説明

水分散性カロテノイド製剤

カンタキサンチンとマリーゴールド石鹸の混合物を含有し、同様に溶液1000部に対して総カロテノイドを1から500部の間で含有し、その調剤特性を所与として、これらのキサントフィルが個別に適用されたときに得られるものより、卵および動物組織に対してはるかに高い顔料着色能力を有する、液体形態の水分散性カロテノイド製剤。3つの段階:1)マリーゴールド抽出物の部分または完全鹸化によって石鹸を抽出する段階と、2)水分散性カンタキサンチン抽出物を調製する段階と、3)制御された攪拌および温度条件下で両方の生成物を混合する段階とからなる、この配合物を調製する方法が記載される。この製剤は動物飼料産業において顔料着色剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、カンタキサンチンとマリーゴールド石鹸の混合物を含有し、その調剤特性を所与として、これらのキサントフィルを個別に適用したときに得られるより、卵および動物組織に対してはるかに高い顔料着色能力を有する、液体形態の水分散性カロテノイド製剤を記載する。
【背景技術】
【0002】
カンタキサンチン、ならびにマリーゴールド石鹸の基本成分であるルテインおよびゼアザチン(Zeazathin)は、多くの適用例の根拠となる多数の共役二重結合を含有することを特徴とする、カロテノイドと称される産物のファミリに属する。キサントフィルという名称は参考文献にしばしば登場し、構造に含酸素官能基、主としてケトまたはヒドロキシル基を含有するカロテノイドを指す。
【0003】
実際に、その炭水化物構造を構成する二重結合の拡張共役は、一般に強い色をカロテノイドに付与する。この特質は、特に食品産業において高く評価されている。
【0004】
これらの産物は、動物飼料産業において着色添加剤として特定の適用を有する。これらの産物は、卵黄および鶏肉、ならびにサケ科の魚および甲殻類の動物など他の動物の組織の顔料着色に大いに用いられている。
【0005】
光誘起酸化に対する保護剤としての使用も記載されており、癌を含む多くの疾患を予防することができる。前癌状態の化学予防、または心血管疾患の予防への言及は、参考文献にしばしば見受けられる。
【0006】
カロテノイドの取扱いおよび使用に伴うもっとも重大な制限の一つはカロテノイドの比較的低い安定性にある。
【0007】
カロテノイドが起こり得る多数の分解経路に関して多くの文献がある。カロテノイドはまた通常、空気と接触して分解し、エポキシドなどの分解または酸化生成物を生じる。実際、カロテノイド自体の酸化が残りの成分の分解の発生を防ぐため、この挙動が抗酸化剤としての機能の根拠となる。
【0008】
同様に、強度の差はあっても酸の存在は大量の分解生成物の形成を伴う分解反応を引き起こす。これらの過程は、光の存在、ならびに特にラジカル発生化合物によって促進される。
【0009】
明らかに、このようないくつかの作用因子に対する挙動は、すでに指摘したとおり抗酸化活性の原因である、多数の共役二重結合分子の結果である。
【0010】
したがって、特に食品において、顔料着色剤としての産業上の適用を確実なものとする重要な態様の一つは、上述のすべての作用因子に対する高い安定性を保証することが基礎となるであろう。
【0011】
本明細書に記載する本発明は、動物飼料産業において顔料着色剤として用いるのに適した、合成キサントフィル、カンタキサンチン、鹸化植物抽出物、マリーゴールド石鹸からなる特徴的な混合物を含有する製剤に関する。この製剤は、以下に記載するように、特にこれら2種の産物の個別の適用と比較して、着色有効性に関して著しく向上している。
【0012】
開発された製剤のこの驚くべき有効性の向上は、動物組織へのより高い沈着性、分解過程に対する追加的な保護によるカロテノイドの安定性の増大、および含まれるキサントフィルの顔料着色力を最適化する食品中でのより均一かつ均質な分布に関する多数の態様によって実証される。
(技術概要)
参考文献には、卵および組織の顔料着色するための動物食品着色添加剤としてのキサントフィルの使用の多くの例がある。
【0013】
マリーゴールド抽出物は、キサントフィル含量が高いため、もっとも重要な天然源の1つであり、基本的にルテインおよびゼアキサンチンであり、それらはエステル形態であるため、添加剤として使用される前に鹸化工程に供される。
【0014】
