説明

水分含有材の水分測定装置及び該水分測定装置を使用した水分測定方法

【課題】測定作業の簡便性の向上、測定作業時間の短縮化を図ることができる水分含有材の水分測定装置及び水分測定方法を提供するものである。
【解決手段】水分測定装置1は、測定プローブ本体3から測定試料Mに挿入する電極体4及び温度センサー5を突設するとともに、反射測定法により、電極体4にパルス信号を印加して、電極体4からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報及び、この測定プローブ2にて計測したいずれか一つの情報を基に測定試料Mの誘電率又はインピーダンスを求め、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係、又は、インピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に測定試料Mの水分値を求め、測定試料Mの温度の情報と、予め記憶保持した水分値・温度補償情報とを基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める制御回路を備えた装置本体21と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含有材の水分測定装置に関し、詳しくは、土木、建築に用いられる生コンクリート・モルタル、砂等のような水分含有材の水分の測定・管理を的確に実行し得る水分含有材の水分測定装置及び該水分測定装置を使用した水分測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土木、建築に用いられる生コンクリート・モルタル、砂等のような水分を測定する水分測定装置として種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、被測定物を加熱乾操(ランプ、ヒーター、高周波加熱を使用)することにより、その重量変化から水分をもとめるものがあるが、この場合には、測定に時間がかかりすぎる。
【0004】
また、被測定物に対して放射線(ラジオアイソトープ)を照射・透過させて、その減衰により水分をもとめるものがあるが、この場合には、装置が大型で、高価格になってしまう。
【0005】
更に、被測定物にマイクロ波を照射・透過させ、その減衰により水分をもとめるものもあるが、この場合には、砂以外は測定できず、生コンクリートやモルタル等を測定しようとすると、減衰が大きすぎて必要な感度が得られないという問題がある。
【0006】
本願出願人は、先に特許文献1(特開2001−83115号公報)に開示されているように生コンクリート、モルタル、砂等の水分測定装置を提案している。
【0007】
本願出願人に係る上記特許文献1の水分測定装置は、試料ケースに一定体積の生コンクリートのような測定試料を充填する構成であるが、測定試料の試料ケースへの充填作業の点等で改良の余地を見出した。
【0008】
すなわち、測定試料の体積が一定でない場合、大きな測定誤差が発生するおそれがあり、他方、丁寧な充填作業は、測定作業時間を伸長させることになる。
【0009】
生コンクリート、モルタルのような水分含有材は、その製造後出来るだけ短時間に打設完了することが望ましいが、測定作業時間の伸長は、製造した生コンクリート、モルタルの使用有効時間を圧迫することになる。
【0010】
また、試料ケースに測定試料を充填する作業中や測定中は、測定試料が試料ケース中で傾かないようにするために、水平な作業環境が必要である。測定試料が試料ケース中で傾いていると、測定誤差が発生することは明確である。
【0011】
更に、上記水分測定装置は、測定試料と接触する電極間の静電容量を測定することにより、水分の予測をする構成としている。
したがって、測定試料が不均一な場合、試料代表性がインピーダンスの低い導電経路に偏り、大きな代表性誤差を発生する。
【0012】
実際に測定試料として生コンクリート(不定形で大型の骨材が混入されており、測定試料としては不均一)を測定する場合、そのままの測定では大きな測定誤差が発生するために、ウエットスクリーニング処理(骨材を取り除くため、一定のメッシュの篩で測定試料を濾す処理)を施した測定試料の水分を測定し、細骨材、骨材の混合比、それぞれの比重、給水率等の既知のデータを用いて、測定した水分値を補正する作業が必要となる。
【0013】
更に、上記水分測定装置の場合、測定試料の温度測定が困難な構造のため、測定試料のインピーダンスの温度特性が大きく変化する場合、測定誤差を生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−83115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記背景技術を踏まえて、試料ケースや、水平な作業環境が不要であり、また測定試料の不均一性があってもウエットスクリーニング処理が不要であり、更には測定した水分値の精度向上をも図ることができるような水分含有材の水分測定装置、測定方法が存在しない点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る水分含有材の水分測定装置は、測定プローブ本体から水分含有材からなる測定試料に挿入する電極体を突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を計測する測定回路を備えた測定プローブと、この測