説明

水圧転写フィルム及び水圧転写体

【課題】 表面材質がスチレン系樹脂からなる被転写体に対しても十分な密着性を有する、ウレタンインキまたは塗料を使用した水圧転写フィルムを提供する。
【解決手段】 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、前記支持体フィルム上に設けた転写層を有する水圧転写フィルムであって、該転写層が、1)ポリウレタン樹脂を50質量%以上含む装飾層(ウレタン装飾層A1)、及び、2)被転写体に対する転写面であり、前記ウレタン装飾層A1と隣接するアクリル樹脂を50質量%以上含む層(アクリル層A2)を有し、且つ、前記ポリウレタン樹脂のガラス転移点温度0℃以下であり、前記アクリル樹脂のガラス転移点温度が50℃以上である水圧転写フィルム、及びそれを使用した水圧転写体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧転写フィルム及び該フィルムを水圧転写した水圧転写体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化や成形性、コストダウン化を目的として、自動車内装部品向けや家電向け各種パーツなどにプラスチック成形品が多く用いられるようになっている。これに伴い、プラスチック成形品の表面に模様を施して外観を美麗化する加飾加工の需要が著しく増大している。
【0003】
加飾加工の一つに水圧転写法がある。水圧転写法は、柄模様等の印刷層等を有する水溶性フィルムからなる転写フィルムを、印刷層を上にして水上に浮かべ、印刷層を有機溶剤等で活性化し、その状態で成形物を転写フィルム上部から押し当て水中に沈め、柄模様等の印刷層を成形物の三次元曲面に追従して転写させる方法である。このように、非常に簡便な方法で、複雑な図柄を三次元の成形物に付与することができ、意匠性を向上させることができる。
【0004】
この方法では、水の圧力により、転写層が凹凸面に追従するほか、穴のある部分は転写層が裂けることで、トリミングされる。柄模様についても、木目や大理石模様など印刷した絵柄が大きく崩れることなく、曲面に転写できることが特長である。つまり、この加工法は水圧による押圧力を利用して成形後の三次元立体の被転写体に印刷絵柄を転写するもので、三次元立体の被転写体にも自由な意匠表現が可能なものである。
【0005】
この水圧転写法では被転写体と転写層との密着性が要求される。このため、転写層の最も被転写体と接する側の層として、ポリウレタン樹脂を含む装飾層が好んで用いられてきた。これは、ポリウレタン樹脂は接着力・密着力に優れ、比較的被転写体の材質を選ばないこと、柔軟性があり、高精細な柄を印刷できること、強靭かつ可撓性に優れた印刷皮膜が得られること、残留溶剤が少ないことといった、他の樹脂では得られない特徴を有することによる。しかし、被転写体の材質がHIPSなどのスチレン系樹脂の場合には、十分な密着性が得られないという欠点があった。
【0006】
HIPSなどの有機溶剤に侵されやすいスチレン系樹脂の表面加飾には、従来からアクリル樹脂を含むインキまたは塗料が使用されてきた。しかし水圧転写法において、ポリウレタン樹脂を含む装飾層の樹脂をアクリル樹脂に置き換えてしまうと、アクリル樹脂は硬くて脆いため、支持体フィルムへの印刷適性が低く、高精細な柄を印刷することは困難であった。また、ウレタン樹脂とアクリル樹脂は相溶できる顔料が異なるため、色合いによっては同じ色を完全に再現することが困難であり、組み立て後の完成品の意匠性が大きく制限されるという課題もあった。
【0007】
被転写体と転写層との密着性を改善する方法として、被転写体と転写層との間に、(ポリ)アルキレングリコールのジグリシジルエーテルと、P−OH結合を少なくとも1個有するリン系化合物との反応生成物からなる樹脂組成物からなるプライマー層を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし該方法は、被転写体の材質が鋼板などの金属材料である場合には非常に有効であるが、HIPS等の有機溶剤に侵されやすいプラスチックには適用することができなかった。
【特許文献1】特開2003−11591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、特に表面材質がスチレン系樹脂からなる被転写体に対しても十分な密着性を有する、ウレタンインキまたは塗料を使用した水圧転写フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリウレタン樹脂のガラス転移点温度を0℃以下とし、且つ、ポリウレタン樹脂を含む装飾層と被転写体との間に、ポリウレタン樹脂のガラス転移点温度よりも高いガラス転移点温度を有するアクリル樹脂を含有する層を設けることで、意匠性を損なうことなく、密着性に優れた水圧転写体が得られることを見いだした。
【0010】
即ち、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、前記支持体フィルム上に設けた転写層を有する水圧転写フィルムであって、該転写層が、
1)ポリウレタン樹脂を50質量%以上含む装飾層(ウレタン装飾層A1)、及び、
2)被転写体に対する転写面であり、前記ウレタン装飾層A1と隣接するアクリル樹脂を50質量%以上含む層(アクリル層A2)
を有し、且つ、前記ポリウレタン樹脂のガラス転移点温度0℃以下であり、前記アクリル樹脂のガラス転移点温度が50℃以上である水圧転写フィルムを提供する。
【0011】
また、本発明は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、有機溶剤で活性化可能な硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、剥離性フィルム上に装飾層を設けたフィルム(B)とを、前記フィルム(A)の硬化性樹脂層と前記フィルム(B)の装飾層とが相対するように重ねてドライラミネーションにより貼り合わせる前記水圧転写フィルムの製造方法であって、剥離性フィルム上に前記アクリル層A2を設けた後、前記ウレタン装飾層A1を設ける水圧転写フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記記載の水圧転写フィルムを、前記支持体フィルムを下にして水に浮かべ、有機溶剤により前記転写層を活性化し、前記転写層を被転写体に転写し、前記支持体フィルムを除去し、次いで前記転写層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させた水圧転写体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水圧転写フィルムは、特に表面材質がスチレン系樹脂等のプラスチックからなる被転写体との密着性に優れ、意匠性に優れた水圧転写体を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[水圧転写フィルムの支持体フィルム]
本発明の水圧転写フィルムに用いる水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムは、水で溶解もしくは膨潤可能な樹脂からなるフィルムである。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム(以下、支持体フィルムと略す)としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のフィルムが使用できる。
