説明

水処理装置

【課題】容易な構成で陰イオン含有排水から陰イオンを分離し、高純度の結晶として回収する。
【解決手段】水処理装置は、イオン含有水からイオンを回収する水処理装置であって、被処理水ラインと、濃縮水ラインと、反応槽と、結晶排出ラインとを備える。被処理水ラインは、イオン含有水が被処理水として供給される。濃縮水ラインは、海水を淡水化する際に得られた海水の濃縮水が供給される。反応槽は、前記被処理水ラインを介して供給される被処理水に含まれる陰イオンと、前記濃縮水ラインを介して供給される濃縮水に含まれる海水由来の陽イオンとを反応させて被処理水に含まれるイオンを結晶化する。結晶排出ラインは、生成された結晶を前記反応槽から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被処理水に含まれるリン酸イオン等の陰イオンを結晶として回収する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理においては、水質汚濁防止の観点から、様々な浄化方法が適用されている。また、水質汚濁成分の一部である陰イオンは、分離除去するだけでなく、分離した後に回収して再資源として活用する技術も注目されている。具体的には、陰イオンを含有する被処理水に結晶を析出させるイオン成分を混合して陰イオンの結晶を析出させる反応晶析技術が一般的である。この反応晶析技術により、結晶を生成及び成長させて分離し、再資源として活用することが可能になる。
【0003】
反応晶析技術では、結晶を生成するための別のイオン成分の含有液を混合させる必要があり、混合させるイオン成分を含む薬剤の確保の軽減やコストを低下することが望ましい。また、回収して再資源とする際には、回収した結晶に不純物の含有を防止して結晶の品質を向上することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4310196号公報
【特許文献2】特開2009−56457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題に鑑み、容易な構成で陰イオン含有排水から陰イオンを分離し、高純度の結晶として回収することのできる水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る水処理装置は、イオン含有水からイオンを回収する水処理装置であって、被処理水ラインと、濃縮水ラインと、反応槽と、結晶排出ラインとを備える。被処理水ラインは、イオン含有水が被処理水として供給される。濃縮水ラインは、海水を淡水化する際に得られた海水の濃縮水が供給される。反応槽は、前記被処理水ラインを介して供給される被処理水に含まれる陰イオンと、前記濃縮水ラインを介して供給される濃縮水に含まれる海水由来の陽イオンとを反応させて被処理水に含まれるイオンを結晶化する。結晶排出ラインは、生成された結晶を前記反応槽から排出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る水処理装置を説明する図である。
【図2】第2実施形態に係る水処理装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る水処理装置について説明する。この水処理装置は、陰イオン成分を含むイオン含有水を処理する水処理装置である。具体的には、実施形態に係る水処理装置は、リン酸イオン、硫酸イオン、フッ化物イオン等のイオン成分を含むイオン含有排水やイオン含有排水の濃縮水から、イオン成分を結晶として分離し、回収する。例えば、リン酸イオンは、下水処理場や食品加工工場等から排出される排水に含まれている。また、フッ化物イオンは、半導体製造工場から排出される排水に含まれている。さらに、硫酸イオンは、燃焼排ガス処理で排出される排水に含まれている。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0009】
〈第1実施形態〉
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理装置1aは、海水を淡水化する淡水化手段10と、イオンを結晶化する反応槽18と、陰イオン成分を含むイオン含有水(イオン含有排水やイオン含有排水の濃縮水)を被処理水として反応槽18に供給する被処理水ライン19と、淡水化手段10で海水を淡水化する際に得られた海水の濃縮水を反応槽18に供給する濃縮水ライン17と、イオン含有水中の陰イオンと海水の濃縮水中の陽イオンによる結晶化を促進させる反応助剤を反応槽18に供給する反応助剤供給装置22と、結晶化で利用される種結晶を反応槽18に供給する結晶供給装置20とを備えている。
