説明

水処理装置

【課題】本発明は、バラスト水用のフィルタ手段およびフィルタ手段の逆洗浄水を排水する排水管の設置を不要とするバラスト水処理装置の提供を目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために本発明は、入口管12と出口管13と二つの処理ユニット14を備え、処理ユニット14は水が流入出する上部開口15および下部開口16と、処理ユニット14内に、複数の紫外線照射手段17と、下部開口15から上部開口16へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタ18を水の流れと直交するように配置し、二つの処理ユニット14と入口管12と出口管13とを接続する上部接続管23、下部接続管24、上下接続管25を備えた構成とし、複数の開閉弁により水の流れを制御できるので、バラスト水用のフィルタ手段を用いることなく、バラスト水の処理が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を用いて微生物種等を処理する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線を用いて微生物種を処理する水処理装置としては、船舶に搭載するバラスト水処理装置がある。
【0003】
バラスト水とは、船舶の安定航行を行うために、船舶の停泊地において、適宜取り込まれ、また排出されるようになっており、バラスト水を取り込んだ停泊地に生息していた水生生物や細菌類等の微生物種を含むバラスト水が、その環境とは異なる停泊地において排出されると、その排出地における微生物種の生態系を破壊させることがあり、このような排出地の海域における生態系の破壊が世界的に問題となっている。
【0004】
そこで、上述した生態系の破壊を防止するため、紫外線を用いてバラスト水に含まれる微生物種を処理する、バラスト水処理装置が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0005】
以下、その処理装置に関して図を参照しながら説明する。
【0006】
図7に示すように、従来のバラスト水処理装置101は、バラストポンプから送水されたバラスト水の入口102および出口103と、少なくとも一つの処理ユニット104を備え、処理ユニット104はバラスト水が流入する流入口105と、バラスト水が流出する流出口106と、少なくとも一つの紫外線照射手段107を備えたものであって、入口102と処理ユニット104の流入口105とを接続する入口管108と、処理ユニット104の流出口106と出口103とを接続する出口管109と、バラスト水用のフィルタ手段110とから成り、フィルタ手段110にはドレン排出用の排水管111を備えたものである。
【0007】
このような構成において、バラストポンプにより送水されたバラスト水は、入口102から入口管108を通ってフィルタ手段110を流通し、流入口105へと流入して、処理ユニット104内で紫外線照射手段によりバラスト水中の微生物種が処理され、流出口106から出口管109を通って出口103へと流れる。
【0008】
このとき、バラストポンプから送水されるバラスト水には、大小さまざまな微生物が含まれ、大きな微生物は、処理ユニット104内をバラスト水が通過する時間内では紫外線照射手段107により処理できないので、処理ユニット104の前段にバラスト水用のフィルタ手段110を設けている。
【0009】
このフィルタ手段110は、内部に所定の開口を有するメッシュフィルタを備え、その開口サイズよりも大きい微生物を水中から濾過して取り除くことができる。
【0010】
またメッシュフィルタ上に、ある一定量以上の微生物が堆積すると、自動でメッシュフィルタの逆洗浄を行い、逆洗浄により排出される微生物を含んだ水は、排水管111を通って元の海中へと戻されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2010−504855
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記バラスト水処理装置では、バラスト水用のフィルタ手段を設置する必要があり、そのためバラスト水処理装置に許容される設置スペースに制限がある船舶内において、特に処理ユニットを一つまたは二つ程度使用する小流量のバラスト水処理装置では、バラスト水用のフィルタ手段の設置スペースが相対的に大きな割合を占め、処理ユニットを処理能力に対して小さく設計せざるを得ないため、処理ユニット内の圧力損失が大きくなることでバラストポンプに掛かる負荷が大きくなり、場合によってはバラストポンプを増設する必要があるという課題がある。
【0013】
