説明

水分の吸着及び脱着のための吸着剤

【課題】低温においても脱着自在であり、吸着量及び脱着量との差が大きい吸着剤を提供する。
【解決手段】1000m2/gの以上表面積を有し、0.5乃至2nmの細孔窓サイズを有する多孔性有機無機複合体を用いた吸着剤、特に水分の吸着剤であって、吸脱着が100℃以下においても容易であり、吸着剤の重量当たり吸着量および100℃以下で加熱するとき、重量当たり脱着量が高くて加湿機、除湿機、及び冷暖房機に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は100℃以内の低温においても吸脱着が容易であり、吸着条件における吸着量と脱着条件における吸着量との差が大きい吸着体に関するものであって、より詳しくはナノサイズの細孔を有して表面積及び細孔体積が非常に大きい特徴を有する多孔性有機無機混成体を用いた吸着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を容易に吸着及び脱着する吸着剤は多様な用途を有している。例えば、除湿機は低温で水分を吸着した後、高温で加熱すれば脱着される特性を有する吸着剤を活用することができる。また、冷暖房機に吸着剤を活用すれば、暖房時には低い温度の室外の湿気を吸着した後、室内に流入して高温の室内で脱着して代わりに加湿器の役割を果たすことができ、冷房時には低い温度の室内の湿気を吸着して高い温度の室外で脱着して室外に流出することができて、快適な室内雰囲気が得られる。このような概念を適用したエアコン及び湿度調節器がUS 6978635、6959875、6675601などに提案されている。しかし、このような装置に使用された吸着剤に対して詳しい言及はなく、シリカゲル、ゼオライト、イオン交換樹脂を使用するだけを言及したり、または吸着剤を使用するだけを言及している。なお、このような吸着剤の場合、吸着量が低いのみならず、脱着にも100℃以上の高温が要求されるなど、運転費用の上昇原因となる。
【0003】
従って、低温においても脱着自在であり、吸着量及び脱着量との差が大きい吸着剤の開発が最も必要である。しかし、吸着量が増加すれば脱着が難しく、吸着量が少ない場合には吸着量と脱着量との差が小さいという問題が常に存在していた。本発明では表面積が非常に大きい多孔性有無機混成体を水分の吸着剤として使用した時、大きな吸着量は勿論であり、低い温度において吸着された水分の大部分が100℃以下の温度で脱着されることを発見して本発明が完成できた。
【0004】
本発明で水分吸着剤として使用される多孔性有機無機混成体は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された多孔性有機無機高分子化合物であると定義され、骨格構造内に有機物と無機物とを全て含み、分子サイズまたはナノサイズの細孔構造を有する結晶性化合物を意味する。多孔性有機無機混成体は広範囲な意味の用語であって、一般に多孔性配位高分子(porous coordination polymers)ともいい(Angew. Chem. Intl. Ed., 43, 2334. 2004)、金属−有機骨格体(metal-organic frameworks)ともいう(Chem. Soc. Rev., 32, 276, 2003)。このような物質に対する研究は分子配位結合と材料科学の接木によって最近に新しく発展し始め、この物質は高表面積と分子サイズまたはナノサイズの細孔を有していて多様なナノ物質で使用することができるため、最近活発に研究されている。
【0005】
このような物質は様々な方法で製造され、代表的には室温周りで溶媒拡散(solvent diffusion)を用いたり水を溶媒として使用して高温で反応させる水熱合成(hydrothermal synthesis)、或いは有機物を溶媒として使用する溶媒熱合成(solvothermal synthesis)方法 を通じて製造されてきた(Microporous Mesoporous Mater., 73, 15, 2004; Accounts of Chemical Research, 38, 217, 2005)。
【0006】