【0010】
水処理装置1aは、海水の淡水化手段10として、第1濾過膜12及び第2濾過膜15を備えている。この淡水化手段10で得られた淡水の利用方法は限定されないが、例えば、飲料水、原子力発電や火力発電等のボイラーを使用した発電で用いる工業用水の造水等に利用することができる。
【0011】
第1濾過膜12には、海水ライン11を介して海水が供給される。第1濾過膜12は、海水から、海水に含まれる固形物(海洋微生物や浮遊固形物等の夾雑物)を分離する膜であって、例えば、UF膜(限外濾過膜)やMF膜(精密濾過膜)である。第1濾過膜12で固形物が分離された海水は、第1処理水ライン13を介して第2濾過膜15に送水される。また、第1濾過膜12で海水から分離された固形物は、固形物ライン14を介して水処理装置1aから排出される。
【0012】
第2濾過膜15は、固形物が分離された海水から、塩分を分離する膜であって、例えば、RO膜(逆浸透膜)である。第2濾過膜15で塩分が分離されることで海水は淡水となり、第2処理水ライン16を介して水処理装置1aから排出される。また、第2濾過膜15で淡水と分離された海水の濃縮水は、濃縮水ライン17を介して反応槽18に送水される。
【0013】
すなわち、水処理装置1aでは、第1濾過膜12で海水中の固形物を除去することで、第2濾過膜15における負荷を軽減するとともに、第2濾過膜15の耐久性を長くすることができる。また、第1濾過膜12で海水中の固形物を除去することで、海水の濃縮液に固形物が含まれることを防止することができる。なお、図1では省略しているが、淡水化手段10が処理する海水には、海水中の微生物等が含まれるため、このような微生物の繁殖を抑制するため、一般的な淡水化装置で行われているように、予め殺菌剤や凝集剤が投入されることが望ましい。
【0014】
反応槽18には、濃縮水ライン17を介して濃縮水が供給される他、被処理水ライン19を介して被処理水であるイオン含有水が供給され、結晶供給装置20から結晶供給ライン21を介して種結晶が供給され、反応助剤供給装置22から反応助剤ライン23を介して反応助剤が供給される。
【0015】
反応槽18内では、濃縮水ライン17を介して供給された濃縮水に含まれる海水由来の陽イオン(カルシウムイオン又はマグネシウムイオン)と、被処理水ライン19を介して供給された被処理水に含まれる陰イオンとが反応し、結晶供給ライン21を介して供給された種結晶に析出されて結晶化する。反応槽18で得られた結晶は、結晶排出ライン25を介して反応槽18から排出される。また、イオンが結晶として分離された後の処理水は、第3処理水ライン19から排出される。
【0016】
結晶供給装置20は、被処理水と濃縮水に応じて定められる種結晶を供給する。具体的には、反応槽18における反応で得る結晶と同一の結晶である。例えば、被処理水がリン酸イオンを含み、濃縮水にカルシウムイオンを含むとき、反応槽18で析出されるのはリン酸カルシウム塩であるため、結晶供給装置20は、種結晶としてリン酸カルシウム塩を供給する。また、被処理水がリン酸イオンを含み、濃縮水にマグネシウムイオンを含むとき、反応槽18で析出されるのはリン酸マグネシウム塩であるため、結晶供給装置20は、種結晶としてリン酸マグネシウム塩を供給する。
【0017】
反応助剤供給装置22は、被処理水中の陰イオンと濃縮水中の陽イオンとの反応を促進させるため、被処理水と濃縮水の混合のpH値に応じた反応助剤を供給する。例えば、反応助剤供給装置22は、被処理水と濃縮水の混合水のpH値が結晶化に最適なpH値になるように調整する酸やアルカリ等の調整剤を反応助剤として供給する。または、反応助剤供給装置22は、混合水が結晶化に必要な過飽和度を超えるための溶解度積を満たすように調整するイオン含有水を反応助剤として供給する。
【0018】
例えば、イオン含有水であるリン酸含有排水からリン酸アンモニウムマグネシウム塩を結晶化する場合、反応助剤のイオン含有水としてアンモニウムイオンを供給することができる。アンモニウムイオンは、薬品として提供されているアンモニウムイオンを使用する他、アンモニウムイオンを含有する下水やし尿、食品加工工場の排水を用いてもよく、このような排水を用いることで、薬品を使用する場合と比較して、薬品に必要なコストを低減することもできる。
【0019】
