説明

水力発電所の給水流量制御装置及び、その給水流量制御方法

【課題】発電機固定子や軸受部等の冷却水に対して優先的に封水装置に給水できるようにすると共に、出水時のゴミ等により流量が低下した場合であっても、発電機停止等の異常事態を回避できるようにする。
【解決手段】給水系統に接続され、発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する3つのA電動弁451、B電動弁452、C電動弁453と、このA〜C電動弁によって調整される各々の用途毎の流量配分に関する優先順位を設定する設定部18と、給水系統に接続され、設定部18によって優先順位が設定された各々の用途に供給される給水流量を検出する複数の流量計46〜48と、A〜C電動弁、設定部18及び流量計46〜48に接続され、検出された各々の用途に供給される給水流量及び、設定された優先順位に基づいてA〜D電動弁を制御する制御部53とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電所の発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等を制御する給水流量制御システムに適用可能な水力発電所の給水流量制御装置及びその給水流量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水力発電所では、水車発電機の冷却用途、水車の軸受部の冷却用途、その軸受部における河川の水浸入を防ぐための封水用途等に給水装置が設置されている。封水用途に使用される給水装置を以下、封水装置という。
【0003】
図15は、従来例に係る水力発電所の水車60における封水装置10の配置例を示す説明図である。図15に示す水車60は、例えば、フランシス水車(反動水車)を構成し、ケーシング1、主軸8、ランナ12、吸出し管13及び軸受部70を有して、その主要部が構成される。ケーシング1は渦巻き状を有して、図示しない水圧管(鉄管)の端部に連結される。ケーシング1内には毎秒数トンの水が流れている。ケーシング1の外側はピットライナ11で保護されている。ケーシング1はスピードリング2を有しており、スピードリング2が水圧や外力に対してケーシングを補強したり、流水の方向を整えるようになされる。
【0004】
ケーシング1の中央部は上カバー3及び下カバー4で密閉され、ケーシング1内の数トンの水が噴射しないように覆われて水車室を構成している。主軸8はケーシング1の中央部に回転自在に配置され、その一端には図示しない水車発電機の主軸が連結される。主軸8の他端にはランナ12が取り付けられる。水車室内では、ケーシング1内の水がランナ12に当たり主軸8が回転する。上述のケーシング1の中央部の下方には吸出し管13が連結され、ランナ12に当った水を吸い出すように機能する。
【0005】
ランナ12の外周付近には複数個のガイドベーン6が設けられる。各々のガイドベーン6にはガイドリング7が係合され、図示しない調速機が接続される。調速機はガイドベーン6を連動して動作させ、開口面積を可変してランナ12に当てる水の流量を調整する。
【0006】
ケーシング1の中央部には軸受部70が配置され、ランナ12が取り付けられた主軸8を所定位置で回転自在に受け支える構造になっている。軸受部70は主軸メタルケース5、主軸受9及び封水装置10から構成される。主軸メタルケース5は軸受部70の主要部を構成し、主軸受9を有して、主軸8を回転自在に受け支える。
【0007】
封水装置10は特許文献3に見られ、軸受部70内であって、主軸メタルケース5の下方に配置される。一般に水車60は、主軸8の円周に沿って漏水が発生し易いことが知られている。封水装置10は、この主軸8の円周に沿って発生する漏水を封止するために設けられる。
【0008】
封水装置10は主に、パッキン部材17、主軸パッキン箱19及び図示しない封水管から構成されている。主軸パッキン箱19は、主軸8の外周を覆う部分であって、水密区画を構成する境界部分に配置され、主軸パッキン箱19内にはパッキン部材17が取り付けられる。封水装置10では、ある程度の圧力を持った水を封水管を介してパッキン部材17に与え、当該パッキン部材17を主軸8の方向へ押さえ付けることで、漏水圧力に負けないようになされる。
【0009】
なお、パッキン部材17に与える給水量が少なくなると(圧力低下すると)、パッキン部材17の水密効果が低下する。このため、漏水量が多くなり、河川の水浸入の防止効果が低減する場合が多い。
【0010】
図16は、水力発電所200の封水装置10を含む給水系統(主流)の構成例を示すブロック図である。図16に示す封水装置10を含む給水系統は、鉄管→給水主弁→ストレーナ→各冷却水及び封水→ドラフト(排水)となっている。水力発電所200の給水流量調整システムは、例えば、主給水管24、バイパス管25、分配管26、電動弁27、ストレーナ34、402,405、手動弁35〜37、手動弁401,403,404,406を有して構成される。
【0011】
主給水管24の上流側には電動弁27(給水主弁)が接続される。電動弁27の上流側には鉄管40が接続され、発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等の各用途の水20を鉄管40から主給水管24へ取り込むように制御される。
【0012】
主給水管24には、電動弁27の下流側にバイパス管25が接続される。バイパス管25の分岐点の下流側の主給水管24には、上流側から順に手動弁401、ストレーナ402及び手動弁403が接続される。バイパス管25には上流側から順に手動弁404、ストレーナ405及び手動弁406が接続される。
【0013】
分配管26には封水管P1、冷却管P2,P3が接続される。封水管P1には上流側から順にストレーナ34及び手動弁35が取り付けられる。封水管P1ではストレーナ34を通過した後の封水用途の水(以下で封水という)が手動弁35によって手動で調整され、図15に示したパッキン部材17を押下する封水管に給水される。
【0014】
冷却管P2には手動弁36が接続され、軸受部冷却用の水の流量が手動で調整される。冷却管P3には手動弁37が接続され、発電機固定子冷却用の水の流量が手動で調整される。各冷却水の必要流量と封水の必要流量とは様々で、発電機冷却用途>軸受冷却用途>封水用途の順に流量が調整される。例えば、発電機冷却、軸受冷却、封水の各用途の流量は、手動弁35〜37の弁開度を調整することにより行われる。これらの発電機冷却、軸受冷却、封水の各用途の流量を手動調整する給水流量調整システムを、自動制御化して給水流量制御システムを構築する方法が考えられている。
【0015】
この種の水力発電所の給水流量制御システムに関連して、特許文献1に開示された流体の流量調整制御装置によれば、信号発生手段、流量調整バルブ及び制御装置を備え、信号発生手段は信号出力部を有している。信号出力部は、上位4ビットの上位側設定部及び、下位4ビットの下位側設定部を有し、上・下位側設定部からの各ビット信号を組み合わせて出力する。流量調整バルブは、流体の性質毎に複数個配設され、信号出力部からの出力に応じて流体通路面積を変化させる。これらを前提にして、制御装置は、信号出力部から流量調整バルブへ夫々ビット信号を出力させ、各流量調整バルブの流体通路断面積をビット信号に応じて選択し、各流量調整バルブからの流量を夫々調整して混合流体を生成すべく流量調整バルブを制御するようになる。
【0016】
このように流体の流量調整制御装置を構成すると、信号出力部から出力されるビット信号によって流量調整バルブを開閉制御することができ、流体の流量調整を細かく行うことができ、流体を所定の混合割合により混合でき、混合割合の正確な混合流体を生成できるというものである。
【0017】
更に、水力発電所の給水流量制御装置に関連して、特許文献2に開示されたガス流量の調整装置によれば、複数のトーチ、定流量素子及び制御手段を備え、複数のトーチは、複数種のノズルを選択的に装着すると共に、供給されたガスをノズルから噴射して被加工材に対して加工が行われる。
【0018】
定流量素子は、複数のトーチに於けるガスの供給側に接続され、予め設定されたガス流量に対応する指令信号を受け、この指令信号と現在のガス流量を検出した検出信号とを比較して、現在のガス流量が予め設定されたガス流量の値から変動したとき、現在のガス流量を予め設定されたガス流量に調整する。これを前提にして、制御手段が、複数のトーチに於けるガスの供給側に接続された定流量素子に対し、ガス毎に予め設定されたガス流量に対応する指令信号を伝達して定流量素子を制御するものである。
【0019】
このようにガス流量の調整装置を構成すると、1台の制御手段によって複数の定流量素子を制御することができ、コストを大幅に上昇させることなく、複数のトーチに対するガスの流量を正確に制御できるというものである。
【0020】
更に、水力発電所の給水流量制御装置に関連して、特許文献3に開示された立軸水車の主軸封水装置によれば、主軸スリーブ、主軸封水本体、及び、遠心ポンプを備え、主軸スリーブは立軸水車の主軸下部の外周面に取り付けられる。主軸封水本体は、櫛の歯状のシーリングライナを備えている。シーリングライナは、軸水車の上カバーの上面に取付けられ、その内周面に主軸スリーブに対して予め定めた主軸シールギャップを介して対向する面を有している。遠心ポンプは、主軸スリーブの頂端近傍または下端近傍の少なくともいずれか一方の立軸水車の主軸の外周面に設けられて、主軸の回転により主軸シールギャップに向かう水圧を発生する。これらを前提にして、主軸封水本体の上部が遠心ポンプに小間隙を介して対向するように構成される。
【0021】
このように立軸水車の主軸封水装置を構成すると、水車主軸の定格回転時において、主軸シールギャップを上昇して漏水となる圧力水の上昇を抑制でき、主軸封水装置からの漏水を低減できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平09−034554号公報(第2頁 図1)
【特許文献2】特開平08−197257号公報(第4頁 図3)
【特許文献3】特開平08−177705号公報(第1頁 図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、従来例に係る水力発電所200の給水流量制御システムによれば、次のような問題がある。
i.発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等の各用途で必要流量が違うこと、及び、1つの給水系統から全ての用途に対応して給水を行っているため、図16に示した手動弁35〜37による調整では、個々の流量調整が非常に困難となる。発電機冷却用には多量の冷却水が使用されるため、流量調整次第では最も少ない封水流量が満たされなくなってしまう場合もある。
【0024】
ii.また、発電機冷却用の冷却管P3を配管清掃(クーラー逆洗浄)するために、一時的に発電機冷却用の流量を増加させる場合がある。この配管清掃時に封水流量が低下し、発電機80を自動停止してしまう恐れがある。
【0025】
iii.給水流量制御システムでは主給水管24のストレーナ402とは別に、封水系統の封水管P1にストレーナ34を設置している場合が多い。しかし、ストレーナ402の排砂動作とストレーナ34の排砂動作が同時期に起動された場合に、封水流量が低下し、発電機80を自動停止してしまう恐れが有る。
【0026】
iv.なお、特許文献1に見られるような流体の流量調整制御装置によれば、供給元の水の流量が有る程度確保されていることが前提と考えられ、供給元流量が十分確保されていない場合は、水力発電所200における出水時の対処が困難となるという問題がある。出水時にゴミ等により流量が低下した場合、流量が最も少ない封水に影響を及ぼし、発電機80を自動停止してしまう場合がある。
【0027】
v.また、特許文献2に見られるようなガス流量の調整装置によれば、流量が設定値となるように目標値追従制御するが、水力発電所においては、出水時の濁水等により流量が低下するのを事前に防ぐ必要がある。このため、流量を設定値よりも多めに設定する等の対策が必要であり、一概に流量を一定(設定値)に保つだけでは、上述の問題に対応できない。