有機無機混成体の合成はゼオライトやメゾ細孔体化合物のような無機多孔性物質の合成と類似に水や適当な有機物を溶媒として使用し、一般に溶媒や混合溶液の沸点以上の合成温度における自然蒸気圧(autogeneous pressure)下で結晶化過程を経てなる。つまり、ゼオライトやメゾ細孔体物質の合成と類似に反応物を圧力反応器に入れて密閉させた後、高温で通常何日間の結晶化時間が経過した後に得られる。従来の高温の合成のための熱源としては通常抵抗体の発熱を用いた電気加熱を用いるが、電気加熱を用いる方法は反応時間が長くて経済的でなく、小さい結晶粒子を得るために反応時間を減らす場合は無定形の有機無機混成体が製造される問題点があって、細孔を有する500nm以下、より望ましくは100nm以下の小さい結晶粒子で製造することが不可能である。
【0007】
従って、本発明ではこのような問題点を解決するために、マイクロ波を熱源として用いて多孔性有機無機混成体を合成した。マイクロ波を用いた合成によっては小さい粒子の結晶が得られるため、吸着剤で使用する場合、拡散が容易である長所を有する。なお、厚膜、薄膜、及びメンブレインで加工するにも容易である。一方、マイクロ波による合成は有機無機混成体の疎水性と親水性を改善して水分吸着剤としての性能が改善される。従って、金属塩、有機リガンド化合物と水や有機溶媒などから構成された前駆体物質をよく混合した後、圧力反応器に入れて完全に密閉させた後、圧力反応器をマイクロ波オーブンに入れてマイクロ波を熱源で用いて自動圧力下で合成でき、マイクロ波を用いた連続合成も可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明では高い水分吸着量を有し、比較的低温においても脱着が容易である吸着剤を開発を目的とし、多孔性有機無機混成体を適用して吸着量と吸着特性に優れる吸着剤を開発しようとした。
【0009】
従って、本発明は水分の吸着及び脱着が容易である吸着剤を開発することであり、ひいてはこのような吸着剤を用いた湿度調節をなす目的もある。なお、このような吸着剤を製造する方法を提供することももう一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は水分吸着剤に関するものであって、より詳しくはナノサイズの細孔窓サイズを有する多孔性の有機無機混成体を活用した吸着剤であることを特徴とする。
【0011】
本発明は低温でも脱着が容易であり、低温吸着量と高温吸着量との差が大きい多孔性有機無機混成体を用いた吸着剤を提供することであって、本発明による吸着剤は1000m2/gより大きな表面積、1.0mL/gより大きな細孔体積、0.5乃至2nmの細孔窓サイズを有し、有機物と無機物とを全て骨格の構成成分として含んでいることを特徴とし、室温の水分吸着量に対する100℃での水分吸着量の割合が0.2より小さい場合、さらに望ましい。
【0012】
表面積及び細孔体積は前記の値より小さい場合、水分吸着剤としての効果が大きくなく、表面積及び細孔体積は大きければ大きいほど良いが、製造方法上、実質的に実現可能な範囲は表面積の場合の上限は10000m2/g程度であり、細孔体積の上限は10mL/g程度である。細孔窓サイズは0.5nm以下であれば吸脱着の速度が遅くて吸脱着に必要な時間が増加するという問題点があり、2.0nm以上であれば吸着体の構造が不安定になり、従って吸着剤の耐久性が非常に弱いという問題がある。また、従来の吸着剤の場合、室温の水分吸着量に対する100℃における水分吸着量の割合が0.5乃至1程度の値であって、100℃以下の温度では吸着された水分の50%以下が脱着されて低温での脱着特性が良くない問題点があったが、本発明による吸着剤の場合は100℃以下の温度で吸着された水分の80%以上が脱着される特性を有する。
【0013】
本発明による吸着剤は具体的には金属テレフタレートなどであり、金属としてはクロム、アルミニウム、鉄などである。
【0014】
本発明による吸着剤の製造方法は金属源、テレフタル酸或いはベンゼントリカルボン酸などから選ばれる有機物、及び溶媒を反応器に入れて封止した後、高温で加熱するが、マイクロ波を用いて反応温度を保持し、圧力は自動圧力に保持して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による吸着剤として使用される多孔性有機無機混成体の製造方法をより詳しく説明する。
【0016】
本発明による吸着剤として使用される多孔性有機無機混成体は
1)金属前駆体、リガンドとして作用できる有機化合物及び溶媒を混合して反応物混合液を製造する段階;及び
2)前記反応物混合液に0.3GHz乃至300GHzのマイクロ波を照射して100℃以上で加熱する段階;
