説明

水処理装置

【課題】高濃度の有機汚泥を含む排水を河川の環境基準に当てはまる水質に浄化し、河川に放流しても生物の生息環境を破壊することなく改善できる水処理装置を提供する。
【解決手段】装置本体1の内部に設けられる複数段の濾材層5〜10の内、下端に位置する濾材層5を除く濾材層6〜10に使用される砂の均等係数をほぼ1とし、原水投入口11の出口が装置本体1の内面に沿うように向けられて原水投入口11から流入する原水が最上段の濾材層10の上で横方向に循環するように構成され、さらにこの原水を上下方向に循環させるエアー噴出し口16を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品工場で排出される汚泥含有水から汚泥を取り除き河川に放流水として廃棄しても安全な水に処理するための水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場などから出る排水を処理する装置として例えば特許文献1に開示されているような、有機排水を一時貯水するための流量調整槽と、当該流量調整槽から所定量の有機排水を送流され、これに空気の混合と微生物との接触を行なう曝気槽と、当該曝気槽から送流された有機排水の汚泥を沈殿するための沈殿槽とを備える有機排水の処理装置において、前記流量調整槽または前記曝気槽にその有機排水に空気を混合させる気液混合機を設けたものが提案されている。
【特許文献1】特開平10−5776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示されている従来の有機排水の処理装置の構成では、沈殿槽により水と活性汚泥を分離させようとしているが、水と活性汚泥中の有機汚泥を完全に分離させることはできず、処理水の中に多量の固形物成分を含有する高濃度の有機汚泥が存在し、処理水をそのまま河川に放流すると河川が汚れ、生物の生息環境を破壊してしまうという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、高濃度の有機汚泥を含む排水を河川の環境基準に当てはまる水質に浄化し、河川に放流しても生物の生息環境を破壊することなく改善できる水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の水処理装置は、装置本体の内部に下端より栗石層、バラス層、ジャミ層を順番に積層するとともに、前記ジャミ層の上にジャミ層よりも粒径が小さい砂からなり上段側ほど粒径が小さくなるように積層された複数段の濾材層を設けて、最上段の濾材層よりもやや上側位置において装置本体の内部に原水を投入するための原水投入口を設け、装置本体の下端内部より逆洗水を投入するための逆洗水投入口を設け、装置本体の底部に処理水取り出し口を設けてなる排水の処理装置であって、前記濾材層の内、下端に位置する濾材層を除く濾材層に使用される砂の均等係数をほぼ1とし、前記原水投入口の出口が装置本体の内面に沿うように向けられて原水投入口から流入する原水が最上段の濾材層の上で横方向に循環するように構成され、さらにこの原水を上下方向に循環させる手段を設けてなることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の水処理装置は、最上段の濾材層の上端と同高さ位置において装置本体の内部に表洗水を投入するための表洗水投入口を設け、表洗水投入口より装置本体の内部に表洗水を送り込み、この表洗水を横方向に循環させて最上段の濾材層から汚れを剥離させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の水処理装置は、原水が出口が装置本体の内面に沿うように向けられた原水投入口から流入することにより原水は最上段の濾材層の上で横方向に循環するようになり、この原水を上下方向に循環させることにより、原水中の汚濁物質は最上段の濾材層の上で循環を繰り返して最上段の細かい砂からなる濾材層の上に沈降しにくくなり、汚濁物質が最上段の濾材層の上に粘土状に付着堆積することはなくなり、またこの汚濁物質は最上段の濾材層の中に侵入してマットボール状の塊が形成されることもなくなる。そして原水は前記最上段の濾材層からその下側の濾材層を通過して、ジャミ層、バラス層、栗石層を通り処理水取り出し口より取り出されて河川などに排出される。前記前記濾材層の内、下端に位置する濾材層を除く濾材層に使用される砂の均等係数をほぼ1としてあることにより濾材層を下から順番に積み重ねたとき下側の濾材層より上側の濾材層の細かい砂が下側の濾材層の中に入って上下の濾材層の砂が混ざり合うことがなく、また各濾材層での濾過処理を安定させることができる。また、被処理水である原水が複数段の濾材層を通過して、ジャミ層、バラス層、栗石層を通る過程において各層で成長した微生物により原水中に溶存する有機物が分解処理され、河川などに排出されても問題のない安全な清澄水として処理水取り出し口より取り出されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図2を用いて具体的に説明する。