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求める制御回路を備えた装置本体と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、測定プローブ本体から突設した電極体を水分含有材である測定試料に挿入し、測定回路により、反射測定法によって、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を計測し、装置本体の制御回路により、前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係を又はインピーダンス・水分値の関係示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求めるように構成しているので、試料ケースや、水平な作業環境が不要であとともに、測定試料の不均一性があってもウエットスクリーニング処理が不要で、簡略、かつ、的確に水分含有材である測定試料の水分値を求めることができ、測定作業の簡便性の向上、測定作業時間の短縮化を図ることができる水分含有材の新規な水分測定装置を実現し提供できる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明と同様な効果を奏するとともに、測定プローブ本体から電極体に加えて温度センサーを突設した構成を採用し、測定回路により測定試料の温度をも計測し、装置本体の制御回路により求めた測定試料の水分値の標準温度への温度補償をも行うようにしているので、測定した水分値の精度向上をも図ることができる水分含有材の新規な水分測定装置を実現し提供できる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、測定プローブ本体から生コンクリート・モルタル、砂から選定されるいずれか一つの水分含有材である測定試料に挿入する電極体及び温度センサーを突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加するパルス印加回路と、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間を計測する時間領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の周波数を計測する周波数領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の電圧を計測する振幅領域検出回路の内のいずれか一つと、温度センサーが検出する測定試料の温度を計測する温度測定回路と、を有する測定回路を備えた測定プローブと、前記測定プローブに接続ケーブルにより接続されるとともに、誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報を予め記憶した検量線情報記憶部と、水分値の温度補償を行うための水分値・温度補償情報を予め記憶した水分値・温度補償情報記憶部と、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブをもって計測した前記反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、前記検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求めて、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される測定試料の温度の情報と、前記水分値・温度補償情報予め記憶保持した水分値・温度補償情報を基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める水分値判定部と、求めた水分値を表示する表示部とを備えた装置本体と、を有する構成の基に請求項2記載の発明と同様な効果を奏する水分含有材の水分測定装置を実現し提供できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明に係る構成の水分測定装置を使用して、試料ケースや、水平な作業環境が不要であり、また測定試料の不均一性があってもウエットスクリーニング処理が不要で、簡略、かつ、的確に水分含有材である測定試料の水分値を求めることができ、測定作業の簡便性の向上、測定作業時間の短縮化を図ることができる水分含有材の水分測定方法を実現し提供できる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、前記請求項2記載の発明に係る構成の水分測定装置を使用して、前記請求項4記載の発明と同様な効果を奏するとともに、測定した水分値の精度向上をも図ることができる水分含有材の水分測定方法を実現し提供できる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、前記請求項3記載の発明に係る構成の水分測定装置を使用して、前記請求項5記載の発明と同様な効果を奏する水分含有材の水分測定方法を実現し提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施例に係る水分含有材の水分測定装置の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】図2は本実施例に係る水分含有材の水分測定装置における測定プローブの概略正面図である。