マリーゴールドから遊離キサントフィルを調製する最初の実験の一つは、1970年に米国特許第3523138号に記載され、特許請求されているものである。該特許では、マリーゴールド抽出物をアルコール中KOHまたはNaOHによる鹸化に供する。リン酸による部分中和によって高純度の総キサントフィルを含む濃縮物が調製され、これは動物飼料での使用に適している。
【0015】
Eastman Kodakの米国特許第3535426号には、天然植物抽出物由来のキサントフィルの安定化が記載されており、これは多量の水酸化カリウム、エタノール、および水を用いるマリーゴールド粉末の鹸化からなる。この鹸化工程を窒素環境で実施し、2時間続けた。鹸化物が中和されたら、それに飽和脂肪を添加し、最後に乾燥して粉末を得た。同様の方法が、CPC Internationalの米国特許第3997679号に記載されている。
【0016】
適切に賦形剤(excipiented)を用いて、動物飼料に直接適用するためのプレミックスの調製に用いられるように、石鹸を調製することを目的として、種々の条件下でのマリーゴールドオレオレジンの鹸化を記載している他の多くの例がある。特に対象となるのは、1995年にスペイン特許第ES2099683号においてIQFによって特許請求された一般的工程である。この方法によれば、場合によりプロピレングリコールの存在下、NaOHまたはKOHのアルコール溶解の作用によって、パプリカまたはマリーゴールドの脂肪抽出物の鹸化により高純度の濃縮物が得られる。
【0017】
参考文献には、高純度でマリーゴールド石鹸からキサントフィルを調製する多くの例もある。この態様を例示する一例は、TyczkowskiおよびHamiltonによってPoultry Sci.70(3)、651〜4(1991)に記載されているものである。その手順に従って、ルテインの高純度濃縮物が得られる。この方法はアルコール性KOHの作用によるマリーゴールド抽出物の鹸化、および溶媒混合物(加熱)による抽出からなる。筆者等によれば、有機相を分離した後、部分蒸発結晶ルテインが得られ、それをヘキサン/アセトンで再結晶することによって、ルテイン純度99%超の結晶が単離される。
【0018】
動物組織に魅力的な赤い色調を付与する、動物組織を顔料着色するための着色添加剤として、合成キサントフィル、カンタキサンチンを使用する多くの例も記載されている。
【0019】
近年、最優先である安定性に加えて、適正な吸収、したがってバイオアベイラビリティを保証することを試みる、カロテノイド製剤化の様々な方法が開発されている。これらの特徴は、全体として、用いられる製剤の型を決定するものである。
【0020】
顔料着色力を改善し、吸収を増大させるための多くの方法が記載されており、そのために結晶の大きさを10ミクロン未満に縮小する試みがされてきた。Chimia、21、329(1967)には、コロイド状油中の製剤が記載されており、これは一方で、Food Technol.,12、527(1958)に示されているように、安定化効果を有する。水との混和性が低いため、この製剤のそのような方法での使用は著しい限界を示す。
【0021】
さらに、カロテノイド、特にカンタキサンチンの水性調剤ははるかに困難である。実際、比較的無極性の構造を考えると、カロテノイドの水溶解度は非常に低いことを考慮に入れなければならず、これは高レベルの顔料着色を得るのに著しい限界のあることを意味する。
【0022】
様々な案が試験されており、たとえば、エタノールまたはアセトンなどの水混和性の有機溶媒を使用し、カロテノイドを溶解する水と接触させ、それによって非常に小さい吸収性粒子が生じる。そのような例が欧州特許第EP65193号および米国特許第4726955号に記載されている。しかしながら、このような種類の溶媒中であっても、カロテノイドの溶解性は非常に低く、許容される結果を得るためには大量の溶媒が必要であろう。
【0023】
他の方法は、適切な賦形剤を用いる製剤に関する。たとえば、カロテノイドを独特許第DE642307号に記載の方法に従って油に溶解し、または独特許第DE861637号に従ってクロロホルムに溶解し、デンプン、粉乳などと共に賦形剤に噴霧する。しかしながら、これらの製剤は、水中で容易に分散しないことに加えて、酸化に対する安定性に大きな問題を示す。
【0024】
この目的のために、Chimia、21、329(1967)、ならびに仏特許第FrP1056114号および米国特許第2650895号に記載されているとおり、エマルションの調剤にゼラチンを混入することによって最良の結果が得られた。
【0025】