とを含む製造方法によって製造され、前記の製造方法によって製造された多孔性有機無機混成体はナノサイズの細孔窓サイズを有し、粒子サイズの分布が均一であり、平均粒径が500nm以下であり、望ましくは10乃至500nmであり、さらに望ましくは200nm以下、なおさら望ましくは100nm以下、最も望ましくは50nm以下である多孔性有機無機混成体である。
【0017】
本発明による製造方法に従う多孔性有機無機混成体は粉末状であり、または厚膜、薄膜、またはメンブレイン形態である。
【0018】
薄膜またはメンブレイン形態の多孔性有機無機混成体は前記反応物混合液に基板を浸漬した後、マイクロ波を照射して加熱する方法で容易に製造することができる。
【0019】
本発明による多孔性有機無機混成体は高温反応の熱源としてマイクロ波を適用して製造され、周波数が略300MHz乃至300GHzのいずれのマイクロ波を反応物を加熱するに用いられるが、工業的にたくさん使用されている周波数の2.45GHz、0.915GHzのマイクロ波を用いることが簡単且つ効率的である。
【0020】
有機無機混成体の一つの構成元素である金属物質は如何なる金属でも可能であり、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Biなどが代表的な金属物質である。特に、配位化合物がよく作られる遷移金属が適当である。遷移金属の中でもクロム、バナジウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、チタニウム、及びマンガンなどが適当であり、クロムが最も適当である。遷移金属の他にも配位化合物を作る典型元素は勿論、ランタニウムのような金属も可能である。典型元素の中にはアルミニウム及びシリコンが適当であり、ランタニウム金属の中にはセリウム、ランタニウムが適当である。金属源としては金属自体は勿論であり、金属のいずれの化合物も使用することができる。
【0021】
有機無機混成体のもう一つの構成成分である有機種はリンカー(linker)ともいい、配位できる官能基を有する如何なる有機化合物も可能であり、配位できる官能基はカルボン酸基、カルボン酸アニオン基(carboxylate)、アミノ基(-NH2)、イミノ基(

)、アミド基(-CONH2)、スルホン酸基(-SO3H)、スルホン酸アニオン基(-SO3-)、メタンジチオ酸基 (-CS2H)、メタンジチオ酸アニオン基 (-CS2-)、ピリジン基、またはピラジン基などが例示される。より安定した有機無機混成体を導くためには、配位できるサイトが2つ以上である、例えば 2座配位 または3座配位 の有機分子が有利である。有機分子としては配位する座があれば、ビピリジン、ピラジンなどの中性分子、テレフタレート、ナフタレンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、グルタレート、サクシネートなどで例示されるカルボン酸のアニオンなどの陰イオン性分子は勿論、カチオン物質も可能である。カルボン酸アニオンの場合、例えば、テレフタレートのような芳香環を有することの他にホルメートのような芳香環を有さないカルボン酸のアニオンは勿論であり、シクロヘキシルジカボネートのように非芳香環を有するアニオンなどいずれも可能である。配位できる座を有する有機物は勿論であり、潜在的に配位する座を有して反応条件で配位できるように変化されるのも可能である。つまり、テレフタル酸のような有機酸を使用しても反応後にはテレフタレートで金属成分と結合することができる。使用できる有機物の代表的な例としては ベンゼンジカルボン酸 、 ナフタレンジカルボン酸 、 ベンゼントリカルボン酸 、 ナフタレントリカルボン酸 、 ピリジンジカルボン酸 、 ビピリジルジカルボン酸 、 ギ酸 、 シュウ酸 、 マロン酸 、 コハク酸 、 グルタル酸 、 ヘキサンジオン酸 、 ヘプタンジオン酸 、またはシクロヘキシルジカルボン酸から選ばれる有機酸及びそれらのアニオン、ピラジン、ビピリジンなどである。また、一つ以上の有機物を混合して使用することもできる。
【0022】
有機無機混成体の代表的な例としては、クロムテレフタレート、バナジウムテレフタレート、鉄テレフタレートが挙げられ、その中でクロムテレフタレートが最もよく知られており、クロムテレフタレートの中でも巨大な細孔窓サイズを有する立方体(Cubic)形態の物質が現在効用性の側面から最も注目されている。
【0023】
金属成分と有機物の他に有機無機混成体の合成には適当な溶媒が必要であり、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類などいずれの物質も使用可能であり、2つ以上の溶媒を混ぜて使用することもでき、水が最も適合である。
