説明

水処理システムおよび水処理装置

【課題】 水処理部内の給水の凍結を防止することができる水処理システムおよび水処理装置を実現する。
【解決手段】 ボイラ4への給水の第一水処理部6および第二水処理部7を備えた水処理システム1であって、給水停止中に前記水処理部6内の給水を循環させる循環手段12を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱機器,水使用機器などの機器への給水の水処理システムおよび水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,温水ボイラ,クーリングタワー,給湯器等の熱機器や、洗浄装置等の水使用機器などの機器へは、給水ライン上に設けられた各種水処理装置により、所定の水処理を行った給水が供給されている。
【0003】
たとえば、ボイラへの給水は、缶体内でのスケール生成や腐食を防止するための水処理が行われている。特許文献1には、前記水処理装置として、イオン交換樹脂を使用する水処理部を備えた軟水化装置と、濾過膜を使用する水処理部を備えた膜濾過装置とを有し、原水を前記軟水化装置で軟水化した後、この軟水を前記膜濾過装置で濾過することにより、原水に含まれる硬度分と非不動態化金属体の腐食促進成分を除去する水処理システムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−290829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冬場などに気温が低下すると、前記水処理部内や配管内に滞留している給水が冷却され、その水温が低下する。このように、給水の水温が低下した場合、とくに寒冷地においては、前記水処理システムが給水停止中のとき,すなわち前記水処理装置が通水状態にないときに、前記水処理部内や配管内の給水が凍結するおそれがある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、水処理部内の給水の凍結を防止することができる水処理システムおよび水処理装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、機器への給水の水処理部を備えた水処理システムであって、給水停止中に前記水処理部内の給水を循環させる循環手段を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、給水停止中には、前記循環手段により、前記水処理部内に滞留している給水を循環させる。これにより、前記水処理部内や配管内の給水が流動して、その凍結が防止される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、給水または前記水処理部からの排水の温度検出手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記温度検出手段の検出値が所定値以下になったときに、前記循環手段により、前記水処理部内に滞留している給水を循環させる。これにより、前記水処理部内や配管内の給水が流動し、その凍結が防止される。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、機器への給水の水処理部を備えた水処理装置であって、前記水処理部を収納する装置筐体内または前記水処理部自体に、発熱手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記発熱手段により、前記装置筐体内または前記水処理部自体が加熱される。これにより、前記水処理部内の給水の凍結が防止される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、水処理部内の給水の凍結を防止することができる。この結果、前記水処理部の故障や破損を防止して、長期間安定して給水を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
まず、この発明の第一実施形態について説明する。この第一実施形態は、機器への給水ライン上に設けられた水処理部により給水の水処理を行う水処理システムであって、給水停止中に前記水処理部内の給水を循環させる循環手段と、給水または前記水処理部からの排水の温度検出手段とを備えている。
【0014】
前記機器としては、蒸気ボイラ,温水ボイラ,クーリングタワー,給湯器などの熱機器を挙げることができる。また、前記機器としては、半導体製造における電子部品,医療器具等の各種洗浄装置などの水使用機器を挙げることができる。