【0028】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、発電機固定子や軸受部等の冷却水に対して優先的に封水装置に給水できるようにすると共に、出水時のゴミ等により流量が低下した場合であっても、発電機停止等の異常事態を回避できるようにした水力発電所の給水流量制御装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、少なくとも、給水系統に接続され、発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する複数の流量調整部と、前記流量調整部によって調整される各々の前記用途毎の流量配分に関する優先順位を設定する設定部と、前記給水系統に接続され、前記設定部によって優先順位が設定された各々の前記用途に供給される給水流量を検出する複数の流量検出部と、前記流量調整部、設定部及び前記流量検出部に接続され、当該流量検出部によって検出された各々の前記用途に供給される給水流量及び、前記設定部によって設定された前記優先順位に基づいて前記流量調整部を制御する制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0030】
請求項1に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、複数の流量調整部、設定部、複数の流量検出部及び、制御部を備えて構成され、流量調整部は、給水系統に接続され、少なくとも、発電機冷却、軸受冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する。設定部は、流量調整部によって調整される各々の用途毎の流量配分に関する優先順位を設定するようになされる。流量検出部は、給水系統に接続され、設定部によって優先順位が設定された各々の用途に供給される給水流量を検出する。制御部は流量調整部、設定部及び流量検出部に接続される。これを前提にして、制御部が流量検出部によって検出された各々の用途に供給される給水流量及び、設定部によって設定された優先順位に基づいて流量調整部を制御するようになる。この制御によって、各々の用途に対応した優先順位に従って給水できるので、軸受部や発電機固定子等に対して優先的に封水装置に給水できるようになる。
【0031】
請求項2に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項1において、前記制御部に前記優先順位を設定する設定部では、前記流量調整部によって調整される各々の前記用途毎の流量配分に関して、前記軸受部の漏水を防止するための封水、前記軸受部を冷却するための冷却水、前記発電機を冷却するための冷却水の順に前記優先順位が設定されることを特徴とするものである。
【0032】
請求項3に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項2において、前記制御部が、前記設定部によって設定された前記優先順位に基づいて前記軸受部を冷却するための軸受部冷却装置及び前記発電機を冷却するための発電機冷却装置に優先して前記軸受部の漏水を防止するための封水装置に給水することを特徴とするものである。
【0033】
請求項4に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項3において、前記軸受部の漏水を防止するための封水装置、前記軸受部を冷却するための軸受部冷却装置及び、前記発電機を冷却するための発電機冷却装置の各々に給水する給水系統が少なくとも常備用及び予備用に区分され、前記制御部は、前記常備用の給水系統で前記発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水が不足するか否かを監視し、前記常備用の給水系統で前記発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水が不足する場合は、前記予備用の給水系統で追加給水制御を実行することを特徴とするものである。
【0034】
請求項5に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項4において、前記常備用及び予備用の給水系統に接続された前記発電機の固定子を含む軸受部の温度を検出する温度検出部を備え、前記制御部は、前記温度検出部から、少なくとも、前記発電機の固定子及び軸受部のいずれか一方の温度が設定温度を超える温度上昇を検出したとき、前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加することを特徴とするものである。
【0035】
請求項6に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項5において、前記制御部は、前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加する際に、前記予備用の給水系統で追加給水制御を実行することを特徴とするものである。
【0036】
請求項7に記載の水力発電所の給水流量制御装置は、請求項1において、前記給水系統に接続された本管を流れる水の濁度を検出する濁度検出部を備え、前記制御部は、前記濁度検出部から出力される濁度検出情報に基づいて前記軸受部の封水用の流量設定値、前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量設定値を各々変更して、追加給水制御を実行することを特徴とするものである。
【0037】
請求項8に記載の水力発電所の給水流量制御方法は、給水系統に接続され、少なくとも、発電機冷却、軸受冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する流量調整部及び、給水系統に接続され、各々の前記用途毎に流量を検出する流量検出部を備え、各々の用途毎に給水制御を実行する水力発電所の給水流量制御装置が、発電機冷却用途、軸受冷却用途及び封水用途の各々の流量配分に関する優先順位の設定を受け付ける工程と、優先順位が設定された各々の前記用途に供給される給水流量を検出する工程と、検出された各々の前記用途に供給される給水流量及び、予め設定された前記優先順位に基づいて前記流量調整部を制御し、各々の前記用途に給水する工程を実行することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
請求項1に係る水力発電所の給水流量制御装置及び、請求項8に係る水力発電所の給水流量制御方法によれば、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各々の用途毎に設けられた流量検出部から出力される各々の用途毎の給水流量及び、設定部によって設定された各々の用途毎の流量配分に関する優先順位に基づいて流量調整部を制御する制御部を備えるものである。
【0039】
この構成によって、各々の用途に対応した優先順位に従って給水できるので、軸受部や発電機固定子等に対して優先的に封水装置に給水できるようになる。これにより、手動による流量調整が不要となる。封水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。
【0040】
請求項2に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、流量調整部によって調整される各々の用途毎の流量配分に関して、軸受部の漏水を防止するための封水、軸受部を冷却するための冷却水、発電機を冷却するための冷却水の順に優先順位が設定されるので、軸受部や発電機固定子等に対して優先的に封水装置に給水できるようになる。
【0041】
請求項3に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、優先順位に基づいて軸受部冷却装置及び発電機冷却装置に優先して封水装置に給水するので、封水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。
【0042】
請求項4に記載の水力発電所の給水流量制御装置によれば、封水装置、軸受部冷却装置及び、発電機冷却装置の各々に給水する給水系統が少なくとも常備用及び予備用に区分され、制御部が常備用の給水系統で発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水が不足する場合、予備用の給水系統で追加給水制御を実行するので、封水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。
【0043】
請求項5に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、制御部が発電機の固定子及び軸受部のいずれか一方の温度上昇を検出したとき、発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加するので、発電機停止等の異常事態を伴うことなく、発電機及び軸受部の温度上昇を抑制できるようになる。
【0044】
請求項6に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、制御部は、発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加する際に、予備用の給水系統で追加給水制御を実行するので、軸受部の封水を確保しつつ発電機及び軸受部の温度上昇を抑制できるようになる。
【0045】
請求項7に係る水力発電所の給水流量制御装置によれば、制御部が、濁度検出部から出力される濁度検出情報に基づいて軸受部の封水用の流量設定値、発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量設定値を各々変更して、追加給水制御を実行するので、出水時のゴミ等により流量が低下した場合であっても、適正流量を常に確保できるようになる。このため、流量低下による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る実施形態としての封水装置10を含む給水系統(主流)の構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)及び(B)は、給水流量制御装置50における制御例を示す動作概要図である。
【図3】第1の実施例に係る優先順位設定による流量制御例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施例に係る優先順位設定による流量制御例を示すフローチャートである。
【図5】第3の実施例に係る軸受部70の温度検出に基づく流量制御例を示すフローチャートである。
【図6】第4の実施例に係る発電機固定子の温度検出に基づく流量制御例を示すフローチャートである。
【図7】第5の実施例に係る本管濁度検出に基づく流量制御例(その1)を示すフローチャートである。
【図8】同本管濁度検出に基づく流量制御例(その2)を示すフローチャートである。
【図9】同本管濁度検出に基づく流量制御例(その3)を示すフローチャートである。
【図10】同本管濁度検出に基づく流量制御例(その4)を示すフローチャートである。
【図11】同本管濁度検出に基づく流量制御例(その5)を示すフローチャートである。
【図12】同本管濁度検出に基づく流量制御例(その6)を示すフローチャートである。
【図13】第6の実施例に係る全体流量確保に対する常備→予備による追加給水制御例を示すフローチャートである。
【図14】第7の実施例に係る全体流量確保に対する予備→常備復帰による給水制御例を示すフローチャートである。
【図15】従来例に係る水力発電所の水車60における封水装置10の配置例を示す説明図である。
【図16】水力発電所200の封水装置10を含む給水系統(主流)の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態としての水力発電所の給水流量制御装置及びその給水流量制御方法について説明する。
図1に示す給水流量制御装置50は水力発電所200(図15参照)に設けられ、給水流量制御システム100を構成する。この例では、鉄管からの給水系統を2ルート化し、各給水系統のストレーナの出口に電動弁を配置する。発電機冷却、軸受冷却及び封水の各々の用途毎の入口に電動バルブを設置する。各用途入口及びストレーナの出口に流量計を設置して給水流量制御システム100を構成する。
【0048】
給水流量制御システム100には、給水流量制御装置50の他に、分配管16、設定部18、鉄管40、第1の給水系統41、第2の給水系統42、流量計43,46〜47、ストレーナ44、水車60、軸受部70、発電機80、濁度計90、A電動弁451、B電動弁452及びC電動弁453が備えられる。
【0049】
この例では、軸受部70の漏水を防止するための封水装置10(図15参照)、軸受部70を冷却するための軸受部冷却装置(図示せず)及び、発電機を冷却するための発電機冷却装置(図示せず)の各々に給水する給水系統が少なくとも常備用及び予備用に区分される。第1の給水系統41は例えば常備用であり、第2の給水系統42はその予備用である。
【0050】
