説明

水処理薬剤の注入方法

【課題】経済的かつ簡便に、冷却水中の水処理薬剤の濃度を、温度条件への対応も含めて所定の濃度に調節することができる、開放循環冷却水系における水処理薬剤の注入方法を提供する。
【解決手段】熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、外気温T0、冷却水温度、又は冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が設定温度を超えたとき、必要な水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用、各種工業用等の開放循環冷却水系に注入する水処理薬剤の注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開放循環冷却水系では、水の一部を蒸発させているので循環水系内の溶解物は次第に濃縮されていく。濃縮が進むと、カルシウム等のスケールが発生し、さらには、微生物の増殖によるスライム障害なども発生してくる。加えて構成機器の軟鋼や銅にも腐食が発生するというような問題も生じてくる。
【0003】
こうした問題を防止して、設備機器の安全かつ効率的な運転を確保するため冷却水に様々な水処理薬剤が注入される。開放循環冷却水系に注入される水処理薬剤には、防食成分、スケール防止成分、スライム増殖を抑制するスライムコントロール成分、及びこれらの各種成分を配剤し複数の効果を持たせた一液型水処理薬剤等がある。
【0004】
水処理薬剤は、冷却水中に一定濃度を維持することで効果を発揮し、濃度が低い場合は効果が不十分となり上記各種の問題が発生する。一方、水処理薬剤の濃度が高すぎる場合は水処理薬剤の費用がかさみ不経済となるとともに、返って弊害をもたらすこともある。
【0005】
その為、開放循環冷却水系における水処理薬剤の注入に関し、冷却水中の水処理薬剤の濃度を一定濃度以上に維持する様々な方法が検討されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1、2には、タイマーによって薬注ポンプをON−OFF制御し、定期的に水処理薬剤を注入する方法がある。
【特許文献1】特開平08−173971号公報
【特許文献2】実新出願平09−10592号公報
【0007】
特許文献1、2に開示されたタイマーによって薬注ポンプを制御する水処理薬剤の注入方法では、一定時間毎に一定量の水処理薬剤を注入するため、冷却塔や冷凍機の負荷及び各種の温度条件に応じて水処理薬剤の注入量を変化させることが難しく、冷却水中の薬剤濃度を一定に維持することは困難である。従って、冷却水中で真に必要な一定以上の薬剤濃度を確保するためには、過剰に注入するしかなく、経済的でなかった。
【0008】
また、特許文献3、特許文献4には、水処理薬剤をトレーサー物質とし、あるいは水処理薬剤に比例した濃度のトレーサー物質を添加し、トレーサー物質を連続的に測定して水処理薬剤の注入量を制御する方法が開示されている。
【特許文献3】特開平4−296652号公報
【特許文献4】特開2004−322058号公報
【0009】
しかし、特許文献3、特許文献4に記載の水処理薬剤の注入方法では、冷却水中の水処理薬剤濃度を一定に維持することは可能であるが、ある種の温度条件に対応して水処理薬剤を追加注入するというような調整をするまでには至っていない。加えて、高度な測定機器を必要とするため初期投資が多額となり、また、測定制御機器を安全かつ高精度に維持・運転させるためのメンテナンス費用も高いものとなる。
【0010】
さらに、特許文献5には、パルス発信式流量計等で補給水の補給量を測定し、補給水に対して一定量の水処理薬剤を比例注入する方法が開示されている。
【特許文献5】特開平07−119916号公報
【0011】
この方法では、比較的簡便かつ装置の信頼性も高く、自動ブローによる冷却水の濃縮管理と組み合わせることで冷却水中の薬剤濃度を一定に維持することが可能である。しかし、この方法でも、ある種の温度条件に対応して水処理薬剤を追加注入するというような調整をするまでには至っていない。また、高価なパルス発信式流量計を補給水ラインの配管内に設置する必要があり、経済的かつ簡便な方法とは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
他方、スケール防止成分やスライムコントロール成分といった水処理薬剤は、ある種の温度条件に於いては、通常の場合よりも薬剤の濃度を高めなければ効果を十分に発揮させることができないことがある。
【0013】
例えば、熱交換器の負荷が高くなると、熱交換器伝熱面の温度が上昇し、スケール障害が発生し易くなる。
【0014】
また、水温や外気温度が高くなると、スライム障害が発生し易くなる。このような現象は、特に、夏季に発生しやすい。このため、夏季には通常から、或いは外気温が高くなるころを見計らって、予め水処理薬剤を多く注入し、冷却水中の水処理薬剤の濃度を高めに維持することによって、水処理薬剤の効果を発揮させ、それら障害を防止する必要が生じる。
【0015】