【0015】
前記水処理部としては、給水中の濁質を濾材によって除去する濁質除去部,給水中の次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤を活性炭などの吸着剤によって除去する酸化剤除去部,給水中の硬度分をイオン交換樹脂によって除去する軟水化処理部,給水中の不純物(たとえば、溶存塩類など)をナノ濾過膜や逆浸透膜などの濾過膜によって除去する濾過膜部,給水中の溶存気体(たとえば、溶存酸素)を除去する脱気処理部などを挙げることができる。ただし、前記水処理システムは、これらの前記各水処理部を全て備える必要はなく、原水の水質や要求される処理水の水質を考慮して、組合せおよび配列が適宜選択される。
【0016】
前記循環手段は、前記給水ライン上に設けられた前記各水処理部のうち、最後段の下流側を最前段の上流側と接続する循環水ラインと、最後段の下流側の前記給水ラインに設けられた給水弁と、この給水弁よりも上流側の前記給水ライン内の給水または前記循環水ライン内の給水を加圧する加圧手段とを有している。そして、前記循環手段は、前記水処理システムの給水停止中に、前記給水弁を閉状態にするとともに、前記加圧手段で給水を加圧することによって、前記循環水ライン,この循環水ラインを接続した箇所(上流側と下流側の2箇所)の間の前記給水ラインおよび前記各水処理部内の給水を循環させるよう構成されている。
【0017】
ここで、前記給水弁は、前記水処理システムが給水中のとき、開状態となる一方で、前記水処理システムが給水停止中のとき、閉状態となるよう開閉制御される。また、前記加圧手段は、ポンプなどで構成されている。
【0018】
このような第一実施形態の水処理システムでは、その給水停止中に、前記温度検出手段の検出値が所定値以下となったとき、前記循環手段により、前記各水処理部内の給水を循環させる。具体的には、前記循環手段は、前記給水弁を閉状態にするとともに、前記加圧手段で給水を加圧することによって、前記循環水ライン,この循環水ラインを接続した箇所(上流側と下流側の2箇所)の間の前記給水ラインおよび前記各水処理部内の給水を循環させる。これにより、前記各水処理部内の給水や前記給水ライン内の給水が流動し、その凍結を防止することができる。
【0019】
また、前記水処理システムによれば、給水または前記水処理部からの排水の水温が所定値以下となったときにだけ、前記循環手段により、前記水処理部内の給水を循環させることができる。これにより、前記加圧手段を構成するポンプなどの駆動電力を節約することができる。
【0020】
前記の構成において、前記脱気処理部は、給水中の溶存気体を気体透過膜で脱気する膜式脱気処理部,スプレー塔や充填塔内へ給水を噴霧するとともに、この塔内を減圧して排気する真空式脱気処理部,スプレー塔や充填塔内へ給水を噴霧するとともに、この塔内へ窒素ガスを供給して接触させる窒素置換式脱気処理部などを挙げることができる。
【0021】
ここにおいて、前記脱気処理部を前記膜式脱気処理部とした場合、前記気体透過膜の耐圧性の観点から、通常、前記脱気処理部を最後段に配列する。そして、前記循環水ラインを前記脱気処理部の下流側ではなく、前記脱気処理部とその前段の前記水処理部との間に接続するとともに、この接続箇所の下流側に前記給水弁を設けて給水を循環させる。すなわち、前記脱気処理部内の給水は循環させない。この場合、後述する第三実施形態の水処理装置のように、脱気処理部自体またはこの脱気処理部を収納する装置筐体内に発熱手段を設けることで、前記脱気処理部内の給水の凍結防止を図る。
【0022】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第二実施形態について説明する。以下の説明では、前記第一実施形態と異なる構成について説明する。
【0023】
この第二実施形態の水処理システムでは、前記循環手段は、前記各水処理部ごとに設けられており、前記各水処理部内の給水をそれぞれ独立して循環させるように構成されている。具体的には、前記各循環手段は、前記各水処理部の上流側と下流側とをそれぞれ接続する循環水ラインと、前記各水処理部の下流側の前記給水ラインにそれぞれ設けられた給水弁と、この給水弁よりも上流側の前記各給水ライン内の給水または前記各循環水ライン内の給水をそれぞれ加圧する加圧手段とを有している。そして、前記各循環手段は、前記水処理システムの給水停止中に、前記各給水弁を閉状態にするとともに、前記各加圧手段で給水を加圧することによって、前記各循環水ライン,これらの循環水ラインを接続した箇所(上流側と下流側の2箇所)の間の前記各給水ラインおよび前記各循環手段に対応する前記各水処理部内の給水をそれぞれ循環させるよう構成されている。