【0015】
なかでも一般に水圧転写フィルムとして用いられているPVAフィルムが、水に溶解し易く、入手が容易で、印刷又は塗工適性もよく特に好ましい。用いる支持体フィルムの厚みは10〜200μm程度が好ましい。
【0016】
[水圧転写フィルムの転写層]
本発明の水圧転写フィルムは、前記支持体フィルム上に、有機溶剤に可溶な転写層を有する。転写層は少なくとも、
1)ポリウレタン樹脂を50質量%以上含む装飾層(以下、ウレタン装飾層A1と略す)、及び、
2)被転写体に対する転写面であり、前記ウレタン装飾層A1と隣接するアクリル樹脂を50質量%以上含む層(以下、アクリル層A2と略す)を有する。
【0017】
ウレタン装飾層A1と被転写体との間にアクリル層A2を設けることで、プラスチック等の被転写体との密着性に優れた水圧転写体が得られる。一般にウレタン樹脂とアクリル樹脂とは相溶性が低いことが知られており、例えばグラビアインキ等では、ウレタンインキとアクリルインキを重ね刷りすることは、はがれ等が生じるため難しいとされている。そこで本発明では、ウレタン装飾層A1のポリウレタン樹脂のガラス転移点温度(以下、Tgと略す)を0℃以下とし、且つ前記アクリル樹脂のガラス転移点温度を50℃以上とすることで、ウレタン装飾層A1とアクリル層A2との界面の密着性にも優れた水圧転写フィルムを得ることが可能となった。中でも、ウレタン装飾層A1に使用するポリウレタン樹脂のTgが−5℃以下であることが好ましく、より好ましくは−20℃以下、更により好ましくは−30℃以下である。また、アクリル層A2に使用するアクリル樹脂のTgは、より好ましくは55℃以上、更には60℃以上がより好ましい。
ポリウレタン樹脂とアクリル樹脂とのTgの差は70℃以上であると、水圧転写性と印刷適性とを両立させることができ尚好ましい。より好ましくは80℃以上、更には90℃以上がよい。特にグラビア印刷法を用いる場合ははがれ等の問題が生じやすいので、Tg差をより大きく設けた方が好ましい。
【0018】
(ポリウレタン樹脂を含む層A1)
ウレタン装飾層A1は、樹脂固形分(但し着色剤は含まない)中ポリウレタン樹脂を少なくとも50%以上含有する。中でも、ウレタン樹脂を60%以上含有するものが好ましい。本発明で使用するポリウレタン樹脂は、印刷インキまたは塗料に通常使用する樹脂であれば特に制限はなく、数平均分子量(以下Mnと略す)が2,000以上60,000以下のものが好ましく用いられる。中でも、Mnが2,500以上56,000以下であることが好ましく、更には2,500以上40,000以下のものが、有機溶媒への溶解性に優れなお好ましい。Mnが2,000より小さいと耐候性が低下するおそれがあり、Mnが60,000を超えて大きいと、ガラス転移温度が高くなりすぎるおそれがあり、インキ層等の基材への密着性、流動性、顔料分散性、転移性等の低下の原因となることがある。
【0019】
また、本発明で使用するポリウレタン樹脂の水酸基価は低いものが好ましく、水酸基を有しないポリウレタンが好ましい。ポリウレタン樹脂の水酸基価が大きいほど、ポリウレタン樹脂分子同士が水素結合等により巨大分子化しやすく、ガラス転移温度が高くなり水圧転写性が低下する傾向がある。
具体的には、バーノックDF−422(大日本インキ化学工業(株)製)、ポリウレタン2954(荒川化学工業(株)製)などを使用することができる。
【0020】
ウレタン装飾層A1は、前記樹脂の他、多くの場合着色剤を含有する。着色剤の配合量は装飾目的に応じて適宜決定すればよいが、通常、1〜50質量部の範囲であり、より好ましくは3〜30質量部の範囲である。
【0021】
(着色剤)
着色剤は、顔料が好ましく、無機系顔料、有機系顔料のいずれも使用が可能である。また、金属切削粒子のペーストや蒸着金属膜から得られる金属細片を顔料として含んだ金属光沢インキの使用も可能である。これらの金属としては、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、真鍮(Cu−Zn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニッケルクローム(Ni−Cr)およびステンレス(SUS)等が好ましく用いられる。これらの金属細片は、分散性、酸化防止やインキ層の強度向上のためにエポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース誘導体などで表面処理されていても良い。
その他、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、消泡剤、沈降防止剤、顔料分散剤、流動性改質剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などの慣用の各種添加剤を加えても構わない。また、印刷性や塗工性を改善する目的で、ウレタン樹脂以外の汎用樹脂、各種有機溶媒などを含有させてもよい。
【0022】
(汎用樹脂)
汎用の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ、塩ビ−酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。中でも、塩ビ−酢ビ共重合樹脂、ポリエステル樹脂が、有機溶媒への溶解性、流動性、顔料分散性、転写性に優れることから好ましく用いられる。該樹脂の添加量としては、ウレタン樹脂を1としたとき1を超えない量が好ましく、具体的には0.8以下が好ましい。
【0023】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒などを挙げることができる。該有機溶媒は、装飾層となるインキ又は塗料の印刷又は塗工に必要な粘度となるような量を配合すればよい。
【0024】
ウレタン装飾層A1の乾燥膜厚は、良好な装飾性と水圧転写時の活性化が可能であるために、0.5〜15μmであることが好ましく、さらに好ましくは、1〜7μmである。
また、ウレタン装飾層A1を複数重ね、多層層とすることも可能である。
【0025】
(アクリル層A2)
アクリル層A2は、樹脂固形分(但し着色剤は含まない)中アクリル樹脂を少なくとも50%以上含有する。中でも、アクリル樹脂を60%以上含有すると、本発明の効果が十分得られ好ましい。本発明で使用するアクリル樹脂は、印刷インキまたは塗料に通常使用する樹脂であれば特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステルの単独重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとスチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸などとの共重合体などを挙げることができる。
【0026】
アクリル樹脂の重量平均分子量(以下Mwと略す)は、30,000以上100,000以下のものが好ましく用いられる。該範囲未満では、基材との密着性などの塗膜物性が不十分のおそれがあり、該範囲を超えると、有機溶剤への溶解性や、他成分との相溶性が悪くなるおそれがある。
【0027】
アクリル層A2が着色剤を含有する場合は、前記ウレタン装飾層A1と共に装飾層として水圧転写体に意匠性を付与することが可能である。着色剤に特に限定はなく、前記ウレタン装飾層A1で使用できる着色剤を使用することができる。また、前記ウレタン装飾層A1と同様に、本発明の効果を損なわない範囲内で、前述の添加剤を加えても構わない。