【0024】
吸着剤の合成にはHFのような含フッ素成分が必要な場合があり、フッ化アンモニウム (ammonium fluoride )、LiF、NaF、KF、CsFなどが使用できる。また、吸着剤の合成には酸性の条件が望ましいため、HFを使用するのがさらに適合である。
【0025】
反応温度は実際的に限られないが、温度は100℃以上が適当であり、100℃以上250℃以下の温度が望ましく、150℃以上220℃以下の温度がさらに望ましい。温度が低過ぎると反応速度が遅くて効果的でなく、反応温度が高過ぎると細孔のない物質が得られ易く、反応速度が速過ぎて不純物が混入され易い。なお、反応器の内部圧力が高くなって反応器の構成が非経済的である。反応器の圧力は実際的に限られないが、反応温度における反応物の自動圧力(Autogeneous pressure)で合成することが簡単である。また、窒素、ヘリウムのような不活性気体を加えて高圧で反応を行うこともできる。
【0026】
反応は回分式は勿論であり連続式でも遂行可能である。回分式反応器は時間当たり生産量が低くて少量の有機無機混成体を生産するに適合であり、連続式反応器は投資費用がたくさんかかるが大量生産には適合である。反応時間は回分式の場合、1分乃至8時間ほどが適合であり、あまり反応時間が長ければ不純物が混入され易くて粒子が成長してナノ粒子の製造は容易でない。あまり反応時間が短ければ反応転換率が低い。反応時間は1分乃至1時間がさらに適合である。連続式反応器の滞留時間は1分乃至1時間ほどが適合である。滞留時間が長すぎると生産性が低くて大きな粒子が得られ、滞留時間が短すぎると反応転換率が低い。滞留時間は1分乃至20分がさらに適当である。回分式反応中には反応物を撹拌することもでき、撹拌速度は100乃至1000rpmが適当であるが、撹拌の過程無しでも遂行可能であり、撹拌をしないことが反応器の構成や運転において簡単であり適用するに易しい。
【0027】
マイクロ波を用いた反応は最も速い速度で行うため、反応物の均一性を高めたり溶解度を高めることは勿論であり、結晶核が一部生成するように前処理を行った状態でマイクロ波を照射することが良い。前処理を行っていない状態でマイクロ波による反応をすぐ始めると反応が遅くてまたは不純物が混入されたり粒子サイズの均一度が低くなりやすいが、工程は簡単になる。前処理は反応物を超音波で処理したり激しく撹拌することによって行われ、前処理温度は室温乃至反応温度間の温度が望ましい。温度が低過ぎると前処理効果が微弱であり、高過ぎると不純物が生成され易いのみならず、前処理設備が複雑になるという短所がある。前処理時間は1分以上5時間以内が適合であり、超音波の場合は1分以上、撹拌処理する場合は5分以上が適合である。前記前処理時間が短すぎる場合、前処理効果が微弱であり、あまり長く前処理を行うと前処理効率も低くなる。前処理は超音波を用いて行うことが前処理時間と反応物の均一性から見てより効果的である。
【0028】
また、有機無機混成体の厚膜、薄膜、またはメンブレインは前記反応物混合液に基板を浸漬した後、マイクロ波を照射して加熱する方法で製造することができ、有機無機混成体を合成した後、基板にバインダーを使用して、例えばスクリーンプリントなどの方法を使用して取り付けることもできる。有機無機混成体の厚膜、薄膜、及びメンブレインは吸着剤が水分との容易な相互作用のために必要であり、吸収及び脱水性能が大きく改善できる。前記基板としてはアルミナ、シリコン、ガラス、 酸化インジウムスズ(ITO)、 酸化インジウム亜鉛 (IZO)、耐熱性ポリマーであったり、これの表面処理された基板を使用するのが望ましい。
【0029】
以下、下記の非制限的な実施例から本発明をより詳しく説明する。
<実施例>
【実施例1】
【0030】
(Cr-BDCA-1)