【0024】
このような第二実施形態の水処理システムでは、その給水停止中に、前記温度検出手段の検出値が所定値以下となったとき、前記各循環手段により、前記各水処理部内の給水をそれぞれ循環させる。前記各循環手段は、前記各給水弁を閉状態にするとともに、前記各加圧手段で給水を加圧することによって、前記各循環水ライン,これらの循環水ラインを接続した箇所(上流側と下流側の2箇所)の間の前記各給水ラインおよび対応する前記各水処理部内の給水をそれぞれ循環させる。これにより、前記各水処理部内の給水や前記各給水ライン内の給水が流動し、その凍結を防止することができる。
【0025】
ここにおいて、前記脱気処理部を前記膜式脱気処理部とした場合、前記気体透過膜の耐圧性の観点から、通常、前記脱気処理部の下流側の前記給水ラインに前記給水弁のみを設け、前記循環水ラインと前記加圧手段を設けないように構成する。この場合、後述する第三実施形態の水処理装置のように、脱気処理部自体またはこの脱気処理部を収納する装置筐体内に発熱手段を設けることで、前記脱気処理部内の給水の凍結防止を図る。
【0026】
(第三実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理装置の実施の形態,すなわち第三実施形態について説明する。この第三実施形態の水処理装置は、前記機器への給水の水処理部を備えた水処理装置である。この水処理装置としては、給水中の濁質を濾材によって除去する水処理部,すなわち濁質除去部を備えた濁質除去装置,給水中の次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤を活性炭などの吸着剤によって除去する水処理部,すなわち酸化剤除去部を備えた酸化剤除去装置,給水中の硬度分をイオン交換樹脂によって除去する水処理部,すなわち軟水化処理部を備えた軟水化装置,給水中の不純物(たとえば、溶存塩類など)をナノ濾過膜や逆浸透膜などの濾過膜によって除去する水処理部,すなわち濾過膜部を備えた膜濾過装置,給水中の溶存気体(たとえば溶存酸素)を除去する水処理部,すなわち脱気処理部を備えた脱気装置などである。
【0027】
また、前記水処理装置は、たとえば、前記濾過膜部や前記脱気処理部などの水処理部を複数有し、複合された水処理機能を有する装置として構成されていてもよい。
【0028】
前記水処理装置は、装置筐体を有しており、この装置筐体内に前記水処理部が収納されている。そして、前記装置筐体内または前記水処理部自体に、発熱手段が設けられている。この発熱手段は、たとえば前記装置筐体の内面や前記水処理部の外面に装着された発熱体や、前記装置筐体内に配置された給水を加圧するポンプの放熱体(モータの外装ケースに設けられた放熱フィン,モータ軸に接続された放熱ファンなど)を挙げることができる。ここにおいて、前記発熱手段は、前記装置筐体内で加熱された空気の対流が生じるように、前記装置筐体内の下方に配置することが好ましい。
【0029】
このような水処理装置では、前記発熱手段により、前記装置筐体内または前記水処理部自体が加熱され、これによって前記水処理部内の給水の凍結を防止することができる。
【0030】
以上のように、前記各実施形態によれば、水処理部内の給水の凍結を防止することができる。この結果、前記水処理部の故障や破損を防止して、長期間安定して給水を供給することができる。
【実施例】
【0031】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施例)
まず、この発明の第一実施例について説明する。図1は、この発明に係る水処理システムおよび水処理装置の第一実施例の構成を示す概略的な説明図である。
【0032】
図1に示す水処理装置1は、その装置筐体2内に水処理システム3を有している。また、前記水処理装置1は、前記装置筐体2内にボイラ4へ給水を供給する給水ライン5の一部を有している。そして、前記装置筐体2内において、前記給水ライン5には、前記水処理システム3を構成する第一水処理部6および第二水処理部7が上流側からこの順に設けられている。
【0033】
前記給水ライン5の上流側には、水道水,工業用水,地下水などの水源から供給される原水が貯留されている原水タンク(図示省略)が接続されており、前記水処理装置1では、前記原水タンクから供給される原水を、前記第一水処理部6の上流側の前記給水ライン5に設けられたポンプ8で加圧して前記各水処理部6,7へ供給し、ここで水処理を行って処理水を生成するようになっている。そして、前記水処理装置1で生成された処理水は、前記ボイラ4へ供給する給水として、前記給水ライン5上に設けられた給水タンク9内に貯留されるようになっている。