また、印刷性や塗工性を改善する目的で、前記ウレタン装飾層A1と同様に、アクリル樹脂以外の汎用樹脂、各種有機溶媒などを含有させてもよい。
【0028】
(汎用樹脂)
汎用の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(塩ビ、酢ビ、塩ビ−酢ビ共重合樹脂)、ビニリデン樹脂(ビニリデンクロライド、ビニリデンフルオネート)、エチレン−ビニルアセテート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。中でも、ポリエステル樹脂、塩ビ−酢ビ共重合樹脂が、有機溶媒への溶解性、流動性、顔料分散性、転写性に優れることから好ましく用いられる。該樹脂の添加量としては、ウレタン樹脂を1としたときアクリル樹脂の0.4を超えない量が好ましく、具体的には、0.3以下が好ましい。
【0029】
アクリル層A2の乾燥膜厚は0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。また、アクリル層A2を複数重ね、多層層とすることも可能である。
【0030】
アクリル層A2が前記ウレタン装飾層A1と共に装飾層として機能する場合は、ウレタン装飾層A1は図柄を示す装飾層に、アクリル層A2は図柄下地等となるベタとして使い分けると、尚好ましい。また、図柄が下地色を必要としない装飾層の場合は、アクリル層A2はベタではなくウレタン装飾層A1と同じ柄として(即ち、柄が重なるように)積層することにより、意匠性はそのままに、被転写体との密着性に優れた水圧転写体を得ることができる。
【0031】
転写層は、前記ウレタン装飾層A1、前記アクリル層A2の他、前記支持体フィルムと前記ウレタン装飾層A1との間に活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有すると、表面硬度に優れた水圧転写体を得ることができる。
硬化性樹脂層は、硬化前であっても常温で非粘着性の皮膜を形成し、常温では硬化せず活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能である。
硬化性樹脂層は、水圧転写体の装飾層の意匠性を良く発現できることから、硬化性樹脂層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。
【0032】
[転写層の硬化性樹脂層]
本発明の水圧転写フィルムの硬化性樹脂層は、
(1)未硬化状態でも巻き取り可能な柔軟性と、巻き取り後もブロッキングを起こさず、形状が安定維持される良好な保存安定性を示し、
(2)水圧転写工程における均一な活性化が可能であり、
(3)転写後に活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種により硬化して、高級感を有する優れた外観と、実用上問題ないレベルの耐擦傷性、耐薬品性、耐沸騰水性などの表面保護性能を併せて有することが必要である。
このため、硬化性樹脂層(B)は、活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂組成物であり、該樹脂組成物は必要に応じて熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
【0033】
硬化性樹脂層(B)は、膜厚が厚いほど、得られる成形品の保護効果は大きく、また装飾層の凹凸を吸収する効果が大きいために成形品に優れた光沢を持たせることができる。従って、硬化性樹脂層の膜厚は、具体的には3μm以上、好ましくは15μm以上の厚みを持つことが好ましい。硬化性樹脂層の厚みが200μmを超えると、有機溶剤による硬化性樹脂層の活性化が十分なされにくい。有機溶剤による硬化性樹脂層の十分な活性化、装飾層に対する保護層としての機能、及び装飾層の凹凸の吸収等の観点から、硬化性樹脂層の乾燥膜厚は3〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜100μm、更により好ましくは15〜50μmである。
【0034】
硬化性樹脂層はドライラミネーション時のロールからの繰り出し性等の作業性やフィルム保存時のブロッキングの発生しにくさから、室温で粘着性がないものが好ましい。
【0035】
一方、PVAをはじめとする支持体は一般に耐熱性が低く、120℃を超える温度で貼り合わせると、フィルムの収縮やラミネートじわが生じ易い。しかし、PETのような耐熱性を有する剥離性フィルムを片面に有する支持体を用いることにより、120℃以上の温度での貼り合わせることも可能であり、硬化性樹脂層の塗工または印刷における乾燥性を向上させることができ、生産性の向上に繋がる。その際には、前記貼り合わせ温度で、水圧転写時の活性化に影響を及ぼすような熱硬化が生じない硬化性樹脂を硬化性樹脂層に用いることが好ましい。
【0036】
次に、活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂について説明する。
本発明で用いる活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂とは、(1)活性エネルギー線硬化性樹脂、(2)熱硬化性樹脂、(3)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物のいずれかを意味する。
(活性エネルギー線硬化性樹脂)
活性エネルギー線硬化性樹脂は、1分子中に活性エネルギー線によって硬化可能な重合性基や構造単位を有するオリゴマーとポリマーである。ここでいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、これらにより硬化するオリゴマーとポリマーはいずれも使用可能であるが、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。
紫外線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0037】
活性エネルギー線によって硬化可能な重合性基や構造単位は、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルエステル、ビニルエーテル、マレイミド基などの重合性不飽和二重結合を有する基や構造単位が挙げられ、なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なかでも、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性のオリゴマーまたはポリマーが好ましい。より具体的には、1分子中に2〜15個の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量が300〜1万、より好ましくは300〜5000の活性エネルギー線硬化性のオリゴマーまたはポリマーが好ましく用いられる。
【0038】
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーまたはポリマーは、塗料用樹脂として使用されるものであれば問題なく使用することができ、具体例を挙げれば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0039】