一方、熱交換器の負荷が低い場合、補給水の補給量が少なく、開放循環冷却水系における冷却水の入れ替わり頻度が低下する。この場合、補給水の注入量に比例して冷却水中に注入される水処理薬剤の注入頻度も低下し、水処理薬剤が長時間開放循環冷却水系に留まることとなる。
【0016】
水処理薬剤が、長時間開放循環冷却水系に留まっていると、時間の経過とともにそれ自体が分解し、冷却水中の実質的な水処理薬剤の濃度が低下する。従って、熱交換器の負荷が低い場合には、補給水に比例した量の水処理薬剤を注入していても、効果を十分に発揮させるために必要な量が不足してしまうことがある。例えば、分解速度が速い、スライムコントロール成分などが該当する。
【0017】
このような現象は、特に、冬季に発生しやすい。このため、冬季には通常から、あるいは外気温が低下するころを見計らって、理論上必要とされる注入量より多く水処理薬剤を注入し、冷却水中の水処理薬剤の濃度を高めに維持することによって水処理薬剤の効果を発揮させ、障害を防止する必要が生じる。
【0018】
水処理薬剤を注入する場合は、熱交換器の負荷や各種の温度条件に対応して最も効果的かつ経済的に注入されなければならない。即ち、開放循環冷却水系において、水処理薬剤の効果を十分に発揮させる為には、運転時の条件に対応した真に必要な一定以上の薬剤濃度を維持することが重要である。
【0019】
そこで、本発明は、経済的かつ簡便に、冷却水中の水処理薬剤の濃度を、温度条件への対応も含めて所定の濃度に調節することができる、開放循環冷却水系における水処理薬剤の注入方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するためのものである。即ち、請求項1、2に係る本発明は、熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、外気温T0、もしくは冷却水(循環水)の温度が設定温度以上のとき、スライムコントロール成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法の提供、さらに上記において、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が、設定温度以下のとき、スライムコントロール成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法を提供するものである。
【0021】
また、請求項3に係る本発明は、熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が、設定温度以上のとき、スケール防止成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法を提供するものである。
【0022】
さらに、請求項4に係る発明は、前記追加注入する水処理薬剤の注入量が、追加注入時の温度因子の関数により決定されることを特徴とする前記何れかに記載の水処理薬剤の注入方法を提供するものである。
【0023】
加えて、請求項5に係る発明は、前記補給水量に対して比例的に注入する水処理薬剤の注入量が、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1(℃)、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2(℃)から次式(1)に従って前記冷却水への理論補給水量(M)を求め、前記理論補給水量(M)に比例する量として決定されるものであることを特徴とする前記何れかに記載の水処理薬剤の注入方法を提供するものである。
M=((T2−T1)×c×R/Q)×(N/(N−1))・・・(式1)
M:理論補給水量(m3/h)
c:水の比熱(kcal/kg・℃)
R:冷却水の循環水量(m3/h)
Q:水の蒸発潜熱(kcal/kg)
N:冷却水の濃縮倍率(倍)
【0024】
また、請求項6に係る発明は、前記理論補給水量を、外気温T0(℃)の関数となる補正係数を用いて補正し、該補正した理論補給水量(補正理論補給水量)に比例する量の水処理薬剤を注入することを特徴とする上記記載の水処理薬剤の注入方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上の構成であるから、冷却水中の水処理薬剤の濃度を真に必要な濃度に簡易かつ低コストに維持・管理することができる。
【0026】
具体的には、請求項1に係る発明によれば、外気温T0、もしくは冷却水の温度が設定温度以上であるとき、即ち、スライムコントロール成分が通常管理よりさらに必要なときに、スライムコントロール成分を含む水処理薬剤を追加注入するので、温度因子に変化があってもスライム防止に真に必要な濃度に水処理薬剤濃度を管理することができ、水処理薬剤の効果を維持することが可能となる。
【0027】
なお、スライムコントロール成分を含む一液型水処理薬剤を追加注入する方法、スライムコントロール成分のみの水処理薬剤を別途追加注入する方法の何れも採用できるが、スライムコントロール成分のみの水処理薬剤を別途追加注入する方法の方が、他の水処理薬剤の過剰注入がなく経済的である。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、ΔTが設定温度以下のとき、即ち、熱交換器の負荷が低くスライムコントロール成分が長期に冷却水に滞留し、通常管理よりさらに必要なときに、スライムコントロール成分を追加注入するので、温度因子に変化があってもスライム防止に必要な濃度に水処理薬剤濃度を管理することができ、水処理薬剤の効果を維持することが可能となる。