鉄管40は取水口408を有しており、上流の図示しないダム湖等に接続される。取水口408の下流側の鉄管40には、第1の給水系統41が接続される。給水系統41は給水管14、電動弁411,ストレーナ412及び電動弁413(以下、D電動弁ともいう)を有して構成される。給水管14は鉄管40から分岐された水20を取り込む。水20は、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に使用される。
【0051】
電動弁411は流量調整部の一例を構成し、給水系統41の給水管14を流れる水の流量を調整する。ストレーナ412は給水管14を流れる水20に含まれるゴミをろ過する。D電動弁413は流量調整部の一例を構成し、ストレーナ412でろ過された後の水20の流量を調整する。
【0052】
取水口408と、上述の第1の給水系統41の分岐点との間の鉄管40には、第2の給水系統42が接続される。給水系統42は給水管15、電動弁421,ストレーナ422及び電動弁423(以下、E電動弁ともいう)を有して構成される。流量不足時において、給水管15は鉄管40から分岐された水20を取り込む。水20は、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水の各用途において追加供給される。
【0053】
電動弁421は流量調整部の一例を構成し、給水管14を流れる水の流量を調整する。
ストレーナ422は給水管14を流れる水20に含まれるゴミをろ過する。E電動弁423は流量調整部の一例を構成し、ストレーナ412でろ過された後の水20の流量を調整する。
【0054】
この例では、D電動弁413の下流側とE電動弁423の下流側とが接続されて、流量計43の一端に接続される。流量計43は、給水管14を流れる水20の流量及び給水管15を流れる水20の流量の少なくとも一方を計測して流量検出信号S43を発生する。流量検出信号S43は給水流量制御装置50へ出力される。
【0055】
流量計43の他端は分配管16に接続される。分配管16には、封水管P1、冷却管P2及び冷却管P3が接続される。封水管P1にはストレーナ44、流量計46及びA電動弁451が設けられる。ストレーナ44は封水管P1に接続され、封水管P1を流れる水20に含まれるゴミをろ過する。A電動弁451は流量調整部の一例を構成し、封水管P1に接続されると共に、軸受部70の封水用途に設けられて、封水管P1を流れる水の流量を調整する。A電動弁451には設定部18によって優先順位が設定される。
【0056】
流量計46は流量検出部の一例を構成し、封水管P1に接続されると共に、封水管P1を流れる封水の流量(給水流量)を計測して封水検出信号S46を発生する。封水検出信号S46は封水管P1を流れる封水の流量を示し、当該封水検出信号S46は流量計46から給水流量制御装置50へ出力される。
【0057】
冷却管P2には流量計47及びB電動弁452が設けられる。B電動弁452は流量調整部の一例を構成し、冷却管P2に接続され、軸受部70の冷却用途に設けられて、冷却管P2を流れる水の流量を調整する。B電動弁452には設定部18によって優先順位が設定される。
【0058】
流量計47は流量検出部の一例を構成し、B電動弁452によって調整された、冷却管P2を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S47を発生する。冷却水検出信号S47は冷却管P2を流れる冷却水の流量を示し、当該冷却水検出信号S47は流量計47から給水流量制御装置50へ出力される。
【0059】
冷却管P3には流量計48及びC電動弁453が設けられる。C電動弁453は流量調整部の一例を構成し、冷却管P3に接続され、発電機の冷却用途に設けられて、冷却管P3を流れる水の流量を調整する。C電動弁453には設定部18によって優先順位が設定される。
【0060】
流量計48は流量検出部の一例を構成し、C電動弁453によって調整された、冷却管P3を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S48を発生する。冷却水検出信号S48は冷却管P3を流れる冷却水の流量を示し、当該冷却水検出信号S48は流量計48から給水流量制御装置50へ出力される。
【0061】
この例で、給水流量制御装置50は演算部51、メモリ部52及び制御部53を有して構成される。給水流量制御装置50は上述の流量検出信号S43、封水検出信号S46、冷却水検出信号S47及び、冷却水検出信号S48を入力し、各々をアナログ・ディジタル変換して、流量検出データD43、封水検出データD46、冷却水検出データD47及びD48を生成する。
【0062】
演算部51は流量検出データD43、封水検出データD46、冷却水検出データD47及びD48に基づいて制御目標値を演算する。演算部51は、例えば、流量検出量が不足する場合に、流量検出量を与える電動弁の弁開度と上限設定値との差分を演算する。当該差分が存在する場合、すなわち、電動弁の弁開度が上限リミットに到達していない場合は、流量を増加する方向に弁を開くための制御目標値を生成する。
【0063】
また、流量検出量が過剰となっている場合、演算部51は、流量検出量を与える電動弁の弁開度と下限設定値との差分を演算する。当該差分が存在する場合、すなわち、電動弁の弁開度が下限リミットに到達していない場合は、流量を減少させる方向に弁を閉じるための制御目標値を生成する。
【0064】
制御目標値は、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423の開度を制御して流量を設定するための値である。例えば、封水に関して、流量検出量が不足する場合の制御目標値は、電動弁開信号S51となり、流量検出量が過剰となっている場合は、電動弁閉信号S51バーとなる。
【0065】
演算部51にはメモリ部52が接続される。メモリ部52には演算途中の流量検出データD43、封水検出データD46、冷却水検出データD47及びD48や、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対応した制御目標値が一時記憶される。
【0066】
演算部51及びメモリ部52には制御部53が接続される。制御部53は制御目標値に基づいてA電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423を制御する。制御部53には設定部18が接続される。設定部18は、発電機冷却用途、軸受冷却用途及び封水用途の各々の流量配分に関する優先順位の設定を受け付けるように操作される。
【0067】
この例では、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423によって調整される各々の用途毎の流量配分に関して、例えば、軸受部70の漏水を防止するための封水、軸受部70を冷却するための冷却水、発電機を冷却するための冷却水の順に優先順位が設定される。ここで受け付けられた優先順位は、設定データD18となって設定部18から制御部53へ出力される。
【0068】
各々の用途毎の流量配分に関する優先順位は、設定部18から制御部53へ設定される。設定部18で優先順位を設定すると、軸受部70や発電機80の固定子等の冷却に対して優先的に封水装置に給水できるようになる。
【0069】
給水流量制御装置50は、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423及び流量計43,46〜47に接続され、制御部53が流量計43,46〜47によって検出された各々の用途に供給される給水流量及び、設定部18によって設定された優先順位に基づいてA電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423を制御する。
【0070】
例えば、制御部53は、設定部18によって設定された優先順位に基づいて軸受部70を冷却するための軸受部冷却装置(図示せず)及び発電機を冷却するための発電機冷却装置(図示せず)に優先して軸受部70の漏水を防止するための封水装置10(図15参照)に給水する。
【0071】
制御部53は、A電動弁451に電動弁開信号S51を出力して弁開動作させる。反対に、A電動弁451の弁を閉動作させる場合は、電動弁閉信号S51バー(上線を省略する:S51の反転信号の意味)を出力する。A電動弁451の弁動作を停止して、その弁開度を維持(ロック)する場合は、電動弁停止信号S511を出力する。
【0072】
同様にして、制御部53は、B電動弁452に電動弁開信号S52を出力して弁開動作させる。反対に、B電動弁452の弁を閉動作させる場合は、電動弁閉信号S52バー(上線を省略する:S52の反転信号の意味)を出力する。B電動弁452の弁動作を停止して、その弁開度を維持(ロック)する場合は、電動弁停止信号S522を出力する。
【0073】
更に、制御部53は、C電動弁453に電動弁開信号S53を出力して弁開動作させる。反対に、C電動弁453の弁を閉動作させる場合は、電動弁閉信号S53バー(上線を省略する:S53の反転信号の意味)を出力する。B電動弁452の弁動作を停止して、その弁開度を維持(ロック)する場合は、電動弁停止信号S533を出力する。
【0074】
また、制御部53は、D電動弁413に電動弁開信号S41を出力して弁開動作させる。反対に、D電動弁413の弁を閉動作させる場合は、電動弁閉信号S41バー(上線を省略する:S41の反転信号の意味)を出力する。D電動弁413の弁動作を停止して、その弁開度を維持(ロック)する場合は、電動弁停止信号S411を出力する。
【0075】
更に、制御部53は、E電動弁423に電動弁開信号S42を出力して弁開動作させる。反対に、E電動弁423の弁を閉動作させる場合は、電動弁閉信号S42バー(上線を省略する:S42の反転信号の意味)を出力する。E電動弁423の弁動作を停止して、その弁開度を維持(ロック)する場合は、電動弁停止信号S422を出力する。
【0076】
なお、水車60、軸受部70及び発電機80については図15を参照されたい。この例で、軸受部70には温度計71が取り付けられる。温度計71は、軸受部70の温度を検出して温度検出信号S71を給水流量制御装置50に出力する。制御部53は、温度検出信号S71に基づいてB電動弁452を制御するようになる(第3の実施例を参照)。
【0077】
また、発電機80には温度計81が取り付けられる。温度計81は、発電機80の固定子等の温度を検出して温度検出信号S81を給水流量制御装置50に出力する。制御部53は、温度検出信号S81に基づいてC電動弁453を制御するようになる(第4の実施例を参照)。
【0078】
この例で、鉄管40の取水口408には濁水を事前感知させるための濁度計90が取り付けられる。濁度計90は、鉄管40を流れる水20の濁度を検出して濁度検出信号S90を給水流量制御装置50に出力する。制御部53は、濁度検出信号S90に基づいてA電動弁451、B電動弁452及びC電動弁453を制御するようになる(第5の実施例を参照)。
【0079】
また、制御部53は、常備用の給水系統41で発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水が不足するか否かを監視し、常備用の給水系統41で発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水が不足する場合は、予備用の給水系統42で追加給水制御を実行する(第6及び第7の実施例を参照)。これらにより、給水流量制御装置50を含む給水流量制御システム100を構成する。
【0080】
ここで、図2A及び図2Bを参照して、給水流量制御装置50における制御例(基本フロー)について説明する。図2Aは、給水流量制御装置50における各設定値とその制御信号又はその制御内容との関係例を示す表図である。図2Bは、常時流量範囲における設定値とその制御信号又は制御内容との関係例を示すグラフ図である。縦軸は流量及び電動弁の弁状態である。流量は、上方が多量(流量Qmax)であり、下方が少量(流量Qmin)である。弁状態は上方が開口大であり、下方が開口小である。
【0081】
図2Aに示す設定値には、上限設定、1段設定(追加給水用)、2段設定(常時給水用)、下限設定、警報設定、トリップ設定が記述される。上限設定の欄には上限設定値が入力される。ここに、上限設定値とは、発電機冷却用途、軸受冷却用途及び封水用途の各々の流量を得る際のA電動弁451や、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423等の弁開度の上限値を設定する際の最大開度値をいう。
【0082】
上限設定値はA電動弁451等の弁を閉方向から開方向へ遷移させる場合に設定され、A電動弁451等の弁が電動弁開信号S51等に基づいて最大開度値(上限リミット)に到達すると、電動弁閉信号S51バー等に基づいてA電動弁451等の弁を閉方向へ遷移するようになされる。