また、濾過除去した微生物を含む水を排水するための排水管を配管する必要があり、配管スペースの確保が必要なことに加え、この排水管を通る水に含まれる微生物は、紫外線照射手段による処理が行われないので、配管内に滞留すると、排水地の海域へと移動してしまうリスクを伴うという課題がある。
【0014】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、バラスト水用のフィルタ手段および排水管を用いることなく短時間で大量の水を処理できる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明のバラスト水処理装置では、水を流入させる入口管と、水を流出させる出口管と、少なくとも二つの処理ユニットを備え、処理ユニットは、水が流入または流出する上部開口および下部開口と、複数の紫外線照射手段と、下部開口から上部開口へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタを水の流れと直交するように配置し、複数の処理ユニットそれぞれの上部開口を接続する上部接続管と、複数の処理ユニットそれぞれの下部開口を接続する下部接続管と、上部接続管と下部接続管を接続する上下接続管を備え、下部接続管と入口管との接続部に第一開閉手段と、上部接続管と上下接続管との接続部に第二開閉手段と、出口管と上下接続管との接続部に第三開閉手段と、上下接続管の第三開閉手段と第二開閉手段の途中に第四開閉手段とを備えるものである。
【0016】
このような構成において、バラストポンプにより送水された水は、入口管、下部接続管を通って、第一開閉手段を介し一方の下部開口から処理ユニット内に流入し、処理ユニット内で紫外線照射手段により水中の微生物種が処理され、上部開口から上部接続管を通って、他方の上部開口を介し他方の処理ユニット内に流入し、紫外線照射手段により水中の微生物種が再び処理され、下部開口、下部接続管、第一開閉手段、第三開閉手段を介し、出口管を通ってバラスト水処理装置外へと流れる。
【0017】
このとき、水中に含まれる微生物種の内、処理に時間とエネルギーを要するプランクトンのような大きい微生物は、一方の処理ユニット内に水の流れと直交するように配置された開口サイズの異なるメッシュのいずれかによって濾過されて処理ユニット内に留まり、紫外線照射手段により時間を掛けて処理が行われる。
【0018】
また、上部接続管を通って他方の処理ユニット内へと流入した水は、紫外線照射手段により水中の微生物種が再び処理されると同時に、フィルタ上に堆積した微生物種の残骸を流れに巻き込み、すなわちフィルタの洗浄を行いつつバラスト水処理装置外へと流れる。
【0019】
ここで、水中に含まれる微生物の内、細菌のような小さい微生物は、複数の処理ユニットを通過する間に十分に処理されるので、バラスト水処理装置の後段に、規定量以上の微生物種を生きたまま流入させることはない。
【発明の効果】
【0020】
このようなバラスト水の処理過程において、複数の処理ユニットの内、流れの前段になる処理ユニットと、流れの後段になる処理ユニットを、所定の間隔で開閉手段によって切り換えることで、処理ユニット内を流れる水の流通方向が、下部開口から上部開口へ向かう方向と、上部開口から下部開口へ向かう方向とで切り換わるので、処理ユニット内に堆積する微生物の残骸を主とする堆積物による汚れ等で処理能力を損なうことなく、短時間で大量の水処理が要求されるバラスト水の処理が連続運転にて可能になる。
【0021】
また、バラスト水用のフィルタ手段を設ける必要がなくなるので、船舶内で許容されるバラスト水処理装置の設置スペースの内、処理ユニットの設置スペースを大きく取ることができるので、処理ユニット内の圧力損失を小さくすることができ、さらに排水管の配管が不要になるので、排水管内に微生物が滞留して排水地へと移動するリスクを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるバラスト水処理装置を用いた船舶を示す斜視図
【図2】同要部を示す図
【図3】同バラスト水処理装置の構成を示す構成図
【図4】同バラスト水処理装置の主要部断面を示す断面概略図
【図5】フィルタの概要を示す概略図
【図6】同バラスト水処理装置の運転状態を示すブロック図
【図7】従来のバラスト水処理装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、バラスト水処理装置を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1の1は、港2に係留している船舶を示し、この船舶1の喫水線3の下方にはシーチェスト4が設けられている。
【0025】
図2は図1における船舶1のバラスト水の取り込み、排出経路を示している。すなわち、船舶1内にバラスト水を取り込む場合には、まず船舶1内の切換弁5をシーチェスト4側に切換え、切換弁6をタンク流入口7側に切換え、次に船舶1内のバラストポンプ8を駆動する。