【0029】
なお、スライムコントロール成分を含む一液型水処理薬剤を追加注入する方法、スライムコントロール成分のみの水処理薬剤を別途追加注入する方法の何れも採用できるが、上述のように、スライムコントロール成分のみの水処理薬剤を別途追加注入する方が、経済的である。
【0030】
請求項3に係る発明によれば、ΔTが設定温度以上のとき、即ち、熱交換器の負荷が高くスケール防止成分が通常管理よりさらに必要なときに、スケール防止成分を追加注入するので、温度因子に変化があってもスケール防止に必要な濃度に水処理薬剤濃度を管理することができ、水処理薬剤の効果を維持することが可能となる。
【0031】
なお、スケール防止成分を含む一液型水処理薬剤を追加注入する方法、スケール防止成分のみの水処理薬剤を別途追加注入方法の何れも採用できるが、上述のように、スケール防止成分のみの水処理薬剤を別途追加注入する方が、経済的である。
【0032】
請求項4の発明によれば、追加注入時の、例えば、設定温度に採用した冷却水の温度、T1、T2、又は外気温T0の何れかの温度因子の関数により、注入量が決定されるため、即ち、設定温度を超えた場合に、その程度によって追加注入量を変動することができるため、例えば、熱交換器の稼働率に変動が多い冷却塔、加えて季節の変わり目など外気温の変化が大きい時であっても、追加する水処理薬剤を真に必要な濃度に管理することができ、より経済的に水処理薬剤の効果を維持することが可能となる。
【0033】
また、請求項5に係る発明によれば、T1、T2を測定し、その他のデータは、予め、開放循環冷却水系毎に定まる値を入力情報として用い、式(1)から理論補給水量を求め、その理論補給水量に比例した水処理薬剤を冷却水2aに注入することで、補給水に対して比例注入する水処理薬剤においても、簡易かつ低コストで冷却水2a中の水処理薬剤5aを適正な濃度に管理することができる。
【0034】
従って、従来のように、補給水4a量を実測するための高価なパルス発信式流量計を設置する必要がなく、簡易、低コストで補給水4a量を把握することができる。またパルス発信式流量計を設置するために開放循環冷却水系の稼働を停止する必要がなく、簡便に既存の開放循環冷却水系に適用できる点、極めて優れている。
【0035】
さらに、請求項6に係る発明によれば、理論補給水量を外気温(T0)の関数となる補正係数を基に補正し、補正した理論補給水量(以下、補正理論補給水量という。)を求めることにより、より精度よく補給水量を把握し、その補正理論補給水量に比例した水処理薬剤を冷却水2aに注入することで、より適切に補給水に対して比例注入する水処理薬剤の冷却水2a中での濃度を所定値に管理することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
経済的かつ簡便に、冷却水中の水処理薬剤の濃度を、温度条件への対応も含めて所定の濃度に管理する開放循環冷却水系における水処理薬剤の注入方法を提供する目的を熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、
外気温T0、冷却水温度、又は冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が設定温度を超えたとき、必要な水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法の構成とすることで実現した。
【0037】
さらに、水処理薬剤の注入量を、追加注入時の温度因子の関数により決定し、至適量に変動させて水処理薬剤を注入することで実現した。また、前記補給水量に対して比例的に注入する水処理薬剤の注入量が、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1(℃)、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2(℃)から次式(1)に従って前記冷却水への理論補給水量(M)を求め、前記理論補給水量(M)に比例する量として決定されるものであることを特徴とする前記何れかに記載の水処理薬剤の注入方法の構成として実現した。 M=((T2−T1)×c×R/Q)×(N/(N−1))・・・(式1)
M:理論補給水量(m3/h)
c:水の比熱(kcal/kg・℃)
R:冷却水の循環水量(m3/h)
Q:水の蒸発潜熱(kcal/kg)
N:冷却水の濃縮倍率(倍)
【0038】
加えて、前記理論補給水量を、外気温T0(℃)の関数となる補正係数を用いて補正し、該補正した理論補給水量(補正理論補給水量)に比例する量の水処理薬剤を注入することを特徴とする上記記載の水処理薬剤の注入方法の構成とすることで実現した。
【0039】