【0083】
1段設定とは、常備用の給水系統41に加えて予備用の給水系統42を動作させて、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処する際の動作モードをいう。1段設定の動作モードが設定されるのは、常備用の給水系統41において発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水が不足する場合である。以下で、1段設定の動作モードに基づいて給水流量を制御する場合を1段制御という。
【0084】
2段設定とは、予備用の給水系統42を動作させることなく、常備用の給水系統41のみで、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処する際の動作モードをいう。2段設定の動作モードが設定されるのは、常備用の給水系統41において発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水が賄える場合である。当該給水流量制御システム100の初期には2段設定の動作モードが設定される。以下で、2段設定の動作モードに基づいて給水流量を制御する場合を2段制御という。
【0085】
下限設定値とは、発電機冷却用途、軸受冷却用途及び封水用途の各々の流量を得る際のA電動弁451や、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423等の弁開度の下限値を設定する際の最小開度値をいう。下限設定値はA電動弁451等の弁を開方向から閉方向へ遷移させる場合に設定され、A電動弁451等の弁が電動弁閉信号S51バー等に基づいて最小開度値(下限リミット)に到達すると、電動弁開信号S51等に基づいてA電動弁451等の弁を開方向へ遷移するようになされる。
【0086】
警報設定値とは、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処する場合であって、流量不足等によって常時流量範囲から流量が外れ、警報を発するか否かを判別する場合に、その判別基準となる流量値をいう。警報設定値を使用して軽微な故障を判別できるようになる。ここに、常時流量範囲とは、常備用の給水系統41のみで、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処可能な流量の範囲をいう。図中、流量Qmax−Qminの間が常時流量範囲である。
【0087】
トリップ設定値とは、水車60の異常発生時、発電機80を保護するために、当該発電機80を送電線路からトリップ(開放)する際の流量値である。これらの上限設定値、1段設定の動作モード(追加給水用)、2段設定の動作モード(常時給水用)、下限設定値、警報設定値、トリップ設定値等は、メモリ部52に格納される。
【0088】
なお、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量設定に関して、上限流量、流量1段(追加給水)、流量2段(常時給水)、下限流量、警報流量、トリップ流量等は、図1に示した設定部18を操作することで制御部53に設定される。
【0089】
また、図2Bに示す右上がりの矢印は、A電動弁451や、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423等の弁を閉方向から開方向へ制御して流量を増加する場合を示している。また、同図に示す右下がりの矢印は、A電動弁451や、B電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423等の弁を開方向から閉方向へ制御して流量を減少させる場合を示している。
【0090】
なお、黒丸印は、A電動弁451に関して、電動弁開信号S51、電動弁閉信号S51バー及び電動弁停止信号S511等の切替ポイントを示している。他のB電動弁452、C電動弁453、D電動弁413及びE電動弁423等についても同様に動作する。
【実施例1】
【0091】
続いて、図3を参照して、第1の実施例に係る優先順位設定時の流量制御例について説明する。この例では、図1に示した水力発電所200の給水流量制御システム100において、封水用途及び発電機冷却用途の各々の流量配分に関する優先順位、第1位にA電動弁451が設定され、第2位にC電動弁453が設定された場合を想定する。もちろん、優先順位は、設定部18によって受け付けられ、優先順位の設定情報(設定データD18)が設定部18から給水流量制御装置50へ出力される。
【0092】
給水流量制御装置50は、ストレーナ412の出口流量を各用途に応じた必要流量に配分するようにA電動弁451、B電動弁452及びC電動弁453を制御する。各用途の流量配分は、予め決定された優先順位により、優先的に封水系統に給水するようになされる。制御部53は、各流量を監視し、流量に応じてA電動弁451、B電動弁452及びC電動弁453を制御し給水するようになされる。
【0093】
これらを制御条件にして、給水流量制御装置50では、まず、ステップST1で制御部53が封水系統のA電動弁451の弁開度の上限リミット情報を検出する。A電動弁451の弁開度の上限リミット情報は、例えば、制御部53が管理するメモリ部52から、A電動弁451の弁開度0%→100%移行時の電動弁開信号S51の通電時間や、A電動弁451の弁開度100%→0%移行時の電動弁閉信号S51バーの通電時間等を参照し、演算部51が制御部53の参照する通電時間に対応した弁開度を演算することで得られる。もちろん、これに限られることはなく、弁開度情報を出力可能な電動バルブを設けて、弁開度の上限リミット情報を検出してもよい。
【0094】
次に、ステップST2で制御部53は封水系統の封水の流量が下限流量設定値以下になったか否かを判別する。このとき、流量計46は封水管P1を流れる封水の流量(給水流量)を計測して封水検出信号S46を発生する。封水検出信号S46は封水管P1を流れる封水の流量を示し、当該封水検出信号S46は流量計46から給水流量制御装置50へ出力される。
【0095】
給水流量制御装置50では、優先順位、第1位に設定されたA電動弁451の弁開度の上限リミットによる流量をQx1(以下でA電動弁開上限リミットという)とし、下限流量設定値をQmin1としたとき、A電動弁開上限リミットQx1と下限流量設定値Qmin1とを比較し、Qx1>Qmin1の場合及び、Qx1≦Qmin1の場合に対応して制御を分岐する。
【0096】
封水の流量が下限流量設定値を上回っている場合、すなわち、Qx1>Qmin1の場合(NO)は、ステップST1に戻って制御部53は、A電動弁451の弁開度の上限リミット情報の検出を継続する。
【0097】
封水の流量が下限流量設定値以下になった場合、すなわち、Qx1≦Qmin1の場合(YES)は、ステップST3に移行して、制御部53はC電動弁453の弁閉動作を開始する。制御部53は電動弁閉信号S53バーをC電動弁453に出力する。C電動弁453は、電動弁閉信号S53バーに基づいて弁閉動作を開始する。このC電動弁453の弁閉動作の開始によって、発電機80の冷却水が減少し、封水系統へ移譲される水が増加して行く。
【0098】
その後、ステップST4で制御部53は発電機冷却系統が下限流量設定値以下になったか否かを判別する。このとき、流量計48は、冷却管P3を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S48を発生する。冷却水検出信号S48は冷却管P3を流れる冷却水の流量を示し、当該冷却水検出信号S48は流量計48から給水流量制御装置50へ出力される。
【0099】
給水流量制御装置50では、優先順位、第2位に設定されたC電動弁453の弁開度の下限リミットによる流量をQx3(以下でC電動弁開下限リミットという)とし、下限流量設定値をQmin3としたとき、C電動弁開下限リミットQx3と下限流量設定値Qmin3とを比較し、Qx3>Qmin3の場合及び、Qx3≦Qmin3の場合に対応して制御を分岐する。
【0100】
発電機冷却系統が下限流量設定値以下になっていない場合は、ステップST5に移行してA電動弁451の弁開度の上限リミット情報を解除する。その後、ステップST6に移行して封水系統が2段設定の動作モードになったか否かを判別する。この際の判断基準は、2段設定の動作モードになったか否かを判別するための2段流量設定値をQ2としたとき、A電動弁開上限リミットQx1と2段流量設定値Q2とを比較し、Qx1<Q2の場合及び、Qx1≧Q2の場合に対応して制御を分岐する。
【0101】
封水系統が2段設定の動作モードになっていない場合、すなわち、Qx1<Q2の場合(NO)は、ステップST5に戻って、制御部53はA電動弁451の弁開度の上限リミット情報を解除する。封水系統が2段設定の動作モードになった場合、すなわち、Qx1≧Q2の場合(YES)、及び、ステップST4で発電機冷却系統が下限流量設定以下になった場合(YES)は、ステップST7に移行して制御部53は、C電動弁453の弁閉動作を停止する。制御部53は電動弁停止信号S533をC電動弁453に出力する。C電動弁453は、電動弁停止信号S533に基づいて弁閉動作を停止(ロック)する。
【0102】
このC電動弁453の弁閉動作の停止によって、発電機80への冷却水の流量の減少が止まって一定となり、封水系統への封水も一定となって、2段設定の動作モードが安定する(2段制御)。これらにより、給水流量制御システム100において、優先順位、第1位にA電動弁451が設定され、第2位にC電動弁453が設定された場合の給水流量制御を終了する。
【0103】
このように、第1の実施例としての給水流量制御システム100の給水流量制御装置50及び、その給水流量制御方法によれば、発電機冷却及び封水の各々の用途毎に設けられた流量計46,48から出力される各々の用途毎の給水流量を示す封水検出信号S46、冷却水検出信号S48及び、設定部18によって設定された各々の用途毎の流量配分に関する優先順位、(第1位=A電動弁451、第2位=C電動弁453)に基づいてA電動弁451及びC電動弁453を制御する制御部53を備えるものである。
【0104】
この構成によって、発電機冷却及び封水の各々の用途に対応した優先順位、第1位=A電動弁451、第2位=C電動弁453に従って給水できるので、軸受部70や発電機固定子等に対して優先的に封水装置に給水できるようになる。これにより、手動による流量調整が不要となる。封水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。また、各流量計46〜48、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、これらの優先順位を取り込んで、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになった。
【0105】
この他に、次のような効果が得られる。発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等の各用途で必要流量が相違していても、2つの給水系統41,42から、当該発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等の各用途に対応して給水を行うことができる。
【0106】
しかも、発電機冷却用に多量の冷却水を使用する場合であっても、図1に示したA電動弁451、B電動弁452、C電動弁453の個々の流量を流量計46〜48の検知量に基づいて自動調整できるので、封水用のA電動弁451を優先しつつ、他のB電動弁452及びC電動弁453を個々に調整できるようになる。この結果、最も少ない封水流量を満たしつつ、発電機冷却用の冷却管P3を配管清掃(クーラー逆洗浄)することができる。これにより、配管清掃時に封水流量が低下して、発電機80を自動停止してしまう恐れが解消される。
【0107】
また、給水流量制御システム100において、給水管14のストレーナ412の排砂動作と封水管P1のストレーナ44の排砂動作とが同時期に起動された場合であってもA電動弁451、B電動弁452、C電動弁453の個々の流量を流量計46〜48の検知量に基づいて自動調整できるので、封水用の電動弁451を優先しつつ、他のB電動弁452及びC電動弁453を個々に調整できるようになる。この結果、最も少ない封水流量を満たしつつ、ストレーナ412の排砂動作と封水管P1のストレーナ44の排砂動作とを同時期に起動することができる。これにより、ストレーナ排砂動作時に封水流量が低下して、発電機80を自動停止してしまう恐れが解消される。
【実施例2】
【0108】