上述したように、第1実施形態に係る水処理装置1aでは、イオン含有水に含まれる陰イオンの回収に淡水化で得られた海水の濃縮水に含まれる陽イオンを使用することで、薬品の入手の手間やコストを軽減することができる。また、水処理装置1aでは、薬品の代わりに海水の濃縮水を使用することにより回収されるイオンへの薬品の混入を防止し、高純度のイオンを回収することが可能となり、回収したイオンの再資源化を実現することができる。
【0020】
さらに、水処理装置1aでは、第1濾過膜12で固形物を除去した後に第2濾過膜15で淡水化された海水の濃縮水を利用して陰イオンを回収した場合、陽イオン含有水として使用する海水の濃縮液には不純物となる固形物は含まれず、さらに高純度のイオンを回収することができる。
【0021】
なお、仮に、反応助剤として排水に含まれるアンモニウムイオンを反応助剤として、イオン含有水に含まれるリン酸イオンを海水の濃縮水に含まれるマグネシウムイオンと反応させてリン酸マグネシウムを回収した場合、植物育成に必須元素であるリン酸アンモニウムマグネシウムを回収することができる。このような場合、イオン含有水に含まれるリン酸イオンだけでなく、排水中のアンモニウムイオンや海水の中のマグネシウムイオンも肥料として利用することが可能となり、リン酸イオンの回収とともに有用な肥料の生成を実現する。
【0022】
〈第2実施形態〉
図2に示すように、第2実施形態に係る水処理装置1bは、図1を用いて上述した水処理装置1aと比較して、被処理水ライン19の前段に、吸着剤反応器26、排水ライン27、第4処理水ライン28、脱離剤供給装置29及び脱離剤ライン30を備え、反応槽18には、吸着剤反応器26から被処理水が送水される点で異なる。また、各ライン19、27、28及び30には、それぞれバルブ191,271,281及び301を備えている。
【0023】
吸着剤反応器26には、排水ライン27を介して水処理装置1bの処理対象である陰イオン成分を含有するイオン含有水(イオン含有排水やイオン含有排水の濃縮水)が供給される。この吸着剤反応器26には、イオン含有水が含有するイオンを吸着する吸着剤(図示せず)を内部に備えている。したがって、バルブ271が開状態の場合に排水ライン27を介してイオン含有水が供給されると、イオン含有水に含まれるイオンは、吸着剤に吸着される。
【0024】
この吸着剤反応器26で使用される吸着剤は、目的とするイオン成分を選択的かつ効率的に除去分離することができ、繰り返し利用できる吸着剤であることが望ましい。例えば、リン酸イオンを吸着する吸着剤としては、特許文献2に記載されるような分子構造の一端にアミノ基を有する窒素含有化合物と、この窒素含有化合物を担持する担体と、前記窒素含有化合物に固定化された、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオンおよびジルコイウムイオンの群から選ばれる少なくとも一つの金属イオンを有する吸着剤等を用いることができる。
【0025】
イオン含有排水中のイオンが吸着剤に吸着された後の排水は、バルブ281が開状態の場合に第4処理水ライン28を介して吸着剤反応器26から排出される。
【0026】
脱離剤供給装置29は、吸着剤反応器26内の吸着剤によるイオンの吸着量が低下し、バルブ281が閉状態かつバルブ301が開状態になると、脱離剤ライン30を介して吸着剤反応器26に脱離剤を供給し、吸着剤から吸着されているイオンを脱離する。例えば、特許文献2に記載されるような吸着剤からイオンを脱離する脱離剤には、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、塩酸等のpH調整剤、塩化ナトリウム等の塩から選択又は混合して利用することができる。
【0027】
吸着剤反応器26の吸着剤充填堆積に対する脱離液の通液比が低いほど、高濃度に濃縮された被処理水であるイオン含有水を反応槽18に供給することができ、効率的な結晶生成を実現することができる。したがって、脱離剤供給装置29は、脱離剤の通液倍率が低い(通液量が少ない)場合、十分な脱離が可能な通液速度で脱離剤を供給することが望ましい。また、脱離剤供給装置29が供給する脱離液は、反応槽18における結晶の生成に対する影響が小さい成分及び濃度になるように選定することが望ましい。
【0028】
上述したように、第2実施形態に係る水処理装置1bでは、イオン含有水に含まれる陰イオンの回収に淡水化で得られた海水の濃縮水に含まれる陽イオンを使用することで、薬品の入手の手間やコストを軽減することができる。また、水処理装置1bでは、薬品の代わりに海水の濃縮水を使用することにより回収されるイオンへの薬品の混入を防止し、高純度のイオンを回収することが可能となり、回収したイオンの再資源化を実現することができる。
【0029】