水分散性製剤に関する最大の進歩は、Chimia、21、329(1967)、独特許第DE1211911号、および独特許第DE2544091号に記載されている例からなる。これらの例によれば、カロテノイドを水と不混和性のクロロホルムまたはジクロロメタン型の溶媒に溶解し、得られた溶液をゼラチンおよび糖の水溶液で均質化することによって乳化する。有機溶媒を除去してゲルを生成し、場合によりそれを乾燥賦形剤上に噴霧することができ、それによって真に水分散性の製剤が得られる。このようにしてキサントフィルの安定性は相当に増大し、同時にある程度までのバイオアベイラビリティが確保される。
【0026】
参考文献には、カンタキサンチンおよび他の類似のカロテノイドの製剤の他の例があり、たとえばpHの調整された特定の乳化剤の存在下での液体分散、またはマイクロカプセル化工程による製剤化技法、すなわち空気中の酸素の直接作用から保護された内部に顔料を含有する小カプセルを製造することなどである。
【0027】
もっとも重要な供給源がマリーゴールドの花であるルテインまたはゼアキサンチンなどの植物源由来のカロテノイドの具体的な例において、水性媒質における混和性は、これらのキサントフィルの脂肪酸エステルおよびヒドロキシル基の鹸化によって達成され、これにより水溶性石鹸の形成、および同時にカロテノイドの遊離が起こる。
【0028】
動物食品のプレミックスを製造するため、そのまままたは鉱物賦形剤に担持させた、主としてルテインおよびゼアキサンチンからなるマリーゴールド石鹸の使用への言及は、前述のものなど、参考文献によく見受けられる。これはもっとも一般的なその製剤とみなすことができる。
【0029】
したがって、これまで示したように、参考文献には水分散性の形態である合成カロテノイド製剤、およびそのエステルの鹸化工程で「in situ」で作られる石鹸中の分散体である植物キサントフィル生成物について豊富な情報がある。
【0030】
これらの生成物は市販され入手可能であるため、飼料の調製における個別の使用がもたらされてきた。カンタキサンチンおよびマリーゴールドキサントフィル製剤は、所望の色を得るために固体形態で、適切な割合で混合される。これが一般的に行われている方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第3523138号
【特許文献2】米国特許第3535426号
【特許文献3】米国特許第3997679号
【特許文献4】スペイン特許第ES2099683号
【特許文献5】独特許第DE1211911号
【特許文献6】独特許第DE2544091号
【特許文献7】欧州特許第EP65193号
【特許文献8】米国特許第4726955号
【特許文献9】独特許第DE642307号
【特許文献10】独特許第DE861637号
【特許文献11】仏特許第FrP1056114号
【特許文献12】米国特許第2650895号
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】TyczkowskiおよびHamilton、Poultry Sci.70(3)、651〜4(1991)
【非特許文献2】Chimia、21、329(1967)
【非特許文献3】Food Technol.,12、527(1958)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかしながら、合成カロテノイド、カンタキサンチン、および鹸化マリーゴールド抽出物由来の植物キサントフィルを同時に含有する水分散性製剤として動物飼料用の顔料を調製に使用する前例はない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
プレミックスおよび動物飼料の調製において顔料着色添加剤として使用するのに適しており、今まで記載され市場に出されたものと比較して著しい利点を有する、カンタキサンチンとマリーゴールド石鹸の混合物を含有する液体カロテノイド製剤が本明細書に記載される。
【0035】
したがって、本発明の詳細な説明において以下で確認できるとおり、この製剤はカロテノイドを個別に適用することによって得られるものと比べて、顔料着色活性の著しい増大を可能にする特定の特徴を示す。
【0036】
本発明の主題である本製剤を含有する飼料、および粉末形態の2種類の市販の製品(カンタキサンチンおよびマリーゴールドキサントフィル)を含有する他の飼料を用いた卵黄で達成される顔料着色に関して比較研究を行った。
【0037】
これらの試験では、処理期間を通じて得られる発色の制御に関して、到達した値を「a」および「b」Minoltaスケールで記録した。