続いて、図4を参照して、第2の実施例に係る優先順位設定時の流量制御例について説明する。この例では、図1に示した水力発電所200の給水流量制御システム100において、軸受部冷却用途及び発電機冷却用途の各々の流量配分に関する優先順位、第1位にB電動弁452が設定され、第2位にC電動弁453が設定された場合を想定する。もちろん、優先順位は、設定部18によって受け付けられ、優先順位の設定情報(設定データD18)が設定部18から給水流量制御装置50へ出力される。
【0109】
これらを制御条件にして、給水流量制御装置50では、まず、ステップST11で制御部53が軸受部冷却系統のB電動弁452の弁開度の上限リミット情報を検出する。B電動弁452の弁開度の上限リミット情報は、例えば、制御部53が管理するメモリ部52から、B電動弁452の弁開度0%→100%移行時の電動弁開信号S52の通電時間や、B電動弁452の弁開度100%→0%移行時の電動弁閉信号S52バーの通電時間等を参照し、演算部51が制御部53の参照する通電時間に対応した弁開度を演算することで得られる。
【0110】
次に、ステップST12で制御部53は軸受部冷却系統の冷却水の流量が下限流量設定値以下になったか否かを判別する。このとき、流量計47は冷却管P2を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S47を発生する。冷却水検出信号S47は冷却管P2を流れる冷却水の流量を示し、当該冷却水検出信号S47は流量計47から給水流量制御装置50へ出力される。
【0111】
給水流量制御装置50では、優先順位、第1位に設定されたB電動弁452の弁開度の上限リミットによる流量をQx2(以下でB電動弁開上限リミットという)とし、下限流量設定値をQmin2としたとき、B電動弁開上限リミットQx2と下限流量設定値Qmin2とを比較し、Qx2>Qmin2の場合及び、Qx2≦Qmin2の場合に対応して制御を分岐する。
【0112】
冷却管P2の冷却水の流量が下限流量設定値を上回っている場合、すなわち、Qx2>Qmin2の場合(NO)は、ステップST11に戻って制御部53は、B電動弁452の弁開度の上限リミット情報の検出を継続する。
【0113】
冷却水の流量が下限流量設定値以下になった場合、すなわち、Qx2≦Qmin2の場合(YES)は、ステップST13に移行して、制御部53はC電動弁453の弁閉動作を開始する。制御部53は電動弁閉信号S53バーをC電動弁453に出力する。C電動弁453は、電動弁閉信号S53バーに基づいて弁閉動作を開始する。このC電動弁453の弁閉動作の開始によって、発電機80の冷却水が減少し、軸受部冷却系統へ移譲される水が増加して行く。
【0114】
その後、ステップST14で制御部53は発電機冷却系統が下限流量設定値以下になったか否かを判別する。このとき、流量計48は、冷却管P3を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S48を発生する。冷却水検出信号S48は冷却管P3を流れる冷却水の流量を示し、当該冷却水検出信号S48は流量計48から給水流量制御装置50へ出力される。
【0115】
給水流量制御装置50では、優先順位、第2位に設定されたC電動弁453の弁開度の下限リミットによる流量をQx3(以下でC電動弁開下限リミットという)とし、下限流量設定値をQmin3としたとき、C電動弁開下限リミットQx3と下限流量設定値Qmin3とを比較し、Qx3>Qmin3の場合及び、Qx3≦Qmin3の場合に対応して制御を分岐する。
【0116】
発電機冷却系統が下限流量設定値以下になっていない場合は、ステップST15に移行してB電動弁452の弁開度の上限リミット情報を解除する。その後、ステップST16に移行して軸受部冷却系統が2段設定の動作モードになったか否かを判別する。この際の判断基準は、2段設定の動作モードになったか否かを判別するための2段流量設定値をQ2としたとき、B電動弁開上限リミットQx2と2段流量設定値Q2とを比較し、Qx2<Q2の場合及び、Qx2≧Q2の場合に対応して制御を分岐する。
【0117】
軸受部冷却系統が2段設定の動作モードになっていない場合、すなわち、Qx2<Q2の場合(NO)は、ステップST5に戻って、制御部53はB電動弁452の弁開度の上限リミット情報を解除する。軸受部冷却系統が2段設定の動作モードになった場合、すなわち、Qx2≧Q2の場合(YES)、及び、ステップST4で発電機冷却系統が下限流量設定以下になった場合(YES)は、ステップST7に移行して制御部53は、C電動弁453の弁閉動作を停止する。制御部53は電動弁停止信号S533をC電動弁453に出力する。C電動弁453は、電動弁停止信号S533に基づいて弁閉動作を停止(ロック)する。
【0118】
このC電動弁453の弁閉動作の停止によって、発電機80への冷却水の流量の減少が止まって一定となり、軸受部冷却系統への冷却水も一定となって、2段設定の動作モードが安定する(2段制御)。これらにより、給水流量制御システム100において、優先順位、第1位にB電動弁452が設定され、第2位にC電動弁453が設定された場合の給水流量制御を終了する。
【0119】
このように、第2の実施例としての給水流量制御システム100の給水流量制御装置50及び、その給水流量制御方法によれば、軸受部冷却及び発電機冷却の各々の用途毎に設けられた流量計47,48から出力される各々の用途毎の給水流量を示す冷却水検出信号S47,S48及び、設定部18によって設定された各々の用途毎の流量配分に関する優先順位、(第1位=B電動弁452、第2位=C電動弁453)に基づいてB電動弁452及びC電動弁453を制御する制御部53を備えるものである。
【0120】
この構成によって、軸受部冷却及び発電機冷却の各々の用途に対応した優先順位、第1位=B電動弁452、第2位=C電動弁453に従って給水できるので、発電機固定子等に対して優先的に軸受部70の冷却水装置に給水できるようになる。これにより、手動による流量調整が不要となる。軸受部用の冷却水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。また、各流量計46〜48、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、これらの優先順位を取り込んで、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになった。
【実施例3】
【0121】
図5を参照して、第3の実施例に係る軸受部70の温度検出に基づく流量制御例について説明する。この例では、図1に示した給水流量制御システム100には、軸受部70の温度θmを検出する温度計71が備えられ、軸受部70の温度θmが設定値を超過した場合は、流量調整を行うと共に流量に応じた予備側の追加給水を行う。制御部53は、温度計71が軸受部70の温度θmが設定温度を超える温度上昇を検出したとき、軸受部冷却用の冷却水の流量を増加するようにB電動弁452を制御するようになされる。
【0122】
これらを制御条件にして、給水流量制御装置50では、まず、図5に示すフローチャートのステップST21で制御部53がB電動弁452の2段制御を実行する。このとき、制御部53は2段設定の動作モードでB電動弁452を制御する。
【0123】
その後、ステップST22で制御部53は軸受部70の温度情報(軸受温度情報)を入力する。このとき、温度計71は、軸受部70の温度θmを検出して温度検出信号S71を給水流量制御装置50に出力する。制御部53は、温度検出信号S71に基づいてB電動弁452を制御する。給水流量制御装置50では、温度検出信号S71をアナログ・ディジタル変換した後の温度検出データDmを演算部51に出力する。
【0124】
更に、ステップST23で制御部53は軸受部70の温度θmが上限設定値の温度Tmax1に到達したか否かを判別する。その際の判断基準は、温度検出データに基づく軸受部70の温度θm(軸受部温度)をTx1とし、軸受部70の温度θmの上限設定値をTmax1としたとき、軸受部温度Tx1と上限設定値Tmax1とを比較し、Tx1>Tmax1の場合及び、Tx1≦Tmax1の場合に対応して制御を分岐する。演算部51は、軸受部70の温度θmの上限設定値をTmax1としたとき、軸受部温度Tx1と上限設定値Tmax1とを比較する。
【0125】
軸受部温度Tx1が軸受部70の温度θmの上限設定値Tmax1以下である場合、すなわち、Tx1≦Tmax1の場合(YES)は、ステップST21に戻って制御部53は、B電動弁452の2段制御を継続する。軸受部70の軸受部温度Tx1がその上限設定値Tmax1を越えた場合、すなわち、Tx1>Tmax1の場合(NO)は、追加給水制御を実行するために、ステップST24に移行して制御部53は、B電動弁452を2段制御から1段制御へ切り替える。
【0126】
そして、ステップST25で制御部53は、B電動弁452の1段制御をするために1段設定の動作モードを設定する。1段設定の動作モードでは、制御部53が軸受部70の冷却用の流量を増加するようにB電動弁452を制御する。又は、予備給水制御を実行する(図13参照)。
【0127】
その後、ステップST26で制御部53は1段制御による軸受部70の温度情報(軸受温度情報)を入力する。このとき、温度計71は、軸受部70の温度θmを検出して温度検出信号S71を給水流量制御装置50に出力する。給水流量制御装置50では、温度検出信号S71をアナログ・ディジタル変換した後の温度検出データDm(軸受温度情報)を演算部51に出力する。
【0128】
ステップST27で制御部53は1段制御による軸受部70の温度θmが上限設定値Tmax1以下になったか否かを判別する。その際の判断基準は、温度検出データDmに基づく軸受部温度Tx1と上限設定値Tmax1とを比較し、Tx1>Tmax1の場合及び、Tx1≦Tmax1の場合に対応して制御を分岐する。
【0129】
軸受部温度Tx1が上限設定値Tmax1を越えている場合、すなわち、Tx1>Tmax1の場合(NO)は、ステップST25に戻って制御部53は、B電動弁452の1段制御を継続し、ステップST26で制御部53は1段制御による軸受部温度情報を入力する。
【0130】
軸受部温度Tx1が軸受部70の温度θmの上限設定値Tmax1以下となった場合、すなわち、Tx1≦Tmax1の場合(YES)は、ステップST28に移行して制御部53は、B電動弁452を1段制御から2段制御へ切り替える。その後、ステップST21に戻ってB電動弁452の2段制御を実行する。このとき、制御部53は2段設定の動作モードでB電動弁452を制御する。以下、上述の制御を繰り返すようになされる。
【0131】
このように第3の実施例に係る水力発電所200の給水流量制御装置50によれば、軸受部70の温度計71から、当該軸受部70の温度θmが設定温度を超える温度上昇を検出したとき、制御部53が軸受部冷却用の冷却水の流量を増加するようにB電動弁452を制御するようになる。
【0132】
この制御によって、軸受部冷却用の冷却水の流量を増加する際に、予備用の給水系統で追加給水制御を実行できるので、封水系統の封水を確保しつつ軸受部70の温度上昇を抑制できるようになる。これにより、流量計47、B電動弁452、軸受部70の温度θmを取り込んで、軸受冷却用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになった。
【実施例4】
【0133】
図6を参照して、第4の実施例に係る発電機固定子の温度検出に基づく流量制御例について説明する。この例では、図1に示した給水流量制御システム100には、発電機80の固定子の温度θgを検出する温度計81が備えられ、発電機80の固定子の温度θgが設定値を超過した場合、流量調整を行うと共に流量に応じた予備側の追加給水を行う。制御部53は、温度計81が発電機80の固定子の温度θgが設定温度を超える温度上昇を検出したとき、発電機冷却用の冷却水の流量を増加するようにC電動弁453を制御するようにした。
【0134】
これらを制御条件にして、給水流量制御装置50では、まず、図6に示すフローチャートのステップST31で制御部53がC電動弁453の2段制御を実行する。このとき、制御部53は2段設定の動作モードでC電動弁453を制御する。
【0135】
その後、ステップST32で制御部53は発電機80の固定子の温度情報(固定子温度情報)を入力する。このとき、温度計81は、発電機80の固定子の温度θgを検出して温度検出信号S81を給水流量制御装置50に出力する。制御部53は、温度検出信号S81に基づいてC電動弁453を制御する。給水流量制御装置50では、温度検出信号S81をアナログ・ディジタル変換した後の温度検出データDgを演算部51に出力する。
【0136】