水処理薬剤には、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分など、注入する箇所に必要な成分を単一で含まれているもの、或いはそれら成分の2つ以上を混合して一液とした一液型のものなどがある。それら水処理薬剤は、薬剤としての効果を維持するため、所定濃度に管理されるよう開放循環冷却水系に注入される。
【0040】
温度因子とは、水処理薬剤を補給水に対して比例的に注入するだけでは水処理薬剤の効果が維持できないとする判断の対象、即ち追加的に水処理薬剤が必要だと判断する温度の対象である。例えば、冷却塔が設置されている環境の外気温T0、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2、T1とT2の温度差ΔT(=T2−T1)などがある。ΔTにより熱交換器の負荷の大きさを推測することができる。
【0041】
T0は、外気温の測定値であり、冷却塔付近のリアルタイムの測定値、所定時間の平均値などが利用でき、それらデータは薬注制御装置6に送られ、水処理薬剤の追加注入の有無、注入量の決定、さらに補正理論補給量の算出に用いられる。
【0042】
冷却水温度T1は、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度であり、冷却塔下部水槽2d内の冷却水2a温度や、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水往配管3e中の任意の位置における冷却水温度を、水温測定手段(測温抵抗体、熱電対など)により測定することで、冷却水温度の測定値T1とすることができる。
【0043】
また、冷却水温度T2は、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度であり、冷却塔上部水槽2f内の冷却水2a温度や、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水還配管3d中の任意の位置における冷却水温度を、水温測定手段(測温抵抗体、熱電対など)により測定することで、測定値T2として得ることができる。
【0044】
また、冷凍機等で、冷却水の入り口、出口の温度をリアルタイムに測定している場合等、開放循環冷却水系の運転情報からT1、T2の値が得られる場合には、その値を採用しても構わない。このようにして求めたT1、T2データは、薬注制御装置6に送信され、水処理薬剤の追加注入の有無、注入量の決定、さらに補正理論補給量の算出に用いられる。
【0045】
また、T1、T2は、それぞれ単位時間当たりの平均温度を使用してもよく、例えば、1時間当たりに複数回測定したT1、T2、それぞれの平均値から、式(1)に従って、1時間当たりの理論補給水量を求めてもよい。
【0046】
水処理薬剤の追加注入の有無の決定に際し、各温度因子に優劣はなく、各冷却塔設置環境により、入手し易さ、誤差の多少などを勘案し、採用する温度因子を適宜選択することができる。また、採用できる温度因子の全てを測定して、その中のどれか一つが判断基準に達すれば必要な水処理薬剤を追加注入することとしても問題は無い。
【0047】
スライムコントロール成分の追加注入が必要となるT0、冷却水温度、ΔTの設定温度とは、スライムコントロール成分の追加注入の有無の判断基準になる値であり、各冷却水系毎に最適な値を適宜設定することができる。具体的には、T0の設定温度は、例えば
25℃とするのが好適である。従って、T0が25℃以上のとき補給水量に比例する通常の水処理薬剤の注入に追加してスライムコントロール成分を注入する。外気温が25℃以上になると、スライムが急激に増殖するからである。
【0048】
T1の設定温度は、例えば30℃が好適であり、T1が30℃以上のとき、T0と同様、スライムコントロール成分を追加注入する。T2の設定温度は、例えば35℃が好適であり、T2が35℃以上のとき、T0と同様、スライムコントロール成分を追加注入する。
【0049】
さらに、ΔTの設定温度は、例えば2℃が好適である。即ちΔTが2℃以下では、冷却水の入れ替わりが少なく、スライムコントロール成分が長期間冷却水に滞留し、分解して濃度の低下した状態となるので、十分効果を発揮していない。従って、ΔTが2℃以下のとき、補給水量に比例する通常の水処理薬剤の注入に追加してスライムコントロール成分を注入する。
【0050】
スケール防止成分の追加注入が必要となるΔTの設定温度とは、スケール防止成分の追加注入の有無の判断基準になる値であり、各冷却水系毎に最適な値を適宜設定することができる。具体的には、ΔTは、例えば7℃とするのが好適である。即ちΔTが7℃以上では、熱交換器の負荷が高く、熱交換器伝熱面の温度が高いので、スケール析出傾向になる。従って、ΔTが7℃以上のとき、補給水量に比例する通常の水処理薬剤の注入に追加してスケール防止成分を注入する。
【0051】
追加注入方法は、一液型水処理薬剤であっても、スライムコントロール成分、スケール防止成分単一成分の注入であっても、比例注入方法、タイマー注入方法、一時的な注入方法などが採用できる。
【0052】