テフロン(登録商標)反応器にCr(NO3)3・9H2O、HF水溶液及び1,4−ベンゼンジカルボン酸(BDCA)を加えた後、蒸留水を加え、反応物の最終のモル比はCr:HF:BDCA:H2O=1:1:1:275になるように行った。混合された反応物を室温で超音波を照射し、1分間前処理して最大限均一な反応物になるように施して核の形成を容易にした。前処理された反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器をマイクロ波反応器(CEM社、モデルMars-5)に装着し、2.45GHzのマイクロ波を照射して3分かけて210℃に昇温させた。その後、210℃で1分保持して反応させた後、室温で冷却後遠心分離、蒸留水を用いた洗滌、乾燥して有機無機混成体、クロムテレフタレート(Cr-BDCA)を得た。製造されたCr-BDCAのX−線回折分析の結果、2θ値が略3.3、5.2、5.9、8.5及び9.1で特徴的な回折ピークを有することが示され、これから立方体の結晶性クロムテレフタレートが得られたことがわかった。本実施例から得られたクロムテレフタレート結晶の電子顕微鏡の写真は図1に示され、1.3nmの平均細孔窓サイズを有する30乃至40nmの最も均一な粒子から構成されたことを示している。これで反応物の前処理を行い、マイクロ波を照射して合成することにより、最も短い時間に非常に効果的に有無機混成体が得られたことがわかった。
【実施例2】
【0031】
(Cr-BDCA-2)
実施例1から超音波による前処理を行わず、210℃における反応時間を1分の代わりに2分で保持することを除いては実施例1と同一な方法で有機無機混成体を製造した。X−線回折形態(図3のa)から実施例1と同一な構造の物質が得られ、電子顕微鏡の写真から40乃至50nm程度の均一な特性を有する有機無機混成体が得られたことがわかった。150℃の真空において脱水の後、液体窒素の温度で測定した窒素吸着量は窒素相対圧0.5(P/P0=0.5)で1050mL/g(46.9mmol/g)と高く示され、また30℃で得られたベンゼンの吸着実験の結果、ベンゼン相対圧0.5(P/P0=0.5)で16mmol/gの非常に高い吸着量を示した。この際、有機無機混成体の平均細孔は1.3nmであった。図4には窒素及びベンゼンの吸着の等温線を示した。本実施例から製造された多孔性有機無機混成体の表面積と細孔体積はそれぞれ3700m/g及び1.9mL/gであった。従って、本実施例から製造されたクロムテレフタレートナノ粒子は非常に大きな吸着容量を示し、細孔を有する結晶性の多孔性物質であることがわかり、吸着剤、触媒、触媒担体などで使用できることがわかる。
【実施例3】
【0032】
(Cr-BDCA-3)
実施例2から210℃における反応時間を2分の代わりに40分保持することを除いては実施例2と同一に行い、有無機混成体を製造した。X−線回折形態(図3のb)から実施例1と同一な構造の物質が得られ、電子顕微鏡の写真(図2)から実施例2に比較して粒子サイズが相当増加されたが、200nm程度の均一な特性を有する有機無機混成体が得られたことがわかった。この物質の表面積と細孔体積及び細孔の平均はそれぞれ3900m/g、2.1mL/g及び1.3nmであった。
【実施例4】
【0033】
(Fe-BDCA-1)
実施例2と同一に行い、Cr(NO3)3・9H2Oの代わりにFeCl3を使用して有無機混成体を製造した。X−線回折形態から実施例1と同一な構造の物質が得られ、電子顕微鏡の写真から50乃至100nm程度の均一な粒径を有する有機無機混成体が得られ、細孔のサイズは1.5nmであった。
【実施例5】
【0034】
(V-BDCA-1)
実施例2からCr(NO3)3・9H2Oを使用する代わりにVCl3を使用することを除いては、実施例2と同一な方法で有機無機混成体を製造した。X−線回折形態から実施例1と同一な構造の物質が得られ、電子顕微鏡の写真から50乃至80nm程度の均一な粒径を有する有機無機混成体が得られることがわかった。
【実施例6】
【0035】
(Cr-BDCA-1-薄膜)
テフロン(登録商標)反応器にCr(NO3)3・9H2O、HF水溶液及び1,4−ベンゼンジカルボン酸(BDCA)を加えた後、蒸留水を加え、反応物の最終のモル比はCr:HF:BDCA:H2O=1:1:1:275になるように行った。前記溶液にアルミナ基板を垂直に整列させてアルミナ基板含有反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器をマイクロ波反応器(CEM社、モデルMars-5)に装着し、2.45GHzのマイクロ波を照射して3分かけて210℃に昇温させた。その後、210℃で30分保持して反応させた後、室温で冷却後遠心分離、蒸留水を用いた洗滌、乾燥して有機無機混成体、Cr-BDCAを得た。薄膜のX−線回折形態は実施例3とよく一致した。これで、有機無機混成体薄膜を直接製造することができることを確認した。
【実施例7】
【0036】
(Cr-BDCA-水分吸収及び脱着特性)