【0038】
得られた結果は決定的なものであり、同じレベルの顔料着色を得るために、本発明の主題である液体製剤を用いることによって、平均して約20%少ない総カロテノイドが必要とされることを示している。
【0039】
したがって、本明細書に記載の液体製剤は、個別の粉末製品を用いて得られるものに対して、卵において顔料着色有効性の著しい改善を示す。この驚くべき挙動は、様々な要因の総体として見出すことができる。
【0040】
微視的観点からは、石鹸の添加は飼料におけるカロテノイド粒子の均質な分散を促進するため、著しい改善が強調されなければならない。これにより、カロテノイドの投与が大幅に改善され、それによって用量および1日摂取量が調節される。直接の結果として、顔料が沈着する組織にもたらされる顔料着色の均質性が改善される。
【0041】
代謝の観点からは、著しい利点は、すでに知られており、十分に探究されている腸管レベルでのカロテノイドの吸収困難と関連している。本明細書に記載の製剤によれば、食品中のカロテノイドの遊離は即時であり、これはカロテノイドの吸収を促進し、したがってその有効性を高めることになる。
【0042】
実用レベルでは、さらなる重要な態様が強調されなければならない。高い割合で石鹸を含むマトリクスからなる液生成物を調製することにより、調製の最終段階で食品に液体生成物を直接適用することができる。食品を構成する粒子の有効かつ均質な被覆がこのようにして付与される。
【0043】
本明細書に記載する製剤の一特徴であり、顔料着色有効性を増大させる重要な論拠を構成するのは、酸化および他の関連する分解過程に対するカロテノイドの安定性の増大である。
【0044】
この改善を確認するために、添加された石鹸を含有しない市販製品に対して、この型の混合物の安定性に関して多数の比較研究を行った。一部の結果を表Iに示す。
表I 液体顔料の加速安定性の比較研究
加速安定性の研究は、空気の存在下、温度を70℃に上昇させて行った。保持率は熱処理後に残存するカンタキサンチンの比率として表す。
【0045】
【表1】

(*)CTX+JMBは、本発明の主題である調剤であり、本明細書の記載に従って調製されたカンタキサンチン配合物のマリーゴールド石鹸との混合物からなる。
【0046】
一連の非常に重要な結論が上記の表から得られる。まず第一に、上記の表は70℃および空気の存在下での熱処理が、通常の方法で得られるカンタキサンチン配合物に著しい分解を引き起こすことを示している。17時間後、保持率は94.3%であり、48時間後、これらの条件下で保持率は84%まで下がる。
【0047】
本明細書のCTX+JMBに従って調製された生成物に関しては、熱処理による分解ははるかに少なく、17時間後の保持率は98.52%であり、48後時間後は93%を維持していた。
【0048】
ゲルでは、カンタキサンチンは通常の製剤では確かに安定であるが、たとえ極端な分解条件下であっても、マリーゴールドオレオレジンの鹸化で製造された石鹸を添加することによって、さらなる安定化効果がもたらされることが、得られた結果によりわかる。
【0049】
この石鹸を比較的少量で添加してもこの効果が生じることが実証され、これによって必要に応じて石鹸の追加量を決定できる。
【0050】
安定性増大の理由は現在のところ完全には論証できていないが、この事実を解明する助けとなる可能性のある一連の議論に言及できる。
【0051】
マリーゴールドオレオレジンの鹸化から作られる石鹸は、高い割合の天然産物、ゴム、ロウなどを含有し、それらは保護剤として働き、大気中酸素と接触する可能性を低減し得る。この保護効果は、これらの条件で高い安定性を示すマリーゴールドオレオレジンに含有されるキサントフィルにおいてこれらの同じ産物が有するのと類似するものであろう。
【0052】
さらに、この石鹸は高い割合のキサントフィル、エポキシド、および他のカロテノイド誘導体を含有し、これらは抗酸化力を有するため、それらもカンタキサンチン自体の分解に対して保護剤として働くことになる。
【0053】
最後に、オレオレジンの鹸化に由来する脂肪酸のアルカリ塩に主として起因する表面活性特性が、カンタキサンチン結晶の空気との表面接触を低減する一助となり、それによって酸化からカンタキサンチンを保護し、安定性に寄与する可能性がある。
【0054】
さらに、石鹸の添加は最終生成物中のカンタキサンチンのバイオアベイラビリティに影響を及ぼさないことが確認され、カロテノイドの安定性が確保されるという単なる事実によって、その顔料着色活性が増大することが予期される。
【0055】