更に、ステップST33で制御部53は発電機80の固定子の温度θgが上限設定値の温度Tmax2に到達したか否かを判別する。その際の判断基準は、温度検出データに基づく発電機80の固定子の温度θg(固定子温度)をTx2とし、発電機80の固定子の温度θgの上限設定値をTmax2としたとき、固定子温度Tx2と温度θgの上限設定値Tmax2とを比較し、Tx2>Tmax2の場合及び、Tx2≦Tmax2の場合に対応して制御を分岐する。演算部51は固定子温度Tx2と温度θgの上限設定値Tmax2とを比較する。
【0137】
発電機80の固定子温度Tx2がその上限設定値Tmax2以下である場合、すなわち、Tx2≦Tmax2の場合(YES)は、ステップST31に戻って制御部53は、C電動弁453の2段制御を継続する。発電機80の固定子温度Tx2がその上限設定値Tmax2を越えた場合、すなわち、Tx2>Tmax2の場合(NO)は、追加給水制御を実行するために、ステップST34に移行して制御部53は、C電動弁453を2段制御から1段制御へ切り替える。
【0138】
そして、ステップST35で制御部53は、C電動弁453の1段制御をするために1段設定の動作モードを設定する。1段設定の動作モードでは、制御部53が発電機80の固定子冷却用の冷却水の流量を増加するようにC電動弁453を制御する。又は、予備給水制御を実行する(図13参照)。
【0139】
その後、ステップST36で制御部53は1段制御による固定子温度情報を入力する。このとき、温度計81は、発電機80の固定子の温度θgを検出して温度検出信号S81を給水流量制御装置50に出力する。給水流量制御装置50では、温度検出信号S81をアナログ・ディジタル変換した後の温度検出データDgを演算部51に出力する。
【0140】
ステップST37で制御部53は1段制御による発電機80の固定子温度Tx2がその上限設定値Tmax2以下になったか否かを判別する。その際の判断基準は、温度検出データに基づく固定子温度Tx2と上限設定値Tmax2とを比較し、Tx2>Tmax2の場合及び、Tx2≦Tmax2の場合に対応して制御を分岐する。
【0141】
固定子温度Tx2が上限設定値Tmax2を越えている場合、すなわち、Tx2>Tmax2の場合(NO)は、ステップST35に戻って制御部53は、C電動弁453の1段制御を継続し、ステップST36で制御部53は1段制御による固定子の温度検出データDg(固定子温度情報)を入力する。
【0142】
発電機80の固定子温度Tx2がその上限設定値Tmax2以下となった場合、すなわち、Tx2≦Tmax2の場合(YES)は、ステップST38に移行して制御部53は、C電動弁453を1段制御から2段制御へ切り替える。その後、ステップST31に戻ってC電動弁453の2段制御を実行する。このとき、制御部53は2段設定の動作モードでC電動弁453を制御する。以下、上述の制御を繰り返すようになされる。
【0143】
このように第4の実施例に係る水力発電所200の給水流量制御装置50によれば、制御部53は、発電機80の固定子の温度計81が設定温度を超える温度上昇を検出したとき、発電機80の冷却水の流量を増加するようにC電動弁453を制御する。
【0144】
この制御によって、発電機80の冷却水の流量を増加する際に、予備用の給水系統で追加給水制御を実行できるので、封水系統の封水を確保しつつ発電機80の固定子の温度上昇を抑制できるようになる。これにより、流量計48、C電動弁453、発電機80の固定子の温度θgを取り込んで、発電機冷却用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになる。
【0145】
もちろん、第3の実施例及び第4の実施例を組み合わせて制御を実行してもよい。例えば、給水流量制御装置50によれば、制御部53が発電機80の軸受部70及び発電機80の固定子のいずれか一方の温度上昇を検出したとき、発電機80の軸受部70及びその固定子の冷却用の水の流量を増加するようになるので、発電機停止等の異常事態を伴うことなく、発電機80の軸受部70及その固定子の温度上昇を抑制できるようになる。これにより、流量計47,48、B電動弁452、C電動弁453、発電機80の固定子の温度θg、その固定子の温度θgを取り込んで、軸受部冷却、発電機冷却用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになる。
【実施例5】
【0146】
続いて、図7〜図12を参照して、第5の実施例に係る本管濁度検出に基づく流量制御例について説明する。この例で、給水流量制御システム100には、給水系統に接続された鉄管40を流れる水の濁度を検出する濁度計90(図1参照)が備えられ、濁水の濁度が設定値を超過した場合、制御部53が流量を設定値+α通水するように追加給水を行う。
【0147】
制御部53は、濁度計90から出力される濁度検出情報に基づいて封水系統の1段/2段流量設定値、発電機80の軸受部冷却水用の1段/2段流量設定値、発電機80の固定子冷却用の1段/2段流量設定値を各々変更して、追加給水制御を実行する。
【0148】
この給水流量制御システム100では、初期設定として「2段制御」が設定され、優先順位として第1位:封水、第2位:軸受部、第3位:発電機の固定子が設定されている。この2段制御では、予備用の給水系統42を動作させることなく、常備用の給水系統41のみで、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処する2段設定の動作モードが設定される。
【0149】
これらを制御条件にして、図7に示すステップST41で制御部53は取水口の濁度を計測して濁度検出情報を取得する。このとき、濁度計90は、鉄管40を流れる水20の濁度を検出して濁度検出信号S90を給水流量制御装置50に出力する。給水流量制御装置50では、濁度検出信号S90をアナログ・ディジタル変換した後の濁度検出データD90を演算部51に出力する。制御部53は、濁度検出データD90に基づいてA電動弁451、B電動弁452及びC電動弁453を制御するようになる。
【0150】
ステップST42で制御部53は取水口の濁度が濁度設定値以上になったか否かを判別する。この際の判断基準は、濁度計90から得られた濁度検出情報に基づく取水口の測定濁度値と濁度設定値とを比較し、測定濁度値<濁度設定値の場合及び、測定濁度値≧濁度設定値に対応して制御を分岐する。演算部51は濁度検出情報に基づく取水口の測定濁度値と濁度設定値とを比較する。
【0151】
取水口の濁度が濁度設定値以上になった場合(YES)は、ステップST43で制御部53はA・B・C電動弁を「2段制御」→「1段制御」に切り替える。この1段制御では、常備用の給水系統41に加えて予備用の給水系統42を動作させて、発電機80の冷却、軸受部70の冷却及び当該軸受部70の封水に対処する1段設定の動作モードが設定される。
【0152】
ステップST44で制御部53はA電動弁451が1段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計46は封水管P1を流れる封水の流量(給水流量)を計測して封水検出信号S46を発生する。封水検出信号S46は流量計46から制御部53に出力される。制御部53では、流量計46から得られた封水検出信号S46に基づく封水管P1の測定流量値とA電動弁451の1段流量設定値とを比較し、封水管P1の測定流量値≦1段流量設定値の場合及び、測定流量値>1段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0153】
封水管P1の測定流量値(封水系統の流量)が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST45で制御部53はA電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53はA電動弁451に電動弁開信号S51を出力してA電動弁451の弁を開くようになされる。
【0154】
その後、ステップST46で制御部53は封水系統の流量が1段流量設定値を越えたか否かで制御を進行する。制御部53は、流量計46から得られた封水検出信号S46に基づく封水管P1の測定流量値とA電動弁451の1段流量設定値とを比較し、封水管P1の測定流量値>1段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0155】
封水系統の流量が1段流量設定値未満である場合(NO)は、封水系統の流量が1段流量設定値を越えるのを待機する。封水系統の流量が1段流量設定値を越えた場合(YES)は、ステップST47で制御部53は電動弁停止信号S511をA電動弁451に出力して、A電動弁開動作を停止(ロック)する。その後、ステップST42に戻る。
【0156】
上述のステップST44で制御部53はA電動弁が1段流量設定値を越えた場合(NO)、図8に示すステップST48に移行して、軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以下か否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計47は冷却管P2を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S47を発生する。冷却水検出信号S47は流量計47から制御部53に出力される。
【0157】
制御部53では、流量計47から得られた冷却水検出信号S47に基づく冷却管P2の測定流量値とB電動弁452の1段流量設定値とを比較し、冷却管P2の測定流量値≦1段流量設定値の場合及び、測定流量値>1段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0158】
軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST49で制御部53はB電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53はB電動弁452に電動弁開信号S52を出力してB電動弁452の弁を開くようになされる。
【0159】
その後、ステップST50で制御部53は封水系統の流量が1段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。封水系統の流量が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST51で制御部53はB電動弁開動作を停止すると共に、ステップST45に戻る。ステップST45で制御部53は上述した制御を実行する(図7参照)。このとき、制御部53は電動弁停止信号S522をB電動弁452に出力して、B電動弁開動作を停止(ロック)する。
【0160】
ステップST50で封水系統の流量が1段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST52に移行して、制御部53は軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値を越えたか否かで制御を進行する。軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値未満である場合は、軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以上となるのを待機する。
【0161】
軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以上となった場合、ステップST53で制御部53は電動弁停止信号S522をB電動弁452に出力して、B電動弁開動作を停止する。その後、ステップST42に戻る。
【0162】
また、上述のステップST48で軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値を越えた場合(NO)、制御部53は、図9に示すステップST54に移行して、発電機冷却系統の流量が1段流量設定値以下か否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計48は冷却管P3を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S48を発生する。冷却水検出信号S48は流量計48から制御部53に出力される。
【0163】
制御部53では、流量計48から得られた冷却水検出信号S48に基づく冷却管P3の測定流量値とC電動弁453の1段流量設定値とを比較し、冷却管P3の測定流量値≦1段流量設定値の場合及び、測定流量値>1段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0164】