これらの活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層には、必要に応じて慣用の光重合開始剤や光増感剤が含まれて良い。光重合開始剤の代表的なものとしては、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンの如きアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。
【0040】
光重合開始剤の使用量は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルの如きアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
【0041】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、熱または触媒の作用により重合する官能基を分子中に有する化合物であるか、または主剤となる熱硬化性化合物に硬化剤となる熱反応性化合物を配合したものである。熱または触媒の作用により重合する官能基としては、例えば、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、エポキシ基、メチロール基、酸無水物、炭素−炭素二重結合などが挙げられる。
【0042】
炭素−炭素二重結合を分子内に有し重合による架橋反応が可能なものは、活性エネルギー線硬化性樹脂と同種の硬化性樹脂が使用可能であり、これらの硬化性樹脂と加熱によってラジカルソースを発生する熱重合開始剤とを組み合わせることにより熱硬化性樹脂として用いることができる。この際の熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの通常の熱重合開始剤が用いられる。
【0043】
主剤と硬化剤の具体例的な組み合わせとしては、例えば、水酸基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてイソシアネート;水酸基やカルボキシル基を有する主剤樹脂と硬化剤としてN−メチロール化またはN−アルコキシメチル化メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂;エポキシ基や水酸基を有する主剤樹脂と硬化剤として無水フタル酸の如き酸無水物;カルボキシル基や炭素−炭素二重結合、ニトリル基、エポキシ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてフェノール樹脂;カルボキシル基やアミノ基を有する主剤樹脂と硬化剤としてエポキシ基含有化合物などを用いることができる。
【0044】
これらの熱硬化性樹脂は常温でも保存中に徐々に硬化反応が進行するものが多い。保存期間中に硬化反応が進むと、有機溶剤による転写層の活性化が十分行われず転写不良を起こす原因となる。このため、熱硬化性樹脂の中でも主剤としてポリオール、硬化剤としてブロックイソシアネートを用いる系が好ましい。
ブロックイソシアネートはイソシアネート基を慣用のブロック剤で保護したものを用いることができ、これら慣用のブロック剤は、フェノール、クレゾール、芳香族第2アミン、第3級アルコール、ラクタム、オキシムなどが挙げられる。
ブロックイソシアネートは装飾層の耐熱性や被転写体の耐熱性に合わせてブロック基の脱離温度が好適なものを選べば良い。
【0045】
ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリエステルポリオール、ポリエチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、特にアクリルポリオールが好ましく、なかでも、重量平均分子量が3,000〜10万のアクリルポリオール、より好ましくは1万〜7万のアクリルポリオールが好適である。
【0046】
熱硬化性樹脂も印刷性または塗工性が必要であることから、硬化前の樹脂の分子量は高いほうが好ましく、重量平均分子量1000〜10万が好ましく、さらに好ましくは3,000〜3万である。より具体的には、重量平均分子量が3,000〜10万、より好ましくは1万〜7万のポリオール(特に好ましくはアクリルポリオール)を主剤とし、ブロックイソシアネートを硬化剤として含むものが好ましく用いられる。
【0047】
(熱可塑性樹脂)
次に熱可塑性樹脂について説明する。本発明で用いる熱可塑性樹脂は、硬化性樹脂層で用いる活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂と相溶できるものであり、具体例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられ、なかでもアクリル樹脂やポリエステルが好んで多用される。
【0048】
(アクリル樹脂)
硬化性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂として用いるアクリル樹脂としては、ポリ(メタ)アクリレートが、Tgが高く、硬化性樹脂層の乾燥性向上に適しているために好ましい。特にポリメチルメタクリレートを主成分とした重量平均分子量10万〜20万、より好ましくは10万〜15万のポリ(メタ)アクリレートが透明性、耐溶剤性および耐擦傷性に優れる点で好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリレートの共重合成分として、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体を用いて、ポリマーの酸価を1〜10程度に調整することで、支持体フィルムへの密着性や、被転写体と硬化性樹脂層との密着性を向上させることができる。
【0049】
(ポリエステル)
硬化性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を用いることにより、得られる水圧転写体の外観に深み感があり、可撓性、耐衝撃性に優れるため好ましい。本発明で使用するポリエステル樹脂は、重量平均分子量1万〜7万であり、かつ芳香族および/又は脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを共重合させて得られる1種又は2種以上のポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
【0050】
芳香族ジカルボン酸および/又は脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから合成されるポリエステル樹脂から合成されるポリエステル樹脂は市販品を用いてもよく、具体例としては、望ましい塗膜物性が得やすいという観点から、バイロン200、バイロン240、バイロン650、バイロンGK880、エリーテルXA−0611が好適に用いられる。
【0051】
(熱可塑性樹脂の配合比率)
非重合性の熱可塑性樹脂を活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることは硬化性樹脂層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上および硬化性樹脂層の凝集破壊強度の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂層に含ませる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性樹脂の硬化反応を阻害するので、該熱可塑性樹脂に対する活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂の質量比P:(活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂)/(熱可塑性樹脂の質量総和)が30/70以上70/30以下であることが好ましい。