さらに、水処理装置1bでは、第1濾過膜12で固形物を除去した後に第2濾過膜15で淡水化された海水の濃縮水を利用して陰イオンを回収した場合、陽イオン含有水として使用する海水の濃縮液には不純物となる固形物は含まれず、さらに高純度のイオンを回収することができる。
【0030】
また、水処理装置1bでは、吸着剤反応器26内でイオン吸着剤を使用して得られた陰イオンの濃縮水を被処理水として処理するために被処理水の陰イオンの濃度が高く、反応槽18を小型化できるとともに、陰イオン以外の物質の被処理水への含有を抑制して結晶化されたイオンの純度を向上させることができる。
【0031】
〈変形例〉
図1及び図2を用いて上述した例では、第2濾過膜15と反応槽18とは濃縮水ライン17で接続され、第2濾過膜15で得られた海水の濃縮水は濃縮水ライン17を介して第2濾過膜15から直接反応槽18に送水されている。しかし、反応槽18への濃縮水の送水は、これに限られない。
【0032】
例えば、第2濾過膜15と反応槽18の間に濃縮水の貯水槽を設け、第2濾過膜15で得られた濃縮水はこの貯水槽に一時貯水した後、反応槽18における処理量に応じて貯水槽から反応槽18に送水してもよい。このように、貯水槽に一時貯水可能とすることで、第2濾過膜15で得られる濃縮水の量と反応槽18で処理する濃縮水の量とが異なる場合であっても対応することができる。
【0033】
また例えば、第2濾過膜15と反応槽18とが濃縮水ライン17で接続することが困難な位置関係のとき、第2濾過膜15で得られた海水の濃縮水を、タンクローリー等の輸送手段を利用して反応槽18が設置される場所まで輸送してもよい。このように、輸送手段を利用することで、反応槽18の設置位置に制限がなくなる。
【0034】
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1a,1b…水処理装置
10…淡水化手段
11…海水ライン
12…第1濾過膜
13…第1処理水ライン
14…固形物ライン
15…第2濾過膜
16…第2処理水ライン
17…濃縮水ライン
18…反応槽
19…被処理水ライン
20…結晶供給装置
21…結晶供給ライン
22…反応助剤供給装置
23…反応助剤ライン
24…第3処理水ライン
25…結晶ライン
26…吸着剤反応器
27…排水ライン
28…第4処理水ライン
29…脱離剤供給装置
30…脱離剤ライン
191,271,281,301…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン含有水からイオンを回収する水処理装置であって、
イオン含有水が被処理水として供給される被処理水ラインと、
海水を淡水化する際に得られた海水の濃縮水が供給される濃縮水ラインと、
前記被処理水ラインを介して供給される被処理水に含まれる陰イオンと、前記濃縮水ラインを介して供給される濃縮水に含まれる海水由来の陽イオンとを反応させて被処理水に含まれるイオンを結晶化する反応槽と、
生成された結晶を前記反応槽から排出する結晶排出ラインと、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
イオン含有水に含まれるイオンは、リン酸イオンであることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
イオン含有水に含まれるイオンは、硫酸イオン又はフッ化物イオンであることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記被処理水ラインから供給される被処理水は、下水に由来することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項5】
前記反応槽で生成される結晶は、リン酸カルシウム塩又はリン酸マグネシウム塩であることを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記反応槽に陰イオンと陽イオンの反応を促進させる反応助剤を供給する反応助剤供給装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項7】
前記濃縮水ラインと接続され、当該濃縮水ラインを介して供給される濃縮水を貯留する濃縮水貯留槽を備え、
前記反応槽は、前記濃縮水貯留槽で貯留された濃縮水が供給されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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