発電機冷却系統の流量が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST55で制御部53はC電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53はC電動弁453に電動弁開信号S53を出力してC電動弁453の弁を開くようになされる。
【0165】
その後、ステップST56で制御部53は封水系統の流量が1段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。封水系統の流量が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST57で制御部53はC電動弁開動作を停止すると共に、ステップST45に戻る。ステップST45で制御部53は上述した制御を実行する(図7参照)。このとき、制御部53は電動弁停止信号S533をC電動弁453に出力して、C電動弁開動作を停止する。
【0166】
ステップST56で封水系統の流量が1段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST58で制御部53は軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。
【0167】
軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST59で制御部53はC電動弁開動作を停止すると共に、ステップST49に戻る。ステップST49で制御部53は上述した制御を実行する(図8参照)。
【0168】
ステップST58で軸受部冷却系統の流量が1段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST60で制御部53は発電機冷却系統の流量が1段流量設定値以上か否かで制御を進行する。発電機冷却系統の流量が1段流量設定値未満である場合(NO)は、発電機冷却系統の流量が1段流量設定値以上となるのを待機する。
【0169】
発電機冷却系統の流量が1段流量設定値以上となった場合(YES)は、ステップST61で制御部53は電動弁停止信号S533をC電動弁453に出力して、C電動弁開動作を停止する。その後、ステップST42に戻る。
【0170】
また、図7に示したステップST42で制御部53は取水口の濁度が濁度設定値未満である場合は、図10に示すステップST62で制御部53は前回の設定に対応して制御を分岐する。
【0171】
前回の設定が「1段制御」である場合は、ステップST63で制御部53は、制御部53はA・B・C電動弁を「1段制御」→「2段制御」に切り替える。なお、前回の設定が「2段制御」である場合は、ステップST63をパスしてステップST64に移行する。
【0172】
ステップST64で制御部53はA電動弁が2段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計46は封水管P1を流れる封水の流量(給水流量)を計測して封水検出信号S46を発生する。封水検出信号S46は流量計46から制御部53に出力される。制御部53では、流量計46から得られた封水検出信号S46に基づく封水管P1の測定流量値とA電動弁451の2段流量設定値とを比較し、封水管P1の測定流量値≦2段流量設定値の場合及び、測定流量値>2段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0173】
A電動弁451が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST65で制御部53はA電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53はA電動弁451に電動弁開信号S51を出力してA電動弁451の弁を開くようになされる。
【0174】
その後、ステップST66で制御部53は封水系統の流量が2段流量設定値を越えたか否かで制御を進行する。封水系統の流量が2段流量設定値未満である場合(NO)は、ステップST66で制御部53は封水系統の流量が2段流量設定値を越えるのを待機する。封水系統の流量が2段流量設定値を越えた場合(YES)は、ステップST67で制御部53は電動弁停止信号S511をA電動弁451に出力して、A電動弁開動作を停止する。その後、ステップST42に戻る。
【0175】
上述のステップST64で制御部53はA電動弁が2段流量設定値を越えた場合(NO)、図11に示すステップST68に移行して、軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値以下か否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計47は冷却管P2を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S47を発生する。冷却水検出信号S47は流量計47から制御部53に出力される。
【0176】
制御部53では、流量計47から得られた冷却水検出信号S47に基づく冷却管P2の測定流量値とB電動弁452の2段流量設定値とを比較し、冷却管P2の測定流量値≦2段流量設定値の場合及び、測定流量値>2段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0177】
軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST69で制御部53はB電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53はB電動弁452に電動弁開信号S52を出力してB電動弁452の弁を開くようになされる。
【0178】
その後、ステップST70で制御部53は封水系統の流量が2段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。封水系統の流量が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST71で制御部53はB電動弁開動作を停止すると共に、ステップST65に戻る。ステップST65で制御部53は上述した制御を実行する(図10参照)。
【0179】
ステップST70で封水系統の流量が2段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST72に移行して、制御部53は軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値を越えたか否かに応じて制御を進行する。軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値未満の場合は、軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値を越えるのを待機する。軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値を越えた場合、ステップST73で制御部53は電動弁停止信号S522をB電動弁452に出力して、B電動弁開動作を停止する。その後、ステップST72に戻る。
【0180】
また、上述のステップST68で軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値を越えた場合は、図12に示すステップST74に移行して、制御部53は、発電機冷却系統の流量が2段流量設定値以下か否かに応じて制御を分岐する。このとき、流量計48は冷却管P3を流れる冷却水の流量(給水流量)を計測して冷却水検出信号S48を発生する。冷却水検出信号S48は流量計48から制御部53に出力される。
【0181】
制御部53では、流量計48から得られた冷却水検出信号S48に基づく冷却管P3の測定流量値とC電動弁453の2段流量設定値とを比較し、冷却管P3の測定流量値≦2段流量設定値の場合及び、測定流量値>2段流量設定値に対応して制御を実行する。
【0182】
発電機冷却系統の流量が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST75で制御部53はC電動弁開動作を開始する。このとき、制御部53は、C電動弁453に電動弁開信号S53を出力してC電動弁453の弁を開くようになされる。
【0183】
その後、ステップST76で制御部53は封水系統の流量が2段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。封水系統の流量が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST77で制御部53はC電動弁開動作を停止すると共に、ステップST65に戻る。ステップST65で制御部53は上述した制御を実行する(図10参照)。
【0184】
ステップST76で封水系統の流量が2段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST78で制御部53は軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値以下であるか否かに応じて制御を分岐する。
【0185】
軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値以下である場合(YES)は、ステップST79で制御部53はC電動弁開動作を停止すると共に、ステップST69に戻る。ステップST69で制御部53は上述した制御を実行する(図11参照)。
【0186】
ステップST78で軸受部冷却系統の流量が2段流量設定値を越えた場合(NO)は、ステップST80で制御部53は発電機冷却系統の流量が2段流量設定値を越えたか否かに応じて制御を進行する。発電機冷却系統の流量が2段流量設定値未満の場合は、発電機冷却系統の流量が2段流量設定値を越えるのを待機する。
【0187】
発電機冷却系統の流量が2段流量設定値を越えた場合、ステップST81で制御部53は電動弁停止信号S533をC電動弁453に出力して、C電動弁開動作を停止する。その後、ステップST42に戻り、制御部53は取水口の濁度に基づいて上述した制御を繰り返すようになされる。
【0188】
このように第5の実施例に係る水力発電所200の給水流量制御装置50によれば、制御部53が、濁度計90から出力される濁度検出信号S90に基づいて封水系統の1段/2段流量設定値、発電機80の軸受部の冷却水用の1段/2段流量設定値、発電機80の固定子の冷却用の流量設定値を各々変更して、追加給水制御を実行するので、出水時のゴミ等により流量が低下した場合であっても、適正流量を常に確保できるようになる。このため、流量低下による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。これにより、流量計46〜48、A電動弁451、B電動弁452、C電動弁453、鉄管40の濁水の濁度を取り込んで、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになる。
【実施例6】
【0189】
続いて、図13を参照して、第6の実施例に係る全体流量確保に対する常備→予備による追加給水制御例について説明する。
【0190】
この実施例では、図14に示した封水装置、軸受部冷却装置及び、発電機冷却装置の各々に給水する給水系統の流量が少なくとも常備用及び予備用に区分され、制御部53が常備用の給水系統で水車60の封水、発電機80の軸受部70の冷却及び当該発電機80の固定子の冷却水が不足する場合(2段制御)、予備用の給水系統で追加給水制御(1段制御)を実行するようにした。
【0191】
これらを制御条件にして、図13に示すステップST91で制御部53はD電動弁413の弁開度の上限リミットを検出する。D電動弁413の弁開度の上限リミット情報は、例えば、制御部53が管理するメモリ部52から、D電動弁413の弁開度0%→100%移行時の電動弁開信号S41の通電時間や、D電動弁413の弁開度100%→0%移行時の電動弁閉信号S41バーの通電時間等を参照し、演算部51が制御部53の参照する通電時間に対応した弁開度を演算することで得られる。
【0192】
そして、ステップST92で制御部53はD電動弁413の弁開度の上限リミット時の主給水系統の流量が下限流量設定値以下になったか否かに対応して制御を進行する。このとき、流量計43は給水管14を流れる給水流量を計測して流量検出信号S43を発生する。流量検出信号S43は流量計47から制御部53に出力される。
【0193】
制御部53では、流量計43から得られた流量検出信号S43に基づく給水管14の測定流量値とD電動弁413の弁開度の上限リミット時の上限流量設定値とを比較し、給水管14の測定流量値≦下限流量設定値の場合及び、測定流量値>下限流量設定値に対応して制御を進行する。