【0052】
(剥離性フィルム)
本発明の水圧転写フィルムは、あらかじめ剥離性フィルム上に各々の層を形成しておき、水圧転写に際して、該剥離フィルムから剥離して使用する態様を挙げることができる。
例えば、ウレタン装飾層A1や前記アクリル層A2を塗工または印刷した剥離性フィルムと、硬化性樹脂層を積層した支持体フィルムとを、ドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせて製造することができる。その際には、フィルム繰り出し等の作業や取扱でウレタン装飾層A1や前記アクリル層A2が剥がれ落ちない剥離力で剥離性フィルム上に固着されている必要がある。
このため、ウレタン装飾層A1や前記アクリル層A2と剥離性フィルムとの界面における剥離力を測定し、好ましい剥離性フィルムと転写層の組み合わせを選定することが好ましい。また、必要に応じて、剥離性フィルムにさらに表面処理を行うことにより、剥離力をさらに小さくすることも可能である。
【0053】
剥離性フィルムとして、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンまたはポリ塩化ビニルからなるフィルムが挙げられ、比較的安価でかつリサイクルが容易なポリオレフィン系フィルムが特に好ましい。フィルムの厚みは、ウレタン装飾層A1や前記アクリル層A2との適度の密着性、印刷時の強度との観点から、0.5μm〜250μmであるものが好ましい。
また、必要に応じて、剥離性フィルムに表面処理を行うことにより、最大剥離力を更に調整することも可能である。
【0054】
[水圧転写フィルムの製造方法]
次に、本発明の水圧転写フィルムの製造方法について述べる。
本発明の水圧転写フィルムは、支持体フィルム上へ、ウレタン装飾層A1及びアクリル層A2、あるいは、硬化性樹脂層、ウレタン装飾層A1、及びアクリル層A2を塗布または印刷することで得られる。
転写層が硬化性樹脂層を有する場合は、前記塗布又は印刷法の他、硬化性樹脂層を設けた支持体フィルムと、装飾層を設けた剥離性フィルムとを、ドライラミネートする方法により得ることも可能である。
中でも、ドライラミネート法は、硬化性樹脂層上に直接ウレタン装飾層A1等を印刷又は塗工する必要がないので、硬化性樹脂層表面の濡れ性等の塗装または印刷適正を考える必要がなく好ましい。また、多層印刷により柄のついた装飾層を導入する際にもドライラミネート法は有効である。水圧転写フィルムは、通常と異なり、濃い柄、淡い柄、ベタの順に積層するので、転写時に被転写体と密着するベタ層の平滑性が確保しずらく、逆転移が起こりやすい。しかしドライラミネーション法では、剥離性フィルム上に、ベタ、淡い柄、濃い柄の順に印刷するので、上記問題が生じることもなく、意匠性に優れた水圧転写体を得ることができる。
【0055】
ドライラミネート法はドライラミネーターを用いて行うことが好ましい。すなわち、ドライラミネーターの一方の繰り出しロール(第1の繰り出しロール)に支持体を装着し、もう一方の繰り出しロール(第2の繰り出しロール)に予め剥離性フィルムにウレタン装飾層A1及びアクリル層A2を印刷したフィルム(p)を装着する。剥離性フィルム上には、アクリル層A2を設けた後、前記ウレタン装飾層A1を設けて作成する。この時、Tg50℃以上の比較的堅いアクリル樹脂層上に、Tgが0℃以下の柔らかいウレタン装飾層A1を設けるため、高精細な柄が乱れることなく簡単に印刷できる。第1の繰り出しロールから繰り出された支持体フィルムの水溶性もしくは水膨潤性の樹脂層面に前記硬化性樹脂の有機溶剤溶液が塗布され、さらにドライヤーにて乾燥されて支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(s)が得られる。次いで、このフィルム(s)の硬化性樹脂層と、第2の繰り出しロールから繰り出されるフィルム(p)のポリウレタン層(B1)とが相対するように重ね合わされ、加熱圧着ロールで貼り合わされて巻き取りロールに巻き取られることにより、本発明の水圧転写フィルムが製造される。
【0056】
硬化性樹脂層を設けた支持体フィルムと、ウレタン装飾層A1及びアクリル層A2を設けた剥離性フィルムとを貼り合わせる工程や、乾燥工程は、40〜120℃の温度範囲で行うことが好ましく、40〜100℃の温度範囲で行うことがより好ましい。使用できる支持体フィルムは耐熱性が低いものが多いため、130℃を超える温度で貼り合わせると、フィルムの収縮やラミネートじわが入りやすくなる。
【0057】
支持体フィルム上に硬化性樹脂層を設ける場合は、支持体フィルム上に、硬化性樹脂の有機溶剤溶液を塗工する。塗工法としては、スリットリバースコーター、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、マイクログラビアコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、エアナイフコーター等を用いることが出来る。
このとき、剥離性フィルムに積層した支持体フィルムを用いると、たるみの影響をほとんど受けず、寸法安定性が良好であるため、前記硬化性樹脂の有機溶剤溶液の塗布膜厚を精密に制御することが可能になる。
【0058】
剥離性フィルム上、または硬化性樹脂層上にウレタン装飾層A1やアクリル層A2を設ける場合は、通常はグラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷等の印刷を用いる。特に特に柄模様を印刷する場合は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷またはシルク印刷が好ましく、高画質画像を得やすいという観点からグラビア印刷が好ましい。ウレタン装飾層A1やアクリル層A2の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは1〜7μmである。また絵柄のない着色層や、無色のワニス樹脂層は、塗工法によって作成してもよい。塗工法としては、前記硬化性樹脂層と同様の塗工法を用いることができる。
【0059】
(成形品の製造方法)
本発明の水圧転写フィルムを用いた成形品の製造方法について述べる。
本発明の水圧転写フィルムは、従来の水圧転写フィルムと同様な方法で水圧転写を行うことができる。
【0060】
例えば、剥離性フィルムを有さない水圧転写フィルムの場合は、
(1)水圧転写フィルムの支持体フィルムを下にし、転写層を上にして水槽中の水に浮かべ、前記支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)水圧転写フィルムの転写層に有機溶剤を塗布または噴霧することにより転写層を活性化させる。なお、転写層の有機溶剤による活性化はフィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)水圧転写フィルムの転写層に被転写体を押しつけながら、被転写体と水圧転写フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を前記被転写体に密着させて転写する。
(4)水から出した被転写体から支持体フィルムを除去し、必要に応じて被転写体に転写された転写層の硬化性樹脂層(B0)を活性エネルギー線照射又は加熱により硬化させ、成形品を得る。