【0026】
すると、シーチェスト4から例えば海水がバラスト水として流入し、その後、バラストポンプ8、バラスト水処理装置9、タンク流入口7を介してバラストタンク10内に取り込まれる。
【0027】
また、バラストタンク10内のバラスト水を排出する場合には、切換弁5をタンク流出口11側に切換え、切換弁6をタンク流入口7とは反対側に切換え、次にバラストポンプ8を駆動する。
【0028】
すると、バラストタンク10内のバラスト水はタンク流出口11から切換弁5、バラストポンプ8、バラスト水処理装置9、切換弁6を介し、シーチェスト4を介して船舶1外に排出される。
【0029】
図3は図2におけるバラストポンプ8から切換弁6までの間に介在されたバラスト水処理装置9の構成図を示す。
【0030】
図3に示すようにこのバラスト水処理装置9は、バラスト水を流入させる入口管12と、バラスト水を流出させる出口管13と、二つの処理ユニット14を備えている。
【0031】
この処理ユニット14の材質は、海水による侵食に優れた耐性を持つ金属(例えば、チタン、ステンレス)であり、水平断面が矩形の略直方体形状で、耐圧性を向上させるために、所定間隔で同素材の梁が外側壁面に溶接されている。
【0032】
また、バラスト水が、処理ユニット14内外へとスムーズに流出入するように、配管への接続部の鉛直断面が部分的に略台形形状になっている。
【0033】
またさらに、この処理ユニット14の構成は、バラスト水が流入または流出する上部開口15および下部開口16を備え、処理ユニット14内には、複数の紫外線照射手段として紫外線照射装置17と、下部開口16から上部開口15へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタ18が水の流れと直交するように配置されている。
【0034】
またさらに配管系として、二つの処理ユニット14のそれぞれの上部開口15を接続する上部接続管23と、それぞれの下部開口16を接続する下部接続管24と、上部接続管23と下部接続管24とを接続する上下接続管25とを備えている。
【0035】
またさらに、このバラスト水処理装置9にはバラスト水の流れを制御する複数の開閉手段としての開閉弁を備え、入口管と下部接続管との接続部に第一開閉弁19と、上部接続管と上下接続管との接続部に第二開閉弁20と、出口管と上下接続管との接続部に第三開閉弁21と、上下接続管の第三開閉弁と第二開閉弁の途中に第四開閉弁22とを備えている。
【0036】
ここで、各々の開閉弁は、電源OFF時に常時閉となる自動弁であり、接液部には海水による侵食に優れた耐性を持つ金属(例えば、チタン、ステンレス)が用いられており、異常が発生した時などの緊急時には、手動で開閉を行うこともできる手動レバーが併設されている。
【0037】
図4はこのバラスト水処理装置9の主要部の断面概略図を示し、図5にフィルタ18の概要を示す概略図を示す。
【0038】
図4に示すように、紫外線照射手段17は、天然石英製の保護管27と、保護管27内に254nmの紫外光を主に発生させる紫外線ランプ28と、保護管27の両端には保護管27内を気密に保ち処理ユニット14壁面への取り付けを可能にするランプハウジング29と、ランプハウジング29内にはランプ温度を検知する温度検知手段として温度センサ30を備えている。
【0039】
この紫外線照射手段17は、処理ユニット14内にバラスト水の流水方向と直交する方向に千鳥配置で複数配設され、ランプハウジング29が処理ユニット14の側壁に取り付き、処理ユニット14内に紫外線を照射できるようになっており、処理ユニット14内には内部の紫外線照射強度を検知できる紫外強度検知手段として紫外線センサ31を備えている。
【0040】
また紫外線照射手段17の電源については、ランプハウジング29から電源線を取り出し、処理ユニット14に隣接された電源盤32へと配線されている。
【0041】
この電源盤32内には、紫外線ランプ28の点灯を制御する電子安定装置33を備え、紫外線ランプ28の温度センサ30により検知された温度に合わせて紫外線ランプ28に流れる電流を制御することで、紫外線ランプ28の点灯状態を安定させることができ、また処理ユニット14内の紫外線センサ31により検知された紫外強度から、紫外線ランプ28の不点灯や異常を検出し、例えば電源盤32内に備えられた異常警報装置34により作業者に注意を喚起することができる。
【0042】
また電源盤32内には、各々の開閉手段の切換え制御を行う電子基盤35を備えている。
【0043】
またさらに、この温度センサ30および紫外線センサ31により得られた値は、電源盤32内に備えられた電子データ記録装置36に記録することができる。
【0044】