【0034】
ここにおいて、前記各水処理部6,7は、それぞれ濾過膜部10および脱気処理部11である。また、前記水処理システム3は、給水停止中に前記濾過膜部10内の給水を循環させる循環手段12を、前記装置筐体2内に備えている。
【0035】
ここで、前記水処理システム3の構成について詳細に説明する。まず、前記濾過膜部10について説明する。この濾過膜部10は、前記ボイラ4の複数の伝熱管や管寄せ(それぞれ図示省略)を形成する非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉し、また前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する濾過膜モジュール(図示省略)を備え、この濾過膜モジュールにより給水を濾過処理するように構成されている。
【0036】
前記濾過膜モジュールは、具体的には、ナノ濾過膜(NF膜,NF:Nanofiltration)を使用して形成されている。前記ナノ濾過膜は、ポリアミド系,ポリエーテル系などの合成高分子膜であり、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度のもの)の透過を阻止できる液体分離膜である。また、前記ナノ濾過膜は、その濾過機能の点において、分子量が1,000〜300,000程度の物質を濾別可能な限外濾過膜(UF膜)と、分子量が数十程度の物質を濾別可能な逆浸透膜(RO膜)との中間に位置する機能を有する液体分離膜である。ちなみに、前記ナノ濾過膜は、各社から市販されており、容易に入手することができる。
【0037】
前記ナノ濾過膜は、給水中の腐食促進成分を捕捉する。ここで、腐食促進成分について説明すると、この腐食促進成分とは、前記ボイラ4の前記各伝熱管の腐食が発生しやすい部位,とくに内側に水分(ここでは、ボイラ水)が接触し,かつ外側から加熱される前記各伝熱管の内面に作用し、その腐食を促進するものを云い、通常、硫酸イオン,塩化物イオンおよびその他の成分を含んでいる。ちなみに、腐食促進成分として重要なものは、硫酸イオン,塩化物イオンの両者である。ところで、日本工業規格JIS B 8223:1999は、貫流ボイラを含む特殊循環ボイラの腐食を抑制する観点から、これらのボイラにおけるボイラ水の水質に関する各種の管理項目および推奨基準を規定し、その中で、塩化物イオン濃度の基準値を設けている。一方、ボイラ水の硫酸イオン濃度には、言及されていないが、本願出願人において、ボイラ水の水質と腐食との関係を長年研究した結果、ボイラ水に含まれる硫酸イオンが腐食促進成分として前記各伝熱管などに作用していることを確認している。
【0038】
また、前記ナノ濾過膜は、給水中の腐食抑制成分を透過する。腐食抑制成分とは、前記ボイラ4の前記各伝熱管の腐食が発生しやすい部位,とくに内側に水分(ここでは、ボイラ水)が接触し,かつ外側から加熱される前記各伝熱管の内面に作用し、そこに生じる腐食を抑制可能なものを云い、通常、シリカ(すなわち、二酸化ケイ素)を含んでいる。ところで、給水に含まれるシリカは、給水として用いる水道水,工業用水,地下水などにおいて、通常含有されている成分で、一般に、前記各伝熱管におけるスケール生成成分と認識されており、可能な限りその濃度を抑制することが好ましいと考えられている。しかし、本願出願人において、ボイラ水の水質と腐食との関係を長年研究した結果、ボイラ水に含まれるシリカが腐食抑制成分として前記各伝熱管などに作用していることを確認している。
【0039】
前記濾過膜部10では、前記給水ライン5からの給水が一側から流入し、この給水が前記ナノ濾過膜で濾過されて、他側から透過水と濃縮水とが分離されて流出するようになっている。透過水は、前記給水ライン5を流れ、前記脱気処理部11で脱気されて前記給水タンク9内へ流入するようになっている。一方、濃縮水は、その一部が前記濾過膜部10に接続された排水ライン13から系外へ排水され、残部が前記排水ライン13と前記ポンプ8の上流側の前記給水ライン5とを接続する循環水ライン14を流れて、前記給水ライン5へ還流されるように構成されている。
【0040】