【0061】
また、剥離性フィルムを有する水圧転写フィルムの場合は、
(1)剥離性フィルムを剥離した水圧転写用フィルムを、支持体フィルムを下にして水槽中の水に浮かべ、支持体フィルムを水で溶解もしくは膨潤させる。
(2)転写層に有機溶剤を塗布または噴霧することにより活性化させる。なお、転写層の有機溶剤による活性化は、フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
(3)転写層に被転写体を押し付けながら、被転写体と水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を被転写体に密着させて転写する。
(4)水から出した被転写体から支持体フィルムを除去し、被転写体に転写された転写層の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射又は加熱により硬化させ、成形品を得る。
【0062】
ウレタン装飾層A1とアクリル層A2、または、硬化性樹脂層、ウレタン装飾層A1及びアクリル層A2とからなる本発明の水圧転写フィルムの転写層は、有機溶剤を塗布または散布することにより活性化され、十分に可溶化もしくは柔軟化される。ここで言う活性化とは、転写層に有機溶剤を塗布または散布することにより、転写層を完全には溶解せずに可溶化させ、転写層に柔軟性を付与することにより転写層の被転写体への追従性と密着性を向上させることを意味する。この活性化は転写層を水圧転写フィルムから被転写体へ転写する際に、これらの転写層が柔軟化され、被転写体の三次元曲面へ十分に追従できる程度に行われれば良い。
【0063】
水圧転写における水槽の水は、支持体フィルムを膨潤または溶解させる他、転写層を転写する際に水圧転写フィルムを被転写体の三次元曲面に密着させる水圧媒体として働く。具体的には、水道水、蒸留水、イオン交換水などの水で良く、また用いる支持体フィルムによっては、水にホウ酸等の無機塩類やアルコール類を10%以内の範囲で溶解させたものでもよい。
【0064】
(活性化剤)
活性化剤とは、転写層を可溶化すなわち活性化させる有機溶剤である。活性化剤は、水圧転写工程が終了するまで蒸発しないことが好ましい。本発明で使用される活性化剤は、一般の水圧転写に用いる活性化剤を用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ソルフィットアセテート、ミネラルスピリット及びそれらの混合物が挙げられる。
【0065】
この活性化剤中に印刷インキ又は塗料と成形品との密着性を高めるために、若干の樹脂成分を含ませてもよい。例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂といった、インキのバインダーに類似の構造のものを1〜10%含ませることによって密着性が高まることがある。
【0066】
また同様の目的で、活性化剤中に上述したラジカル重合性化合物や光重合開始剤を溶解させて使用してもよい。
【0067】
被転写体に転写層を水圧転写した後、支持体フィルムを水で溶解もしくは剥離して除去し乾燥させる。被転写体からの支持体フィルムの除去は、従来の水圧転写方法と同様に水流で支持体フィルムを溶解もしくは剥離して除去する。
【0068】
硬化性樹脂層は、水および活性化剤を乾燥後させた後に、活性エネルギー線照射および/または加熱により硬化を行う。硬化時間は、組成、硬化剤の種類にもよるが、数分から1時間以内に硬化が進むものが工程上好ましい。
【0069】
(活性エネルギー線)
活性エネルギー線は、可視光、紫外線、電子線、ガンマ線を意味し、いずれも使用可能であるが、特に紫外線が好適である。紫外線源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0070】
(被転写体となる成形品)
本発明の水圧転写フィルムは密着性に優れるので、被転写体の材質がプラスチックであっても良好な水圧転写体を得ることができる。特に、材質としてGPPS、HIPSのポリスチレン、AS(SAN)、ABSなどのスチレン系樹脂も使用することが出来る。しかし本発明の水圧転写フィルムは、これに限られることなく、必要に応じて防水加工を施すことにより水中に沈めても形状が崩れないものであれば、金属、プラスチック、木材、パルプモールド、ガラス等のいずれであっても良く特に限定されない。
【0071】
被転写体となる成形品は、その表面に装飾層が十分密着することが好ましく、具体例としては、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品、パーソナルコンピューターやプリンター等のOA機器、その他石油ファンヒーター、カメラなどの家庭製品のハウジング部分に適用できる。また、テーブル、タンス、柱などの家具部材や、バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠、廻り縁などの建築部材、筆記用具、電卓、電子手帳、ケースなどの雑貨、文房具、自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグ、ゴルフクラブ、ヨットなどの船舶部品、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグル、モニュメントなどの曲面を有し、かつ意匠性を必要とする成形品に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0073】
<硬化性樹脂の製造>
(製造例1:硬化性樹脂R1の製造)
ペンタエリスリトール2モル当量とヘキサメチレンジイソシアネート7モル当量とヒドロキシエチルメタクリレート6モル当量を60℃で反応して得られるウレタンアクリレート(UA1)60部(1分子中の平均のアクリロイル基数6、質量平均分子量890)とロームアンドハース社製アクリル樹脂商品名パラロイドA−11(Tg100℃、質量平均分子量125,000)40部を、酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒(混合比1:1)に溶解し、更にチバ・スペシャリティケミカルス社製の光重合開始剤商品名「イルガキュア184」3部を添加、攪拌して樹脂固形分42%の硬化性樹脂R1を製造した。
【0074】
(製造例2:硬化性樹脂R2の製造)
新中村化学株式会社製エポキシアクリレート「NKオリゴ EA−1020」50部、東亞合成(株)製ポリエステルアクリレート「M−8530」50部および東洋紡績(株)製ポリエステル「バイロンGK880」100部を、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒(混合比1:1)に溶解し、更にチバ・スペシャリティケミカルス社製の光重合開始剤商品名「イルガキュア184」3部を添加、攪拌して樹脂固形分45%の硬化性樹脂R2を製造した。
【0075】
(製造例3:アクリル樹脂X1の製造>
モノマー混合物として、メタクリル酸メチル180部、メタクリル酸ブチル114部、メタクリル酸6部の混合物300部を作成した。
2L四つ口フラスコに酢酸ブチル120部、トルエン120部を仕込み、モノマー混合物に開始剤としてカヤエステルO(化薬アクゾ社製)を6.6部添加して滴下用モノマー混合物を準備した。フラスコ内の反応混合物温度を120℃に保持した後に滴下用モノマー混合物を6時間掛けて滴下し、滴下終了後に酢酸ブチル15部を投入した。反応混合物温度を120℃のまま1時間保持し、追加開始剤としてカヤエステルOを1.2部と酢酸ブチルを15部とからなる開始剤混合物を1時間おきに3回一括添加した。さらにフラスコ内の反応混合物温度120℃のまま1時間保持した後、溶剤を除去し、Tgは64℃のアクリル樹脂X1を得た。