比例注入方法とは、補給水量に比例して一定量を注入する方法である。追加注入する成分を含む一液型水処理薬剤であれば、薬注装置5の薬注ポンプ5cを追加運転をさせればよい。別途、スライムコントロール成分、スケール防止成分を追加注入する場合には、追加注入用の薬液タンクと薬注ポンプを設けて、その薬注ポンプを補給水量に比例させて、所定時間運転させればよい。
【0053】
タイマー注入方法とは、タイマーを用いて間欠的に冷却水に水処理薬剤を注入する方法である。例えば、1日に1時間、あるいは1時間毎に10分間等薬注ポンプを運転して水処理薬剤を注入する方法であり、対応すべき条件に合わせて、任意の時間間隔と任意の注入時間、注入量を選択することができる。
【0054】
一時的な注入方法とは、温度条件が設定温度を越えた時に一時的に、保有冷却水量に対して、予め決められた量、例えば100mg/lの量の水処理薬剤を注入する方法である。
【0055】
水処理薬剤の追加注入量は、温度因子が設定値以上、或いは以下になった場合に、上述のように予め決められた量の注入量を追加することで簡易に実現できる。さらに、設定温度に採用した温度因子の温度の関数として、水処理薬剤の注入量を変動させることも可能である。これにより、より適切に水処理薬剤の効果を得ることができる。
【0056】
例えば、補給水量Amに対して、通常注入量をBml、設定温度C℃のとき、追加水処理薬剤をDmlを追加注入する場合において、追加注入時の測定温度がE℃(E>C、設定温度以上)であったとき、
追加注入量F=D+α(E−C);αは定数
などにより、設定温度を超えた温度毎に追加注入量を増減する制御をすることができる。
【0057】
補給水量は、流量計での実測値、種々の方法により計算上求められた補給水量であってもよいが、上記式(1)により、求める理論補給水量を用いるのが、簡便でかつ経済的である。
【0058】
式(1)の水の比熱(c)は、温度によって変化する値であるが、誤差が小さいため、1kcal/kg・℃として差し支えない。ただし、温度に対応する比熱データを予め薬注制御装置6に入力しておき、冷却水2aの測定温度(T1、T2等)に対応する比熱(c)を用いれば、さらに精度よく理論補給水を求めることができる。
【0059】
冷却水2aの循環水量(R)は通常一定とみなすことができるので、開放循環冷却水系毎に設計値として定まる循環水量(R)を使用して差し支えない。ただし、循環ライン3に、循環水3aの循環水量を測定するための流量計を設置してもよく、前記流量計で測定した循環水量を使用することもできる。
【0060】
水の蒸発潜熱(Q)は、冷却水2aの温度に応じて定まる定数であるが、一般的に、冷却水の温度は30℃程度であるので、簡易には30℃における水の蒸発潜熱(580Kcal/Kg)を使用して差し支えない。ただし、理論補給水量の算出精度をより高めるために、温度に対応する蒸発潜熱のデータを予め入力しておき、T1、T2、又はT1、T2の平均値等に対応する水の蒸発潜熱(Q)を使用しても構わない。
【0061】
冷却水の濃縮倍率(N)は、冷却水の管理目標水質と補給水水質から開放循環冷却水系毎に適宜設定した定数である。ただし、冷却水の水質情報(電気伝導率やイオン濃度)を測定し、補給水の水質情報で除した値を濃縮倍率として採用することも可能である。
【0062】
従って、通常は、
補給水量(M)=
((T2−T1)×1×R/580)×(N/(N−1))・・・(式2)
として簡易的に理論補給水量を求めて差し支えない。
【0063】
即ち、T1、T2を測定し、式(1)、或いは式(2)から理論補給水量を求めることで、開放循環冷却水系1への補給水4a量を把握することができる。
【0064】
次に、式(1)、或いは式(2)で算出した理論補給水量(M)を外気温(T0)を基に補正する方法について説明する。開放循環冷却水系1への補給水4a量は、T1、T2を測定し、式(1)、或いは式(2)から理論補給水量(M)として把握することができるが、前記理論補給水量(M)と、実際の補給水量(実測)との間には誤差が生じることがある。
【0065】
その原因を鋭意探求した結果、誤差と外気温T0との間に相関関係があることを見出した。そこで、理論補給水量を外気温T0の関数となる補正係数を基に補正し、補正理論補給水量を求めることにより、より精度よく補給水量を把握し、その補正理論補給水量に比例した水処理薬剤を冷却水2aに注入することで、より適切に水処理薬剤の冷却水2a中での濃度を所定値に管理することができることとなる。
【0066】
例えば、外気温(T0)の関数となる補正係数をηとすると、
外気温(T0)の影響を加味した補正理論補給水量Mt(m/h)は、次式(3)で求められる。
Mt=η×M・・・・(3)
【0067】
ここで、例えば、補正係数(η)は、外気温(T0)の1次関数として次式(4)を用いることができる。
η=a×T0+b・・・(4)
【0068】
一般的な設備であれば、係数aは0.015、bは0.5として差し支えない。なお、係数a、bを設備毎に計算することにより、より精度よく補正理論補給水量を求めることができる。具体的には、理論補給水量(M)と補給水の実測値とを比較し、一致するようa、bを設備毎に定める。また、補正係数(η)は、一次関数に限らず、二次関数その他の関数としてもよい。要は、外気温(T0)を基に、実測した補給水量に最も近い値の補正理論補給水量を求められる関数であればよい。