【図3】図3は本実施例に係る水分含有材の水分測定装置における測定プローブの概略側面図である。
【図4】図4は本実施例に係る水分含有材の水分測定装置における測定プローブの概略底面図である。
【図5】図5は本実施例に係る水分含有材の水分測定装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、試料ケースや、水平な作業環境が不要であり、また測定試料の不均一性があってもウエットスクリーニング処理が不要であり、更には測定した水分値の精度向上をも図ることができるような水分含有材の水分測定装置を実現し提供するという目的を、測定プローブ本体から生コンクリート・モルタル、砂から選定されるいずれか一つの水分含有材である測定試料に挿入する電極体及び温度センサーを突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加するパルス印加回路と、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間を計測する時間領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の周波数を計測する周波数領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の電圧を計測する振幅領域検出回路の内のいずれか一つと、温度センサーが検出する測定試料の温度を計測する温度測定回路と、を有する測定回路を備えた測定プローブと、前記測定プローブに接続ケーブルにより接続されるとともに、誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報を予め記憶した検量線情報記憶部と、水分値の温度補償を行うための水分値・温度補償情報を予め記憶した水分値・温度補償情報記憶部と、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブをもって計測した前記反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、前記検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求めて、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される測定試料の温度の情報と、前記水分値・温度補償情報予め記憶保持した水分値・温度補償情報を基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める水分値判定部と、求めた水分値を表示する表示部とを備えた装置本体と、を有する構成により実現した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例に係る生コンクリート、モルタル、砂等のような水分含有材の水分測定装置(以下「水分測定装置」という)について詳細に説明する。
【0026】
本実施例に係る水分測定装置1は、図1に示すように、測定プローブ2と、装置本体21と、前記測定プローブ2と装置本体21間を接続する接続ケーブル31と、を有している。
前記測定プローブ2と装置本体21は、プローブ側コネクタ3a、接続ケーブル31及び装置本体側コネクタ21aを用いて接続されるように構成している。
【0027】
前記測定プローブ2は、図2乃至図4に示すように、例えば円柱状の測定プローブ本体3と、この測定プローブ本体3の側壁から外方に一定の間隔をもって突設した例えば2本(又は2本以上)の針状又は棒状の導電性金属からなる電極体4と、前記測定プローブ本体3の側壁から前記電極体4と間隔をもって外方に突設した棒状又は針状の温度センサー5と、前記測定プローブ本体3の内部(又は外部)に搭載した測定回路11と、を有している。
【0028】
前記装置本体21は、図1に示すように、例えば、略直方体状に構成されて、その表面に、液晶等により形成した表示部22、及び文字、数字等の情報を入力するための複数のキーを備えた操作部23を設け、また、前記装置本体21の裏側には電池蓋32を配置して、この電池蓋32の内部に所要の電力供給を行うための電池を収納するように構成しているとともに、装置本体21の内部に図5に示す制御回路24を搭載している。
【0029】
なお、本実施例に係る水分測定装置1において、図1、図2及び図4には、電極体4を3本突設した例を示し、図5には電極体4を2本突設した例を示している。
【0030】
前記測定プローブ2を構成する測定回路11は、図5に示すように、測定プローブ2自体の動作制御、装置本体21の制御回路24との信号伝送を行う測定制御回路12と、測定制御回路12の制御の基に例えば生コンクリート、モルタル、砂等のような水分含有材である測定試料M中に挿入する電極体4に所定周波数の電気信号、例えばパルス信号を印加するパルス印加回路13と、測定制御回路12の制御の基に反射波を受信し反射波到達時間(パルス信号印加から反射波が到達するまでの時間)を計測する(本発明の場合、反射波の遅れ時間より測定試料の誘電率を求める)TDR(Time Domain Reflectrometry)回路、又は測定制御回路12の制御の基に反射波を受信し反射波の周波数を計測する、換言すると、反射波の周波数より測定試料のインピーダンスを求めるFDR(Freqency Domain Reflectrometry)回路、或いは測定制御回路12の制御の基に反射波を受信し反射波を振幅領域で解析し反射波の振幅を計測する、換言すると、反射波の電圧より測定試料のインピーダンスを求めるADR(Amplitude Domain Reflectrometry)回路14と、前記温度センサー5の検出信号を基に測定試料Mの温度を測定する温度測定回路15と、を有している。