安定化または顔料着色力の観点から改善を意味しないが、商業的使用の観点からは改善を意味する、別の態様を指摘することが重要である。このように、マリーゴールド石鹸に含有されるものなどの黄色キサントフィルの混合物に、カンタキサンチンなどの赤色着色剤を添加することによってそれらを合わせ、それによって食品用の添加剤の調製において広範な魅力的な色を与えることができる。
【0056】
産業上の観点から、この配合物を調製するために必要とされるのは簡単なアセンブリであることを指摘するのが重要である。参考文献に示されている他の型の製剤に関して記載されている、程度の差はあっても複雑なアセンブリと比較して、本明細書に記載の例では、有効な攪拌機および温度制御のみを備えた反応器の使用で十分である。
【0057】
本明細書に記載した方法の他の重要な利点は、すでに記載した全工程で達成されたコストの低減にある。このように、すでに述べた簡易なアセンブリの他に、試薬および反応条件の性質、ならびに最終生成物の単離方法が製造コストの低減に寄与し、これにより本手順は産業上の観点から優れた代替手段となる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
前述のとおり、カンタキサンチンおよび鹸化マリーゴールド抽出物の混合物を含有し、それらの調剤特性を所与として、これらのキサントフィルが個別に適用されることからなる通常の方法によって得られるより、卵および組織に対してはるかに高い顔料着色力を示す、液体形態の水分散性カロテノイド製剤が本明細書に記載される。
【0059】
最初から、カンタキサンチンは一般に合成によって調製されるが、その調製を実施するために、一般的でないにもかかわらず、天然源から抽出によって得られるキサントフィル富化産物を用いることができる。
【0060】
本発明の主題である製剤を調製する方法の第1段階は、カンタキサンチンから水溶性形態を得ることを含む。
【0061】
食品に適した着色添加剤を調製するための、カンタキサンチンを製剤化する、別の方法がある。水分散性ゲルの調製は通常、カンタキサンチンを水と不混和性の有機溶媒に溶解し、補助剤と共に炭水化物およびタンパク質を含有する水溶液と接触させることによる。溶媒を除去することによって、水性媒質に分散性であるゲルを調製することができる。
【0062】
このゲルの製剤化工程は、小ビーズ(beadlet)の調製に適した乾燥剤の床にそれを噴霧することによって完了できる。前駆体ゲルおよび噴霧生成物の両方を本明細書に記載の製剤の前駆体として用いることができる。
【0063】
第2段階は、それらのキサントフィルに富む植物、好ましくはマリーゴールドオレオレジンから得られる、キサントフィルルテインおよびゼアキサンチンを含有する水溶性形態を調製することからなる。
【0064】
用いられるマリーゴールドオレオレジンは通常、10〜15%の全キサントフィルを含有する。しかしながら、濃縮または精製の工程によって得られる著しく高い全キサントフィル含量を有するオレオレジンを用いることができる。いずれにしても、石鹸の適用量は、ルテインとして表わされる黄色キサントフィルの総量に応じて調節される。
【0065】
水分散性形態は、水性または水性アルコール媒質中、アルカリ水酸化物、またはアルカリ土類もしくは金属アルコキシドなどのアルカリ試薬の作用によって、マリーゴールドオレオレジンの部分または完全鹸化工程による通常の方法に従って調製されるマリーゴールド石鹸からなる。最良の結果は、水性媒質中、鹸化試薬として水酸化カリウム水溶液を用いることによって達成された。
【0066】
添加するマリーゴールド石鹸の量および特徴に関して、前に示したとおり、広範な可能性がある。実際、少量の石鹸を添加することによって、顔料着色力の著しい改善、ならびにカンタキサンチンの大幅な安定化効果が生じる。
【0067】
製剤を調製するために添加される石鹸の量は、用いるカンタキサンチンの量に対する、等量のルテインとして表わされるマリーゴールドオレオレジンの総キサントフィルの割合に応じて、さらに所望の色に応じて決定される。
【0068】
キサントフィルおよび補助剤それぞれの用いられる量に応じて、調製された製剤は、溶液1000部当たり総カロテノイド1部と溶液1000部当たり総カロテノイド500部の間で含有することになる。
【0069】
特許請求される製剤の特定の特徴に関連する他の重要な態様は、賦形剤および補助剤の性質および量に基づく。
【0070】