【0194】
主給水系統の流量が下限流量設定値を越えている場合(NO)は、ステップST91に戻ってD電動弁413の弁開度リミットの検出を継続する。主給水系統の流量が下限流量設定値以下になった場合(YES)は、ステップST93で制御部53はE電動弁の開動作を開始する。このとき、制御部53は、E電動弁423に電動弁開信号S42を出力してE電動弁423の弁を開くようになされる。
【0195】
その後、ステップST94で制御部53はD電動弁の動作を停止(ロック)する。このとき、制御部53は電動弁停止信号S411をD電動弁413に出力して、D電動弁開動作を停止する。そして、ステップST95で制御部53は主給水系統の流量が下限流量設定値を越えたか否かに対応して制御を進行する。主給水系統の流量が下限流量設定値未満の場合は、主給水系統の流量が下限流量設定値を越えるのを待機する。
【0196】
主給水系統の流量が下限流量設定値を越えた場合、制御部53は、E電動弁423の開動作を停止(ロック)する。このとき、制御部53は電動弁停止信号S422をE電動弁423に出力して、E電動弁開動作を停止する。
【0197】
このように第6の実施例に係る給水流量制御システム100によれば、図15に示した封水装置、軸受部冷却装置及び、発電機冷却装置の各々に給水する給水系統の流量が少なくとも常備用及び予備用に区分され、全体的に流量が減った場合に、1段制御によって、予備側の給水系統のE電動弁423により追加給水を実行する。
【0198】
この例では、制御部53が常備用の給水系統で水車60の封水、発電機80の軸受部70の冷却及び当該発電機80の固定子の冷却水が不足する場合(2段制御)、全体流量確保に対する予備側の給水系統で追加給水制御(1段制御)を実行するので、冷却水枯渇による発電機停止等の異常事態を回避できるようになる。これにより、流量計43、D電動弁413、E電動弁423、第1の給水系統41(予備側)及び第2の給水系統42(常備側)を取り込んで、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになる。
【実施例7】
【0199】
続いて、図14を参照して、第7の実施例に係る全体流量確保に対する追加給水制御例について説明する。この例では、全体的に流量が回復してきた場合に、E電動弁423の下限リミット情報の検知有無に基づいて1段制御から2段制御へ給水制御を移行する場合を想定する。なお、D電動弁413の弁閉動作は停止(ロック)されている場合である。
【0200】
これらを制御条件にして、図14に示すステップST101で制御部53はE電動弁423の下限リミット情報を検知する。E電動弁423の弁開度の下限リミット情報は、例えば、制御部53が管理するメモリ部52から、E電動弁423の弁開度0%→100%移行時の電動弁開信号S42の通電時間や、E電動弁423の弁開度100%→0%移行時の電動弁閉信号S42バーの通電時間等を参照し、演算部51が制御部53の参照する通電時間に対応した弁開度を演算することで得られる。
【0201】
ステップST102で制御部53は主給水系統が上限流量設定値以上であるか否かに基づいて制御を進行する。主給水系統の流量が上限流量設定値未満である場合(NO)は、主給水系統の流量が上限流量設定値以上となるのを待機する。
【0202】
主給水系統の流量が上限流量設定値以上となった場合(YES)は、ステップST103で制御部53はE電動弁423び弁閉動作を開始する。このとき、制御部53は電動弁閉信号S42バーをE電動弁423に出力して、E電動弁閉動作を開始する。
【0203】
その後、ステップST104で制御部53はE電動弁423の下限リミット情報を検知したか否かに基づいて制御を分岐する。E電動弁423の下限リミット情報を検知していない場合(NO)は、ステップST105で制御部53は主給水系統が2段流量設定値以下であるか否かに基づいて制御を進行する。主給水系統が2段流量設定値を越えている場合(NO)は、主給水系統が2段流量設定値以下となるのを待機する。
【0204】
主給水系統が2段流量設定値以下となった場合(YES)は、ステップST106に移行してE電動弁423の弁閉動作を停止(ロック)する。このとき、制御部53は電動弁停止信号S422をE電動弁423に出力して、E電動弁開動作を停止する。
【0205】
また、上述のステップST104で制御部53はE電動弁423の下限リミット情報を検知した場合(YES)は、ステップST107で制御部53はE電動弁423の弁閉動作を停止(ロック)する。このとき、制御部53は電動弁停止信号S422をE電動弁423に出力して、E電動弁開動作を停止する。
【0206】
その後、ステップST108で制御部53はD電動弁413の弁動作ロックを解除する。このとき、制御部53はD電動弁413への電動弁停止信号S411の出力を解除して(止めて)、D電動弁動作ロックを解除する。
【0207】
そして、ステップST109で制御部53はD電動弁413の弁開動作を開始する。このとき、制御部53は電動弁開信号S41をD電動弁413に出力して、D電動弁開動作を開始する。
【0208】
その後、ステップST110で制御部53は主給水系統が2段流量設定値以下となった否かに対応して制御を進行する。主給水系統が2段流量設定値を越えている場合(NO)は、主給水系統が2段流量設定値以下となるのを待機する。主給水系統が2段流量設定値以下となった場合(YES)は、ステップST111に移行してD電動弁413の弁閉動作を停止(ロック)する。
【0209】
このとき、制御部53は電動弁停止信号S411をD電動弁413に出力して、D電動弁閉動作を停止する。これにより、E電動弁423の下限リミット情報の検知有無に基づいて1段制御から2段制御へ移行できるようになる。
【0210】
このように第7の実施例に係る給水流量制御システム100によれば、図15に示した封水装置、軸受部冷却装置及び、発電機冷却装置の各々に給水する給水系統の流量が少なくとも常備用及び予備用に区分され、全体的に流量が回復してきた場合に、1段制御から2段制御へ移行できるようになる。予備側の給水系統のE電動弁423から常備側の給水系統のD電動弁413へ給水制御を実行する。
【0211】
この例では、制御部53が予備用の給水系統で水車60の封水、発電機80の軸受部70の冷却及び当該発電機80の固定子の冷却水が過剰となった場合(1段制御)、全体流量確保に対する予備側から常備の給水系統へ移行するように給水制御(2段制御)を実行するので、冷却水枯渇による発電機停止等の異常事態を招くことなく、1段制御から2段制御へ移行できるようになる。これにより、流量計43、D電動弁413、E電動弁423、第1の給水系統41及び第2の給水系統42を取り込んで、発電機冷却、軸受冷却及び封水の各用途の流量を自動調整する自動流量制御装置を提供できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明は、水力発電所の発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水等に対応する自動給水制御が可能な給水流量制御システムに適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0213】
14,15 給水管
16 分配管
18 設定部
40 鉄管
41 第1の給水系統
42 第2の給水系統
43,46〜48 流量計(流量検出部)
44,412,422 ストレーナ
50 流量制御装置
51 演算部
52 メモリ部
53 制御部
70 軸受部
71,81 温度計
80 発電機
90 濁度計
100 給水流量制御システム
451 A電動弁(流量調整部)
452 B電動弁(流量調整部)
453 C電動弁(流量調整部)
413 D電動弁(流量調整部)
423 E電動弁(流量調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、給水系統に接続され、発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する複数の流量調整部と、
前記流量調整部によって調整される各々の前記用途毎の流量配分に関する優先順位を設定する設定部と、
前記給水系統に接続され、前記設定部によって優先順位が設定された各々の前記用途に供給される給水流量を検出する複数の流量検出部と、
前記流量調整部、設定部及び前記流量検出部に接続され、当該流量検出部によって検出された各々の前記用途に供給される給水流量及び、前記設定部によって設定された前記優先順位に基づいて前記流量調整部を制御する制御部とを備えることを特徴とする水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項2】
前記制御部に前記優先順位を設定する設定部では、
前記流量調整部によって調整される各々の前記用途毎の流量配分に関して、前記軸受部の漏水を防止するための封水、前記軸受部を冷却するための冷却水、前記発電機を冷却するための冷却水の順に前記優先順位が設定されることを特徴とする請求項1に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記設定部によって設定された前記優先順位に基づいて前記軸受部を冷却するための軸受部冷却装置及び前記発電機を冷却するための発電機冷却装置に優先して前記軸受部の漏水を防止するための封水装置に給水することを特徴とする請求項2に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項4】
前記軸受部の漏水を防止するための封水装置、前記軸受部を冷却するための軸受部冷却装置及び、前記発電機を冷却するための発電機冷却装置の各々に給水する給水系統が少なくとも常備用及び予備用に区分され、
前記制御部は、
前記常備用の給水系統で前記発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水が不足するか否かを監視し、
前記常備用の給水系統で前記発電機の冷却、水車の軸受部の冷却及び当該軸受部の封水が不足する場合は、前記予備用の給水系統で追加給水制御を実行することを特徴とする請求項3に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項5】
前記常備用及び予備用の給水系統に接続された前記発電機の本体を含む軸受部の温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、
前記温度検出部から、少なくとも、前記発電機の固定子及び軸受部のいずれか一方の温度が設定温度を超える温度上昇を検出したとき、
前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加することを特徴とする請求項4に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量を増加する際に、
前記予備用の給水系統で追加給水制御を実行することを特徴とする請求項5に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項7】
前記給水系統に接続された本管を流れる水の濁度を検出する濁度検出部を備え、
前記制御部は、
前記濁度検出部から出力される濁度検出情報に基づいて前記軸受部の封水用の流量設定値、前記発電機及び水車の軸受部の冷却用の流量設定値を各々変更して、追加給水制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の水力発電所の給水流量制御装置。
【請求項8】
少なくとも、発電機冷却、軸受冷却及び当該軸受部の封水の各々の用途毎に設けられて流量を調整する流量調整部及び、各々の前記用途毎に流量を検出する流量検出部を備え、各々の用途毎に給水制御を実行する水力発電所の給水流量制御装置が、
発電機冷却用途、軸受冷却用途及び封水用途の各々の流量配分に関する優先順位の設定を受け付ける工程と、
優先順位が設定された各々の前記用途に供給される給水流量を検出する工程と、
検出された各々の前記用途に供給される給水流量及び、予め設定された前記優先順位に基づいて前記流量調整部を制御し、各々の前記用途に給水する工程を実行することを特徴とする水力発電所の給水流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−104250(P2013−104250A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249881(P2011−249881)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)