【0069】
さらに、補正理論補給水量(Mt)は、理論補給水量(M)から外気温(T0)の関数f(T0)を減じる補正を行い、次式(5)によって算出することも可能である。なお、関数f(T0)は、補正係数(η)同様、一次、二次、その他の関数とすることができる。
Mt=M−f(T0)・・・(5)
【0070】
以下、添付図面に基づいて、本発明である水処理薬剤の注入方法について詳細に説明する。
【0071】
図1は、温度因子に応じて一液型水処理薬剤を追加注入する場合の、本発明である水処理薬剤の注入方法が適用される開放循環冷却水系(一例)の概略図である。
【0072】
開放循環冷却水系1は、冷却水2aを溜める下部水槽2dの上方に冷却水2aを空冷するファン2eを取り付け、上部に循環水3aが戻される上部水槽2f、下部には冷却水2aをブロー水2gとして排出するブロー配管2cと接続する下部水槽2dを有し、冷却塔2の下部水槽2dの水位が一定以上にならないように、過剰の冷却水2aをオーバーフロー水2bとして排出するオーバーフローライン11が備えられた冷却塔2と、
前記下部水槽2dに連結し、前記冷却水2a(循環水3a)を循環ポンプ3bの駆動により冷凍機等の熱交換器3cに送る冷却水往配管3e、及び熱交換器3cを通過し、熱交換された冷却水2a(循環水3a)を冷却塔2に戻す冷却水還配管3d、並びに冷凍機等の熱交換器3cよりなる循環ライン3と、
前記冷却塔2に連結し、前記冷却水2aが減少したときに前記下部水槽2dの水位を保つために、又は前記冷却水2aの濃縮倍率が上昇したときに強制ブローを行うために補給水4aを注入する補給ライン4と、
温度条件に対応し、さらに理論補給水量に比例した一液型水処理薬剤を冷却水2aに注入する水処理薬剤の注入装置8とからなる。
【0073】
補給ライン4は、冷却塔2内部に挿通する補給配管4cに、下部水槽2dの水面の高さに連動するボールタップ4eが連結し、冷却水2aが減少したとき補給水4aを適宜補給するラインと、冷却水2aの濃縮倍率が設定値以上に上昇したときに、強制補給弁4gが開いて補給水4aを強制的に冷却塔2に補給する強制補給ライン4fとを備える。
【0074】
冷却塔2の冷却水2aには、冷却水2aの電気伝導率を測定する電気伝導率計7が設置され、前記冷却水2aの電気伝導率が設定値以上になると、前記強制補給弁4gが開いて補給水4aが補給され、オーバーフロー水2bとして冷却水の一部が排出されることで、冷却水2aの濃縮倍率が所定の値に維持される。
【0075】
水処理薬剤の注入装置8は、温度センサ(往)10と、温度センサ(還)9と、薬注装置5と、薬注制御装置6からなる。なお必要に応じ外気温センサ12を付加する。
【0076】
温度センサ(往)10は、冷却水往配管3eに設けられ、冷却塔2から熱交換器3cに向かう冷却水2aの温度T1(℃)を測定する。温度センサ(往)10で測定した温度T1は、後述の薬注制御装置6に送られる。
【0077】
温度センサ(還)9は、冷却水還配管3dに設けられ、熱交換器3cから冷却塔2に戻る冷却水2aの温度T2(℃)を測定する。温度センサ(還)9で測定した温度T2も、後述の薬注制御装置6に送られる。
【0078】
なお、上記、温度センサ(還)9、(往)10は、それぞれ配管内に挿通しても、配管に接触(貼付)させてもよい。配管に接触させる場合には、T1、T2の測定精度を高めるために、前記温度センサを含む配管部分を断熱材で覆うことが望ましい。温度センサ(還)9、(往)10を配管に接触させる方式の場合、開放循環冷却水系1の稼働を停止せずに設置することができ、補給水量を簡易、低コストで把握することができる。一方、従来のように補給水4aの流量を流量計を設置して測定する場合では、開放循環冷却水系を停止し、高価なパルス発信式流量計を設置しなければならず煩雑であった。
【0079】
薬注装置5は、一液型水処理薬剤5aを貯留するタンク5bと、前記タンク5bから下部水槽2dに連絡する薬注ライン5dと、一液型水処理薬剤5aを前記薬注ライン5dを通し下部水槽2dに注入するための薬注ポンプ5cとからなる。
【0080】
薬注ポンプ5cは、流体を移送することができるポンプであれば、特に限定されない。なお、薬注ポンプ5cは、後述の薬注制御装置6から出力された薬注ポンプ運転シグナル6eに基づき駆動し、補給水量に比例する量、さらに追加注入する一液型水処理薬剤5aを前記開放循環冷却水系1に注入するよう、薬注制御装置6で制御される。
【0081】
薬注制御装置6は、測定値であるT1、T2、予め設定された、或いは測定し求めた、水の比熱(c)、循環水量(R)、水の蒸発潜熱(Q)、冷却水の濃縮倍率(N)、必要に応じ測定した外気温(T0)を基に、前述の式(1)〜式(3)、式(5)の何れかの式に従って開放循環冷却水系1への理論補給水量(M)或いは補正理論補給水量(Mt)を求め、それら求めた補給水量に比例する量の一液型水処理薬剤5aを前記開放循環冷却水系1に注入するよう薬注ポンプ運転シグナル6eを薬注ポンプ5cに出力する。
【0082】
その結果、薬注ポンプ5cは、求めた補給水量に比例する量の一液型水処理薬剤5aを前記開放循環冷却水系1に注入し、T0、T1、T2、ΔT等の温度条件が設定温度を越えた時には、適宜注入量を増加させることで、前記開放循環冷却水系1の一液型水処理薬剤5aが真に必要な濃度に維持、管理されることとなる。