図において、1はタンク状の装置本体で、この装置本体1の内部には下端より厚み250mmの栗石層2、粒径10mm〜20mmの小石からなる厚み100mmのバラス層3、粒径5mm〜10mm未満の小石からなるジャミ層4を厚み50mmで順番に積層するとともに、前記ジャミ層4の上にジャミ層4よりも粒径が小さい砂からなり上段側ほど粒径が小さくなるように積層された複数段の濾材層5〜10を設けてある。そして、最上段の濾材層10の砂の粒径は0.6mm、その下側の濾材層9の砂の粒径は1.2mm、その下側の濾材層8の砂の粒径は1.4mm、その下側の濾材層7の砂の粒径は1.6mm、その下側の濾材層6の砂の粒径は1.8mm、そしてその下側の濾材層5の砂の粒径は2.0mm以上5mm未満である。そして、最上段の濾材層10を除く濾材層5〜9の厚みをそれぞれ50mmとし、最上段の濾材層10の厚みを200mmとしてある。11は前記最上段の濾材層10よりもやや上側位置において装置本体1の内部に原水を投入するための原水投入口で、出口は二股状としてある。12は最上段の濾材層10の上端と同高さ位置において装置本体1の内部に表洗水を投入するための表洗水投入口で、装置本体1の内部を左右に分けて左右にそれぞれ2箇所づつ設けられ、表洗水を横方向に循環させるようにしてある。13は装置本体1の下端内部より逆洗水を投入するための逆洗水投入口、14は装置本体1の高さ方向中央位置において前記原水投入口11よりもやや上側位置で装置本体1内より逆洗水を外部に排出するために設けられた逆洗水排出口である。この逆洗水排出口14は装置本体1内に水平に突出するように設けられ、装置本体1内における上端は水平にカットされている。15は装置本体1の底部に設けられた処理水取り出し口である。
【0009】
上記構成の水処理装置には食品工場などにおいて有機排水の処理装置で処理された後の排水が前記原水投入口11より送り込まれ、前記濾材層10、9,8、7、6、5で濾過された後、前記ジャミ層4、バラス層3、栗石層2を通過して処理水取り出し口15より取り出される。
【0010】
前記有機排水の処理装置では有機排水汚泥を沈殿槽で効率的に沈殿させるために糊状のポリマーが充填されることから、有機排水処理装置から送り込まれた排水中に含まれる窒素、リンなどの栄養塩素や有機物などからなる汚濁物質が前記ポリマーにより固まって前記濾材層10、9,8、7、6、5の内、特に最上段の最も小さい砂の粒径0.6mmの濾材層10の上に粘土状に付着堆積し、またこの汚濁物質は最上段の濾材層10の中にも侵入してマットボール状の塊が形成され、安定した水処理機能を果せなくなる。
【0011】
このようなことから、本発明の水処理装置においては、装置本体1に設けられる前記原水投入口11の出口を装置本体1の内面に沿うように向け、原水投入口11から流入する汚泥水の流れ方向が装置本体1の内面に沿う方向となるように構成して汚泥水を最上段の濾材層10の上で横方向に循環させるように構成するとともに、装置本体1の内部における最上段の濾材層10に下端を5cm程差し込まれるエアー噴出し口16を備えたブロアー(図示せず)を設け、このブロアーによりエアー噴出し口16からエアーを下向きに噴出させて汚泥水を上下方向に循環させるように構成してある。なお、エアー噴出し口16の配設位置は図面に示す実施の形態では装置本体1の中央とその回り4箇所に設定されているが、最上段の濾材層10の全面に対しほぼ均等にエアーを噴出させる位置に設定されておれば良く、エアー噴出し口16の数は5箇所に限定されるものではない。また、装置本体1内に設けられる各濾材層6〜10に使用される砂の均等係数はほぼ1として各濾材層6〜10の有効径を揃え、各濾材層6〜10の空隙率を大きくしてある。
【0012】
このような構成を備えた本排水の処理装置に窒素、リンなどの栄養塩素や有機物、さらにはポリマーなどからなる汚濁物質を含む排水が原水として原水投入口11より投入される。この原水は前述のように出口が装置本体1の内面に沿うように向けられた原水投入口11から流入することにより原水は最上段の濾材層10の上で横方向に循環するようになり、またブロアーによりエアー噴出し口16から下向きに噴出するエアーにより最上段の濾材層10は攪拌されつつ前記横方向に循環する原水が上下方向の循環に変わり、原水中の汚濁物質は最上段の濾材層10の上で循環を繰り返して最上段の細かい砂からなる濾材層10の上に沈降しにくくなり、汚濁物質が最上段の濾材層10の上に粘土状に付着堆積することはなくなり、またこの汚濁物質は最上段の濾材層10の中に侵入してマットボール状の塊が形成されることもなくなる。そして原水は前記最上段の濾材層10から濾材層9、濾材層8、濾材層7、濾材層6、濾材層5を通過して、ジャミ層4、バラス層3、栗石層2を通り処理水取り出し口15より取り出されて河川などに排出される。前記濾材層10、濾材層9、濾材層8、濾材層7、濾材層6に使用される砂の均等係数をほぼ1としてあるのは濾材層6〜10を下から順番に積み重ねたとき下側の濾材層より上側の濾材層の細かい砂が下側の濾材層の中に入って上下の濾材層の砂が混ざり合うことのないようにし、また各濾材層6〜10での濾過処理を安定させるためである。また、被処理水である原水が濾材層10から濾材層9、濾材層8、濾材層7、濾材層6、濾材層5を通過して、ジャミ層4、バラス層3、栗石層2を通る過程において各層で成長した微生物により原水中に溶存する有機物が分解処理され、河川などに排出されて問題のない安全な清澄水として処理水取り出し口15より取り出されることになる。
【0013】