つぎに、前記脱気処理部11について説明する。この脱気処理部11は、前記濾過膜部10で濾過処理された透過水に含まれる溶存酸素を機械的に除去するものである。前記脱気処理部11は、複数の中空糸状脱気膜からなる脱気膜モジュール(図示省略)を備え、前記各脱気膜の一側へ透過水を流通させ、他側を真空ポンプなどの真空排気手段により真空吸引することで、透過水中の溶存酸素を脱気する周知構成の膜式脱気処理部である。
【0041】
続いて、前記循環手段12について説明する。この循環手段12は、前記循環水ライン14と、前記濾過膜部10の下流側の前記給水ライン5に設けられた給水弁15と、前記循環水ライン14の接続箇所よりも下流側の前記排水ライン13に設けられた排水弁16と、前記循環水ライン14の接続箇所と前記濾過膜部10の間の前記給水ライン5に設けられた前記ポンプ8とを有している。さらに、前記循環手段12は、前記ポンプ8の上流側の前記給水ライン5に設けられた温度センサ17からの温度検知信号に基づいて、前記給水弁15,前記排水弁16および前記ポンプ8を制御する制御部(図示省略)を有している。この制御部は、前記水処理システム3の給水停止中に、前記温度センサ17の検出値が所定値以下となったとき、前記給水弁15および前記排水弁16を閉状態にするとともに、前記ポンプ8を作動して、給水を前記濾過膜部10への前記給水ライン5,前記濾過膜部10内,前記排水ライン13および前記循環水ライン14の順で循環させるようになっている。
【0042】
また、前記水処理装置1は、前記装置筐体2内に、発熱手段(図示省略)を有している。この発熱手段は、前記装置筐体2の内壁面に面状ヒータを貼付することにより構成してもよく、また前記濾過膜モジュールを収容するベッセル(図示省略)や前記脱気膜モジュールを収容するハウジング(図示省略)が金属製である場合は、これらのベッセルやハウジングに前記面状ヒータを貼付することにより構成してもよい。さらに、前記発熱手段は、前記装置筐体2内における前記給水ライン5を構成する配管に、テープヒータを取り付けることにより構成されていてもよい。
【0043】
前記発熱手段は、前記温度センサ17からの温度検知信号に基づいて、前記制御部によってそのオン−オフが制御される。具体的には、前記発熱手段は、前記温度センサ17の検出値が所定値以下となったときに、オンとなる。
【0044】
さて、前記水処理装置1の運転(前記水処理システム3の運転)について説明する。前記水処理装置1内の前記水処理システム3では、前記原水タンク(図示省略)からの原水,すなわち給水が前記ポンプ8によって前記濾過膜部10および前記脱気処理部11へ供給される。このとき、前記給水弁15は、開状態にする。そして、給水は、前記濾過膜部10において、前記ナノ濾過膜(図示省略)を通過する際に、硫酸イオン,塩化物イオンなどの腐食促進成分が前記ナノ濾過膜により捕捉される一方で、シリカ,すなわち腐食抑制成分が前記ナノ濾過膜を透過する。そして、前記ナノ濾過膜からの透過水は、前記脱気処理部11で脱気される。そして、前記脱気処理部11からの給水は、前記ボイラ4への給水として前記給水タンク9内に貯留される。この給水がボイラ水として貯留された前記ボイラ4内では、腐食抑制成分が前記各伝熱管(図示省略)のボイラ水との接触部分における減肉的な腐食を抑制するとともに、食孔の発生および成長も抑制し、腐食(とくに食孔)による前記各伝熱管の破損を抑制する。この際、ボイラ水は、前記濾過膜部10により腐食促進成分が除去されているため、腐食抑制成分による前記のような腐食抑制作用は、腐食促進成分により阻害され難く、効果的に発揮されるようになる。
【0045】
前記水処理装置1(前記水処理システム3)は、前記ボイラ4の稼働状況または前記給水タンク9内の水位に応じ、その運転が制御される。そして、前記ボイラ4の稼動停止時など、前記水処理装置1が給水停止中、前記温度センサ17の検出値が所定値以下になったとき、前記制御部からの指令信号によって前記給水弁15および前記排水弁16を閉じるとともに、前記ポンプ8を所定の加圧力で作動させる。これにより、給水が前記濾過膜部10への前記給水ライン5,前記濾過膜部10内,前記排水ライン13および前記循環水ライン14の順で循環する。この結果、前記濾過膜部10内の給水が流動して、その凍結が防止される。
【0046】
さらに、前記水処理装置1が給水停止中に、前記温度センサ17の検出値が所定値以下になったとき、前記制御部(図示省略)によって前記発熱手段がオンとなり発熱する。この結果、前記脱気処理部11内の給水の凍結が防止され、さらに前記装置筐体2内の前記給水ライン5内の給水の凍結が防止される。
【0047】
ここで、前記脱気処理部11において、前記真空ポンプ(図示省略)で用いられる封水の凍結を防止するために、封水の貯留タンク(図示省略)内の水温が所定値以下になったとき、前記真空ポンプを運転することで封水を循環させてもよい。