【0031】
すなわち、前記測定プローブ2は、反射測定法により電極体4に印加したパルスの反射波形を観測・解析する方法である。
【0032】
ここで、前記TDR回路(時間領域検出回路)14は、前記電極体4を伝送線路とみなし、反射波を時間領域で解析し、パルス信号を印加してから反射波が到達するまでの反射波到達時間(遅れ時間)を計測する回路であり、例えば、伝送線路の周りの空間の比誘電率(誘電率)の算出のために用いるものである。
【0033】
また、FDR回路(周波数領域検出回路)とは、反射波を周波数領域で解析し、その周波数を計測する回路であり、電極体4間のインピーダンスの算出のために用いるものである。
更に、ADR回路(振幅領域検出回路)は、反射波を振幅領域で解析し、その電圧値を計測する回路であり、電極体4間のインピーダンスの算出のために用いるものである。
【0034】
前記装置本体21を構成する制御回路24は、図5に示すように、前記接続ケーブル31を介して測定制御回路12に接続されるとともに、前記表示部22、操作部23にも接続され、水分測定装置全体の制御を行う制御部25と、水分測定装置1の動作プログラムを記憶した動作プログラム記憶部26と、比誘電率から水分を予測するための検量線の情報又はインピーダンスから水分を予測するための検量線の情報を記憶した検量線情報記憶部27と、水分値の測定温度による誤差を補償するための予め求めてある水分値・温度補償情報を記憶した水分値・温度補償情報記憶部28と、水分値判定部29と、水分値情報、温度等を記憶する記憶部30とを有している。
【0035】
前記水分値判定部29は、前記測定制御回路12から伝送される前記TDR回路14による反射波到達時間の情報を基に、公知の演算式を用いて測定試料Mの比誘電率を算出し、前記比誘電率から水分値を予測するための検量線の情報との比較により測定試料Mの水分値を予測し、又は、前記測定制御回路12から伝送されるFDR回路、若しくはADR回路による反射波の周波数、又は電圧の情報を基に、公知の演算式を用いて測定試料Mのインピーダンスを算出し、インピーダンスから水分値を予測するための検量線の情報との比較により、測定試料Mの水分値を予測するように構成している。
【0036】
更に、前記制御部25は、前記測定制御回路12から伝送される前記温度センサー5による測定試料Mの温度の情報と、前記水分値・温度補償情報記憶部28に記憶した水分値・温度補償情報とを基に、算出した水分値を標準温度(例えば20℃)の水分値に置換する水分値の温度補償を行うように構成している。
【0037】
そして、前記水分値判定部29により予測した測定試料Mの水分値、温度補償した水分値は制御部25の制御の基に前記記憶部30に記憶するとともに、例えば測定者による操作部23のキー操作により測定試料Mの水分値、温度補償した水分値を前記表示部22に表示するように構成している。
【0038】
次に、上記構成からなる本実施例に係る水分測定装置1の動作及びこの水分測定装置1を使用した水分測定方法について説明する。
【0039】
本実施例に係る水分測定装置1により、生コンクリート、モルタル、砂等のような測定試料Mを測定する場合には、前記測定プローブ2と装置本体21とを、接続ケーブル31により接続と、この水分測定装置1を動作可能状態とする。
【0040】
次に、測定プローブ2から突設した電極体4及び温度センサー5を、建築現場に使用しようとする生コンクリート・モルタル、砂から選定されるいずれか一つの水分含有材である測定試料Mに挿入する。
【0041】
測定プローブ2に設けた測定回路11を使用し、反射測定法により、電極体4にパルス信号を印加して、測定試料Mに挿入した電極体4からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧のいずれか一つと、温度センサー5が検出する測定試料Mの温度を計測する。
【0042】
この場合、TDR回路14を使用する構成の場合には、測定制御回路12の制御の基に反射波を受信し反射波到達時間(パルス信号印加から反射波が到達するまでの時間)を計測する。
【0043】
また、FDR回路を使用する構成の場合には、反射波を周波数領域で解析し、その周波数を計測し、ADR回路を使用する構成の場合には、反射波の振幅を計測する。
前記温度測定回路15は、温度センサー5の検出信号を基に測定試料Mの温度を測定する。
【0044】
次に、接続ケーブル31を介して測定プローブ2に接続した装置本体21の制御回路24にて、測定試料Mの水分値、及び温度補償した水分値を求める。
【0045】
すなわち、前記装置本体21における制御回路24の水分値判定部29は、制御部25の制御の基に、前記測定プローブ2から接続ケーブル31を経て伝送される前記反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を基に、測定試料Mの比誘電率又はインピーダンスを求めて、当該求めた比誘電率又はインピーダンスの情報と、予め検量線情報記憶部27に記憶保持した対応する検量線の情報とを基に前記測定試料Mの水分値を求める(予測する)。
【0046】