【0076】
(製造例4:アクリル樹脂X2の製造>
モノマー混合物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸エチル90部、アクリル酸エチル60部、アクリル酸ブチル73.5部、メタクリル酸1.5部の混合物300部を用いた以外は、製造例3と同様にして、Tgは1℃のアクリル樹脂X2を得た。
【0077】
<硬化性樹脂を塗布した支持体フィルムの作成方法>
支持体フィルムであるアイセロ化学社製の厚さ30μmのPVAフィルムへ硬化性樹脂R1、硬化性樹脂R2または硬化性樹脂R1とR2の混合物をコンマコーターで所定の乾燥膜厚(35μm)になるように塗布し、次いで60℃で3分間乾燥した。
【0078】
<水圧転写体の試験方法>
実施例及び比較例で得た水圧転写体を以下の試験で評価した。
(模様再現性)
3次元立体成形物での模様再現性について、模様再現面積率により以下のように目視評価した。
○:模様再現面積率95%以上 (模様再現性良好)
△:模様再現面積率80%〜95%未満(模様再現性やや不良)
×:模様再現面積率80%未満(模様再現性不良)
【0079】
(密着性)
HIPS樹脂板あるいはABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じてインキ密着性を10点満点で評価した。
【0080】
(鉛筆硬度)
JIS-K5401「塗膜用鉛筆引き掻き試験機」に準じて塗膜硬度を測定した。芯の長さは3mm塗膜綿との角度45度、荷重1kg、引き掻き速度0.5mm/分、引き掻き長さ3mm、使用鉛筆は三菱ユニで行った。
【0081】
(表面光沢)
JIS K5400に準拠して、60度鏡面光沢度を測定した。
【0082】
<ウレタン装飾層A1の調整例>
<A1−1>
バーノックDF−422(大日本インキ化学工業株式会社製ポリウレタン樹脂(Tg=−50℃〜−55℃ 不揮発分31%)40部、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂3部、顔料10部、メチルエチルケトン30部、酢酸エチル25部、添加剤(ワックス等)2部を加え、ウレタン装飾層A1用の組成物A1−1を調整した。組成物A1−1から生成されるウレタン装飾層A1−1における、ウレタン樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は71%である。
【0083】
<A1−2>
ポリウレタン2959(荒川化学工業株式会社製ポリウレタン樹脂(Tg=−40℃ 不揮発分30%)40部、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂3部、顔料10部、メチルエチルケトン30部、酢酸エチル25部、添加剤(ワックス等)2部を加え、ウレタン装飾層A1用の組成物A1−2を調整した。組成物A1−2から生成されるウレタン装飾層A1−2における、ウレタン樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は71%である。
【0084】
<A1−3>
バーノックL4−079(大日本インキ化学工業株式会社製ポリウレタン樹脂(Tg=−4℃、不揮発分31%)40部、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂3部、顔料10部、メチルエチルケトン30部、酢酸エチル25部、添加剤(ワックス等)2部を加え、ウレタン装飾層A1用の組成物A1−3を調整した。組成物A1−3から生成されるウレタン装飾層A1−3における、ウレタン樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は71%である。
【0085】
<A1−4>
バーノックL5−291(大日本インキ化学工業株式会社製ポリウレタン樹脂(Tg=20℃、不揮発分31%)40部、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂3部、顔料10部、メチルエチルケトン30部、酢酸エチル25部、添加剤(ワックス等)2部を加え、ウレタン装飾層A1用の組成物A1−4を調整した。組成物A1−4から生成されるウレタン装飾層A1−4における、ウレタン樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は71%である。
【0086】
<アクリル層A2の調整例>
<A2−1>
アクリル樹脂X1(Tg=64℃)22部、CAP482−0.5(イーストマンケミカル社製セルロース樹脂)4部、黄色顔料3部、2-プロパノール37部、酢酸エチル29部、可塑剤3部、添加剤(ワックス等)5部を加え、アクリル層A2用の組成物A2−1を調整した。組成物A2−1から生成されるアクリル樹脂層A2−1におけるアクリル樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は65%である。
【0087】
<A2−2>
アクリル樹脂X2(Tg=1℃)22部、CAP482-0.5(イーストマンケミカル社製セルロース樹脂)4部、黄色顔料3部、2-プロパノール37部、酢酸エチル29部、可塑剤3部、添加剤(ワックス等)5部を加え、アクリル層A2用の組成物A2−2を調整した。組成物A2−2から生成されるアクリル樹脂層A2−2におけるアクリル樹脂の固形分濃度(着色剤成分は除く)は65%である。
【0088】
(実施例1)水圧転写フィルムの製造方法
剥離性フィルム(東洋紡社製の厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下PPフィルムと略す)上に、グラビア印刷法により、層構成PT1(PPフィルム上に、P1,P2,P3,P4の順に積層した)を有するフィルムを得た。
硬化性樹脂R1を塗布した支持体フィルムの硬化性樹脂層と、装飾フィルムの最表層とを向き合わせて60℃でラミネートし、そのまま巻き取って水圧転写フィルムを得た。
【0089】
<層構成PT1>
P1:A2−1 175L(ベタ印刷)
P2:A1−1 150L(ベタ印刷)
P3:A1−1 柄印刷
P4:A1−1 柄印刷
【0090】
水槽に30℃の温水を入れ、該水圧転写フィルムのPPフィルムを剥離後、転写層側を上にして該水圧転写フィルムを水面に浮かべた。活性剤(キシレン:MIBK:酢酸ブチル:イソプロパノール、5:2:2:1)を40g/m2噴霧し、HIPS樹脂板を転写層面から水面に向かって挿入し、水圧転写した。得られた水圧転写体を65℃で60分間乾燥し、1200mJ/cm2の照射量でUV照射を1回行い、硬化性樹脂層を完全に硬化させた。その結果、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z1を得た。水圧転写体Z1の物性評価結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
実施例1における被転写体をABS樹脂板に変更し、水圧転写体を80℃で30分間乾燥した以外は実施例1と同様にして、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z2を得た。水圧転写体Z2の物性評価結果を表1に示す。
【0092】
(実施例3)