【0083】
なお、図1においては、薬注制御装置6は、電気伝導率計7からの電気伝導率データ7aを基に、強制補給弁4gを開閉する強制補給シグナル6fを出力する機能を持つが、当然別装置として、薬注制御装置6から分離しても構わない。
【0084】
図2は、スケール防止成分又は/及びスライムコントロール成分を別途開放循環冷却水系に追加注入する本発明である水処理薬剤の注入方法が適用される開放循環冷却水系(一例)の概略図である。
【0085】
開放循環冷却水系13は、図1の開放循環冷却水系1と、タンク5b内の水処理薬剤5e、温度センサ(往)10a及び温度センサ(還)9aの設置場所が異なること、別途、薬注装置2つ有する点、即ち追加薬注装置14、第2の追加薬注装置15を有する点、以外構成において変わらない。従って、図2において図1と同一の符号は、同一の装置、機能を有するものとして説明を省略する。
【0086】
水処理薬剤5eは、追加薬注装置14及び第2の追加薬注装置15で注入される水処理薬剤を含まないこと、或いはそれらを含み一液型水処理薬剤5aとしてもよい。ただし、追加する水処理薬剤は、追加薬注装置14及び第2の追加薬注装置15から行う。これにより、温度条件が設定温度を越えた場合に、必要な水処理薬剤を追加水処理薬剤14a、15aとして注入することができ、経済的である。
【0087】
例えば、追加水処理薬剤14aがスライムコントロール成分、追加水処理薬剤15aがスケール防止成分などとする。
【0088】
温度センサ(往)10a及び温度センサ(還)9aの設置場所は、それぞれ冷却塔2の下部水槽2d、上部水槽2fであり、より簡便にT1、T2を測定することができる。
【0089】
追加薬注装置14は、追加水処理薬剤14aを貯留するタンク14bと、前記タンク14bから下部水槽2dに連絡する追加薬注ライン14dと、追加水処理薬剤14aを前記追加薬注ライン14dを通し下部水槽2dに注入するための薬注ポンプ14cとからなる。
【0090】
薬注ポンプ14cは、流体を移送することができるポンプであれば、特に限定されない。なお、薬注ポンプ14cは、上述の薬注制御装置6から出力された薬注ポンプ運転シグナル6aに基づき駆動し、温度条件により追加注入する量の追加水処理薬剤14a(例えば、スライムコントロール成分)を前記開放循環冷却水系13に注入するよう、薬注制御装置6で制御される。
【0091】
第2の追加薬注装置15は、追加水処理薬剤15aを貯留するタンク15bと、前記タンク15bから下部水槽2dに連絡する追加薬注ライン15dと、追加水処理薬剤15aを前記追加薬注ライン15dを通し下部水槽2dに注入するための薬注ポンプ15cとからなる。
【0092】
薬注ポンプ15cは、流体を移送することができるポンプであれば、特に限定されない。なお、薬注ポンプ15cは、上述の薬注制御装置6から出力された薬注ポンプ運転シグナル6bに基づき駆動し、温度条件により追加注入する量の追加水処理薬剤14aを前記開放循環冷却水系13に注入するよう、薬注制御装置6で制御される。
【実施例1】
【0093】
実稼働中のある冷却塔で実測した補給水量(実測)と、式(2)から求めた理論補給水量(M)、及び式(3)、式(4)から求めた補正理論補給水量(Mt)の比較試験について、図3を参照し説明する。
【0094】
図3は、補給水量実測値と理論補給水量及び補正理論補給水量の関係を示す図である。図3の横軸は補給水量実測値(m/h)、縦軸は式(2)、及び式(3)、式(4)から求めた補給水量計算値(m/h)である。◇は式(2)によって求められた理論補給水量、▲は、外気温(T0)を基に式(2)で求めた理論補給水量(◇)を式(3)、式(4)によって補正して求めた補正理論補給水量である。
但し、式(4)における係数a=0.015、b=0.5とした。
【0095】
実測した補給水量の値と、式(2)、及び式(3)、式(4)から求めた補給水量計算値とが一致すれば、一次関数y=x上に、◇、▲はプロットされることとなる。ところが、外気温による補正を行わない式(2)より求めた理論補給水量◇は、全体的に若干高めの値となる。
【0096】
従って、理論補給水量を基に水処理薬剤を注入した場合、水処理薬剤の濃度が所定の濃度よりやや高くなることとなる。しかし、式(1)、(2)で求めた理論補給水量を基に水処理薬剤の注入量を決定しても、水処理薬剤の不足はなく、水処理薬剤の機能を発揮させるという点では、開放循環冷却水系の実際の稼働において支障はない。
【0097】
一方、プロットされた補正理論補給水量▲は、実際の補給水量(実測)に極めて近い値を示していることがわかり、外気温(T0)の関数で補正する、式(3)、式(4)を用いた理論補給水量の補正方法が有効であることがわかる。
【0098】
即ち、上述の補正理論補給水量を基に水処理薬剤の注入量を決定することで、補給水比例注入を行っていれば効果の得られる水処理薬剤、例えば、防食成分、適正温度条件で使用されるスケール防止成分、スライムコントロール成分などの濃度を、簡易に、適正値に調節することができる。
【0099】