また、水分値判定部29は、制御部25の制御の基に、前記測定プローブ2から接続ケーブル31を経て伝送される測定試料Mの温度の情報と、予め水分値・温度補償情報記憶部28に記憶保持した水分値・温度補償情報とを基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める(予測する)。
【0047】
このようにして求めた水分値、温度補償を行った水分値(標準温度(例えば20℃)の水分値に置換した水分値)は、前記制御部25の制御の基に、記憶部30に記憶され、更に、前記制御部25の制御の基に、又は、測定者による操作部23のキー操作により前記表示部22に表示される。
【0048】
以上説明したように、本実施例に係る新規な水分測定装置1及びこの水分測定装置1を使用した水分測定方法によれば、以下に述べるような優れた諸効果を発揮する。
【0049】
すなわち、測定プローブ2から突設した電極体4及び温度センサー5を、水分含有材である測定試料Mの上面から内部に直接挿入して当該測定試料Mの水分値を測定することができるので、前記従来例のような試料ケースを用いずに、また、水平な作業環境を必要とせず、更には、測定作業の簡便性の向上、測定作業時間の短縮化の実現という効果を発揮できる。
【0050】
測定作業時間の短縮は、生コンクリート、モルタル製造後から打設完了までの時間の短縮ともなり、製造する建造物等の強度的な品質向上への寄与という効果も発揮できる。また、測定終了後の電極体4や温度センサー5の洗浄も簡略、かつ、迅速に行うことができる。
【0051】
更に、測定試料Mの比誘電率又はインピーダンスを測定するための電極体4を、測定プローブ2に配置した針状又は棒状の電極とし、測定プローブ2を手持ち作業が可能な構成としたので、さまざまな場所での測定が可能になる効果が発揮できる。
【0052】
次に、本実施例に係る水分測定装置1及びこの水分測定装置1を使用した水分測定方法において、測定プローブ2を、TDR回路14を使用した構成とした場合には、前記従来例で述べた静電容量の測定とは異なり、測定試料Mの平均的な比誘電率の測定が可能であり、ウエットスクリーニング処理を要することなく生コンクリート等の測定試料Mの水分測定が可能となり、従来例で述べた測定した水分値の煩雑な補正作業が不要になるという優れた効果を発揮させることができる。
【0053】
更に、本実施例に係る水分測定装置1及びこの水分測定装置1を使用した水分測定方法において測定プローブ2に針状又は棒状の温度センサー5を設けているので、測定試料Mの温度測定を簡単に実行でき、測定した水分値の温度補償が可能となって、測定精度向上を図ることができる。
【0054】
この他、本実施例に係る水分測定装置1によれば、前記測定プローブ2を採用しているので、例えば空気量測定装置等、他の測定機器・作業機器との一体化が可能となり、その場合、更に、一連の作業時間の短縮の効果が発揮できる。
【0055】
また、測定プローブ2を採用したので、電極体(電極)部分の構造上の設計変更の自由度が広がる効果が発揮できる。例えば、2本の電極体4を樹脂で板状に一体化させ、電極の強度を向上させる例を挙げることができる。
【0056】
なお、本実施例に係る水分測定装置1において、測定プローブ2を装置本体21と一体化し、装置本体21の側壁から電極体4、温度センサー5を突設するという変形した構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水分測定装置及び該水分測定装置を使用した水分測定方法は、土木、建築に用いられる生コンクリート・モルタル、砂等の水分測定に利用する場合の他、農地、干拓地等の土壌水分の測定等々の各種分野に広範に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 水分測定装置
2 測定プローブ
3 測定プローブ本体
3a プローブ側コネクタ
4 電極体
5 温度センサー
11 測定回路
12 測定制御回路
13 パルス印加回路
14 TDR回路
15 温度測定回路
21 装置本体
21a 装置本体側コネクタ
22 表示部
23 操作部
24 制御回路
25 制御部
26 動作プログラム記憶部
27 検量線情報記憶部
28 水分値・温度補償情報記憶部
29 水分値判定部
30 記憶部
31 接続ケーブル
32 電池蓋
M 測定試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定プローブ本体から水分含有材からなる測定試料に挿入する電極体を突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を計測する測定回路を備えた測定プローブと、
この測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求める制御回路を備えた装置本体と、
を有することを特徴とする水分含有材の水分測定装置。
【請求項2】
測定プローブ本体から水分含有材からなる測定試料に挿入する電極体及び温度センサーを突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報及び測定試料の温度を計測する測定回路を備えた測定プローブと、
この測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求め、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される測定試料の温度の情報と、予め記憶保持した水分値・温度補償情報とを基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める制御回路を備えた装置本体と、