実施例3から得られたクロムテレフタレートを塩化アンモニウム飽和水容液をデシケーターの上層に3日保持して十分水分を吸着させた後、熱重量分析法で脱着される程度及び温度を測定した。図5からわかるように、60℃、65℃、70℃でそれぞれ水分を吸着したクロムテレフタレートの全重量の約37%、43%、45%の水分が脱着したことがわかり、300℃以上で加熱する場合にはクロムテレフタレートの構造が崩壊されながら質量が減少することがわかる。図5からわかるように、水分を吸着したクロムテレフタレートの全重量の45乃至50%が水分であって、クロムテレフタレートの水分吸着量が最も大きいことがわかり、それだけでなく、70℃以内の温度で吸着された水分の90%以上が脱着されて高い脱着量を示したことがわかる。
【実施例8】
【0037】
(Cr-BDCA-水分吸着実験)
実施例3から得られた試料を150℃で真空乾燥した後、水分の吸着実験を重量法で行った。相対湿度21.4%において吸着剤重量当たり水分吸着量が0.04g/gで非常に低かった。即ち、非常に低い湿度においても、クロムテレフタレートは吸着し難いことがわかり、このような特性と100℃以下における容易である脱着性質を用いれば、加湿、除湿などに最も優れる性能を示すことがわかる。
【0038】
比較例1(シリカゲルを用いた水分吸収及び脱着の特性)
実施例7と同一に吸収及び脱着の特性を分析するが、商業用シリカゲルを使用した。70℃の温度では脱着量が15%に過ぎず、30%の脱着にも115℃の高い温度が必要であった。
【0039】
[産業上利用可能性]
上述したように、本発明によって製造された多孔性有機無機混成体は、水分の吸着量が高く、100℃以内の低温で脱着量が非常に高くて吸着剤を用いた除湿機、加湿機、冷暖房機に使用される。特に、脱着温度が最も低くてこのような装備の運転費用が非常に大きく減少できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の製造方法に従って製造されたクロムテレフタレートの電子顕微鏡写真であって、実施例1に対するものである。
【図2】本発明の製造方法に従って製造されたクロムテレフタレートの電子顕微鏡写真であって、実施例3に対するものである。
【図3】本発明の製造方法に従って製造されたクロムテレフタレートのX−線回折分析結果を示したものであって、(a)は実施例2の結果であり、(b)は実施例3の結果である。
【図4】実施例2によって得られたクロムテレフタレートでの窒素及びベンゼン吸着の等温線の結果である。
【図5】実施例3によって得られたクロムテレフタレートを用いた吸着剤の脱水特性を示した図であって、70℃以内の温度においても吸着された水分の大部分が脱着されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Hf、Nb、Ta、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Sr、Ba、Sc、Y、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiからなる群から選ばれる1つ以上の金属またはHf、Nb、Ta、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Sr、Ba、Sc、Y、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiからなる群から選ばれる1つ以上の成分を含む金属化合物である金属前駆体と有機化合物から選ばれるリガンドとの反応によって合成され、
b)>1000m/gの表面積を有し、
c)0.5乃至2nmの細孔窓サイズを有する
有機無機混成体を含む水分吸着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152738(P2012−152738A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61573(P2012−61573)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2009−500277(P2009−500277)の分割
【原出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(591004043)コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー (11)
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】