図4および図5に示すようにフィルタ18は、紫外線照射手段17と平行に、かつ隣接する紫外線照射手段17同士の間に、バラスト水の流れを塞ぐように直交して配置される。
【0045】
またさらに、このフィルタ18は強度と表面積を大きく取るため、三次元の織り構造(例えば平織や綾織)のメッシュであり、複数の開口サイズの異なるメッシュを処理ユニット14の下部開口16から上部開口15へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなるように配置したものである。
【0046】
このことにより、図5(a)に示すように、バラスト水が開口サイズの大きなフィルタ18から開口サイズの小さいフィルタ18へ向かう方向へ流れた場合には、バラスト水中に含まれる大小さまざまな微生物種の内、処理に時間とエネルギーを要するプランクトン39のような大きい微生物は、開口サイズの異なるメッシュのいずれかによって濾過され、処理ユニット14内に留めることができる。
【0047】
また、図5(b)に示すように、バラスト水が開口サイズの小さいフィルタ18から開口サイズの大きいフィルタ18へ向かう方向に流れた場合には、フィルタ18に堆積した微生物の残骸を流れに巻き込んで、すなわちフィルタ18の洗浄を行うことができる。
【0048】
フィルタ18の材質は、海水による侵食に優れた耐性を持つ金属(例えばチタンやステンレス)であり、フィルタ18表面には、数百nmの紫外光により励起し、活性種を発生することができる光触媒粉を混練した耐紫外線バインダー(例えばテトラエトキシシランを加水分解し縮重合して得られるシリカ)にて担持しており、この活性種により、水中の微生物種の処理を効率良く行うことができる。
【0049】
ここで、本発明にて用いる光触媒粉は、アナタース型酸化チタンとフッ素とを含み、前記アナタース型酸化チタンとフッ素が化学結合していることを特徴とする酸化チタン光触媒であり、その詳細な内容は、本願特許出願人が先に出願しているWO2008/132824号公報に詳細に記載されている。
【0050】
次いで、このバラスト水処理装置9の一連の運転について説明する。
【0051】
図6に示すように、本発明のバラスト水処理装置には、3段階の運転操作状態がある。
【0052】
先ず、上記構成において、処理ユニット14aを流れの前段に切換える操作について図6(a)に示し図3とともに説明する。
【0053】
処理ユニット14aを流れの前段に切換えるためには、第一開閉弁19を入口管12と下部開口16aとを連通すると同時に下部開口16bと第三開閉弁21とを連通する方向に切換え、第二開閉弁20を上部開口15aと上部開口15bとを連通する方向に切換え、第三開閉弁21を第一開閉弁19と出口管13とを連通する方向に切換え、第四開閉弁22を閉とする操作を行う。
【0054】
この操作により、バラストポンプ8により送水されたバラスト水は、入口管12を通って、第一開閉弁19を介し下部開口16aから処理ユニット14a内に流入する。
【0055】
このときバラスト水中に含まれる微生物種の内、プランクトン39のような大きい微生物は、処理ユニット14a内で下部開口16aから上部開口15aへ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタ18aのいずれかによって濾過されて処理ユ ニット14a内に留まり、紫外線照射手段17により時間を掛けて処理が行われる。
【0056】
その後バラスト水は、上部開口15aを介し上部接続管23を通って、上部開口15bから処理ユニット14b内に流入し、紫外線照射手段17によりバラスト水中の微生物種は再び処理され、下部開口16b、下部接続管24、第一開閉弁19、第三開閉弁21を介し、出口管13を通ってバラスト水処理装置9外へと流れる。
【0057】
ここで、バラスト水中に含まれる微生物の内、細菌40のような小さい微生物は、フィルタ18に濾過されることは無いが、二つの処理ユニット14を通過する間に十分に処理される。
【0058】
次に流れの前段になる処理ユニット14を切換える操作を行う前に必ず行う中間操作について図6(b)に示し図3とともに説明する。
【0059】
二つの処理ユニット14内のバラスト水の流通方向の切換えと、バラスト水処理装置9の連続運転を両立するために、第一開閉弁19を入口管12と下部開口16aおよび下部開口16bとを連通する方向に切換え、第二開閉弁20を第四開閉弁22と上部開口15aと上部開口15bとを連通する方向に切換え、第四開閉弁22を第二開閉弁20と第三開閉弁21とを連通する方行に切換え、第三開閉弁21を第四開閉弁22と出口管13とを連通する方向に切換えるという操作を行う。
【0060】
この操作により、バラストポンプ8により送水されたバラスト水は、入口管12を通って、第一開閉弁19を介し下部開口16aおよび下部開口16bから処理ユニット14aおよび処理ユニット14b内に流入する。