また、ある温度条件では、スケール防止成分、スライムコントロール成分は不足するため、本発明に従って水処理薬剤を追加注入を行うことで、水処理薬剤の濃度を常にその効果を発揮し得る適正濃度に調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】温度因子に応じて一液型水処理薬剤を追加注入する場合の、本発明である水処理薬剤の注入方法が適用される開放循環冷却水系(一例)の概略図である。
【図2】スケール防止成分又は/及びスライムコントロール成分を別途開放循環冷却水系に追加注入する本発明である水処理薬剤の注入方法が適用される開放循環冷却水系(一例)の概略図である。
【図3】補給水量実測値と理論補給水量及び補正理論補給水量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 開放循環冷却水系
2 冷却塔
2a 冷却水
2b オーバーフロー水
2c ブロー配管
2d 下部水槽
2e ファン
2f 上部水槽
2g ブロー水
3 循環ライン
3a 循環水
3b 循環ポンプ
3c 熱交換器
3d 冷却水還配管
3e 冷却水往配管
4 補給ライン
4a 補給水
4c 補給配管
4e ボールタップ
4f 強制補給ライン
4g 強制補給弁
5 薬注装置
5a 水処理薬剤
5b タンク
5c 薬注ポンプ
5d 薬注ライン
5e 水処理薬剤
6 薬注制御装置
6a 薬注ポンプ運転シグナル
6b 薬注ポンプ運転シグナル
6e 薬注ポンプ運転シグナル
6f 強制補給シグナル
7 電気伝導率計
7a 電気伝導率データ
8 水処理薬剤の注入装置
9 温度センサ(還)
9a 温度センサ(還)
10 温度センサ(往)
10a 温度センサ(往)
11 オーバーフローライン
12 外気温センサ
13 開放循環冷却水系
14 追加薬注装置
14a 追加水処理薬剤
14b タンク
14c ポンプ
14d 追加薬注ライン
15 第2の追加薬注装置
15a 追加水処理薬剤
15b タンク
15c 薬注ポンプ
15d 追加薬注ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、外気温T0、もしくは冷却水(循環水)の温度が設定温度以上のとき、スライムコントロール成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法。
【請求項2】
熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が、設定温度以下のとき、スライムコントロール成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法。
【請求項3】
熱交換器に冷却水を循環供給すると共にこの冷却水を冷却塔で冷却し、かつ、冷却水の一部をブローすると共に補給水を供給して冷却水の濃縮倍率を一定に保つようにし、防食成分、スケール防止成分、スライムコントロール成分の内、少なくとも1つの成分を含む水処理薬剤を、補給水量に対して比例的に注入する開放循環冷却水系において、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1と、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2の温度差ΔT(=T2−T1)が、設定温度以上のとき、スケール防止成分を含む水処理薬剤を追加注入することを特徴とする水処理薬剤の注入方法。
【請求項4】
前記追加注入する水処理薬剤の注入量が、追加注入時の温度因子の関数により決定されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の水処理薬剤の注入方法。
【請求項5】
前記補給水量に対して比例的に注入する水処理薬剤の注入量が、冷却塔から熱交換器に向かう冷却水(循環水)の温度T1(℃)、熱交換器から冷却塔に戻る冷却水(循環水)の温度T2(℃)から次式(1)に従って前記冷却水への理論補給水量(M)を求め、前記理論補給水量(M)に比例する量として決定されるものであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の水処理薬剤の注入方法。
M=((T2−T1)×c×R/Q)×(N/(N−1))・・・(式1)
M:理論補給水量(m3/h)
c:水の比熱(kcal/kg・℃)
R:冷却水の循環水量(m3/h)
Q:水の蒸発潜熱(kcal/kg)
N:冷却水の濃縮倍率(倍)
【請求項6】
前記理論補給水量を、外気温T0(℃)の関数となる補正係数を用いて補正し、該補正した理論補給水量(補正理論補給水量)に比例する量の水処理薬剤を注入することを特徴とする請求項5に記載の水処理薬剤の注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−243805(P2009−243805A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92056(P2008−92056)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)