【0048】
(第二実施例)
つぎに、この発明の第二実施例について説明する。図2は、第二実施例に係る水処理システムの構成を示す概略的な説明である。
【0049】
図2に示す水処理システム20は、上流側が原水タンク(図示省略)と接続され、下流側がボイラ21と接続された給水ライン22を備え、さらにこの給水ライン22と接続された複数の水処理装置,すなわち酸化剤除去装置23,軟水化装置24,濁質除去装置25および水質改質装置26を上流側からこの順で備えている。また、前記水処理システム20は、前記ボイラ4への給水を貯留する給水タンク27と、前記各水処理装置内の給水を循環させる循環手段28を有している。
【0050】
前記酸化剤除去装置23は、給水中に溶存する次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤を除去する水処理部(図示省略)を備えている。前記水処理部は、具体的には、活性炭を充填した処理塔で構成されている。前記酸化剤,たとえば遊離塩素や結合塩素は、前記軟水化装置24内のイオン交換樹脂(図示省略)を酸化させて、イオン交換能力を早期に低下させるおそれがあり、また前記水質改質装置26内の後述するナノ濾過膜(図示省略)を酸化させて、濾過能力を早期に低下させるおそれがある。そこで、このような酸化による早期の能力低下を防止するために、給水中の遊離塩素や結合塩素を前記活性炭で吸着して除去することにより、給水の処理効率の維持や安定化を図るようにしている。
【0051】
前記軟水化装置24は、前記酸化剤が除去された給水中の硬度分,すなわちカルシウムイオンやマグネシウムイオンを除去する水処理部(図示省略)を備えている。前記水処理部は、具体的には、イオン交換樹脂を充填した処理塔で構成されている。給水中の硬度分は、前記ボイラ21内で加熱されるとスケールを生成して熱伝導を阻害する。このため、給水中の硬度分をイオン交換によりナトリウムイオンへ置換し、給水を軟水へ変換するようになっている。
【0052】
前記濁質除去装置25は、前記酸化剤が除去され、また硬度分が除去された給水中の濁質,たとえば微細なゴミ,コロイド,有機物などを除去する水処理部(図示省略)を備えている。前記水処理部は、具体的にはフィルタで構成されている。給水中の濁質は、前記ナノ濾過膜に堆積すると、目詰まりを引き起こして透過水量の低下を招くおそれがある。このため、給水中の濁質を濾過し、給水を清浄化するようになっている。
【0053】
前記水質改質装置26は、水処理部として濾過膜部(図示省略)と脱気処理部(図示省略)とを有する装置として構成されており、前記第一実施例における水処理装置1に相当するものである。すなわち、前記水質改質装置26は、前記濾過膜部の上流側に配置されたポンプ(図示省略)と、前記濾過膜部と前記脱気処理部との間に配置された給水弁(図示省略)とが、装置内の給水ライン(図示省略)上に設けられている。
【0054】
また、前記水質改質装置26は、排水ライン29を有している。この排水ライン29は、前記濾過膜部で給水を濾過処理中に発生する濃縮水を排水するものであって、前記水処理装置1の前記排水ライン13に相当するものである。そして、前記濾過膜部からの濃縮水は、一部が前記排水ライン29から系外へ排水され、残部が前記排水ライン29と前記酸化剤除去装置23の上流側とを接続する循環水ライン30から前記給水ライン22へ還流されるようになっている。
【0055】
前記循環手段28は、前記循環水ライン30と、この循環水ライン30に設けられたポンプ31と、前記水質改質装置26内の前記給水弁と、前記排水ライン29に設けられた排水弁32を有している。さらに、前記循環手段28は、前記濁質除去装置25と前記水質改質装置26の間の前記給水ライン22に設けられた温度センサ33からの温度検知信号に基づいて、前記ポンプ31,前記給水弁および前記排水弁32を制御する制御部(図示省略)を有している。この制御部は、前記水処理システム20の給水停止中に、前記温度センサ33の検出値が所定値以下となったとき、前記給水弁および前記排水弁32を閉状態にするとともに、前記ポンプ31を作動して、給水を前記循環水ライン30,前記酸化剤除去装置23への前記給水ライン22,前記酸化剤除去装置23の処理塔内,前記軟水化装置24の処理塔内,前記濁質除去装置25のフィルタ,前記水質改質装置26の前記濾過膜部内および前記排水ライン29の順で循環させるようになっている。
【0056】