前述のとおり、製剤は水分散性カンタキサンチンから調製され、これにより炭水化物、タンパク質、および適切な場合には無機賦形剤などの最終生成物に用いられる作用剤の存在が確保され、それらがキサントフィル安定性の付加による顔料着色活性の増大に寄与する。
【0071】
さらに、特許請求される製剤の他の成分を構成する、鹸化マリーゴールド抽出物に伴う石鹸、ゴム、ロウ、および他の作用剤の存在は、すべてのキサントフィルの安定性の増大、したがってその顔料着色有効性の増大において重要である。
【0072】
これらの補助剤の量は、記載する製剤の調製に用いるカンタキサンチンおよびマリーゴールド石鹸の関連する量に比例し、したがって広い範囲の濃度を包含する。
【0073】
良好な生成物の調製における重要な要素は攪拌である。カンタキサンチン製剤の以前の型にかかわらず、成分の良好な混合を確保するように強く攪拌しながらマリーゴールド石鹸に適用されるとき、最良の結果が得られる。添加が完了したら、完全に均質な混合物が得られるまで、1分から数時間、好ましくは1時間から3時間の間、攪拌を継続する。特にカンタキサンチンとマリーゴールド石鹸の添加順序が変更されるとき、Ultra−Turraxまたは類似する追加の攪拌システムを組み入れるのが有用である。
【0074】
一部の例では、より均質な混合物を得るために石鹸を流動化する目的で、少量のリン酸、塩酸、硫酸、もしくは類似の酸などの無機酸、または有機酸であっても添加することが推奨される。このような場合、添加はゆっくりと注意深く、強い攪拌は酸の高濃度の領域を回避して、行わなければならない。いずれにしても、最終pH値は9超を維持しなければならない。
【0075】
温度は、決定的なパラメータではないが、どの程度分散媒体が流動化され、それによってより均質な混合物が得られる程度に大きな影響を及ぼす。通常の温度値は5℃から95℃の間である。しかしながら、流動性、したがって用いるマリーゴールド石鹸の組成に応じて値を調節し、25℃から70℃の温度で最良の結果が得られた。
【0076】
通常の操作条件において、空気の存在は重大なリスクとはみなされない。しかしながら、最適な結果を得るために、アルゴンまたは窒素不活性雰囲気を用いることが推奨される。
【0077】
記載する製剤の特に有用な特徴は、製剤が液体であることである。したがって、この製剤の混入は様々な方法で行うことができ、なかでも飼料に噴霧またはネブライズするのが実用的な観点からもっとも適切であると考えられ、飼料は好ましくはすでに粒状化されており、したがって粒状化工程がキサントフィルにもたらす熱衝撃が低減される。
【0078】
このようにして、キサントフィルの完全に均質な分布が飼料全体にわたって確保され、さらに製剤内の補助剤の存在によって薄い保護膜も生じ、これが熱または酸化による分解を防ぐ。
【0079】
この態様が、通常用いられるとおりに粉末キサントフィルを個別に用いるのと比較して、皮膚上および卵黄内の両方でのより高い顔料着色有効性およびより高い発色均質性を説明する理由の一つである。
【0080】
次に、記載する本発明を実施する方法に関して一連の実施例を記載するが、これらは限定的な性質を持たない。
【実施例1】
【0081】
以下の原材料の割合に従って、マリーゴールドオレオレジンの鹸化を実施し、
マリーゴールドオレオレジン 190g
50%水酸化カリウム 76g
鹸化が完了するまで、強く攪拌しながら70〜80℃に加熱する。
【0082】
リン酸で酸性にし、水を添加して、石鹸20から25%の近似値まで濃度を調節する。
【0083】
このように調製した混合物を、カンタキサンチンに対する総マリーゴールドキサントフィルの最終的な割合が15:1となる条件で、強く攪拌しながら、補助剤と共にカンタキサンチン、スクロース、およびゼラチンから得られた調剤に注ぐ。
【0084】
攪拌を1時間継続し、徐々に室温に到達させる。
【0085】
動物飼料において顔料着色添加剤として使用することができる、水性媒質中の完全に均質なキサントフィルの分散体が得られる。
【実施例2】
【0086】
以下を用い、実施例1によるする石鹸が得られるマリーゴールドオレオレジンの鹸化を実施し、
マリーゴールドオレオレジン 400g
50%水酸化カリウム 160g
鹸化が完了するまで、強く攪拌しながら80℃に加熱する。
【0087】
この石鹸に、カンタキサンチンに対する総マリーゴールドキサントフィルの最終的な割合が10:1となる条件で、等量の小ビーズ形態のカンタキサンチンを添加する。
【0088】
水を添加し、リン酸を用いて酸性にし、攪拌を30分間継続する。
【0089】