上記排水の処理装置により濁度が10mg/リットル前後の汚濁原水の処理を実験により繰り返した結果、水質基準の濁度2mg/リットル以下を満足する濁度の清澄水が得られ、この水は再利用も可能であり、河川などに放出しても何ら問題ない。
【0014】
ところで、原水中の汚濁物質が最上段の濾材層10の上に沈降しにくくなって汚濁物質が最上段の濾材層10の上に粘土状に付着堆積することはなくなり、また汚濁物質が最上段の濾材層10の中に侵入してマットボール状の塊が形成されることもなくなるものの、原水中に含まれる汚濁物質が最上段の濾材層10に全く付着しないということはあり得ず、最上段の濾材層10の中に汚濁物質が侵入することにより汚れた濾材層10を洗浄することが必要となる。つまり、上記現象から濾過抵抗が増え、これを復元する必要がある。そこで、汚れた最上段の濾材層10を洗浄して濾過抵抗を復元する場合は原水の流入を止めた状態で最上段の濾材層10の上端と同高さ位置で前記表洗水投入口12より装置本体1の内部に表洗水を送り込み、この表洗水を横方向に循環させ最上段の濾材層10から汚れを剥離させ、その後表洗水の流入を止めた状態で逆洗水投入口13より装置本体1の内部に逆洗水を送り込む。この逆洗水は前記最下端の栗石層2、バラス層3、ジャミ層4、さらに複数段の濾材層5〜10を上向きに噴き上げ、最上段の濾材層10を構成する粒径0.6mmの砂のみを攪拌させる。装置本体1の内部に送り込まれる逆洗水の流体圧力は最上段の濾材層10を構成する砂のみを攪拌させる力に設定され、その下側の濾材層9〜5は逆洗水によって動かないようになっている。この逆洗により最上段の濾材層10を構成する砂は攪拌されるものの、逆洗水の流入を止めることにより最上段の濾材層10を構成する砂は濾材層9の上に重なるように元の状態に戻り、かかる状態で逆洗水排出口14より最上段の濾材層10の上の逆洗後の汚れた水を排出させることにより装置本体1の内部は始めの状態に戻る。この逆洗は定期的に繰り返される。
【0015】
ところで、原水の濁度が非常に高い場合は前述のように表洗水を送り込んで最上段の濾材層10の表層部の汚れを取り除く工程を導入すれば良いが、濁度がそれ程高くない原水を処理する場合は前記ブロアーによりエアー噴出し口16から下向きに噴出するエアーにより最上段の濾材層10を攪拌させているので特に表洗水投入口12を設けなくても良い。
【0016】
さらに、各濾材層5〜10で用いた砂の粒径は上記した実施の形態に限定されるものではなく、原水の汚れの程度や原水中に含まれる汚濁物質の種類に応じて適宜選定すれば良い。
【0017】
なお、以上の説明では食品工場などにおいて有機排水の処理装置で処理された後の排水を処理する場合について述べたが、一部の湖沼やダムなどの水交換が悪く窒素、リンなどの栄養塩素の流入によって水中生物が急激に増殖するような富栄養化が問題となっている閉鎖性水域に存在する水の処理などにも本水処理装置を用いることにより、水質基準の濁度2mg/リットル以下を満足する濁度の清澄水に処理することができ、効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における水処理装置の断面図である。
【図2】同水処理装置の内部を上方から見た平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 装置本体
2 栗石層
3 バラス層
4 ジャミ層
5 濾材層
6 濾材層
7 濾材層
8 濾材層
9 濾材層
10 濾材層
11 原水投入口
12 表洗水投入口
13 逆洗水投入口
14 逆洗水排出口
15 処理水取り出し口
16 エアー噴出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の内部に下端より栗石層、バラス層、ジャミ層を順番に積層するとともに、前記ジャミ層の上にジャミ層よりも粒径が小さい砂からなり上段側ほど粒径が小さくなるように積層された複数段の濾材層を設けて、最上段の濾材層よりもやや上側位置において装置本体の内部に原水を投入するための原水投入口を設け、装置本体の下端内部より逆洗水を投入するための逆洗水投入口を設け、装置本体の底部に処理水取り出し口を設けてなる排水の処理装置であって、前記濾材層の内、下端に位置する濾材層を除く濾材層に使用される砂の均等係数をほぼ1とし、前記原水投入口の出口が装置本体の内面に沿うように向けられて原水投入口から流入する原水が最上段の濾材層の上で横方向に循環するように構成され、さらにこの原水を上下方向に循環させる手段を設けてなることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
最上段の濾材層の上端と同高さ位置において装置本体の内部に表洗水を投入するための表洗水投入口を設け、表洗水投入口より装置本体の内部に表洗水を送り込み、この表洗水を横方向に循環させて最上段の濾材層から汚れを剥離させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−314959(P2006−314959A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142009(P2005−142009)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(504415980)株式会社太陽砂工房 (2)
【Fターム(参考)】