また、前記水質改質装置26は、その装置筐体(図示省略)内に、発熱手段(図示省略)を有している。この発熱手段は、前記第一実施例と同様にして構成することができる。そして、この発熱手段は、前記温度センサ33からの温度検知信号に基づいて、前記制御部によってそのオン−オフが制御される。具体的には、前記発熱手段は、前記温度センサ33の検出値が所定値以下となったときに、オンとなる。
【0057】
ここで、前記水質改質装置26以外の前記各水処理装置,すなわち前記酸化剤除去装置23,前記軟水化装置24および前記濁質除去装置25の各装置筐体(図示省略)にも、それぞれ前記発熱手段を設けてもよい。また、前記各水処理装置間の前記給水ライン22を構成する配管に、前記テープヒータ(図示省略)などを取り付けて構成した発熱手段を設けてもよい。
【0058】
さて、前記水処理システム20の運転について説明する。前記原水タンク(図示省略)からの原水,すなわち給水は、前記酸化剤除去装置23で前記酸化剤が除去され、前記軟水化装置24で軟水化され、前記濁質除去装置25で濁質が除去された後、前記水質改質装置26へ供給される。前記水質改質装置26では、前記濾過膜部(図示省略)を通過する際に、腐食促進成分が前記ナノ濾過膜(図示省略)によって除去される。一方、腐食抑制成分は、前記ナノ濾過膜を透過する。そして、この透過水は、前記脱気処理部(図示省略)で脱気された後、前記給水タンク27内に貯留される。
【0059】
前記水処理システム20の運転は、前記第一実施例と同様、前記ボイラ21の稼働状況または前記給水タンク27内の水位に応じ、その運転が制御される。そして、前記ボイラ21の稼動停止時など、前記水処理システム20が給水停止中に、前記温度センサ33の検出値が所定値以下になったとき、前記制御部からの指令信号によって前記給水弁(図示省略)および前記排水弁32を閉じるとともに、前記ポンプ31を所定の加圧力で作動する。これにより、給水が前記循環水ライン30,前記酸化剤除去装置23への前記給水ライン22,前記酸化剤除去装置23の処理塔内,前記軟水化装置24の処理塔内,前記濁質除去装置25のフィルタ,前記水質改質装置26の前記濾過膜部内および前記排水ライン29の順で循環する。この結果、前記各水処理部(図示省略)内の給水が流動して、その凍結が防止される。
【0060】
さらに、前記水処理システム20が給水停止中に、前記温度センサ33の検出値が所定値以下になったとき、前記制御部によって前記発熱手段がオンとなり、発熱する。この結果、前記脱気処理部内の給水の凍結が防止され、さらに前記水質改質装置26における前記給水ライン22内の給水の凍結が防止される。
【0061】
ここで、前記第一実施例および第二実施例において、前記各温度センサ17,33の位置は前記した位置に限られるものではなく、たとえば前記各排水ライン13,29に設けられていてもよい。その他、この発明は、その主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明に係る水処理システムおよび水処理装置の第一実施例の構成を示す概略説明図である。
【図2】この発明に係る水処理システムの第二実施例の構成を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 水処理装置
2 装置筐体
3,20 水処理システム
4,21 ボイラ(機器)
6,7 水処理部
12,28 循環手段
17,33 温度センサ(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器への給水の水処理部を備えた水処理システムであって、
給水停止中に前記水処理部内の給水を循環させる循環手段を備える
ことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
給水または前記水処理部からの排水の温度検出手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
機器への給水の水処理部を備えた水処理装置であって、
前記水処理部を収納する装置筐体内または前記水処理部自体に、発熱手段を設けたことを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−305506(P2006−305506A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133723(P2005−133723)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)