Ultra−Turrax攪拌機を接続し、室温に冷却する間、攪拌を2時間継続する。
【0090】
動物飼料の添加剤として適した、水性媒質中のキサントフィルの均質な調剤が得られる。
【実施例3】
【0091】
加熱を45分間継続し、したがって鹸化を完了することなく、実施例2に従ってマリーゴールドオレオレジンの鹸化を実施する。
【0092】
これらの条件において、温度を約60〜65℃に維持し、カンタキサンチンに対して総マリーゴールドキサントフィルの最終的な割合が20:1となる条件で、等量の小ビーズ形態のカンタキサンチンを添加する。
【0093】
マリーゴールドオレオレジンエステルの鹸化が完了するまで加熱を継続し、冷却せずに水を添加し、リン酸で酸性にし、攪拌を30分間継続する。
【0094】
Ultra−Turrax攪拌機を接続し、室温に冷ましながら、30分間攪拌する。
【0095】
動物飼料の顔料として用いるのに適した、赤色および黄色キサントフィルの水性分散体が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンタキサンチンと鹸化マリーゴールド抽出物の混合物からなり、溶液1000部に対して総カロテノイドを1から500部の間で含有する、動物飼料産業において顔料着色剤として用いるのに適した、液体形態であるカロテノイドの水分散性製剤。
【請求項2】
使用される前記マリーゴールド抽出物が、キサントフィルエステルの部分または完全鹸化工程に供されている、請求項1に記載のカロテノイドの製剤。
【請求項3】
前記最初のカンタキサンチンが合成によって、または天然源からの抽出によって得られる、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
・マリーゴールド抽出物の部分または完全鹸化によって石鹸を得る段階と、
・水分散性カンタキサンチン製剤を調製する段階と、
・制御された攪拌および温度条件下で両方の生成物を混合する段階と
からなる、請求項1に記載の製剤を調製する手順。
【請求項5】
前記マリーゴールド抽出物が、水性または水性アルコール媒質中、アルカリ水酸化物、またはアルカリ土類もしくは金属アルコキシドなどのアルカリ試薬の作用による、そのキサントフィルエステルの部分または完全鹸化に供される、請求項4に記載の手順。
【請求項6】
前記カンタキサンチンを含有する前記分散性生成物が、マイクロカプセル化された分散体もしくはゲル形態、または水性媒質中のキサントフィルの均質な分散を可能にする他の任意の製剤として調製される、請求項4に記載の手順。
【請求項7】
前記マリーゴールド石鹸と水分散性カンタキサンチンの混合が、均質な混合物が得られるまで、強く攪拌しながら実施される、請求項4に記載の手順。
【請求項8】
前記混合の前記攪拌が、完全に均質な混合物が得られるまで、用いられる攪拌条件に応じて1分間から数時間の間継続される、請求項4から請求項7に記載の手順。
【請求項9】
均質な混合物を得るのに十分な流動性を維持する目的で、混合の温度が、用いられる成分の組成および粘性ならびに攪拌条件に応じて、5℃から95℃、好ましくは25℃から75℃の間で保持される、請求項4から請求項8に記載の手順。
【請求項10】
アルゴンまたは窒素の不活性雰囲気を用いることによって、空気の不在下で混合が実施される、請求項4に記載の手順。
【請求項11】
動物飼料用の添加剤、プレミックス、または製品の調製における、請求項1によって得られる製剤の使用。
【請求項12】
動物用の飲料の調製における、請求項1によって得られる製剤の使用。
【請求項13】
卵および動物組織を顔料着色するための、請求項1によって得られる製剤の使用。
【請求項14】
前記カロテノイド混合物の均質な分布が確保され、飼料の安定化効果が促進されるように動物飼料に添加することからなる、請求項1に記載の液体製剤の適用手順。

【公表番号】特表2010−534468(P2010−534468A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517424(P2010−517424)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/ES2008/000266
【国際公開番号】WO2009/022034
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510007702)インベスティガショネス ケミカス イ ファルマシューティカス,エス.エー. (1)
【Fターム(参考)】