実施例1における硬化性樹脂R1をR2に変更した以外は実施例1と同様にして、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z3を得た。水圧転写体Z3の物性評価結果を表1に示す。
【0093】
(実施例4)
実施例1における層構成PT1を、層構成PT2に変更した以外は実施例1と同様にして、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z4を得た。水圧転写体Z4の物性評価結果を表1に示す。
【0094】
<層構成PT2>
P1:A2−1 175L(ベタ印刷)
P2:A1−1 150L(ベタ印刷)
P3:A1−3 柄印刷
P4:A1−3 柄印刷
【0095】
(実施例5)
実施例1における層構成PT1を印刷層構成PT3に変更した以外は実施例1と同様にして、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z5を得た。水圧転写体Z5の物性評価結果を表2に示す。
【0096】
<層構成PT3>
P1:A2−1 175L(ベタ印刷)
P2:A1−1 150L(ベタ印刷)
P3:A1−4 柄印刷
P4:A1−4 柄印刷
【0097】
(実施例6)
実施例5における被転写体をABS樹脂板に変更し、水圧転写体を80℃で30分間乾燥した以外は実施例5と同様にして、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z6を得た。水圧転写体Z6の物性評価結果を表2に示す。
【0098】
(実施例7)
支持体フィルムである厚さ30μmのPVAフィルム表面に、グラビア印刷法により前記<層構成PT1>を有する水圧転写フィルムを得た。該水圧転写フィルムを30℃の水浴に塗工面が上になるようにして1分間放置後、活性剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/3−メチル3−メトキシブチルアセテート/酢酸ブチル=50/25/15/10)25g/mをフィルム上に散布した。更に10秒放置後、垂直方向からHIPS樹脂板を押し当て、装飾層を転写した。転写後、成形物を水洗し、65℃で60分乾燥し、鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z7を得た。水圧転写体Z7の物性評価結果を表2に示す。
【0099】
(比較例1)
実施例1における印刷層構成PT1を下記の層構成PT51(A2−1がない構成)に変更した以外は実施例1と同様に処理して、優れた表面光沢と鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z51を得た。
水圧転写体Z51の物性評価結果から転写層と被転写体との密着性不足が判明した。
<層構成PT51>
P1:A1−4 175L(ベタ印刷)
P2:A1−4 150L(ベタ印刷)
P3:A1−4 柄印刷
P4:A1−4 柄印刷
【0100】
(比較例2)
実施例7における印刷層構成PT1を比較例1で用いた印刷層構成PT51に変更した以外は実施例7と同様にして、鮮明な絵柄模様を有する水圧転写体Z52を得た。
水圧転写体Z52の物性評価結果から、転写層と被転写体との密着性不足が判明した。
【0101】
(比較例3)
実施例1における印刷層構成PT1を印刷層構成PT53に変更した以外は実施例1と同様にして、装飾フィルムを作成したが、P2の印刷段階でハジキが発生したため、装飾フィルムを得ることが出来なかった。
<層構成PT53>
P1:A2−2 175L(ベタ印刷)
P2:A1−4 150L(ベタ印刷)
P3:A1−1 柄印刷
P4:A1−1 柄印刷
【0102】
以下、物性評価結果を、表1及び表2に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】


【0105】
この結果、実施例1〜7の水圧転写フィルムは、HIPS樹脂板やABS樹脂板に対し良好な密着性を示した。また、高精細な装飾の模様再現性、表面光沢、耐擦傷性、耐洗剤性も良好であった。一方、比較例1および2の水圧転写フィルムは、水圧転写はできたが、装飾層と被転写体との密着性は不良であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと、前記支持体フィルム上に設けた転写層を有する水圧転写フィルムであって、該転写層が、
1)ポリウレタン樹脂を50質量%以上含む装飾層(ウレタン装飾層A1)、及び、
2)被転写体に対する転写面であり、前記ウレタン装飾層A1と隣接するアクリル樹脂を50質量%以上含む層(アクリル層A2)
を有し、且つ、前記ポリウレタン樹脂のガラス転移点温度0℃以下であり、前記アクリル樹脂のガラス転移点温度が50℃以上であることを特徴とする水圧転写フィルム。
【請求項2】
前記転写層が活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能な硬化性樹脂層を有し、支持体フィルム上に、前記硬化性樹脂層/前記ウレタン装飾層A1/前記アクリル層A2の順に積層されている請求項1に記載の水圧転写フィルム。
【請求項3】
前記硬化性樹脂層が、活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂、及び熱可塑性樹脂を含有し、且つ、該熱可塑性樹脂に対する活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂の質量比P:(活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂)/(熱可塑性樹脂の質量総和)が30/70以上70/30以下である、請求項2に記載の水圧転写フィルム。
【請求項4】
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルム上に、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、有機溶剤で活性化可能な硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、剥離性フィルム上に装飾層を設けたフィルム(B)とを、前記フィルム(A)の硬化性樹脂層と前記フィルム(B)の装飾層とが相対するように重ねてドライラミネーションにより貼り合わせる請求項2に記載の水圧転写フィルムの製造方法であって、剥離性フィルム上に前記アクリル層A2を設けた後、前記ウレタン装飾層A1を設けることを特徴とする水圧転写フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の水圧転写フィルムを、前記支持体フィルムを下にして水に浮かべ、有機溶剤により前記転写層を活性化し、前記転写層を被転写体に転写し、前記支持体フィルムを除去し、次いで前記転写層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させたことを特徴とする水圧転写体。
【請求項6】
被転写体表面の材質がスチレン系樹脂である、請求項5に記載の水圧転写体。


【公開番号】特開2006−159671(P2006−159671A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355273(P2004−355273)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】