【0061】
このときバラスト水中に含まれるプランクトン39のような大きい微生物は、図5(a)に示すように、処理ユニット14内で下部開口16から上部開口15へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタ18のいずれかによって濾過されて処理ユニット14内に留まり、紫外線照射手段17によりバラスト水中の微生物種は処理され、上部開口15aおよび上部開口15bを介し上部接続管23、第二開閉弁20、第四開閉弁22、上下接続管25を通って、第三開閉弁21を介し、出口管13を通りバラスト水処理装置9外へと流れる。
【0062】
ここで、バラスト水中に含まれる微生物の内、細菌40のような小さい微生物は、フィルタ18に濾過されることは無いが、二つの処理ユニット14を通過する間に十分に処理される。
【0063】
次に処理ユニット14bを流れの前段に切換える操作について図6(c)に示し図3とともに説明する。
【0064】
処理ユニット14bを流れの前段に切換えるために、第一開閉弁19を入口管12と下部開口16bとを連通すると同時に下部開口16aと第三開閉弁21とを連通する方向に切換え、第二開閉弁20を上部開口15aと上部開口15bとを連通する方向に切換え、第三開閉弁21を第一開閉弁19と出口管13とを連通する方向に切換え、第四開閉弁22を閉とする操作を行う。
【0065】
この操作により、バラストポンプ8により送水されたバラスト水は、入口管12を通って、第一開閉弁19を介し下部開口16bから処理ユニット14b内に流入する。
【0066】
このときバラスト水中に含まれるプランクトン39のような大きい微生物は、処理ユニット14b内で下部開口16bから上部開口15bへ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタ18bのいずれかによって濾過されて処理ユニット14b内に留まり、紫外線照射手段17により時間を掛けて処理が行われる。
【0067】
その後バラスト水は、上部開口15bを介し上部接続管23を通って、上部開口15aから処理ユニット14a内に流入し、バラスト水中の微生物種が紫外線照射手段17により再び処理されると同時に、図5(b)に示すようにバラスト水が上部開口15aから下部開口16aへ向かう方向へと、すなわち開口サイズの小さいフィルタ18から開口サイズの大きいフィルタ18へ向かう方向へと段階的にフィルタ18上に堆積した微生物種の残骸を水中に巻き込みながら流れ、フィルタ18bを洗浄するとともに、下部開口16a、下部接続管24、第一開閉弁19、第三開閉弁21を介し、出口管13を通ってバラスト水処理装置外へと流れる。
【0068】
このような一連の操作手順により処理ユニット14を切換える操作を繰り返しながらバラスト水処理装置9を運転することで、バラスト水処理装置9を連続で運転し、プランクトン39のような大きい微生物を処理ユニット14内で処理することができる。
【0069】
またさらに、流れの前段になる処理ユニット14を所定間隔で切換えることで、フィルタ18上の堆積物による汚れ等で処理能力を損なうことなく、短時間で大量の水処理が要求されるバラスト水の処理が可能になる。
【0070】
またさらに、バラスト水用のフィルタ手段を設ける必要がないので、船舶内で許容されるバラスト水処理装置9の設置スペースの内、処理ユニット14の設置スペースを大きく取ることができ、処理ユニット14内の圧力損失を小さくすることができる。
【0071】
またさらに、排水管の配管が不要になるので、排水管内に未処理の微生物が滞留して排水地へと移動するリスクを避けることができる。
【0072】
尚、紫外線照射手段17に用いる紫外線ランプ28は、185nmの光を発生するオゾンランプを用いても良く、このときには保護管27の材質として、185nmの光を効率良く透過する合成石英を用い、更には、保護管27とランプハウジング29で囲まれる空間を高真空にすることで、185nmの光を効率よく利用することができ、オゾンを併用することでバラスト水中に含まれる微生物の処理を更に効率良く行うことができる。
【0073】
尚、上部接続管23の最上部に、点検のための点検口37を設けても良く、これにより異常発生時や緊急時に即座にバラスト水処理装置9内部を確認することができる。
【0074】
尚、第一開閉弁19下部にドレン口38を設けても良く、これにより異常発生時や緊急時、メンテナンス時等の必要時に内部に溜まったバラスト水を適宜抜くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように本発明は、