を有することを特徴とする水分含有材の水分測定装置。
【請求項3】
測定プローブ本体から生コンクリート・モルタル、砂から選定されるいずれか一つの水分含有材である測定試料に挿入する電極体及び温度センサーを突設するとともに、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加するパルス印加回路と、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間を計測する時間領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の周波数を計測する周波数領域検出回路、測定試料に挿入した電極体からの反射波の電圧を計測する振幅領域検出回路の内のいずれか一つと、温度センサーが検出する測定試料の温度を計測する温度測定回路と、を有する測定回路を備えた測定プローブと、
前記測定プローブに接続ケーブルにより接続されるとともに、誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報を予め記憶した検量線情報記憶部と、水分値の温度補償を行うための水分値・温度補償情報を予め記憶した水分値・温度補償情報記憶部と、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブをもって計測した前記反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、前記検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求めて、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される測定試料の温度の情報と、前記水分値・温度補償情報予め記憶保持した水分値・温度補償情報を基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める水分値判定部と、求めた水分値を表示する表示部とを備えた装置本体と、
を有することを特徴とする水分含有材の水分測定装置。
【請求項4】
測定プローブから突設した電極体を測定試料に挿入する工程と、
測定プローブに設けた測定回路を使用し、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を計測する工程と
前記測定プローブに接続した装置本体の制御回路にて、前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求める工程と、
を含むことを特徴とする水分含有材の水分測定方法。
【請求項5】
測定プローブから突設した電極体及び温度センサーを測定試料に挿入する工程と、
測定プローブに設けた測定回路を使用し、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を計測するとともに、測定試料の温度を計測する工程と、
前記測定プローブに接続した装置本体の制御回路にて、前記測定プローブにて計測した前記いずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求め、前記測定試料の温度の情報と、予め記憶保持した水分値・温度補償情報を基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める工程と、
を含むことを特徴とする水分含有材の水分測定方法。
【請求項6】
測定プローブから突設した電極体及び温度センサーを生コンクリート・モルタル、砂から選定されるいずれか一つの水分含有材である測定試料に挿入する工程と、
測定プローブに設けた測定回路を使用し、反射測定法により、電極体にパルス信号を印加して、測定試料に挿入した電極体からの反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧のいずれか一つと、温度センサーが検出する測定試料の温度を計測する工程と、
前記測定プローブに接続した装置本体の制御回路にて、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される前記測定プローブにて計測した前記反射波の遅れ時間、反射波の周波数、反射波の電圧の内のいずれか一つの情報を基に測定試料の誘電率又はインピーダンスを求め、求めた誘電率又はインピーダンスの情報と、予め記憶保持した誘電率・水分値の関係又はインピーダンス・水分値の関係を示す検量線の情報とを基に前記測定試料の水分値を求め、前記測定プローブから接続ケーブルを経て伝送される測定試料の温度の情報と、予め記憶保持した水分値・温度補償情報を基に前記水分値の温度補償を行った水分値も求める工程と、
求めた前記水分値を表示部に表示する工程と、
を含むことを特徴とする水分含有材の水分測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194027(P2012−194027A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57730(P2011−57730)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000129884)株式会社ケット科学研究所 (13)