグリーンシートについて測定した。
【0085】
(実施例2〜6)
実施例1で、工程Bで用いる水のpHや、工程Cで使用する金属含有有機化合物である有効成分99%のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタンの添加量を表1に示すように変更する以外は実施例1と同様にして水内包粒子をそれぞれ得た。得られた水内包粒子の含水率、その1カ月後の含水率および水内包粒子の乾燥粒子に含まれる金属の重量割合をそれぞれ求め、結果を表1に示す。
次いで、実施例1と同様にして発泡シートをそれぞれ得て、真比重を測定した。表1には成形温度120℃で20分間加熱して得られた発泡シートの真比重を示す。
また、実施例2〜6のそれぞれにおいて、成形温度を変えて得られた5枚の発泡シートの真比重と、その成形温度とをプロットして、発泡シートの成形温度と真比重との関係を示すグラフを図1に示す。
【0086】
(比較例1)
工程Cを行わない以外は実施例1と同様の製造方法で水内包粒子を得た。得られた水内包粒子の含水率、その1カ月後の含水率および水内包粒子の乾燥粒子に含まれる金属の重量割合をそれぞれ求め、結果を表1に示す。
次いで、実施例1と同様にして発泡シートをそれぞれ得て、真比重を測定した。表1には成形温度120℃で20分間加熱して得られた発泡シートの真比重を示す。
また、比較例1において、成形温度を変えて得られた5枚の発泡シートの真比重と、その成形温度とをプロットして、発泡シートの成形温度と真比重との関係を示すグラフを図1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1〜6では、得られる水内包粒子の吸水率が1ヵ月後であっても高々0.3%しか低下しないのに対して、比較例1ではその10倍の3%も低下している。以上から、本発明の水内包粒子では、発泡剤として作用する水の揮散が長期間保管しても抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0089】
1 コア部
2 架橋層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含有する吸水性樹脂からなるコア部と、前記コア部を被覆し金属を含む架橋層とから構成される、水内包粒子。
【請求項2】
前記金属が周期表3〜14族に属する、請求項1に記載の水内包粒子。
【請求項3】
前記コア部がカルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる吸水性樹脂からなり、前記架橋層が金属を含有する有機化合物と前記カルボキシル基との反応によって形成される層である、請求項1または2に記載の水内包粒子。
【請求項4】
前記金属の重量割合が前記水内包粒子の乾燥粒子の重量に対して0.05〜15重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の水内包粒子。
【請求項5】
含水量が粒子全体の5〜40重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の水内包粒子。
【請求項6】
金属を含有する有機化合物で、水を含有する吸水性樹脂からなる原料粒子Bの表面に架橋層を形成する工程Cを含む、水内包粒子の製造方法。
【請求項7】
前記吸水性樹脂がカルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して得られる樹脂である、請求項6に記載の水内包粒子の製造方法。
【請求項8】
前記金属を含有する有機化合物が油溶性であり、前記金属が周期表3〜14族に属する、請求項6または7に記載の水内包粒子の製造方法。
【請求項9】
前記金属を含有する有機化合物が、下記一般式(1)で示される結合を少なくとも1つ有する化合物および/または金属アミノ酸化合物である、請求項6〜8のいずれかに記載の水内包粒子の製造方法。
M−O−C (1)
(但し、Mは周期表3〜14族に属する金属原子であり、炭素原子Cは酸素原子Oと結合し、酸素原子O以外には水素原子および/または炭素原子のみと結合している。)
【請求項10】
前記工程Cに先立ち、カルボキシル基含有単量体を必須とする重合性成分を重合して、得られた原料粒子Aを単離する工程Aと、前記原料粒子Aに水を含ませて前記原料粒子Bを調製する工程Bとを行う、請求項6〜9のいずれかに記載の水内包粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の水内包粒子および/または請求項6〜10のいずれかに記載の水内包粒子の製造方法で得られる水内包粒子と、基材成分とを含む、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物を成形してなる、成形物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77103(P2012−77103A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220441(P2010−220441)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】