水を流入させる入口管と、水を流出させる出口管と、二つの処理ユニットを備え、処理ユニットは、水が流入または流出する上部開口および下部開口と、複数の紫外線照射手段と、下部開口から上部開口へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタを水の流れと直交するように配置し、複数の処理ユニットそれぞれの上部開口を接続する上部接続管と、複数の処理ユニットそれぞれの下部開口を接続する下部接続管と、上部接続管と下部接続管を接続する上下接続管を備え、下部接続管と入口管との接続部に第一開閉弁と、上部接続管と上下接続管との接続部に第二開閉弁と、出口管と上下接続管との接続部に第三開閉弁と、上下接続管の第三開閉弁と第二開閉弁の途中に第四開閉弁とを備えるものであって、処理ユニット、入口管、出口管、上部接続管、下部接続管、上下接続管、を通る水の流れを第一開閉弁、第二開閉弁、第三開閉弁、第四開閉弁により制御できることを特徴とするものであるので、バラスト水用のフィルタ手段を用いることなく、二つの処理ユニットを所定の手順で切換えることで、フィルタが堆積物で閉塞することや処理能力の低下を防ぎつつ、バラスト水に含まれる大小さまざまな微生物の内、処理に時間とエネルギーを要するプランクトンのような大きい微生物についても処理ユニット内で連続運転にて処理することができ、かつ排水管に未処理の微生物が滞留して排水地へと移動するリスクを避けることができるものである。
【0076】
したがって、船舶のバラスト水処理装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0077】
1 船舶
2 港
3 喫水線
4 シーチェスト
5 切換弁
6 切換弁
7 タンク流出口
8 バラストポンプ
9 バラスト水処理装置
10 バラストタンク
11 タンク流出口
12 入口管
13 出口管
14、14a、14b 処理ユニット
15、15a、15b 上部開口
16、16a、16b 下部開口
17 紫外線照射装置
18、18a、18b フィルタ
19 第一開閉弁
20 第二開閉弁
21 第三開閉弁
22 第四開閉弁
23 上部接続管
24 下部接続管
25 上下接続管
27 保護管
28 紫外線ランプ
29 ランプハウジング
30 温度センサ
31 紫外線センサ
32 電源盤
33 電子安定装置
34 異常警報装置
35 電子基盤
36 電子データ記録装置
37 点検口
38 ドレン口
39 プランクトン
40 細菌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を流入させる入口管と、水を流出させる出口管と、二つの処理ユニットを備え、
前記処理ユニットは、
水が流入または流出する上部開口および下部開口と、
複数の紫外線照射手段と、
前記下部開口から前記上部開口へ向かう方向へ段階的に開口サイズが小さくなる複数枚のフィルタを水の流れと直交するように配置し、
前記二つの処理ユニットそれぞれの前記上部開口を接続する上部接続管と、
前記二つの処理ユニットそれぞれの前記下部開口を接続する下部接続管と、
前記上部接続管と前記下部接続管を接続する上下接続管を備え、
前記下部接続管と前記入口管との接続部に第一開閉手段と、
前記上部接続管と前記上下接続管との接続部に第二開閉手段と、
前記出口管と前記上下接続管との接続部に第三開閉手段と、
前記上下接続管の前記第三開閉手段と前記第二開閉手段の途中に第四開閉手段とを備え、
前記処理ユニット、前記入口管、前記上部接続管、前記下部接続管、前記出口管、前記上下接続管、を通る水の流れを前記第一開閉手段、前記第二開閉手段、前記第三開閉手段、前記第四開閉手段により制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
光触媒粉を混練した非耐紫外線性バインダーによりフィルタ上に担持させたことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
処理ユニット内に紫外強度検知手段を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項4】
紫外線照射手段に温度検知手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項5】
紫外線照射手段の点灯を制御する電子安定装置を備え、前記電子安定装置は前記紫外線照射手段に備えられた温度検知手段と連動し、前記紫外線照射手段に流す電流値を制御できることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−205975(P2012−205975A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71635(P2011−71635)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】